姉は、美弥子の目前まで身を進め……。
反射的に退いた美弥子の手から、ドアノブを奪った。
扉を大きく開く。
「今日は、この子のことで来たのよ。
ほら、里、こっちいらっしゃい」
姉は美里の手首を取ると、人形を扱うように腕を引いた。
ミサが大きくよろめきながら、美弥子の視界に入った。
美弥子を見上げたミサの顔が、大きく歪んだ。
「いやぁ」
ドアの外に逃れようとする。
しかし、ミサの手首を掴んだ姉の腕がそれを許さなかった。
「やっぱり、あなたの仕業ね。
お邪魔させていただくわよ」
美弥子の返答も聞かず、姉は玄関に踏みこんだ。
姉の勢いに気圧され、美弥子は何も言えないようだった。
実際、姉の言うことが当たっているだけに、美弥子は姉を拒否できないのだろう。
それは由美も同じだった。
やり方は強引だが、正当性はこの姉にあった。
□
姉はミサを引きずりながら、廊下を進んだ。
美弥子の案内も乞わず、自分の家を歩く足取りだった。
リビングの扉を抜けると、姉は放り出すようにミサの腕を放した。
ミサが、フローリングにくずおれた。
「素晴らしいお宅ね。
何もかも恵まれてらして、うらやましいわ。
美人で、スタイルも良くて、金銭的にも不自由しない。
でもね。
人の妹を、こんなにしていいって法はないはずよ。
さあ、おっしゃって。
いったい、妹に何をしたの?」
仁王立ちの姉を前に、美弥子はうなだれるばかりだった。
無理もない。
この部屋で行われた所行は、人に話せるものでは無かった。
「言えないの?
それじゃ藤村さん、あなたからおっしゃって」
反射的に退いた美弥子の手から、ドアノブを奪った。
扉を大きく開く。
「今日は、この子のことで来たのよ。
ほら、里、こっちいらっしゃい」
姉は美里の手首を取ると、人形を扱うように腕を引いた。
ミサが大きくよろめきながら、美弥子の視界に入った。
美弥子を見上げたミサの顔が、大きく歪んだ。
「いやぁ」
ドアの外に逃れようとする。
しかし、ミサの手首を掴んだ姉の腕がそれを許さなかった。
「やっぱり、あなたの仕業ね。
お邪魔させていただくわよ」
美弥子の返答も聞かず、姉は玄関に踏みこんだ。
姉の勢いに気圧され、美弥子は何も言えないようだった。
実際、姉の言うことが当たっているだけに、美弥子は姉を拒否できないのだろう。
それは由美も同じだった。
やり方は強引だが、正当性はこの姉にあった。
□
姉はミサを引きずりながら、廊下を進んだ。
美弥子の案内も乞わず、自分の家を歩く足取りだった。
リビングの扉を抜けると、姉は放り出すようにミサの腕を放した。
ミサが、フローリングにくずおれた。
「素晴らしいお宅ね。
何もかも恵まれてらして、うらやましいわ。
美人で、スタイルも良くて、金銭的にも不自由しない。
でもね。
人の妹を、こんなにしていいって法はないはずよ。
さあ、おっしゃって。
いったい、妹に何をしたの?」
仁王立ちの姉を前に、美弥子はうなだれるばかりだった。
無理もない。
この部屋で行われた所行は、人に話せるものでは無かった。
「言えないの?
それじゃ藤村さん、あなたからおっしゃって」
「やっぱりお嬢様ね。
凄いとこにお住まいだわ」
そう言いながらも姉は、まったく臆する様子が無かった。
エントランスから見上げる窓は、カーテンが開いていた。
美弥子は、在宅しているようだ。
□
2人を伴いドアの前に立つと、姉はミサの腕を引き、ドア脇に身を避けた。
ドアスコープの死角になる位置だった。
無言のまま、顎で由美を促した。
由美は、チャイムに指を伸ばした。
室内に響くチャイム音を聞きながら、由美の心は再び揺れていた。
早く美弥子に縋りたいという気持ちと……。
美弥子に出てきて欲しくないという気持ちが、相半ばしていた。
やがて、チャイム音が途絶えた静寂の中を、小走りの足音が近づいてきた。
スリッパの足音が止まり、サンダルの音に替わる。
再び静寂が戻った。
ドアスコープから、外部を見定めているのだろう。
広角レンズには、縋るように見上げる由美の姿だけが映っているはずだ。
チェーンが外される音と共に、ドアが開いた。
「由美ちゃん……。
どうかしたの?
叔母さま、大丈夫そうだった?」
美弥子は、由美を迎え入れるため、大きく扉を開いた。
「思ったとおり、あなただったわね」
声と共に、姉は美弥子の視界に踏みこんだ。
美弥子は、声の主に視線を移した。
その相貌が、驚愕の表情に変わった。
やはり美弥子は、この姉を知っていたのだ。
ミサの姉であれば、それも不思議ではない。
おそらく、同じ高校だったのだろう。
しかし、そうなるとこの姉は、自分たちより1つか2つしか年上でないことになる。
姉の物腰は、とうてい二十歳そこそこのものとは思えなかった。
「絶対、あなただと思っていたわ。
このお部屋、ネームプレートも出てないから……。
ドアが開くまで、100%確信は出来なかったけどね。
確か、大室さんだったわよね?」
凄いとこにお住まいだわ」
そう言いながらも姉は、まったく臆する様子が無かった。
エントランスから見上げる窓は、カーテンが開いていた。
美弥子は、在宅しているようだ。
□
2人を伴いドアの前に立つと、姉はミサの腕を引き、ドア脇に身を避けた。
ドアスコープの死角になる位置だった。
無言のまま、顎で由美を促した。
由美は、チャイムに指を伸ばした。
室内に響くチャイム音を聞きながら、由美の心は再び揺れていた。
早く美弥子に縋りたいという気持ちと……。
美弥子に出てきて欲しくないという気持ちが、相半ばしていた。
やがて、チャイム音が途絶えた静寂の中を、小走りの足音が近づいてきた。
スリッパの足音が止まり、サンダルの音に替わる。
再び静寂が戻った。
ドアスコープから、外部を見定めているのだろう。
広角レンズには、縋るように見上げる由美の姿だけが映っているはずだ。
チェーンが外される音と共に、ドアが開いた。
「由美ちゃん……。
どうかしたの?
叔母さま、大丈夫そうだった?」
美弥子は、由美を迎え入れるため、大きく扉を開いた。
「思ったとおり、あなただったわね」
声と共に、姉は美弥子の視界に踏みこんだ。
美弥子は、声の主に視線を移した。
その相貌が、驚愕の表情に変わった。
やはり美弥子は、この姉を知っていたのだ。
ミサの姉であれば、それも不思議ではない。
おそらく、同じ高校だったのだろう。
しかし、そうなるとこの姉は、自分たちより1つか2つしか年上でないことになる。
姉の物腰は、とうてい二十歳そこそこのものとは思えなかった。
「絶対、あなただと思っていたわ。
このお部屋、ネームプレートも出てないから……。
ドアが開くまで、100%確信は出来なかったけどね。
確か、大室さんだったわよね?」