■13.再会
真っ黒だった大地にトラックの影が薄っすらと浮かびあがり、やがてくっきりと長い影を映し出してきた。
「感じる?」
「ああ、感じる」
二人は、お互いに見つめ合った。
「あなたはどう?」
「間違いないと思う」
「そう……・間違いだったって言ってほしかった」
「そう言いたいが無理だ」
「あなたの言う経験とやらは間違っていたようね」
「面目ない。でも確かに言えることは、ぼくらが奴らを本気で怒らせてしまったことだけだな」
二人は跳ね起きた。
遥か向こうに砂粒が土埃を上げ、こちらへ向かっているのが見えた。
彼らは夜通し二人を追いかけていたのだ。
「ヴェロニカ、ひとつ聞いていいかい?」
「何?」
「その格好で何をするつもりなんだい?」
彼女の裸体は朝日を浴びて赤く輝き、その姿は、ギリシャ神話に出てくる芸術と戦いの神、アテナを思い出させた。
「いつまで見ているの! その武器では彼らは倒せないはずよ!」
裸の彼を一瞥した彼女はトラックから銃を取り出すと彼に放り投げた。
「そうだな、この武器は君にしか通用しなかった」
受け取った彼は苦笑しながら答えた。
「その武器は、もう私にも通用しないわ。奥様のみ有効よ」
見慣れたフォトジャーナリストの衣服に着替えた彼女は笑顔で答えた。
「荷台で応戦する。君のハンドルさばきは昨日、十分堪能したのでリムジン並みで頼む」
「つべこべ言わず、早く乗りなさいよ! 彼らは待ってくれないわ!」
砂粒だったのが車と分かる距離まで迫っていた。
この時、昨日での戦闘でトラックの燃料タンクに流れ弾が当たっていたことを二人は知らなかった。
「もう少し行けば、あなたのお仲間が迎えに来られる地点よ!」
一方、カリフォルニア空軍基地のリーパー無人偵察機パイロットと、センサー員が並んで見つめていた。
「彼らか? VIP並みの待遇で掩護しろ、って言われている人物なのは」
「ああ、そうだ。女性一人と海兵隊少尉一人だ」
昨日まで偵察を行っていたRQ―1プレデターは燃料切れで帰還し、新たに重武装のMQ―9リーパーが派遣されていた。
「彼らの後方で追いかけているのが例の奴らか?」
「そうだ。彼らは我が軍の前線基地に攻勢を仕掛けるはずだったものを二人におびき寄せられて出てきた間抜けな連中だ」
「いい仕事が出来そうだな」
「ああ、家に帰れば美味いビールが飲めそうだ」
「攻撃の高度に降下する」
「了解、降下完了後、射程距離に達し次第、攻撃を開始する」
何気なく燃料計を見たヴェロニカは青ざめた。計算では会合地点までは十分足りる量だったはずが、今見ると快適なドライブはそう長くできないことを表していた。
「デビッド! 悪いニュースよ!」
荷台から運転席のある方へにじり寄った彼は尋ねた。
「何だい? その悪いニュースっていうのは」
「燃料が持たない!」
「予備は?!」
「無いわ!」
彼は生唾を飲み込んだ。
「あと、どのくらい持つ?!」
聞き終えると同時にエンジン音が変化した。
「言わなくていい」
「荷台のコンテナがあるのが分かる?!」
「ああ、見える。でも、今はコンテナどころの騒ぎではない状況だと思うが!」
「開けて!」
彼は村から脱出した際、その存在を知ってはいたが何の注意も払っていなかった。
彼はロシア語で書かれているコンテナに、にじり寄って扉を開いた。
「これは一体……」
彼がコンテナの中を見て、驚きと恐怖を感じた。高性能爆薬や自動小銃、弾薬そしてRPGが納められていたからだ。
「なぜ、黙っていた! 昨日の戦闘でこれに弾が当たっていたらどうなっていたか、君にも分かるはずだ!」
「分かっていたわ。あなたの運にかけたの!」
平然と答えた彼女だったが燃料計の警告ランプが点いたのを見て恐怖を感じた。
「その中から、必要な物だけ選んで! もうすぐ歩かなければならないわ!」
