「久しぶりだね、美弥子。
もう、痛みは引いたのかい?」
美弥子の顔が強ばった。
またあれで、咽喉や性器を突かれるのか。
「安心しなよ。
もう、おまえにディルドゥは使わない。
あの日自分がどうなったのか、おまえ、判ってるのかい?」
女教師は、立ちつくす美弥子の周りを、後ろ手を組んで巡っていた。
「まったく判ってないようだね、その顔じゃ。
おまえはね、男根をぶち込まれてケダモノに変わったんだよ。
いやらしいケダモノに。
まさしく性獣だったよ、あれは。
生まれついてのケダモノなんだよ、おまえは」
女教師は正面で立ち止まり、美弥子を見上げた。
「また化けられたんじゃ敵わないからね。
おまえにはこれから、観客の役目を与える。
どうだい、楽な役だろ。
大女優さんには、役不足かねえ」
観客の役とは何のことなのか、美弥子にはまるで理解出来なかった。
そんな美弥子を楽しそうに見上げながら、女教師は再び周りを巡り始めた。
「といっても、この劇場にはルールがある。
裸のショーを見ようってんだからね。
観客にも、身だしなみってのが求められるのさ。
さあ、脱ぎなさい。
何もかも。
この劇場の正装は、全裸なんだよ」
やはり何も変わっていなかった。
いつものとおり、自分はこの部屋にいるのだ。
いつもと変わらず……。
いや、今日は窓が閉まっている。
そこだけが少し違っている……。
風が窓枠を鳴らす音を聞きながら、美弥子はぼんやりとそんなことを考えた。
のろのろと服を脱ぎながら。
「やっぱり、いい身体してるよ。
ヴィーナス誕生、といったところだね。
ほんと、観客にはもったいないよ」
女教師は美弥子の乳房に手を触れた。
まだ膨れていない乳首に、人差し指をあてる。
指を、ワイパーのように左右に動かした。
美弥子は肛門を絞り、全身を強ばらせた。
力を抜いたら、乳首が起ってしまいそうだった。
「おっと、危ない危ない。
これじゃ観客サービスが過ぎるね。
こっちに来なさい」
女教師は、部屋の奥に美弥子を導いた。
壁際の大きな物入れの前に立たせる。
材質は木製のようだった。
白い塗料が塗られていた。
無機質な保健室には似合わない、暖かな質感があった。
観音開きらしい前面の扉は、細長い横板で覆われていた。
航空機のフラップを重ねたように並ぶ横板は、確かルーバーと呼ばれるものだ。
中庭にある百葉箱を思い起こさせた。
「おまえの観客席だよ。
貴賓席さ」
もう、痛みは引いたのかい?」
美弥子の顔が強ばった。
またあれで、咽喉や性器を突かれるのか。
「安心しなよ。
もう、おまえにディルドゥは使わない。
あの日自分がどうなったのか、おまえ、判ってるのかい?」
女教師は、立ちつくす美弥子の周りを、後ろ手を組んで巡っていた。
「まったく判ってないようだね、その顔じゃ。
おまえはね、男根をぶち込まれてケダモノに変わったんだよ。
いやらしいケダモノに。
まさしく性獣だったよ、あれは。
生まれついてのケダモノなんだよ、おまえは」
女教師は正面で立ち止まり、美弥子を見上げた。
「また化けられたんじゃ敵わないからね。
おまえにはこれから、観客の役目を与える。
どうだい、楽な役だろ。
大女優さんには、役不足かねえ」
観客の役とは何のことなのか、美弥子にはまるで理解出来なかった。
そんな美弥子を楽しそうに見上げながら、女教師は再び周りを巡り始めた。
「といっても、この劇場にはルールがある。
裸のショーを見ようってんだからね。
観客にも、身だしなみってのが求められるのさ。
さあ、脱ぎなさい。
何もかも。
この劇場の正装は、全裸なんだよ」
やはり何も変わっていなかった。
いつものとおり、自分はこの部屋にいるのだ。
いつもと変わらず……。
いや、今日は窓が閉まっている。
そこだけが少し違っている……。
風が窓枠を鳴らす音を聞きながら、美弥子はぼんやりとそんなことを考えた。
のろのろと服を脱ぎながら。
「やっぱり、いい身体してるよ。
ヴィーナス誕生、といったところだね。
ほんと、観客にはもったいないよ」
女教師は美弥子の乳房に手を触れた。
まだ膨れていない乳首に、人差し指をあてる。
指を、ワイパーのように左右に動かした。
美弥子は肛門を絞り、全身を強ばらせた。
力を抜いたら、乳首が起ってしまいそうだった。
「おっと、危ない危ない。
これじゃ観客サービスが過ぎるね。
こっちに来なさい」
女教師は、部屋の奥に美弥子を導いた。
壁際の大きな物入れの前に立たせる。
材質は木製のようだった。
白い塗料が塗られていた。
無機質な保健室には似合わない、暖かな質感があった。
観音開きらしい前面の扉は、細長い横板で覆われていた。
航空機のフラップを重ねたように並ぶ横板は、確かルーバーと呼ばれるものだ。
中庭にある百葉箱を思い起こさせた。
「おまえの観客席だよ。
貴賓席さ」
■
あのあと、奇怪な木馬の上で自分がどうなったのか、美弥子にはまったく記憶がなかった。
