み「なんか、厄介払いされた気がする」
律「あんたが、ヘンなこと言うからでしょ。
でも、ほんとに大丈夫なのかしらね。
普通の旅館って言ったってさ。
どういうのが普通なのか、わからないじゃないの。
ひょっとしたら、襖で仕切っただけの民宿みたいなのが普通かも知れないわよ。
ここらでは」
↑こういう家屋での暮らしも、ちょっと惹かれますね。
み「青森をバカにするでねぇ!
新幹線も走ってるずら」
↑どーも、このカモノハシ顔は好きになれません。
律「“ずら”は、静岡弁でしょ」
律「ちょっと見て、あばら屋だったらキャンセルして帰るからね」
↑律子先生想像図。
律「今からダッシュすれば、まだ最終バスに間に合うんだから」
み「キャンセル料、100万円申し受けます」
律「ぼったくりでしょ。
ここかしらね、入口」
み「さいでやんすな」
律「なんか、すごい建物があるけど……。
まさか、あれじゃないわよね」
み「ほかに建物はないではないか。
覗くだけなら、怒られることもあるまい。
ん?
何か、貼り紙があるな」
律「『宿泊以外の入館はご遠慮願います』だって」
み「なーんだ。
宿泊じゃない人は、入っちゃいかんのじゃないか。
こりゃまった、しっつれいしました」
↑この漫才コンビのギャグだそうです。
み「さ、帰ろ」
律「ちょっと!
わたしたちは、宿泊するんでしょ?」
み「あ……。
そうか。
ほんなら、この貼り紙の意味するところを、逆の側から解釈すると……。
『宿泊する人は、勝手に入館してちょーだい』ということではないか」
↑ピアノを売る人って、そんなにいるものなんですかね?
律「勝手にとは書いてないけど」
み「てことは、これが宿坊ってことすか?」
律「そうなんじゃないの?」
み「どう見ても、高級旅館ですがな」
み「こんな豪華な旅館、泊まったことないぞ」
律「わたしだってないわよ」
み「とにかく、ここに佇んでおってもラチがあかん。
もし間違ってても、いきなり拉致されて、東南アジアに売られることもあるまい」
律「どうしてそう、発想が尋常じゃないのかしら」
み「異常に深閑としてるのが不気味じゃ。
誰も出迎えがないではないか。
普通、旅館なら、仲居さんが出てくるよね」
律「旅館じゃないからでしょ」
み「1万2千円も取るのに?」
律「それって、2人での値段?」
み「うんにゃ。
1人でおます」
律「2人で2万4千円も払うの?
もったいない!」
み「せっかく下北半島の果てまで来たのに……」
み「どこにでもあるようなビジネスホテルに泊まっても仕方ないでしょ。
恐山に来るなんて、一生に一度かも知れん。
ここでの払いは、ただの宿賃じゃないの。
一生涯の思い出への対価です」
↑入ったことありません。お店には、トイレはあるんですかね?
律「もっともらしいこと言って。
早い話、自分を納得させたいだけでしょ」
み「ほれ、入るぞ。
“たのもう”って言って」
↑略して、“たのもう”?
律「言わないわよ!」
み「傘立てがある」
↑こういう写真を撮られる方は、実に希少です。文章も行き届いており、とても参考になりました。
律「それがどうしたっていうの?」
み「同じ柄の傘があるな。
これ、宿の傘じゃないの」
律「そうかもね」
み「帰りに1本もらっていこう」
律「やめなさい」
み「ほら、スリッパがずらっとならんでるでないの」
み「間違いなく旅館だよ」
律「『脚下照顧(きゃっかしょうこ)』って読むのかしら?」
み「早い話、段差があるから気をつけなされということでないの」
↑これは、ダンサー。
律「じゃ、どうしてそう書かないのよ」
み「旅館ではなく、宿坊だからじゃ」
律「靴はどうすればいいのかしら?」
み「あそこに入れるんでないの」
律「あれが靴箱?
立派すぎるんじゃない?」
み「お骨でも入ってそうだよな」
↑こちら、納骨堂です(愛知県岡崎市『岡崎墓園』)。そっくりな気が……。
み「でも、盗られないかな」
律「鍵がかかるじゃないのよ。
そもそも、あんたの靴なんか盗ってどうするの?」
み「臭いを嗅ぐんでないの?」
律「嗅いだ途端、即死ね」
み「凶器か!
わたしは、『スーパーソックス』を履いてるから大丈夫なの」
律「何それ?」
み「足の臭いが、劇的に抑えられるソックスじゃ」
律「ネーミングが、あまりにも胡散臭いんですけど」
み「まさしくスーパーなんだから、正々堂々と名乗っておるのです」
み「『スーパーホテル』というホテルチェーンもあるぞ。
わたしも、2回利用した」
↑わたしが泊まった『スーパーホテル東京・亀戸』。
み「さほど悪くないホテルじゃ。
デリヘルも呼べる」
↑スーパーホテルの画像ではありません。
律「呼んだわけ?」
み「呼べる構造だったと言っておる。
でも、たぶんもう利用しないけど」
律「なんでよ?
スーパーなんでしょ?」
み「謳い文句が“健康朝食無料”なわけ」
律「いいじゃないの」
み「“無料”というのは、朝食代を別に支払わなくていいという意味で使われとる」
律「“無料”なんだから当然でしょ」
み「でも、朝食を提供してるのはホテルなんだから……。
当然、朝食の準備費としての原価は発生してるわけ。
早い話、朝食代は、宿泊代金に含まれてるということでしょ。
決してタダじゃないわけ」
律「宿泊代が、割高になってるってこと?」
み「うんにゃ。
決して、割高ではない。
ほかのホテルで、朝食の付かない素泊まりの値段とほぼ一緒です」
↑わたしが『スーパーホテル東京・亀戸』で泊まった部屋。6,100円(税込)でした。
律「じゃ、実質的に“朝食無料”じゃないのよ」
み「はっきり申し上げる。
その朝食が“チャチ”なんです。
“健康”と頭に付けてるのは……。
早い話、“粗食”ということです。
“粗食朝食無料”ってこと」
↑『スーパーホテル東京・亀戸』の朝食。パンはたくさんありましたが、ご飯が“おにぎり”しかありませんでした。しかも具が、高菜かなんかの1種類のみ。
み「あんな朝食なら、自腹で食べた方がいい」
律「じゃ、そうすればいいじゃないの」
み「朝食込みなのに、朝食を食べなければ、損をするではないか」
律「それなら、食べればいいでしょ」
み「旅の朝から粗食を食らう気にはならんわ。
出来れば、ビールを付けてもらいたいくらいじゃ」
↑さらに出来れば、『スーパードライ』を瓶で。
律「阿呆か」
み「建設会社に勤務してたとき……。
新年会は、必ず温泉旅館で泊まりがけじゃった。
翌朝は、広間で銘々膳の朝食だけど……」
み「男の社員は、みんなビールを飲んでたぞ」
↑こういう案配。
律「業界の特殊性だと思います」
み「建設業をパカにするのか!」
律「いったい、何が言いたいのよ!」
み「早い話……」
律「ちっとも早くないじゃない」
み「だから、朝食込みの値段で、粗食を食わされるのはゴメンなの。
“タダなんだから大したことはできません”という気配が、食堂全体に漂うておるのじゃ。
だから今は、朝食が別料金のホテルに泊まることにした。
でもって、朝食は付けない」
律「食べないの?」
み「食うわい。
わたしは、お昼を食べないから……。
朝は、しっかり摂ることにしてるのです」
律「わけがわからないわ」
み「だから、朝食は、前日にスーパーで買っておくことにしたの。
どうせ夕食も仕入れるんだから……。
翌朝のおにぎりやカップの味噌汁を一緒に買うのは、大した手間ではない」
律「ちょっと待ってよ。
朝食に、何を買うって?」
み「おにぎりに、カップの味噌汁」
み「あとは、漬物じゃな」
律「それだけ?」
み「それだけあれば十分だろ」
律「立派な“粗食”じゃないのよ」
み「朝から肉食ってどうする!」
↑アホです。
み「ケモノか!」
律「あのね。
あんたさっき、さんざんホテルの無料朝食が粗食だってけなしてたじゃないのよ」
み「自分で納得して粗食を買う分には、いっこうにかまわんのだ。
無料と称して、粗食を供されるのが気に食わんと言っておる。
ホームレスの炊き出しじゃあるまいし」
↑何だかわかりませんが、美味しそうですね。わたしなら、十分満足できると思います。
律「さっぱりわかりません。
それなら、無料朝食を食べずに、買ってきたものを食べればいいだけでしょ」
み「だから!
無料なのを食べずに、わざわざ買ってくるのでは損ではないか」
↑“孫”正義という名前ながら、損をしなかった偉い人。
み「この話の流れ、最初にあったぞ。
こういうのを、堂々巡りと言う」
律「もっともらしい解説しなくていいの。
だから、どうだってのよ」
み「だから、朝食が無料でないホテルで、朝食なしのコースを予約するのじゃ。
これなら、損じゃないだろ。
しかも!
朝食を部屋で摂ることに、大いなるメリットがあることを発見したのじゃ」
↑シャンプーの話ではありません。
み「実はこの発見、偶然だったのよ。
おととし、東京に行ったとき……。
翌日の朝、『国立科学博物館』に歩いて行けるホテルを探したわけ」
み「ところが、安いホテルがなかなかなくてね。
やっと見つけたのが、『ホテルリブマックス日暮里』」
み「で、それまで朝は、必ずホテルの朝食を食べてたから……。
当然のごとく、朝食付きを予約しようとした。
ところがあなた、このホテルには朝食を供するスペース、すなわち食堂がなかった。
おそらく、キッチンもなかったでしょう。
さらにしかし!
このホテルの宿泊プランには、朝食付きのコースがあったのよ」
律「なんでよ。
食堂もキッチンもないんでしょ」
み「ホテルで食べるんじゃないのよ。
徒歩3分のところに、『松屋』があってね」
↑『松屋千駄木店』です。
み「そこで食べる仕組みだったの」
み「なるほどと思ったね」
み「すぐ近くに朝食を食べれるお店があった場合……。
ホテルには、食堂もキッチンも要らないんだよ」
み「厨房にかける設備費は浮くし……。
朝食の支度をするスタッフもいらない。
食堂とキッチンのスペースは、客室にできるわけ」
↑ばかにならないスペースです。
み「頭いいよね。
こういう発想の転換が出来る経営者は強いね。
ビジネスホテルには食堂と厨房が必要というのは、単なる先入観だったわけ。
実は、この『リブマックス』だけど……。
新潟駅前にも出来たのよ(『ホテルリブマックス新潟駅前』)。
すぐ近くに『松屋』もある」
↑『松屋新潟駅前店』。
み「泊まってみたいんだけど……。
残念ながら、新潟に泊まる用事がない」
律「阿呆か。
で、日暮里では、『松屋』で朝食を食べたわけね」
み「食べませんがな」
律「は?
どういうことよ」
み「徒歩3分とはいえ、ホテルの外に出るわけでしょ。
もちろん、浴衣で行くわけにはいかんわな」
↑その点、温泉街はいいですよね。
律「ホテルなら、食堂だってそうでしょ」
み「ま、そうでやんすが。
さらに!
もう、明るくなって人通りもある。
『松屋』では、店員と間近に接しなくてはならん」
み「先生、すっぴんで行けますか?」
律「わたしは行けるわね」
み「誰だかわからなくなるから?」
律「違うわよ!
大して変わらないってこと」
み「威張ってるんすか?」
律「事実を言ってるだけ。
眉だって自前だし」
↑自前です。
み「確かに、いくらなんでも、眉無しじゃ外に出れませんな。
最近の高校の修学旅行じゃ……。
風呂あがり、誰が誰やらわからないってよ。
みんな眉がないから」
↑歌手の上木彩矢(かみきあや)さん。眉はなくても、美人は美人。
律「あんたは、別の意味で、大して変わらないでしょ」
み「どういう意味よ?」
律「してもしなくても同じ」
み「違わい!
