往々にして日常の中に、そして人の心の中に潜んでいることもある。
だが、ほとんどの夢は、いつかは覚めるもののようである。
それを忘れ去ってしまうか否かは別として。
聡美は下町の一角にその家を見つけると、玄関の引き戸を開けるのを躊躇ってしまった。
"まあ・・、こんなところで・・・。"
その家は古い木造の平屋建てで、来客を告げるインタホンさえ付いていなかったからである。
よほど引き返そうかとも思ったが、昨日の姑とのやり取りが思い出されて足が動かなかった。
「あら聡美さん・・。あなたお乳がほとんど出ないのね。まあ最初の子供だから仕方ないかもしれないけど・・・。」
「はい、・・お母さん・・。」
聡美は色白の顔を紅潮させると、申し訳なさそうに答えた。
姑はさすがに取り繕うように笑いながら続ける。
「いえ、別にあなたを責めてる訳じゃないのよ。ただ、お乳が出ないのが困ったなあって・・。
やっぱり赤ちゃんは母乳で育てたいわよねえ・・・。」
聡美は悲しかった。
胸もそんなに小さい方ではない。
いやむしろ友人達と温泉旅行へ行った時など、
「聡美ったら羨ましいわ。スリムなのに、バストはふっくらしてて、形もいいし・・。」
と羨ましがられたくらいなのである。
それなのに、子供を産んでからこんな悲しい思いをするとは、聡美自身思ってもいなかった。
そんな聡美をよそに何やら思案していた姑が、思いついた様に口を開いたのだ。
「そうそう、私、昔から知ってる乳揉みさんがいるの。聡美さん、行ってみない・・・?」
「乳揉み・・・・?」
「あら、今の若い人は知らないかねえ・・。おっぱいを揉んで、お乳が出るようにしてくれるのよ。母乳の道ができたら、あとは自然に出るようになるわ。赤ちゃんのためだもの、病院や薬より、やっぱり自然の方法が一番・・・。」
そして逡巡する聡美に向かって、姑はもう決めたように続ける。
「あたしが調べて連絡しとくから、明日にでも行ってらっしゃい。」
そんな姑の手前、寄らずに帰ることは出来そうになかった。
仕方なしに心を決めると、思い切って引き戸を開け、声をかけた。
「あの、ごめんください。」
「はい、は~い。」
あまり奥行きの無さそうな家の中からすぐに返事があった。
正面の障子が軋みながら開いて、気さくそうな中年女性が姿を現した。
歳は50前後くらいだろうか、高村信子というその女性は、小太りの身体をきびきびと動かして愛嬌のあるおばさんだった。
「あの中田聡美と申します。今日は母から・・。」
「ハイハイ、中田さんの若奥さんね、聞いてますよ。まあ、よくいらっしゃいました。
さっ、お上がりください。汚いとこですけど、あははは・・・。」
聡美は屈託のない信子の笑顔を見て、何となくほっとする思いがした。
信子は奥の6畳間に聡美を案内した。
「寒くないように、ストーブを点けておきましたからね。」
そう言いながら信子は、外に面した窓のカーテンを閉めた。
「あの、高村さん・・。今日はよろしくお願いします。」
「まあ高村さんなんて背中がムズムズしちゃう。皆、乳揉みのおばちゃんて呼ぶのよ、乳揉みのおばちゃん。 あはは・・・、だから、おばちゃんでいいわ。」
「よろしくお願いします。お・・・、おば・・、ぷっ。」
聡美は自分で言い出した言葉に、思わず吹き出してしまった。
「あははは、可笑しい? それでいいのよ、おばちゃんで。」
信子は笑いながら、聡美の前にリクライニング式の椅子を用意する。
「じゃあ聡美ちゃん、服を脱いだらここに腰かけて。」
聡美は上着を脱ぐと、恐る恐るブラウスのボタンをはずし始めた。
信子は向こう向きでタオルなどを用意しながら、聡美に声をかける。
「心配しないでいいわ。なんか原因が無ければ、お乳はすぐ出るようになるから。初めての出産後は、そういう奥さん多いのよ。特に、それまであんまりおっぱいを扱ってもらってない奥さんなんかはね、あはっ。」
そう言いながら信子が振り向くと、聡美はブラジャーにスカート姿のまま、もじもじしていた。
「あらあら、ブラジャーも取って、スカートも脱いでちょうだい。お乳の滴で汚れたら悪いでしょ? スリップのままやる人もいるけど、あたしはやっぱり直にやるのが一番だと思うのよ。」
聡美は先にスカートを下すと、ブラジャーのホックを外し、おずおずとそれを肩から抜き去った。
パンティーだけで両手を胸の前で組んだまま、自然と顔が火照るのを感じた。
「はいはい、それでいいわ。じゃ、ここに座って・・・。」
