Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
単独旅行記Ⅶ・総集編(5)
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 この『単独旅行記Ⅶ・総集編(5)』は、『単独旅行記Ⅶ(041)』から『単独旅行記Ⅶ(050)』までの連載を、1本にまとめたものです。


ビールを4本しか買わなかったのは、失敗だったな
み「ビールを4本しか買わなかったのは、失敗だったな。
 もっと飲めた。
 やむを得ん。
 『氷結無糖レモン』に移行じゃ」
ハ「まだ飲むんかい」
み「アホたれ。
 まだ、5時半ではないか。
 日も暮れとらんわ。
 これからが本番じゃ」
ハ「恐ろしいヤツ」

それにつけても謎なのが、このセロテープ
み「それにつけても謎なのが……。
 このセロテープじゃ。
 ほんとに、何のために買ったんだろ?」
ハ「知らんがな」
み「ひょっとして……。
 研ナオコの顔真似をするためか?」
ハ「誰に見せるんや」
み「窓から、向かいのマンションの住人に」
ハ「通報されるで」

デッドソルジャーと化す
み「『氷結無糖レモン』……。
 デッドソルジャーと化す」
ハ「ちっとはペースを考えんかい。
 10分で空けおって。
 これで買った酒は終わりやろ。
 どうするんや?
 まだ、5時40分過ぎやで」
み「ふふふ」
ハ「不気味な笑いすな」
み「わたしが、自分の酒量を見誤ると思うかね。
 お酒を、現地でみんな調達してたんじゃ、高くつく。
 ちゃーんと、家から焼酎を持って来たんじゃ。
 ほれ」

この容器は便利なのよ
み「この容器は便利なのよ。
 ↓もともとは、『かのか』って焼酎が入ってたカップ」



み「確か、上野に泊まったときに……。
 スーパーで買ったんだと思う。
 容器が便利そうだったので、持ち帰った。
 以後、旅のお供じゃ。
 リュックのサイドポケットに1本ずつ入る」
ハ「2本も持って来たんか」
み「当たり前だろ。
 220mlしか入らないんだから。
 足りなかったら、無念すぎる。
 余れば、持って帰ればいいだけだかんね」
ハ「飲み助の理屈やな」
み「翌日に、お酒を残さないためには……。
 焼酎の水割りが一番なの。
 ほら、コップも冷やしておいたからキンキンじゃ」
ハ「こんな氷、冷蔵庫に入らんかったやろ」
み「大丈夫。
 バスルームの洗面台に投げておいても……。
 その日、飲み終わるまでは、十分保ってくれるよ。
 よし、もう1枚、写真撮ってやる」

パチリ!
み「パチリ!」
ハ「ちべたいわ!」

会津若松も暮れなんとするか
み「ようやく、会津若松も暮れなんとするか」
ハ「6時でも、まだ明るいわ。
 ええ季節やな」
み「雪国の人は、いっそうその気持ちが強いだろうね」
ハ「さもありなん」

隣のマンションが気になる
み「それにつけても、隣のマンションが気になる。
 フロントで、オペラグラスとか貸し出してないかな?」
ハ「あるかい。
 犯罪やがな」

黄昏れて来たな
み「黄昏れて来たな。
 いい色だ」
ハ「お主の顔の方がいい色やわ。
 こんな時間に出来あがっとったら、世間さまに申し訳ないわ。
 ……聞いとらんな」

山が近いといいよね
み「やっぱ、山が近いといいよね。
 風情が違うよ」
ハ「京都に似てるんかも知れんな」

♪暮~れゆく、春の夜
み「♪暮~れゆく、春の夜」
ハ「目一杯、音が外れとる」
み「芭蕉の句でさ、一番いいのは……。
 何といっても、これだよね」

●行く春を近江の人と惜しみける

み「“惜しみけり”じゃなくて……。
 “惜しみける”と連体止めにしたのが素晴らしい」
ハ「近江の人っちゅうのも、味わいがあるわな」
み「確かに。
 浪花の人じゃ、騒々しそうだし」

ほとんど、窓に明かりが点いてないね
み「ほとんど、窓に明かりが点いてないね。
 今、19時15分だろ。
 サラリーマンなら、もう帰っててもおかしくない時間じゃない」
ハ「それ以前に……。
 部屋に、奥さんとか子供がいたら、電気は点いとるわな」
み「単身者ばっかり住んでるってこと?」
ハ「もともと、空き部屋が多いんかも知れんで」
み「こんなにいい立地なのに?
 ホテルの窓が真ん前だぞ」
ハ「それは、あんたの良からぬ企みからの……。
 “いい立地”やろ」
み「でも、駅からも近いよね」
ハ「会津若松は、ここらの中心地やから……。
 ここから、鉄道でどこぞに通う人はおらんのやないか」
み「ひょっとしたら、残業があたりまえの町なのかも。
 武士の町だから」
ハ「何で、武士やと残業するんや?」
み「帰りにくいんじゃないの。
 そういう会社、けっこうあるみたいだよ。
 昔の知り合いにいたんだよ。
 そういう雰囲気の会社に勤めてる人。
 どうせ残業だからって……。
 昼間は、ほとんど仕事しないんだって。
 定時過ぎてから、忙しく仕事始めると……。
 残業時間も気にならないって言ってた」
ハ「間違っとるわな」

