2016.4.9(土)
律「何で攫うわけ?」
み「三味線の皮にするんでしょ」
律「ほんとに三味線って、猫の皮なの?」
み「ほんとらしいですよ。
今でも」
↑津軽三味線は、犬のようです。当然、猫より皮が厚くなります。
律「じゃ、猫攫いがいるのかしら?」
客「皮は、ほとんどが輸入品だそうです」
↑猫は腹の皮、犬は背中の皮を使うそうです(理由不明)。
み「なるほど。
日本の猫は安心というわけか。
ますます猫になりたくなった。
怖いのは車だけだね」
↑とにかく、車の下に入りたがります。
み「歳を取ったら、猫を飼いたいんだけど……。
外に出さないで、家猫にするか、迷うところだよ」
↑室内飼いの猫たち。外に興味津々。
み「なにしろ、出さないようにするのが大変な家なんだから」
律「どうしてよ?」
み「わたしが生まれる前から建ってる家だからね。
昔からの和風住宅」
↑東京都大田区にある『昭和のくらし博物館』。昭和26年築。
み「とにかく、開口部が多いのよ」
↑当然のことながら、わたしの家ではありません。神奈川県逗子市葉山町にある『旧足立邸(昭和8年竣工の洋風別荘)』です。施主の足立正は、王子製紙社長、日本商工会議所会頭などを務めた人。
み「片側は、ぜんぶ床までのサッシ窓って感じ」
客「耐震性、大丈夫ですか?」
↑防災科学技術研究所(兵庫県三木市)での地震による破壊実験。既存の建物を移築して実験したようです。
み「大丈夫のわけないです。
すでに歪んでるから」
↑ポーランドにあるショッピングセンター。もちろん、建ててから歪んだわけでなく、こういう設計で建てられたものです。
律「施工不良じゃないの?」
↑地震で倒壊した台湾のマンション。ヒドい話です。
み「あとになって、2階を上げたんですよ」
↑ひょっとしたら、最初から2階建てを建てるより面倒なのかも?
み「それで歪んだ。
たぶん、1階部分は、2階を上げるなんて想定してない作りなはず」
律「最初に建てた業者に直して貰えないの?」
み「業者っていうか、当時は大工さんでしょ。
たぶん、2階を上げたころには、とっくに廃業してたと思うよ」
↑こんなに古い人たちでは無かったでしょうが。
律「じゃ、2階を建てた大工さんは?
2階の上げ方が悪かったのかも知れないでしょ?」
み「その大工は、首を吊って自殺しました」
律「まぁ。
2階が傾いたから?」
↑こちら、傾いた韓国のマンション。手抜き工事は、万国共通のようです。
み「そんなわけあるかい。
商売が傾いたからでしょ」
↑こちら、評判を取るために、この形で建てられた喫茶店です。その後、商売も傾き、閉店したとか。
み「なにしろ、施工中にいろいろと思いついて、図面と違う作りにしちゃって……。
請求額が、当初の見積もりより高額になったりの人でね」
み「施主と、かなりのトラブルがあったらしい。
結局、おまえが勝手にやったんだからって、お金をもらえず……。
その分は、ぜんぶ自分の持ち出しになったりしてね。
最後は、資金繰りに詰まったみたい」
律「職人肌なのね」
み「違いますがな。
図面通り、予算通りに仕上げるのが職人でしょ。
あの人は、言ってみれば芸術家だったのよ」
客「なるほど」
み「金勘定が出来ない芸術家じゃ、事業なんて続きませんよ」
客「で、猫問題でしたな」
↑この牙! ほぼ本気噛みするそうです。
み「おー、そうじゃった。
見失うところだった」
客「家が傾いたことと関係あるんですか?」
み「ありません」
律「それじゃ、なんでそんな話になってるのよ」
み「とにかく!
家の開口部がたくさんあるわけ」
↑もちろん、こんな豪邸ではありませんが、構造はこんな感じです。
客「あ、それで耐震性の問題になったんだ」
み「そうそう。
わが家に大地震が来たら……。
1階がひし形に変形して、そのままぺっちゃんこ間違いなし」
↑隣の家に寄りかかって保ってます。うちは敷地が広いので、完全に潰れます。
み「わたしは2階に寝てるから助かる可能性があるけど……。
1階の母は、お陀仏でしょうな」
↑耐震ベッド。値段が書いてありませんね。いくらなんでしょう? 1万5千円くらいで買えないものか?
律「ヒドい話。
補強しないの?」
み「補強するくらいなら、建て直した方がマシでしょ」
↑補助金は、横浜市のもの(すでに終了してるようです)。
み「でも、一戸建てを建て替えるくらいなら……。
マンションに引っ越した方がいいに決まってる。
特に、新潟ではね」
律「どうしてよ?」
み「雪です」
み「一戸建てに住んだら、雪かきから逃れられんのですよ」
↑こんな作業に毎日時間を取られるのは、ほんとに理不尽です。
み「歳を取ったら、大変だわ。
新潟の雪は重いから。
ほとんど土木作業になります」
↑こんなのは売ってないはず。
み「その点、マンションなら、雪かきは一切ないでしょ」
律「ふーん。
でも、雪のない地域に一戸建てを持つという選択肢もあるんじゃない?」
↑千葉県流山市。江戸川の堤防沿いのようです。雪の心配は無いでしょうが、洪水がね。
み「おー、あるね。
でも、歳を取ってから、別の地域の共同体に入るのは難しいですよ」
↑こういう共同作業を強いられます。
み「田舎暮らしに憧れて移住した人で、地域の共同体に溶けこめず……。
結局、別荘地に引っ越しし直す人もいるみたい。
別荘地なら、面倒なことは管理事務所がみんなしてくれるからね」
律「その代わり、管理費がかかるじゃない」
み「お金に代えられませんよ。
生活の質の問題ですから。
田舎の共同体に入っていびられるより、ずっとマシでしょ」
律「じゃ、あんたも別荘地に住むの?」
↑伊豆下田の別荘地。
み「1年中、快適に住める別荘地は少ないんじゃない。
気候的に」
客「軽井沢の冬は、そうとう厳しいらしいですね」
↑こりゃ無理ですな。
み「標高が1,000メートル近いですからね。
夏はいいでしょうけど」
客「確か、100メートルで0.6度違うんでしたっけ?」
み「そんなかもね。
1,000メートルなら、6度。
夏は、大違いですよ。
でも、冬は考えたくもないね。
中古別荘なんか、冬住むことを想定してない作りでしょうから……。
改造費がそうとうかかると思うよ。
水道管とか」
客「凍りますからな」
み「水道管の水を抜いて、秋に引き払うんでしょ」
↑函館市のホームページより。
み「一冬、水は使わないという前提のはず」
客「越後湯沢はいかがです?
