Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
単独旅行記Ⅶ・総集編(6)
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 この『単独旅行記Ⅶ・総集編(6)』は、『単独旅行記Ⅶ(051)』から『単独旅行記Ⅶ(060)』までの連載を、1本にまとめたものです。


会津藩の家老屋敷ともなると、立派な玄関じゃな
み「さすが、会津藩の家老屋敷ともなると、立派な玄関じゃな。
 西郷頼母邸だけに……。
 “たのもう!”」
ハ「言うと思ったわ」
み「この紋って、会津藩の紋?」
ハ「ちゃうやろ。
 会津松平家なんやから、葵の紋やないんか?」
み「そしたらこれは、西郷家の紋?」
ハ「そういうことになるわな」
み「これって、なんていう紋?
 ちょっと調べて」
ハ「ふむふむ。
 どうやら“離れ九曜紋”言うらしいな。
 “曜”は、日の光のことや。
 それが、真ん中の丸を含めて、9つあるちゅうわけやな」
み「日の光が、何で黒いわけ?」
ハ「しゃあないやろ。
 紋は、白地に黒で表すわけやから。
 しかし、ヘンやな……」
み「何が?」
ハ「“離れ九曜紋”は、“細川九曜”とも呼ばれ……。
 肥後熊本藩の細川家の独占家紋やと書かれとる」
み「西郷頼母って、肥後熊本藩の出なの?
 Wiki引いて」
ハ「えーっと。
 読み上げるで(出典)。
+++
 西郷家は、室町時代に仁木氏の守護代を務めた三河国の名家であったが、やがて勢力を拡大させる松平家に臣従した。
 その後、徳川政権下で御三家や有力譜代の家臣として存続し続けた。
 そして会津藩における西郷家は その傍流の1つとして目され、初代の西郷近房以来200年余、会津藩松平家の家老を代々務める家柄であり、頼母で9代目となっていた。
 家禄1,700石。
 家紋は鷹の羽、また保科家の並び九曜紋を許されていた。
+++
 とある」
み「じゃこれ、“並び九曜紋”とも言うの?」
ハ「並び九曜紋は、文字どおり……。
 3つの丸が3列に、サイコロの目みたいに並んだ紋やな」
み「じゃ、なんで西郷家の玄関に……。
 肥後熊本藩の細川家の紋が掲げられてるの?」
ハ「知らん」
み「きっぱり言うな!」
ハ「玄関前から、こないに時間使てて大丈夫なんか?」
み「あ、そうなんだった。
 では、もう一度。
 “たのもう!”」

“どーれ”
ハ「“どーれ”」
み「こんなお姉さんが、そんなこと言うかい」
ハ「そしたら、なんちゅうんや?」
み「えーっと。
 “お邪魔します”?」
ハ「それは、訪ねた方のセリフやろ!」

こっからは上げてもらえないみたいだね
み「とにかく、こっからは上げてもらえないみたいだね」
ハ「藩主しか上がれんかったのやないか?」

説明書きがあった
み「説明書きがあった。
 藩主しか上がれんとは書いてないぞ」
ハ「さよか」
み「そう云えばここって、公邸だよね。
 代々の家老が、家老職にある間、住まったわけだろ?」
ハ「さっきなの説明、聞いとらんかったんかいな。
 『初代の西郷近房以来200年余、会津藩松平家の家老を代々務める家柄であり、頼母で9代目』とあったやないか」
み「あ、そうか。
 代々、西郷家からしか家老は出なかったんだ。
 そんなら、公邸でもあり私邸でもあったってことだ」
ハ「そういうこっちゃ。
 ちゃっちゃと、次行こうや」

さっき歩いてきた塀の裏っかわってことだよね
み「ここ、さっき歩いてきた塀の裏っかわってことだよね」
ハ「そういうことになるな」
み「どんな部屋だったんだろ?
 見られないのかな?」
ハ「この先で見れそうやで。
 『順路』の矢印が出とるがな」

馬でも飼ってそうだけど……
み「なんか、馬でも飼ってそうだけど……」

倉庫みたいなところやったんやないか?
ハ「倉庫みたいなところやったんやないか?」
み「なんで、灯籠があるわけ?」
ハ「知らんがな」

駕籠部屋だって
み「駕籠部屋だって。
 30kgか。
 人を乗せたら、100kg近くになるよね。
 担ぐ方は、大変だわ。
 そう云えばさ。
 嘘かほんとか知らないけど……。
 江戸城に登城する家老は、常に駕籠をすっ飛ばして来たんだって」
ハ「何でや?
 スピード狂か?」
み「有事のときだけ、駕籠を飛ばして来たら……。
 何かあったってことが、江戸市中にバレバレでしょ。
 だから、何にもないときでも、飛ばしてきたってわけ」
ハ「ほんまかいな。
 痔主やったら、えらいこっちゃやで」

案外、いい部屋じゃん
み「おー、案外、いい部屋じゃん。
 なになに。
 『独身で持ち家のない家臣が警備を兼ね住んでいた』。
 “持ち家のない家臣”ってことは、次男や三男ってことかな?」
ハ「そうなんちゃうか。
 実家で部屋住みしとるより、気楽やったんやないか」

この三畳間は、いわゆる『取次の間』ってやつかな
み「この三畳間は、いわゆる『取次の間』ってやつかな?
 書生なんかが常駐して、客の応対をする間」
ハ「家老屋敷に、書生なんかいたんか?」
み「知らんけど」

