「脱いで」
「え?」
「ほら、鏡もある」
入った左手に洗面台があった。
その上に、大きな鏡が付いていた。
鏡には、侑人と主婦が映っている。
主婦は、能面のような顔をしていた。
どうやらスイッチが入ったようだ。
明らかに興奮しているときの顔だった。
主婦は、自ら鏡の前に立った。
荒い息をついているのが、後ろ姿からもわかる。
体側に伸びていた両手が、前に回った。
両腕が交差したようだ。
チュニックの裾が、舞台の緞帳のようにあがっていく。
黒いレギンスに包まれた、むっちりとした太腿が現れる。
そして……。
サスペンダー状に刳り抜かれた区画が現れた。
区画からは、真っ白い尻が、こぼれ落ちそうなほどにはみ出していた。
チュニックの裾は、さらにあがっていく。
主婦が前傾し、頭上から布地が抜けた。
主婦はチュニックを軽く畳むと、洗面台の脇に載せた。
直立する。
肌を覆うのは、太腿から下のレギンスだけ。
事実上、素っ裸だ。
黒いレギンスに縁取られた尻は、マヨネーズの容器のようだった。
侑人は、車椅子を降りた。
主婦の背中に身を寄せる。
主婦は、鏡を凝視していた。
むろん、素っ裸の自分を見つめているのだ。
酔ったような目をしている。
いや。
ほんとうに酔っているのかも知れない。
公共の場で全裸を晒している自分に。
鏡の中、垂れかけた乳房の頂点では、乳首が屹立していた。
「腕、あげて」
主婦が両腕を頭上に持ちあげた。
脇の下が鏡に映った。
腋窩には、柔らかそうな脇毛が煙っていた。
脱毛するために伸ばしていたのだが……。
侑人が、脱毛にストップをかけていた。
気に入ってしまったのだ。
煙る脇毛を。
むろん、侑人にはまだ生えていない。
母の奈美は、綺麗に処理している。
主婦の脇毛は、とても新鮮に見えた。
いや。
新鮮というのもおかしい。
見てはいけない物に思えたのだ。
ある意味、陰毛より卑猥だった。
「え?」
「ほら、鏡もある」
入った左手に洗面台があった。
その上に、大きな鏡が付いていた。
鏡には、侑人と主婦が映っている。
主婦は、能面のような顔をしていた。
どうやらスイッチが入ったようだ。
明らかに興奮しているときの顔だった。
主婦は、自ら鏡の前に立った。
荒い息をついているのが、後ろ姿からもわかる。
体側に伸びていた両手が、前に回った。
両腕が交差したようだ。
チュニックの裾が、舞台の緞帳のようにあがっていく。
黒いレギンスに包まれた、むっちりとした太腿が現れる。
そして……。
サスペンダー状に刳り抜かれた区画が現れた。
区画からは、真っ白い尻が、こぼれ落ちそうなほどにはみ出していた。
チュニックの裾は、さらにあがっていく。
主婦が前傾し、頭上から布地が抜けた。
主婦はチュニックを軽く畳むと、洗面台の脇に載せた。
直立する。
肌を覆うのは、太腿から下のレギンスだけ。
事実上、素っ裸だ。
黒いレギンスに縁取られた尻は、マヨネーズの容器のようだった。
侑人は、車椅子を降りた。
主婦の背中に身を寄せる。
主婦は、鏡を凝視していた。
むろん、素っ裸の自分を見つめているのだ。
酔ったような目をしている。
いや。
ほんとうに酔っているのかも知れない。
公共の場で全裸を晒している自分に。
鏡の中、垂れかけた乳房の頂点では、乳首が屹立していた。
「腕、あげて」
主婦が両腕を頭上に持ちあげた。
脇の下が鏡に映った。
腋窩には、柔らかそうな脇毛が煙っていた。
脱毛するために伸ばしていたのだが……。
侑人が、脱毛にストップをかけていた。
気に入ってしまったのだ。
煙る脇毛を。
むろん、侑人にはまだ生えていない。
母の奈美は、綺麗に処理している。
主婦の脇毛は、とても新鮮に見えた。
いや。
