伊織はじっと目を閉じて、姫の指先がおずおずと自分の濡れたものに触れているのを感じていた。
それはまるで闇夜に物を探すように覚束なく、また的を得たものでもなかった。
お蝶の指であれば、“ここでしょう・・?”とすぐさま身を捩るような切ない快感を掘り起こしてくれるのだ。
しかし伊織はそんなお蝶と比べるべくもない姫に、また別の意味で愛おしさを感じているのも確かだった。
「ああ・・・、お姫様・・・。」
胸元にある姫の顔を両手で抱きながら伊織は小さく囁いた。
ゆっくりと身をずり上げて、姫の口を己が乳房に誘う。
伊織の乳房の弾力が顎から顔に競り上がって来て、羅紗姫は夢うつつでその膨らみに顔を埋めた。
ゆるゆるとその柔らかみに甘えると、頬に食い込む桜色の乳首を赤子の様に唇に含み込む。
「んふ・・。」
熱く乳首を含まれた感触に、伊織はやるせない溜息を漏らした。
そして愛おしく身体を抱き合わせると同時に、再び固く脈打ち始めた姫の物の感触を右足に感じたのである。
姫の下半身に息づくものは、女が互いを燃え立たせていく有様とは違って、より激しく刹那的なもののように伊織は感じた。
それゆえ伊織は、もうすすんでそれに刺激を与えるのは控えようと思った。
伊織は右手を下に伸ばして、自分の女の部分に触れている羅紗姫の手にそっと添わせた。
そして覚束ない姫の指がふと響く部分に触れた時、姫の手に添わせた指に少し力を込めた。
姫の指がそれに導かれるように嬉しい場所に纏わり付くと、添わせた手で姫の手を促すようにさすり続ける。
伊織は己が花びらの狭間にみるみる露が満ちてくるのを覚えた。
次第に息が荒くなるのを聞かせながら、花びらの間をさすっている姫の指を少し上に引き上げていく。
「うくっ・・!」
姫の指がしこって疼くものに触れた時、伊織は息を詰めて姫の手を掴んだ。
羅紗姫はその指の感触に戸惑った。
湿った柔らかいものの中から、己が指が何か固いものを含んだ微妙な起伏の中に導かれたからである。
そこに引き留めるかのように伊織の指が自分の手を掴んでいる。姫は闇夜の暗がりの中で、その起伏の辺りに己が指をぬめらせた。
「あ・・・くっ・・!」
伊織の微かな呻きを聞きながら、姫の指先が単なる起伏を超えた弾力を伊織の身体に見つけた。
闇夜に明かりを見つけたように、伊織のしこりは姫の可愛い指に揉まれ始めたのである。
「あっ・・・はっ!・・・あうう・・。」
姫は伊織が悲しげな声と共に身を震わすのを感じた。自分の手を導いていた指が肩先を掴んだ。
「ああ~・・・、羅紗姫様・・・・。」
熱い息を吐いて身を捩る伊織を抱きながら、姫はますます夢中で伊織のしこりを愛し続ける。これは姫にも理解しやすい悦楽のあり方だった。
姫は左手を伊織の柳腰に回して抱き寄せると、忙しなく右手を伊織のものに戯れていく。お椀型の乳房の頂を可愛い唇で吸い付けた。
「ああっ、姫っ・・・!」
伊織の身体が駄々をこねるように打ち震える。
しなやかな体が反りかえって、堪りかねたように声を上げた。
「ひ・・姫・・お願いです・・・もっとやさしくっ・・。」
羅紗姫は我に返って顔を上げると伊織を見つめる。
伊織は上気した顔に荒い息を吐きながらも、優しい笑みで姫を見つめた。
自分から姫に顔を近づけると優しく互いの唇を重ねていく。
再び姫の指がゆるゆると動き始めると、愉悦の返事に姫の身体に両手を回して抱きついていく。
