2016.6.23(木)
いつの間にか二の丸を夕暮れが包み始めて、薄赤く染まった座敷の中に女の白い肌がうごめいていた。
階段を上り来る明かりで、桟敷の格子天井が妖しく揺らめく。
「ふふ、下から火をもらってきたよ」
そう言いながら、春花は部屋の隅にある燭台に火を移す。
「あ……く………」
茣蓙の上で全裸に剥かれた初音の口から押し殺した声が漏れた。
上向きに横たえられた初音の体に、やはり一糸まとわぬ秋花の裸身が横抱きに取り付いている。
湿った音と共に吸い放たれた初音の乳首が、蝋燭の明かりにぬれ光って怒ったように弾んだ。
「ごらんよ春ちゃん、こんなに桃色に染まって……。まるで十七、八のおぼこ娘のようじゃないか」
秋花は顔を紅潮させて、生意気そうに上を向いた鼻先で初音のこわばった乳首をなぶった。
年相応に柔らかさと重みをたたえた初音の裸身がわなわなと震える。
「いうな、……下郎」
その物言いとは裏腹に、初音は両手で顔を覆った。
「秋ちゃん、あんたの年増好みは今に始まったこっちゃないけど、お母ちゃんだと思っていくら吸っても、そっからはお乳は出やしないんだよう」
春花はその悪戯っぽい笑みを絡み合う二人の女に向けた。
「ふん、お母ちゃんなんて……、あんただって知らないじゃないか。いいんだ、この柔らかい体、たまんないよう。それにね……」
ゆったりと重みをたたえた初音の乳房に、秋花は夢見るように顔を埋める。
「この身体、もうあたしの思いに少しずつ応えてきてるんだよう……。そろそろ極楽を見せてあげますよ、初音さま……」
再び右の乳首を吸い含むと、秋花の右手が初音の下腹部へと伸びていく。
畳一枚ほど離れた茣蓙に座ったまま、羅紗は目を閉じてその光景から顔を背けた。
両手を組んで裸の胸を隠していたが、まだその下半身には腰のものをまとったままである。
「なんだ羅紗様、見てないじゃありませんか。ほら、折角明かりをお持ちしたんですから、目を開けてごらんなさいよ」
春花は羅紗に歩み寄ると、その横に腰を降ろした。
「あたいたちも身体を張ってお手伝いするんだ。羅紗様がそんなんじゃ、あたいたちもお役目に気が乗りませんねえ……」
そんな春花の言葉にも、羅紗は体を固くして目を閉じたままである。
「伊織に赤子を孕ませといて、まだそんな恥ずかしゅうござんすか……? 若を助けたいとは思わないんですか? さあ、目を開けて見て!」
春花の一喝に羅紗の目がうっすらと開いて、怯えた眼差しが目の前に向けられる。
「ひっ……!」
息をのんで、羅紗は目の前の光景から再び顔を背けた。
横抱きに組み敷かれた初音の股間に、秋花の右手が潜り込んでいた。
しかし初音もその挑みかかる淫らな手から、必死に身をよじらせて身を逃がしている。
淡い陰りに覗き込んだ指が、次の瞬間ひねった腰のくびれにさ迷う有様なのだ。
「ちょ、ちょっと春ちゃん」
思ったより手ごわい年増の抗いに、秋花も戸惑いの声を漏らした。
「ら、羅紗さま。ああ……、このような下郎に初音は動じは致しませぬ。どうか……、どうか心丈夫に……」
初音の言葉に羅紗はやっとその顔を上げた
じっと見つめる長い眉毛の下で、そのつぶらな瞳がうるうると潤んでいく。
「う……く……、ちょ、ちょっと春ちゃん……。こっちに来て」
しぶとい年増の抵抗に、とうとう秋花は弱音を吐いた。
「あっははは、だらしのない」
春花は嘲笑を浮かべて羅紗の隣から腰を上げた。
おもむろにまだ身に着けていた白いふんどしを外し、しなやかな体で大きく伸びをすると、頭上に束ねた長い髪の紐を解いて両手で2,3度かき上げる。
見事な腰の括れを見せつけながら、若々しい両の乳房が勢いよく弾んだ。
その瞳に淫らな輝きを宿すと、もみ合っている初音の足元にしゃがみ込む。
「よっぽど強面なんだ。いっぺん落とさないと大人しくならないんだよ」
そう言いながら、春花は両手で初音の両足首を掴んだ。
「あまり急に追い上げるんじゃないよ。今宵初音様には何度も往生していただかなきゃあね。ふふふ……、羅紗さまともども……」
秋花も一層初音の体を抱き込みながら、淫らな微笑みを春花に返した。
「あはは、わかったよ。じゃあじっくりと追い上げるから、そん時きゃしっかり抱いて、口でも吸ってあげな」
ぐいと両足を開かせると、春花は初音の女に顔を近づけていった。
「ひいっ! な、なにをする!!」
“ズ……ズズズ……。”
初音の叫びの直後に、何かを啜りあげるような湿った音がした。
「はぐっ!!」
詰まった呻きを上げてふくよかな体を反りあげると、初音は秋花に抱かれたままびくびくと震えた。
「はあっはあっ! 汚らわしい! や……、あああ……、やめなさい!」