「君に言われなくても、そうしている! この車がもう疲れたと訴え始めているからな!」
彼女はニヤリと笑い、彼はこんな状況でもジョークを言っている。
私たちは生き残れると思った。
二人の乗るピックアップトラックは徐々に速度が落ちてきた。
彼は後方を確認するとみるみる敵の車が迫ってきているのが見えた。
「ヴェロニカ! 車を捨て逃げるぞ!」
「了解したわ!」
彼はRPG―7を担ぐと敵の乗る車に照準を合わせ、引き金を引いた。
「ズバッーン」
弾頭は敵の車に一直線に向かって飛んで行った。
当たると思った瞬間、急ハンドルを切った車の集団は、それをやりすごすと急停車した。
荷台から飛び降りた彼は予備の弾頭をRPGに装てんすると再度、発射した。
弾頭は車の屋根をかすめ、上空に向かって飛んで行ってしまった。
「下手ね!」
「すまいない。扱いなれてなくてね。ただ、これで時間稼ぎにはなる」
「そうね。彼らがこれを持っているとは思わなかったから、警戒して近寄って来なくなるわね、逃げましょ!」
運転席からバックパックを二つ取り出すと彼に渡し、ひとつは自分で背負った。
「これに3日分の食料と1週間分の水が入っているわ。大事に使って!」
「用意周到だな。まるで、こうなることを予想していたみたいだな!」
「心配性なだけよ!」
二人は駆け出した。
一方、カリフォルニア空軍基地の二人は慌てていた。
「おい、見たか!」
「ああ、確認した。車を乗り捨て逃げ出すとは聞いていなかったぞ」
「エンジントラブルの様だ。攻撃はまだか?」
「もうすぐだ!」
「早くしろ! 敵に追いつかれるぞ!」
「分かっている! やっている! イージー、イージー、今だ! 発射! 発射!」
リーパーの翼下パイロンに吊るされていた二発のヘルファイア対戦車ミサイルが標的に向かって飛び出した。
デビッドが敵の様子を見るため振り返ると上空から二本の黒い矢のような物が立て続けに降り注ぎ敵の車に突き刺さるのが見え、それと同時に大きな爆発が起きた。
「ズズーン! ズズーン!」
デビッドたちの足元に地鳴りが響いてきた。
車と、乗っていた敵兵たちが土埃と共に空高く舞い上がり、次々に地面に落下し叩き付けられていくのが見えた。
「凄い!」
「どこから来たの?!」
「神の鉄槌さ!」
「神? ……バカ言わないで」
「たぶん、我が軍の偵察機だと思う。ただ、そうすると今までのことはすっかり見られていたわけだな」
「今までのことって……」
「そうさ、偵察機のパイロットに無料のポルノ映像を見せていたということだよ」
「パシッ!」
ニヤリとして答えたデビッドの顔をヴェロニカは平手打ちにした。
「にやけた顔で言わないで! ばか!」
むくれたヴェロニカはデビッドを置いて目的の方角へ歩き出した。
頬をさすりながら、帰還した時、軍の対応がどんなことになるだろうかと、デビッドは不安を感じていた。
敵が壊滅したと二人はすっかり安心していたが土煙の中から爆発から免れた数台の車が飛び出してきた。
「あの岩場に向かって、急げ!」
「すぐに追いつかれるわ!」
「あの岩場の間には車は通れないだろう! そこでチャンスを作る!」
「分かったわ! あなたに任せる!」
一方、偵察機のパイロットとモニター員は無念そうに画面を見つめていた。
「命中して、壊滅したと思っていたが悪運の強い連中だ」
「司令部へ連絡する。会合地点まで二人が無事でたどり着くことを祈るしかないな」
「後、数キロまでの距離が彼らには長く感じるだろうな」
パイロットは帰宅したら飲むことにしていたビールを止め、バーボンにすることにした。
「ヴェロニカ! 敵までの距離を知らせてくれ」
「分かったわ! 何するの?!」
彼は道に面した岩場の間にロシア製の対人地雷MON50を仕掛けていた。
