男の言葉は的を得ていた。
秘裂から槍が引き抜かれた後も身体のほてりは治まるどころか、逆にひどくなり「熱い、熱い」と訴え続け、観衆からも一目で分かるほど息遣いが荒くなっていた。
さらに、陰部の痒みは尋常なものではなく、もし今磔台に拘束されていなければ体裁構うことなく掻きむしりたいほどであった。
全裸で腰をもじもじさせ懸命に痒みに耐えるありさ姫の姿が、黒岡たちの偏執じみた加虐心をひときわ煽った。
ありさ姫は苦悶の表情を浮かばせ、その白い肌には珠のような冷汗を滲ませていた。
「あぁ……あっ、あっ……ああっ……」
黒岡は床机から立ち上がり磔台近くまで歩み寄ると、痒みに耐えるありさ姫にわざと大声で尋ねた。
「姫よ、もしかしていづこか痒いのか?」
「ううっ……うぐぐっ……」
ありさ姫は憤怒と恨みの形相で黒岡を睨みつけた。
「いづこが痒いのか言ってみよ」
「くっ…………」
「首か? 背中か? 痒いところを言ってみよ。処刑中ではあるが姫のことなれば格別に役人に命じて掻いてやっても良きぞ」
「いづこも痒くなどなしな」
「ふふふ、本当にそうかのぅ? あまりに腰をくねらせるものなれば女陰でも痒くなってきしやと思ったがのぅ。違っておったか。わはははは~」
「うううっ……」
やがて媚薬はさらなる効果を発揮し始めた。
ありさの額にあぶら汗が光る。
「ううっ……か、かゆい……」
「ほほう、ついに痒いと申したな? もう我慢しきれなくなってきたか。姫、もう一度尋ぬ。いづこが痒いのじゃ?」
「くっ……さることは申せぬ……」
「正直に言ってみよ。女陰ならざるや?」
「ううう……うぐっ……か、かゆい……」
ありさ姫の腰の振り方が先程より激しくなってきた。
もう我慢の限界なのだろう。
「ひぃ~~~!! か、かゆい……!! ううう~~~~~~~!!」
「はっはっは~、かなり薬が効きて来たようじゃのぅ。ありさ姫、女陰が痒くて堪らなくなってきたのじゃろう?」
「ああっ……いったいあの壷に……あの壷にいかなる薬を入れしや……?」
「それは良き質問じゃ。壷の中の薬とは、わずか塗るのみで激しき痒みをもよおし、やがては男が欲しくて堪らなくなる薬じゃ。わははははは~~~」
「お、おのれ! 黒岡めぇ……卑怯なる真似を!」
「ほざけ! 恨むならば無能なうぬの父を恨むべし!」
「それは聞き捨てならぬ言葉! 父の
「さして大口を叩いていらるるもあとわずかじゃ。まもなく『女陰を擦って欲しき』と泣きて頼むじゃろうて。ほえ面が楽しみじゃあ! がははは~!」
「くっ! なんと無礼な! 卑劣なる男め!」
散々辱めの言葉を並べ立てた黒岡は、すたすたと元の床机のある方へと戻っていった。
ありさ姫の身体に媚薬による新たな変化が現れ始めていた。
ほてりが更にひどく燃えるように熱くなり、更には花芯がびっしょりと濡れそぼり、痒みと相まって肉壷を掻き毟りたいような心境に陥っていた。
それでもありさ姫は歯を食いしばって必死に耐えた。
誇り高き自尊心がありさ姫を懸命に耐えさせたのだった。
それでも激しいほてりと痒み、それに強い性欲は怒涛のように押し寄せありさ姫を苦しめた。
「うううっ……くぅっ……! あ、熱い! か、かゆい! ひぃ! うぐぐぐぐぐっ……!!」
その頃、柵の向こうが興奮の坩堝と化していた。
ありさ姫のあられもない姿に鼻血を垂らしてぶっ倒れる若者から、大勢の前だというのに褌の紐をほどき怒張した肉竿をしこしこと擦る者まで現る始末であった。
「うわ! 汚ねい! こっち向いて擦るなよ!」
「こらぁ! おらにぶっかけるとぶっ殺すぞ!」
大笑いする者、嘲笑する者、眉をひそめる者、逃げていく者……。
ぴんと張りつめた緊張の糸がほんの一瞬だがぷつりと切れ、刑場とは思えないような賑やかな空気が流れた。
だがそんな空気も、ありさ姫がもらす悲痛な声にすぐにかき消されてしまった。
観衆の目は再びありさ姫に注がれた。
「痒みと疼きが続くとどうなるんじゃ?」
「んだな、おらにはよく分からんが、狂い死にするんじゃねえべか?」
「そうか。かわいそうになあ」
「あんなきれいなお姫様に『べっちょ掻いてくれ』と頼まれたら、おら何をおいても絶対にえぐよ」
「わっはっはっは~、そりゃ、おらも同じだべ」
「おらぁ、あのお姫様がだんだん哀れに思えてきた……」
「んだなこというと役人にしょっ引がれるぞ」
「だけど何で今、槍責め休んでるんだんべい?」
「挿し込まないで放置しておく方がかえって堪えるからではねえべか」
そんな観衆のざわめきをよそに槍責めが続行されようとしたとき、再び黒岡が立ち上がった。