多少は」
律「化粧しないと出れないわけ?
誰も気にしませんって」
み「そんなことは、わかりまんがな。
知り合いに合うわけじゃなし。
要は、自分の心持ち具合でしょ。
すっぴんは見せたくないっていう。
かといって、帽子にサングラスじゃ……。
指名手配みたいだしね」
律「宿で朝食摂ってたときはどうしてたのよ?
わざわざ、化粧して食べに行ったの?」
み「してません」
律「じゃ、いいじゃない」
み「宿の中と外じゃ、気分的に違いまんがな。
結界というか」
律「だから、何の話してるのよ?」
み「すなわち!
この『松屋』の一件で、朝食は部屋で摂るのが一番気楽ということに気づいたの。
化粧どころか、着替える必要もない。
わたしは家では、パジャマで朝食を食べるのよ」
↑冬は、パジャマと半纏が定番です。外出する必要さえなければ、冬もいいんですけどね。
み「さらに、すなわち!
旅先でも、それと同じリラーックスした状態で食べる朝食が一番ってこと。
浴衣のまんまでね。
前がはだけてたって、誰が見るわけでもない」
律「そんなもの、見たくもないでしょう」
み「ほんまか?
パンツ、穿いてないぞ」
律「穿きなさい!」
み「何より、テレビのニュースを見ながら食べれるのが一番だね」
↑たぶん……。ダッチワイフですよね。
み「天気予報も確認できるし」
↑猫は天気予報が大好き。
律「まさか、ここも朝食予約してないんじゃないでしょうね?」
み「阿呆か。
何にも買ってきてないでしょ。
そもそも、素泊まりなんてコースはなかったはず。
宿坊では、食事を摂るのも修養のうちですよ」
↑恐山ではありません。
み「もちろん、精進料理ね。
夕食も朝食も付いてます」
律「ま、素泊まりで1万2千円はあり得ないわよね」
それにしても、いつまで靴箱の前で喋ってるのよ」
律「チェックインが、17時までじゃなかったの?」
み「おー、そうじゃったそうじゃった。
おそらくあれが、フロントだよな」
律「すごい立派よね。
瓦屋根まで載ってる」
み「なんか、祭壇みたいですが」
律「また、そういうことを」
み「たぶん、お祭りのときは、あの前にずらっとジジババが並ぶんでしょうな」
↑毎年、7月20~24日が大祭です。
律「かもね」
フ「いらっしゃいませ」
み「ちと、ものをお尋ねし申すが……」
律「それは、やめなさいって」
み「わたしたちが入館してるのは、宿泊するからで……。
決して、不法侵入じゃござんせんでありんす」
フ「寺務所から連絡を受けております。
お若い女性のお2人連れがいらっしゃると」
み「なんと!
あの寺務所坊主。
なかなか見る目があるではないか。
しかして、あなたも偉い。
一目見て、若い女性連れと見抜くとは」
フ「恐れ入ります。
ここの宿泊者に、お若い方はまずおられませんので」
み「うちらでも若いうちってこと?」
フ「いえいえ。
十分お若いですよ」
み「先生、チップ、チップ」
↑氷川きよし
律「何でわたしなのよ」
フ「いいえ。
そのようなものはいただけません。
ご予約いただいている、Mikikoさまとほか1名さまですね?」
律「ちょっと、“み"さん。
何でわたしが、ほか1名なのよ」
み「代表者の名前だけ聞かれたのだ。
あと聞かれたのは、人数だけだかんね」
フ「恐れ入りますが、前金となっておりますので」
み「それは、大いに納得でき申す」
↑『リンガーハット』のようです。気持ちのいいシステムだと思います。
み「近くには、銀行もないようですからね。
払えない客を泊めたら、回収が面倒じゃ」
フ「恐れ入ります」
み「2人で、24万円で良かったかな?」
フ「え、10泊もなされるんですか?」
↑境港市『水木しげるロード』にあるブロンズ像。『手の目』という妖怪だそうです。
フ「電話では、1泊と伺っていたはずですが」
み「冗談ですがな。
これがわたしの悪い癖♪」
フ「お2人で、ご1泊でよろしいですね」
み「左様じゃ」
フ「240万円、いただきます」
み「な、なんですとー!」
フ「冗談です」
み「あ、侮れんやつ。
お主、ただ者ではないな。
ほんとはもう、死んでるとか?」
フ「生きております。
年は30」
↑想像図。きれいなジャイアンのフィギュアだそうです。ゲイ方面にいそうですよね。
み「番茶も出がらし」
フ「手続きを進めていいですか」
み「人が並んでたら、蹴り飛ばされとるところじゃな」
↑カニ食べ放題のホテルのようです。こうまでしてカニを食べたい人の気持ちが理解できません。
フ「大丈夫でございます。
ほかのお客様は、すべてチェックインを済ませておられますので」
み「それは、重畳」
↑山梨のスパークリングワインです。センスいいですね。
み「2万4千円でいいわけね?
2食付きね?」
フ「左様でございます」
み「負からないわけね?」
フ「残念ながら」
み「カードは?」
フ「効きません」
み「現金だけってことね。
ひょっとして、脱税してない?
宗教団体でも、明らかにこれは収益事業ですよね」
フ「お客さん、まさか税務署ですか?」
み「安心なされ。
ただの経理事務員じゃ」
フ「安心しました」
み「先生、さらっと出しといて」
律「バカ言わないでよ。
割り勘でしょ」
み「ケチなんだから」
み「儲けてるのに」
律「こういうことは、ケチとか儲けてるとか、そういう話じゃないでしょ。
人としての矜持の問題よ」
み「そんなもん、最初から持ち合わせておりやせん」
み「はい、それじゃわたしの1万2千円。
税込みですよね?」
フ「ポッキリです」
み「あんた、ほんとに恐山の人?
下北で、キャバレーの呼びこみとかやってなかった?」
↑コツは、客の耳元で小声でささやくことだそうです。声がデカいと敬遠されるとか。
フ「ぎく」
み「乗りが良すぎじゃ。
やり過ぎると、ひんしゅく買うでよ」
フ「相手を見ております」
↑小錦VS舞の海。対戦成績はなんと、舞の海(手前の力士です)の7勝5敗。
み「綱渡りを楽しんでるわけ?
そのうち、火傷しまっせ」
み「はい、1万2千円。
さらばじゃ、わたしの万札」
み「まさか、おまえと恐山で別れるとは思わなかった。
元気で暮らせよ。
三橋美智也の『達者でナ』を歌ってもいいか?」
律「いい加減にしなさい。
あんまり乗せないで下さい。
際限がないんですから」
フ「恐れ入ります。
あ、こちら、『宿坊のきまりごと』というご案内になっております」
↑クリックすると、大きい画像が見られます。
フ「お部屋でお読み下さい。
夕食は18時からとなっております。
みなさんがお揃いになってから始めますので、遅れないようにお願いします。
夕食前に大浴場を使われても結構ですが……。
夕食には、浴衣ではないお召し物でおいでください」
み「どてらでも良いのか?」
フ「お持ちですか?」
み「忘れた」
フ「残念ながら、どてらの貸し出しはございません。
それでは、こちらが鍵でございます。
お部屋は、2階の『瑞雲(ずいうん)11』になります」
み「それはひょっとして、『彩雲(さいうん)11型』と関係があるのか?」
フ「は?」
み「日本海軍の艦上偵察機に、『彩雲11型』というのがあるのじゃ」
フ「自衛隊の方ですか?」
↑海上自衛隊護衛艦『やまぎり(乗員220名)』で、日本初の女性艦長となった大谷三穂二等海佐(昔の中佐)。
み「そう見えるか?」
フ「見えません」
み「それでよし」
フ「あ、お若いお客様には、先に申しあげておくことにしているのですが……」
み「デリヘルなら呼ばんぞ」
律「止めなさいって」
フ「境内で、お架けになっておられればお気づきでしょうが……。
携帯電話は、圏外になっております」
↑恐山ではありません。ほんとうにこの看板を境に圏外になるのでしょうか?
フ「もちろん、Wi-Fiもございませんので……。
早い話、ネットは繋がりません」
み「スゴいところに来たね、どうも」
フ「恐れ入ります」
み「褒めとらんわい!」
フ「それでは、ごゆっくりどうぞ。
18時の夕食にだけは、お時間厳守でお願いします」
↑沖縄の人は、特に注意が必要。
み「お風呂に入るには、ちょっと余裕がないみたいね。
テレビでも見てるか」
↑昭和の旅館のテレビは、硬貨投入式でした。
フ「恐れ入ります。
お部屋に、テレビはございません」
み「なんですとー」
フ「すみません。
ついでに言うと、冷蔵庫もありません」
み「なんですと-」
フ「時計もありません」
み「吉幾三の歌を歌いたくなってきた」
律「先に調べておきなさいよ」
み「宿坊であることに開き直ってません?」
フ「恐れ入ります。
実は、特別な理由があるのです」
み「どんなよ?」
フ「電化製品は、あっという間にダメになるんです。
硫化水素の影響ですね。
使用中に故障すると、熱を発したりして危険です。
冷蔵庫は爆発したりします」
↑恐山『吉祥閣』ではありません。
み「ウソこけ!」
フ「一番弱いのはデジカメです。
勝手にレンズが出たり引っこんだりします」
↑ニコン『ライトタッチズーム140』という機種のようです。いつごろのものなんでしょう?
フ「心霊現象だと騒がれるお客さんもおられますが……。
単なる化学反応です」
み「恐るべき風土」
フ「時計も狂いやすいですので……。
腕時計などは、バッグの中に仕舞われておいた方が良いかも知れません」
み「部屋には、時計もテレビもないんだろ?
携帯も圏外で……。
どうやって時間を知るのよ?」
フ「ときどき、バッグの中を覗いてください」
み「不便じゃ!」
律「あ、電化製品がないってことは……。
大浴場にドライヤーもないってことでしょうか?」
↑恐山『吉祥閣』ではありません。
フ「さすがにそれは備え付けてあります」
み「安いものならあるわけね」
フ「恐れ入ります。
ただ、先ほども申しましたとおり、非常に故障しやすい環境にあります。
使用中に、本体が熱くなりましたら、すぐに使用をお止めください」
律「続けて使用してると?」
フ「髪の毛がパンチパーマになります」
↑加工ではありません。『東大寺・五劫思惟阿弥陀如来坐像』です。
み「ウソこけ!」
フ「あと、お風呂には、ぜったいに金属製のアクセサリーは持ちこまないでくうださい。
真っ黒に変色してしまいます」
↑銀製品は、特に変色しやすいそうです。
フ「この建物には、鉄の釘は使ってないんです。
ボロボロになってしまいますから」
フ「それで、ステンレスの釘を特注しました」
↑こちら、ステンレスのズボン(用途不明)。
フ「1本、100円以上したんですよ」
み「だから、1泊12,000円なんですと言いたいわけ?」
フ「恐れ入ります」
律「照明は点くんでしょ?」
フ「もちろんでございます」
み「どうも胡散臭いな。
なんで、高い電化製品だけ使えないわけ?」
フ「内部の回路が複雑なほど、故障しやすくなります」
み「電気回路の問題ね」
フ「左様でございます」
み「そんなら、トイレのウォシュレットは、あるんでしょ?」
み「複雑な回路じゃないよね」
律「あんたが、ヘンなこと言うからでしょ。
でも、ほんとに大丈夫なのかしらね。
普通の旅館って言ったってさ。
どういうのが普通なのか、わからないじゃないの。
ひょっとしたら、襖で仕切っただけの民宿みたいなのが普通かも知れないわよ。
ここらでは」
↑こういう家屋での暮らしも、ちょっと惹かれますね。
み「青森をバカにするでねぇ!
