
み「ヒイラギ?
ヒイラギって、こんなにデカくなんの!」
ハ「ヒイラギっちゅうたら……。
節分に、イワシの頭、刺すやつちゃうか?」
み「そんな風習もあるみたいだね。
新潟は、まったくないけど。
でも、何でヒイラギとイワシなの?
ちょっと、調べて」
ハ「えーっとな。
鬼が、焼いたイワシの臭いを嫌うからやて。
それに、葉っぱの尖ったヒイラギを付けて……。
鬼が入ってけえへんようにちゅうマジナイやな」

み「確かに、この葉は痛そうだ。
でも、焼いたイワシの臭いって……。
なんか、吸血鬼のニンニクと似てるね。
何で、鬼はイワシが嫌いなの?」
ハ「煙が嫌いみたいやな。
イワシは脂が載ってるよって……。
煙が盛大に出るっちゅうわけや」
み「それは、焼いてるときだろ。
戸口にぶら下げた後は、煙なんか出ないじゃん」
ハ「残り香があるんちゃうか」
み「鬼が、そんなに敏感か?
ま、いいや。
しかし、このヒイラギなら……。
イワシの頭、10,000匹くらい刺せそうだね」

み「樹齢推定、500年ってことは……。
1520年くらいってこと?
何時代?」
ハ「室町時代やな。
1520年やと、織田信長も生まれてへんわ」
み「以来、500年。
よく、伐られなかったもんだね。
てことはつまり……。
そのころから、ここが庭園だったってこと?」
ハ「待ったれや。
今、調べたる。
えーっとな。
お、Wikiにあったで(出典)。
+++
御薬園の起こりは、室町時代に霊泉の湧きだしたこの地に、永享4年(1432年)、蘆名盛久が別荘を建てたのがはじまりといわれている。
+++
やて」
み「なるほど。
霊泉ってのは、さっき見た湧き水だね。
今も、まったく枯れてないわけだ」
ハ「盆地やからな。
山からの雪解け水が集まって来んのやろ」
み「それが、ここらから湧いてたってことか。
確かに、原っぱの真ん中から水が湧いてたら……。
霊泉に見えたろうね」

み「これはまた、ずいぶんと斜めった木だな」

み「コウヤマキか。
しかし、何で傾いたかね。
雪が押したわけじゃないよな」

み「隣のモミは、反対側に傾いでるし。
やっぱ、台風とかかな。
根が半分切れかかったけど、なんとか堪えたって感じかも」
ハ「台風のニュースで、倒れた街路樹、よー見るな。
みんな伐採されとるみたいやけど……。
そのまま起こせば生きるんちゃうか?」
み「横倒しになったのは無理だよ」
ハ「なんでや?」
み「横倒しになったってことは……。
倒れた方向と反対側の根は、みんな切れてるってことでしょ。
起こしたって助からないって」
ハ「なるほどな」

み「こんなとこに植えられた木は幸せだよね」
ハ「天寿を全うできるやろな」
み「それも、何百年なんだからね」

み「げ。
やっぱり、鯉がいるんだ。
カモなんかもいるの!
もうすぐ、6月だよ。
何で、北に帰らないわけ?」
ハ「餌、貰えるからやろ」
み「志が低い!」

ハ「ほれ、おったで」
み「志の低い輩どもめ。
でも、池の鯉を見ると……。
小学校の中庭の鯉を思い出すな。
男子が放りこんだコオロギを、バックバク食ってた」
ハ「殺伐たる思い出やな」

ハ「ほれ。
蓮の葉があったで」
み「ん?
これは、蓮じゃないじゃん。
ツワブキの葉だよ」
ハ「与謝野晶子が見まごうたか?」
み「そんなわけないだろ。
歌人や俳人は、植物に詳しいからね」
ハ「せやけど、似た水草やないけ」
み「ツワブキは水草じゃないって。
これは、地べたから生えてるの。
うちにもあるよ。
隣との境のブロック塀ぎわにね。
あんなところに植えたとは思えないから……。
鳥の落とし物かな。
砂地だけど、毎年、晩秋に黄色い花を咲かせてくれてる」

↑わが家のツワブキ(2023年11月26日撮影)。
み「宿根草なんだけど、常緑でね。
冬は、雪の下でぺちゃんこになってる。
でも、雪が解けると、葉がむっくり起きあがってくるんだ」
ハ「健気やな」
み「植物はみんなそう。
自分で動けないんだからね」
ハ「“置かれた場所で咲きなさい”ちゅうやつやな」
み「運命は……。
鳥がどこでうんこするかにかかってる。
まさに、運を天に任せるだね」
ハ「いらん落ち、付けんでええわ」

み「おー、ここも綺麗な水が流れてる。
これも、猪苗代湖から来てんのかな?
ちょっと、ネット見て」
ハ「どうやら、湧き水があるみたいやで」
み「こんな水量の?
凄いな。
でも、湧き水でもなきゃ……。
こういう施設、やってられないよね。
水道水で水やりしてたら……。
水道代、どんだけかかるのって話」

ハ「ここもビューポイントやな」

み「さっきも言ったけど……。
こういう人口庭園には、建物があった方がいいよね」

ハ「魚はおらんみたいやな」
み「観光地の池だと、鯉とかが寄ってくるよね。
餌、もらえるかと思って」
ハ「この池やったら、観光客からもらう餌だけやと食うていけんやろな」
み「観光客、そんなに来なさそうだからね」

み「水面に落ちる木漏れ日。
庭園は、水があると違うよね。
枯山水は、手入れは楽なんだろうけど……。
やっぱり物足りない」
ハ「浅いとこは陽があたるよって……。
苔が生えとるわな。
池掃除、定期的にせなあかんで」
み「予算が付くかねー」

み「おー、ツワブキの群落だ。
斜面ってのがいいよね。
一斉に花が咲いたら見事だろうな」

み「なんか、食べられそうな芽が出てるな。
何だろ?」
ハ「食うてみい」
み「生で食えるか。
食べるとしたら、天ぷらだな」

み「この木は、1回、幹が折れてるね。
その下から吹いた芽が、再び主幹になったわけだ。
落雷かな」

み「立派な大木になってる」
ハ「なんちゅう木や?」
み「樹名板がないとわからん」

み「あ、こっちにあった。
エゾエノキ。
普通のエノキじゃないんだ。
エノキの葉って、有名な蝶の幼虫が食べるんだよ。
知ってた?」
ハ「知らんがな」
み「日本の国蝶ですよ。
オオムラサキ。
たぶん、見たことない。
一度、見てみたいよね
飛んでるとこ」