まだ明かりが点かん
み「19時22分。
 まだ明かりが点かん」
ハ「さっきから、7分しか経っとらんわ。
 何、見張っとるんや」
み「ひょっとして……。
 帰ってきてるけど、明かりを点けてないんじゃない?」
ハ「何でや?」
み「もちろん……。
 望遠鏡で、こっちの窓を覗いてるからだろ」
ハ「アホか」

ええかげん、カーテン閉めえや
み「19時34分」
ハ「ええかげん、カーテン閉めえや」

デッドソルジャーと化す
み「持って来た容器……。
 ひとつ、デッドソルジャーと化す」
ハ「まだ飲むんかいな」
み「そこに酒がある限り」
ハ「アル中や」

カーテンだけじゃなくて、こんなのがあった
み「カーテンだけじゃなくて、こんなのがあった」
ハ「完全に視界を遮断出来るわけやな。
 やっぱり、向かいの窓が気になるお客もいるからやろ。
 後付けかも知れんで」
み「確かに。
 ここは5階だから大丈夫だろうけど……。
 もっと低い部屋だったら、向かいの窓から、ベッドの上まで見えちゃうかもね」
ハ「だから何や?」
み「カーテン開けたまま、おっぱじめちゃうカップルがいるんじゃないの」
ハ「うかつ過ぎやろ」
み「わからんよ。
 不倫とかで昂奮してると。
 あと……。
 わざと、開けたままってのもいるはず」
ハ「わざと見せるってことか?
 変態やがな」
み「人類、みな変態。
 そしてアル中」
ハ「両方は、あんただけや」

具志堅用高は、単にヘンなおっさんではない
み「具志堅用高は、単にヘンなおっさんではない。
 偉大なチャンピオンだったのだ」
ハ「ボクシング動画かいな」
み「KOシーンだけ集めた動画って、面白いよ。
 酒飲みながら見るのに最適。
 何も考えなくていいし」
ハ「殺伐とした飲み方や。
 もう、ええ加減、寝んかいな。
 明日、起きれんなるで」
み「ぐー」
ハ「寝とる……」

 いきなり翌朝。

み「さすが、焼酎。
 二日酔いもなく、爽やかな朝じゃ。
 まずは、ひとっ風呂」

何を置く台なんだ?
み「これはいったい……。
 何を置く台なんだ?
 底の穴は、水抜きみたいだけど」

石鹸置きか?
み「あ、ここにもあった。
 ひょっとしたら……。
 石鹸置きか?
 今は、ボトルのボディーソープだけど……。
 石鹸の時代は、確かにこういう置き場がないと不便だよな。
 その用途なら、水抜き穴も納得出来る。
 うむ。
 朝から、頭脳も明快じゃ」

5時43分、今日も快晴じゃ
み「ピカーン。
 5時43分、今日も快晴じゃ」
ハ「二日酔いはないんか?」
み「ぜんぜん大丈夫。
 車の運転はできんがな」
ハ「あるんやないか」

向かいのマンションの住人は、寝不足かも知れんが
み「向かいのマンションの住人は、寝不足かも知れんね」
ハ「なんでや?」
み「覗きで」
ハ「やっとらんっちゅうに」

今日は、投稿日だでな
み「今日は、投稿日だでな。
 数少ない読者が待っとる」
ハ「二日酔いで、やれんのか?」
み「コメントも、みんな書いてきてあるからね。
 あとは投稿するだけ」

さて、朝飯じゃ
み「さて、朝飯じゃ。
 見なはれ、このラインナップ。
 なんと健康的なんでしょう」
ハ「朝なんやから、当たり前やろ」

醤油は持参じゃ
み「醤油は持参じゃ」
ハ「生野菜に醤油、かけんのか?」
み「賞味期限が迫っとったで、持って来た」
ハ「ケチくさいオナゴや」
み「何か言うたか」
ハ「聞かいでええ」

冷蔵庫に入れといたら、氷がまだ残ってた
み「冷蔵庫に入れといたら、氷がまだ残ってた」
ハ「まさか、これから酒、飲むんやないやろな」
み「飲むかいな。
 チェックアウトのとき、酒臭かったら……。
 武家のねーちゃんに睨まれる」
ハ「あぁ、あの無愛想なフロントな。
 確かに、睨みそうや」
み「さて、一眠りするかな」
ハ「寝るんか!」
み「まだ、6時40分じゃ。
 こんな時間に出かけても、どこも開いとらんわ」
ハ「わけわからん」

 熟睡タイム。
 Zzz。

み「うーむ。
 よー寝た。
 やっぱり、朝ご飯食べると、眠れるよね」
ハ「あんただけや」
み「今、何時?」
ハ「8時2分や」
み「おー、いい時間じゃ。
 さて、うんこして参るかな。
 覗くなよ」
ハ「いちいち断らいでええ」