あそこは、冬、スキーで使うための施設でしょ」
み「マンションだしね。
いくら雪が降っても、雪かきの心配はない」
み「マンションの温泉大浴場は、いつでも入れるし……」
↑『ライオンズマンション越後湯沢第3』
み「レストランや、フィットネス施設が付属してるところもある」
↑『グランドウイング舞子高原』
律「いいじゃない」
み「しかも、値段が100万円以下」
客「それは、賃料ですか?」
↑格安! 20万円。
み「アホ言いなさい。
売値ですよ。
部屋の。
バブルのとき建てられて、数千万円で売りだされた部屋」
客「何でそんなに安いんです?」
み「マンションとしては、月々の管理費が欲しいんですよ。
維持費が大変なんだから」
↑維持管理が出来ないと、あっという間にこうなります。まるで戦艦ですね。
律「維持費ってどれくらいなの?」
み「設備によるでしょ。
でも、数万円だと思うよ」
↑『ステラタワー神立』。温水プールのほか、フィットネスジムもあります。
客「ふーむ。
新築マンションをローンで買っても、月々の支払いはそれくらいですよね」
み「いくら本体が安くても、月々の出費はバカにならんというわけ。
ま、スキーが趣味な人は、それでもいいでしょうけど」
↑こういうスキーの人は、滑ってて楽しいのでしょうか?
律「あんた、新潟なのに、スキーできないの?」
↑まず、立つのが困難。
み「スキーをしたのは、1度だけですね。
高校のとき、県内の山の方にスキー授業で行った」
↑こんなに楽しかった記憶はありません。
律「なんでわざわざ、出かけるの?
住んでるあたりでも降るでしょうに」
み「あのですね。
雪は、いくら降っても、平らじゃ滑れないの。
わたしが住んでるあたりは、ずーっと新潟平野でまっ平らなの」
↑米坂線の車窓より(『平木田ー坂町』間)。
み「地平線の彼方まで田んぼが続くようなとこ。
坂なんて無いの」
律「スキーで通学するんじゃないの?」
↑新潟県境に近い長野県飯山市(昭和初期)。畑などをショートカットできるので、歩くよりはるかに早く着いたそうです。
み「新潟をバカにしてませんか?」
客「わたしも、新潟県民は全員、スキーが滑れると思ってました」
↑『レルヒさん』。高田(現・新潟県上越市)において、日本初のスキー指導をおこなったレルヒ少佐を模したゆるキャラ。
み「大誤解です。
だから、わたしが越後湯沢のマンション買ったって、することないわけよ。
冬は、外出もできないだろうし」
律「1年中、快適な土地って無いのかしら?」
み「そんな極楽みたいなところ、無いですよ。
夏、涼しいところは、冬が寒すぎる。
冬が温暖なところは、夏が暑すぎる」
客「太平洋側の海沿いなんてどうです。
海が近いから、案外涼しいらしいですよ。
親潮が南下してるし」
客「銚子とか」
↑犬吠埼灯台。
み「確かにね。
海の近くは、寒暖の差が少ないわな。
しかし、太平洋側沿岸には……。
気候以上の問題点があるでしょう」
律「何よ?
冬は毎日晴れて、快適よ」
み「地震ですがな。
東海地震、東南海地震、南海地震。
単独でなく、これらが一挙に起こることも想定されてます」
み「太平洋側沿岸は、相当な被害を覚悟しとかにゃなりません」
客「津波ですね」
み「左様」
律「東京にも来るのかしら?」
み「東京は、東京湾の奥だからね。
湾の入口は、房総半島と三浦半島が突き出て狭まってるから……」
み「入って来れる海水は、限られます。
で、湾の中が広がってるから……。
津波の高さは、東日本大震災と比べれば、さほどのことはありません。
せいぜい、3メートルでしょう」
客「それでも、地面にいたら助かりませんよ」
み「東京は、ビルだらけだから大丈夫じゃない?