新鮮というのもおかしい。
見てはいけない物に思えたのだ。
ある意味、陰毛より卑猥だった。
「ちょっと止まって」
入口脇のホワイトボードに、施設の使用状況が書いてある。
会議などで使う人が、ここで会場を確認するのだろう。
4階には、何の予定も入っていなかった。
「エレベーターに乗って。
4階」
「わけわかんない」
主婦はそれでも、素直に車椅子を押してくれた。
エレベーター前で待つ人は誰もいなかった。
2人で乗りこみ、4階で降りる。
エレベーターホールは閑散としていた。
ホールの前は、1階からの吹き抜けになっている。
おそらく上階に、外光の入る窓があるのだろう。
吹き抜けには、日の光が降り注いでいた。
「どっちいくの?」
「右」
ホールから右に行くと、鍵の手に折れて、長い廊下が続いている。
廊下には、扉が連なっていた。
会合などに使われているときは、扉の脇に案内板が出ていたりするのだろうが……。
今日は、何もなかった。
「そこのトイレに入って。
ユニバーサルトイレ」
男女のトイレの間に、いわゆる多機能トイレがあった。
車椅子で入れる、大きな扉のトイレだ。
「なによ。
トイレなら、喫茶店で済まして来れば良かったのに」
「いいから、このまま入って。
男女兼用だから。
もし、出るときに見られても……。
車椅子のボクを介助する母親ってこと。
堂々としてれば大丈夫。
ほら、入るよ」
それでも主婦は、おびえた顔で左右を確かめた。
もちろん、誰の姿もない。
侑人は、壁の大きなボタンを押した。
扉が、横にスライドする。
主婦が、車椅子を押して中に入った。
「後ろ、ボタン押して閉めて」
主婦が後ろを振り返り、扉脇のボタンを押した。
扉がスライドして閉まる。
これでロックがかかり、外のボタンを押しても開かない。
小学校の総合学習で来たとき、このトイレも取材したのだ。
施設の人から、ボタンの機能などの説明も受けていた。
入口脇のホワイトボードに、施設の使用状況が書いてある。
会議などで使う人が、ここで会場を確認するのだろう。
4階には、何の予定も入っていなかった。
「エレベーターに乗って。
4階」
「わけわかんない」
主婦はそれでも、素直に車椅子を押してくれた。
エレベーター前で待つ人は誰もいなかった。
2人で乗りこみ、4階で降りる。
エレベーターホールは閑散としていた。
ホールの前は、1階からの吹き抜けになっている。
おそらく上階に、外光の入る窓があるのだろう。
吹き抜けには、日の光が降り注いでいた。
「どっちいくの?」
「右」
ホールから右に行くと、鍵の手に折れて、長い廊下が続いている。
廊下には、扉が連なっていた。
会合などに使われているときは、扉の脇に案内板が出ていたりするのだろうが……。
今日は、何もなかった。
「そこのトイレに入って。
ユニバーサルトイレ」
男女のトイレの間に、いわゆる多機能トイレがあった。
車椅子で入れる、大きな扉のトイレだ。
「なによ。
トイレなら、喫茶店で済まして来れば良かったのに」
「いいから、このまま入って。
男女兼用だから。
もし、出るときに見られても……。
車椅子のボクを介助する母親ってこと。
堂々としてれば大丈夫。
ほら、入るよ」
それでも主婦は、おびえた顔で左右を確かめた。
もちろん、誰の姿もない。
侑人は、壁の大きなボタンを押した。
扉が、横にスライドする。
主婦が、車椅子を押して中に入った。
「後ろ、ボタン押して閉めて」
主婦が後ろを振り返り、扉脇のボタンを押した。
扉がスライドして閉まる。
これでロックがかかり、外のボタンを押しても開かない。
小学校の総合学習で来たとき、このトイレも取材したのだ。
施設の人から、ボタンの機能などの説明も受けていた。