これだけトイレットペーパーがあれば、下痢ピーでも安心じゃ
み「これだけトイレットペーパーがあれば、下痢ピーでも安心じゃ。
 大丈夫だけど」

み「さて、青い空が待っておる。
 いざ出陣じゃ。
 その前に、記念撮影してやろう」

覗きマンションとも、これでお別れじゃ
み「パチリ。
 覗きマンションとも、これでお別れじゃ」
ハ「ちゃうっちゅうに」

さらば、ワシントンホテル
み「さらば、ワシントンホテル」

すばらしい好天じゃ
み「うーむ。
 すばらしい好天じゃ。
 単独旅行は、雨に祟られることが多かったからな。
 梅雨時に行ってたからだけど。
 やっぱり、5月にして大正解だね」
ハ「はなから、そうすればいいだけやないか」
み「5月は、会社の決算の申告月なの。
 経理事務所から、いろいろ言ってくることがあるから……。
 曜日の並びによっては、旅行に出るのが難しいわけ。
 その点、今年はバッチグーだったね」
ハ「死語や」

さらばじゃ、ワシントンホテル
み「さらばじゃ、ワシントンホテル。
 世話になったぞ。
 フロントは、愛想なかったけど」
ハ「いらんこと言わいでええ」

バスで行くんか?
み「ここか……」
ハ「何や、バスで行くんか?」
み「うんにゃ。
 これは、帰りの高速バスの乗り場。
 最後の最後に、乗り場が見つからないで焦るとイヤだから、下見ね」
ハ「抜けとるんか、細心なんか、ようわからんわ。
 あ、単に小心者なんやな」
み「うるさい。
 石橋を叩いて割るじゃ」
ハ「割るなよ」

けっこう今風なバスが来た
み「おー、けっこう今風なバスが来た」
ハ「どんなんが来ると思っとったんや?」
み「ボンネットバスとか」
ハ「バカにしとるんやないか?
 それはさっきの周遊バスやろ」
さっきの周遊バス

ハ「あんなんで高速走ったら、分解してまうがな」
み「どっちがバカにしとんねん!」

さて、駅前だ
み「さて、駅前だ」
ハ「地下道の入口も、洒落てるやないか」
み「牢屋みたいだけど」
ハ「あんたが入っとれ」

普通の地下道じゃな
み「入ったぞ。
 普通の地下道じゃな」
ハ「あたりまえやがな」
み「壁にずーっと手すりが付いてるのはいいけど……。
 この階段じゃ、車椅子は無理だね」
ハ「エレベーターはないようやしな」

この手すりを、ずーっと伝わなきゃならないような人は……
み「この手すりを、ずーっと伝わなきゃならないような人は……。
 ここ、使わないんじゃないの?」
ハ「しかし、横断歩道はないんやろ?」
み「横断歩道はなくても……。
 みんな、道路を渡ってるんじゃないのか?
 ここの人通りがまったくないってのが、その証拠じゃろ」
ハ「確かにな。
 こんなに広い地下道なのに、もったいないわ」
み「何か、ほかに使い道ないかな?」
ハ「屋台を出すとかはどうや?」
み「あほたれ。
 あの階段を、どうやって上り下りすんの」
ハ「ほなら、どんな使い道がある言うんや?」
み「そうだ。
 こんだけ広いんだから……。
 両方の壁際に、長テーブルを並べられるよね」
ハ「何すんのや?」
み「学習室だよ。
 駅が真ん前なんだから便利じゃん。
 田舎は、電車の間隔が30分くらいあいちゃうからね」
ハ「トイレがないやろ」
み「だから、30分くらい使うんだって。
 こんなとこ、冬にそれ以上いたら凍死するわ」

地下道の案内図があった
み「地下道の案内図があった」
ハ「黄色いのが、地下道やな」
み「ほら、バス乗り場だってすぐ近くじゃん。
 学習室に最適。
 冬は寒いったって、コート着てれば地上よりはマシだろ。
 風がないんだから。
 夏は、ぜったいに涼しいしさ」
ハ「トイレが近こなるで」
み「ジジむさい感想を述べるな。
 しかし確かに……。
 ちょっと冷えて来たな。
 地上に復帰するぞ」

何や、この木は?
み「おー暖ったかい。
ハ「何や、この木は?」
み「プラタナスだよ。
 別名、鈴掛(すずかけ)の木。
 鈴みたいな実が成るんだよ」
ハ「何で、こないに刈られとるんや?」
み「この木は、葉っぱが大きいのよ。
 しかも、その葉には、アメシロがたかる」
ハ「アメシロてなんや?」
み「知らんのきゃ。
 アメリカシロヒトリ。
 その幼虫が、この葉っぱが大好物なの」
ハ「幼虫って、鳥やないんか?」
み「“ヒトリ”は鳥じゃありません。
 ましてや、劇団ひとりでもありません」
ハ「わかったるわいな」
み「ヒトリガっていう蛾がいるの。
 ひとりで行動する蛾じゃないぞ。
 “火を取る”から、火取蛾」
ハ「何で火を取るんや?」
み「“飛んで火に入る夏の虫”だよ。
 夜行性でね。
 蝋燭の火に飛びこんで、燃えちゃうわけ。
 で、蝋燭の火が消える。
 昔は、火を点けるったって、簡単じゃなかったでしょ。
 だから、火を消しちゃう蛾は、大迷惑だったわけよ。
 なので、火取蛾という名前を付けて嫌ったってこと。
 でも、このアメリカシロヒトリは、その名のとおり外来種。
 戦後、米軍の軍需物資に付いてやって来た。
 日本の木は、こいつに耐性がないから……。
 丸坊主にされて枯れちゃう木もあるの。
 親になると、信じられないほど綺麗なんだけどね。
 まるで、ミンクのコートを着た、雪の女王みたいなんだよ」
アメリカシロヒトリ/TampAGS, for AGS Media - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=9419200による
↑Wiki