新幹線も走ってるずら」
↑どーも、このカモノハシ顔は好きになれません。
律「“ずら”は、静岡弁でしょ」
律「ちょっと見て、あばら屋だったらキャンセルして帰るからね」
↑律子先生想像図。
律「今からダッシュすれば、まだ最終バスに間に合うんだから」
み「キャンセル料、100万円申し受けます」
律「ぼったくりでしょ。
ここかしらね、入口」
み「さいでやんすな」
律「なんか、すごい建物があるけど……。
まさか、あれじゃないわよね」
み「ほかに建物はないではないか。
覗くだけなら、怒られることもあるまい。
ん?
何か、貼り紙があるな」
律「『宿泊以外の入館はご遠慮願います』だって」
み「なーんだ。
宿泊じゃない人は、入っちゃいかんのじゃないか。
こりゃまった、しっつれいしました」
↑この漫才コンビのギャグだそうです。
み「さ、帰ろ」
律「ちょっと!
わたしたちは、宿泊するんでしょ?」
み「あ……。
そうか。
ほんなら、この貼り紙の意味するところを、逆の側から解釈すると……。
『宿泊する人は、勝手に入館してちょーだい』ということではないか」
↑ピアノを売る人って、そんなにいるものなんですかね?
律「勝手にとは書いてないけど」
み「てことは、これが宿坊ってことすか?」
律「そうなんじゃないの?」
み「どう見ても、高級旅館ですがな」
み「こんな豪華な旅館、泊まったことないぞ」
律「わたしだってないわよ」
み「とにかく、ここに佇んでおってもラチがあかん。
もし間違ってても、いきなり拉致されて、東南アジアに売られることもあるまい」
律「どうしてそう、発想が尋常じゃないのかしら」
み「異常に深閑としてるのが不気味じゃ。
誰も出迎えがないではないか。
普通、旅館なら、仲居さんが出てくるよね」
律「旅館じゃないからでしょ」
み「1万2千円も取るのに?」
律「それって、2人での値段?」
み「うんにゃ。
1人でおます」
律「2人で2万4千円も払うの?
もったいない!」
み「せっかく下北半島の果てまで来たのに……」
み「どこにでもあるようなビジネスホテルに泊まっても仕方ないでしょ。
恐山に来るなんて、一生に一度かも知れん。
ここでの払いは、ただの宿賃じゃないの。
一生涯の思い出への対価です」
↑入ったことありません。お店には、トイレはあるんですかね?
律「もっともらしいこと言って。
早い話、自分を納得させたいだけでしょ」
み「ほれ、入るぞ。
“たのもう”って言って」
↑略して、“たのもう”?
律「言わないわよ!」
み「傘立てがある」
↑こういう写真を撮られる方は、実に希少です。文章も行き届いており、とても参考になりました。
律「それがどうしたっていうの?」
み「同じ柄の傘があるな。
これ、宿の傘じゃないの」
律「そうかもね」
み「帰りに1本もらっていこう」
律「やめなさい」
み「ほら、スリッパがずらっとならんでるでないの」
み「間違いなく旅館だよ」
律「『脚下照顧(きゃっかしょうこ)』って読むのかしら?」
み「早い話、段差があるから気をつけなされということでないの」
↑これは、ダンサー。
律「じゃ、どうしてそう書かないのよ」
み「旅館ではなく、宿坊だからじゃ」
律「靴はどうすればいいのかしら?」
み「あそこに入れるんでないの」
律「あれが靴箱?
立派すぎるんじゃない?」
み「お骨でも入ってそうだよな」
↑こちら、納骨堂です(愛知県岡崎市『岡崎墓園』)。そっくりな気が……。
み「でも、盗られないかな」
律「鍵がかかるじゃないのよ。
そもそも、あんたの靴なんか盗ってどうするの?」
み「臭いを嗅ぐんでないの?」
律「嗅いだ途端、即死ね」
み「凶器か!
わたしは、『スーパーソックス』を履いてるから大丈夫なの」
律「何それ?」
み「足の臭いが、劇的に抑えられるソックスじゃ」
律「ネーミングが、あまりにも胡散臭いんですけど」
み「まさしくスーパーなんだから、正々堂々と名乗っておるのです」
み「『スーパーホテル』というホテルチェーンもあるぞ。
わたしも、2回利用した」
↑わたしが泊まった『スーパーホテル東京・亀戸』。
み「さほど悪くないホテルじゃ。
デリヘルも呼べる」
↑スーパーホテルの画像ではありません。
律「呼んだわけ?」
み「呼べる構造だったと言っておる。
でも、たぶんもう利用しないけど」
律「なんでよ?
スーパーなんでしょ?」
み「謳い文句が“健康朝食無料”なわけ」
律「いいじゃないの」
み「“無料”というのは、朝食代を別に支払わなくていいという意味で使われとる」
律「“無料”なんだから当然でしょ」
み「でも、朝食を提供してるのはホテルなんだから……。
当然、朝食の準備費としての原価は発生してるわけ。
早い話、朝食代は、宿泊代金に含まれてるということでしょ。
決してタダじゃないわけ」
律「宿泊代が、割高になってるってこと?」
み「うんにゃ。
決して、割高ではない。
ほかのホテルで、朝食の付かない素泊まりの値段とほぼ一緒です」
↑わたしが『スーパーホテル東京・亀戸』で泊まった部屋。6,100円(税込)でした。
律「じゃ、実質的に“朝食無料”じゃないのよ」
み「はっきり申し上げる。
その朝食が“チャチ”なんです。
“健康”と頭に付けてるのは……。
早い話、“粗食”ということです。
“粗食朝食無料”ってこと」
↑『スーパーホテル東京・亀戸』の朝食。パンはたくさんありましたが、ご飯が“おにぎり”しかありませんでした。しかも具が、高菜かなんかの1種類のみ。
み「あんな朝食なら、自腹で食べた方がいい」
律「じゃ、そうすればいいじゃないの」
み「朝食込みなのに、朝食を食べなければ、損をするではないか」
律「それなら、食べればいいでしょ」
み「旅の朝から粗食を食らう気にはならんわ。
出来れば、ビールを付けてもらいたいくらいじゃ」
↑さらに出来れば、『スーパードライ』を瓶で。
律「阿呆か」
み「建設会社に勤務してたとき……。
新年会は、必ず温泉旅館で泊まりがけじゃった。
翌朝は、広間で銘々膳の朝食だけど……」
み「男の社員は、みんなビールを飲んでたぞ」
↑こういう案配。
律「業界の特殊性だと思います」
み「建設業をパカにするのか!」
律「いったい、何が言いたいのよ!」
み「早い話……」
律「ちっとも早くないじゃない」
み「だから、朝食込みの値段で、粗食を食わされるのはゴメンなの。
“タダなんだから大したことはできません”という気配が、食堂全体に漂うておるのじゃ。
だから今は、朝食が別料金のホテルに泊まることにした。
でもって、朝食は付けない」
律「食べないの?」
み「食うわい。
わたしは、お昼を食べないから……。
朝は、しっかり摂ることにしてるのです」
律「わけがわからないわ」
み「だから、朝食は、前日にスーパーで買っておくことにしたの。
どうせ夕食も仕入れるんだから……。
翌朝のおにぎりやカップの味噌汁を一緒に買うのは、大した手間ではない」
律「ちょっと待ってよ。
朝食に、何を買うって?」
み「おにぎりに、カップの味噌汁」
み「あとは、漬物じゃな」
律「それだけ?」
み「それだけあれば十分だろ」
律「立派な“粗食”じゃないのよ」
み「朝から肉食ってどうする!」
↑アホです。
み「ケモノか!」
律「あのね。
あんたさっき、さんざんホテルの無料朝食が粗食だってけなしてたじゃないのよ」
み「自分で納得して粗食を買う分には、いっこうにかまわんのだ。
無料と称して、粗食を供されるのが気に食わんと言っておる。
ホームレスの炊き出しじゃあるまいし」
↑何だかわかりませんが、美味しそうですね。わたしなら、十分満足できると思います。
律「さっぱりわかりません。
それなら、無料朝食を食べずに、買ってきたものを食べればいいだけでしょ」
み「だから!
無料なのを食べずに、わざわざ買ってくるのでは損ではないか」
↑“孫”正義という名前ながら、損をしなかった偉い人。
み「この話の流れ、最初にあったぞ。
こういうのを、堂々巡りと言う」
律「もっともらしい解説しなくていいの。
だから、どうだってのよ」
み「だから、朝食が無料でないホテルで、朝食なしのコースを予約するのじゃ。
これなら、損じゃないだろ。
しかも!
朝食を部屋で摂ることに、大いなるメリットがあることを発見したのじゃ」
↑シャンプーの話ではありません。
み「実はこの発見、偶然だったのよ。
おととし、東京に行ったとき……。
翌日の朝、『国立科学博物館』に歩いて行けるホテルを探したわけ」
み「ところが、安いホテルがなかなかなくてね。
やっと見つけたのが、『ホテルリブマックス日暮里』」
み「で、それまで朝は、必ずホテルの朝食を食べてたから……。
当然のごとく、朝食付きを予約しようとした。
ところがあなた、このホテルには朝食を供するスペース、すなわち食堂がなかった。
おそらく、キッチンもなかったでしょう。
さらにしかし!
このホテルの宿泊プランには、朝食付きのコースがあったのよ」
律「なんでよ。
食堂もキッチンもないんでしょ」
み「ホテルで食べるんじゃないのよ。
徒歩3分のところに、『松屋』があってね」
↑『松屋千駄木店』です。
み「そこで食べる仕組みだったの」
み「なるほどと思ったね」
み「すぐ近くに朝食を食べれるお店があった場合……。
ホテルには、食堂もキッチンも要らないんだよ」
み「厨房にかける設備費は浮くし……。
朝食の支度をするスタッフもいらない。
食堂とキッチンのスペースは、客室にできるわけ」
↑ばかにならないスペースです。
み「頭いいよね。
こういう発想の転換が出来る経営者は強いね。
ビジネスホテルには食堂と厨房が必要というのは、単なる先入観だったわけ。
実は、この『リブマックス』だけど……。
新潟駅前にも出来たのよ(『ホテルリブマックス新潟駅前』)。
すぐ近くに『松屋』もある」
↑『松屋新潟駅前店』。
み「泊まってみたいんだけど……。
残念ながら、新潟に泊まる用事がない」
律「阿呆か。
で、日暮里では、『松屋』で朝食を食べたわけね」
み「食べませんがな」
律「は?
どういうことよ」
み「徒歩3分とはいえ、ホテルの外に出るわけでしょ。
もちろん、浴衣で行くわけにはいかんわな」
↑その点、温泉街はいいですよね。
律「ホテルなら、食堂だってそうでしょ」
み「ま、そうでやんすが。
さらに!
もう、明るくなって人通りもある。
『松屋』では、店員と間近に接しなくてはならん」
み「先生、すっぴんで行けますか?」
律「わたしは行けるわね」
み「誰だかわからなくなるから?」
律「違うわよ!
大して変わらないってこと」
み「威張ってるんすか?」
律「事実を言ってるだけ。
眉だって自前だし」
↑自前です。
み「確かに、いくらなんでも、眉無しじゃ外に出れませんな。
最近の高校の修学旅行じゃ……。
風呂あがり、誰が誰やらわからないってよ。
みんな眉がないから」
↑歌手の上木彩矢(かみきあや)さん。眉はなくても、美人は美人。
律「あんたは、別の意味で、大して変わらないでしょ」
み「どういう意味よ?」
律「してもしなくても同じ」
み「違わい!
多少は」
律「化粧しないと出れないわけ?
