熱い息を吐いて、恵子はうつろな眼差しを天井へ向けた。
四つん這いになった美波に豊かな乳房を吸われている。
“ああたまんない、こんな可愛い女医さんにおっぱいを吸われてるなんて……”
恵子はうっとりと目を閉じた。
しかしそれからこの女医さんは、興奮で固くなっている乳首をなかなか思うようには刺激してくれなかった。
恵子はじれったそうに美波を見下ろす。
「それで先生、何か分かりました?」
美波は乳首を吸い離して恵子を見上げた。
「いえ、まだ……。なにかご気分でも?」
「気分はすごくいいんですけど……」
恵子は来い来いと引き寄せるように、胸の前で両手を煽った。
「ガンガン来てください。なんだか先生自信なさそうなんだもの、遠慮しないでもっともっと……」
「はあ……」
「先生ちょっと……」
「きゃ!」
恵子から胸を探られた美波は短い悲鳴を上げた。
「ななな、なにを!?」
「何をって、先生煮え切らないから……。そんなことじゃ、いい診療は出来ませんよ。ちょっと上を脱いでみてください」
「あ! やめてください、診るのは私です。ああ、ちょちょっと……それにあの、私の小さいですから……」
「ご心配なく、私小さいの大好きです。さあ、どんなんかな~?」
この可愛い女医の抵抗などものともせず、恵子は白衣のジッパーを引きおろし下着に手をかけた
「まあ……可愛い。真っ白で上品に膨らんで、まるでつきたてのお餅みたい………」
「め……目加田さん?」
恵子の視線を遮るように、美波は胸の前に両手を広げた。
「美味しそう………じゅる………」
「あ! 目加田さん!」
背中からベッドに押し倒され、美波は性欲の権化と化した恵子に組み敷かれた。
「あ………」
美波の真っ白で細身の体が小さく跳ねた。
半ば近くまで吸い含まれた乳房の先から切ない刺激が五体に響き、舌に絡まれた乳首がみるみる弾き立っていく。
「あ………ちょっと………目加田さん………んっく……」
荒々しく乳房を弄られているにも関わらず、ついその要求に埋もれていきそうな感覚さえ覚えてしまう。
「はあ………もう、分かりました分かりました。今後はもっと勉強します。あ……ちょっと待って目加田さん! お願いです、うう………婦人病のチェックに入らせてください!」
左右交互に乳房を吸われながら美波は必死に声を上げる。
「婦人病のチェック?」
ようやく美波の乳房を解放して恵子はつぶやいた。
「ふう………はい。ベッドに仰向けになって、足を開いてください」
恵子の顔に意味深な笑みが浮かぶ。
「足を開くってことは、先生……」
両手を握って美波をベッドから引き起こした恵子は、そのまま仰向けになって両足を広げた。
膝立ちで乱れた髪を直すと、美波は自分を落ち着かせるように恵子に微笑んだ。
「恥ずかしいと思いますが、下半身をチェックしますので下着の方を……」
気にしないという感じで恵子は両手を広げた。
「少し濡れちゃってますけど」
お尻を浮かせてパンティーに両手をかける。
「気にしないでください。生理現象は誰にでもあることですから」
「またお口でチェックを?」
「ええ、その方法も大事です」
「お風呂できれいにしとけばよかったですね」
「いいえ、普段の状態でチェックすることが大事です」
「うふふ、よかった」
悪戯っぽい笑みを浮かべた恵子は、左右にお尻を振りながらパンティーを脱ぎ去る。
黒々と艶を持った茂みが美波の前に現れた。
「お口に合うといいですけど」
「どういう意味でしょうか。え、えへん……」
緊張で小さく咳払いすると、美波は大きく広げられた両足の間に顔を近づけていった。
美波は昨夜勉強したビデオを思い出しながら、恵子のものから流れ出ている透明な液体を舌で舐めた。
「お味はいかが……?」
「う~ん……ほどよく酸味のある熟成した味わいです」
「ごめんなさい。お仕事とはいえ、気持ち悪くなりました?」
恵子は顔を起こして気の毒そうに美波を見た。
「いいえ、完成された大人の女性の魅力を感じました。それに女性器の疾患も無さそうです」
そう告げながら、美波は恵子の内腿に貼り付いていた毛を2本ほどつまんで取り除く。
「まあうれしい。じゃあ、もう終わっちゃうんですか?」
「いえもう少し女性ホルモンの状態なども診ますが、よろしいですか?」
「ええ気のすむまで。もちろんそれは、先生もあたしもという意味ですけど……」
「はあ………あなたも気のすむまで? ………まあとにかく続けます」
美波は再び顔を近づけて、恵子の左右の小陰唇を数回舐め上げた。
「ああ……先生……」
恵子のつぶやきを聞いて、美波は太ももに両腕を回して上体を引き上げる。
「もう少し上を……」
恵子をオーガズムに導き洗脳する目的に向かって、美波は艶やかな唇を甘く匂い立つものに近づけていった。
美波は白い前歯で薄皮をめくりながら、恵子のクリトリスを唇で覆った。
「は……!」
息を呑んだ恵子の裸体がぶるっと弾み、太腿の肉がさざ波を打った。
そのまま美波はおずおずと強張りを口に含む。
頤を上げた恵子の後頭部が布団に沈む。
「もう、先生!」
怒ったように呼ばれて、美波は不安そうに顔を上げた。
「どうしました?」
「もう先生ったら!」
「ご、ごめんなさい……」
「すっごく……じょうず~」
「は………?」
「いいから……焦らさないで続けて……」
恵子は美波の両手を掴んで催促する。
初心者が(何の?)おっかなびっくり吸い含んだことが、敏感なクリトリスへのアプローチにベストマッチしていたのだ。
“これはチャンス!”