もうどちらの口かも分からないほどに深く唇を絡ませると、互いの舌も唾液も甘く交じり合っていくのだった。
やがてゆっくりと唇を離した伊織が囁く。
「ああ・・うれしゅうございます、羅紗姫様・・・。」
自分のものから次々と露が溢れる感触を覚えて、伊織はもうその時が近づいたのを感じていた。
これから先の行為は、以前書物でしか垣間見たことがない。
その時伊織にはその行為がこの上もなく汚らわしく感じられて、二度とその書物を開くことはなかったのである
「羅紗姫様・・・。」
伊織は小さな声で姫の名を呼ぶと、両手でその華奢な身体を優しく抱いた。
再び唇を重ね合わせながら、互いの身体を回すようにして姫を自分の上へと誘う。
“あ・・・。”
互いの柔らかい胸の膨らみが競り合うと同時に、思いがけず熱く猛々しい姫のものが太腿の肉に食い込んできて、伊織は胸の内に声を上げた。
しかしもうこの期に及んで躊躇っている場合ではない。
伊織は姫の物に向けて手を伸ばしていった。
その怒ったように脈打つものは、耐え切れずに熱い露を流していた。
伊織は右手をそれに絡めると、露を滑らせて強張ったものを摩った。
「ふぐっんっ・・・ああっ・・・伊織様っ!」
羅紗姫は互いの唇を振り解くと、身をのけ反らせて呻いた。
伊織の目の前で、若い乳房が弾力と共に弾む。
伊織も息を荒げて桃色の乳首に吸い付き、右手ですでにしこり返っている姫の物をしごいた。
「あ~っ! ・・・もう、もうっ伊織様っ!!」
姫の急激な高まりを感じた伊織は、慌てて姫の下半身を己が足の狭間に導く。
下から姫の背中に両手を廻して、雪の様な身体に必死に抱きついた。
「らっ、羅紗姫様っ・・・!」
伊織の女の声が切なく裏返った。
羅紗姫は夢中で自分の物を伊織に押し当てる。
下からしがみ付かれながら、自分の耐え切れぬほど疼く物に伊織の柔らかな繊毛や濡れた襞の滑りを感じた。
愛しい人を組み敷いた姫の身体は激しい衝動に突き上げられ、みるみる股間から背骨にかけて耐え切れぬ愉悦が込み上げる。
「あぐうっ、伊織様っ! ああ、ああもうだめっ!!!」
「お、お姫様っ!」
伊織の身体の上で羅紗姫の身体が狂おしく痙攣した。
伊織は自分の下腹部に熱い滴りが叩きつけられ、続けざまに繊毛から花びらの上にも飛び散るのを感じた。
眉を寄せ下唇を噛みながら痙攣に耐えると、羅紗姫はその愛らしい顔を伏せた。
「うう・・・、わ、わたくし、はずかしい・・・。」
姫は泣く様な声を出して身をわななかせる。
そうしている間にも脈打っている物から迸りの名残が押し出されている。
伊織は自分の太腿を熱い滴が伝い降りていくのを感じた。
しばらくの間、伊織は姫の顔を抱いてその艶やかな黒髪を撫でていた。
何をした訳でもないのに自分の胸も煽るように波打っている。
羅紗姫の下半身には男の物だけしか宿ってはいなかった。愛らしい少女の面影からは想像もつかぬような生殖の玉も付いていたのである。
女の物を知らない姫に、男女の行為が自然と出来るはずはなかった。ましてや相手が乙女の伊織であれば、こういう結果は目に見えていたのだ。
伊織はお蝶と初めて出会った時のことを思い出していた。
あの時お蝶の指がわずかに覗き込んで堪らない恐怖を覚えた所、そこで姫と結びつくのに違いなかった。
驚いた事に若い姫のものは、まだ自分の太腿の上で熱く脈打っている。