コンテナの中に入っていた爆薬の一つに彼はこれを見つけ2つほど持ってきていたのだ。
彼女が見つめる先で車を乗り捨てた敵兵たちが走り始めていた。
「車を降りて、こちらに向かってきているわ!」
「あと、どの位ここに居られそうか?!」
「ダダダダ―ン、ダダダダ―ン」
「いつも君が答える前に彼らが答えてくれているな!」
「そうね、ある意味で彼らは礼儀正しいわ!」
彼は敵から見つけにくい2か所に設置した。
「これで、数人は片付けられるだろう。ただし、僕たちが彼らをもっと怒らせなければならないと効かないものだけどね」
「私がおとりになれば、目の色変えて追いかけてくるでしょね」
彼女はヘルメットを脱ぐとプラチナブロンドの髪が日に当たりキラキラ輝いて見えた。
目をつむって、感覚を研ぎ澄ましていた。快感が胸から全身へと広がっている。
「ア~~」
顔を起こすと、胸の谷間でプラチナブロンドの髪が揺れているのが見えた。
視線を感じたのかタチアナは顔を上げると瞳をレイラに向けた。
お互いに無言で見つめ合った。
タチアナは瞳から離さず、乳房を口に含むと舌で舐め廻し、反応をうかがった。
「チュッ、チュパッ」
レイラはうっとりする顔を見せると枕に沈んでいった。
その姿に満足したのか、タチアナは再び乳首に目を向けると舌先を使って丹念に転がしていった。
「ア~、アウッ、アウッ,ン~ン」
タチアナはもう一度、彼女の唇や唾液を味わいたいと思い、這い上がると唇を重ねた。
レイラは進んで自らの舌先を突き出すと口へ含んでくれるように眼で懇願し、タチアナはそれに対し自然のように振る舞い、彼女の舌を吸い込んだ。
レイラはタチアナの舌が自分の舌と密着し同化していくような錯覚を覚えていた。
二人は瞼を閉じ何度も唇を重ねては舌を絡ませた。
タチアナはレイラの唇を十分に堪能すると、唇を這わしながら徐々に後ずさりをして恥丘へと下がって行った。
レイラの息遣いがそれと共に激しくなり、両手は枕の端を掴み、タチアナに対して体を委ねているようにも見えた。
タチアナは恥丘から唇を離すと秘部を見つめた。
テーブルの薄暗い中ではわからなかったが、ピンク色に輝く初々しさがまだ残るとてもきれいなプッシーだと思い、愛しさを感じた。
「可愛い」
夢で描いていただけのレイラが、自分に対して、身を預けているこの瞬間をタチアナは幸せをかみしめ、あの日のことを思い出していた。
あの日、社長の自宅に急に呼び出され、いつものことで、気にも留めなかったが、その日に限って“明かりを消して待つように”と、二階の書斎で待たされた。
今までなかった指示を受け、不思議に思っていた矢先、眼下のプールの照明が点き、足元の居間から二人の裸体の女性が出てきたときには、腰が抜けるほど驚いた。
さらに驚いたのは、先頭のエバンス社長の後を追いかける女性が秘かに憧れていたレイラ、その人だったことだ。
うっとりしてレイラの裸体を見つめていたが、やがてある事実に気づいた。
レイラは社長の虜になっているという事実と私に対しての社長からの復讐というメッセージの事実。
そしてレイラは社長の愛人になるのではないかという恐れ。
その事実を知ることによってタチアナは完全に打ちのめされた気分となった。ところが天の助けか、タイに滞在中の社長の夫、バーナード・エバンスの体調が急変し入院をしたということをFAXで知ったことで、胸が熱くなるほどの高揚感を覚えた。
それはそのことによってレイラを恋人に出来る可能性が見えてきたからだ。そんな中、姉のヴェロニカが偶然にもレイラの父親と遭遇し、脱出したという知らせには、飛び上がって喜んだ。
姉は必ずレイラの父親を祖国に連れ戻すことが出来るはずだ。そうすれば、彼女の心は完全に私に向き、夢がかなうと思った。