奥にあるのは、一人用のコタツっぽいな
み「奥にあるのは、一人用のコタツっぽいな。
 会津の冬は寒いからね。
 コタツにあたりながら、ここに詰めてたんじゃないの?」
ハ「3つもあるで」
み「3人いたんじゃないの?」
ハ「狭まっ。
 1人1畳や」
み「寝るわけじゃないんだから、十分でしょ。
 しかしやっぱり、狭い和室って落ち着くよね。
 内田百閒が建てた家ってね、三畳間が3つ連なっただけの間取り。
 三畳御殿って呼ばれてた」
ハ「変人らしい家やな」
み「実際、変人だったけどね。
 でも、わたしにとっては、一つの理想に近い間取りね。
 今の新築住宅やマンションって……。
 必ず、だだっ広いフローリングのリビングがあるでしょ。
 わたしはあれが、大嫌い」
ハ「なんでやねん」
み「何すんのよ、あんなところで」
ハ「くつろぐんやないか。
 ソファーとか置いて」
み「ぜんぜん寛げないって。
 上が吹き抜けだったりしたら、さらに最悪」
ハ「ええやないか。
 明るうて」
み「落ち着かないでしょ。
 暖房も効かないし。
 わたしが家を建てるとしたら……。
 ぜったい、狭い和室が連なった間取りにする。
 三畳は、さすがにちょっとだけど……。
 四畳半なら十分だよ。
 逆に、六畳じゃ広すぎる。
 部屋の隅まで手が届かない」
ハ「単なる無精もんやがな」

『会津唐人凧』て書いたあるようやな
み「ところで、あれ何?
 ベロ出してて。
 失礼じゃないの?
 客を迎えるのに」
ハ「『会津唐人凧』て書いたあるようやな」
み「即、検索!」
ハ「ふむふむ。
 元々は、400年くらい前に、大陸から長崎に伝わった凧やて」
み「400年前って、江戸初期だよね。
 長崎から会津まで伝わったんなら……。
 全国的にポピュラーな凧でもおかしくないじゃない。
 でも、初めて見たぞ、こんなベロ出してる凧」
ハ「実際、こないな凧が見られんのは……。
 九州北部くらいみたいや。
 それが、ぽつーんと会津に伝わっとるんやな」
み「なんで?」
ハ「謎やそうや」
み「♬長崎から船に乗って……。
 会津に着ーいた♬」
ハ「着かんわい!
 会津に海があるかいな。
 しかしこの凧、戊辰戦争のとき……。
 篭城した若松城の城内から、空高く挙げられたそうやで」
み「何のため?」
ハ「もちろん、味方の士気を鼓舞するためやがな。
 大河ドラマの『八重の桜』にも出てきたみたいや」

『酒槽(さかぶね)』て書いたあるな
み「何じゃこりゃ?」
ハ「『酒槽(さかぶね)』て書いたあるな」
み「西郷頼母は、お酒も造ってたってこと?
 密造か?」

看板に『歴史資料館 第2展示室』てあるがな
ハ「西郷頼母の屋敷にあったものやないやろ。
 看板に『歴史資料館 第2展示室』てあるがな」
み「紛らわしい。
 純粋に、当時の屋敷を再現すればいいのに」
ハ「見所がないんやないか。
 質素すぎて」
み「それがまたいいんじゃないの」

いきなり、クライマックスの部屋に来た
み「どあー。
 いきなり、クライマックスの部屋に来た」
ハ「自刃の間やな。
 戦の足手まといになることを潔しとせんかった女子が……。
 ここで、自ら命を絶ったわけやな。
 西郷邸では、一族の婦女子、21名が自刃したそうや」
み「なんで、そんなことが出来たのか……。
 だって、江戸時代になってから、270年近く経ってるわけでしょ。
 その間には、戦なんかなかったわけじゃない。
 祖父母どころか、その時代に生きてた人で……。
 戦争体験を持った人なんて、ひとりもいなかったのよ。
 それが、いざ戦となったら、いきなり自刃って……」
ハ「戦はなかったとしても……。
 戦時の心がけだけは、しっかりと伝えられて来たちゅうわけやな」
み「げに教育は恐ろしい」

右に立ってる茶髪の兄ちゃんって、官軍だよね
み「でも、右に立ってる茶髪の兄ちゃんって、官軍だよね」
ハ「茶髪のわけあるかい。
 『赤熊(しゃぐま)』やがな。
 戦場で、自軍の指揮官の居所がわかるように被ってたそうや。
 藩によって、色が違てたみたいやで。
 長州藩が『白熊(はぐま)』、薩摩藩が『黒熊(こぐま)』。
 『赤熊(しゃぐま)』は、土佐藩やな」
み「こんなとこまで踏みこんで来て、とどめを刺したってこと?」
ハ「ちゃうようやな。
 踏みこんだときには、もうほとんどこの状態やったそうや。
 で、わずかに息があった女子が……。
 その気配に気づき、『敵か味方か』と問うた。
 もう、目も見えんくなりかけてたんやろな。
 それでも、自刃に使った刃を向け、必死に戦おうとするそぶりを見せた。
 官軍の赤熊はとっさに、『味方だ、味方だ』と叫んだ。
 死を目前にした女子が、さらに戦おうとする姿は見るに忍びなかったんや。
 すると女子はホッとした顔を見せ、『介錯を……』と頼んだ。
 赤熊は、涙ながらに介錯したそうや」
み「ううっ。
 可哀想すぎる」
ハ「そのときの女子は……。
 西郷頼母の長女、細布子(たいこ)。
 当時、15歳やったそうや」
み「15歳で……。
 どうしてそんなことが出来る……。
 わたしなら、絶対に無理」
ハ「今の日本に、これが出来るおなごなんておらんやろ。
 教育が人を作るっちゅうことやな」
み「教育、恐るべし」

有名な辞世の歌やな
ハ「有名な辞世の歌やな。
 頼母の妻、千重子が詠んだものや」

●なよ竹の風にまかする身ながらも たわまぬ節はありとこそきけ

み「もの凄い覚悟……」
ハ「千重子はことのき、まだ33歳やった」
み「今の33歳とは、まったく別の人間だね」

それぞれの辞世の歌やな
ハ「これは、それぞれの辞世の歌やな」
み「もういい。
 とても見てられん」

系図もあるで
ハ「系図もあるで」
み「てっ、撤収!」

また柔道が来た
み「げ。
 また柔道が来た。
ハ「西郷四郎やな」
み「西郷頼母の養子になったのは……。
 維新後だよね」
ハ「Wikiによると……。
 明治12(1879)年やな」
み「もともと、どういう繋がりだったの?」
ハ「甥っ子みたいやで。
 頼母の長男が、病気で夭折したようや」
み「てことは、家を継がせるための養子か。
 そもそも、維新後、頼母は何をしてたわけ?」
ハ「石田村(現:伊達市)の霊山神社の宮司をやっとったとあるな」
み「宮司って、資格なしでもなれるの?
 今だと、國學院大とか出なきゃダメだよね」
ハ「昔は、人徳だけでなれたんやないか。
 知らんけど」