3メートルなら、2階に上がれば助かります」
↑1階あたり、3.5メートルくらい。
み「それに比べると、湾の外は大変ですよ。
館山や鎌倉は、10メートルを超える津波に襲われるって云われてる」
律「じゃ、むしろ東京が一番安全ってこと?」
み「んなわけあるかい。
津波が来なくても、揺れに襲われます。
高速道路や鉄道の高架が崩れ、高層ビルも倒壊します」
み「日本の土木構造物に対する安全神話は、阪神淡路で打ちのめされてますからね」
み「しかも最近は、免震偽装とか、杭打ち問題とか、インチキ体質が露呈してるじゃない」
み「相当、倒壊すると思いますよ。
台湾のマンションみたいに」
み「まったく道路は、使えなくなるでしょうね。
そこで火災が起こるわけよ」
み「消防車なんて、圧倒的に数が足りない上に……。
そもそも、現場に辿りつけない。
都心は、あっという間に火に包まれます。
火災旋風が巻き起こり、地上のものすべてが焼きつくされる」
律「言い過ぎじゃないの?」
み「火を消せないという点では、江戸の大火と一緒でしょ」
↑江戸時代の消防は、延焼を食い止めるための破壊消防が主でした。
律「江戸時代は、木と紙の家ばっかりだったじゃない」
律「今とは違うわよ」
み「住宅地は、大して江戸時代と変わりませんがな。
ビルだって、中に火が回れば、どんどん類焼していくよ」
律「他人ごとだと思って、好きなこと言ってるわね」
み「一番絶望的なのは、人口ですよ。
とにかく、駅も道路も、人、人、人でしょ」
↑人身事故があった日の品川駅。駅を出るのに40分かかったそうです。
み「おととし、久しぶりに東京に行ったとき、空恐ろしささえ感じた。
平日なのに、駅のホームから人が零れそうなんだよ」
客「確かに、それは言えてますな。
実際、雪で電車が止まると、駅に人が溢れますから」
↑6㎝の積雪でこの有様(京王線『千歳烏山』駅)。
み「東日本大震災のときもそうだったでしょ。
帰宅困難者が溢れかえって」
み「あのときは、被災者じゃなかったから良かったけど。
あの人達が被災してたら、どうなったと思う?
とうてい間に合いませんよ。
助けを待つ人が多すぎて」
↑ハリケーン『カトリーナ』で被災した人々(ルイジアナ・スーパードーム)。東京に、これだけの収容能力のある施設が、どれだけあるでしょうか。
律「ほんとに、首都圏に大震災が来るのかしら?」
み「戦後の日本が、ここまで発展できたのは……。
首都圏が、災害に見舞われなかったからでしょ」
↑背後は、建設中の東京タワー。
み「でも逆にそれで、無防備な都市が出来上がってしまったとも云える」
↑アニメ映画『東京マグニチュード8.0』。
律「日本のどこが、一番安全なのかしら?」
み「まず、沿岸部は避けるべきですね。
津波が怖いから」
律「それじゃ、山の中?」
み「裏に山があるようなところも怖いよ」
み「広島の住宅街であったでしょ」
客「安佐南区ですね」
↑本来の地名は、こうだったそうです。住んじゃいけないという地名ですよね。
律「海も山もダメなら、どこがあるってのよ?」
み「盆地みたいなところでしょ」
↑新潟県『六日町盆地』。
律「たとえば?」
み「旭川は安全だと云われてる」
み「プレート境界から離れてるし……。
内陸だから、津波の心配もない」
律「旭川って、北海道の?」
み「さよでんがな」
律「寒いでしょ?」
客「氷点下30度くらいになるらしいですね」
↑“まつり”にしてしまおうという気持ちは、理解できます。
律「寒すぎでしょ」
み「でも、風が無いらしいよ。
体感温度は、それほどでもないんじゃない?」
律「あなたの嫌いな雪が積もるでしょ」
み「積もりますけど、新潟の雪と違って軽いっしょ」
客「パウダースノーですか」
み「そうそう。
雪かきは、箒で掃くんだって」
律「じゃ、あなた住むの?」
み「夏ならな」
↑夏も“まつり”です。気持ちはわかります。
律「嫌なんじゃない」
み「新潟より北には行きたくない」
律「やっぱり、歳を取ったら暖かいところよ。
九州は?」
み「九州は、火山が心配です。
雲仙とか、霧島とか」
客「あ、近畿なら、火山がありませんよ」
み「ま、そうだけどね。
でも、大阪圏も大都会だから怖いよ」
客「ちょっと外れればいいんじゃないですか」
み「と言っても、和歌山や三重は、東南海地震が心配だからね」
み「やっぱり、中国地方かな。
岡山のちょっと山寄りの盆地とか」
客「新見とか、津山ですか?」
み「そうそう。
あと、広島県の三次とか」
客「でも、どちらも、昔からの町でしょう。
歳を取ってから移住して、馴染めますかね」
み「それなのよ。
でも、中心地なら、マンションくらいあるでしょ。
そういうところで、ひっそりと暮らしたい」
↑こういうのもいいものです。
律「なーんか、物寂しいのよね」
み「金さえあればなぁ」
律「お金があればいいってものじゃないでしょ」
み「お金で買えないものがあるってこと?」
律「そうよ」
み「確かに、お金で買えないものはあります。
それを、否定はしません。
でも……。
お金で買えるものは、星の数ほどあるのよ」
律「なんで青森の電車の中で、こんな浅ましい話になってるのかしら」
み「電車ではおまへん。
気動車です」
↑電車にはエンジンがなく、モーターが付いてます。どう違うのじゃ?
み「そう言えば、今、どのあたり?」
客「似たような景色が続きますからな。
でも、陸奥湾の風景を見ると……。
『有畑』を過ぎたあたりのようです」
み「何でわかるわけ?」
客「ほら、小船が点々と浮かんでるでしょ」
↑陸奥湾ホタテ養殖船(3.5トン)。なぜか、小船が点々と浮かんでる画像がありません。
み「はいなー。
何が捕れるのかね?」
客「ホタテですよ」
客「このあたりでは、養殖が盛んなんです」
み「養殖か。
でも、自然の海で飼ってるんだから、天然と変わらんよね」
↑なんか、デカいですよね。まさに、デ貝?
客「だと思います」
み「食べたこと、ある?」
客「残念ながら。
捕れたてを焼いて食べたら、さぞ美味しいでしょうな」
↑じゅるるー。
み「でも、養殖となると、けっこう大変なんじゃないの?