タチアナは長く伸ばした舌先を器用にとがらすとレイラの熱いトンネルへと挿入した。
「ア~~~~~~~~」
レイラの太腿がタチアナの頭を挟んだ。
タチアナは頭を前後に揺すった。彼女の舌はまるで男性のコックの様に動き、レイラを快感の渦へと突き落とした。
「……・ア~~……・ハア、ハア、アッ…………」
レイラは頭を左右に激しく振り悶絶した。それでもタチアナの頭はレイラの股間から密着し離れようとしなかった。
「アウ、アウ、ア~~、ダメ,も、もうダメ、ゆ、許して……・ウグ、ウグ、ア~~~~」
レイラの腹が波打った。
タチアナは股間から顔を上げるとレイラの表情を確かめてみた。その瞬間、幸せを感じた。
うっとりしてタチアナを見ている彼女の瞳がそこにあったからだ。
タチアナは這いあがると再びレイラに唇を重ねたのち、欲望に耐え切れず、膝をついてレイラの顔に腰を下ろした。
レイラはそれを拒まず、プッシーへと舌先を突き出した。
「ア~~、レイラ~、嬉しい~~」
「ピチャ,ピチャ」
「ア~、ア~、アウ、アウ、ハア、ハア」
ヘッドボードを握りしめ、快感が体を突き抜けるたびにタチアナは仰け反った。
レイラは舌で彼女を喜ばそうとしている自分に気が付き、戸惑いながらも自分を抑えることが出来なかった。
レイラは彼女のプッシーを舐めながら両手は自分の乳房とプッシーを撫でまわしていた。
タチアナは絶頂期を迎え始め、腰を小刻みに激しく揺り動かした。
「ア~、レ、レイラ~、い、いい~、く、くる~…………アッ! アッ…………ア~~~」
愛液がしたたり落ちレイラの顔を濡らした。
レイラは自分のプッシーに指を突き入れた。
「アウ、アウ、アッ、アッ! ハア~~~」
レイラの脚が真っ直ぐ突き出され腰が小刻みに振るえた。
「あなたは私の運命の人、離さない」
タチアナは愛液で濡れたレイラの顔を舐めると唇を重ねた。
敵兵たちが見つめる先にヴェロニカは躍り出た。
「私はここにいるわ!」
突然の彼女の出現に唖然とした敵兵をしり目に逃げ出した。
「ダダダダダダ!」
敵兵たちは一斉に撃ち出した。彼女は左右に銃弾をかわしながら、敵兵たちを徐々に引き離していった。
彼らは一斉に駆け出した。
「ドカン!」
「ギャ―!」
「グワ!」
数人の兵士が吹っ飛び、なぎ倒された。
指向性地雷が反応し爆発、数百個の鉄球が扇状に飛び散り敵兵たちの体を貫いたのだ。
逃げているヴェロニカの顔がにやけた。
仲間の惨状を目にした彼らは我を忘れ猛然と彼女を追いかけはじめた。
「テューリ(3)、ドゥヴァー(2)、アヂ―ン(1)」
彼女は駆けながら、カウントダウンをした。
「ドカン!」
二個目の指向性地雷がさく裂し、再び数人の兵士が吹き飛んだ。
「やったぜ!」
デビッドがこぶしを突き出した。
これにより彼ら二人を追っていた敵兵たちの数が半分ほどに減らされていた。
それでも二人にとっては脅威には違いなく、懸命に逃げ続けた。
「目の前にある丘を目指すぞ! 昇り切ればこちらが有利になる!」
「了解よ!」
敵兵たちは、この時には冷静になり、道のルートを迂回し岩場を駆けはじめた。そう、彼らは山岳民族なのだ。
デビッドの脚は完全に治っておらず、徐々に敵兵たちとの距離が縮まりだした。
「このままだと追いつかれる! 先に行って仲間を連れてきてほしい! ここで応戦する!」
ヴェロニカは彼と敵兵たちを交互に見て苦渋の決断をした。
「分かったわ! 銃と予備の弾倉を渡しておくわ」
「頼んだぞ!」
デビッドは岩場のくぼみに身を隠すと敵兵たちを待ち伏せた。
ヴェロニカは懸命に丘を登りだした。中腹まで登りきると振り返ってみた。デビッドが立てこもる場所へとたどり着こうとするグループの他に、自分の居る方へ目指すグループに分かれていくのが見えた。