み「ところが、幼虫が鳥肌もの。
 集団で糸吐いて巣くって、その糸の網越しに……。
 うじゃうじゃいるのが見えるわけ。
 キモいったらない。
 手が届かないところに巣くられたら……。
 退治が容易じゃないわけよ。
 だから、こういう強剪定をして、樹高を押さえてるんだろ」
ハ「そんな木、何で植えたんや?」
み「今、これを街路樹に採用する自治体は、まずないだろうね。
 管理が大変すぎるのが分かったから。
 昔は、この樹名に惹かれた住民とかから、要望があったんじゃないの?」
ハ「どこに惹かれるんや?」
み「歌にあるでしょ。
 『鈴懸の径』」


ハ「島倉千代子か?」
み「それは『からたちの小径』だろ!
 でも、歌ったのは誰だったかな?
 ちょっと調べて」
ハ「……。
 灰田勝彦やて。
 えらい古いやないか。
 『野球小僧』、歌うた人や」
み「なんじゃそれ?」
ハ「知らんのかいな」


み「もう少し若い人たちには……。
 シューベルツの『風』だね」


み「歌詞の中に、“プラタナスの枯葉舞う”ってフレーズがある。
 まさか、その木に……。
 毛虫がうじゃうじゃなんて、誰も考えもしなかったんじゃないの」

この木は、芽出しが遅いな
み「この木は、ずいぶん芽出しが遅いな。
 さっきのと、条件は同じはずなのに」
ハ「なんでや?」
み「ひょっとしたら、枯れちゃったのかも。
 毎年、こんな強剪定されてたらね。
 気の毒だけど……。
 仕方ないよな。
 伐採されないだけマシと考えなきゃ」

『ばんえつ物語』って、2000年から運行されてたのか
み「『ばんえつ物語』って、2000年から運行されてたのか。
 20世紀だよ。
 イチローが、まだオリックスにいたころじゃない」
ハ「普通、もっと早よ乗っとるもんやないんか?
 運行開始から、22年やで」
み「昔は、見るだけで楽しかったからね。
 新潟駅始発だったから、わたしの住む町も走ってた。
 日曜日には、よく写真を撮りに行ったものよ」
ばんえつ物語
↑10年くらい前に、わたしが撮った写真です(残念ながら、リサイズした小さい画像しか残ってませんでした)。

み「でも今は、新津駅始発になったから……。
 わたしの町では見られなくなっちゃった」
ハ「何で、新津始発になったんや?」
み「新潟駅のホームが、高架化されたからだよ。
 SLだと、高架ホームへの傾斜が登れないの」
ハ「力ありそに見えるんやけどな」
み「SLは、パワー的には、ほんとに見かけ倒れ」
 昔、電車が走り始めたころ……。
 引っ張りっこさせたんだって。
 反対向きに繋げて、よーいドンで引っ張る。
 立ち会ったほとんどの人が、SLの圧勝と予想してたみたい」
ハ「違たわけやな」
み「電車の楽勝だったって」

再び帰って参りました、会津若松駅
み「再び帰って参りました、会津若松駅」
ハ「今日は、鉄道使うんか。
 そしたら、喜多方やな。
 ラーメン紀行」
み「わたしは、お昼は食べないの」
ハ「きんの(昨日)、食べてたやないか」
み「『鮭の焼き漬け』、一切れだけだろ」
『鮭の焼き漬け』、一切れだけだろ

み「あれはお昼じゃなくて、ビールのアテでしょ」
ハ「ものは言いようや」

駅に来た目的のひとつはこれ
み「駅に来た目的のひとつはこれ」
ハ「コインロッカーかいな」
み「ノートパソコンの入ったリュックを、ずっと背負ってたんじゃシンドイからね。
 300円で荷物預かってくれるんだから、ありがたいもんよ。
 さて、身軽になった」

もうひとつの目的は、ここ
み「もうひとつの目的は、ここ」
ハ「みどりの窓口やないか」
み「ちゃうちゃう」

レンタサイクルか!
み「目的は、こっち」
ハ「レンタサイクルか!
 なるほどな。
 せやけど、みんな借りられてたらどうすんのや?」
み「大丈夫。
 予約してあるから(こちらから予約ページに進めます)。
 でもこれは、使えない可能性もあったのよ」
ハ「何でや」
み「お天気だよ。
 雨ザーザーだったら、乗れないでしょ。
 でも事前に、当日キャンセルしても大丈夫か聞いておいたからね」
ハ「大丈夫やったわけやな」
み「もちろん」

