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帰省する美弥子を東京駅に見送った由美は、ひとり美弥子のマンションに戻った。
夏休みの後半は、2人のために使うことに決めてあった。
そのためには、夏休みの前半に、帰省と宿題を済ませておかねばならない。
もちろん、由美も帰省するつもりだったが……。
懐かしい故郷の空気に包まれたら、なんだか宿題が出来なくなってしまいそうだった。
東京にいるうちに、少しでも進めておきたかった。
もちろん、すべて終わらせて帰るということは不可能だろう。
帰省してからも、続きはやらなければならない。
でも、手を付けてあるのとないのとでは、向こうで教科書を開くときの士気が違ってくるはずだ。
そこで美弥子に頼んで、部屋を使わせてもらうことにしたのだった。
もちろん、自分の学生マンションに戻ってもいいのだが……。
大方の学生は帰省してしまっており、あそこにいると、なんだか取り残された気がするのだ。
最上階のカフェテラスも、夏休みの休業に入ってしまっていた。
マンションの最寄り駅で降り、日盛りの商店街を歩く。
平日の昼間ということもあるのだろうが、人はみな、屋根の下に逃げこんでいるようだ。
商店街の幟は、そよとも動かない。
街路には、日傘がまばらに散っているだけだった。
由美は、美弥子と出会ったころの雨の季節を思い出していた。
あのころは、街を雨傘が覆っていた。
そして由美はひとりだった。
美弥子はまだ遠い存在で……。
由美は毎日、赤い傘を差して、ひとり通っていたのだ。
由美の胸に、鳥の翳が射すように、寂しさがよぎった。
この街には今、美弥子がいない。
自ら望んだこととはいえ、置いて行かれた思いを拭えなかった。
うっかりすると泣いてしまいそうだった。
この気持に流されたら、自分もこのまま故郷に逃げ帰りかねない。
もちろん両親は喜ぶだろうが……。
高校まで過ごしたあの部屋で、宿題をバリバリこなせる気はしなかった。
由美は背筋を伸ばし、歩幅を広げた。
日傘の柄を、トーチのようにかかげる。
踵が一直線の線上に下りるよう、歩みを進める。
いわゆるモデルウォークだ。
副業でモデルをやっているという学友に教えてもらった。
気合のいる歩き方で、意識していなければ、なかなか出来ない。
歩くことに集中しなければならないのだ。
だから、余計なことを考えずに済む。
さらに、目線が高くなることにより、気もちも持ちあがる気がした。
帰省する美弥子を東京駅に見送った由美は、ひとり美弥子のマンションに戻った。
夏休みの後半は、2人のために使うことに決めてあった。
そのためには、夏休みの前半に、帰省と宿題を済ませておかねばならない。
もちろん、由美も帰省するつもりだったが……。
懐かしい故郷の空気に包まれたら、なんだか宿題が出来なくなってしまいそうだった。
東京にいるうちに、少しでも進めておきたかった。
もちろん、すべて終わらせて帰るということは不可能だろう。
帰省してからも、続きはやらなければならない。
でも、手を付けてあるのとないのとでは、向こうで教科書を開くときの士気が違ってくるはずだ。
そこで美弥子に頼んで、部屋を使わせてもらうことにしたのだった。
もちろん、自分の学生マンションに戻ってもいいのだが……。
大方の学生は帰省してしまっており、あそこにいると、なんだか取り残された気がするのだ。
最上階のカフェテラスも、夏休みの休業に入ってしまっていた。
マンションの最寄り駅で降り、日盛りの商店街を歩く。
平日の昼間ということもあるのだろうが、人はみな、屋根の下に逃げこんでいるようだ。
商店街の幟は、そよとも動かない。
街路には、日傘がまばらに散っているだけだった。
由美は、美弥子と出会ったころの雨の季節を思い出していた。
あのころは、街を雨傘が覆っていた。
そして由美はひとりだった。
美弥子はまだ遠い存在で……。
由美は毎日、赤い傘を差して、ひとり通っていたのだ。
由美の胸に、鳥の翳が射すように、寂しさがよぎった。
この街には今、美弥子がいない。
自ら望んだこととはいえ、置いて行かれた思いを拭えなかった。
うっかりすると泣いてしまいそうだった。
この気持に流されたら、自分もこのまま故郷に逃げ帰りかねない。
