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どうやら、この日の天気予報は外れそうだった。
最後の授業が始まるころから、空が急に暗くなった。
窓の外は、まるで夕暮れのように色彩を落としていた。
授業を終えてキャンパスの広場に出ると、空には厚い雲が垂れこめていた。
「降りそうだね」
「今日は、寄り道しないで帰ろう」
この朝、2人が美弥子のマンションを出たときには、爽やかな梅雨の晴れ間が広がっていた。
天気予報も、宵のうちから曇るというものだった。
傘は持って出なかった。
2人は、駅前の店で時間を潰すこともせず、真っ直ぐに美弥子のマンションに向かった。
マンションの最寄り駅を出ると、鼠色の斑雲が、商店街に被さるように流れていた。
2人は、早々と明かりを灯し始めた店の前を、足早に抜けていった。
「どうやら持ったね」
「うん」
商店街を抜けきり、2人がそう言い交わした途端だった。
アスファルトを、大粒の雨が叩き始めた。
灰色の道路が、たちまち漆黒のドットで塗り潰されていく。
弾痕が穿たれているようだった。
このところの晴れ間で乾いていたアスファルトからは、埃の匂いが舞い立った。
すでに商店街は尽きていて、飛びこむ店も軒先も無い。
「由美ちゃん、走ろう」
美弥子は、由美の手を引いて走り出した。
マンションがもう見えるところまで来たときだった。
それまで、きゃあきゃあ言いながら走っていた由美の脚が、突然止まった。
傍らに古い小公園があった。
由美の瞳は、公園の鬱蒼とした繁みを見ていた。
「由美ちゃん?
どうしたの?
濡れちゃうから、走ろ」
由美の手を引いて促したが、由美は動こうとはしなかった。
「美弥ちゃん……。
由美、うんち」
どうやら、この日の天気予報は外れそうだった。
最後の授業が始まるころから、空が急に暗くなった。
窓の外は、まるで夕暮れのように色彩を落としていた。
授業を終えてキャンパスの広場に出ると、空には厚い雲が垂れこめていた。
「降りそうだね」
「今日は、寄り道しないで帰ろう」
この朝、2人が美弥子のマンションを出たときには、爽やかな梅雨の晴れ間が広がっていた。
天気予報も、宵のうちから曇るというものだった。
傘は持って出なかった。
2人は、駅前の店で時間を潰すこともせず、真っ直ぐに美弥子のマンションに向かった。
マンションの最寄り駅を出ると、鼠色の斑雲が、商店街に被さるように流れていた。
2人は、早々と明かりを灯し始めた店の前を、足早に抜けていった。
「どうやら持ったね」
「うん」
商店街を抜けきり、2人がそう言い交わした途端だった。
アスファルトを、大粒の雨が叩き始めた。
灰色の道路が、たちまち漆黒のドットで塗り潰されていく。
弾痕が穿たれているようだった。
このところの晴れ間で乾いていたアスファルトからは、埃の匂いが舞い立った。
すでに商店街は尽きていて、飛びこむ店も軒先も無い。
「由美ちゃん、走ろう」
美弥子は、由美の手を引いて走り出した。
マンションがもう見えるところまで来たときだった。
それまで、きゃあきゃあ言いながら走っていた由美の脚が、突然止まった。
傍らに古い小公園があった。
由美の瞳は、公園の鬱蒼とした繁みを見ていた。
「由美ちゃん?
どうしたの?
