由美はiPhoneを構えたまま、美弥子の真横に身を戻した。
仮面の後ろに踊る髪が、競走馬のたてがみのように靡いている。
腰は、無限記号を描きながら、高速に回転していた。
動輪を繋ぐ連結棒のようだった。
美弥子の顎があがった。
「はぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
サックスのフレーズを切り裂き、警笛に似た雄叫びが聞こえた。
場の空気が、二次関数のグラフを描いて昂まる。
由美は、女教授に目を移した。
すでに女教授からは、今の姿勢を拒む意志が失われていた。
なすがままに肉を揺さぶられながら、蹂躙される我が身に惑溺しているようだった。
頬をソファーの座面に着け、泳者が息継ぎをする角度で、顔が由美の方を向いている。
口は半開き、捲れあがった唇から覗く歯の奥で、舌がエスカのように閃いている。
鼻の穴が、瀕死の動物めいて伸縮を繰り返していた。
見開いた目蓋のあわいで、黒目が迫りあがっている。
すでに、意識が半分飛んでいるのだろう。
風が動いた。
美弥子が、片手を伸ばしていた。
指先が、女教授の顔を指している。
顔を近くから撮れと言っているのだ。
由美は、脚元のテーブルを押しやり、ソファーとの間に隙間を作った。
その間に、入りこむ。
女教授の顔が間近に迫った。
液晶に拡大された顔は、人の顔とは思えなかった。
鼻汁まで流している。
哀れさえ感じた。
もういいだろう。
由美は、これ以上、顔のアップを撮るのが忍びなく、液晶を美弥子に向けた。
女教授の背中越しに撮るかたちになる。
女教授の巨大な相臀は、桃太郎が産まれた桃を思わせた。
巨大な桃は、輪郭を乱しながら揺れていた。
むろん、その後ろから、美弥子が腸骨をぶつけているからだ。
止むことのない激しいピストン運動だった。
臍を囲んで、腹筋が割れている。
男性そのものの動きだ。
しかしその肉体は、女性のフォルムを持っているのだ。
蜂のように括れた腰。
さらに特筆すべきは、乳房だった。
もちろん大きいが、脂肪の柔らかさは感じられなかった。
ゴムまりを最大限膨らませた弾力を誇示していた。
形状は、まさに砲弾だった。
乳首が斜め上方を向き、腰の動きに連動し、宙を突き刺していた。
仮面の後ろに踊る髪が、競走馬のたてがみのように靡いている。
腰は、無限記号を描きながら、高速に回転していた。
動輪を繋ぐ連結棒のようだった。
美弥子の顎があがった。
「はぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
サックスのフレーズを切り裂き、警笛に似た雄叫びが聞こえた。
場の空気が、二次関数のグラフを描いて昂まる。
由美は、女教授に目を移した。
すでに女教授からは、今の姿勢を拒む意志が失われていた。
なすがままに肉を揺さぶられながら、蹂躙される我が身に惑溺しているようだった。
頬をソファーの座面に着け、泳者が息継ぎをする角度で、顔が由美の方を向いている。
口は半開き、捲れあがった唇から覗く歯の奥で、舌がエスカのように閃いている。
鼻の穴が、瀕死の動物めいて伸縮を繰り返していた。
見開いた目蓋のあわいで、黒目が迫りあがっている。
すでに、意識が半分飛んでいるのだろう。
風が動いた。
美弥子が、片手を伸ばしていた。
指先が、女教授の顔を指している。
顔を近くから撮れと言っているのだ。
由美は、脚元のテーブルを押しやり、ソファーとの間に隙間を作った。
その間に、入りこむ。
女教授の顔が間近に迫った。
液晶に拡大された顔は、人の顔とは思えなかった。
鼻汁まで流している。
哀れさえ感じた。
もういいだろう。
由美は、これ以上、顔のアップを撮るのが忍びなく、液晶を美弥子に向けた。
女教授の背中越しに撮るかたちになる。
女教授の巨大な相臀は、桃太郎が産まれた桃を思わせた。
巨大な桃は、輪郭を乱しながら揺れていた。
むろん、その後ろから、美弥子が腸骨をぶつけているからだ。
止むことのない激しいピストン運動だった。
臍を囲んで、腹筋が割れている。
男性そのものの動きだ。
しかしその肉体は、女性のフォルムを持っているのだ。
蜂のように括れた腰。
さらに特筆すべきは、乳房だった。
もちろん大きいが、脂肪の柔らかさは感じられなかった。
ゴムまりを最大限膨らませた弾力を誇示していた。
形状は、まさに砲弾だった。
乳首が斜め上方を向き、腰の動きに連動し、宙を突き刺していた。
