「でも、どうして……」
この男、薫が、なぜ美弥子のマンションを知っているのか。
「実は……。
涼太に頼んで、履歴書、スマホで撮らせたんです」
涼太とは、バイト先の民宿の息子だ。
確か、小学4年生だった。
そんな子供に、犯罪めいたことまでさせるとは。
やはりこの薫という男は、信用ならない。
しかし、マンションからここまで付いて来られて……。
まったく気づかなかった自分にも呆れた。
「ここに来ること、知ってたの?」
「いいえ」
そうか。
SuicaなどのICカード乗車券だ。
あれを使えば、尾行する相手の行き先がわからなくても不自由しない。
いちいち切符を買っていては、そうはいかないだろう。
尾行者にとっては、便利な世の中になったものだ。
「由美のところへは?」
「行ってません。
履歴書の住所、ネットで調べたら、女子学生専用のマンションみたいでしたから。
セキュリティが厳しいと思って。
それに……。
あの人は怖いです」
そうだろう。
まだ肋が痛むのではないか。
それより!
肝心なことを聞いていなかった。
「でも、何しに、わたしのところへ?」
「……。
忘れられなくて。
あの夜のことが」
物干しのポールに裸で縛られ……。
あり得ない告白をした夜のことか。
呆れた男だ。
「悪いけどわたし、これからバイトなのよ」
美弥子は、入口の看板を指差した。
看板には、万里亜のスタジオ名が入っていた。
この男、薫が、なぜ美弥子のマンションを知っているのか。
「実は……。
涼太に頼んで、履歴書、スマホで撮らせたんです」
涼太とは、バイト先の民宿の息子だ。
確か、小学4年生だった。
そんな子供に、犯罪めいたことまでさせるとは。
やはりこの薫という男は、信用ならない。
しかし、マンションからここまで付いて来られて……。
まったく気づかなかった自分にも呆れた。
「ここに来ること、知ってたの?」
「いいえ」
そうか。
SuicaなどのICカード乗車券だ。
あれを使えば、尾行する相手の行き先がわからなくても不自由しない。
いちいち切符を買っていては、そうはいかないだろう。
尾行者にとっては、便利な世の中になったものだ。
「由美のところへは?」
「行ってません。
履歴書の住所、ネットで調べたら、女子学生専用のマンションみたいでしたから。
セキュリティが厳しいと思って。
それに……。
あの人は怖いです」
そうだろう。
まだ肋が痛むのではないか。
それより!
肝心なことを聞いていなかった。
「でも、何しに、わたしのところへ?」
「……。
忘れられなくて。
あの夜のことが」
物干しのポールに裸で縛られ……。
あり得ない告白をした夜のことか。
呆れた男だ。
「悪いけどわたし、これからバイトなのよ」
美弥子は、入口の看板を指差した。
看板には、万里亜のスタジオ名が入っていた。
宿に戻ると、勝手口に回るため、庭先を通った。
庭に面した縁側の前には、シーツが干してあった。
しかし、そのシーツは目隠しで……。
その向こうには、美弥子たちの下着が干してある。
そのシーツの下から、明らかに男の脚が覗いていた。
シーツを回りこんだ由美が怒声をあげた。
「何してるの!」
逃げ出した男は、ハーパンを膝まで下げていた。
おそらく、パンツは穿いてなかったのだろう。
尻が丸出しだった。
行き止まりに追い詰められた男は、その格好で向き直った。
男根を勃起させていた。
洗濯物の下着をオカズに、男根を擦っていたに違いない。
向き直って脇を擦り抜けようとした男だったが……。
その横腹に、由美の容赦のない蹴りが入った。
由美が、気絶した男のタンクトップを脱がせ……。
それを使って、物干しの柱に縛り付けた。
しかも、逃げないようにと、ハーパンまで抜き取ったのだ。
つまり男は、全裸で物干しに縛られたわけだ。
そしてそこで……。
目を覚ました男から、驚くべき告白を聞いた。
自分は別の人格の女子高生で、この男子高校生の身体に転生したのだと。
あのときは、花火の聞こえる夜という非日常感もあり……。
男の話に聞き入ってしまった。
しかし、今思い返せば、そんなバカなことがあるはずもない。
作り話か、虚言癖に違いない。
ともかく……。
そのときの変態男が、今、目の前に立っている。
「どうして……」
偶然だろうか。
しかし、この巨大なターミナル駅近くの雑踏で……。
千葉で一度だけ会った高校生と再会する偶然など、あり得るだろうか。
「すみません。
実は、後をついてきちゃったんです」
「どこから?」
「マンションの前からです」
まったく気づかなかった。
由美は拳法をやっていたせいか、そうした気配には敏感だ。
しかし、美弥子はまったく勘が働かなかった。
足音を忍ばせて真後ろに立った由美に、よく脅かされたものだ。
無防備すぎ、と由美には笑われていた。
★作者注)花火大会の夜のシーンは、2073回からになります。★
庭に面した縁側の前には、シーツが干してあった。
しかし、そのシーツは目隠しで……。
その向こうには、美弥子たちの下着が干してある。
そのシーツの下から、明らかに男の脚が覗いていた。
シーツを回りこんだ由美が怒声をあげた。
「何してるの!」
逃げ出した男は、ハーパンを膝まで下げていた。
おそらく、パンツは穿いてなかったのだろう。
尻が丸出しだった。
行き止まりに追い詰められた男は、その格好で向き直った。
男根を勃起させていた。
洗濯物の下着をオカズに、男根を擦っていたに違いない。
向き直って脇を擦り抜けようとした男だったが……。
その横腹に、由美の容赦のない蹴りが入った。
由美が、気絶した男のタンクトップを脱がせ……。
それを使って、物干しの柱に縛り付けた。
しかも、逃げないようにと、ハーパンまで抜き取ったのだ。
つまり男は、全裸で物干しに縛られたわけだ。
そしてそこで……。
目を覚ました男から、驚くべき告白を聞いた。
自分は別の人格の女子高生で、この男子高校生の身体に転生したのだと。
あのときは、花火の聞こえる夜という非日常感もあり……。
男の話に聞き入ってしまった。
しかし、今思い返せば、そんなバカなことがあるはずもない。
作り話か、虚言癖に違いない。
ともかく……。
そのときの変態男が、今、目の前に立っている。
「どうして……」
偶然だろうか。
しかし、この巨大なターミナル駅近くの雑踏で……。
千葉で一度だけ会った高校生と再会する偶然など、あり得るだろうか。
「すみません。
実は、後をついてきちゃったんです」
「どこから?」
「マンションの前からです」
まったく気づかなかった。
由美は拳法をやっていたせいか、そうした気配には敏感だ。
しかし、美弥子はまったく勘が働かなかった。
足音を忍ばせて真後ろに立った由美に、よく脅かされたものだ。
無防備すぎ、と由美には笑われていた。
★作者注)花火大会の夜のシーンは、2073回からになります。★