伊織は姫の耳元に囁きかけた。
「羅紗姫様・・、まだそのように、わたしのことを・・・?」
姫は伊織の胸に顔を伏せたまま、消え入りそうな声で答える。
「ええ・・・、いつまでも尽き果てぬほどお慕いしています。・・・ですが・・。」
「何でございます? もう何も考えず、私とひとつになってくだされませ・・・。今度は私が・・・さあ・・・。」
伊織は姫の頬に片手を添えると、再びその桜色の唇を求めていった。
二度の高まりを越えたにもかかわらず、互いの舌が絡まり合うままに身体が震え息が荒くなる。
伊織の上品な乳房が、上から羅紗姫のひとまわり大きい乳房に押しひしがれた。
互いの汗で張り付いた肌が燃えるように熱く感じる。
伊織は唇を狂おしく絡めながら、両手で姫の背中から両脇を撫で降ろし、白桃のようなお尻の膨らみを掴んだ。
「んっふう~・・・。」
思わず伊織の頬に鼻息を吹き付けた姫は、自分も右手を下ろして伊織の女を求めた。
熱く潤んだものにたどり着くと、先ほど伊織に呻きを上げさせた固いしこりを探す。
人差し指にその弾力を見つけて、今度は指の腹でぬめりを馴染ませるように愛しむ。
「くうう~・・・。」
唇を唇で押えられたまま、姫の腕の中で伊織の身体がやるせなくくねった。
姫の指が蠢く下では、喜びの露が菊の蕾の上にまで滴り落ちているようである。
伊織は姫の白い肌に両手の爪を立てて、お尻の膨らみから腰のくびれにかけて引きずる様に動かした。
「ふんんっ!」
姫が唸りを発して腰を跳ねた時、固い物が伊織の太腿を叩いた。
“ここ、急所でしょう・・・?”
そこは伊織の身体を知り尽くしたお蝶が、伊織に声を上げさせる為にじゃれつく場所であったのだ。
伊織はお尻をなぶった右手を、そのまま二人の身体の間に滑り込ませていく。
再び指を絡めた姫のものは、もうはち切れんばかりに息づいていた。
「はあっ、伊織様っ・・・。」
「大丈夫、お姫様、気を楽に遊ばして・・・。さあ、私の顔を見て・・・。」
唇を振り解いて声を上げた姫に、伊織は優しく微笑みかけた。
姫は愛らしい目を細めて、切なげな吐息で伊織に頷く。
伊織は再び自分の身体の上に姫を誘った。
どこからそんな気丈さが出てくるのか分からない。伊織は己が露を指に絡めて猛々しい姫の物になじませた。
「ああ~・・・。」
「姫、大丈夫ですよ・・・。」
互いの目を見つめ合わせながら、熱く固い物を自分のものにあてがう。だがお蝶の指が覗き込んだ辺りはまだ下のように感じられる。
伊織は熱い物を手に包みながら、両膝を曲げ菊の蕾を浮かせるように体を動かした。
羅紗姫のものが確かに伊織の潤みに覗き込んだ。
姫の身体に小さな痙攣が走り、下向きの乳房が細かく揺れ動く。
熱いものの先が己が花びらに触れた時、もう伊織は迷わなかった。
何と伊織は二人の腰が逃げぬように、姫の太腿に外から自分の両足を絡み付かせた。
「羅紗姫様、さあ・・・。」
そう囁くと伊織は、姫の腰のくびれを両手で引き寄せていった。
熱く固いものの先が自分の花びらにのぞき込み、押し開いてくる。
「ああ・・・。」
「くっ・・!」
期せずして二人の口から声が漏れた。伊織は鈍い痛みに顔を歪めた。
「伊織様!?」
羅紗姫は思いがけず窮屈な感覚に、急いで伊織に声をかける。
伊織はその表情を和らげると、姫の背中に手を廻してその身体を抱き寄せながら言った。