ホタテって、泳ぐんでしょ?」
律「貝が泳ぐわけないじゃない。
ヒレも無いしんだし」
↑クリオネは、巻貝の仲間です。
み「当たり前だぎゃ。
貝殻の蓋をパクパクさせて、閉じる時に海水を噴き出して泳ぐのです」
↑意外! 思ってたのとは逆向きでした。
律「見たわけ?」
み「聞いた話や」
律「でも、なんで泳ぐのかしら?」
客「天敵から逃げるためのようです」
律「天敵って、何ですか?」
客「ヒトデですね」
↑迫るヒトデ。逃げるホタテ。
み「まさに、死にものぐるいってわけだね」
客「そうですね。
時速に直すと、50キロは出てるとか」
↑まさしく、“貝速”。
み「ほんまきゃー。
それは、眉唾くさいぞ」
客「聞いた話です。
そう言えば、この近くに、『道の駅よこはま』というところがありました」
み「このあたりは、まだ横浜町?」
客「そうです」
み「『道の駅よこはま』ってのは、胡散臭いな。
横浜市にありそうじゃないか」
客「でも、詐称でもなんでもないですよ。
実際、横浜町なんですから。
正式名称は、『道の駅よこはま 菜の花プラザ』です」
み「そのプラザがどうかしたのけ?」
客「『ホタテコロッケ』ってのがあるんですよ」
↑普通に美味しそうです。
客「これが、絶品です」
み「泳ぐのか?」
客「油の中で」
み「お、ウマいではないか」
客「実際、美味しいんです。
食べたら、きっとやみつきになりますよ」
み「その場で食べれるのか?」
客「レストランもありますけど……」
↑レストラン『鮮菜(せんな)』。
客「『ホタテコロッケ』は、メニューにあったっけかな?」
み「なんじゃそりゃ」
客「確か、『びっくりホタテバーガー』というのはありました」
み「ホタテとバーガーは、形が似ておるな。
泳ぐのか?」
客「お金を払うと同時に、泳いで逃げます」
み「詐欺ではないか」
客「ホタテのフライがジューシーですよ」
み「なんで、コロッケじゃないのだ?」
客「ハンバーガーにコロッケは入らないでしょ」
み「何でじゃ?」
客「『ホタテコロッケ』は、厚みがあるんです」
↑『菜の花クリームコロッケ定食』がありましたが……。にゃんと、920円。高けー。
み「それは、異なことを。
ホタテといえば、ぺちゃんこなフォルムではないか」
み「なじぇにコロッケに、厚みがあるのじゃ?」
客「わたしに聞かないで下さい。
開発者じゃありませんから」
み「青森って、十三湖のしじみのイメージだけど……」
み「そんなにホタテも捕れるのかね?」
客「青森県の生産量は、北海道に次いで、全国2位だそうです」
↑これは美味しそうです。
み「北海道か。
ま、あそこは何でも採れそうだけど」
↑生ものには食指が動きません。やっぱ、ホッケの塩焼きですよね。
客「わたしは、1度、生産者さんに養殖の様子を見せてもらったことがあるんです。
確か、秋田水産という会社でしたな」
み「何で秋田なんじゃ?
青森じゃろうが」
客「秋田は、社長の苗字です」
み「紛らわすぃ。
青森に改名しなされ」
↑正当な理由があれば、弁護士などいらんではないか。
客「ムリを言わないで下さい」
律「ホタテの養殖は、いつごろから始まったんですか?」
客「40年位前みたいです」
み「古いような新しいような、微妙な時期ですな」
↑イメージ画像です。これは北海道のようですね。
み「そもそも、養殖って、どうやるんだ?
柵で囲うわけ?」
↑養殖筏。これは、お金がかかりますね。マグロ用のようです。
客「いえ。
貝の養殖と言えば、海中に吊るすのが一般的でしょう」
↑貝殻に穴を空けて吊るします。
み「泳いで逃げるんでないの?」
↑ヒトデから泳いで逃げるホタテ。気配がわかるんでしょうか?
客「貝に穴を空けて吊るしたり、ネットに入れたりします」
↑貝殻に穴を空ける手間はありませんが、設備費がかかりますね。
み「なるほど。
でも、ネットを破らないのか?」
↑運動会の定番『網くぐり』。妙に色っぽい場合があります。
客「どうやって破るんです」
み「蓋のギザギザで切れそうだけど」
客「そんな器用なホタテはいませんよ」
↑安岡力也さん。残念ながら故人となられました。わたしは、この人に西郷隆盛をやらせたかった。
み「稚貝は、どこで仕入れるの?」
律「違いって、何の違いよ?」
み「稚貝がわからんか?」
客「わたしは、稚貝が分かる男です」
み「それは、ネスカフェの洒落か?」
客「違いの分かる男、遠藤周作」
↑若いですね。180㎝あったそうで、俳優と並んでも見栄えがします。
み「歳がわかるわ」
客「稚貝は、仕入れるわけじゃないんです。
桜の咲く4月下旬~5月上旬ころ……。
海中に、採苗器を投入します」
み「なんじゃ、そりゃ?」
客「ま、網のようなものです。
そこに、海中に漂うホタテの幼生が引っかかるんです」
み「魔帝」
み「否、待てい」
客「何です?」
み「するってぇとなにかい?
稚貝は、仕入れて来るわけじゃなく……。
網を、海の中に入れて採るってこと?」
客「そうです」
↑右端の3本が採苗器。その左の青いのがネット。さらに左は、耳吊り。一番左は、丸籠。ホタテの成長に合わせて使い分けられます。詳しくは後ほど。
み「原価、ゼロではないか。
裸一貫で始められるぞ」
↑サブちゃん、若い!