『峠』
み「おー、『峠』じゃ」
ハ「映画か?」
み「確か、コロナで公開が延期されてたんだよ。
 ちょっと調べて」
ハ「時間、大丈夫なんか?」
み「時間の融通が利くのが、自転車の強みでしょ」
ハ「……。
 今年(2022年)の6月17日からの公開が決まったそうや。
 あと、半月ちょっとやな。
 当初の公開予定は、2020年9月やて」
み「2年近く延期されてたのか。
 しかし、こういうのを見ると……。
 新潟県と会津の結びつきを感じるね。
 河井継之助は、新潟県の生んだヒーローの一人だから」
ハ「ほかにおるんか?」
み「おるわい!
 山本五十六。
 田中角栄」
ハ「……。
 微妙なラインナップやな」
み「どこが!
 連合艦隊司令長官に内閣総理大臣じゃない」
ハ「はいはい」
み「ま、いい。
 レンタサイクルの場所がわかったから……。
 借り出しの前に、ちょっと見たいところがある。
 えーっと、今、8時47分か」
ハ「まだ、何かあるんかいな」
み「ちょっと駅の中に戻るだけ。
 レンタサイクルの予約時間は、9時だから」

お土産コ~ナ~
み「お土産コ~ナ~」
ハ「今から買うてたら、荷物になるで」
み「下見だって。
 今日、途中で何か見つけても……。
 ここにもあることがわかってれば、買わなくて済むでしょ。
 ロッカーからリュックを出しに来たとき買えばいいわけだ」
ハ「ここにある土産もん、ぜんぶ覚えるつもりかいな」
み「だいたいの雰囲気がわかればいいの。
 よ~し、わかった」
ハ「ウソこけ」

改札も確認
み「改札も確認」
ハ「帰りは、バスやったんやないんか?」
み「そうだよ」
ハ「何のための確認や」
み「“鉄”の務めです」
ハ「いつから“鉄”になったんや」
み「いつも心に改札を」
ハ「何やそれ!」
み「あ、あと2分で9時だ。
 レッツラゴー」
ハ「せからしいやっちゃ」

すんばらしく新しい
み「じゃじゃーん。
 すんばらしく新しい」
ハ「電動やな」
み「あたぼうよ!
 何なら、これで新潟まで帰れるぞ」
ハ「乗り逃げやがな」

フル充電じゃ
み「見よ。
 フル充電じゃ。
 メンテナンスもしっかりしておる」
ハ「確かに、これはポイントやな」

これは何だ?
み「ん?
 これは何だ?」
ハ「雑草やないんか」
み「これは植えたものでしょ。
 ゼニアオイにしては葉が大っきいな。
 タチアオイかな?
 どちらにしろ、冬期は地上部が枯れる宿根草。
 雪国には、最適なのよ。
 ここはたぶん、歩道を除雪した雪が積まれる場所だろうから。
 低木とかの樹木を植えてたら、ぺしゃんこになっちゃう」
ハ「早よ、行こうや」
み「はいはい。
 じゃ、しゅっぱーつ。
 おー、すげー」
ハ「何がや」
み「これが電動のパワーか!」
ハ「乗んの初めてかいな?」
み「はいな~。
 漕ぎ出しが、ぜんぜん違う。
 ペダルにちょっと体重をかけただけで、ぎゅーんだよ。
 お~っと、危ない危ない。
 信号待ちじゃ、注意しないとヤバいな。
 前に歩行者が立ってたら……。
 轢き殺しかねないよ」
ハ「気いつけや。
 事故は御免やで」
み「まっかせなさい」

早い早い
み「早い早い。
 ほれ、きのう寄った『リオン・ドール』だ。
 ♪畑も飛ぶ飛ぶ店も飛ぶ」
ハ「安全運転せんかい!」

広い歩道やな
ハ「広い歩道やな」
み「この季節はね」
ハ「どういうこっちゃ?」
み「点字ブロックの位置、見てみ。
 建物側に寄ってるでしょ」
ハ「言われてみれば……。
 確かにそうやな」
み「冬は、歩道の車道側には……。
 車道を除雪した雪が積まれるんだよ。
 人が通れるのは、建物側にある点字ブロックのあたりだけってこと」
ハ「なるほど」
み「お、信号が変わった。
 レッツラゴー。
 うひゃあ」
ハ「危ないやろ!
 漕ぎ出しは要注意て、さっき自分で言うとったやないか。
 婆さま、轢きそうやったで」
み「自転車保険は、ちゃんと入ってるからね」
ハ「そういう問題やないわ」