「姫、大丈夫です・・。さあ、思い切ってわたくしとひとつになって・・・。」
伊織が抱き寄せるままに、二人の身体が締め付ける様に重なっていった。
「あ・・・、い、伊織様・・・。」
「ふうう~・・・、あ・・・。」
めりめりと身体の中に音がしたと思った次の瞬間、伊織は自分の中で太い糸がぷっつりと切れるのを感じた。
羅紗姫は伊織の熱いものに包み込まれ、伊織は切ない痛みと共に熱いものに満たされた。
二つの瞳が上と下からしっかりと見つめ合った。
「羅紗姫様・・・・。」
見上げる伊織の瞳から、みるみる熱い滴が流れ落ちていった。
互いを満たしたままきつく抱き合うと、二つの女の唇が待ちわびた様に深く絡み合う。
そのまま重なった身体がうねってゆき、羅紗姫の身体に激しい戦慄きが走った。
押しひしぎ合った二人の乳房がぶるぶると震える。
伊織の身体の上で姫の柔らかい身体が強張ったかと思うと、引きつるように痙攣した。
「んんんん~~~っ! あぐっ! あっ! うっ! ・・・・ううっ!! ・・!」
先ほど手の中で弾けた姫のものが、今は伊織の身体の奥で跳ねていた。
伊織は姫が次々と吹き出る熱い思いを自分の中に注いでいるのを感じた。
羅紗姫は激情の迸りを伊織の中に注ぐ最中も、その重ねた唇を離さなかった。
己がこの世で最後の思い、片時も伊織のすべてが欲しかったのである。
伊織は一途に自分を求めた姫にすべてを委ねた。
勿論二人で一人と誓い合ったお蝶のことを忘れて訳ではない。
しかし命あるものの貴さを、今突き放してしまうことは出来なかった。
二人の女はそのまま夢見るように抱き合いながら、掛け替えの無いこの世のひと時を夜の静けさの中に噛みしめていた。
「姫、あ、あの・・・。」
仰向けに姫を抱いたまま、伊織は恥ずかしげに口ごもった。
半身をくねらせて姫の身体を横向きにすると、立ち上がって部屋の隅に灯った燭台に向かう。
片手を振って蝋燭を消したとたん、部屋の中は漆黒の闇に包まれた。
「姫・・。」
ひざまずいて前に泳がせる伊織の右手が姫の柔らな身体に触れる。
改めてその身体を抱き寄せると同時に、うなじの脇で姫の微かな吐息が漏れた。
薄い襦袢を通して、一回り大きい姫の乳房が自分の胸の膨らみに押し当てられているのを伊織は感じた。
そのうぶな身体は、おずおずと伊織に抱きつきながら微かに震えているようである。
「ら、羅紗姫さま・・・。」
伊織は優しく姫の名を呼んだ。
ふと顔を上げた姫は、おずおずとその目を開く。雨戸の隙間から漏れ来る微かな月明かりを映して、目の前に伊織の瞳が輝いていた。
伊織はゆっくりと自分の唇を羅紗姫の唇に近づけていく。
二つの桜色の唇がまさに触れ合わんとした時、羅紗姫は再びその瞳を閉じた。
唇に温かみを感じて姫が眩暈のような興奮を覚えた時、伊織も眠るように目を閉じ姫に唇を重ねていった。
唇を奪われた目くるめく感触で、羅紗姫の身体に小さな震えが走った。
伊織の肩先に添えた両手が襦袢の襟をつかみ、恥ずかしくも真珠のような歯が小さく音を立ててしまう。
伊織は夢見る様に唇を合わせたまま、左手を羅紗姫の右手に添えた。
そのまま姫の手を襦袢の合わせ目に誘い込んで、上向きに弾んでいる自分の乳房にあてがった。
ゆっくりと唇を離して伊織は囁く。
「羅紗姫さま・・・、わたくしのことを愛しく思ってくださるのならば、どうか菊を可愛がってくださいませ・・・。」