客「そうはいきませんよ。
採苗器は買わなきゃなりませんし……。
そもそも、船がいるでしょ」
↑『女川みなと祭り』。壮観です(震災後は中止になっているようです)。
み「ま、そりゃそうだけどさ。
でも、船さえあれば……。
毎年、仕事始めにかかるお金は無いわけだ。
低リスクではないか」
↑ゲームマネジメントのモットーです。人生でこれをやったら、タダでは済みません。
客「まぁ、自然相手の商売ですからね。
投資が先じゃ怖いですよ」
み「三味線の皮にするんでしょ」
律「ほんとに三味線って、猫の皮なの?」
み「ほんとらしいですよ。
今でも」
↑津軽三味線は、犬のようです。当然、猫より皮が厚くなります。
律「じゃ、猫攫いがいるのかしら?」
客「皮は、ほとんどが輸入品だそうです」
↑猫は腹の皮、犬は背中の皮を使うそうです(理由不明)。
み「なるほど。
日本の猫は安心というわけか。
ますます猫になりたくなった。
怖いのは車だけだね」
↑とにかく、車の下に入りたがります。
み「歳を取ったら、猫を飼いたいんだけど……。
外に出さないで、家猫にするか、迷うところだよ」
↑室内飼いの猫たち。外に興味津々。
み「なにしろ、出さないようにするのが大変な家なんだから」
律「どうしてよ?」
み「わたしが生まれる前から建ってる家だからね。
昔からの和風住宅」
↑東京都大田区にある『昭和のくらし博物館』。昭和26年築。
み「とにかく、開口部が多いのよ」
↑当然のことながら、わたしの家ではありません。神奈川県逗子市葉山町にある『旧足立邸(昭和8年竣工の洋風別荘)』です。施主の足立正は、王子製紙社長、日本商工会議所会頭などを務めた人。
み「片側は、ぜんぶ床までのサッシ窓って感じ」
客「耐震性、大丈夫ですか?」
↑防災科学技術研究所(兵庫県三木市)での地震による破壊実験。既存の建物を移築して実験したようです。
み「大丈夫のわけないです。
すでに歪んでるから」
↑ポーランドにあるショッピングセンター。もちろん、建ててから歪んだわけでなく、こういう設計で建てられたものです。
律「施工不良じゃないの?」
↑地震で倒壊した台湾のマンション。ヒドい話です。
み「あとになって、2階を上げたんですよ」
↑ひょっとしたら、最初から2階建てを建てるより面倒なのかも?
み「それで歪んだ。
たぶん、1階部分は、2階を上げるなんて想定してない作りなはず」
律「最初に建てた業者に直して貰えないの?」
み「業者っていうか、当時は大工さんでしょ。
たぶん、2階を上げたころには、とっくに廃業してたと思うよ」
↑こんなに古い人たちでは無かったでしょうが。
律「じゃ、2階を建てた大工さんは?
2階の上げ方が悪かったのかも知れないでしょ?」
み「その大工は、首を吊って自殺しました」
律「まぁ。
2階が傾いたから?」
↑こちら、傾いた韓国のマンション。手抜き工事は、万国共通のようです。
み「そんなわけあるかい。
商売が傾いたからでしょ」
↑こちら、評判を取るために、この形で建てられた喫茶店です。その後、商売も傾き、閉店したとか。
み「なにしろ、施工中にいろいろと思いついて、図面と違う作りにしちゃって……。
請求額が、当初の見積もりより高額になったりの人でね」
み「施主と、かなりのトラブルがあったらしい。
結局、おまえが勝手にやったんだからって、お金をもらえず……。
その分は、ぜんぶ自分の持ち出しになったりしてね。
最後は、資金繰りに詰まったみたい」
律「職人肌なのね」
み「違いますがな。
図面通り、予算通りに仕上げるのが職人でしょ。
あの人は、言ってみれば芸術家だったのよ」
客「なるほど」
み「金勘定が出来ない芸術家じゃ、事業なんて続きませんよ」
客「で、猫問題でしたな」
↑この牙! ほぼ本気噛みするそうです。
み「おー、そうじゃった。
見失うところだった」
客「家が傾いたことと関係あるんですか?」
み「ありません」
律「それじゃ、なんでそんな話になってるのよ」
み「とにかく!
家の開口部がたくさんあるわけ」
↑もちろん、こんな豪邸ではありませんが、構造はこんな感じです。
客「あ、それで耐震性の問題になったんだ」
み「そうそう。
わが家に大地震が来たら……。
1階がひし形に変形して、そのままぺっちゃんこ間違いなし」
↑隣の家に寄りかかって保ってます。うちは敷地が広いので、完全に潰れます。
み「わたしは2階に寝てるから助かる可能性があるけど……。
1階の母は、お陀仏でしょうな」
↑耐震ベッド。値段が書いてありませんね。いくらなんでしょう? 1万5千円くらいで買えないものか?
律「ヒドい話。
補強しないの?」
み「補強するくらいなら、建て直した方がマシでしょ」
↑補助金は、横浜市のもの(すでに終了してるようです)。
み「でも、一戸建てを建て替えるくらいなら……。
マンションに引っ越した方がいいに決まってる。
特に、新潟ではね」
律「どうしてよ?」
み「雪です」
み「一戸建てに住んだら、雪かきから逃れられんのですよ」
↑こんな作業に毎日時間を取られるのは、ほんとに理不尽です。
み「歳を取ったら、大変だわ。
新潟の雪は重いから。
ほとんど土木作業になります」
↑こんなのは売ってないはず。
み「その点、マンションなら、雪かきは一切ないでしょ」
律「ふーん。
でも、雪のない地域に一戸建てを持つという選択肢もあるんじゃない?」
↑千葉県流山市。江戸川の堤防沿いのようです。雪の心配は無いでしょうが、洪水がね。
み「おー、あるね。
でも、歳を取ってから、別の地域の共同体に入るのは難しいですよ」
↑こういう共同作業を強いられます。
み「田舎暮らしに憧れて移住した人で、地域の共同体に溶けこめず……。
結局、別荘地に引っ越しし直す人もいるみたい。
別荘地なら、面倒なことは管理事務所がみんなしてくれるからね」
律「その代わり、管理費がかかるじゃない」
み「お金に代えられませんよ。
生活の質の問題ですから。
田舎の共同体に入っていびられるより、ずっとマシでしょ」
律「じゃ、あんたも別荘地に住むの?」
↑伊豆下田の別荘地。
み「1年中、快適に住める別荘地は少ないんじゃない。
気候的に」
客「軽井沢の冬は、そうとう厳しいらしいですね」
↑こりゃ無理ですな。
み「標高が1,000メートル近いですからね。
夏はいいでしょうけど」
客「確か、100メートルで0.6度違うんでしたっけ?」
み「そんなかもね。
1,000メートルなら、6度。
夏は、大違いですよ。
でも、冬は考えたくもないね。
中古別荘なんか、冬住むことを想定してない作りでしょうから……。
改造費がそうとうかかると思うよ。
水道管とか」
客「凍りますからな」
み「水道管の水を抜いて、秋に引き払うんでしょ」
↑函館市のホームページより。
み「一冬、水は使わないという前提のはず」
客「越後湯沢はいかがです?