誰も気にしませんって」
み「そんなことは、わかりまんがな。
知り合いに合うわけじゃなし。
要は、自分の心持ち具合でしょ。
すっぴんは見せたくないっていう。
かといって、帽子にサングラスじゃ……。
指名手配みたいだしね」
律「宿で朝食摂ってたときはどうしてたのよ?
わざわざ、化粧して食べに行ったの?」
み「してません」
律「じゃ、いいじゃない」
み「宿の中と外じゃ、気分的に違いまんがな。
結界というか」
律「だから、何の話してるのよ?」
み「すなわち!
この『松屋』の一件で、朝食は部屋で摂るのが一番気楽ということに気づいたの。
化粧どころか、着替える必要もない。
わたしは家では、パジャマで朝食を食べるのよ」
↑冬は、パジャマと半纏が定番です。外出する必要さえなければ、冬もいいんですけどね。
み「さらに、すなわち!
旅先でも、それと同じリラーックスした状態で食べる朝食が一番ってこと。
浴衣のまんまでね。
前がはだけてたって、誰が見るわけでもない」
律「そんなもの、見たくもないでしょう」
み「ほんまか?
パンツ、穿いてないぞ」
律「穿きなさい!」
み「何より、テレビのニュースを見ながら食べれるのが一番だね」
↑たぶん……。ダッチワイフですよね。
み「天気予報も確認できるし」
↑猫は天気予報が大好き。
律「まさか、ここも朝食予約してないんじゃないでしょうね?」
み「阿呆か。
何にも買ってきてないでしょ。
そもそも、素泊まりなんてコースはなかったはず。
宿坊では、食事を摂るのも修養のうちですよ」
↑恐山ではありません。
み「もちろん、精進料理ね。
夕食も朝食も付いてます」
律「ま、素泊まりで1万2千円はあり得ないわよね」
それにしても、いつまで靴箱の前で喋ってるのよ」
律「チェックインが、17時までじゃなかったの?」
み「おー、そうじゃったそうじゃった。
おそらくあれが、フロントだよな」
律「すごい立派よね。
瓦屋根まで載ってる」
み「なんか、祭壇みたいですが」
律「また、そういうことを」
み「たぶん、お祭りのときは、あの前にずらっとジジババが並ぶんでしょうな」
↑毎年、7月20~24日が大祭です。
律「かもね」
フ「いらっしゃいませ」
み「ちと、ものをお尋ねし申すが……」
律「それは、やめなさいって」
み「わたしたちが入館してるのは、宿泊するからで……。
決して、不法侵入じゃござんせんでありんす」
フ「寺務所から連絡を受けております。
お若い女性のお2人連れがいらっしゃると」
み「なんと!
あの寺務所坊主。
なかなか見る目があるではないか。
しかして、あなたも偉い。
一目見て、若い女性連れと見抜くとは」
フ「恐れ入ります。
ここの宿泊者に、お若い方はまずおられませんので」
み「うちらでも若いうちってこと?」
フ「いえいえ。
十分お若いですよ」
み「先生、チップ、チップ」
↑氷川きよし
律「何でわたしなのよ」
フ「いいえ。
そのようなものはいただけません。
ご予約いただいている、Mikikoさまとほか1名さまですね?」
律「ちょっと、“み"さん。
何でわたしが、ほか1名なのよ」
み「代表者の名前だけ聞かれたのだ。
あと聞かれたのは、人数だけだかんね」
フ「恐れ入りますが、前金となっておりますので」
み「それは、大いに納得でき申す」
↑『リンガーハット』のようです。気持ちのいいシステムだと思います。
み「近くには、銀行もないようですからね。
払えない客を泊めたら、回収が面倒じゃ」
フ「恐れ入ります」
み「2人で、24万円で良かったかな?」
フ「え、10泊もなされるんですか?」
↑境港市『水木しげるロード』にあるブロンズ像。『手の目』という妖怪だそうです。
フ「電話では、1泊と伺っていたはずですが」
み「冗談ですがな。
これがわたしの悪い癖♪」
フ「お2人で、ご1泊でよろしいですね」
み「左様じゃ」
フ「240万円、いただきます」
み「な、なんですとー!」
フ「冗談です」
み「あ、侮れんやつ。
お主、ただ者ではないな。
ほんとはもう、死んでるとか?」
フ「生きております。
年は30」
↑想像図。きれいなジャイアンのフィギュアだそうです。ゲイ方面にいそうですよね。
み「番茶も出がらし」
フ「手続きを進めていいですか」
み「人が並んでたら、蹴り飛ばされとるところじゃな」
↑カニ食べ放題のホテルのようです。こうまでしてカニを食べたい人の気持ちが理解できません。
フ「大丈夫でございます。
ほかのお客様は、すべてチェックインを済ませておられますので」
み「それは、重畳」
↑山梨のスパークリングワインです。センスいいですね。
み「2万4千円でいいわけね?
2食付きね?」
フ「左様でございます」
み「負からないわけね?」
フ「残念ながら」
み「カードは?」
フ「効きません」
み「現金だけってことね。
ひょっとして、脱税してない?
宗教団体でも、明らかにこれは収益事業ですよね」
フ「お客さん、まさか税務署ですか?」
み「安心なされ。
ただの経理事務員じゃ」
フ「安心しました」
み「先生、さらっと出しといて」
律「バカ言わないでよ。
割り勘でしょ」
み「ケチなんだから」
み「儲けてるのに」
律「こういうことは、ケチとか儲けてるとか、そういう話じゃないでしょ。
人としての矜持の問題よ」
み「そんなもん、最初から持ち合わせておりやせん」
み「はい、それじゃわたしの1万2千円。
税込みですよね?」
フ「ポッキリです」
み「あんた、ほんとに恐山の人?
下北で、キャバレーの呼びこみとかやってなかった?」
↑コツは、客の耳元で小声でささやくことだそうです。声がデカいと敬遠されるとか。
フ「ぎく」
み「乗りが良すぎじゃ。
やり過ぎると、ひんしゅく買うでよ」
フ「相手を見ております」
↑小錦VS舞の海。対戦成績はなんと、舞の海(手前の力士です)の7勝5敗。
み「綱渡りを楽しんでるわけ?
そのうち、火傷しまっせ」
み「はい、1万2千円。
さらばじゃ、わたしの万札」
み「まさか、おまえと恐山で別れるとは思わなかった。
元気で暮らせよ。
三橋美智也の『達者でナ』を歌ってもいいか?」
律「いい加減にしなさい。
あんまり乗せないで下さい。
際限がないんですから」
フ「恐れ入ります。
あ、こちら、『宿坊のきまりごと』というご案内になっております」
↑クリックすると、大きい画像が見られます。
フ「お部屋でお読み下さい。
夕食は18時からとなっております。
みなさんがお揃いになってから始めますので、遅れないようにお願いします。
夕食前に大浴場を使われても結構ですが……。
夕食には、浴衣ではないお召し物でおいでください」
み「どてらでも良いのか?」
フ「お持ちですか?」
み「忘れた」
フ「残念ながら、どてらの貸し出しはございません。
それでは、こちらが鍵でございます。
お部屋は、2階の『瑞雲(ずいうん)11』になります」
み「それはひょっとして、『彩雲(さいうん)11型』と関係があるのか?」
フ「は?」
み「日本海軍の艦上偵察機に、『彩雲11型』というのがあるのじゃ」
フ「自衛隊の方ですか?」
↑海上自衛隊護衛艦『やまぎり(乗員220名)』で、日本初の女性艦長となった大谷三穂二等海佐(昔の中佐)。
み「そう見えるか?」
フ「見えません」
み「それでよし」
フ「あ、お若いお客様には、先に申しあげておくことにしているのですが……」
み「デリヘルなら呼ばんぞ」
律「止めなさいって」
フ「境内で、お架けになっておられればお気づきでしょうが……。
携帯電話は、圏外になっております」
↑恐山ではありません。ほんとうにこの看板を境に圏外になるのでしょうか?
フ「もちろん、Wi-Fiもございませんので……。
早い話、ネットは繋がりません」
み「スゴいところに来たね、どうも」
フ「恐れ入ります」
み「褒めとらんわい!」
フ「それでは、ごゆっくりどうぞ。
18時の夕食にだけは、お時間厳守でお願いします」
↑沖縄の人は、特に注意が必要。
み「お風呂に入るには、ちょっと余裕がないみたいね。
テレビでも見てるか」
↑昭和の旅館のテレビは、硬貨投入式でした。
フ「恐れ入ります。
お部屋に、テレビはございません」
み「なんですとー」
フ「すみません。
ついでに言うと、冷蔵庫もありません」
み「なんですと-」
フ「時計もありません」
み「吉幾三の歌を歌いたくなってきた」
律「先に調べておきなさいよ」
み「宿坊であることに開き直ってません?」
フ「恐れ入ります。
実は、特別な理由があるのです」
み「どんなよ?」
フ「電化製品は、あっという間にダメになるんです。
硫化水素の影響ですね。
使用中に故障すると、熱を発したりして危険です。
冷蔵庫は爆発したりします」
↑恐山『吉祥閣』ではありません。
み「ウソこけ!」
フ「一番弱いのはデジカメです。
勝手にレンズが出たり引っこんだりします」
↑ニコン『ライトタッチズーム140』という機種のようです。いつごろのものなんでしょう?
フ「心霊現象だと騒がれるお客さんもおられますが……。
単なる化学反応です」
み「恐るべき風土」
フ「時計も狂いやすいですので……。
腕時計などは、バッグの中に仕舞われておいた方が良いかも知れません」
み「部屋には、時計もテレビもないんだろ?
携帯も圏外で……。
どうやって時間を知るのよ?」
フ「ときどき、バッグの中を覗いてください」
み「不便じゃ!」
律「あ、電化製品がないってことは……。
大浴場にドライヤーもないってことでしょうか?」
↑恐山『吉祥閣』ではありません。
フ「さすがにそれは備え付けてあります」
み「安いものならあるわけね」
フ「恐れ入ります。
ただ、先ほども申しましたとおり、非常に故障しやすい環境にあります。
使用中に、本体が熱くなりましたら、すぐに使用をお止めください」
律「続けて使用してると?」
フ「髪の毛がパンチパーマになります」
↑加工ではありません。『東大寺・五劫思惟阿弥陀如来坐像』です。
み「ウソこけ!」
フ「あと、お風呂には、ぜったいに金属製のアクセサリーは持ちこまないでくうださい。
真っ黒に変色してしまいます」
↑銀製品は、特に変色しやすいそうです。
フ「この建物には、鉄の釘は使ってないんです。
ボロボロになってしまいますから」
フ「それで、ステンレスの釘を特注しました」
↑こちら、ステンレスのズボン(用途不明)。
フ「1本、100円以上したんですよ」
み「だから、1泊12,000円なんですと言いたいわけ?」
フ「恐れ入ります」
律「照明は点くんでしょ?」
フ「もちろんでございます」
み「どうも胡散臭いな。
なんで、高い電化製品だけ使えないわけ?」
フ「内部の回路が複雑なほど、故障しやすくなります」
み「電気回路の問題ね」
フ「左様でございます」
み「そんなら、トイレのウォシュレットは、あるんでしょ?」
み「複雑な回路じゃないよね」
み「説明上、必要なんじゃ!
女性はたいがい、ドレッシーな服装だよね」
み「ブラウスにスカートとか。
プリーツみたいな」
律「それがどうしたのよ」
み「そういうスカートの場合……。
パンスト、穿きませんか?」
↑夏はお勧め。実際には、ショーツはストッキングの上に穿きます。
律「わたし、ほとんどパンツ(ズボンのことです)だから」
み「色気のないやつ」
律「女医に色気なんていりません」
み「AVでは、必須です」
み「そういうスカートを穿いてながら……。
ナマ足ということは考えにくいと言うておる」
律「話が見えないわね」
み「あのな。
波打ち際を裸足で走ってるわけよ。
パンスト穿いてたら、濡れるであんしょ」
律「脱いだんじゃないの」
み「いつのタイミングで?