自分を追っているグループの先頭にいるのは、まぎれもない、あの司令官だった。彼は生きていた。
予想外な出来事に彼女は焦った。
「ダダダダダダ―ン」
敵兵たちが撃ちながら、間合いを詰めてきていた。
「痛!」
右足のふくらはぎに激痛が走った。銃弾が当たっていた。
倒れ込んだヴェロニカは拳銃を腰から取り出した。
「パン、パン、パン」
拳銃を撃ちながら這うように登りだした。
「ダダダダダダ―ン」
「うぐッ!」
今度は右肩に激痛が走った。彼女はその場から動けなくなった。
(もう、だめだわ……タチアナごめんね)
「ダン、ダン、ダン」
観念し拳銃を自分の頭に向けようとした時、頭上で射撃音が聞こえた。
「ザクッ」
激痛で気を失いかけている目の前に戦闘ブーツが見えた。
もうだめだと思った瞬間、意外な言葉を掛けられた。
「お嬢さん、大丈夫ですか?」
アメリカ兵だった。
彼の顔を見ると彼女は気を失った。
■12.運命の人
「お車の手配はいかがいたしましょう?」
「先ほど連絡し迎えに来ると思いますので結構です。ありがとう。……それからお店にご迷惑をおかけしましたのでこれをどうぞ」
彼女は彼にチップを規定以上渡した。
「これは、これは、ありがとうございます。次のご来店を心からお持ちしております」
いんぎんに礼を述べる彼であったが、美人のあられもない姿を見せてもらった上に、これほどまでのチップを恵んでくれたことを神に感謝した。
レイラは彼女に抱きかかえられるように店を出ると、店の前にリムジンがすでに止まっていた。
目を見張るレイラをよそにタチアナは、ドアを開けて待つ運転手に軽く挨拶すると、なかばレイラを押し込むように乗せ、自らも横に座った。
「どちらまで行かれますか?」
タチアナは行き先を告げたが、そこはレイラの家ではなかった。だが、行き先が自分の家ではないことを咎める気力が今のレイラには残されていなかった。
車内ラジオから心地よい『フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン』が静かに流れていた。
今日も満月、あの日と一緒……。あの青い光は私をどうにかするみたいと流れ去る街の明かりを呆然とレイラは見ていた。
彼女の横顔を見ていたタチアナは右手を伸ばし、レイラの手のひらを握った。
窓から目を離し振り返ったレイラを、タチアナはうっとりして見つめた。
「素敵……」
次第にタチアナにとろけていく自分がいるのが分かった。
レイラは握られている彼女の手を握り返した。
タチアナはゆっくりと彼女の傍へにじり寄って吐息をつき、瞳を見つめた。
見つめ合った二人は次第に顔を近づけ唇を重ねた。
「……どこに行くの?」
唇を離したレイラが尋ねた。
「……私の家。あなたをこのまま返すと私が後悔しそうで我慢できない」
タチアナの手は腿を撫でていた。
「知りあったばかりなのに……」
レイラは彼女の手を上から抑えた。
「もう十分、知っている関係になった……はず」
「でも……」
何も言い返せないレイラだったが気持ちとは裏腹に体は望んでいた。その証拠に押さえていた手は離れタチアナの裾をめくっていた。
自然と互いの腕が交差し腿の付け根をまさぐり始めていた。
後部座席でただならぬ雰囲気を察した運転手はルームミラーを下げると目を見開いた。
(ゲイか? 二人とも美人なのに、もったいない)
フロントガラスにヘッドライトが近づいた。
デビッドは毛布をかぶって寝ている彼女の背中を見つめ思い出していた。
あれはデビッドが倒した敵兵を小屋の隅に片付けた後だった。
予想以上に早く敵の集団が戻ってきたのが見えた。
「いやな予感がする」
「言われなくても、見ればわかるわ」
二人は何事もなかったように、装った。
集団が前途をふさぐように彼らを囲んだ。