美弥子は、腰を落としたガニ股の姿勢のまま、体勢を整えた。
ディルドゥから離した手も、女教授の腰に回した。
両手が、腿の付け根を掬っていた。
女教授は、ソファーの上を這って逃げようとしたが……。
再び爪先が床を離れており、上体の力だけでは、前腕が座面を藻掻くばかりだった。
美弥子の腰が、再び退いた。
2つの性器を繋ぐディルドゥが覗いた。
それは、2つの肉体を繋ぐ架け橋に見えた。
性交とは、そういうものなのだろうか。
2つの肉体に、橋を掛ける行為。
そしてその橋を渡り、精液が受け渡される。
それが国産みであり、人としての生殖なのだ。
むろんこれは、男女の性交の話だ。
では、目の前のこの行為は、いったい何なのだろう。
2つの肉体を繋ぐのは、血の通わない剛体だ。
由美の脳裏には、近未来映画の1シーンが浮かんでいた。
人体の一部を剛体に置き換えた存在。
そう。
サイボーグだ。
仮面の美弥子は、一種のサイボーグと云えるのではないか。
この機械の用途は、むろん生殖ではない。
これは、女性に苦痛と悦楽を与えるための機械だ。
パン。
音が聞こえた気がした。
矯めた弓が放たれるように、美弥子の腰が煽られ、腸骨が女教授の尻を叩いたのだ。
女教授の尻には、セルライトのさざ波が生まれた。
波は太腿を伝い下り、膝の汀まで洗った。
対照的に、腰を送った美弥子の尻たぶは大きく窪み、若い筋肉の弾力を誇示していた。
由美は、躍動する尻を撮るため、美弥子の後ろに回った。
美弥子の腰が再び引かれ、女体のフォルムを取り戻す。
しかし、一瞬後には前進し、再び男性的な筋肉を露わにする。
一瞬ごとに、男女の肉体が入れ替わって見えた。
男女の尻が交互に写される、フラッシュバックのようだった。
手を伸べて、この不思議な筋肉の躍動をたなごころに感じたかった。
しかし、iPhoneを持っていてはそれもかなわない。
フラッシュバックのスピードがさらに増した。
映像は、まさに瞬時に切り替わる。
サブリミナル映像のようだった。
やがて男女の尻が重なり、輪郭を消し始めた。
美弥子の尻は、サイボーグの機能を欲しいままに発揮している。
サイボーグでなければ、まさにアフリカの魔物だ。
とても人間の動きとは思えなかった。
ディルドゥから離した手も、女教授の腰に回した。
両手が、腿の付け根を掬っていた。
女教授は、ソファーの上を這って逃げようとしたが……。
再び爪先が床を離れており、上体の力だけでは、前腕が座面を藻掻くばかりだった。
美弥子の腰が、再び退いた。
2つの性器を繋ぐディルドゥが覗いた。
それは、2つの肉体を繋ぐ架け橋に見えた。
性交とは、そういうものなのだろうか。
2つの肉体に、橋を掛ける行為。
そしてその橋を渡り、精液が受け渡される。
それが国産みであり、人としての生殖なのだ。
むろんこれは、男女の性交の話だ。
では、目の前のこの行為は、いったい何なのだろう。
2つの肉体を繋ぐのは、血の通わない剛体だ。
由美の脳裏には、近未来映画の1シーンが浮かんでいた。
人体の一部を剛体に置き換えた存在。
そう。
サイボーグだ。
仮面の美弥子は、一種のサイボーグと云えるのではないか。
この機械の用途は、むろん生殖ではない。
これは、女性に苦痛と悦楽を与えるための機械だ。
パン。
音が聞こえた気がした。
矯めた弓が放たれるように、美弥子の腰が煽られ、腸骨が女教授の尻を叩いたのだ。
女教授の尻には、セルライトのさざ波が生まれた。
波は太腿を伝い下り、膝の汀まで洗った。
対照的に、腰を送った美弥子の尻たぶは大きく窪み、若い筋肉の弾力を誇示していた。
由美は、躍動する尻を撮るため、美弥子の後ろに回った。
美弥子の腰が再び引かれ、女体のフォルムを取り戻す。
しかし、一瞬後には前進し、再び男性的な筋肉を露わにする。
一瞬ごとに、男女の肉体が入れ替わって見えた。
男女の尻が交互に写される、フラッシュバックのようだった。
手を伸べて、この不思議な筋肉の躍動をたなごころに感じたかった。
しかし、iPhoneを持っていてはそれもかなわない。
フラッシュバックのスピードがさらに増した。
映像は、まさに瞬時に切り替わる。
サブリミナル映像のようだった。
やがて男女の尻が重なり、輪郭を消し始めた。
美弥子の尻は、サイボーグの機能を欲しいままに発揮している。
サイボーグでなければ、まさにアフリカの魔物だ。
とても人間の動きとは思えなかった。