繁忙期が近づく中……。
困り果てた千穂は、由美の叔母である律子に相談した。
千穂と律子は、高校の同級生だったのだ。
仲の良い2人組という条件を聞いて、すぐに律子の脳裏に浮かんだのが……。
由美と美弥子だった。
そんなことから、思いがけず、千葉の民宿でのアルバイトが始まったのだった。
盛夏の時期は、ほんとうに目が回るほどの忙しさだった。
しかし、土用波が立つようになると、さすがに客足も引いてきた。
仕事に慣れたということもあるのだろうが……。
2人では、時間を持て余す日も出てきた。
そんな折りだった。
なんと、駆け落ちしていた従業員が、シンガポールから戻ってきたのだ。
その事情を泣きながら千穂に訴える従業員の声が、隣の部屋から聞こえてきた。
笑い話と言ってしまったら、従業員に可愛そうだろう。
原因は、彼の浮気なのだが……。
相手がなんと、地元のニューハーフだったと云う。
見た目は、そんじょそこらの女より、ずっと綺麗だったそうだ。
男だとわかったのは、初めて見たとき、そのニューハーフが裸だったから。
2人だけの愛の巣であるはずの部屋に帰ってきたとき……。
彼は、1人ではなかった。
2人とも、裸だった。
見知らぬひとりは、小麦色の肌をした少女のようだった。
立っていたその初対面の相手と、まともに目が合った。
そして、その相手の脚元にひざまずいている彼とも、目が合った。
彼は、ただひざまずいているだけではなかった。
なんと、小麦色の娘の股間の一物を咥えていたのだ。
見たシーンの衝撃と、男に男を取られたという悔しさで……。
そのまま部屋を飛び出し、飛行機に飛び乗ったと云う。
そんなわけで、由美と美弥子のリゾートバイトは、あっけなく終わりを告げたのだった。
千穂からは、規定のバイト料に上乗せした手当も貰った。
断ろうとしたが、千穂は聞かなかった。
好意として、ありがたく頂戴することにした。
東京に帰るときは、千穂と涼太も駅まで送りに来てくれた。
涼太が泣き出してしまい、思わぬ愁嘆場となってしまった。
来年は、宿泊客として来よう。
帰りの車中で、由美とそんな話をした。
困り果てた千穂は、由美の叔母である律子に相談した。
千穂と律子は、高校の同級生だったのだ。
仲の良い2人組という条件を聞いて、すぐに律子の脳裏に浮かんだのが……。
由美と美弥子だった。
そんなことから、思いがけず、千葉の民宿でのアルバイトが始まったのだった。
盛夏の時期は、ほんとうに目が回るほどの忙しさだった。
しかし、土用波が立つようになると、さすがに客足も引いてきた。
仕事に慣れたということもあるのだろうが……。
2人では、時間を持て余す日も出てきた。
そんな折りだった。
なんと、駆け落ちしていた従業員が、シンガポールから戻ってきたのだ。
その事情を泣きながら千穂に訴える従業員の声が、隣の部屋から聞こえてきた。
笑い話と言ってしまったら、従業員に可愛そうだろう。
原因は、彼の浮気なのだが……。
相手がなんと、地元のニューハーフだったと云う。
見た目は、そんじょそこらの女より、ずっと綺麗だったそうだ。
男だとわかったのは、初めて見たとき、そのニューハーフが裸だったから。
2人だけの愛の巣であるはずの部屋に帰ってきたとき……。
彼は、1人ではなかった。
2人とも、裸だった。
見知らぬひとりは、小麦色の肌をした少女のようだった。
立っていたその初対面の相手と、まともに目が合った。
そして、その相手の脚元にひざまずいている彼とも、目が合った。
彼は、ただひざまずいているだけではなかった。
なんと、小麦色の娘の股間の一物を咥えていたのだ。
見たシーンの衝撃と、男に男を取られたという悔しさで……。
そのまま部屋を飛び出し、飛行機に飛び乗ったと云う。
そんなわけで、由美と美弥子のリゾートバイトは、あっけなく終わりを告げたのだった。
千穂からは、規定のバイト料に上乗せした手当も貰った。
断ろうとしたが、千穂は聞かなかった。
好意として、ありがたく頂戴することにした。