「???? ?????? ???(お帰りなさい)」
「????? ??? ?? ???? ?????(もう、帰るのか?)」
中央にいた司令官らしき男はニヤリと笑い、彼女へ問いかけた。
「"???? ?? ?? ?? ?????? ????? ??? ?? ????"(はい、彼に付き添ってもらい、帰ります)
彼はデビッドを見つめると怪訝な顔つきになった。
「???? ?? ?? ??? ?? ????????(お前、部隊の者か?)」
その言葉を合図に周りにいた兵士たちは銃口を彼に向けた。その時だった。ヴェロニカが連れ込まれた家のドアが開き、ふらふらと男が胸を押さえながら歩みだしてきた。
「??? ?? ?? ...(女、女が……)」
男は彼女を指さした後、その場に倒れた。
デビッドに銃口を向けていた兵士たちは一斉に男に目を向けた。
「ダダダダダダ~ン」
引き金を引いていたのはデビッドだった。なぎ倒されていく敵の兵士たち。彼女もそばに倒れた兵士から銃を取り上げると間髪入れず射撃を始めた。デビッドは彼女の射撃の様子を横目で見ていたが、その正確さに舌を巻いていた。
彼らの近くにいた兵士たちを倒すと二人は瞬時に駆け出した。
その時だった、村の中心で叫び声が上がった。
「????? ?? ??? ?? ???? ????!(奴らは、あそこだ!)」
背後で彼らを指さす敵兵が叫んでいた。
遠くにピックアップトラックの屋根の一部が見えてきた。
怒涛のごとく、壁の間を乗り越えて彼らは一斉に二人に向かって追いかけはじめた。
「早く! 早く!」
トラックにいち早くたどり着いたヴェロニカが手招きして叫んでいる。
デビッドは傷の癒えていない体を夢中で引きずり走っていた。
(こんな時に限って銃が重く感じる)
振り向くと彼らの顔が認識できる距離に縮まっていた。
「???? ??? ???? ????!???!???!(奴は、あそこだ! 殺せ! 殺せ!)」
「ダダダダダダ―ン」
敵たちが一斉に撃ち始めた。
「ピューン、ピューン、ピューン」
彼は傍の木の裏に身を隠した。
木の陰にうずくまって身動きが取れない彼を見かねたヴェロニカが、銃を乱射しながら駆け寄ってきた。
「さあ、早くするのよ!」
手を差し伸べるとかれはかぶりを振った。
「俺がここで食い止める、君だけでも逃げてくれ!」
「馬鹿を言わないで! さあ、来て!」
ベルトに手を突っ込むと無理やり引っ張り上げ引きずり始めた。
彼女の異様な力で引きずられた彼は驚き見上げた。
傍らに立つ彼女はジャーナリストではなく、歴戦の兵士をそこに見た。
「車に乗るの?! 乗らないの?!」
腰だめ撃ちをし続ける彼に怒鳴った。
銃弾が二人の間を数多くかすめた。
彼はこの期に及んでいても躊躇していた。
「じれったいわね! 私と奴らのどちらを信じるの?!」
「カン、カン、カン」
リアのアオリに銃弾が突き刺さり始めた。
これ以上、ここに留まると彼に限らず自分までもが命の危険にさらされる。
「家族に会いたくないの?!」
銃弾よりきつい言葉が心に突き刺さった。
「分かった! 荷台に乗って防戦する! 早く出してくれ!」
彼は飛び乗ると身をかがめながら後方に向かって撃ち始めた。
「ダン! ダン! ダン!」
数名の敵が崩れ落ちたのが見えた。
運転席に躍り込んだ彼女はアクセルペダルを踏み込んだ。
ヴェロニカがバックミラーを見ようとしたところ銃弾で粉砕されてしまった。
「デビッド! 平気?!」
頭を伏せながらハンドルを握る彼女は怒鳴った。
後部からの返事がなかった。
ルームミラーを動かし荷台を見ると彼が倒れていた。
「Вот дерьмо!!(くそ!)」
彼女はハンドルをこぶしで叩いた。
「ズズーン」
はるか後方でRPGの爆発した音が響いた。
