Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
カテゴリ:由美と美弥子 > 2201~2300
 美弥子は、出来るだけ淡々とした仕草で、着ているものを脱いでいった。
 まるで、バスルームの脱衣室での仕草だった。
 しかしそこは、脱衣のための部屋ではなく……。
 リビングルームだった。
 着衣を1枚剥ぐごとに、はらわたが捩られるような興奮を覚えた。
 焦げ茶色の革張りのソファーに、水色のブラが投げ出された。
 その色彩のコントラストを目にしたとき……。
 美弥子は、すでにスイッチが入ってしまっていることを、認めないわけにはいかなかった。
 大人しいオナニーだけでは、この場は納められない。
 美弥子は、ショーツ1枚の姿で、壁に造りつけられた姿見の前に立った。

 この居室の以前の住人は、老いた女性ピアニストだったと云う。
 認知症が進んだ女性は、老人ホームに移った。
 もう、この部屋での一人住まいには戻れない症状だった。
 女性の家族は、高額な老人ホームの入居費用を賄うため、このマンションを売りに出したのだ。
 それを購入したのが、美弥子の父だった。
 ピアニストは潔癖症だったようで、部屋は綺麗に使われていた。
 水回りなどは新しくしたが、居室はほぼそのままだった。

 生涯独身だったピアニストは、ナルシストだったのかも知れない。
 至る所に、鏡が設えられていた。
 もちろん、ステージドレスを着た自分を映すこともあっただろうが……。
 美弥子の脳裏には、ピアニストの別の姿が映っていた。
 この鏡の前に立つピアニストは、全裸だったのではないかと。
 そして、裸の自分を映すだけでは納まらなかったはずだと。
 彼女は、細く器用な指先を操り、この鏡の前で手淫したに違いないのだ。

 細長い姿見は、美弥子の全身を映していた。
 小さな頭。
 砲弾のごとく突き出た乳房。
 鼓のように括れる体幹。
 そして、豊かに広がる腰。
 そこだけが、布地で覆われていた。
 どこから見ても女性のフォルムだったが、一点だけ違和感があった。
 今の美弥子の姿を、誰が見たとしても……。
 おそらくはその一点に、視線が奪われるだろう。
 それは、布地の中心部にあった。
 布地が膨れているのだ。
 むろん、膨らみは、パンティを穿いたニューハーフほどではない。
 美弥子の腰を覆うのは、股上の浅いショーツだった。
 ニューハーフが勃起したら、ウェストから陰茎が突き出てしまうだろう。
 しかし、美弥子の膨らみは、ショーツ中央に納まっていた。
由美と美弥子 2299目次由美と美弥子 2301

 さて。
 バイト代を手にした2人は、そのお金で、2人だけの旅行をするつもりでいた。
 しかし、思いのほかバイトが長引いてしまったせいで、夏休みの残りも、わずかとなってしまっていた。
 宿題は、バイト前にあらかた済ませていたのだが、まだ2,3の課題は残っていた。
 それを仕上げることを考えたら、これから旅行を計画するのは難しいと判断するほかはなかった。

 そんなおり、由美の実家の方で不幸があった。
 といっても、亡くなったのは由美の血縁ではない。
 マンションの隣の居室の住人だという。
 子供のいない老夫婦だったが、そのご主人の方が、突然の心筋梗塞で帰らぬ人となったのだ。
 その夫婦には、由美は子供のころから可愛がられていたという。
 夏休み中でもあり、葬儀に出ないわけにはいかない。
 というわけで、急遽由美は、2度目の帰省をすることになってしまった。

 美弥子は、ひとりのマンションで机に向かい……。
 夏を惜しむ蝉の声を聞きながら、課題の仕上げをしていた。
 息抜きに出たベランダから見あげる入道雲も、心なしか秋めいて見えた。
 初めて過ごす東京の夏が、終わろうとしていた。
 北陸に育った美弥子にとって、夏の終わりは、切ない季節であった。
 光溢れた日々が終わり、やがて真っ白な冬がやって来る。
 その予兆を、鳴き疲れた蝉の声や入道雲が告げていた。

 美弥子は、ベランダから部屋に戻った。
 しかし、そのまま机の前に座る気が起きなかった。
 去って行く夏への愛しさで、胸が掴まれるように痛んだ。
 悪い予感がした。
 こういう気分になった自分は、必ず暴走する。
 しかも、そういう危惧が、むしろその気分を助長させてしまっている。
 こんなときは、手早く自分を慰めて、この場を納めなければならない。
 慰めるというのは……。
 むろん、性欲のことだ。
 絶頂と共に、負の気分を吹き飛ばすのだ。
 そしたら再び、机に向かおう。
由美と美弥子 2298目次由美と美弥子 2300

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