2016.6.3(金)
涼太は、慌てて引き戸の隙間から身を引いた。
2人はこちらを向いているので、引き戸を閉めることは叶わなかった。
足音から、2人が引き戸の前で立ち止まったのがわかった。
「どうやら……。
この部屋には、座敷わらしがいるようね」
由美の声だった。
「どこかな?」
涼太は凝固した。
「座敷わらしさん。
上がり框の床に、白い足跡が着いてたわよ」
美弥子の声だ。
さらに、由美が続けた。
「そしてその足跡は、部屋に入る方向だけ。
つまり座敷わらしは……。
この部屋に入ったまま、出て行ってないということ。
どこに隠れてるのかしら?
って……。
この部屋で、隠れるところは1箇所しか無いけど。
涼くん。
わかってるのよ、そこにいること」
と同時に、押入れが引き開けられた。
常夜灯の灯りが、涼太を襲った。
薄暗い光だが、真っ暗な中にいた涼太は、思わず目を細めた。
体育座りの膝を胸まで抱え、縮こまる。
「ほうら、いた。
美弥ちゃん、引っ張り出して」
大きく開いた引き戸の前に、美弥子がしゃがみこんだ。
涼太は、抱えた膝に顔を伏せた。
脛に回した腕に、美弥子の手が掛かった。
抵抗することは不可能だった。
美弥子の力には、千穂も驚いていた。
重い買い出しの荷を、軽々と運ぶのだ。
その腕力で引っ張られたのだ。
涼太は、ひとたまりもなく、押し入れから引き出された。
「涼くん」
胸の前で腕を組んだ仁王立ちの由美が、低く押し殺したような声で呼びかけた。
怒声よりも、むしろ怖かった。
応えることなど出来ない。
「どうしてここにいるわけ?
しかも、押し入れの中に」
涼太は、畳に横倒しになったまま、体育座りの脚を更に縮めた。
首を左右に振るばかりだ。
2人はこちらを向いているので、引き戸を閉めることは叶わなかった。
足音から、2人が引き戸の前で立ち止まったのがわかった。
「どうやら……。
この部屋には、座敷わらしがいるようね」
由美の声だった。
「どこかな?」
涼太は凝固した。
「座敷わらしさん。
上がり框の床に、白い足跡が着いてたわよ」
美弥子の声だ。
さらに、由美が続けた。
「そしてその足跡は、部屋に入る方向だけ。
つまり座敷わらしは……。
この部屋に入ったまま、出て行ってないということ。
どこに隠れてるのかしら?
って……。
この部屋で、隠れるところは1箇所しか無いけど。
涼くん。
わかってるのよ、そこにいること」
と同時に、押入れが引き開けられた。
常夜灯の灯りが、涼太を襲った。
薄暗い光だが、真っ暗な中にいた涼太は、思わず目を細めた。
体育座りの膝を胸まで抱え、縮こまる。
「ほうら、いた。
美弥ちゃん、引っ張り出して」
大きく開いた引き戸の前に、美弥子がしゃがみこんだ。
涼太は、抱えた膝に顔を伏せた。
脛に回した腕に、美弥子の手が掛かった。
抵抗することは不可能だった。
美弥子の力には、千穂も驚いていた。
重い買い出しの荷を、軽々と運ぶのだ。
その腕力で引っ張られたのだ。
涼太は、ひとたまりもなく、押し入れから引き出された。
「涼くん」
胸の前で腕を組んだ仁王立ちの由美が、低く押し殺したような声で呼びかけた。
怒声よりも、むしろ怖かった。
応えることなど出来ない。
「どうしてここにいるわけ?
しかも、押し入れの中に」
涼太は、畳に横倒しになったまま、体育座りの脚を更に縮めた。
首を左右に振るばかりだ。
コメント一覧
-
––––––
1. Mikiko- 2016/06/03 07:27
-
座敷わらし
もちろん、見たことはありません。
岩手県二戸市にある旅館『緑風荘』は、座敷わらしの出没する宿として有名だそうです。
南北朝時代、ここまで逃げ延びた南朝の子供が、病気で息を引き取りました。
そのとき、世話になった宿の主人に、「末代までこの家を守り続ける」と言い残したとか。
かつては、宿泊予約が3年待ちだったそうですが……。
2009年に、全焼。
今は、紆余曲折を経て再建されたようですが……。
座敷わらしは、帰って来たんですかね?
-
––––––
2. ホラーが好きっHQ- 2016/06/03 12:53
-
白い足跡
床掃除をしてないということ?
座敷わらし
小野不由美に『くらのかみ』という座敷わらしものがあります。
持ってるんだけど、で、読んだんだけど、ようわからんかった。こうなると再チャレンジせんとなあ。
この人の『残穢』は、山本周五郎賞を受賞しましたが、「今まで読んだ小説の中で一番怖い」、「手元に本を置いておくことすら怖い」という評価を受けたそうです。
-
––––––
3. Mikiko- 2016/06/03 19:44
-
涼太は……
自分の部屋から、裸足で来てます。
子供の足裏は、けっこう油脂が多いんでないの。
床が綺麗だからこそ、足跡が際立つんじゃないですか。
しかし、北海道の男の子。
無事、発見でしたね。
驚きました。
-
––––––
4. 足裏捜査ハーレクイン- 2016/06/03 20:44
-
涼太の足跡
ふむ。
油脂が多いって……ちゃんと足、拭けよ、涼太。
無事発見、男子。
こう言っちゃなんですが、もうアカン、と思ってました。
よかったよかった。
それにしても大したものです。なんか、ドラマみたい。
-
––––––
5. Mikiko- 2016/06/04 08:11
-
上がり框に……
足拭きはありません。
裸なんだから、拭くものナッシングです。
行方不明自体ウソで、殺して埋めたんじゃないかとも云われてましたからね。
それにしても、自衛隊はお粗末です。
これだけ探しても見つからないなら、戸外にはいないという判断が出来なかったんですかね。
ましてや、自分たちの施設です。
-
––––––
6. 『戦国自衛隊』HQ- 2016/06/04 11:46
-
↑半村良
お粗末自衛隊
確かに、そういわれてもしょうがありません。
こんなん言いたありませんが、やはり落ちてるんやないですかね、質と言いますか士気と言いますか。
まあ、無理ないとも言えますが……存在感を示す(この言い回し、きーらい)チャンスだったのにね。