今度はベルばらか
み「で。
 今度はベルばらか。
 なじぇに、この格好?」
ハ「アメリカに官費留学した人のようや」
み「西郷頼母とどういう関係?
 愛人じゃないよね」
ハ「アホか。
 繋がりは、会津藩出身の女性ってことみたいやな」
み「ほぼ無関係じゃん!
 しかし……。
 この名前、どうなってんの?
 山川捨松って、本名なの?」
ハ「元々の名前は、“さき”やったようやな。
 渡米させるとき、母親がこの名に改名させたそうや」
み「なじぇに?」
ハ「“今生では、二度と会えるとは思っていないが……。
 捨てたつもりでお前の帰りを待つ(松)”ちゅう意味やて。
 行く方より、送り出す方に覚悟が要ったちゅうことやろ。
 このとき、娘の“さき”は、まだ11歳やったそうや」
み「それじゃ、自分の意思での留学じゃなかったってこと?」
ハ「山川家が応募したみたいやな」
み「なんちゅうか……。
 昔の女性は、ほんとにタイヘンだわ。
 昔に生まれなくて良かった」
ハ「あんた見てると、ほんまにそう思うわ」
み「この格好って、渡米先での姿ってこと?」
ハ「帰国して、大山巌ちゅう軍人と結婚しとる。
 後に、陸軍大将にまでなった人やな。
 で、この格好は……。
 『鹿鳴館の華』と呼ばれてたころのものやて」
み「なるほど。
 留学帰りだから……。
 ダンスも上手かったわけだ」

『若党部屋』か
み「『若党部屋』か」
ハ「『来客の従者が、主の要件が済むまで待っていた部屋』とあるな」
み「しかし、見事に殺風景だね。
 テレビもないし」
ハ「当たり前やがな」
み「寝っ転がってるわけにもいかないよね」
ハ「ずっと正座やないんか」
み「過酷すぎる。
 スマホもないし、時間の潰しようがないじゃない」
ハ「畳の目を数えるしかないわな」

料理道具か
み「料理道具か。
 しかし、どれもこれも重そうだ。
 持ち運ぶのも洗うのも、タイヘンだったろうね」
ハ「冬は辛かったやろな。
 水が冷とうて」
み「落っことして割ることもあったと思う」
ハ「せやな」
み「で、手打ちにされて、井戸に投げこまれ……。
 夜な夜な、“一枚……、二枚……”」
ハ「皿屋敷か!」

茶の間か
み「お、茶の間か。
 やっぱり、畳の部屋は落ち着くね。
 しかし、ずいぶんと広いな」
ハ「茶の間いうても……。
 『家臣達が休憩したり食事をした二十畳敷きの部屋』やて」
み「なるほど。
 ここは、公邸側のエリアか」

こりゃ広いわ
み「こりゃ広いわ。
 家族はどこに住んでたの?」
ハ「右下の青いとこみたいやな」
み「ふーん。
 確かに、一番下に浴室と厠があるね。
 しかし、広いわ」
ハ「建築面積、280坪やて。
 敷地やないで。
 建物が建ってる部分の床面積や」
み「掃除がタイヘンすぎる」
ハ「女中がおるがな」

『城からの使者が、家老と会った部屋』か
み「『城からの使者が、家老と会った部屋』か。
 城からの使者って、こんな格好して来んの?」
ハ「んなわけあるかいな。
 飾ったあるだけやろ」
み「紛らわしい!」

最初の式台玄関の裏っかわだね
み「ここは、最初の式台玄関の裏っかわだね。
 ここだけで、十分暮らせる広さだ」
ハ「わしも……。
 あないなお女中と一緒やったら暮らしてみたい」
み「やめんか、エロ親父」

『槍の間』?
み「『槍の間』?」
ハ「『玄関番が常時二~三名詰めており、緊急事態に備えていた部屋』とあるな」
み「鎧、着てか?」
ハ「あれは、飾ったあるだけやろ。
 あんなん着とったら、敵が来る前にへたばってまうがな」
み「『通り畳』って何?」
ハ「書いたあるやないか。
 老眼か?」
み「遠くて見えないの!
 近眼だろ」
ハ「『中央の畳の敷き方を通り畳といいます。
 玄関番が敵の侵入など緊急の際に、畳の縁に足がつまづいたりしないようにとの配慮です』」
み「てことは、この部屋を横に突っ切るわけか」
ハ「左っ側が、式台玄関やけど……。
 どうやって突っ切るんや。
 右側は壁やないか」
み「壁と見せかけて、実は張りぼてなんじゃないの。
 そこを突き破って現れるのよ」
ハ「コントやがな」

ここが、壁のむこう側か
み「ここが、壁の向こう側か。
 こりゃ気持ちのいい部屋だね。
 しかし、みごとな逆光で、説明書きがぜんぜん読めん」
ハ「『役人所(やくにんどころ)』て書いたる」
み「よく読めるな。
 サンコンか」
ハ「古いたとえや。
 今の人やと、わからんで」
み「いいから読んで」
ハ「『屋敷に関わる事務を執っていた部屋』やて。
 執務室やな」
み「なんか優遇されてるよね。
 壁の向こうに飛びだして行かなくていいわけだし……。
 窓から飛び出して逃げられるじゃない」
ハ「会津の武士が、そないなことせんわい」

殺風景な中庭じゃ
み「殺風景な中庭じゃ。
 バーベキューでもしたのかな」
ハ「するかいな。
 こういう中庭は、明かり取りの役目があったんやろ」
み「確かに、こんな広い家じゃ……。
 真ん中あたりは真っ暗だわな。
 電気もないんだし」

おー、美しい
み「おー、美しい。
 ま、こんなにお天気が良ければ……。
 どんな庭でも綺麗に見えるけどね」
ハ「ここは移築やからな。
 元の場所の庭がこうやったとは限らんやろ」
み「イングリッシュガーデンだったりして」
ハ「案外、畑やったかも知れんで」
み「なるほど。
 それは考えられるか」