彼の腕をすりぬけて、波打ち際を走り出したのよ。
その前に、パンストだけ脱いでたっていうわけ?」
み「どういうシチュなんじゃ?」
律「知らないわよ」
み「絶対おかしいだろ。
考えられることは、ただひとつ」
律「何よ?」
み「すでに、1発終わってるということじゃ」
律「は?」
み「車の中か岩陰か知らんけど……。
1回戦、すでに済んでるわけでんがな。
パンストはそのとき脱いだんです」
↑こーゆーところ。
律「馬鹿馬鹿しい」
み「ひょっとしたら、ノーパンかも知れんぞ」
律「ガイドさん、次、行って下さい」
婆「走らずとも良いのか?」
み「良い。
砂浜を走るのは、変態と部活だけじゃ」
婆「それでは、行きますぞ。
こっちじゃ」
み「なんじゃここは。
また、さっきの荒涼たる風景に戻っただけではないか」
婆「左様。
『地獄めぐり』と称する。
八大地獄と呼ばれておるな」
み「それはひょっとして、中村八大が落ちた地獄か?」
婆「バカを言うでない。
『上を向いて歩こう』の作曲者ではないか」
み「ほー、良く知っておるな」
婆「作詞が、永六輔。
作曲が、中村八大。
歌が、坂本九。
六八九トリオと呼ばれておった」
み「残念ながら、3人とも故人となられたな。
で、作曲家の中村八大が、ここの地獄に落ちたと」
婆「違うと言うておろうが。
『八大地獄』というのは、もともと仏教の教えじゃ。
地獄の8つの形相のことを云う」
↑『正観寺(徳島県阿南市)』。機械仕掛けの地獄が展開します。檀家は反対しなかったんですかね? 館内は撮影禁止だそうです。心が狭いんでないの?
み「地獄が8つあるわけか?」
婆「左様じゃ。
まずは、『等活(とうかつ)地獄』」
み「聞かないうちから説明を始めたな」
婆「責め苦を受けて命が絶えても、再び蘇生し責め苦を受ける。
“等しく活き返る”故に、“等活”と言い習わす」
↑犬の餌になるようです。犬の糞となって、また生き返るんでしょうか。
み「部活か学活に負けられまへんか?」
↑『学級活動』のことです。『ホームルーム』とも云います。
婆「続ける」
み「続けるな!
“命が絶えても”って、地獄に落ちたんだから、すでに死んでますがな」
婆「何度でも死ぬんじゃ」
み「蘇ったときに逃げ出せば、生き返れるかも知れんな」
婆「地獄は、そんな生やさしいものではないわ」
み「経験者は語るか?」
↑やっぱり、パンツを犠牲にすべきでしょう。
婆「良いか。
この『等活地獄』が、一番軽い地獄なんじゃぞ」
み「これで?
どんなやつが落ちるわけ?」
婆「殺生をした者じゃ。
人殺しとかではないぞ。
蚊や蟻などを殺しても、ここに落ちる」
↑落ちないのは、小林一茶くらいです。
み「人間、全員でしょうが。
殺すつもりがなくたって、歩いてるうちに必ず踏んでますって」
↑『さっき踏んだ虫をもう一度踏みに戻ってくる』だそうです。『等活地獄』決定!
み「どのくらいの期間、許されるわけ?」
婆「1兆6653億1250万年じゃな」
み「阿呆きゃ!
宇宙の年齢が、138億年じゃねーの」
婆「それより、遙かに長いということじゃ。
宇宙より前に地獄は存在し……。
宇宙が滅びても、地獄は滅びぬわ」
↑栃木県益子町『西明寺』の“笑い閻魔”。勝ち誇ってますね。
み「納得できーん」
婆「次は、『黒縄(こくじょう)地獄』」
み「もういいです」
婆「まだ、2つめじゃ。
“こくじょう”は、黒い縄と書く」
↑棕櫚(しゅろ)縄です。原料はまさしく、棕櫚の幹を包む毛です。竹垣の結束などに使われてますね。元の色は茶色です。竹垣などには、黒く染めたものが使われます。素手で扱うと真っ黒になるそうです。何で染めてあるんですかね?
婆「しかし、ただの縄ではないぞ。
なぜ黒いか。
それは、鉄で出来た縄だからじゃ」
み「あのー。
それって、ワイヤーって云うんじゃないの?」
婆「縄じゃ!
この縄で、全身をグリグリ巻かれる」
み「巻かれるだけ?」
婆「そんなわけないわ。
ギリギリと締め上げられ……。
縄は肉に食いこみ……。
ついには、肉体が切り刻まれる」
↑大根のビール漬けだそうです。ビールは、別で飲みたいものです。
み「人道上、問題ありすぎです。
どんなやつが落ちるわけ?」
婆「殺生をしたうえに、盗みを重ねたものが落ちると云われておる」
み「確か、窃盗罪って、最高でも懲役10年ですけど」
↑『万引き』は、放送禁止用語にすべきです。
婆「甘い!
だから、地上は乱れるんじゃ。
地獄を見習わねばならん」
み「地獄では、もっと長い懲役なわけね?」
婆「13兆3225億年じゃ」
み「聞くんじゃなかった」
婆「次!
『衆合(しゅうごう)地獄』。
身体を鉄の臼に投げ入れられ、鉄の杵で身を打ち砕かれる」
み「『中谷堂』ですな」
婆「なんじゃ、それは?」
み「知らんのか。
高速餅つきで有名じゃ」
み「『YouTube』で知った外人が、これを見るためにだけ日本に来るそうな。
聞きたくもないが、話の流れ上、聞かざるを得まい。
どれくらい、搗かれるわけ?」
婆「106兆5800億年じゃ」
み「完全に擦り身ですがな。
いい薩摩揚げになるでしょう」
↑実はわたし、練り物はあまり好きでないです。“つくね”とか“つみれ”とかも。歯ごたえがないでしょ。老人食ですよ。
み「どういうヤツが落ちるんじゃ?」
婆「殺生、盗みに加え、邪淫じゃな」
み「あいーん?」
↑二重顎などに効果ありだとか。
婆「“じゃいん”じゃ。
淫らな行いを繰り返した者が落ちる」
律「あんた、決定じゃない」
婆「わたしは、書いてるだけじゃで。
行いは、尼さんより清い」
↑イメージです。
み「次、行ってちょ。
ここまで来たら、ぜんぶ聞きましょう。
これまで、3つ出たわけだ。
あと、5つもあるのか」
婆「次は、『叫喚地獄』じゃな」
み「ほほー。
自動車教習所の教官が落ちる地獄じゃな」
↑大型バイクの検定だそうです。クランクで脱輪し、出ようとしてアクセルを踏んだら激突してしまったとか。パニクったんでしょうね。
律「よほど怨みがあるみたいね」
み「よく我慢したとわれながら感心する。
白手袋嵌めてるキザなヤローがいてね」
み「そいつが、ネチネチ嫌みを言う訳よ。
あの男、必ずや教官地獄に落ちるに違いない」
婆「字が間違っとる。
阿鼻叫喚の叫喚じゃ」
↑「阿鼻」は、間断がないこと。叫びっぱなしということですね。
み「ありゃ、そうなの?」
婆「沸騰する大釜の中に投げ入れられる」
婆「絶叫、絶叫、また絶叫じゃ」
み「早い話、釜ゆでの刑でしょ」
み「この世でもあったではないか。
石川五右衛門とか」
↑頭上に持ちあげてるのは、6歳の我が子。血筋を根絶やしにするため、子供も一緒に殺されたそうです。
婆「この世の刑の苦しみは、死ねば終わりじゃ。
地獄は違うぞ」
み「続くわけね?
どれくらい?
だんたん楽しみになってきたわい」
婆「852兆6400億年じゃ」
み「わはは。
どーゆーことすれば、落ちるわけ?」
婆「殺生、盗み、邪淫に加え……。
飲酒じゃな」
み「待てい。
イスラム教じゃあるまいし、なんで飲酒がいかんのよ?」
↑これは、いかんでしょ。
婆「飲酒と云っても、ただ飲んでる分にはかまわぬ。
酒に毒を入れて人を殺したり、酒を飲ませて悪事を働くよう仕向けた場合じゃ」
み「人に呑ませるのは、飲酒と云わんでしょうが」
婆「ついでに、屁理屈をこねた者も落ちる」
↑これは正当な理屈です。
み「なんでじゃ!」
婆「これで、やっと半分じゃぞ。
恐ろしかろー」
み「お主の顔の方が恐ろしいわい」
み「いいから、次、行ってちょ」
婆「投げやりじゃな」
み「投げやりは、磔地獄か?」
婆「そんな地獄はないわ。
地上の刑ではないか」
み「さっき、釜ゆでのパクリがあったではないか」
婆「地獄が大元じゃ。
次は、『大叫喚地獄』」
み「語彙まで枯渇しました?
『叫喚』の次が『大叫喚』け?」
婆「『叫喚地獄』の責め苦より、さらに大変な責め苦を受ける」
み「責めパターンも枯渇ですな。
どういうヤツが落ちるわけ?」
婆「殺生、盗み、邪淫、飲酒に加え……。
妄言を吐くヤツじゃ。
ウソやデタラメ、ホラ吹きじゃな」
律「あんた、決定」
み「そんなこと言ったら、小説家はほとんど該当するだろ。
SF作家なんか、全員じゃ」
↑『SF作家クラブ』の親睦旅行にて。宿の歓迎看板が『SFサッカークラブ』になってる伝説の写真です。
み「年数は?
これだけは、いちおう聞いておく」
婆「6821兆1200億年じゃな」
み「よし、次」
婆「『焦熱地獄』。
猛火や炎熱のために苦しむ。
火あぶりの刑じゃ」
み「これも、地上の刑にありますがな。
火付けをした者の刑だよね。
八百屋お七とか」
婆「身体中、バラバラに分解され……。
串に刺されて、鉄板で焼かれる」
み「焼き鳥屋か!
バラバラにされた時点で死んでるだろ」
婆「既に死んでる者は、永遠に死ねんのじゃ」
↑映画『バタリアン』。B級ホラーの名作です。
み「で、どういう罪を重ねると落ちるわけ?」
婆「殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄言に加え……。
邪見(じゃけん)を説くヤツじゃ」
み「ジャンケン?」
↑ブラタモリ『新潟編』。ジャンケンが強かった近江ちゃん。
婆「そう来ると思った」
み「邪険にしただけで、地獄落ちけ?」
↑まる子、肘鉄。
婆「その邪険ではない。
邪(よこしま)な見方と書いて、邪見と読む」
↑広島だけで売られてたご当地ビールだそうです。
婆「仏教の教えとは相容れない考えのことじゃ」
み「また、年数が嵩むわけね。
どんだけ?」
婆「5京4568兆9600億年じゃ」
み「京!
スーパーコンピューターか!」
婆「次に進む」
み「あと2つか。
早く片づけてちょ」
婆「『大焦熱地獄』」
み「まーた、語彙の枯渇じゃ」
婆「『焦熱地獄』より、さらに過酷な猛火や炎熱の苦しみを受ける」
↑上に金網が見えます。そこからさらに落ちるわけですね。しかし、身体も衣服も焼けてないのはなぜでしょう?
み「黒焦げバーベキューってわけね」
↑とある万博で提供されてたバーベキューだとか。「食中毒を防ぐため」良く焼いてあるとのこと。
み「どういう罪が加わると落ちるわけ?
なんか、わたしの方がサービスしてるみたいだな」
婆「殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄言、邪見に加え……。
犯持戒人を成したヤツじゃ」
み「“はんじかいじん”?
なんじゃそれは?
