み「でも、その程度です。
間違っても、人を殺したことなど……」
声「それでは、わたしの顔を見てみろ」
み「断ります」

み「断じて断ります。
結構毛だらけ……」

↑猫灰だらけ。
声「それなら、わたしが前に回ってやろう」
み「……」
声「目をつぶるな!」

み「見え申さん。
ええ、何も」
声「おまえは、目の前の困難から、常にそうして逃げてきた」
↑この困難からは逃げてもいい。
み「そ、それでここまで、無事に世を渡って来れたでやんす」
●あかあかと一本の道とほりたりたまきはる我が命なりけり

↑赤道は、黄色い線でした。
声「斎藤茂吉がどうした?」

↑茂吉と、次男の北杜夫。北さん、美男です。
み「さすが、茂吉の歌をご存じで」
声「教師だと言っただろう。
突然、なんで茂吉が出てくるのだ」
み「ですから……。
首尾一貫した、わたしの生き様に通ずるかと」

↑これぞ、首尾一貫焼き?
声「首尾一貫して、目の前の困難から逃げてきたと?」
み「左様でやんす」
声「ぜんぜん歌の趣旨と違うではないか。
愚か者が」

声「目をつぶっても、意味がないのがわからんか」
み「わ、わかり申さん」
声「そもそもここは、何の明かりもない真っ暗闇だろうが。
目を開けても何も見えんわ」
間違っても、人を殺したことなど……」
声「それでは、わたしの顔を見てみろ」
み「断ります」

み「断じて断ります。
結構毛だらけ……」

↑猫灰だらけ。
声「それなら、わたしが前に回ってやろう」
み「……」
声「目をつぶるな!」

み「見え申さん。
ええ、何も」
声「おまえは、目の前の困難から、常にそうして逃げてきた」
↑この困難からは逃げてもいい。
み「そ、それでここまで、無事に世を渡って来れたでやんす」
●あかあかと一本の道とほりたりたまきはる我が命なりけり

↑赤道は、黄色い線でした。
声「斎藤茂吉がどうした?」

↑茂吉と、次男の北杜夫。北さん、美男です。
み「さすが、茂吉の歌をご存じで」
声「教師だと言っただろう。
突然、なんで茂吉が出てくるのだ」
み「ですから……。
首尾一貫した、わたしの生き様に通ずるかと」

↑これぞ、首尾一貫焼き?
声「首尾一貫して、目の前の困難から逃げてきたと?」
み「左様でやんす」
声「ぜんぜん歌の趣旨と違うではないか。
愚か者が」

声「目をつぶっても、意味がないのがわからんか」
み「わ、わかり申さん」
声「そもそもここは、何の明かりもない真っ暗闇だろうが。
目を開けても何も見えんわ」
声「確かに、先生と呼ばれていた」

み「違うんですけど。
声が違うんですけど」

↑首を振っております。
声「ここ恐山で迷っていたら……。
ひとすじ、脳天気な女の気が漂うておった」

声「わたしには、この世に係累などないはずなのだが……。
その気だけは、あまたのほかの気とは違っておった」
み「恐山で迷うって……。
ここで道に迷ったんですよね」

み「まさか、あの世への……」

↑自転車の青年は、こちらへ戻ってきたんですかね?
み「否!
断じて、否!
そんなものおるわけがない。
あなた、ここの泊まり客ですか?
こんな声の人は記憶にないのですが」
声「よくしゃべる女だ」
み「怖いからに決まってるでしょ。
悪い冗談は、止めて下さい。
お坊さん、呼んできますよ。
叱られますからね」

み「か、関係のない善良な市民を脅かしたりして」
声「関係ないだと?
おまえは、この世で、たった一人……。
わたしと関係のある人間だ」
み「なんでですかー。
心当たりありませんけど」

み「えー、そうですとも。
これっぽっちも」
声「まだ、そんなことを言うか。
おまえは、わたしを殺したではないか」
み「そんなー。
わたしはそんな重罪は、犯しておりません。
いえ、決して清廉潔白とは申しません。
確かに、500円玉を拾って自分のものにしたことはあります」


み「違うんですけど。
声が違うんですけど」

↑首を振っております。
声「ここ恐山で迷っていたら……。
ひとすじ、脳天気な女の気が漂うておった」

声「わたしには、この世に係累などないはずなのだが……。
その気だけは、あまたのほかの気とは違っておった」
み「恐山で迷うって……。
ここで道に迷ったんですよね」

み「まさか、あの世への……」

↑自転車の青年は、こちらへ戻ってきたんですかね?
み「否!
断じて、否!
そんなものおるわけがない。
あなた、ここの泊まり客ですか?
こんな声の人は記憶にないのですが」
声「よくしゃべる女だ」
み「怖いからに決まってるでしょ。
悪い冗談は、止めて下さい。
お坊さん、呼んできますよ。
叱られますからね」

み「か、関係のない善良な市民を脅かしたりして」
声「関係ないだと?
おまえは、この世で、たった一人……。
わたしと関係のある人間だ」
み「なんでですかー。
心当たりありませんけど」

み「えー、そうですとも。
これっぽっちも」
声「まだ、そんなことを言うか。
おまえは、わたしを殺したではないか」
み「そんなー。
わたしはそんな重罪は、犯しておりません。
いえ、決して清廉潔白とは申しません。
確かに、500円玉を拾って自分のものにしたことはあります」