ほんとに気持ちいいね
み「いやー。
 ほんとに気持ちいいね。
 歌いたくなるじゃない。
 ♪み~ど~り~の風も、さぁわぁやぁかぁに~」

↑『青春サイクリング/歌:小坂一也:1957年(昭和32)年』。

ハ「ほんまに、いつの生まれなんや」

歩道を自転車で走ってもいいわけだ
み「ほら、歩道を自転車で走ってもいいわけだ」
ハ「確認する前に走っとったやないけ」

だいぶ都会になった
み「お、だいぶ都会になった」
ハ「やっぱ、会津地域の中心都市やな」
み「人口って、どのくらいだっけ?」
ハ「そのくらい、調べてこいや。
 ……。
 11万7千人やな」
み「そんなもん?
 もうちょっと、いてもいい気がするけど」
ハ「お、おもろいデータ見つけた。
 ここで問題や。
 日本には、県庁所在地が人口1位じゃない県が5つある。
 福島県、群馬県、静岡県、三重県、山口県や。
 さらに、県庁所在地の人口が、2位でもない県がひとつだけある。
 それは何県でしょう?」
み「話の流れからいけば、福島県だろ」
ハ「……。
 問題の出し方、間違うたな。
 確かにそのとおりや。
 1位は、浜通りのいわき市。
 33万3千人。
 2位は、中通りの郡山市。
 32万8千人。
 そして3位が、県庁所在地、中通りの福島市。
 28万3千人」
み「浜通りと中通りばっかしだ」
ハ「そして4位が、会津若松市や。
 11万7千人」
み「規模が3分の1だ。
 わたしがもし、会津に生まれてたら……。
 浜通りや中通りの地域には、そうとう屈折した心情を持つと思う。
 特に冬。
 テレビの天気予報では……。
 県内各地のお天気が出るわけでしょ」
ハ「浜通りや中通りと会津じゃ、大違いやな」
み「鬱屈すると思うよ。
 昔はさ。
 ほかの地域の情報なんかなかったから……。
 冬はみんなこんなもんだと思ってたはず。
 でも、今は違うからね。
 毎日、毎日、天気予報で突きつけられるわけよ。
 浜通りや中通りは、毎日晴れてるってことを。
 新潟県は、それがないから、考えてみれば幸せだね。
 雪の多い少ないはあっても……。
 お天気の悪いことに関しては、全県平等だから」
ハ「確かにな。
 引っ越したくなるかも知れんな」
み「ぜったいなるよ。
 で、浜通りや中通りの中心都市とは……。
 3倍も規模が違って来ちゃったわけだ」

夜の街だ
み「おー、夜の街だ」
ハ「姉ちゃんら、冬は大変やな。
 脚、放り出して」
み「こんな恰好で通勤して来るはずないだろ。
 ここらもそうだろうけど……。
 新潟の冬、ヤンキーの兄ちゃんは女もんのサンダルなんか履かないのよ。
 雪の中でそんなの履いてたら、凍傷になるからね」
ハ「そしたら、何履くんや?」
み「長靴に決まってるだろ」
ハ「わはは。
 ヤンキーが長靴かいな」
み「ただの長靴と違うぞ」
ハ「何がやねん?」
み「ヤンキーは、白い長靴履くの」
ハ「白長靴?
 食品工場やないか」



み「彼らのイメージでは……。
 たぶん、漁船員だと思う」
ハ「伝わらんと思うぞ」

ここは旧道だな
み「ここは旧道だな。
 歩道が狭いわ」
ハ「スピード、気いつけや。
 あっちゃから歩行者が来たら、正面衝突やで」
み「はいはい。
 しかし、この赤い舗装、なんだろ?
 明らかに、側溝の上に敷いてあるよね」
ハ「せやな。
 水を落とす穴が空いたあるわ」
み「わかった!」
ハ「やかまし!
 通行人がおったら、たまげるで」
み「いないからしゃべってんの。
 この舗装は、冬期の滑り止めじゃないの?
 道路の水を落とすために、この側溝があるわけだろ」
ハ「あたりまえや」
み「てことは、冬はほとんど常に、この上は濡れてるんじゃない?
 側溝のコンクリート蓋が剥き出しだと……。
 表面の水が凍って滑るんだよ。
 だから、この舗装を敷いてる」
ハ「せやけど、水が凍ることに関しては、舗装の上かておんなじやろ」
み「ちょっとだけ、クッション性がありそうじゃない。
 踏むと少し沈んで、氷が割れるんだよ」
ハ「ほんまかいな」
み「よーし。
 そしたら、会津若松市役所の建設課に聞きに行くぞ」
ハ「やめとけや。
 大迷惑やで」
み「冗談に決まってんだろ」
ハ「冗談に聞こえんから怖いわ」

また、飯盛山に向かっとんのか?
ハ「また、飯盛山に向かっとんのか?」
み「方角が一緒なだけ」
ハ「どこ行くんや?」
み「着いてのお楽しみ」
ハ「おせといてくれや。
 標識とか見つけたら、アドバイスでけるで」
み「頭に地図が入ってるから大丈夫」
ハ「大いに疑問や」

左のビルの『めでたいや』って、何だろ?
み「ところで、左のビルの『めでたいや』って、何だろ?
 ちょっと調べて」
ハ「都合のいいときだけ使いよってからに。
 えーっと、“会津若松 めでたいや”で検索っと。
 おー、ちょう(ちょっと)意外やな。
 ラーメン屋やったで。
み「ビルのどてっぱらに、あんなにデカデカと書いてあるってことは……。
 自社ビルだよね?
 会津のラーメン屋って、そんなに儲かるの?」
ハ「知らんがな。
 せやけど、店舗はビルやのうて……。
 下の黒い和風建築の方みたいやで」

確かに、暖簾が出てるね
み「確かに、暖簾が出てるね。
 じゃ、あのビルは何?」
ハ「知らんがな」
み「グーグルマップ見れば、何の建物かわかるでしょ」
ハ「スマホで見んかいな」
み「運転中です」
ハ「やっかいなオナゴや。
 えーっと。
 『メゾン ド ドルチェ』やて。
 賃貸マンションみたいやな」