漫才コンビか?」
↑ちょっと語感が似てるような。「しっつれいしました」のギャグで有名だったとか。若手時代は、『やすしきよし』のライバルだったそうです。
婆「童女や尼僧などを強姦した者が落ちる」
み「それ以外なら、強姦してもいいの?」
婆「いいわけなかろう。
既に邪淫(じゃいん)の罪で裁かれておるわ」
↑これは“アイーン”。『生成(なまなり)』という能面らしいです(不確か)。
み「さーて、長さはどのくらいなのかな?
だんだん、楽しみになってきた」
婆「43京6551兆6800億年じゃ」
み「ありがとうございました!
それじゃ、いよいよ最後ですね。
お願いいたします。
ダラダラダラダラダラダラ」
婆「なんじゃそれは?」
み「ドラムロールでんがな」
婆「いらんことせんでよい。
最後の地獄は、前に言ったじゃろう」
み「忘れたわい」
婆「覚えておけ。
お主が行く所ではないか」
み「なんでじゃ!」
婆「『無間地獄』である。
間断のない極限の苦しみに身を苛まれる」
み「どんな罪が加わると、無間コースになるわけ?」
婆「殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄言、邪見、犯持戒人に加え……。
父母や阿羅漢(あらはん)を殺害したヤツじゃ」
み「“あらはん”って、なんですのん?」
婆「聖者のことじゃ」
み「そういえば、カンフー映画の題名にあった気がする」
み「しかし、わたしは父母や聖人はもちろん、誰一人殺してなんかいないぞ。
落ちようがないではないか」
婆「これから殺すかも知れん」
み「縁起の悪いことを言うでない!」
↑“えんがちょ”には、地方によってさまざまな「印」があるそうです。
み「恒例の年数の紹介をやってちょ」
婆「349京2413兆4400億年である」
み「ありがとさんでしたー」
み「しかし世の中、ヒマな人間がいたもんですのぅ。
誰がひねり出したホラ話なんじゃ?」
婆「ホラではない。
教えじゃ」
み「年数といい、リアリティがなさ過ぎです。
身に迫る恐怖を感じませんよ」
↑トラの群れに追いかけられるニワトリさん。飛ぶのをやめた祖先を恨んだでしょうね。
み「で、この場所で、その『八大地獄』が表現されてるわけ?
荒涼としてるだけじゃないの。
そもそも、線香も禁止なんだから、猛火なんて表現できんでしょ」
婆「恐山の『八大地獄』は、仏教で説かれる地獄とは、ちと違っておる。
アレンジというやつじゃ」
み「地獄をアレンジしていいのか!」
婆「『無間地獄』は、さっき見たな」
み「あれが、最強の地獄だったっての?
卵臭かっただけですぜ。
残りの7つが、ここらにあるわけ?
期待できませんな。
ま、ざっと説明してちょ」
婆「おぬしは、ガイドのやる気を削ぐ天才じゃな」
↑やる気を削がれたハスキー犬。
み「お褒めにあずかりまして」
婆「褒めとらんわ。
まずここが、『重罪地獄』じゃ」
み「あのー。
さっきの『無間地獄』と、どう違うんすか?」
婆「立て札が建っておろうが。
それで区別するんじゃ」
み「そんな……」
婆「続いてここが、『金堀地獄』」
み「ここも立て札の違いでっか?」
婆「左様じゃ」
み「日本人しかわからんではないか。
英語とか、ほかの言語でも表記すべきだろ。
東京オリンピックも近いんじゃし。
オリンピックのついでに『恐山』に来るヤツがおらんとも限らんぞ」
婆「おらん方に、1万点じゃ」
み「ギャグが古すぎます」
婆「次、『どうや地獄』」
み「“どうや”って、何や?」
婆「“どう”は、金属の“銅”じゃろ。
精錬を生業としたものたちであろうな。
弘前には、『銅屋町(どうやまち)』という地名もある」
み「もちっと、地獄らしい地獄はおませんのか?」
婆「それなら、ここじゃろ。
『血の池地獄』」
み「は?
どこが、血の池なんすか?
透明ではないか」
婆「ほー。
これが透明に見えるなら、さほど罪科は重くないかも知れんな。
罪人には、真っ赤に見えるというで」
み「お主にも、そう見えるんじゃな」
婆「見えるかい。
時折、酸化鉄の具合で赤くなるんじゃ」
↑売ってました。手作りの化粧品や石けんなどの色付けに使うそうです。
婆「昔は、常時赤かったんじゃがな。
最近は、滅多に赤くならんわい」
み「貧弱!」
婆「何がじゃ」
み「テーマパークとしては、別府温泉の足元にも及ばんな」
↑別府温泉の『血の池地獄』。規模が段違い。面積は、1,300m2もあります(小学校のプール、4.3個分)。
婆「『恐山』は、テーマパークではないわ」
み「ま、入山料、500円ですからな。
こんなもんでげしょう。
あとは?」
婆「最後に、『延命地蔵尊』にお参りして行きなされ」
み「どこじゃい?」
婆「あの小高い丘におわしますぞ」
み「あ、見えた」
婆「足元には、石が積まれておるでな。
お側まで行くのは、ちと難しいが」
↑一瞬、ゴミの山かと思いました。
み「そんなら、ここでよかろ。
なんまいだなんまいだ」
↑カワウソです。
婆「さて、これで一廻りしましたぞ。
あとは、総門を抜けて、とっととお帰りなされ」
み「ふっふっふ」
み「そうはいかんのじゃ」
婆「何か良からぬことを成すつもりではなかろうな」
み「なんでそう疑い深いわけ?
人を信ずることが、人の道の第一歩じゃぞ」
婆「お主に説教されたくないわ。
わしにも、うっかり案内してしまった責任がある。
何もするつもりがないなら、早いこと帰りなされ。
バスは、17:30分が最終じゃぞ」
↑2018年5月時点の時刻表です。
婆「これを逃したら、タクシーしかない。
下北駅まで、10万円はかかる」
み「かかるか!
白タクじゃあるまいし」
↑新宿から逗子まで、白タクに乗ったことがあります。金曜の夜、新宿で飲んで終電を逃した後、逗子の自宅まで帰る友人に、怖いから一緒に乗ってくれと頼まれました。もちろん、わたしはお金を出してません。金額は忘却の彼方です。
律「でも、ほんとに薄暗くなってきたわよ」
婆「あまり長居すると、背負ってしまうぞよ」
み「わたしはリュックじゃで、もう背負えん」
み「先生、背負って帰らっしゃれ」
律「結構です。
今日は、ほんとにありがとうございました」
み「次に来たときは、またガイドを頼むぞ。
タダで」
婆「まっぴらゴメンじゃ。
それじゃ、わしはこれにて失敬」
み「待たれい。
もう一手間、願いたい」
婆「お帰りはあちらじゃ。
見えてるじゃろ」
↑恐山の入口『総門』です。内側から写した写真が、なかなか見つかりませんでした。
み「宿坊というのは、どこにあるんじゃ?」
婆「ひょっとして、宿坊に泊まる気か?」
み「左様じゃ」
婆「よしなされ。
山が穢れる」
み「なんでじゃ!
既に予約してあるわい。
1泊12,000円と言われたぞ。
お主の口利きで、半額にならんか?」
↑献金の見返りは口利きです。口利きしない議員に、企業は献金しません。
婆「なるかい!
定額じゃ」
み「『楽天トラベル』にも載ってなかった」
婆「当たり前じゃ。
予約は、直接電話する以外には出来ん。
予約したんなら、わかるじゃろ。
参道の右手奥にあるわ」
律「ほんとに泊まるの?」
み「せっかくここまで来て、日帰りじゃもったいなかろ」
婆「チェックインは、17時までじゃぞ。
急ぎなされ。
それじゃ、わしはここでな」
律「お世話になりました」
み「また来たときは頼むぞ」
婆「断ると言っておろうが」
婆「早く行きなされ。
さらばじゃ」
↑脱兎のごとくイベント会場を去るウルトラマンダイナ。
み「逃げるように去ったな」
律「ほんとに逃げたんだと思うわ。
こんなとこに泊まるなんて、どうして相談しないのよ」
み「ぜんぶ任せると言ったではないか」
律「宿坊に泊まるなんて、考えもしないでしょ。
まさか、本堂の板の間に寝るんじゃないでしょうね」
み「地方場所の相撲部屋じゃあるまいし」
↑名古屋場所での『式秀部屋』の宿舎(北名古屋市『観昌寺』)。
み「宿坊は、お寺とは離れてるんだって。
10年くらい前に建て替えられて、近代的な宿泊施設って書いてあった」
律「ここ、さっき来た参道よね」
み「右手とか言ってたよな。
あれかな?
なんか、デカデカと表札が出てるぞ」
律「あれ、表札って云うの?」
み「知りませんがな。
ほかに何て言うんだ?
ま、とにかく行ってみよう」
律「『恐山寺務所』だって」
律「“じむしょ”でいいのかしら?」
み「ほかに読みようがおへんがな。
中におっさんがいるな」
み「聞いてみよう。
ひょっとしたら、秘密の地下通路から入るのかも知れん。
その場合、聞かない限り、たどり着けんぞ」
律「そんなわけないでしょ。
でも、聞いた方が手っ取り早いことは確かね」
み「先生、聞いてよね」
律「何でわたしなのよ」
み「わたしは、シャイなんで」
↑めんどくせー。
律「どこが!」
み「先生の方が、人あたりがいいでしょ。
医者は、客商売なんだから」
律「ま、それはそうだけど」
み「そんなら、行きまっせ。
入ったら、腹の底から声を出して……。
“たのもう!”って、言ってくだせい」
律「何でよ!
そんなら、あんた言いなさいよ」
み「わたしは、シャイじゃで」
律「どこが。
ほら、早く入りなさい」
み「け、蹴るな!」
寺「いらっしゃいませ。
何か……」
み「ちと、ものをお尋ねし申す」
律「何でそんな口調になるのよ」
み「あがっておるのだ」
み「丁寧語が苦手なの!」
↑中国卓球の丁寧選手。美人ですよね。
律「普段、ぞんざいな言葉を使ってるからよ」
み「人のこと言えないだろ!」
寺「あの。
ご祈祷でしたら、本日の受付は終了してしまいましたが」
↑いろいろ興味深いです。先祖代々がお得なんでないの?
み「そいつは残念。
この女を地獄に落とす祈祷をお願いしたかったのじゃが」
寺「そういう祈祷は、お受けしかねます」
律「バカなこと言ってるんじゃないわよ。
ご迷惑でしょ。
すみません。
わたしたち、宿坊って言うんですか?
そういう施設に泊まることになってるみたいで」
寺「ご予約なされましたか?」
律「はい。
この人が、勝手に。
そういう所って、お坊さんじゃなくても泊まれるんですか?」
寺「はい。
どなたでも、お泊まりいただけます」
律「あの。
どういう所なんでしょう?
本堂の板の間で寝るとかは……」
↑何の画像か不明。
み「違うと言ったろ」
律「あんたの言うことは信用できないから」
寺「大丈夫でございます。
施設的には、旅館と変わりありません。
ただ、お寺の宿坊になりますから……。
いろいろと、決まり事もございます。
フロントで、ご案内文をお渡ししますので、そちらをご覧下さい。
17時までにチェックインしていただく必要がございます。
わたしから電話をしておきますので、このままフロントへおいで下さい。
そちら、この寺務所の脇から、宿坊の方に進めますので。
すぐにわかります。
大きい建物ですから。
どうぞ」
女性はたいがい、ドレッシーな服装だよね」
み「ブラウスにスカートとか。
プリーツみたいな」
律「それがどうしたのよ」
み「そういうスカートの場合……。
パンスト、穿きませんか?」
【メール便】 (コミューズ)COMUSE レースサスペンダーストッキング レディース [大きいサイズ LLまで ガーターストッキング サスペンダーストッキング 穴あきストッキング パンティ部レスストッキング] |
↑夏はお勧め。実際には、ショーツはストッキングの上に穿きます。
律「わたし、ほとんどパンツ(ズボンのことです)だから」
み「色気のないやつ」
律「女医に色気なんていりません」
み「AVでは、必須です」
み「そういうスカートを穿いてながら……。
ナマ足ということは考えにくいと言うておる」
律「話が見えないわね」
み「あのな。
波打ち際を裸足で走ってるわけよ。
パンスト穿いてたら、濡れるであんしょ」
律「脱いだんじゃないの」
み「いつのタイミングで?