『お成りの間』か
み「『お成りの間』か。
 ここは説明書きが近くてよく見える。
 奥の人形は、松平容保かもね。
 ここは、屋敷のどのあたりなんだ?」
ハ「あんたやと、屋敷内で迷子になりそやな。
 ↓さっきの間取図でいうと、向かって左側にあった黄色いエリアやな」
会津武家屋敷・間取図

黒い鯉だ
み「あ、黒い鯉だ。
 錦鯉を泳がせないのは……。
 質素な家風ということかね」
ハ「そもそも錦鯉が生まれたのは……。
 幕末近くのようやで。
 あんたの住んどる新潟県の、小千谷のあたりやないか」
み「なるほど。
 生まれてたとしても、全国的に広がるのは維新後だろうしね。
 それに、こういう屋敷で鯉を飼うのは……。
 いざというときの食料にもなるからじゃない。
 綺麗な錦鯉じゃ、食べにくいよね。
 もったいないし」
ハ「そういうたら、つげ義春の漫画に……。
 錦鯉を盗んで食う話があったな」
み「あったあった。
 確か、『ほんやら洞のべんさん』だ。
 あれも雪深い越後の話だったね」

緑が目に染むるわい
み「緑が目に染むるわい。
 雪国の人間にとって……。
 この季節は、ほんとに格別なんだよ」
ハ「せやろな」
み「ここで、バーベキューがしてみたい」
ハ「そればっかしや」

さっきの部屋の横だ
み「さっきの部屋の横だ。
 あっ、やっぱりあの人形、松平容保だったんじゃない。
 大当たりだ」
ハ「幕末の藩主なんやから、誰でも当たるがな」
み「でも、何しに来たんだ?
 業務報告とかなら……。
 お城に呼びつけて聞けばいいだけだろ」
ハ「華美に暮らしてないかとか……。
 チェックの意味もあったんやないか?」
み「でも、抜き打ちで来るわけないでしょ。
 いくらでも繕えるよ。
 やっぱ、殿様もたまには出歩きたかったんじゃないの。
 で、お昼に池の鯉を食う」
ハ「なんでやねん」

鯉こくが出た
み「ほら、鯉こくが出た」
ハ「お茶やて」

でたー、厠だ
み「でたー、厠だ。
 わたしの大好物」
ハ「食うんか?」
み「食った後、使うんだから、似たようなもんだろ」
ハ「大違いやわ」
み「説明書き、読んで」

厠(外部)
ハ「『厠(外部)』。
 『御成の間専用の厠。
 床下には砂を敷した箱車が、木製のレールの上に置かれている。
 使用後は、この箱車を引き出し、健康状態を調べた後、砂ごと後始末をした。
 砂を使用しているため、砂雪隠とも呼ばれた』やて」
み「なんか……。
 猫のトイレみたいだね。
 でも、『敷した』って何?」
ハ「そう書いたるがな」
み「『敷いた』の誤記なんじゃないの?」
ハ「原稿書いた先生の字が、そう読めたんかもな」
み「チェックが甘い!」
ハ「何で、わしが怒られんならんのや」
み「でもさ……。
 大をするってことは、泊まったってことだよね」
ハ「確かにな。
 ちょっと立ち寄ったくらいやったら、大まではせんわな」
み「そんなら、お風呂も近くにあるんじゃないの?
 さっきの屋敷の間取り、見てみて」

あらへんみたいやで
ハ「あらへんみたいやで」
み「お風呂、入らなかったってこと?
 それじゃ、夏は来なかったんだろうね」
ハ「何でや?」
み「会津の夏に、あんなキンキラキンの重たそうな装束着て外出したら……。
 ぜったい、汗かくだろ」
ハ「確かにな。
 道中の駕籠で、すでに汗だくやないか」
み「お風呂、使わないわけにいかんだろ。
 あ、そうか。
 庭の池に入ったんだ」
ハ「入るかい!」
み「でも、いちいち、うんこまで確かめられて……。
 お殿様も大変だね」
ハ「偉い人は、そないなこと気にせんのやろ」
み「ますます猫みたいだ。
 よし、厠の内側も見なくては」

厠(内部)
み「これは、近いからわたしにも読めるわ。
 なになに。
 『厠(内部)』。
 『ここには天井板がなく、敵が忍び込むのを防いだと言われている。
 この様式は、幕府の間者に対する備えとして、江戸時代中頃から始まった。
 また、奥の方には畳が三枚敷かれている』か。
 でもさ、『江戸時代中頃から始まった』ての、何か形式的だよね。
 平和な時代のど真ん中じゃない」
ハ「武士っちゅうのは、建前がすべてみたいな存在やからな」
み「なるほど。
 自分の存在自体が、建前ってことね。
 その自らの存在意義を表すために……。
 こういう形式的なことを、次々と考えついたってことか」

奥の方には畳が三枚敷かれている
み「『奥の方には畳が三枚敷かれている』って……。
 単に、大の部屋ってことじゃない。
 しかし、畳ねー。
 ピーピーで汚したら、拭いたくらいじゃ取れないよ。
 入れ替えだ」
ハ「汚い話、すな」
み「ところでさ。
 これ、どっち向きに座ったと思う?」

持ち手のある側を向いてやろ
ハ「そりゃあの、持ち手のある側を向いてやろ」
み「それじゃ、おまるだろ。
 そもそも持ち手って、何のために持ったわけ?」
ハ「掴まったほうが、安定するやないか」
み「国鉄時代の列車のトイレと混同してない?
 揺れるわけじゃないんだから。
 あ、そうか。
 おまるのアヒルの首から出てる棒は……。
 この誤解が発祥なのかもね?」
ハ「何で誤解なんや。
 あの棒、持って、息んだんやろ」
み「痔になるぞ。
 あのね。
 座る方向は、逆。
 あの横棒には、着物の裾を掛けたわけ」
ハ「ほんまかいな」
み「タイムトラベラーが……。
 ジョッキースタイルで棒に掴まってたら、すぐにバレるってこと」
ハ「何の話や」
み「逆に、江戸時代の武士が、国鉄のトイレに入ったら……。
 逆向きに座るかもね。
 で、揺れで転げ落ちる」
ハ「話がズレまくりやて」