あそこは、冬、スキーで使うための施設でしょ」
み「マンションだしね。
いくら雪が降っても、雪かきの心配はない」
み「マンションの温泉大浴場は、いつでも入れるし……」
↑『ライオンズマンション越後湯沢第3』
み「レストランや、フィットネス施設が付属してるところもある」
↑『グランドウイング舞子高原』
律「いいじゃない」
み「しかも、値段が100万円以下」
客「それは、賃料ですか?」
↑格安! 20万円。
み「アホ言いなさい。
売値ですよ。
部屋の。
バブルのとき建てられて、数千万円で売りだされた部屋」
客「何でそんなに安いんです?」
み「マンションとしては、月々の管理費が欲しいんですよ。
維持費が大変なんだから」
↑維持管理が出来ないと、あっという間にこうなります。まるで戦艦ですね。
律「維持費ってどれくらいなの?」
み「設備によるでしょ。
でも、数万円だと思うよ」
↑『ステラタワー神立』。温水プールのほか、フィットネスジムもあります。
客「ふーむ。
新築マンションをローンで買っても、月々の支払いはそれくらいですよね」
み「いくら本体が安くても、月々の出費はバカにならんというわけ。
ま、スキーが趣味な人は、それでもいいでしょうけど」
↑こういうスキーの人は、滑ってて楽しいのでしょうか?
律「あんた、新潟なのに、スキーできないの?」
↑まず、立つのが困難。
み「スキーをしたのは、1度だけですね。
高校のとき、県内の山の方にスキー授業で行った」
↑こんなに楽しかった記憶はありません。
律「なんでわざわざ、出かけるの?
住んでるあたりでも降るでしょうに」
み「あのですね。
雪は、いくら降っても、平らじゃ滑れないの。
わたしが住んでるあたりは、ずーっと新潟平野でまっ平らなの」
↑米坂線の車窓より(『平木田ー坂町』間)。
み「地平線の彼方まで田んぼが続くようなとこ。
坂なんて無いの」
律「スキーで通学するんじゃないの?」
↑新潟県境に近い長野県飯山市(昭和初期)。畑などをショートカットできるので、歩くよりはるかに早く着いたそうです。
み「新潟をバカにしてませんか?」
客「わたしも、新潟県民は全員、スキーが滑れると思ってました」
↑『レルヒさん』。高田(現・新潟県上越市)において、日本初のスキー指導をおこなったレルヒ少佐を模したゆるキャラ。
み「大誤解です。
だから、わたしが越後湯沢のマンション買ったって、することないわけよ。
冬は、外出もできないだろうし」
律「1年中、快適な土地って無いのかしら?」
み「そんな極楽みたいなところ、無いですよ。
夏、涼しいところは、冬が寒すぎる。
冬が温暖なところは、夏が暑すぎる」
客「太平洋側の海沿いなんてどうです。
海が近いから、案外涼しいらしいですよ。
親潮が南下してるし」
客「銚子とか」
↑犬吠埼灯台。
み「確かにね。
海の近くは、寒暖の差が少ないわな。
しかし、太平洋側沿岸には……。
気候以上の問題点があるでしょう」
律「何よ?
冬は毎日晴れて、快適よ」
み「地震ですがな。
東海地震、東南海地震、南海地震。
単独でなく、これらが一挙に起こることも想定されてます」
み「太平洋側沿岸は、相当な被害を覚悟しとかにゃなりません」
客「津波ですね」
み「左様」
律「東京にも来るのかしら?」
み「東京は、東京湾の奥だからね。
湾の入口は、房総半島と三浦半島が突き出て狭まってるから……」
み「入って来れる海水は、限られます。
で、湾の中が広がってるから……。
津波の高さは、東日本大震災と比べれば、さほどのことはありません。
せいぜい、3メートルでしょう」
客「それでも、地面にいたら助かりませんよ」
み「東京は、ビルだらけだから大丈夫じゃない?