東京に帰るときは、千穂と涼太も駅まで送りに来てくれた。
涼太が泣き出してしまい、思わぬ愁嘆場となってしまった。
来年は、宿泊客として来よう。
帰りの車中で、由美とそんな話をした。
■
千葉の民宿でのアルバイト生活は、ひょんなことから終わりを告げた。
千穂が経営する民宿に美弥子たちが雇われる原因を作ったのは、前任の従業員だった。
高校時代から千穂の民宿でアルバイトをしていた子で、卒業後、そのまま就職したと云う。
身を惜しまず、コマネズミのように働いてくれたそうだ。
客扱いも上手く、気は利くし、地元の漁師にも可愛がられ、新鮮な魚の調達にも長けていた。
千穂も、その子にすっかり頼り切っていたという。
その従業員が、突然、駆け落ちしてしまったのだ。
相手は、海で知り合った東京のサラリーマン。
しばらくは、東京と千葉で、中距離恋愛を続けていたそうだ。
しかし、若い身空には、その程度の距離ももどかしかったようだ。
そんなおり、彼の方に急な転勤が決まってしまった。
赴任地は、なんとシンガポール。
サーフィンが趣味の彼は、前々からシンガポール支店への転勤希望を出してあったのだと云う。
シンガポールと千葉では、ほんとの遠距離恋愛になってしまう。
飛行機で、8時間近くかかるのだ。
で、その従業員の選んだ道が……。
駆け落ちだった。
実家と千穂の宿に置き手紙を残して、忽然と姿を消してしまったそうだ。
繁忙期を前に困った千穂は、代わりのアルバイトを雇ったのだが……。
長続きする子はいなかった。
改めて、前任の従業員の仕事量に感服したと云う。
アルバイトが1人では、とてもこなせない仕事だとわかった。
それなら、アルバイトを2人雇うしかないのだが……。
問題があった。
アルバイトにあてがう部屋だ。
すでに宿では、この夏の予約が一杯に入っていた。
すなわち、前任の従業員が使っていた狭い部屋に、2人で住みこんでもらうことになるのだ。
求人の広告を見て電話してきた応募者も、この条件を聞くと、ことごとく電話を切ってしまったと云う。
無理もない。
見ず知らずの相手と、いきなり相部屋で暮らすことになるのだから。
千葉の民宿でのアルバイト生活は、ひょんなことから終わりを告げた。
千穂が経営する民宿に美弥子たちが雇われる原因を作ったのは、前任の従業員だった。
高校時代から千穂の民宿でアルバイトをしていた子で、卒業後、そのまま就職したと云う。
身を惜しまず、コマネズミのように働いてくれたそうだ。
客扱いも上手く、気は利くし、地元の漁師にも可愛がられ、新鮮な魚の調達にも長けていた。
千穂も、その子にすっかり頼り切っていたという。
その従業員が、突然、駆け落ちしてしまったのだ。
相手は、海で知り合った東京のサラリーマン。
しばらくは、東京と千葉で、中距離恋愛を続けていたそうだ。
しかし、若い身空には、その程度の距離ももどかしかったようだ。
そんなおり、彼の方に急な転勤が決まってしまった。
赴任地は、なんとシンガポール。
サーフィンが趣味の彼は、前々からシンガポール支店への転勤希望を出してあったのだと云う。
シンガポールと千葉では、ほんとの遠距離恋愛になってしまう。
飛行機で、8時間近くかかるのだ。
で、その従業員の選んだ道が……。
駆け落ちだった。
実家と千穂の宿に置き手紙を残して、忽然と姿を消してしまったそうだ。
繁忙期を前に困った千穂は、代わりのアルバイトを雇ったのだが……。
長続きする子はいなかった。
改めて、前任の従業員の仕事量に感服したと云う。
アルバイトが1人では、とてもこなせない仕事だとわかった。
それなら、アルバイトを2人雇うしかないのだが……。
問題があった。
アルバイトにあてがう部屋だ。
すでに宿では、この夏の予約が一杯に入っていた。
すなわち、前任の従業員が使っていた狭い部屋に、2人で住みこんでもらうことになるのだ。
求人の広告を見て電話してきた応募者も、この条件を聞くと、ことごとく電話を切ってしまったと云う。
無理もない。
見ず知らずの相手と、いきなり相部屋で暮らすことになるのだから。