『茶室』か
み「『茶室』か。
 『御成の間に来客があったとき、茶をたてる部屋』ね」
ハ「さっき、容保公に出されとったやろ」
み「あれは鯉こくだろ」
ハ「ちゃうっちゅうに!」
み「右の『釘隠し』の説明、読んで。
 老眼じゃなくて近眼だから」
ハ「『他の部屋の釘隠しは銅製ですが、この部屋だけは瀬戸物でできています。
 理由は、湯気で銅が錆びると緑青(ろくしょう)という毒物が発生し、体の毒になるからです』」
み「ふーん。
 これも例の、建前的忖度っぽいな」

『鎖(くさり)の間』やて
み「なんじゃ、ここは?」
ハ「書いたるがな」
み「読んで。
 近眼だから」
ハ「手間のかかるオナゴや。
 ええ加減、金取るで」
み「あんたが金取って、どうやって使うの?」
ハ「『鎖(くさり)の間』やて」
み「拷問部屋か?」
ハ「『釣釜(つりがま)を掛ける鎖がこの部屋にあったことから、この名がついた。
 大勢の来客の場合は、ここでも茶をたてた』とある」
み「そういう用途の部屋に……。
 『鎖の間』はおかしいでしょ」
ハ「知らんがな」
み「でも、単に炉を増やせばいいだけだよね。
 何で別の部屋がいるわけ?」
ハ「決まりごとがあったんちゃうか?」
み「どんな?」
ハ「『一室一炉』とか」
み「『一期一会』をもじったな」
ハ「次、行くで」

『客待(きゃくたい)の間』か
み「おー、ここは説明書きが足元にある。
 『客待(きゃくたい)の間』か。
 『家老の応接間として使われた』。
 しかし、シンプル極まりない部屋だね」

でっかい火鉢は、会津の冬では最高のもてなし?
み「でっかい火鉢は、会津の冬では最高のもてなしだったのかも。
 あそこで燗付けして、一杯やったのかな?」
ハ「あの安定の悪そうな縁でか?
 こぼしてまうで」
み「銚子とお猪口、両手で持ってたりして。
 で、互いにお酌しながら飲んだ」
ハ「お座敷遊びやがな」

『表居間』か
み「『表居間』か。
 『家老の執務室として使われた。
 書院造りになっている』」
 なーんか、落ち着かない部屋だね。
 周りに空間がありすぎる。
 もっと狭くていいでしょ。
 三畳くらいで」
ハ「典型的な貧乏性やな」
み「やかまし!」

『入側(いりがわ)』?
み「『入側(いりがわ)』?
 『「家の入り(内)の縁側」を意味する。
 また、畳が敷いてあることから、「縁座敷(えんざしき)」とも呼ばれた』か。
 畳廊下っていいよね」
ハ「板敷きやったら、冬なんか冷とうてたまらんで」
み「昔は、スリッパなんてなかったからね。
 足袋は、履いてなかったのかな?」
ハ「履いとらんかったら、霜焼けでひどかったやろな」
み「カイロもないしね。
 つくずく、今に生まれて良かった」

『戸袋』か
み「『戸袋』か。
 『開けた雨戸を納めておくために使う』。
 うちは、高度成長期に建った文化住宅だから、もう雨戸なんてなかったけど……。
 父の実家の農家にはあったね。
 こんなお屋敷だと、朝夕の開け閉めが大変だったろうね。
 雨戸が急速になくなっていったのは……。
 やっぱり、メンテが大変だったからじゃないの。
 雨風に晒されるから、痛みは相当早いと思うよ」
ハ「同時に、ガラスの発達が大きいやろな。
 昔のガラスは、高価なうえにヤワやったんやないか?」
み「風で折れた小枝があたったくらいで割れたのかもね」
ハ「それ以前に、この時代やったらガラス自体ないやろ。
 障子や。
 せやから、雨戸が必須やったんや」
み「そうか!
 それで『雨戸』なんだ!」
ハ「そういうことやな」
み「あとさ、さっきのメンテの件で思い出したことがある」
ハ「なんや?」
み「テレビでさ、民家に侵入した害獣を退治する番組があったんだ」
ハ「ハクビシンとかが、屋根裏に入りこんだりするやつやな」
み「それそれ。
 なんと、雨戸の戸袋の中に……。
 コウモリが、ぎゅう詰めで巣食ってたんだよ」
ハ「そりゃ、キモすぎやわ」

なんじゃ、この金具?
み「なんじゃ、この金具?」

こっちゃに説明書きがあったで
ハ「こっちゃに説明書きがあったで」
み「『角金具(すみかなぐ)』?。
 なるほど。
 この金具で、雨戸を90度回転させたのか。
 頭のいい発明だ。
 でも、ここに足の指ぶつけたら……。
 死ぬほど痛いだろうね」
ハ「悶絶やな」
み「痛み、わかんの?
 あんた、足の指ないでしょ」
ハ「大きなお世話や」

 国登録有形文化財「みんなの八鶴館」さんのyoutubeチャンネルに……。
 回転雨戸の動画がありました。
 『八鶴館』は、千葉県東金市の八鶴湖畔に佇む、築100余年の建物だそうです。
 ↓面白いので、ぜひ御覧ください。


 わたしは、角金具の上に、雨戸の底部(下桟?)が乗るんだと思ってました。
 でも、この動画を見ると違いますね。
 金具は、雨戸が外側に外れないための押さえのようです。
 ということは、上側にも金具が付いてたのでしょう。
 ネットを探したら、『九州旅倶楽部』というサイトさんに……。
 ドンピシャの記述がありました。
 『小倉城庭園の雨戸』というページです。
 上側の角金具も、ばっちり写ってます。
 ぜひ、御覧ください。