「おい、余にその槍を貸せ」
「はっ? ははぁ!」
執行役人は思いも寄らない城主からの下知に一瞬戸惑いを見せたが、すぐさま張形の着いた槍を黒岡に手渡した。
現在槍を操っている執行役人に、待機中の役人が話しかけた。
「力を入れ過ぎて姫を殺めるでないぞ。『時をかけてゆっくりといたぶるものとし、あやまって臓腑を突き破ることなきように』との親方様からのご命令じゃからのぅ」
「承知しておるわ。間違いて殺めてしまえば元も子もないからのぅ。姫君にはじっくりと愉しんでもらわねばのぅ」
「それにしてもかかる美しい姫君の女陰を、張形槍で突き回すことになるとは夢にも思わざりきな。それがしも執行役人のお役目を頂戴して久しきが、このようなる刑は初めてじゃ」
「それがしとても同じ。血生臭い刑よりずっとありがたいお役目じゃ」
「なお望めるならば我が肉槍を挿し込みたいものじゃがのぅ」
「しっ、声が大きいぞ。殿の耳に入っては拙いぞ」
陶器のような白い肌、ほどよい大きさの乳房、見事にくびれた腰の線、適度な肉付きの太股、さらにはきれいに剃り上げられた小高い恥丘、いずれをとっても非の打ち所がないありさ姫の麗しき肉体。
それだけでも十分に衆目に値するのだが、そのうえ毛を失った生々しい柔肉の割れ目に穂先が食い込む光景を、観衆は食い入るように見つめた。
「うう……」
刑の執行が進むにつれて、ありさ姫の表情にわずかな変化が訪れていた。
最初は破瓜の痛みもあって顔を歪ませていたありさ姫であったが、媚薬は治癒効果もあるのか次第に苦しそうな表情は消え去り、頬にうっすらと薄紅が差していた。
かすかではあるが肉体の奥からふつふつと沸き立つ不思議な快感が、徐々にありさ姫を支配し始めていた。
(あぁ……いかで……? 身体が燃ゆるように熱き……。それにこのむず痒いようなる感覚……。はて、これはいったいどうしたというのじゃ……?)
身体の痒みとほてりは、張形に塗り込められた媚薬が次第に効果を現したことによるものであったが、そもそも媚薬の効果など知らないありさ姫は身体の異変が媚薬によるものだとは知る由もなかった。
次第に芽生えくる肉の歓びに疑念を抱きつつも、その気配を他人に悟られないようにと懸命に耐えていた。
「あぁっ……」
張形を介して膣粘膜に塗り込められた媚薬は体内へと沁みこんでいき、ありさ姫の肉体を歓喜の渦中へと巻き込んでいった。
「あっ……あぁ、熱い……」
ありさ姫の唇から最初にこぼれ落ちた言葉は、身体の熱さを訴える言葉だった。
少量塗布するだけでも十分に効果を発揮する媚薬を、秘部内外に隈なく塗り込められたありさ姫が平然としていられるはずがない。
身体が燃えるようにほてり出すばかりか、秘部が激しく痒くなる特徴があった。
その兆候は早くも現れ、熱さを訴えるばかりか、次第に息遣いも荒くなっていた。
執行役人が突きこむ槍に対して、ありさ姫はわずかだが腰を震わせうめきをもらした。
刑の執行を見守っていた黒岡源内は淫靡な微笑を浮かべたあと、執行役人に対して突如刑の中断を命じた。
「しばし槍責めをやめい!」
「ははっ!」
ありさ姫を責めていた執行役人の動きがぴたりと止まり、女陰に挿し込まれていた槍はそっと引き抜かれた。
「そろそろ薬が効きて来たようじゃな。痒くて堪らなくなると聞き及ぶよし、槍使いは一休みして眺めてみるもおかしぞ。皆の者、姫がよがり狂う様を見物しようではないか。そのうち槍で女陰を挿してくれとすがるはずなれば。がははははは~」
「ははっ! 御意!」
執行役人は槍を抜いた後、後方に下がりありさ姫を見上げた。
その光景はまるでもぎたての水蜜桃の割れ目から、紅いうしおがぽたりぽたりとしたたるようで、不思議な艶やかさが漂っていた。
奇抜で淫猥な前代未聞の処刑方法に観衆はただ呆然とするばかりであった。
中には、竹の柵にしがみつき目を爛々と輝かせて食い入るように見つめている男もいた。
「すげえ・・・こんなすごいものを見せられたら、おれ、こんにゃ悶々として眠れにゃいよ」
「ところで刑はもう終わったのか? 槍のお役人さんが休んでいるが」
「おい! お姫様を見てみろ! なんかずうたいをもじもじさせ始めたぞ。いったいどうしたんだんべい?」
浪人風の男が村人たちの疑問に答えた。
「あれは媚薬のせいじゃ」
「ん? 媚薬だと!? お武家様、そりゃ本当か!? 道理でお姫様の様子が変だと思っただぁ」
「それも並みの媚薬ではなさそうじゃ。この先、目を放すではないぞ。とんでもないことになりそうじゃ。がっはっはっ」