美波は胸の内で快哉を叫んだ。
この調子で行けば、ほどなく恵子をオーガズムに押し上げることが出来そうである。
それとなく恵子の右手首に付けられた洗脳器具に左手を添える。
“これでチャンスを逃さずボタンを押せば大丈夫………”
「先生、早くう。もっと診察して」
「分かりました」
再び美波はおずおずと恵子のこわばりを舌でなぶる。
“そうだシェイラ・ジェニングスがやってたように……”
昨夜観たビデオ映像が脳裏に浮かんで、美波は剥き上がった薄皮を唇で挟んで左右に揺さぶってみる。
しかし美波は、この行為がその後の惨事に繋がることを知る由もなかった。
「いやあ先生、じらさないで!」
「はいはい……むぐ……」
恵子は豊かな胸を揺らして身体をうねらせる。
「あ~、おかしくなっちゃう!」
「んんむ………構いませんよ、どうなっても。私はちゃんとチェックしてますから……ぶちゅるる……」
思い切って美波は恵子のクリトリスにかぶりつく。
しかしこの時点でもまだ、美波は恵子が本当におかしくなることに気が付かなかった。
“もう一息だ”
恵子のものをしゃぶりながら、美波は腕輪のボタンに指をかける。
「先生あたしもうだめ! お願い一緒に!!」
恵子は哀願の声を上げた。
「はいはい、だめでしょ、いいですよ。ほら一緒に………え? 一緒に?!」
美波が顔を上げた途端、恵子が猛然と襲いかかって来た。
「ああもう、辛抱たまらん!」
「あ~! 目加田さん、まだ診察が! ちょ、ちょっと待って! だめ、それはだめです!」
ベッドに押し付けられて恵子と逆さまに重なり合う。
「あ! 目加田さんだめ!! あ~れ~!!」
両足を広げられながら、美波は悲痛な叫びを上げたのだった。
翌日の朝、目加田恵子の部屋のドアが開いて、岸部美波春子の姿が通路に現れた。
ふらふらと覚束ない足取りの上に、目の下に小さい“くま”が出来ている。
美波は夢遊病者の様にうつろな眼差しで本部長室に入って行った。
「おお、岸部先生待ってましたよ。それで、目加田の………」
幽霊の様に立っている岸部医師を見て、大河内本部長はつい言葉を途切らせた。
「随分お疲れのようですな。まあお座りください」
本部長がすすめるソファーに美波はぐったりと座り込む。
「申し訳ありません。今回の洗脳は失敗しました。うう………」
そうか細い声で告げると美波は涙ぐんだ。
「失敗………。しかし私は、あなたなら目加田恵子に気に入られるに違いないと踏んでいたのですが」
「確かにすごく気に入られはしました。しかし………」
「しかし………?」
大河内はうつむいた美波の顔を覗き込む。
「一度目のチャンスは69で私の方が達してしまい、ボタンを押す余裕もなく失敗」
「う~む、敵もさるもの」
大河内は悔し気に右手を握り締める。
「二度目のチャンスは、ディ―プキスを交わしながら彼女は私の太腿に擦り付けて達しました。でもその時私の手が届かず、直後に唾を飲まされながら私の方が指でいかされて失敗」
「むう、それは残念でしたなあ……」
大河内と美波は顔を見合わせて頷き合った。
「三度目は貝合わせで、彼女は猫の様なうなりを上げてオーガズムに達しました」
「うん、それであなたは」
「彼女の腰使いで気持ちよさに涙の失神。とてもボタンを押すどころの騒ぎではありませんでした」
「は~……まさに死闘。で、まだありますか?」
本部長は肩を落として問いかける。
「気が付いてからも行為がありましたが、それから何度いかされたか記憶が定かではありません。朝起きてシャワーを浴びた時、全身に付けられたキスマークを見て我ながら愕然としました」
「それで彼女は今どうしてます?」
「大いびきかいて寝てます」
「そうですか。いやご苦労様でした……」
大河内は力なく立ち上がると、何故か両手で前を隠しながらデスクに戻っていく。
ビアン崇拝者である大河内は、美波の話を聞いて息子が元気になってしまったのである。