焼けつくような息を吐きながら、身をよじって初音は叫んだ。
もうこれ以上ないほど固くなった乳首を吸い放つと、秋花は初音の耳元に身をずりあげる。
「ちょっと追われたらもう我慢できないよ。さんざん春ちゃんに遊ばれて、気が体に溜まったからね……」
耳の中に暑い息を吹き込みながら、秋花はそう囁いた。
「はあはあ……、そ、そんなことは決して……あ……、あうう~……」
「ないって言うのかい……? さあ、どうだろうね。初音さま、あんた、これまで長い間溜め込んだ蠱毒(こどく)を晴らすように、何度も往生するだろうよ……。じゃあ、春ちゃん……」
うつ伏せで初音の股間に顔を埋めた春花に向かって、秋花は意味深な笑みを漏らした。
そのまま年増の乳房をゆるゆると揉み上げながら、ねっとりと首筋に舌を這わせる。
甘く初音の花芯を吸い含んでいた春花がゆっくりとその顔を上げ、羅紗に向かって口を開く。
「さあ、しっかりと初音さまの往生を見届けるんだよ。ふふ……、若の居場所が知りたければね」
羅紗は改めて白い歯で唇を噛むと、悲痛な面持ちを春花へ向けた。
再び初音に顔を近づけた春花は、しこり返った花芯の薄皮を唇に咥える。
「はっ!!」
初音が胸の奥から吐息を吐くやいなや、ずるずると薄皮からしこりまで春花の口中に吸い込まれていったのである。
「あっ! あうう~っ!!」
泣き声にも似た年増の声が、もう夕闇に薄暗くなった座敷の中に響き渡った。
「あはああ……、ああ……離せ……、あうあああ……」
春花の顔が初音の股間で揺れ始めると、初音の裸身に狂おしいわななきが走り始めた。
娘ほどの若い女たちから肉欲に落とされる悔しさも、繰り返し押し寄せてくる快楽に霞とびそうになる。
「もう我慢できないだろう? さあ思いっきり往生しちまいな」
そう言いながら顔を寄せてきた秋花から、やっとの思いで初音は顔を背けた。
「ああっ、もうやめて………もう、ああもう許して!」
「無駄なあがきなんだよ、初音さん。もう、切ないだろう? ねえ、もう血が疼いて、体中が燃えそうだろう?」
しこった乳首もろとも乳房を掴み上げ、暑い吐息を吐く初音の唇に頬を寄せる。
秋花はすかさずその唇を吸いふさぐと、熱い舌を滑り込ませた。
その気を感じた春花は、一層深く初音の花芯に吸い付きながら、しなやかな指を濡れそぼった中に潜らせる。
「んぐうううう~………」
何と初音は、心ならずも獣じみた呻きとともに秋花の舌を吸ったのである。
しかし指を折って数えるほどの間唇を与えた初音は、我に返ったように首を振って秋花の唇から逃れた。
「はあはあ……ああ羅紗さま、見てはなりません。お許しください初音は……ああ!」
熱い鋼が背筋を貫き始めるのを感じて、初音は羅紗にそう叫んだ。
「ふふ、もう我慢できないだろう。さあしっかり抱いてあげるから、やせ我慢せずに思う存分気をやりなよ……」
「ああもう……ああ羅紗さまお許しを……初音はもう、……初音は……ああっ……」
初音のふっくらとした柔らかみがぶるぶると震えながらくねる。
首を振って春花に強ばりを吸い揺さぶられながら、初音の裸身が反り上がってうねった。
「ああ!! もうもう初音は……お許しを! 見ないで、姫!! ああだめ!」
「しっかり見るんだよ、羅紗さま!! 若のために!!」
「ああ! 羅紗さま、もう初音は……ああだめ……許して!!!」
「初音!! もうよい! 初音、もうよいのじゃ!!!」
堪らず羅紗がそう叫んだ直後、初音の体に断末魔の喜びが走った。
春花の頭を揺さぶるように下半身が弾けた。
秋花にきつく抱かれながら、再び犯してきたその舌を吸い、のどを波打たせて甘い唾を飲み下していた。
もう外はすっかり宵闇に包まれていた。
茣蓙の上で熱い息を吐き続ける初音の足元から、ようやく春花は身を起こす。
胸元の汗が蝋燭の火に輝きながら幾筋か流れ落ちた。
「うう……初音。すまぬ……」
羅紗はそんな光景から顔を伏せると、消え入るようなつぶやきを漏らした。
立膝で茣蓙に座った秋花がそんな羅紗に口を開く。
「なあに羅紗さま、こんな睦みごと、善悪の話じゃありませんよ。そんな泣かなくったって、初音さんもいい思いをしたんでさ。口をいただきながら、あたしも思わず気をやっちゃいましたよ」
「お、お前たち、必ず若の役に立つのであろうな」
秋花の言葉を聞いて、羅紗は春花秋花姉妹に険しい視線を向けた。
「おっと……」
それを聞いた春花が、薄笑いを浮かべて羅紗の前に進む。
「そいつはまだ早ようござんすよ羅紗様。初音様とあたいたちだけ汗をかいて……。
羅紗様にもそいつをとっていただく約束でしょう……?」
そう言うと、春花は腰を降ろして羅紗の白い腰のものに指をかけた。
「はっ……」