濡れちゃうから、走ろ」
由美の手を引いて促したが、由美は動こうとはしなかった。
「美弥ちゃん……。
由美、うんち」
由美は、綺麗な長い指をしていた。
とりわけ特徴的なのが親指だった。
ほかの指と太さが変わらず、関節の膨らみも無い。
長さは、人差し指ほどもあった。
きっと妖精は、こんな手をしているのだろう。
そう思わせる指だった。
その細く長い親指が、膣壁を蠢いている。
「美弥ちゃん、ヤらしい……。
お汁垂れてきた。
悪い子ですね」
美弥子は尻たぶを絞りつづけた。
背筋を這い上がる甲虫の群……。
その鈎爪が頸筋まで届いたとき、甲虫は次々と背中を割り、悦楽の花に姿を変えた。
「そういう子は、こうしてあげます」
「あっ、あぁっ」
由美の指に、力が籠もるのが判った。
由美の中指が、直腸壁を押し上げていた。
親指は、膣壁を押し下げている。
美弥子の胎内で、中指と親指が合わさろうとしているのだ。
おそらく由美の2本の指は、影絵の狐をつくるように向き合っているのであろう。
間に、直腸壁と膣壁を挟んで。
「あぅっ、あぅっ」
由美の指先が動きだした。
中指と薬指が、擦り合わされていた。
挟まれた直腸壁と膣壁が揉み立てられる。
膝から力が抜けた。
懸命に由美の肩に縋る。
胎内から、異様な感覚が湧きあがってきた。
ラフレシアの花が開くように、身体が裏返しに捲れるようだった。
「あぁっ。
由美ちゃん、ダメ!
ダメ!
おしっこ!
おしっこ出ちゃう!」
「いいよ。
していいよ」
由美の言葉に応えるように、美弥子の尿道口から液体が噴出した。
容赦なく、由美の腕に降りかかる。
「あぁぁぁぁぁ、ぁ、ぁ」
「え?
美弥ちゃん、何これ?
おしっこじゃないよ」
由美が床を指差していた。
確かに、膀胱が絞られる感覚は無かった。
床には、美弥子の撒き散らした液体が、そこここに溜まりをつくっていた。
漆黒のフローリングに浮いているのは、薄白い半透明の液体だった。
米の磨ぎ汁を零したようだった。
しかし、見届けたのはそこまでだった。
美弥子の瞳は、滑るように上瞼に隠れた。
とりわけ特徴的なのが親指だった。
ほかの指と太さが変わらず、関節の膨らみも無い。
長さは、人差し指ほどもあった。
きっと妖精は、こんな手をしているのだろう。
そう思わせる指だった。
その細く長い親指が、膣壁を蠢いている。
「美弥ちゃん、ヤらしい……。
お汁垂れてきた。
悪い子ですね」
美弥子は尻たぶを絞りつづけた。
背筋を這い上がる甲虫の群……。
その鈎爪が頸筋まで届いたとき、甲虫は次々と背中を割り、悦楽の花に姿を変えた。
「そういう子は、こうしてあげます」
「あっ、あぁっ」
由美の指に、力が籠もるのが判った。
由美の中指が、直腸壁を押し上げていた。
親指は、膣壁を押し下げている。
美弥子の胎内で、中指と親指が合わさろうとしているのだ。
おそらく由美の2本の指は、影絵の狐をつくるように向き合っているのであろう。
間に、直腸壁と膣壁を挟んで。
「あぅっ、あぅっ」
由美の指先が動きだした。
中指と薬指が、擦り合わされていた。
挟まれた直腸壁と膣壁が揉み立てられる。
膝から力が抜けた。
懸命に由美の肩に縋る。
胎内から、異様な感覚が湧きあがってきた。
ラフレシアの花が開くように、身体が裏返しに捲れるようだった。
「あぁっ。
由美ちゃん、ダメ!
ダメ!
おしっこ!
おしっこ出ちゃう!」
「いいよ。
していいよ」
由美の言葉に応えるように、美弥子の尿道口から液体が噴出した。
容赦なく、由美の腕に降りかかる。
「あぁぁぁぁぁ、ぁ、ぁ」
「え?
美弥ちゃん、何これ?
おしっこじゃないよ」
由美が床を指差していた。
確かに、膀胱が絞られる感覚は無かった。
床には、美弥子の撒き散らした液体が、そこここに溜まりをつくっていた。
漆黒のフローリングに浮いているのは、薄白い半透明の液体だった。
米の磨ぎ汁を零したようだった。
しかし、見届けたのはそこまでだった。
美弥子の瞳は、滑るように上瞼に隠れた。