姫の右手を離した左手が、姫の襦袢の合わせ目かに滑り込んでいく。
「はっ・・・。」
伊織は姫の微かな吐息を飲み込むようにして、今度は深く唇を重ねた。
伊織のしなやかな指が姫の胸の柔らかみに沈んで、ゆるゆるとその膨らみを愛しみ始める。
「んふぅ・・・・。」
姫の鼻腔から切なげな息が漏れ、思わず互いの唇も緩むままに深く交わっていく。
自分の乳房を愛しんでくる伊織の手に誘われて、羅紗姫は夢中で自分も伊織の乳房に思いを伝えようとした。
すると不思議な事に、伊織の上品な胸の膨らみに触れながら、己が胸を締め付けるような喜びが心に溢れてくるのである。
自然と唇が開き、伊織の舌が遠慮がちに滑り込んで来た。
思わず喜びと共に伊織の舌を吸い含みながら、羅紗姫は何か目頭が熱くなるのを覚えた。
伊織は姫がただ陶然と自分に身を委ねていることを感じ取ると、いっそう寄り添うようにその身体を抱きしめた。
そして優しくその右足を羅紗姫の両足の狭間に割り込んでいく。
“はっ・・!”
その時、伊織はまるで何か熱いものに触れたかの様に腰を引いた。
右の太腿に固く怒ったものの感触を受けたからである。
「ああっ、わ、わたくし・・・ううっ!」
羅紗姫は伊織から顔を逸らすと泣く様な声を上げた。
乙女の伊織はさすがにその感触に色を失いながらも、今にも泣きそうな羅紗姫に囁いた。
「ひ、姫、大丈夫ですよ、さあ・・・。」
上向きになった姫に身を添わせると、羅紗姫の帯を解き、その襦袢の前をはだけていく。
夜目にもその肌はぬめりを伴って白く輝き、若く弾むような乳房が目に眩しかった。
そしてその膨らみの頂点には、清くうぶな心を映して薄桃色の乳首が慎ましく色を添えている。
うっとりしながらも、伊織は恐る恐るその視線を下げていった。
白い身体がなだらかな曲線を描いて腰のくびれに細まっていく。
それから再びふくよかなお尻の膨らみに向かう辺りに、それまでの女らしい身体からは想像もつかぬ、何やら殺気立ったものが伊織の目に入った。
“はっ・・・!”
伊織は思わずその目を閉じた。何やら得体の知れぬ恐怖が心に湧き上がってきたからである。
やがて身を固くして目を閉じたままの伊織の耳に、微かに震えるような声が聞こえた。
「く・・、んく・・・・、くうう・・・。」
それはまつ毛を閉じた羅紗姫の口から、耐え切れずに漏れた嗚咽であったのだ。
目を開けた伊織が見つめる中を、月の光に輝きながら姫の瞼の端から透明のしずくが流れ落ちた。
そうであった。伊織が恐怖を覚えたものは、羅紗姫に悲しみを与え、そして心を闇に閉ざしてきたものに違いなかったのだ。
我に返った伊織は立ち上がって帯を解き、襦袢を脱ぎ捨てる。
急いで羅紗姫に寄り添って、その身体を抱きしめた。
「お姫様、どうか・・・、どうかお泣きにならないで・・・。」
伊織の願いに姫は泣きじゃくりながらか細い声を出す。
「んっ・・、くっ・、いいえもうよいのです・・・。きっと、伊織様は・・怖く・・、おぞましくなられたのに違いありません・・。うっ、うう~・・・っ」
顔を俯かせる姫を必死に抱きしめながら伊織は言った。
「姫っ、お通さんは・・、お通さんは何と言ったのですか・・・?」
「う・・、ううう~~・・・。」
「人を好きになるのは貴いことだと・・。男や女、心や体は関係ないと・・、そう言ったのではありませんか・・・?