羅紗が息を飲んで体を固くすると、いつの間にか後ろに回った秋花が胸の前に組まれた両手を掴んで引き開ける。
雪のように白い胸元の肌が露わになり、形よく膨らんだ重さの先に夢見るような桃色が煙っていた。
「まあ、きれい。10年前もかわいかったけど、今は比べ物にならないわ」
春花がうっとりとため息を漏らした。
「さてと、じゃああちらの方は……どうかしらね……?」
羅紗は秋花を振り返ると、上目遣いにその顔をにらみつけた。
「おお、怖い怖い。……でも約束でしょう……?」
ゆっくりと腰のものを緩められる気配に、羅紗は唇を噛んで固く目を閉じたのである。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2016/06/23 07:29
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お待たせしました!
実に、1年2ヶ月ぶりの続編になります。
みなさんの待望コメントが、八十八十郎さんに通じました。
ただご本人は現在、熊本地震、この度の豪雨と、執筆にのみ注力できる環境にはおられません。
しかしながら、隔週で発表できるよう努力するとのお言葉をいただいております。
よって、次回の投稿は、7月7日となります。
お楽しみに!
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2. 不良読者ハーレクイン- 2016/06/23 12:42
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1年2ヶ月ぶり
もう、そないになりますか。
お久しぶりです八十八十郎さん。
もう、忘れちゃいましたよ。
羅紗様はともかく、初音?
誰、それですわ。
と思ったら、よくわからなくなったんで一から読み返す途中でした。それもどこまで進んだかすらわからなくなったんで、また一からです。
幾度も読めて楽しいな。
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3. Mikiko- 2016/06/23 19:49
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時代劇の利点を発見
何年中断してても、再開したとき、話が古くならないことです。
現代ものではそうはいきません。
特にスマホなどの機器は、日進月歩で変わりますから……。
最新だった情景描写が、中断中に化石描写と化してしまいます。
ぜーんぶ、書き直しですがな。
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4. うっかり八兵衛HQ- 2016/06/23 21:51
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そういえば……
わたしも、登場人物に携帯を持たせたところ、時代設定が携帯登場以前でした。で、急きょ携帯くんに退場を願った、という経験があります。
しかも、管理人さんからのご指摘があって気付いたんですね。自分ではまーったく気付きませんでした。
時代劇だと、間違っても携帯なんて出しませんもんね。よし、わたしも次は時代劇にするぞ(その前に、次回分を書かんかい)。
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5. Mikiko- 2016/06/24 07:27
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時代小説
わたしの好きな設定に、タイムスリップものがあります。
現代人が過去に遡り、さまざまな知識や道具で、当時の人を驚かすわけです。
石川英輔の『大江戸神仙伝』シリーズが、その代表です。
でも、携帯を持って行っても、役に立ちませんわな。
全国的に圏外ですから。
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6. タイムマシンHQ- 2016/06/24 11:01
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タイムスリップ
小説・漫画を問わず、SFのテーマの定番です。
わたしがこれまで読んだものの中では、小松左京『易仙逃里記』。これがダントツですね。
全国的に圏外は確かにそうですが、携帯を持ってるのが自分だけ、では何の役にも立ちません。あ、時計代わりにはなるか。