ビルの側面にも、デカデカと書いてあるな
み「確かに、ビルの側面にも、デカデカと書いてあるな。
 しかし、ラーメン屋とどんな関係?」
ハ「それこそ知らんがな」
み「店名掲げてる方は、広告看板ってことか?」
ハ「確かに、遠くからもよう見えてわかりやすいわな」
み「でもこれって……。
 ラーメン屋の方から、店名を貼らせてくれって頼んだんじゃない気がする」
ハ「どういうこっちゃ?」
み「普通、マンションの側面に、マンション名をあんな風には貼らないでしょ」
ハ「確かにな。
 初めて見たわ」
み「オーナーが、ちょっと変わってるんじゃないかな。
 で、マンション名を貼り出して、下の道路から眺めたとき……。
 もう一面にも貼れるって気づいたわけよ。
 真下には、ラーメン屋があった。
 で、即、そのラーメン屋に突入。
 もちろん、ラーメン一杯食べたあとで……。
 おもむろに、店主と交渉したわけだ。
 店名看板、出さんかねと」
ハ「ほんまかいな」
み「知らんけど」
ハ「ほんまに知らんやろ」
み「聞きに行ってくるか、ラーメン屋に。
 どんなラーメン?」
ハ「煮干しベースの醤油ラーメンが基本みたいやな。
 値段は700円からやな。
 入るんか?」
み「中止」
ハ「なんでや」
み「醤油ラーメンは苦手だから」
ハ「塩や味噌もあるみたいやで」
み「こんなところで寄り道してるヒマはないの」
ハ「そんなら、さっさと通り過ぎたれや」

 『めでたいや』さんのホームページは、こちらになります。

普通の自転車だと、めげそうな道のりだな
み「普通の自転車だと、めげそうな道のりだな」
ハ「電アシやと、そないに違うんか?」
み「何じゃ、“でんあし”って?」
ハ「電動アシスト自転車の略やて。
 ネットに載っとったわ」
み「確かに、“電動アシスト自転車”は、ちと長いよな。
 略したくなる気持ちはわかる。
 しかし、もうちょっと洒落た略語はないものかね」
ハ「“電自”はどないや?」
み「却下。
 中国語じゃないんだから。
 そう考えてみると、ママチャリって洒落た呼び方だよね」
ハ「そうかぁ?」
み「そう云えば、ママチャリって、日本にしか存在しないんだって」
ハ「なんでや?」
み「アメリカとかオーストラリアにない理由はわかるよね。
 まず、どこに行くにも移動距離が長くて、チャリじゃ無理だろ。
 さらに大きな問題は、治安。
 鍵なんか掛けてても、丸ごと持って行かれちゃうだろうし」
ハ「なるほどな」
み「ヨーロッパなら、普及してもいい気がするんだけどね。
 パリの町を颯爽と走るママチャリ。
 格好良いじゃん。
 でもやっぱり、治安の問題はありそうだけどね」
ハ「治安に関しては、まさしく日本の特殊性やな。
 日本で便利なもんを……。
 そのまんま持ってっても使えんっちゅうこっちゃ」

すげー立派な商工会議所だ
み「すげー立派な商工会議所だ」
ハ「地域経済の中心地やからな」

きれいな水が流れてる
み「おー、きれいな水が流れてる。
 これも、猪苗代湖から来てるのかな」
ハ「飯盛山のがそうやったな」
み「こういう景色は、ほんと羨ましいよ。
 金沢も、街中に綺麗な水が流れてた。
 新潟市街じゃ、まったく見られない景色だから」
ハ「昔は堀があったんちゃうんか?」
み「確かにね。
 明治のころは、信濃川から迷いこんだ鮭が……。
 背びれを立てて堀を泳いでたって。
 でも戦後、天然ガス採掘のしすぎで地盤沈下したりして……。
 堀の水が流れなくなった。
 ほとんど、ドブ川状態。
 で、みんな埋めてしまったのよ。
 綺麗さっぱり。
 1本残らずね」
ハ「反対運動とかなかったんか?」
み「歴史ある町なら、そういう運動も起きそうだけどね。
 新潟は、一切なかったみたい。
 むしろ、うちの前の堀を早く埋めろって陳情ばっかり。
 新潟人ってのは、新しもの好きでね。
 古いものを残そうって意識は、そうとう低いんじゃないかな」
ハ「なんや、味気ないの」
み「文化とは無縁の土地柄」
ハ「自分で言うたりなや」

だいぶ山が近くなった
み「おー、だいぶ山が近くなった。
 こういう緑色の山も、新潟では見られない。
 新潟から見える山は遠いから……。
 淡い水色一色なんだよ」
ハ「真向こうの山は、東山か。
 東山いうたら、東山温泉のあるとこちゃうんか?
 こないに近いんやったら、こっちゃに泊まれば良かったやないか」
み「座卓テーブルを埋め尽くす夕食の品々か?」
ハ「それそれ」
み「退職したら、1回やるかな」
ハ「3年ぶりの旅行やったんやから、奢ったれば良かったやないか。
 旅行支援も付いとったわけやから」
み「ああいうのが付くと……。
 なんか、余計にケチケチしたくなるよね」
ハ「根っからの貧乏性や」