3メートルなら、2階に上がれば助かります」
↑1階あたり、3.5メートルくらい。
み「それに比べると、湾の外は大変ですよ。
館山や鎌倉は、10メートルを超える津波に襲われるって云われてる」
律「じゃ、むしろ東京が一番安全ってこと?」
み「んなわけあるかい。
津波が来なくても、揺れに襲われます。
高速道路や鉄道の高架が崩れ、高層ビルも倒壊します」
み「日本の土木構造物に対する安全神話は、阪神淡路で打ちのめされてますからね」
み「しかも最近は、免震偽装とか、杭打ち問題とか、インチキ体質が露呈してるじゃない」
み「相当、倒壊すると思いますよ。
台湾のマンションみたいに」
み「まったく道路は、使えなくなるでしょうね。
そこで火災が起こるわけよ」
み「消防車なんて、圧倒的に数が足りない上に……。
そもそも、現場に辿りつけない。
都心は、あっという間に火に包まれます。
火災旋風が巻き起こり、地上のものすべてが焼きつくされる」
律「言い過ぎじゃないの?」
み「火を消せないという点では、江戸の大火と一緒でしょ」
↑江戸時代の消防は、延焼を食い止めるための破壊消防が主でした。
律「江戸時代は、木と紙の家ばっかりだったじゃない」
律「今とは違うわよ」
み「住宅地は、大して江戸時代と変わりませんがな。
ビルだって、中に火が回れば、どんどん類焼していくよ」
律「他人ごとだと思って、好きなこと言ってるわね」
み「一番絶望的なのは、人口ですよ。
とにかく、駅も道路も、人、人、人でしょ」
↑人身事故があった日の品川駅。駅を出るのに40分かかったそうです。
み「おととし、久しぶりに東京に行ったとき、空恐ろしささえ感じた。
平日なのに、駅のホームから人が零れそうなんだよ」
客「確かに、それは言えてますな。
実際、雪で電車が止まると、駅に人が溢れますから」
↑6㎝の積雪でこの有様(京王線『千歳烏山』駅)。
み「東日本大震災のときもそうだったでしょ。
帰宅困難者が溢れかえって」
み「あのときは、被災者じゃなかったから良かったけど。
あの人達が被災してたら、どうなったと思う?
とうてい間に合いませんよ。
助けを待つ人が多すぎて」
↑ハリケーン『カトリーナ』で被災した人々(ルイジアナ・スーパードーム)。東京に、これだけの収容能力のある施設が、どれだけあるでしょうか。
律「ほんとに、首都圏に大震災が来るのかしら?」
み「戦後の日本が、ここまで発展できたのは……。
首都圏が、災害に見舞われなかったからでしょ」
↑背後は、建設中の東京タワー。
み「でも逆にそれで、無防備な都市が出来上がってしまったとも云える」
↑アニメ映画『東京マグニチュード8.0』。
律「日本のどこが、一番安全なのかしら?」
み「まず、沿岸部は避けるべきですね。
津波が怖いから」
律「それじゃ、山の中?」
み「裏に山があるようなところも怖いよ」
み「広島の住宅街であったでしょ」
客「安佐南区ですね」
↑本来の地名は、こうだったそうです。住んじゃいけないという地名ですよね。
律「海も山もダメなら、どこがあるってのよ?」
み「盆地みたいなところでしょ」
↑新潟県『六日町盆地』。
律「たとえば?」
み「旭川は安全だと云われてる」
み「プレート境界から離れてるし……。
内陸だから、津波の心配もない」
律「旭川って、北海道の?」
み「さよでんがな」
律「寒いでしょ?」
客「氷点下30度くらいになるらしいですね」
↑“まつり”にしてしまおうという気持ちは、理解できます。
律「寒すぎでしょ」
み「でも、風が無いらしいよ。
体感温度は、それほどでもないんじゃない?」
律「あなたの嫌いな雪が積もるでしょ」
み「積もりますけど、新潟の雪と違って軽いっしょ」
客「パウダースノーですか」
み「そうそう。
雪かきは、箒で掃くんだって」
律「じゃ、あなた住むの?」
み「夏ならな」
↑夏も“まつり”です。気持ちはわかります。
律「嫌なんじゃない」
み「新潟より北には行きたくない」
律「やっぱり、歳を取ったら暖かいところよ。
九州は?」
み「九州は、火山が心配です。
雲仙とか、霧島とか」
客「あ、近畿なら、火山がありませんよ」
み「ま、そうだけどね。
でも、大阪圏も大都会だから怖いよ」
客「ちょっと外れればいいんじゃないですか」
み「と言っても、和歌山や三重は、東南海地震が心配だからね」
み「やっぱり、中国地方かな。
岡山のちょっと山寄りの盆地とか」
客「新見とか、津山ですか?」
み「そうそう。
あと、広島県の三次とか」
客「でも、どちらも、昔からの町でしょう。
歳を取ってから移住して、馴染めますかね」
み「それなのよ。
でも、中心地なら、マンションくらいあるでしょ。
そういうところで、ひっそりと暮らしたい」
↑こういうのもいいものです。
律「なーんか、物寂しいのよね」
み「金さえあればなぁ」
律「お金があればいいってものじゃないでしょ」
み「お金で買えないものがあるってこと?」
律「そうよ」
み「確かに、お金で買えないものはあります。
それを、否定はしません。
でも……。
お金で買えるものは、星の数ほどあるのよ」
律「なんで青森の電車の中で、こんな浅ましい話になってるのかしら」
み「電車ではおまへん。
気動車です」
↑電車にはエンジンがなく、モーターが付いてます。どう違うのじゃ?
み「そう言えば、今、どのあたり?」
客「似たような景色が続きますからな。
でも、陸奥湾の風景を見ると……。
『有畑』を過ぎたあたりのようです」
み「何でわかるわけ?」
客「ほら、小船が点々と浮かんでるでしょ」
↑陸奥湾ホタテ養殖船(3.5トン)。なぜか、小船が点々と浮かんでる画像がありません。
み「はいなー。
何が捕れるのかね?」
客「ホタテですよ」
客「このあたりでは、養殖が盛んなんです」
み「養殖か。
でも、自然の海で飼ってるんだから、天然と変わらんよね」
↑なんか、デカいですよね。まさに、デ貝?
客「だと思います」
み「食べたこと、ある?」
客「残念ながら。
捕れたてを焼いて食べたら、さぞ美味しいでしょうな」
↑じゅるるー。
み「でも、養殖となると、けっこう大変なんじゃないの?