「しかしメトロン総統の命令に従って、どうしても目加田恵子を洗脳しなければならない。切り札であるあなたが失敗したとなると、これからどうすればよいのか」
大河内本部長は大きなため息をついて頭を抱えた。
「本部長」
美波は力を振り絞ってソファーから立ち上がった。
「今回は目加田恵子に完膚なきまでやられましたが、いかされながら私も恵子の弱点を見つけました。どうやら彼女は、か弱い女性にいたぶられるのが好きなようです。今度はセックスにかこつけて拘束し、強制的にオーガズムに押し上げれば……」
それを聞いた大河内の表情が輝いた。
「やってくれますか、岸部先生」
「はい」
デスクの上で二人はがっちりと両手を握り合った。
「ありがとう岸部先生。地球征服に向かってこれは大きな一歩だ、頼みます。ついでに洗脳の映像記録もお願いしたい!」
「それはだめです」
「は……?」
「一休みしたら、準備して雪辱戦に向かいます」
いつもの冷静で上品な表情に戻ると、美波は本部長室から出て行く。
「ちぇ、ケチ……」
大河内本部長はすねた表情を浮かべ、そのズボンの高まりもみるみる平らに変化したのである。
砂漠を照らす朝日が少しずつ黄色く変化していく。
午前9時を回って、ゼットンは朝食のコーヒーカップをテーブルに置いた。
「終わった? じゃあ、そろそろ行きましょうか」
隣室から姿を現わした飛鳥ゆり子がゼットンに声をかける。
「ああそうしようか。しかし君は随分早く朝食をとったんだね」
おもむろにゆり子はY字バランスの姿勢を取った。
「近頃運動不足で体が緩んで来たから、野菜とプロテインなんかの簡単な朝食で引き締めてるのよ」
「へえ。でも、そんなものばっかりじゃ満足できないでしょ?」
「ふふ、そうね。でも今日は、とびっきりのご馳走が待ってるでしょ?」
「ああ、そうだそうだ」
ゼットンは薄笑いを浮かべて両手でピースサインをする。(だから、最初からゼットンの手はピースサインなんだって)
「彼女からたっぷり若いエキスと女性ホルモンを取ったら、日本に帰って大乱交パーティーでも開こうかしら。あっはははは……」
「フォフォフォフォ………」
「じゃあ巨大化した後に砂漠の真ん中でダンスでもして、盛大にデモンストレーションしましょう。狭い地球だもの、誰かが騒いで、すぐウルトラウーマンがやって来るわ」
「それがいい。そうしよう」
ゼットンは砂漠に向かって開け放たれた窓際に歩み寄る。
「背中に乗っかるわよ」
「OK。じゃあ出発!」
そう声を上げると、二人はそろそろ空気が揺らめき始めた砂漠の景色に飛び出していった。
美波は人差し指で縁なし眼鏡を上げると、バインダーの書類を傍らのテーブルに置いた。
「問診は以上ですが、他に何かご自分で気になることがありますか?」
「う~ん………」
恵子は人差し指を顎に当てて、似合わぬ可愛い子ちゃんポーズを取る。
「特にありません」
「そうですか。では……」
「いよいよですね」
「いよいよと言いますと……?」
「脱ぐんでしょ?」
「あ、あ、あ、あ……ちょっとそれは、必要な時に私からお願いしますから」
再びジッパーを下げようとする恵子を美波は両手で押しとどめる。
「遠慮しないでください」
「遠慮はしません。実際何をもって遠慮と言うのか分かりませんが、ではそちらのベッドの上でチェックをしましょうか」
「いい流れですね」
「は?」
「いえ、リラックスして診ていただけるという意味で」
「それはまあ……、そうですね。では私も失礼してベッドの上に正座しますが、目加田さんは私の前に楽な姿勢でお座りください」
「わかりました。じゃ私は胡坐をかいちゃおう」
こうして美波と恵子は、ごそごそとベッドに上がり正対して座った。
岸辺美波春子は女性を性的な対象として見たことは無かった。
いやそれどころか、性的な欲求の高まりも控えめで男性経験もごくわずかだった。
今は体内に埋め込まれた放射線チップにより、メトロンの指示に従って任務を果たすことだけを考えている。
