でも、悪い感触じゃないってのは、うぬぼれ半分かも知れないけど、感じてた。
妻の服装も、徐々に変わってきてね。
通勤なんだろうけど、元々スーツ姿じゃなくて、カジュアルな服装だった。
最初のころは、ジーンズも多かったね。
今は、ブーツカットって言うのかな?
わたしのころは、ベルボトムって言ってたけど……。
裾の広がったシルエットが、長い脚によく似合ってた。
それがだんだん、ジーンズなんかは少なくなってきて……。
パンタロンみたいなのが多くなった。
特に派手になったわけじゃないけど……。
明らかに高級品だなって感じる生地だった。
やがて、日本海側の都市に冬が来た。
東京とはまるで違うお天気でね。
寒さは驚くほどじゃないんだけど……。
毎日空模様が悪いんで、気が滅入る思いだった。
で、ある朝。
その日は珍しく晴れたんだ。
でも逆に、放射冷却で気温が下がった。
橋の上では、前夜まで濡れてた路面が凍ってた。
凍った道路は慣れてないので、恐る恐る小股で歩いたよ。
で、橋の真ん中あたりで、いつものように妻と出会った。
やはり、雪国の女性は歩き慣れてるんだなと感じた。
颯爽と歩いてたからね。
でも、感心したのも一瞬だった。
なんと、わたしとすれ違うほんの手前で……。
ものの見事に、妻が仰向けにひっくり返ったんだ。
ゴンと、音がした。
明らかに、後頭部を路面に打ちつけた音だった。
驚いて、一瞬棒立ちになったけど……。
ためらってる場合じゃないと思った。
下心とかじゃなくて、本当に怪我しててもおかしくない転び方だったんだ。
特に、頭だからね。
わたしは、転ばないよう小走りに駆け寄ると、傍らにしゃがみこんだ。
妻は顔を歪めながら、起きあがろうとしてた。
人前で転んだのが、恥ずかしかったんだろうね。
「じっとしてた方がいい。
頭打ったみたいだから」
「……大丈夫です」
「上体だけ起こしてもいいから、少し座ってた方がいいよ」
妻の服装も、徐々に変わってきてね。
通勤なんだろうけど、元々スーツ姿じゃなくて、カジュアルな服装だった。
最初のころは、ジーンズも多かったね。
今は、ブーツカットって言うのかな?
わたしのころは、ベルボトムって言ってたけど……。
裾の広がったシルエットが、長い脚によく似合ってた。
それがだんだん、ジーンズなんかは少なくなってきて……。
パンタロンみたいなのが多くなった。
特に派手になったわけじゃないけど……。
明らかに高級品だなって感じる生地だった。
やがて、日本海側の都市に冬が来た。
東京とはまるで違うお天気でね。
寒さは驚くほどじゃないんだけど……。
毎日空模様が悪いんで、気が滅入る思いだった。
で、ある朝。
その日は珍しく晴れたんだ。
でも逆に、放射冷却で気温が下がった。
橋の上では、前夜まで濡れてた路面が凍ってた。
凍った道路は慣れてないので、恐る恐る小股で歩いたよ。
で、橋の真ん中あたりで、いつものように妻と出会った。
やはり、雪国の女性は歩き慣れてるんだなと感じた。
颯爽と歩いてたからね。
でも、感心したのも一瞬だった。
なんと、わたしとすれ違うほんの手前で……。
ものの見事に、妻が仰向けにひっくり返ったんだ。
ゴンと、音がした。
明らかに、後頭部を路面に打ちつけた音だった。
驚いて、一瞬棒立ちになったけど……。
ためらってる場合じゃないと思った。
下心とかじゃなくて、本当に怪我しててもおかしくない転び方だったんだ。
特に、頭だからね。
わたしは、転ばないよう小走りに駆け寄ると、傍らにしゃがみこんだ。
妻は顔を歪めながら、起きあがろうとしてた。
人前で転んだのが、恥ずかしかったんだろうね。
「じっとしてた方がいい。
頭打ったみたいだから」
「……大丈夫です」
「上体だけ起こしてもいいから、少し座ってた方がいいよ」
■
もう、何年くらい前になるかな。
わたしが、30を少し過ぎたころだった。
その当時は、日本海側のN市というところに住んでた。
会社は東京だったんだけど、N市にある支社に転勤してたんだ。
朝の通勤では、バスを降りてから、大きな川にかかる橋を渡ってた。