『東山庵』って、お蕎麦屋かな?
み「『東山庵』って、お蕎麦屋かな?」
ハ「昼飯か?」
み「アホか!
 まだ、9時半だろ」

とんでもないのがあった
み「げっ!
 とんでもないのがあった。
 近藤勇って、会津で死んだの?
 ちょっと調べて」
ハ「東京の板橋で斬首刑になっとるな。
 遺体は、三鷹の龍源寺ちうお寺に埋葬されたようや。
 生家の近くみたいやな」
み「そしたら、この墓はなに?」
ハ「遺髪が埋葬された墓のようやで」
み「なんで会津に?」
ハ「わからんか?
 松平容保」
み「あっ。
 会津藩主、松平容保は……。
 京都守護職だったね。
 新撰組はその支配下だ」
ハ「土方歳三が、ここに遺髪を持ってきたそうや」
み「松平容保と土方歳三って、並べて見たいよね。
 イケメン同士。
 BL小説にできそうだ」
ハ「怒られるで。
 墓、寄ってみるか?」
み「パス」
ハ「何でや」
み「予定にないことはしない」
ハ「予定にないことが起きるのが……。
 旅の醍醐味やろ」
み「予定どおり物事が進まないと、不安になるの」
ハ「発達障害ちゃうんか?」
み「何か言った?」
ハ「聞かいでええ」

いきなり、とうちゃこ!
み「でーん。
 いきなり、とうちゃこー!」
ハ「なんや、ここは?」
み「のぼり旗に書いてあるでしょ」

会津武家屋敷かいな
ハ「『会津武家屋敷』かいな。
 なるほど、ここは会津観光には欠かせんわな」
み「来たのは、これで2回目なんだよ」
ハ「修学旅行か?」
み「いや、そんときは見学ルートになかった。
 今から20年くらい前になるのかな……。
 1度、車で会津に来たときに見たの。
 ちょうど、季節も今ごろでね。
 高速道路は怖いから、下道の国道49号で来たんだけど……」
ハ「なんで高速が怖いんや?」
み「磐越自動車道は片側1車線で、対面通行なんだよ。
 高速でだぞ。
 トンネルの中なんて、怖い怖い。
 びゅんびゅんすれ違ってさ。
 対向車に吸いこまれそうになる」
ハ「それは、運転者の資質の問題ちゃうんか?」
み「だから、そういうところは回避するの。
 賢明だろ」
ハ「運転すること自体が、賢明やない気いする」
み「で!
 下道を走ってきたわけ。
 山の斜面に挟まれたみたいなとこがあってさ……。
 タニウツギや藤が、その斜面のそこここに咲いてんの。
 下の民家の庭には、桐の花。
 冬がなければ、こういうところに住みたいと思った」
ハ「冬があるから、この季節がひとしおなんやろ」
み「ふう。
 けっこう難儀な階段じゃった」
ハ「完全に運動不足や」

見るところがこんなにある
み「おー、見るところがこんなにある」
ハ「大人、850円やて。
 お値段もなかなかやな。
み「あんたはタダですけどね」
ハ「すんまへんな」

さっきの看板に、所要時間1時間ってあったよね
み「さっきの看板に、所要時間1時間ってあったよね。
 そんなんで回れんの?」
ハ「ここの見学、どのくらいの時間、みとんのや?」
み「ジャスト1時間」
ハ「もうちっと、余裕みて計画立てたれや」
み「ぶつくさ言ってないで、さっそく、ゴー」
ハ「そっちが言っとんのやろ」

いろいろ書いてあるけど……
み「いろいろ書いてあるけど……。
 省略!」
ハ「いきなり省略かい!」
み「さっきの絵図面見たら、気が急く」
ハ「1度、来とんのやろが?」
み「あんときは日帰りだったから……。
 見学時間は、もっとタイトだったと思うんだけどね。
 まったくもって、その記憶がない」
ハ「こりゃあかんわ」

縄文遺跡か?
み「なんじゃ、これは?
 縄文遺跡か?」
ハ「そんなわけあるかいな。
 入口で、パンフレットもろたやろ」

『旧中畑陣屋』だな
み「なるほど。
 ふむふむ。
 『旧中畑陣屋』だな。
 県指定重要文化財とある。
 建てられたのは、1837年。
 東北に残る最後の代官所だって」
ハ「縄文遺跡とはエラい違いやがな」
み「よし、ここはもう見た」
ハ「見てへんやろ!」
み「次、次」
ハ「端折りまくりやで」

順路は間違ってない
み「よし、順路は間違ってない」
ハ「最初から間違うてどうすんのや」

この塀の内側が、メインイベントの家老屋敷
み「この塀の内側が、メインイベントの家老屋敷みたいだ。
 しかし、長い塀だな。
 雪かきが大変だぞ」

これ、当時の石かな?
み「これ、当時の石かな?」
ハ「そうやないんか?」
み「サイズが揃いすぎてる気がする」
ハ「確かに、エッジが綺麗に通っとるな」
み「あ、石なんか見てるヒマなかった」
ハ「忙しないやっちゃ」

いきなり柔道
み「げ。
 いきなり柔道。
 なぜじゃ?」
ハ「パンフレットに書いたあるやろ」
み「……。
 西郷四郎の像だな。
 へー。
 『姿三四郎』のモデルになった柔道家だって。
 家老だった西郷頼母の養子」
ハ「どういう経緯や?」
み「養子だけに……。
 よう知らん。
 次、次」
ハ「ダジャレでしまいか!」
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