要するに、目加田恵子に精神コントロールシステムをインストールする外付け器具を付けさせた上で、彼女のオーガズムに合わせて起動スイッチを押すのだ。
そうすることで、飛鳥ゆり子や大河内本部長のように体内にチップを埋め込むことなくその人間をコントロールできる。
これはメトロンの地球征服の達成において画期的な発明であった。
お手軽にコントロールシステムをインストール出来れば、メトロンの自由になるロボット人間は飛躍的に増加するに違いない。
美波は昨夜、ネットを調べて女性同士の恋愛やセックステクニックを勉強した。
フィンガープレイにオーラルプレイ、シックスナインに貝合わせなどなど……。
練習と称して布団に抱き着き、枕を股に挟んで腰を振ってはみたが、美波はふと大きな溜息をついてその動きを止めた。
彼女にとって実技はともかく、どうやって相手をセックスに誘い込むかが問題だったのである。
気位が高く経験のない彼女は、媚びを売ることも出来ず、ましてや色気で同性を誘うなどということはおぞましく思えた。
しかしそんな彼女がネットに目を通していると、ある百合小説の一文が彼女の目に留まった。
“お姉さま、もう明日から学校にはいらっしゃらないんですね。お願いです。最後に………最後に、お姉さまの唾をください”
どうやらこの少女は、卒業で去っていく片思いの先輩に、おずおずとピンクの唇を開けて唾をねだっているらしかった。
“これだわ”
美波は思った。
“まさか私の唾を飲みなさいとは言えないし、まず自分が意を決して相手の唾を飲もう”
それをきっかけに、さらに医者の立場でベッドの上で触診していけば、女性が好きな相手なら自然に性交渉に発展していくのではないか。
“グッドアイデア!”
美波はポンと右手を叩くと、上機嫌でココアを入れにキッチンに向かったのだった。
もっとも責めようが責められようが、好みの女性から色目を使われれば、恵子は勝手にオーガズムまで突き進んでくれるに間違いはないのだが。
ベッドの上で正対すると、美波は大きく深呼吸をした。
「では触診などのチェックを始めましょう」
「お願いします。先生」
そう言って恵子がジッパーを下げかかると、誇らしく張った乳房があっという間に内側からジャージを半分以上押し開く。
「ままま、待ってください。私にも段取りと言うものが………」
「段取り?」
美波は上品な笑みを浮かべながら、慌てて恵子のジッパーを再び引き上げたのである。
「まず先にこの腕輪の器具を付けてください。触診中に並行してあなたの血流その他を記録しますから」
美波は瑠璃色の腕輪を恵子の右手首に取り付ける。
「まあきれい……」
恵子はうっとりと瑠璃色の輝きを見つめた。
「そ、それから、あの……目加田さんの………が欲しいんですけど」
「え? なんですか? ちょっと聞こえずらかったんですけど………。ああそうか、おしっこ?」
恵子は顔を赤らめた美波に問いかけた。
「い、いえおしっこじゃなくてその………だ、唾液を………ここに……」
恵子は蚊の鳴くような声に耳を傾ける。
「なんですって、ああ唾液ね………唾液ってツバでしょ? ……はいはい……唾を? ……そ、そこに~!?」
恵子はうっすらと開いた美波の可愛い唇を見ながら声を上げた。
「先生、私の唾が飲みたいの!?」
「い、いえ、飲みたいんじゃなくて、チェ………チェックを……」
美波の白い顔が赤く染まり上がって、うっすらと眼鏡のレンズが曇った。
「またまたあ……。そんなことで体調が分かるんですか?」
「私には分かるんです、訓練してきましたから。さあ、ここに………」
美波は唇を開くと、下あごを突き出す様にして恵子の前に顔を差し出した。
恵子は美波の頬を両手で包む。
「こんな可愛い人に唾飲ませちゃうなんて、あたし、すごく興奮して生唾が湧いてきちゃった。美味しいとこたっぷりあげるから、しっかり味わって」
「味わうんじゃなくて、チェックです」