土埃の中に追手の人影がみるみる小さくなって消えていく中、彼女の瞳から涙がにじみ出ていた。
(ここまで苦労して救出したのに妹になんて言ったらいいの……)
彼女は果てしなく続く荒れた大地の先を呆然と見ながら、気が付けばアクセルペダルを床に着くまで踏み込んで走り続けていた。
どのくらい走り続けていたのだろう。これから、なすべきことを考えていた。
デビッドの死体の始末、アフガンからの脱出、そして今後の身の振り方。
彼らとの暗黙の了解は自ら破った為に戻れないことは明白で、それにもまして彼らから暗殺される恐れを作り出したことに彼女の顔は曇った。
「お嬢さん、まんまと逃げられて何を思いつめているの?」
銃弾によって粉々になったリアウィンドウから身を乗り出し、屈託のない笑顔で彼は尋ねた。
「い、生きていたの?」
「ああ、まだ神様は俺には片道切符をよこす気が無いらしい」
「驚かさないで! あなたを失ったと思っていたところよ!」
「すまなかった、そんなつもりではなかったのだ、お嬢さんの素晴らしい運転で頭を数か所ぶつけ、恥ずかしながら気を失っていたようだ」
「ばか! あなたはそれでも兵士なの?!」
「奴らにつかまっている間に体が訛っていたようだ。君のおかげで少しはましになったつもりだったがまだ完全とは言えなかった。……ところでいつまで俺を荷台に乗せている気なんだい? 彼らからは逃げられたと思うが……」
「ばか!」
彼女は思い切ってブレーキペダルを踏み込んだ。
前のめりになったデビッドの顔を両手で添えるとヴェロニカは口づけをした。思いがけない彼女の行動に目を白黒させていたが、彼女をつき離そうとはしなかった。
彼女の唇の柔らかさを堪能した彼は荷台から降りると背伸びをした。
運転席から飛び降りたヴェロニカは彼に駈け寄ると抱きしめた。
「あなたが死んだと思った後、悲しみでいっぱいになったわ。いつの間にかあなたのことを思い続けていたことが気付いたのよ」
「ありがとう。君がそんなに僕のことを思っていてくれたなんて光栄だよ」
そう言って、彼女の額にキスをした。
日が暮れ始め二人の影が長く延びていた。
「もう間もなく、日が暮れるはずだ、ここで今日は野宿するしかないだろう」
「私もそう思うけど、彼らが心配だわ」
「僕の経験だと、こんなところまで僕たちを追うほど人数を割けないはずだし、夜の間は追ってこないだろう」
「分かったわ、あなたの経験を信じるわ」
「荒野の大地に男女二人きりっていうのも心細いけどね」
「まったくだわ、あなたのようなヘボな兵士が私をガードしてくれることを考えると憂鬱になるわ」
笑顔がこぼれる二人だったがデビッドは真顔になり、彼女に聞いた。
「ところで、先ほどまでの君のことだけど、どこで射撃を習ったの? 素人ではないことは誰の目にも明らかだし、射撃の腕前はプロ級並みだ」
「それを知りたかったら、私と親しい関係を結ぶことね」
「親しい関係って、どんな関係?」
「こういうことよ」
彼女はひとことを言うとシャツの胸を彼に向かって両手で広げた。
「ま、まさか?」
慌てて後ずさりする彼に彼女は詰め寄った。
「そう、その“まさか”よ、明日の命はなくなるかもしれない、そんな時に目の前にいい男が居たらどうすると思うの」
「ぼ、僕には妻子がいる」
「ニエット! 明日死んでしまうのにカッコつける必要はないわ、それにあなたを助けたのは私じゃないの? その私が求めているのに、それを無視するのは男じゃないわ。今、私は生きている実感が欲しいだけなの!」
彼女は被っていたヘルメットを脱ぎ捨てるとプラチナブロンドの髪が広がり、風になびいた。
この時になって彼女の美しさに気づかされた。
彼は吸い寄せられるように近づき抱きしめた。
「ア~、デビッド、もっと強く抱きしめて」