あのあととは無論、女教師に処女膜を貫かれた後のことだ。
そこまでは覚えていた。
激烈な痛みが全身を貫いた瞬間は、忘れようがない。
しかし、その後のことはまるで判らない。
おそらく、痛みに耐えきれず失神してしまったのだろう。
木馬から下ろされたことにも、気がつかなかった。
目が覚めると、ベッドに仰向けに寝かされていたのだ。
身体の上には、きちんと布団が掛けられていた。
意識がはっきりするにつれ、膣内にまだ何か入っているような異物感を覚えた。
あたりを見回しても、女教師の姿は見えなかった。
美弥子は上体を起こした。
全裸のままだった。
布団を下半身まで捲る。
破瓜による出血は、拭き取られていた。
性器を確認する。
中に、あの奇怪なものが入ったままのような気がしていた。
しかし、陰唇を捲ってみても、そこには何もなかった。
今なお残る異物感は、引き裂かれた処女膜の悲痛な叫びなのだろうか。
美弥子は、涙ひとつ流れないことを訝った。
不思議と感情が動かなかった。
ただ、来るところまで来てしまったという、旅情に似た寂しさを覚えた。
翌週から、美弥子はいつもどおり通学した。
休んだりしたら、自分の中で、あの事実が大きなものとなってしまいそうに思えた。
何でもないことなのだ。
処女を失うことなど……。
女教師も、何事も無かったように出勤していた。
保健の授業で女教師が教壇に立ったときには、やはり顔を真っ直ぐに見られなかった。
教科書に目を落としたまま、女教師の声を聞いた。
女教師には、まったく変わったところは無かった。
彼女にとっては、特別なことでは無いのだろう。
女生徒の処女を奪うということが。
何事も無かったかのように、また煉獄の日々が始まるのだ。
女教師の声を聞きながら、美弥子の胸に、悲哀のようなさざ波が微かに立った。
しかしその週、女教師からの呼び出しメールが届くことはなかった。
ひょっとしたらと、美弥子に微かな希望が生まれた。
処女を奪われるということが、一連の儀式の終わりだったのではないかと。
幕は下り、自分の役目は終わった……。
微かな希望が、美弥子の中で少しずつ育っていった。
しかし、翌週。
メールが届いた。
スカートのポケットで携帯が震えたとき、美弥子の全身も震えた。
震える指で開いた携帯は、女教師からの着信を告げていた。
放課後、美弥子は保健室を訪った。
あのあと、奇怪な木馬の上で自分がどうなったのか、美弥子にはまったく記憶がなかった。
あのあととは無論、女教師に処女膜を貫かれた後のことだ。
そこまでは覚えていた。
激烈な痛みが全身を貫いた瞬間は、忘れようがない。
しかし、その後のことはまるで判らない。
おそらく、痛みに耐えきれず失神してしまったのだろう。
木馬から下ろされたことにも、気がつかなかった。
目が覚めると、ベッドに仰向けに寝かされていたのだ。
身体の上には、きちんと布団が掛けられていた。
意識がはっきりするにつれ、膣内にまだ何か入っているような異物感を覚えた。
あたりを見回しても、女教師の姿は見えなかった。
美弥子は上体を起こした。
全裸のままだった。
布団を下半身まで捲る。
破瓜による出血は、拭き取られていた。
性器を確認する。
中に、あの奇怪なものが入ったままのような気がしていた。
しかし、陰唇を捲ってみても、そこには何もなかった。
今なお残る異物感は、引き裂かれた処女膜の悲痛な叫びなのだろうか。
美弥子は、涙ひとつ流れないことを訝った。
不思議と感情が動かなかった。
ただ、来るところまで来てしまったという、旅情に似た寂しさを覚えた。
翌週から、美弥子はいつもどおり通学した。
休んだりしたら、自分の中で、あの事実が大きなものとなってしまいそうに思えた。
何でもないことなのだ。
処女を失うことなど……。
女教師も、何事も無かったように出勤していた。
保健の授業で女教師が教壇に立ったときには、やはり顔を真っ直ぐに見られなかった。
教科書に目を落としたまま、女教師の声を聞いた。
女教師には、まったく変わったところは無かった。
彼女にとっては、特別なことでは無いのだろう。
女生徒の処女を奪うということが。
何事も無かったかのように、また煉獄の日々が始まるのだ。
女教師の声を聞きながら、美弥子の胸に、悲哀のようなさざ波が微かに立った。
しかしその週、女教師からの呼び出しメールが届くことはなかった。
ひょっとしたらと、美弥子に微かな希望が生まれた。
処女を奪われるということが、一連の儀式の終わりだったのではないかと。
幕は下り、自分の役目は終わった……。
微かな希望が、美弥子の中で少しずつ育っていった。
しかし、翌週。
メールが届いた。
スカートのポケットで携帯が震えたとき、美弥子の全身も震えた。
震える指で開いた携帯は、女教師からの着信を告げていた。
放課後、美弥子は保健室を訪った。