彼の腕をすりぬけて、波打ち際を走り出したのよ。
その前に、パンストだけ脱いでたっていうわけ?」
み「どういうシチュなんじゃ?」
律「知らないわよ」
み「絶対おかしいだろ。
考えられることは、ただひとつ」
律「何よ?」
み「すでに、1発終わってるということじゃ」
律「は?」
み「車の中か岩陰か知らんけど……。
1回戦、すでに済んでるわけでんがな。
パンストはそのとき脱いだんです」
↑こーゆーところ。
律「馬鹿馬鹿しい」
み「ひょっとしたら、ノーパンかも知れんぞ」
律「ガイドさん、次、行って下さい」
婆「走らずとも良いのか?」
み「良い。
砂浜を走るのは、変態と部活だけじゃ」
婆「それでは、行きますぞ。
こっちじゃ」
み「なんじゃここは。
また、さっきの荒涼たる風景に戻っただけではないか」
婆「左様。
『地獄めぐり』と称する。
八大地獄と呼ばれておるな」
み「それはひょっとして、中村八大が落ちた地獄か?」
婆「バカを言うでない。
『上を向いて歩こう』の作曲者ではないか」
み「ほー、良く知っておるな」
婆「作詞が、永六輔。
作曲が、中村八大。
歌が、坂本九。
六八九トリオと呼ばれておった」
み「残念ながら、3人とも故人となられたな。
で、作曲家の中村八大が、ここの地獄に落ちたと」
婆「違うと言うておろうが。
『八大地獄』というのは、もともと仏教の教えじゃ。
地獄の8つの形相のことを云う」
↑『正観寺(徳島県阿南市)』。機械仕掛けの地獄が展開します。檀家は反対しなかったんですかね? 館内は撮影禁止だそうです。心が狭いんでないの?
み「地獄が8つあるわけか?」
婆「左様じゃ。
まずは、『等活(とうかつ)地獄』」
み「聞かないうちから説明を始めたな」
婆「責め苦を受けて命が絶えても、再び蘇生し責め苦を受ける。
“等しく活き返る”故に、“等活”と言い習わす」
↑犬の餌になるようです。犬の糞となって、また生き返るんでしょうか。
み「部活か学活に負けられまへんか?」
↑『学級活動』のことです。『ホームルーム』とも云います。
婆「続ける」
み「続けるな!
“命が絶えても”って、地獄に落ちたんだから、すでに死んでますがな」
婆「何度でも死ぬんじゃ」
み「蘇ったときに逃げ出せば、生き返れるかも知れんな」
婆「地獄は、そんな生やさしいものではないわ」
み「経験者は語るか?」
↑やっぱり、パンツを犠牲にすべきでしょう。
婆「良いか。
この『等活地獄』が、一番軽い地獄なんじゃぞ」
み「これで?
どんなやつが落ちるわけ?」
婆「殺生をした者じゃ。
人殺しとかではないぞ。
蚊や蟻などを殺しても、ここに落ちる」
↑落ちないのは、小林一茶くらいです。
み「人間、全員でしょうが。
殺すつもりがなくたって、歩いてるうちに必ず踏んでますって」
↑『さっき踏んだ虫をもう一度踏みに戻ってくる』だそうです。『等活地獄』決定!
み「どのくらいの期間、許されるわけ?」
婆「1兆6653億1250万年じゃな」
み「阿呆きゃ!
宇宙の年齢が、138億年じゃねーの」
婆「それより、遙かに長いということじゃ。
宇宙より前に地獄は存在し……。
宇宙が滅びても、地獄は滅びぬわ」
↑栃木県益子町『西明寺』の“笑い閻魔”。勝ち誇ってますね。
み「納得できーん」
婆「次は、『黒縄(こくじょう)地獄』」
み「もういいです」
婆「まだ、2つめじゃ。
“こくじょう”は、黒い縄と書く」
↑棕櫚(しゅろ)縄です。原料はまさしく、棕櫚の幹を包む毛です。竹垣の結束などに使われてますね。元の色は茶色です。竹垣などには、黒く染めたものが使われます。素手で扱うと真っ黒になるそうです。何で染めてあるんですかね?
婆「しかし、ただの縄ではないぞ。
なぜ黒いか。
それは、鉄で出来た縄だからじゃ」
み「あのー。
それって、ワイヤーって云うんじゃないの?」
婆「縄じゃ!
この縄で、全身をグリグリ巻かれる」
み「巻かれるだけ?」
婆「そんなわけないわ。
ギリギリと締め上げられ……。
縄は肉に食いこみ……。
ついには、肉体が切り刻まれる」
↑大根のビール漬けだそうです。ビールは、別で飲みたいものです。
み「人道上、問題ありすぎです。
どんなやつが落ちるわけ?」
婆「殺生をしたうえに、盗みを重ねたものが落ちると云われておる」
み「確か、窃盗罪って、最高でも懲役10年ですけど」
↑『万引き』は、放送禁止用語にすべきです。
婆「甘い!
だから、地上は乱れるんじゃ。
地獄を見習わねばならん」
み「地獄では、もっと長い懲役なわけね?」
婆「13兆3225億年じゃ」
み「聞くんじゃなかった」
婆「次!
『衆合(しゅうごう)地獄』。
身体を鉄の臼に投げ入れられ、鉄の杵で身を打ち砕かれる」
み「『中谷堂』ですな」
婆「なんじゃ、それは?」
み「知らんのか。
高速餅つきで有名じゃ」
み「『YouTube』で知った外人が、これを見るためにだけ日本に来るそうな。
聞きたくもないが、話の流れ上、聞かざるを得まい。
どれくらい、搗かれるわけ?」
婆「106兆5800億年じゃ」
み「完全に擦り身ですがな。
いい薩摩揚げになるでしょう」
↑実はわたし、練り物はあまり好きでないです。“つくね”とか“つみれ”とかも。歯ごたえがないでしょ。老人食ですよ。
み「どういうヤツが落ちるんじゃ?」
婆「殺生、盗みに加え、邪淫じゃな」
み「あいーん?」
↑二重顎などに効果ありだとか。
婆「“じゃいん”じゃ。
淫らな行いを繰り返した者が落ちる」
律「あんた、決定じゃない」
婆「わたしは、書いてるだけじゃで。
行いは、尼さんより清い」
↑イメージです。
み「次、行ってちょ。
ここまで来たら、ぜんぶ聞きましょう。
これまで、3つ出たわけだ。
あと、5つもあるのか」
婆「次は、『叫喚地獄』じゃな」
み「ほほー。
自動車教習所の教官が落ちる地獄じゃな」
↑大型バイクの検定だそうです。クランクで脱輪し、出ようとしてアクセルを踏んだら激突してしまったとか。パニクったんでしょうね。
律「よほど怨みがあるみたいね」
み「よく我慢したとわれながら感心する。
白手袋嵌めてるキザなヤローがいてね」
み「そいつが、ネチネチ嫌みを言う訳よ。
あの男、必ずや教官地獄に落ちるに違いない」
婆「字が間違っとる。
阿鼻叫喚の叫喚じゃ」
↑「阿鼻」は、間断がないこと。叫びっぱなしということですね。
み「ありゃ、そうなの?」
婆「沸騰する大釜の中に投げ入れられる」
婆「絶叫、絶叫、また絶叫じゃ」
み「早い話、釜ゆでの刑でしょ」
み「この世でもあったではないか。
石川五右衛門とか」
↑頭上に持ちあげてるのは、6歳の我が子。血筋を根絶やしにするため、子供も一緒に殺されたそうです。
婆「この世の刑の苦しみは、死ねば終わりじゃ。
地獄は違うぞ」
み「続くわけね?
どれくらい?
だんたん楽しみになってきたわい」
婆「852兆6400億年じゃ」
み「わはは。
どーゆーことすれば、落ちるわけ?」
婆「殺生、盗み、邪淫に加え……。
飲酒じゃな」
み「待てい。
イスラム教じゃあるまいし、なんで飲酒がいかんのよ?」
↑これは、いかんでしょ。
婆「飲酒と云っても、ただ飲んでる分にはかまわぬ。
酒に毒を入れて人を殺したり、酒を飲ませて悪事を働くよう仕向けた場合じゃ」
み「人に呑ませるのは、飲酒と云わんでしょうが」
婆「ついでに、屁理屈をこねた者も落ちる」
↑これは正当な理屈です。
み「なんでじゃ!」
婆「これで、やっと半分じゃぞ。
恐ろしかろー」
み「お主の顔の方が恐ろしいわい」
み「いいから、次、行ってちょ」
婆「投げやりじゃな」
み「投げやりは、磔地獄か?」
婆「そんな地獄はないわ。
地上の刑ではないか」
み「さっき、釜ゆでのパクリがあったではないか」
婆「地獄が大元じゃ。
次は、『大叫喚地獄』」
み「語彙まで枯渇しました?
『叫喚』の次が『大叫喚』け?」
婆「『叫喚地獄』の責め苦より、さらに大変な責め苦を受ける」
み「責めパターンも枯渇ですな。
どういうヤツが落ちるわけ?」
婆「殺生、盗み、邪淫、飲酒に加え……。
妄言を吐くヤツじゃ。
ウソやデタラメ、ホラ吹きじゃな」
律「あんた、決定」
み「そんなこと言ったら、小説家はほとんど該当するだろ。
SF作家なんか、全員じゃ」
↑『SF作家クラブ』の親睦旅行にて。宿の歓迎看板が『SFサッカークラブ』になってる伝説の写真です。
み「年数は?
これだけは、いちおう聞いておく」
婆「6821兆1200億年じゃな」
み「よし、次」
婆「『焦熱地獄』。
猛火や炎熱のために苦しむ。
火あぶりの刑じゃ」
み「これも、地上の刑にありますがな。
火付けをした者の刑だよね。
八百屋お七とか」
婆「身体中、バラバラに分解され……。
串に刺されて、鉄板で焼かれる」
み「焼き鳥屋か!
バラバラにされた時点で死んでるだろ」
婆「既に死んでる者は、永遠に死ねんのじゃ」
↑映画『バタリアン』。B級ホラーの名作です。
み「で、どういう罪を重ねると落ちるわけ?」
婆「殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄言に加え……。
邪見(じゃけん)を説くヤツじゃ」
み「ジャンケン?」
↑ブラタモリ『新潟編』。ジャンケンが強かった近江ちゃん。
婆「そう来ると思った」
み「邪険にしただけで、地獄落ちけ?」
↑まる子、肘鉄。
婆「その邪険ではない。
邪(よこしま)な見方と書いて、邪見と読む」
↑広島だけで売られてたご当地ビールだそうです。
婆「仏教の教えとは相容れない考えのことじゃ」
み「また、年数が嵩むわけね。
どんだけ?」
婆「5京4568兆9600億年じゃ」
み「京!
スーパーコンピューターか!」
婆「次に進む」
み「あと2つか。
早く片づけてちょ」
婆「『大焦熱地獄』」
み「まーた、語彙の枯渇じゃ」
婆「『焦熱地獄』より、さらに過酷な猛火や炎熱の苦しみを受ける」
↑上に金網が見えます。そこからさらに落ちるわけですね。しかし、身体も衣服も焼けてないのはなぜでしょう?