この通勤を始めて以来、その橋ですれ違う女性がいたんだ。
その女性が、わたしの妻になったってわけだ。
すれ違うようになってすぐに、わたしは意識し始めた。
妻はスタイルが良かったから、目を引いたんだね。
いつもパンツルックで、長い脚が格好良かった。
脚が長いと云っても……。
モデルみたいな、高足蟹のような感じじゃないんだよ。
太腿なんか、かなりの量感がありそうだった。
あと、彼女で特徴的なのは、顔が小さいこと。
これが、さらにスタイルを良く見せてたんだろうね。
卵形の綺麗な形の小顔でね。
でも、その中にある顔立ちは……。
残念ながら、十人並み以下だった。
どこが、特別悪いって部分はないんだけど……。
平面的で、能面みたいな感じなんだ。
いわゆる老け顔ってやつなのかな。
真っ黒な髪を、ひっつめてたこともあるんだろうけど……。
若々しさは皆無だった。
わたしはてっきり、同い年くらいだと思ってた。
でも実際は、まだ30前だったんだよ。
そのころのわたしも、そろそろ結婚を考えなきゃならない歳だったから……。
妙齢の女性と出会った場合、どうしても左手の薬指に目が行くんだ。
当時の妻は、指輪をしてなかった。
もちろん、結婚してても指輪をしない女性もいるだろうけどね。
でも、若い女性の場合……。
ある程度の確度で、未婚かどうかは判断できるんじゃないかな。
で、そのときの妻はしてなかったから……。
当然、わたしも、結婚相手として意識するようになっていったわけだ。
といっても、わたしは女性へのアプローチが得意な方じゃなかった。
もちろん、付き合った女性は2人ほどはいたけどね。
結局、結婚までいかなかったのは……。
わたしの煮え切らない態度が原因だったんだろうね。
というわけで……。
妻とは、橋の上ですれ違うだけという期間がかなり続いた。
半年……。
いや、もっとだな。
もう、何年くらい前になるかな。
わたしが、30を少し過ぎたころだった。
その当時は、日本海側のN市というところに住んでた。
会社は東京だったんだけど、N市にある支社に転勤してたんだ。
朝の通勤では、バスを降りてから、大きな川にかかる橋を渡ってた。
この通勤を始めて以来、その橋ですれ違う女性がいたんだ。
その女性が、わたしの妻になったってわけだ。
すれ違うようになってすぐに、わたしは意識し始めた。
妻はスタイルが良かったから、目を引いたんだね。
いつもパンツルックで、長い脚が格好良かった。
脚が長いと云っても……。
モデルみたいな、高足蟹のような感じじゃないんだよ。
太腿なんか、かなりの量感がありそうだった。
あと、彼女で特徴的なのは、顔が小さいこと。
これが、さらにスタイルを良く見せてたんだろうね。
卵形の綺麗な形の小顔でね。
でも、その中にある顔立ちは……。
残念ながら、十人並み以下だった。
どこが、特別悪いって部分はないんだけど……。
平面的で、能面みたいな感じなんだ。
いわゆる老け顔ってやつなのかな。
真っ黒な髪を、ひっつめてたこともあるんだろうけど……。
若々しさは皆無だった。
わたしはてっきり、同い年くらいだと思ってた。
でも実際は、まだ30前だったんだよ。
そのころのわたしも、そろそろ結婚を考えなきゃならない歳だったから……。
妙齢の女性と出会った場合、どうしても左手の薬指に目が行くんだ。
当時の妻は、指輪をしてなかった。
もちろん、結婚してても指輪をしない女性もいるだろうけどね。
でも、若い女性の場合……。
ある程度の確度で、未婚かどうかは判断できるんじゃないかな。
で、そのときの妻はしてなかったから……。
当然、わたしも、結婚相手として意識するようになっていったわけだ。
といっても、わたしは女性へのアプローチが得意な方じゃなかった。
もちろん、付き合った女性は2人ほどはいたけどね。
結局、結婚までいかなかったのは……。
わたしの煮え切らない態度が原因だったんだろうね。
というわけで……。
妻とは、橋の上ですれ違うだけという期間がかなり続いた。
半年……。
いや、もっとだな。