上向きに目を閉じたまま美波がつぶやく。
恵子は開いた桃色の唇を上から覗き込んだ。
恵子の唇から透明な輝きが伸びて、音もなく美波の口の中に消えていった。
少しの唇が揉み合わされた後に、白くほっそりとした喉が小さく波打つ。
「美味しかった?」
恵子の問いかけに美波は目を開いた。
「味は関係ありません、健康チェックですから。唾液のチェックでは異常ありませんでした」
「で、でも、嫌じゃなかったの?」
心配そうに覗き込んでくる恵子に、美波は微かに微笑みを返した。
「いいえ。では次のチェックに入ります」
美波は何だか恵子に親近感を覚え始めていた。
唾を飲んだからだろうか、この任務を達成する自信のようなものさえ感じる。
「先生の段取りは分って来たわ。次はこれでしょ? あたしもう、乳首がすごく立っちゃった」
わざとゆっくりジャージのジッパーを下ろし始めた恵子を、もう美波は止めなかった。
全身に気だるさを感じながら、怜子はようやくベッドの上に上半身を起こした。
“希美ちゃん………あたしを許して……”
胸が締め付けられ瞼が熱くなる。
目的のためには仕方ないと言っても、怜子は敵方のグレタと淫らな契りを結んでしまったのだ。
ただ凌辱されたばかりだったろうか。
いや、そうではなかった。
快楽の頂点で我を忘れて舌を絡め合い、互いの身体を掴み合ってグレタと獣の悦びを分かち合ってしまったのである。
目くるめく快感に縛られながら、女同士で繋がり合った部分から血が通ったように感じた。
怜子は何かを振り払うように頭を振り、汗で重くなったロングヘアをかき上げた。
先ほどグレタは全裸で横たわる怜子を残して部屋を出て行った。
侵略者側の捕虜になったとは言っても、無事でいれば再び自由になるチャンスも生まれる。
この基地の雰囲気からして、もうウルトラウーマンの決戦の時が近いことを感じた。
自分が開発したShinoharaType2が飛鳥の呪縛を取り除き、ウルトラ一族と人類との絆を守るのだ。
“今は侵略者の目的を阻止することが何より大事なこと……”
そう思って顔を上げた時、近くで何か物音がした。
「だれ? だれかいるの?」
ベッドに起き直った怜子が周囲を見回す。
クローゼットのドアが静かに開き、ドアの向こうから白人の娘の顔が覗いた。
「だ、だれ? あなたは………」
もじもじと少女はドアの陰から全身を現わす。
「あ、あたし、スワンって言うの。みんなはミュールって呼ぶけど、あたしその名前は好きじゃないの……」
「あなた、最初から見てたのね」
スワンは怜子に小さく頷いた。
「おねえさんはさっき宇宙人の話をしてたよね。その人あたしのお友達なの。今どこにいるか知ってる? 知ってたら教えて、助けなくっちゃ」
怜子はスワンの顔をじっと見つめた。
「きっとそれはウルトラウーマンのことね。だったらあなたと私もお友達だわ。さあ、近くにいらっしゃい」
スワンはとぼとぼと怜子に近づいていく。
怜子はベッドに腰かけると、目の前に立ったスワンの金髪を優しく撫でた。
「心配しなくてもウルトラウーマンは安全な場所にいるわ」
「ほんと!?」
顔を輝かせたスワンに怜子は頷く。
「でももうすぐ彼女は大事な戦いがあるの。だから一緒に彼女を応援しましょう」
「うん。じゃああたし鍵を持ってるから、早くお姉ちゃんのところに行きましょう」
怜子はスワンの肩を抱いた。
「今はそれは出来ないわ。でももうすぐ、ここは大変な騒ぎになるのよ。たぶんこの部屋の前も誰もいなくなるの。そしたらスワンちゃん、あたしを助けに来てくれる?」
「うん。あたし助けに来る!」
「ここを出て何処かに隠れてるのよ。出来る?」
「うん、お掃除の部屋にいればいいの。あちこちお掃除しながら待ってるよ」
「そう。あなたすごいわ。じゃ、気を付けて」
「わかった。おねえちゃんもね」
スワンはドアを開けてすたすたと出て行く。
怜子は素早くドアの後ろで聞き耳を立てた。