『自刃の間』
み「でー!
 また出た、『自刃の間』。
 さっき、見て来たじゃないの」
ハ「さっきなのは、展示用の部屋やったんと違うか?」
み「そう云えば、妙に前面展望が開けてたよな。
 確かに、自刃するなら……。
 こういう薄暗い、奥まった部屋になりそうだ。
 説明書き、読んで。
 怖くて読めん」
ハ「手間のかかるやっちゃ。
 『慶応四年(一八六八)八月二十三日早朝、西軍は会津城下に総攻撃を開始した。
 お城より全員登城の命が下ったが、西郷家の婦女子は「足手まといになるまい」と考え、この部屋にて自らの命を断った。』とな」
み「全員登城って……。
 婦女子まで戦闘員にするってこと?」
ハ「ちゃうやろ。
 婦女子を城に入れて、守ろうとしたんや」
み「なるほど。
 それで、“足手まとい”か。
 自分らを守るためには……。
 兵を割かなきゃならないわけだからね。
 だから、ここでの死を選んだってことか」
ハ「あんたならどうする?」
み「この場から逃げます」
ハ「そやろな。
 で、城に行くんか」
み「行くかいな。
 敵が攻めて来るとわかってるのに。
 隠れ場所なら、いくらでもあるでしょ。
 落ち武者狩りしてるわけじゃないんだから……。
 民家の隅々まで、いちいち調べないよ。
 8月なんだから、凍え死ぬ心配はないし。
 炭小屋にでも隠れて時を待つ」
ハ「忠臣蔵か」

『第二の間』
み「『第二の間』。
 『祖母や女の子達の間』か。
 ここで、お祖母さんと遊んだりしてたんだろうね。
 お手玉とかで。
 わたしさ、お手玉で一度やってみたかったことがあるんだ」
ハ「何や?」
み「障子に数字を書いて……。
 ストラックアウト」
ハ「半殺しにされるで」
み「張替えの前ならいいでしょ。
 どうせ破るんだから。
 シルバー人材センターとかでさ……。
 障子の張替えも請け負ってるじゃない。
 それに雇ってくれないかな。
 張替え前の、破り方専門。
 お手玉持って、いつでも参上します」
ハ「半殺しや」

奥一の間
み「げ。
 『奥一の間』。
 一の間が後に来た。
 説明書き、読んで」
ハ「誰か、代わってくれや」
み「文句言わない!」
ハ「『家老の寝室として使われ、書院造りとなっている。
 この場面は、父の寝室で遊んでいる子供達を、母の千重子が叱っている所である』」
み「家老と奥さんって、一緒に寝てなかったの?」
ハ「普通の武士の家やったら、一緒やったやろな。
 せやけど、ここは半分、公邸やからな。
 違ごたんやないか」
み「それでも、子供は生まれてるわけだよね」
ハ「何が言いたい?」
み「なさることは、なさってたってことでしょ」
ハ「こっから、奥方の寝室に通たんやないんか」
み「めんどくせー。
 ていうか、普段から、こんな格好してたのかね?
 めんどくさすぎ。
 会津の夏なんか暑いよ、盆地だから。
 アッパッパじゃなきゃ過ごせないと思う」
ハ「心がけの問題やな」
み「でも、この毬で……。
 ストラックアウトしてたんじゃないの?」
ハ「半殺しやて」

お湯を手桶で運んだ?
み「お、ここは説明書きが目の前にあって助かる。
 しかし、お湯を手桶で運んだ?
 そりゃ大変だろ」
ハ「奥方がやってたわけやないがな。
 そういう役目をする使用人がおったっちゅうことや」
み「確かにね。
 ぜったいに、家族だけじゃ暮らせない家だよな」

『脱衣室』に『厠』
み「『脱衣室』に『厠』か。
 しかし……。
 この消化器、当時は無かったよね」
ハ「当たり前やがな」
み「でもなんで、ここに消化器を設置したんだ?
 お風呂じゃ、火を使わなかったわけでしょ」
ハ「今かて使こてないがな。
 配置的に、ここがええ塩梅やったんやないか」
み「確かに、妙にマッチしてるけど」

『化粧の間』""
み「『化粧の間』。
 化粧するだけの部屋ってこと?」
ハ「化粧っちゅうか、身支度する部屋やろ」
み「あの複雑そうな着物を着るとか?」
ハ「せやな」
み「しかし、なーんか……。
 怨念の籠もってそうな部屋だな。
 鏡の前で髪を梳いたら……。
 ごっそりと髪が抜けるとか」
ハ「四谷怪談か!」

『高橋是清邸』に似てるな
み「なーんか。
 『江戸東京たてもの園』の……。
 『高橋是清邸』に似てるな」
ハ「昔の日本家屋なんか、似たり寄ったりやろ」
み「あ、赤絨毯のせいかな?
 たしか、高橋是清邸の廊下もそうだった。
 この絨毯は、当時のものじゃないよね」
ハ「そらそやろ」
み「なんで、廊下に絨毯を敷くんだろ」
ハ「板の間を、靴下裸足で歩かせるわけにもいかんやろ。
 夏はともかく、冬は冷え冷えやで」
み「暖房ないの?」
ハ「こないに広い日本家屋、暖房なんか出来るかいな。
 見学者は、防寒着のまま見るわけやから……。
 上はいいわな。
 しかし、足元は靴下や。
 氷の上歩いとるようなもんやで。
 山ほどスリッパを用意せなあかんがな」
み「なるほど。
 高橋是清邸も同じ理由か。
 でも、なぜに色まで一緒なの?」
ハ「それは、あれちゃうか?
 レッドカーペットやがな」
み「偉い人が歩くところに敷くやつ?
 でも、ここの見学客は別に偉くはないでしょ」
ハ「たまに偉い人も来んのやろ。
 そんときだけ敷き直すとなったら大手間やで。
 最初から赤敷いといた方が楽やがな」
み「ほんとに、そういう理由?」
ハ「そやないんか。
 知らんけど」

ここは敷いてないぞ
み「おい。
 ここは敷いてないぞ」
ハ「廊下やないからやろ」
み「板の間には変わりないじゃん」
ハ「この形の絨毯は、売っとらへんな」
み「そういう問題か!」