み「黒焦げバーベキューってわけね」
↑とある万博で提供されてたバーベキューだとか。「食中毒を防ぐため」良く焼いてあるとのこと。
み「どういう罪が加わると落ちるわけ?
なんか、わたしの方がサービスしてるみたいだな」
婆「殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄言、邪見に加え……。
犯持戒人を成したヤツじゃ」
み「“はんじかいじん”?
なんじゃそれは?
漫才コンビか?」
↑ちょっと語感が似てるような。「しっつれいしました」のギャグで有名だったとか。若手時代は、『やすしきよし』のライバルだったそうです。
婆「童女や尼僧などを強姦した者が落ちる」
み「それ以外なら、強姦してもいいの?」
婆「いいわけなかろう。
既に邪淫(じゃいん)の罪で裁かれておるわ」
↑これは“アイーン”。『生成(なまなり)』という能面らしいです(不確か)。
み「さーて、長さはどのくらいなのかな?
だんだん、楽しみになってきた」
婆「43京6551兆6800億年じゃ」
み「ありがとうございました!
それじゃ、いよいよ最後ですね。
お願いいたします。
ダラダラダラダラダラダラ」
婆「なんじゃそれは?」
み「ドラムロールでんがな」
婆「いらんことせんでよい。
最後の地獄は、前に言ったじゃろう」
み「忘れたわい」
婆「覚えておけ。
お主が行く所ではないか」
み「なんでじゃ!」
婆「『無間地獄』である。
間断のない極限の苦しみに身を苛まれる」
み「どんな罪が加わると、無間コースになるわけ?」
婆「殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄言、邪見、犯持戒人に加え……。
父母や阿羅漢(あらはん)を殺害したヤツじゃ」
み「“あらはん”って、なんですのん?」
婆「聖者のことじゃ」
み「そういえば、カンフー映画の題名にあった気がする」
み「しかし、わたしは父母や聖人はもちろん、誰一人殺してなんかいないぞ。
落ちようがないではないか」
婆「これから殺すかも知れん」
み「縁起の悪いことを言うでない!」
↑“えんがちょ”には、地方によってさまざまな「印」があるそうです。
み「恒例の年数の紹介をやってちょ」
婆「349京2413兆4400億年である」
み「ありがとさんでしたー」
み「しかし世の中、ヒマな人間がいたもんですのぅ。
誰がひねり出したホラ話なんじゃ?」
婆「ホラではない。
教えじゃ」
み「年数といい、リアリティがなさ過ぎです。
身に迫る恐怖を感じませんよ」
↑トラの群れに追いかけられるニワトリさん。飛ぶのをやめた祖先を恨んだでしょうね。
み「で、この場所で、その『八大地獄』が表現されてるわけ?
荒涼としてるだけじゃないの。
そもそも、線香も禁止なんだから、猛火なんて表現できんでしょ」
婆「恐山の『八大地獄』は、仏教で説かれる地獄とは、ちと違っておる。
アレンジというやつじゃ」
み「地獄をアレンジしていいのか!」
婆「『無間地獄』は、さっき見たな」
み「あれが、最強の地獄だったっての?
卵臭かっただけですぜ。
残りの7つが、ここらにあるわけ?
期待できませんな。
ま、ざっと説明してちょ」
婆「おぬしは、ガイドのやる気を削ぐ天才じゃな」
↑やる気を削がれたハスキー犬。
み「お褒めにあずかりまして」
婆「褒めとらんわ。
まずここが、『重罪地獄』じゃ」
み「あのー。
さっきの『無間地獄』と、どう違うんすか?」
婆「立て札が建っておろうが。
それで区別するんじゃ」
み「そんな……」
婆「続いてここが、『金堀地獄』」
み「ここも立て札の違いでっか?」
婆「左様じゃ」
み「日本人しかわからんではないか。
英語とか、ほかの言語でも表記すべきだろ。
東京オリンピックも近いんじゃし。
オリンピックのついでに『恐山』に来るヤツがおらんとも限らんぞ」
婆「おらん方に、1万点じゃ」
み「ギャグが古すぎます」
婆「次、『どうや地獄』」
み「“どうや”って、何や?」
婆「“どう”は、金属の“銅”じゃろ。
精錬を生業としたものたちであろうな。
弘前には、『銅屋町(どうやまち)』という地名もある」
み「もちっと、地獄らしい地獄はおませんのか?」
婆「それなら、ここじゃろ。
『血の池地獄』」
み「は?
どこが、血の池なんすか?
透明ではないか」
婆「ほー。
これが透明に見えるなら、さほど罪科は重くないかも知れんな。
罪人には、真っ赤に見えるというで」
み「お主にも、そう見えるんじゃな」
婆「見えるかい。
時折、酸化鉄の具合で赤くなるんじゃ」
↑売ってました。手作りの化粧品や石けんなどの色付けに使うそうです。
婆「昔は、常時赤かったんじゃがな。
最近は、滅多に赤くならんわい」
み「貧弱!」
婆「何がじゃ」
み「テーマパークとしては、別府温泉の足元にも及ばんな」
↑別府温泉の『血の池地獄』。規模が段違い。面積は、1,300m2もあります(小学校のプール、4.3個分)。
婆「『恐山』は、テーマパークではないわ」
み「ま、入山料、500円ですからな。
こんなもんでげしょう。
あとは?」
婆「最後に、『延命地蔵尊』にお参りして行きなされ」
み「どこじゃい?」
婆「あの小高い丘におわしますぞ」
み「あ、見えた」
婆「足元には、石が積まれておるでな。
お側まで行くのは、ちと難しいが」
↑一瞬、ゴミの山かと思いました。
み「そんなら、ここでよかろ。
なんまいだなんまいだ」
↑カワウソです。
婆「さて、これで一廻りしましたぞ。
あとは、総門を抜けて、とっととお帰りなされ」
み「ふっふっふ」
み「そうはいかんのじゃ」
婆「何か良からぬことを成すつもりではなかろうな」
み「なんでそう疑い深いわけ?
人を信ずることが、人の道の第一歩じゃぞ」
婆「お主に説教されたくないわ。
わしにも、うっかり案内してしまった責任がある。
何もするつもりがないなら、早いこと帰りなされ。
バスは、17:30分が最終じゃぞ」
↑2018年5月時点の時刻表です。
婆「これを逃したら、タクシーしかない。
下北駅まで、10万円はかかる」
み「かかるか!
白タクじゃあるまいし」
↑新宿から逗子まで、白タクに乗ったことがあります。金曜の夜、新宿で飲んで終電を逃した後、逗子の自宅まで帰る友人に、怖いから一緒に乗ってくれと頼まれました。もちろん、わたしはお金を出してません。金額は忘却の彼方です。
律「でも、ほんとに薄暗くなってきたわよ」
婆「あまり長居すると、背負ってしまうぞよ」
み「わたしはリュックじゃで、もう背負えん」
み「先生、背負って帰らっしゃれ」
律「結構です。
今日は、ほんとにありがとうございました」
み「次に来たときは、またガイドを頼むぞ。
タダで」
婆「まっぴらゴメンじゃ。
それじゃ、わしはこれにて失敬」
み「待たれい。
もう一手間、願いたい」
婆「お帰りはあちらじゃ。
見えてるじゃろ」
↑恐山の入口『総門』です。内側から写した写真が、なかなか見つかりませんでした。
み「宿坊というのは、どこにあるんじゃ?」
婆「ひょっとして、宿坊に泊まる気か?」
み「左様じゃ」
婆「よしなされ。
山が穢れる」
み「なんでじゃ!
既に予約してあるわい。
1泊12,000円と言われたぞ。
お主の口利きで、半額にならんか?」
↑献金の見返りは口利きです。口利きしない議員に、企業は献金しません。
婆「なるかい!
定額じゃ」
み「『楽天トラベル』にも載ってなかった」
婆「当たり前じゃ。
予約は、直接電話する以外には出来ん。
予約したんなら、わかるじゃろ。
参道の右手奥にあるわ」
律「ほんとに泊まるの?」
み「せっかくここまで来て、日帰りじゃもったいなかろ」
婆「チェックインは、17時までじゃぞ。
急ぎなされ。
それじゃ、わしはここでな」
律「お世話になりました」
み「また来たときは頼むぞ」
婆「断ると言っておろうが」
婆「早く行きなされ。
さらばじゃ」
↑脱兎のごとくイベント会場を去るウルトラマンダイナ。
み「逃げるように去ったな」
律「ほんとに逃げたんだと思うわ。
こんなとこに泊まるなんて、どうして相談しないのよ」
み「ぜんぶ任せると言ったではないか」
律「宿坊に泊まるなんて、考えもしないでしょ。
まさか、本堂の板の間に寝るんじゃないでしょうね」
み「地方場所の相撲部屋じゃあるまいし」
↑名古屋場所での『式秀部屋』の宿舎(北名古屋市『観昌寺』)。
み「宿坊は、お寺とは離れてるんだって。
10年くらい前に建て替えられて、近代的な宿泊施設って書いてあった」
律「ここ、さっき来た参道よね」
み「右手とか言ってたよな。
あれかな?
なんか、デカデカと表札が出てるぞ」
律「あれ、表札って云うの?」
み「知りませんがな。
ほかに何て言うんだ?
ま、とにかく行ってみよう」
律「『恐山寺務所』だって」
律「“じむしょ”でいいのかしら?」
み「ほかに読みようがおへんがな。
中におっさんがいるな」
み「聞いてみよう。
ひょっとしたら、秘密の地下通路から入るのかも知れん。
その場合、聞かない限り、たどり着けんぞ」
律「そんなわけないでしょ。
でも、聞いた方が手っ取り早いことは確かね」
み「先生、聞いてよね」
律「何でわたしなのよ」
み「わたしは、シャイなんで」
↑めんどくせー。
律「どこが!」
み「先生の方が、人あたりがいいでしょ。
医者は、客商売なんだから」
律「ま、それはそうだけど」
み「そんなら、行きまっせ。
入ったら、腹の底から声を出して……。
“たのもう!”って、言ってくだせい」
律「何でよ!
そんなら、あんた言いなさいよ」
み「わたしは、シャイじゃで」
律「どこが。
ほら、早く入りなさい」
み「け、蹴るな!」
寺「いらっしゃいませ。
何か……」
み「ちと、ものをお尋ねし申す」
律「何でそんな口調になるのよ」
み「あがっておるのだ」
み「丁寧語が苦手なの!」
↑中国卓球の丁寧選手。美人ですよね。
律「普段、ぞんざいな言葉を使ってるからよ」
み「人のこと言えないだろ!」
寺「あの。
ご祈祷でしたら、本日の受付は終了してしまいましたが」
↑いろいろ興味深いです。先祖代々がお得なんでないの?
み「そいつは残念。
この女を地獄に落とす祈祷をお願いしたかったのじゃが」
寺「そういう祈祷は、お受けしかねます」
律「バカなこと言ってるんじゃないわよ。
ご迷惑でしょ。
すみません。
わたしたち、宿坊って言うんですか?
そういう施設に泊まることになってるみたいで」
寺「ご予約なされましたか?」
律「はい。
この人が、勝手に。
そういう所って、お坊さんじゃなくても泊まれるんですか?」
寺「はい。
どなたでも、お泊まりいただけます」
律「あの。
どういう所なんでしょう?
本堂の板の間で寝るとかは……」
↑何の画像か不明。
み「違うと言ったろ」
律「あんたの言うことは信用できないから」
寺「大丈夫でございます。
施設的には、旅館と変わりありません。
ただ、お寺の宿坊になりますから……。
いろいろと、決まり事もございます。
フロントで、ご案内文をお渡ししますので、そちらをご覧下さい。
17時までにチェックインしていただく必要がございます。
わたしから電話をしておきますので、このままフロントへおいで下さい。
そちら、この寺務所の脇から、宿坊の方に進めますので。
すぐにわかります。
大きい建物ですから。
どうぞ」