もちろん両親は喜ぶだろうが……。
高校まで過ごしたあの部屋で、宿題をバリバリこなせる気はしなかった。
由美は背筋を伸ばし、歩幅を広げた。
日傘の柄を、トーチのようにかかげる。
踵が一直線の線上に下りるよう、歩みを進める。
いわゆるモデルウォークだ。
副業でモデルをやっているという学友に教えてもらった。
気合のいる歩き方で、意識していなければ、なかなか出来ない。
歩くことに集中しなければならないのだ。
だから、余計なことを考えずに済む。
さらに、目線が高くなることにより、気もちも持ちあがる気がした。
「美弥子さん、もうちょっと我慢。
あなたもね」
しかし、女店員はもう、自分の両腕では身を支えきれないのだろう。
頭部が、さらに股間に押しつけられた。
美弥子は、両手を女店員の髪に掛けた。
もちろん、引き離すつもりだった。
しかし……。
美弥子の腕が起こしたのは、異なる動作だった。
まるで、手綱のように髪を鷲掴み……。
女店員の頭部を、自らの股間に打ちつけ始めた。
「もう、恥も外聞も無いわね。
ガニ股で踏ん張っちゃって。
スゴい格好よ。
長い脚が大きく開いて、宇宙船の着陸脚みたい。
でも、最高のポーズ。
これ、絶対いただきだわ。
AVのフィニッシュシーン。
さぁ、イクわよ。
いいわね。
はっ」
パンパンパンパンパンパンパンパンパン!
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「イクイクイクイクイクイクイクイク……。
イックぅぅ」
「わきゃ。
わきゃきゃ」
三位一体の馬のバランスが、一瞬で崩れた。
美弥子の背中が、タンクを擦りながら落下する。
尻が、便器の蓋でバウンドした。
両手は女店員の髪を掴んだままだった。
女店員の身体も、一緒に落下したのだ。
おそらく、便器の蓋で顎を打ったのではないか。
しかし、痛みを訴える声は聞こえなかった。
すでに、痛みを感じる意識が失われているのだろう。
脳の思考域が、急速に狭まるのを感じた。
万里亜は……。
万里亜はイケたのだろうか?
美弥子の瞳は、それを確認することが出来なかった。
視線はすでに、天井を通り過ぎ、後ろの壁を彷徨っていた。
刹那……。
床に肉を投げ落としたような音が響いた。
最後に高い位置にあった肉体は、万里亜だけだ。
イケたのだ。
万里亜も。
悲哀に近い安堵感が、美弥子の意識を掬い……。
そして、流し去った。
あなたもね」
しかし、女店員はもう、自分の両腕では身を支えきれないのだろう。
頭部が、さらに股間に押しつけられた。
美弥子は、両手を女店員の髪に掛けた。
もちろん、引き離すつもりだった。
しかし……。
美弥子の腕が起こしたのは、異なる動作だった。
まるで、手綱のように髪を鷲掴み……。
女店員の頭部を、自らの股間に打ちつけ始めた。
「もう、恥も外聞も無いわね。
ガニ股で踏ん張っちゃって。
スゴい格好よ。
長い脚が大きく開いて、宇宙船の着陸脚みたい。
でも、最高のポーズ。
これ、絶対いただきだわ。
AVのフィニッシュシーン。
さぁ、イクわよ。
いいわね。
はっ」
パンパンパンパンパンパンパンパンパン!
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「イクイクイクイクイクイクイクイク……。
イックぅぅ」
「わきゃ。
わきゃきゃ」
三位一体の馬のバランスが、一瞬で崩れた。
美弥子の背中が、タンクを擦りながら落下する。
尻が、便器の蓋でバウンドした。
両手は女店員の髪を掴んだままだった。
女店員の身体も、一緒に落下したのだ。
おそらく、便器の蓋で顎を打ったのではないか。
しかし、痛みを訴える声は聞こえなかった。
すでに、痛みを感じる意識が失われているのだろう。
脳の思考域が、急速に狭まるのを感じた。
万里亜は……。
万里亜はイケたのだろうか?
美弥子の瞳は、それを確認することが出来なかった。
視線はすでに、天井を通り過ぎ、後ろの壁を彷徨っていた。
刹那……。
床に肉を投げ落としたような音が響いた。
最後に高い位置にあった肉体は、万里亜だけだ。
イケたのだ。
万里亜も。
悲哀に近い安堵感が、美弥子の意識を掬い……。
そして、流し去った。