『土間』
み「『土間』か。
 雨の日は、ここでバーベキューできるな」
ハ「なんでやねん」
み「あの板の間にパソコン置けば……。
 Youtube見ながら食べられる」
ハ「コンセントが無いで」
み「食べてる間くらい、充電が保つよ。
 あ、でも、コンセントは要るな。
 冷蔵庫、置きたいから。
 ビールと氷は手近にほしいよね」
ハ「何の話や」

『奥玄関』
み「『奥玄関』?
 もうひとつ玄関があるってこと?」
ハ「“奥”っちゅうのは、プライベートスペースのこっちゃろ。
 そこに付いてる玄関っちゅうことやがな」
み「ふーん。
 でも、ここもバーベキューに良さげだな」
ハ「それは、ええっちゅうねん」

『女中頭部屋』
み「説明書きが遠くて読めん。
 読んで」
ハ「『女中頭部屋』や。
 『女中頭一人に一部屋が与えられていた。
 奥の二畳間は、女中頭付女中の部屋である』」
み「女中頭に、専属の女中が付いてたってこと?」
ハ「そういうことやな」
み「しかし、二畳間って。
 こんなに広い家なんだから……。
 そこまで狭くしなくてもいいでしょ」
ハ「ま、さまざまな点で……。
 序列がはっきりするようになっとるんやな」
み「でも、二畳間……。
 寝るには良さそうだよね。
 ぜったい、落ち着くわ」
ハ「前世は女中やな」

『女中部屋』
み「お、『女中部屋』だ。
 『行儀見習いの女中達(藩士の子女)十数名が、相部屋で寝食を共にしていた』。
 十数名って……。
 ここ、八畳だよね。
 一畳に2人じゃん。
 どうやって寝んの?」
ハ「布団一枚に、2人並んでやろな。
 昔の日本人は小柄やったから、大丈夫やないんか。
 それに、女中っちゅうても、全員武家の娘や。
 文句なんか言わんのやろ」
み「大柄な女性は、文字どおり肩身が狭かったろうね。
 ここに比べたら、女中頭付女中は天国だよね。
 二畳間独占なんだから。
 ここの4倍のスペースがあるわけだ。
 ぜったい立候補したい」
ハ「女中頭の指名やろ。
 ナマケモンは選ばれんわい」
み「くっそー」

『使用人厠』
み「『使用人厠』。
 個室って、いくつあったんだろうね?」
ハ「ひとつなんちゃうか?」
み「それじゃ、朝は大渋滞だろ。
 十数人もいるのに。
 ぜったい、便秘だ」

『子供部屋』
み「『子供部屋』。
 なんか、切なくなるね。
 あんな最後が待ってるんだからさ」
ハ「確かにな」
み「会津武士道が、どんなに立派な教えだったとしても……。
 子供を道連れにするような教えは、絶対に間違ってる」

いいねー、この佇まい
み「いいねー、この佇まい。
 でも、冬は寒かったろうね」
ハ「せやけど当時は、それが当たり前やったからな。
 冬、暖かい部屋なんて、誰も経験したことなかったわけや」
み「なるほど。
 便利なこと、快適なことを、1度でも味わっちゃうと……。
 後戻りが出来なくなるってことだね。
 インターネットとか、ウォシュレットとか……。
 もう、それなしには生きられない感じだもんね」

『子供部屋』
み「『子供部屋』?
 さっきもあったよな?
 子供用の部屋が、2つあったってこと?」
ハ「知らんがな」
み「疑問に思ったら、すぐに検索!」
ハ「するんはわしやないか。
 難儀なやっちゃで。
 ふむふむ。
 どうやらさっきなのが、長男専用の部屋やったみたいやな。
 こっちゃは、長男以外が一緒に使う部屋やて」
み「なるほど。
 家督を継ぐ長男が優遇されてたってわけか。
 あれ?
 確か、西郷四郎が養子に入ったわけだよね。
 長男はどうしたの?」
ハ「実子の長男は、22歳で病死しとるようやな」
み「それでか。
 明治の世になっても……。
 お家大事は変わらないってことね」
ハ「髷は落としても……。
 頭の中身までは、スパッと切り替えられんちゅうことやな」

『激動の幕末明治と会津藩の人々』
み「『激動の幕末明治と会津藩の人々』か」
ハ「まさか、これ読めちゅうんやないやろな」
み「けっこうです。
 ここはパス」
ハ「何でやねん?」
み「説明書きが長すぎる。
 10行くらいに出来ないもん?
 これじゃ、最初から読む気にならないよ。
 最近のネットのニュースもそうだよね。
 なんで、あんなに長いの?
 タイトルに惹かれて読もうと思ってクリックするんだけど……。
 開いてみると、やたらと長い。
 記事の下の方見ると、ページ送りまである。
 3ページくらいあったりするんだよ。
 なんでそんなに長い必要があるわけ?」
ハ「原稿料、ぎょうさんもらえるからやないけ?
 1枚いくらなんやろ」
み「書いてきた枚数分、払ってやってるってこと?
 そんな気前のいいプロバイダ、あるわけないでしょ。
 最初から、枚数を決めて発注してるはず。
 でもね……。
 何でなのかね?
 枚数が多いほうが、読まれるって思ってるのかな?
 少なくとも、わたしには逆効果なのよ。
 長いとわかった瞬間、読むの止めるから」
ハ「そうやない人の方が、多いっちゅうことやないんか?」
み「そうは思えないんだけどね。
 そんなに長い記事に付き合ってられる人が……。
 過半数だとは思えない。
 なんか、カラクリがあるはず。
 そういえばさ。
 昔の偉い大学教授に、原稿依頼したときのエピソードなんだけど……。
 1枚目の1マス目から、終わりのページの最後の1マスまで、びっしり字で埋まってたんだって」
ハ「律儀な先生やったんやな。
 頼まれた枚数分、1マスたりとも誤魔化さんっちゅうわけや。
 誰かさんのスカスカの小説とは、エラい違いやで」
み「誰かさんて、誰!」
ハ「さらに順路は続く」

『松平容保』
み「『松平容保』の説明か。
 ここもパス」
ハ「なんでやねん?
 ファンやなかったんか、容保公の?」
み「さらに順路は続く」

松平容保公、若かりしころの近影
み「おー、松平容保公、若かりしころの近影。
 やっぱ、イケメンだよね」
ハ「確かにな。
 せやけどこれ、武士の顔やないで。
 お公家さんの顔や」
み「確かに……。
 まさに、滅びようとする貴種の顔だね」

