Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
由美と美弥子 3777
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 廊下の奥には、左手から光が射していた。
 おそらく光源は、リビングだろう。
 廊下との境に、扉がないのだ。
 冷暖房効率が悪くなる造りだが……。
 セントラルヒーティングならば問題ない。

 リビングから射す光に、人形の影が浮かんだ。
 続いて影の主が、廊下の奥に現れた。
 女性だった。
 ドアホンに応答したのは、この女性だろう。
 声質から予想できたとおりの、華奢なプロポーションだった。
 絵里子とは、まさしく正反対の形姿。
 反射的に敵愾心を覚えた。
 しかし、妙な恰好をしていた。
 明らかにバスローブだ。
 客を迎える姿ではない。
 どういうつもりだろう。

「どうぞこちらへ」

 女性は手の平を光の射す方へ向けると、光源の中に入っていった。
 どうも気に入らない。
 玄関で出迎えがなかったこと、バスローブ姿で応対されたこと。
 ぞんざいに扱われている気がする。
 絵里子は、廊下を大股で進んだ。
 不快感を足音にしたかったのだが、厚い絨毯に吸収されて、その意図は叶わなかった。

 光が射していた開口部の前に立つ。
 予想どおり、広々としたリビングだった。
 日本の住居とは思えない。
 外国映画を見るようだ。
 しかし、何か違和感を覚えた。
 そうだ。
 まるで住宅展示場だった。
 生活感が、まったく感じられないのだ。

 先に入ったはずの女性の姿はなかった。
 いちいち失礼な女だ。
 そっちがそういう気なら、こっちだって。
 絵里子は、革張りらしいソファーに荒々しく尻を落とした。
 肩に掛けたポーチから、スマホを取り出す。
 侑人の番号に架けた。
 しかし……。
 応答はなかった。
 呼んでおいて、どういうつもりなのだろう。

 ようやく女性が現れた。
 リビングに続くアイランドキッチンの向こうからだった。
 トレイに、オレンジジュースらしいグラスを載せていた。
 緋色のバスローブに、オレンジジュース。
 似合わない取り合わせだった。
由美と美弥子 3776目次由美と美弥子 3778

コメント一覧
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    • ––––––
      1. Mikiko
    • 2023/03/24 05:49
    • 今日は何の日
       3月24日は、『檸檬忌』。
       大正から昭和期の小説家、梶井基次郎(かじい もとじろう)の1932(昭和7)年の命日。
      https://zatsuneta.com/img/10324a1_01.jpg

       「檸檬忌(れもんき)」の名称は、代表作の短編小説『檸檬』にちなみます。
       この日を中心として、基次郎を偲ぶ会合などが開かれます。

       上記の記述は、こちら(https://zatsuneta.com/archives/10324a1.html)のページから転載させていただきました。

       さらに同じページから、「梶井基次郎について」を引用させていただきます。

       梶井基次郎は、1901(明治34)年2月17日、現在の大阪府大阪市西区土佐堀に生まれました。
       第三高等学校(現:京都大学)理科甲類を卒業。
       東京帝国大学文学部英文科に進みますが、結核を病んで中退。
       在学中の1925(大正14)年、同人雑誌『青空』を創刊しました。
       同年、『檸檬』『城のある町にて』『泥濘(でいねい)』『路上』『橡(とち)の花』など……。
       青春の虚無と退廃の詩情を繊細な文体で綴った秀作を、同誌に次々と発表しました。
       その後、病状悪化のため、伊豆湯ヶ島温泉に移り……。
       1927(昭和2)年、病める自意識の心象風景を描いた『冬の日』を発表。
       翌1928(昭和3)年、上京。
       ボードレール風な幻想性に富む散文詩『桜の樹の下には』などで……。
       ようやく文壇の注目を集めるようになります。

       続きは次のコメントで。

    • ––––––
      2. Mikiko
    • 2023/03/24 05:50
    • 今日は何の日(つづき)
       引用を続けます。

       1932(昭和7)年、文壇の登竜門といわれた雑誌『中央公論』に、『のんきな患者』を発表します。
       大阪での療養生活を描いた作品ですが、これが絶筆となりました。
       同年、結核により31歳の若さで死去。
       その他の作品に『冬の蠅(1928年)』、『闇の絵巻(1930年)』などがあります。
       繊細な感覚による、詩的散文ともいうべき作品は……。
       死後に評価を高め、近代日本文学の古典のような位置を占めてます。

       以上、引用終わり。

       『檸檬』は、たぶん読んだことがあると思うのですが……。
       内容は、ほとんど覚えてません。
       でも、古本屋に積まれた本の上に、レモンを置いて去るというシーンがあった気がします。
       レモンを時限爆弾になぞらえた記述があったんじゃないでしょうか。
       古びて色褪せた古書と、耀くようなレモン色。
       その色の対象が、目に浮かんだ気がします。
       ひょっとしたら、『由美と美弥子 1230回(https://mikikosroom.com/archives/2672867.html)』で書いた「オレンジ爆弾」のシーンは……。
       梶井基次郎の『檸檬』に影響を受けてたのかも知れません。
       このシーンは、ハーレクインさんに褒められた記憶があります。
       しかし、このシーンの投稿日を見て、改めて驚きました。
       2013年5月8日でした。
       丸10年前です。
       遙けくも来つるものかな。

       続きはさらに次のコメントで。

    • ––––––
      3. Mikiko
    • 2023/03/24 05:50
    • 今日は何の日(つづきのつづき)
       さて、梶井基次郎。
       残した小説の、繊細さ、叙情性という性質からすれば……。
       もっと。女性に人気が出てもいい人でしょう。
       でも、そうはならなかったのは……。
       やはり、↑の写真にもあるとおり、近藤勇似の風貌のせいでしょうね。
       とても繊細な小説家には見えません。
       もし、土方歳三似だったら、太宰治級の人気になったんじゃないでしょうか。
       これで、憎々しいジジイまで生きてくれたら救われるんですが……。
       31歳1ヶ月で死んでしまうのでは、あまりにも可哀想です。

       檸檬ではありませんが……。
       今、わたしの寝室には、グレープフルーツの木があります。
       グレープフルーツを食べたあと、何の気なしに種を蒔いたら芽が出たんです。
       後で知ったことですが、グレープフルーツは、スゴく発芽率が高いんだそうです。
       実の中で芽を出すこともあるとか。
       その可愛かった苗も、今は憎々しいばかりにデカくなりました。
       わたしの背丈より高いです。
       もちろん、鉢植えです。
       新潟の冬を、戸外で越すのは無理ですから。
       11月末に寝室に取りこみ、5月にベランダに戻します。
       この作業が大変なんです。
       重たい上に、棘だらけですからね。
       幾度刺されたかわかりません。
       1度など、頭に来て、上から下まで、すべての棘を切ってやったことがあります。
       でも今はまた、猛々しく尖らせてますね。
       ベランダに出すまで、あと1ヶ月ちょっと。
       それまでは、まだ寝室で同居です。
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