そして羅紗姫様は、私を愛おしく・・・・思ってくださっているのではなかったのですか・・・?」
肩を震わせる姫を優しく抱きしめながら、伊織は思いを込めて言った。
「ええ、私は本当に、・・・本当に伊織様をお慕いしております・・。」
そう答えると、姫は泣きぬれた瞳で伊織を見上げた。
「羅紗姫様・・・、でしたら私の事を愛しゅう思うて情けをおかけくださいませ。私も、そのように慕っていただき嬉しゅうございます・・・・。」
「ああ・・・、伊織様・・・。」
伊織は姫の潤んだ瞳を見つめつつ、再びその可愛い唇を奪った。
二人の乳房を揉み合わすように抱き締めながら、両足まで隙間なく姫に絡んでいく。
だが先程恐怖を覚えたものは、すでに伊織の太腿にその存在を伝えては来なかった。
伊織は姫の身体の柔らかみを全身で抱いて、狂おしく互いの唇を吸い合わせ続けた。甘い唾液をまとった伊織の舌が唇から押し入ると、姫は待ち望んでいたかのようにそのぬめりを吸い含むのだ。
「んふ~~~・・・。」
互いの熱い鼻息が荒いで交じり合う。
やがて姫の両手が伊織の背中を強く抱き始めた時、姫の身体の一部が伊織の太腿の柔らかみにみるみる固い感触を伝え始めた。
伊織は多少の驚きを感じながらも、不思議な事にもう先程のような恐怖を覚えることはなかった。
いやむしろ羅紗姫のことを思いつつ、微かな喜びに似た思いさえ感じていたのである。
次第に怒ったようにその存在を伊織に伝えて来るものは、まるで別の生き物であるかの如く命の息吹さえ感じさせた。
「羅紗姫さま・・・・。」
伊織は紙一重の間に互いの唇を離すと囁いた。
姫は伊織の甘酸っぱい吐息を吸いながら切なく答える。
「伊織様、心よりお慕いしております・・・・。」
伊織は再び深く姫に唇を重ねた後、その唇をうなじから胸へと滑り下ろしていく。
「んん・・・・。」
姫が小さな声を上げて身を捩るのを感じながら、薄桃色に煙る乳首を唇に吸い含んだ。
「くっ・・・。」
身体を反らせて姫は背筋に小さな痙攣を走らせる。
控え目ながら弾力を強める乳首に舌を絡めると、むずがる様に反り上がった身体がうねうねと左右に揺れた。
姫の背中が畳に戻るのを待って伊織が囁いた。
「姫・・・、とてもお美しゅうございますよ・・。」
「はあ・・・・。」
姫は切ない吐息を漏らして伊織の首筋にしがみ付く。
伊織はそんな羅紗姫をさらに抱き寄せながら、自分のものもじっとりと潤い始めたのを感じた。
同時に羅紗姫の物ももうはち切れぬほどに起き上がっている。
伊織の太腿を刺すかの如くにその存在を感じると共に、それ自体何やら濡れたものを先から滲ませているのだ。
乙女の伊織は、それを女のぬめりと同じようなものであろうと思った。
それならばと思い切って右手を羅紗姫の物に伸ばしていく。
“はっ・・!”