新選組“鬼の副長”土方歳三
み「また出た、イケメン!
 新選組“鬼の副長”土方歳三。
 ほんと、こんな髪型にすると、現代の俳優みたいだよね」
ハ「京都にいたころは、エラいモテたようやな」
み「そうそう。
 浅葱色の新選組の隊服着て、総髪でさ……。
 京の町を颯爽と風切って歩いてたわけだ。
 芸者さんたちに、すごい人気だったって」
ハ「わしの若いころにそっくりや。
 何や、その目は?」
み「突っこむ気にもならん。
 でも、なんで土方歳三が出てくるわけ?」
ハ「もう、忘れたんかいな。
 ここへの来しなに見たやろ」

とんでもないのがあった
み「あ、近藤勇の墓!」
ハ「それやがな。
 土方歳三が……。
 近藤勇の遺髪を、会津に持って来たって話や。
 京都守護職やった、松平容保の元にな」
み「うーむ。
 松平容保と土方歳三。
 イケメン同士、関わりがあったわけだ。
 しかし、それを繋ぐのが近藤勇ってのがね」
ハ「何が言いたい?」
み「人は顔じゃないと云うものの……。
 やっぱ、顔だよね。
 かなりの部分」
ハ「あの顔こそが、武士の顔なんやけどな」
み「百姓の出だよね?」
ハ「江戸も末期になると……。
 ああいう面構えの武士は、いのなったっちゅうことやろ」

『什の掟』
み「出た。
 『什の掟』。
 読むぞ。

+++
一、年長者(としうえのひと)の言ふことに背いてはなりませぬ
一、年長者にはお辞儀をしなければなりませぬ
一、嘘言(うそ)を言ふことはなりませぬ
一、卑怯な振舞をしてはなりませぬ
一、弱い者をいぢめてはなりませぬ
一、戸外で物を食べてはなりませぬ
一、戸外で婦人(おんな)と言葉を交へてはなりませぬ

ならぬことはならぬものです
+++

 って……。
 7つしかないじゃん。
 何で、“十”の掟なの?」
ハ「よく見てみい。
 数字の“十”やないで。
 人偏付きや」
み「なるほど。
 什器じゅうき備品の“什”だ。
 これって、どういう意味?」
ハ「知らんがな」
み「すぐ調べる!」
ハ「人を辞書代わりにすな」
み「人じゃないだろ」
ハ「やかましわ。
 えーっと。
 つまりは、人やがな。
 人が10人集まった単位を、“什(じゅう)”ちゅうたみたいやな。
 同じ町内の藩士の子供たちが、十人前後で集まりを作ってたそうや。
 この集まりのことを、“什 ”と呼んだんやな。
 すなわち、その集まりの掟ちゅうこっちゃ。
 十箇条の“十”やないってことや」
み「なるほど。
 でも今度は、什器備品の什器の意味がわからん」
ハ「また調べるんかい」
み「あたぼうよ」
ハ「いばりなや。
 えーっとな。
 元々は、お寺で使う食器とかの道具を云うたみたいやな。
 10個をひとくくりにせなならんほど、たくさん必要やった道具ちゅうこっちゃ」
み「なるほど。
 思いがけないところで、什器備品の意味がわかった。
 経理現場でよく使うからね」
ハ「知らんと使こてたんかいな」
み「あたぼうよ」
ハ「いばりなっちゅうに」
み「しかし、何と言っても問題なのは……。
 最初のヤツだよね。
 “年長者の言ふことに背いてはなりませぬ”。
 これって、間違ったことでも従わなきゃならないってこと?
 死ねと言われれば、死ななきゃならないの?
 今はどうか知らないけど……。
 大相撲の世界でも、似たような言葉があったよね。
 “無理偏に拳骨と書いて兄弟子と読む”って」
ハ「学校の部活の世界でも、まだあるんちゃうか?」
み「先輩後輩は、だいぶなくなったんだろうけど……。
 監督の言葉は絶対ってとこ、未だに残ってるんじゃないの?
 あと、もう一つ問題なのが、4番目だよ」
ハ「“卑怯な振舞をしてはなりませぬ”ちゅうやつか?」
み「すごい曖昧だよね。
 どっからが卑怯なのか、線引きがない。
 だから、真面目な人間が、これを自分に厳しく当てはめたら……。
 身動き取れなくなるよ。
 こういう戦時で、生き延びようと思うことすら……。
 卑怯ってことになりかねない。
 なんでこんな抽象的な一文が入ってきたかね?
 ほかには、ものすごく具体的なのもあるじゃない。
 “年長者にはお辞儀をしなければなりませぬ”。
 “戸外で物を食べてはなりませぬ”。
 “戸外で婦人と言葉を交へてはなりませぬ”。
 戸外で物を食べるなってことと、卑怯な振る舞いをするなってこと……。
 なんで、同列に並べるかね。
 ははぁ。
 わかったぞ。
 この『什の掟』を作ったのが……。
 そのとき、一番の年長者だったんだ。
 だから、誰も文句を言えなかった」
ハ「エラい絡むやないか。
 これまでは会津に、ずいぶんと好意的やったやろが」
み「これだけ出来そうもないことを並べられるとね。
 喉元に槍を突きつけられた気分になる。
 わたしに守れそうなのは……。
 外で物を食べるなってことくらいだからね。
 さ、次、次」

こっから先、撮影禁止だ
み「あ、こっから先、撮影禁止だ。
 しかしさー。
 どうして撮影禁止なの?
 東京の『国立博物館』や『国立科学博物館』は、撮影できるのよ。
 わたしもさ、行ってみたい施設は、たくさんあるのよ。
 でも撮影禁止じゃ、『単独旅行記』が書けないじゃないの。
 今度、隠し撮りしてやろうか」
ハ「撮禁の場所の写真なんか、掲載できんやろ」
み「あ……。
 そうか」
単独旅行記Ⅶ・総集編(5)目次単独旅行記Ⅶ・総集編(7)

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