彼は無言で、彼女のはだけている胸に顔を埋めた。
「ア~、この瞬間よ!」
顔を仰け反らし吐息をついた。
彼はシャルワールカミーズ(パキスタンの民族服)を脱ぐと、それを大地に広げ、彼女を横たえた。
彼女に覆いかぶさると無我夢中で口づけをした。
「ア~、デビッド! 早く来て!」
「ハア、ハア、ハア、ハア」
息が荒くなりながら、デビッドは彼女の衣服を脱がせた。
衣服がなくなるに従い、着ていた時には想像できないほど見事なプロポーションの白い裸体が浮かび上がってきた。
「綺麗な体だ。今まで見たことがないほどだよ」
「今夜はこの体はあなたの物よ。あなたの好きにして、そして喜ばして!」
彼は彼女の乳房にむしゃぶりついた。
「そうよ、もっと、強く擦って!」
彼は交互に乳房を擦りしゃぶった。
「ア~、そうよ、そうよ!」
彼は彼女の股間に手を伸ばした。
すでにそこは愛液で満ち溢れていた。
彼女は両足を思い切って開くと彼に訴えた。
「さあ! あなたのたくましい武器で私を攻めて!」
彼はいきり立ったコックを持つと彼女の熱くなって欲しがっているプッシーにあてがい、一気に腰を落とした。
「ア~~~、感じるわ、あなたを感じるわ」
抑圧された環境から解放された彼は野獣の様に彼女を攻め立てていた。
「アウ、アウ、いいわ、いいわ、もっと、もっと! 突いて、突いて~!」
顔を左右に振り、喘ぐ彼女を見下ろしながら、彼も生きている実感に酔いしれていた。
「まだよ! まだよ! もっと、もっと動かして!」
彼の動きが更に早くなった。
「アッ、アッ、も、もうすぐだわ! すぐよ! すぐよ」
彼も絶頂の瀬戸際まで来ていた。
「ヴェロニカ! ウッ! ウッ! アッ! ハッ~」
「アウ、アウ、アウ、来たわ、来たわ、来たわっ、ア~~~~」
彼は彼女の上に崩れ落ちた。
時よりピクリピクリと小さく痙攣する彼女を見ていた彼の武器はプッシーの中で再びたくましくなった。
「ア~、デビッド、凄いわ!」
彼女はデビッドを咥えたまま、デビッドの横へと移動し、やがて彼の上にまたがる姿勢を取った。
「もっと、奥まであなたを感じたい」
彼女は腰を上下に激しく動かし始めた。
液体の出口が目の前に見える。
目と口を閉じて出てくるのを待ち構えた。
しばらくすると、ほとばしる暖かい液体が出てきた。
なんとも言えない感覚が体を貫き、顔に及ばず体全体に暖かい液体を塗りたくった。
(ア~気持ちがいい)
「プッハ、ゴホン、ゴホン」
息が続かなくなり、口を開けた途端に液体が入ってきて、思わずむせて吐き出してしまった。
彼女は液体を全部吐き出せなく、少しは飲み込んでしまったが気に留めていなかった。
それ以上のことを暖かい液体に求めていたからだ。
しかし、求めたのにも関わらず徐々に出る量が少なくなり、しずくが落ちる程度になってしまった。
出口を見ても出る気配が感じられなかった。
(このままだと生殺しだわ、もっと欲しい)
レイラはもっと出るように手を伸ばし触った。冷たい風が入ってきてシャワーカーテンが開かれたのが分かった。
背中に冷え切った肌が押し付けられた。
彼女の脇から手が伸び、シャワーのレバーを調整すると湯気が立ち昇った。
「ア~、気持ちがいい」
「ごめんなさい、調子が悪くて」
「ううん、いいの」
タチアナは彼女の脇から手を伸ばし、ボディーシャンプーとスポンジを取り上げた。
彼女はスポンジにシャンプーをたっぷりと降り注ぐと、レイラの背中に泡立てた。
徐々に背中を中心に泡が広がり始め、それを手に取ると脇から胸へそして念入りに下半身に広げていった。
「あ~、ダ、ダメ、これ以上は……」
ヌルヌルした感触が先ほどの強烈な刺激が残されていたレイラの肌にさらに追い打ちをかけるように刺激が加わり、身をくねらせながら身悶えた。