ホタテって、泳ぐんでしょ?」
律「貝が泳ぐわけないじゃない。
ヒレも無いしんだし」
↑クリオネは、巻貝の仲間です。
み「当たり前だぎゃ。
貝殻の蓋をパクパクさせて、閉じる時に海水を噴き出して泳ぐのです」
↑意外! 思ってたのとは逆向きでした。
律「見たわけ?」
み「聞いた話や」
律「でも、なんで泳ぐのかしら?」
客「天敵から逃げるためのようです」
律「天敵って、何ですか?」
客「ヒトデですね」
↑迫るヒトデ。逃げるホタテ。
み「まさに、死にものぐるいってわけだね」
客「そうですね。
時速に直すと、50キロは出てるとか」
↑まさしく、“貝速”。
み「ほんまきゃー。
それは、眉唾くさいぞ」
客「聞いた話です。
そう言えば、この近くに、『道の駅よこはま』というところがありました」
み「このあたりは、まだ横浜町?」
客「そうです」
み「『道の駅よこはま』ってのは、胡散臭いな。
横浜市にありそうじゃないか」
客「でも、詐称でもなんでもないですよ。
実際、横浜町なんですから。
正式名称は、『道の駅よこはま 菜の花プラザ』です」
み「そのプラザがどうかしたのけ?」
客「『ホタテコロッケ』ってのがあるんですよ」
↑普通に美味しそうです。
客「これが、絶品です」
み「泳ぐのか?」
客「油の中で」
み「お、ウマいではないか」
客「実際、美味しいんです。
食べたら、きっとやみつきになりますよ」
み「その場で食べれるのか?」
客「レストランもありますけど……」
↑レストラン『鮮菜(せんな)』。
客「『ホタテコロッケ』は、メニューにあったっけかな?」
み「なんじゃそりゃ」
客「確か、『びっくりホタテバーガー』というのはありました」
み「ホタテとバーガーは、形が似ておるな。
泳ぐのか?」
客「お金を払うと同時に、泳いで逃げます」
み「詐欺ではないか」
客「ホタテのフライがジューシーですよ」
み「なんで、コロッケじゃないのだ?」
客「ハンバーガーにコロッケは入らないでしょ」
み「何でじゃ?」
客「『ホタテコロッケ』は、厚みがあるんです」
↑『菜の花クリームコロッケ定食』がありましたが……。にゃんと、920円。高けー。
み「それは、異なことを。
ホタテといえば、ぺちゃんこなフォルムではないか」
み「なじぇにコロッケに、厚みがあるのじゃ?」
客「わたしに聞かないで下さい。
開発者じゃありませんから」
み「青森って、十三湖のしじみのイメージだけど……」
み「そんなにホタテも捕れるのかね?」
客「青森県の生産量は、北海道に次いで、全国2位だそうです」
↑これは美味しそうです。
み「北海道か。
ま、あそこは何でも採れそうだけど」
↑生ものには食指が動きません。やっぱ、ホッケの塩焼きですよね。
客「わたしは、1度、生産者さんに養殖の様子を見せてもらったことがあるんです。
確か、秋田水産という会社でしたな」
み「何で秋田なんじゃ?
青森じゃろうが」
客「秋田は、社長の苗字です」
み「紛らわすぃ。
青森に改名しなされ」
↑正当な理由があれば、弁護士などいらんではないか。
客「ムリを言わないで下さい」
律「ホタテの養殖は、いつごろから始まったんですか?」
客「40年位前みたいです」
み「古いような新しいような、微妙な時期ですな」
↑イメージ画像です。これは北海道のようですね。
み「そもそも、養殖って、どうやるんだ?
柵で囲うわけ?」
↑養殖筏。これは、お金がかかりますね。マグロ用のようです。
客「いえ。
貝の養殖と言えば、海中に吊るすのが一般的でしょう」
↑貝殻に穴を空けて吊るします。
み「泳いで逃げるんでないの?」
↑ヒトデから泳いで逃げるホタテ。気配がわかるんでしょうか?
客「貝に穴を空けて吊るしたり、ネットに入れたりします」
↑貝殻に穴を空ける手間はありませんが、設備費がかかりますね。
み「なるほど。
でも、ネットを破らないのか?」
↑運動会の定番『網くぐり』。妙に色っぽい場合があります。
客「どうやって破るんです」
み「蓋のギザギザで切れそうだけど」
客「そんな器用なホタテはいませんよ」
↑安岡力也さん。残念ながら故人となられました。わたしは、この人に西郷隆盛をやらせたかった。
み「稚貝は、どこで仕入れるの?」
律「違いって、何の違いよ?」
み「稚貝がわからんか?」
客「わたしは、稚貝が分かる男です」
み「それは、ネスカフェの洒落か?」
客「違いの分かる男、遠藤周作」
↑若いですね。180㎝あったそうで、俳優と並んでも見栄えがします。
み「歳がわかるわ」
客「稚貝は、仕入れるわけじゃないんです。
桜の咲く4月下旬~5月上旬ころ……。
海中に、採苗器を投入します」
み「なんじゃ、そりゃ?」
客「ま、網のようなものです。
そこに、海中に漂うホタテの幼生が引っかかるんです」
み「魔帝」
み「否、待てい」
客「何です?」
み「するってぇとなにかい?
稚貝は、仕入れて来るわけじゃなく……。
網を、海の中に入れて採るってこと?」
客「そうです」
↑右端の3本が採苗器。その左の青いのがネット。さらに左は、耳吊り。一番左は、丸籠。ホタテの成長に合わせて使い分けられます。詳しくは後ほど。
み「原価、ゼロではないか。
裸一貫で始められるぞ」
↑サブちゃん、若い!
客「そうはいきませんよ。
採苗器は買わなきゃなりませんし……。
そもそも、船がいるでしょ」
↑『女川みなと祭り』。壮観です(震災後は中止になっているようです)。
み「ま、そりゃそうだけどさ。
でも、船さえあれば……。
毎年、仕事始めにかかるお金は無いわけだ。
低リスクではないか」
↑ゲームマネジメントのモットーです。人生でこれをやったら、タダでは済みません。
客「まぁ、自然相手の商売ですからね。
投資が先じゃ怖いですよ」