それに触れたとたん、思わず伊織はその指を引いた。
羅紗姫が身を捩らせて、指の中で弾む様にそれが揺れ動き、同時に思いがけず熱く脈打つように感じたからである。
「ああっ、伊織様・・、そこは汚れています・・・・。」
羅紗姫が熱い息で訴えた時、伊織は再び手を戻しながら言った。
「いいえ羅紗姫様・・・、あなたは汚れてなどおられません。」
伊織はお蝶との睦み事の時のように、羅紗姫の口を吸い塞ぐと思い切ってそれに触れていった。
どうするか分からぬまま、指でそれを摘まんでみる。
「ふんっ! んぐうっ。」
唇を伊織に奪われたまま、姫は身を震わせて唸りを発した。唇を振りほどくと喘ぎながら伊織に訴えた。
「はあっ、恥ずかしいっ・・・。もうっ、もういけませぬ、伊織様・・。」
伊織には姫が訴えている意味が分からなかった。喜びの言葉と思いつつ、固いものの先から熱い露が漏れているのを指に絡めた。
「気持ち良いのですか、お姫様・・・? でも、悪い事ではありませんよ・・」
切なげに眉を寄せた羅紗姫の顔を見つめながら、女同士の時のように流れ出る滴を熱く固い物に指でぬめらせていった。
「ああっ、いけませぬ伊織様っ!! 恥ずかしいっ、ああっいやっ・・・!!」
伊織が女のむずがる言葉だと思ったとたん、姫の下半身が女とは思えぬように激しく跳ねた。
「あ~~~っ! ・・・あはあっ! ・・・・・。」
突然切羽詰まった呻きを絞り出すと、姫は伊織の胸に顔を伏せてしがみ付いた。
姫の柳腰が狂おしくうねって、思わず伊織が固い物を掴んだ時、指の中で何かが湧き上がりそれ自体鋭く跳ねた。
「ひゃっ!!」
手を離したとたん、熱い物が飛び散った。
必死にわが胸に姫を抱きしめた伊織に、次々と頬や肩先に熱い滴が飛びかかる。
「あ~っ! ・・・ああっ、・・・あうっ・・・ああっ・・・・・・。」
姫は伊織の胸で呻きを上げながら、5,6度もその身体を硬直させ、抱き合った二人の裸身の上に熱い滴を降らせたのであった。
まだ荒い息を吐きつつ、羅紗姫は伊織の胸に顔を埋めていた。
伊織は優しく姫を抱きながら、姫の乱れた黒髪を直してそっと頬を寄せる。
「伊織様・・・、ああ、恥ずかしゅうございます・・・。わたくし、こ、このような醜態を・・。」
伊織は姫の髪を優しく撫でながら答える。
「姫、そのような・・・・、恥ずべきことではございませんよ。そのように私を思うてくださり・・・・・私こそ何もわからずに・・・・。」
二人の乙女は改めて互いの温かい身体を抱き合った。
姫の柔らかい肌を感じながら伊織が視線を落とすと、まだ羅紗姫の物は固く股間で息づいているようである。
“まあ・・・。”
伊織は心の中では驚きつつも、それを隠すように笑顔で姫に語りかけた。
「羅紗姫様、畳の上は少々冷とうございます。床も引いてありますがゆえ、布団の上にまいりましょう。・・・・さあ。」
姫は愛しい人の顔を見上げて、恥じらいをその表情に浮かべながら頷いた。
布団の上に身を横たえた二人は自然にその身を抱き合っていた。
「伊織様・・・・。」
羅紗姫の溜息のような言葉尻を、伊織は桜色の唇で吸い塞いだ。
微かな月明かりにほんのりと白い裸身が輝き、二つの女体が絡んで口を吸い合う風情はこの世のものとは思えぬほど美しかった。
熱く唇を重ねたまま、伊織は姫の右手を掴んで己が濡れたものに誘った。
「んふ・・・・。」
姫の可愛い右手の指が己が繊毛におずおずと分け入るのを感じて、伊織は微かに鼻息を漏らした。
そして伊織の右手がすでに熱く脈打っているものに触れた時、羅紗姫は乳房を揺らしてその身体に震えを走らせる。
左手で震える姫の身体を抱いて、伊織は右手で姫の脈打つものを控え目に弄り始めた。
首を振るようにして唇を割ると、伊織の舌が姫の口に滑り込む。
「んふうう~~~~・・・。」
「んぐうう・・・・。」
荒い鼻息と口を吸い合う湿った音と共に、二つの女体の交わりは徐々に熱を帯びていったのである。