聡美はレザー張りの簡易ソファーのような椅子に腰を下ろした。
「最初は恥ずかしいわよね。でもちょっと腕をどけて胸を見せて?。」
信子の言葉に、聡美はそろそろと腕をほどいていった。
色白できめの細かい肌がふくよかに盛り上がっている。
若さゆえ、産後の豊かな乳房は上向きで形を崩すことなく、その頂点につつましやかに淡いピンクの彩が添えられている。
「んまあ、きれいなおっぱいねえ・・・。」
そう言って信子は溜息を漏らすと、次には左右に顔を動かしながら、まじまじと聡美の乳房を見ている。
聡美はすぐにでも両手で胸を隠したい衝動を必死で堪えた。
そんな様子を察して信子が口を開く。
「こうやって形を見るのも大事なことなのよ。病気とか、じゃなくてもそれなりにおっぱいの癖とかもあるの・・・。」
聡美は少し不安げに信子の顔を見つめた。
信子はあっけらかんと笑い返すと言った。
「はい、あなたのは言う事なし。とてもきれいなお乳だわ。あははは・・。」
聡美は顔を赤くしながら、少し笑顔になった。
「はい、じゃあ始めましょうか。」
信子は右側に立って左手で聡美の背中を支えると、その重みを確かめるように右手の平を右の乳房の下にあてがう。
聡美はビクンと身体を震わせた。
右の乳房の肌から、信子の手の平の温かみが伝わって来る。
「かなりおっぱいが張ってるようだから、最初は痛いかもしれないけど、じき楽になるからね。」
信子は聡美の右の乳房を下から揺すり上げるように動かし始めた。
乳房の内部の圧迫感と共に、微かな痛みを感じる。
20分ほど、左右の乳房に同じような動作が繰り返された。
次第に痛みは薄れて、乳房の中ほどから穏やかな温かみに変わっていく。
「だいぶ慣れてきたわね。もうあまり痛くはないでしょう・・・?」
「は、はい・・・。」
信子は気さくな笑みを聡美に向けて言った。
「じゃあ、少しずつ揉んでいきますよ・・。」
信子は5本の指を使い、優しく聡美の右の膨らみを揉み上げ始めた。
聡美の身体がぶるっと震えた。
刺激というより、夫以外に人から乳房を揉まれるという経験も無かったからである。
聡美は益々顔を赤らめて、固く目を閉じた。
「ふふ・・。」
信子にとって、こんな反応はいつものことである。
しかし、あまりにこの若妻の仕草が初々しかったので、信子は小さく笑ってしまった。
左右交互にこの行為を続けながら、信子は次第に乳房全体を5本の指で掴むような動作を交えていく。
聡美の乳房がその動きと共に、弾力を伴って盛り上がり動いた。
既に微かに汗ばんできた乳房に、信子の指がしっとりと馴染んできた。
聡美はその行為により、自然に首を反らせて、夢うつつになりかけている自分に気付きハッとした。
一方信子は、聡美の目を閉じたその表情をみて、"おや・・?"と思った。
そしてついつい、静けさの照れ隠しに口を開いた。
「こんな可愛い奥さんで、旦那さんお幸せねえ・・・。」
「ふっ・・・・。」
小さく口元をほころばせただけで、聡美は無言のままである。
「でも旦那さん、真面目な方みたいね・・。あなたのおっぱい、まだ沢山可愛がってもらってないでしょ・・。長い事この仕事やってると、余分な事までわかるのよ、アハハ・・。」
「そ、そんな・・・。」
聡美は恥ずかしさに口ごもった。
「あははは、ごめんなさいね、こんなこと言っちゃって。もうこの年になると恥ずかしいものなんてないの。・・・でもおっぱいは、旦那さんの可愛がり方で出方が違うのよ。」
「はあ・・・。」
照れ笑いしながら聡美は答える。
「どう・・? もう痛くなくて、気持ちいいくらいでしょ?」
「あ、は、はい・・・。」
聡美は顔を赤らめながら答えた。
快感かどうかはともかく、揉まれる胸から心地よさが伝わって来て、うっとりとしていたのである。
さらに乳房の先に張りつめた感覚を覚えて、薄眼を開けて自分の胸を見ると、普段は控えめに埋もれている乳首が頭をもたげてしまっていた。
「はあ・・・。」
聡美は恥ずかしさもあって、小さな溜息をついた。
"あらら、この娘ったら・・・。"
小さな溜息を聞いて、信子は自分の心が揺れるのを感じた。
聡美の快感の反応かと思ったからである。
長い間この仕事をしていると、当然こんな経験もある。
実際信子自身、忘れようとした思い出の中に、2度ほど乳揉みを越えた行為をしてしまったこともあるのだった。
"ほんとに可愛い若奥さん・・・。"
顔を上気させて睫毛を伏せた若妻の顔を見ながら、信子は乳房を揉む手が微妙に震えるのを感じた。