「何だお前! この中で何してたんだ!?」
「疲れたからクローゼットの中で寝てたの」
「なんだって! 中に人がいただろ」
「しらな~い。女の人が裸で寝てたみたい。でもあたし、その人知らないもん」
「ああもう、さっさと行け! 二度とあちこちでさぼるんじゃないぞ!」
遠ざかっていくスワンの足音を聞きながら、怜子はふうっと大きな息を吐いた。
ゼットンは読みかけの“聊斎志異”をテーブルに置くと、表通りに面した窓際に歩み寄った。
じりじりと熱い日差しが照り付けて、表通りには人っ子一人歩いていない。
「ああ……地球ももう潮時だな。早く片付けちまって場所を変えるか」
そう独り言ちた時、
「あが……!!」
隣室から絞り出すような女のうめき声が聞こえた。
おもむろにゼットンは声の聞こえた部屋に入って行く。
「ひゃあ!!」
奇声を上げて半裸のアラブ女が部屋を飛び出て行った。
「終わったみたいだね」
ダブルベッドの上で両足を広げた飛鳥ゆり子に、ゼットンはそう声をかけた。
「はあ………気持ちよかった。でも、アラブ女は熱心だけどいまいちね。東欧系かアジア系がテクニックは上だわ」
ゼットンはどうでもいいという感じで肩をすくめると、寝室の椅子に腰を下ろした。
「エネルギーも充填したことだし、そろそろこちらから打って出るかな」
ゆり子はベッドから起き上がって、日本の腰巻のような砂漠の衣装を身に着ける。
「そうね、あなたが良ければ、あたしはいつでもOKよ」
「そうか、じゃあ………ん………」
ゼットンはハバナから取り寄せた吸いかけの葉巻に火をつける。
「明日の朝食後にでも出かけるか。どうせあのウルトラのお嬢ちゃんをこませば用は終わりなんだからな」
ゆり子は眉を寄せて漂う煙を手で払った。
「もう煙いじゃないの、あたしの寝室で吸わないでよ」
ゼットンは立ち上がっていそいそと部屋を出て行く。
「俺がさっさと勝負をつけてやるから、その後あんたはたっぷりと……」
「そうあたしはたっぷりと可愛い子ちゃんの若い体を味わって、メトロンちゃんの従順なしもべに仕立て上げてやるよ。あっはははは………」
ゆり子の高笑いを背中で聴きながら、再びゼットンはお好きにどうぞという感じで両手を広げた。
目加田恵子がジャージを脱ぐと、美波は黒目勝ちの二重瞼をさらに大きく見開いた。
ブラジャーに包まれたままにも関わらず、恵子の胸のふくらみが眼前に迫ってくるように感じたからである。
「ブラジャーも取ります?」
恵子は思わせぶりな眼差しを美波に送る。
「え、ええ出来れば……」
「出来ます出来ます」
恵子が両手を背中に回すと、ほどなく白いブラジャーが肩から抜け落ちた。
「まあ………」
美波は漏らした声を片手で押さえた。
「どうかなさいましたか?」
「あ、ああいえ、あまりにおきれいな乳房で………」
「まあ、先生にそう言っていただいて、あたしとっても嬉しいです」
瞳をさ迷わせた美波に恵子は悪戯っぽく問いかける。
「で、私おっぱい出しましたけど、先生どうなさいます?」
「あ。ああ、ええと………」
美波は鼻の頭の汗をガーゼで拭った。
「お吸いになるんでしょう?」
「え、ええもちろん、チェックということで……」
「でも、乳首を吸って何かわかるんでしょうか」
「ええ、乳房や乳首の状態を理解するには適切なやり方だと思います」
美波のまじめな答えに恵子はにっこりとほほ笑む。
「でもおっぱいは二つありますけど、もう一つは揉んでくださいます?」
「は、はい、当然それも大事な手法ですから……」
恵子は美波の両手を取って小柄な体を引き寄せた。
互いの目を合わせた後に、ゆっくりと瞳を閉じる。
「ではお願いします。先生のせいで乳首はすごく固くなっちゃってますけど、ご遠慮なくお好きにどうぞ」
美波は不安気な表情を思い直したように引き締めた。
「では失礼します」
思い切って恵子の右の乳房に顔を寄せる。
そして美波は生まれて初めて、母親以外の同性の乳首を吸い含んだのである。