2022.12.16(金)
頼りない光を返し、川面の波頭が鱗のように耀いていた。
そこに吸いこまれてしまえば……。
すべてが終わりになる。
妊娠の心配もしなくていい。
すべての懊悩が消え去るのだ。
美咲の視線は、いつしか真っ暗な真下を向いていた。
肩から肘へ、トートバッグが滑り落ちた。
「どうする気?」
突然、間近で声がした。
驚いて振り返る。
若い女性が立っていた。
橋梁のライトは頼りないが……。
ときおり行き過ぎる車のヘッドライトが、女性の顔を照らし出した。
「バカなことは止めなさい」
そう言われて初めて……。
自分が、川に飛びこもうとしている人に見えていたことに気がついた。
途端に、涙が零れた。
「冷えてきたわね。
車に入らない?」
女性の視線に引かれて振り向くと、歩道脇に車が止まっていた。
ハザードが点滅していた。
大型のSUVだった。
車内には誰もいないようだ。
女性は車に歩み寄ると、歩道に接する助手席側のドアを開けた。
「乗って。
大丈夫よ。
誘拐なんてしないから」
女性が微笑んだ。
目尻が下がり、口角があがる。
どこかコケティッシュで、それでいて頼もしい。
誰かに似ている。
そうだ。
佐耶だ。
顔立ちは違うが、雰囲気が似ていた。
目を瞑って寄りかかりたくなる。
きっと、いい匂いがするはずだ。
高いサイドステップに足を掛け、助手席の大きなシートに身を移す。
車の前を回りこんだ女性が、運転席に座った。
「ちょっと走らせるわね。
ここ、駐停車禁止だから」
エンジンがかかり、車がゆっくりと動き出した。
そこに吸いこまれてしまえば……。
すべてが終わりになる。
妊娠の心配もしなくていい。
すべての懊悩が消え去るのだ。
美咲の視線は、いつしか真っ暗な真下を向いていた。
肩から肘へ、トートバッグが滑り落ちた。
「どうする気?」
突然、間近で声がした。
驚いて振り返る。
若い女性が立っていた。
橋梁のライトは頼りないが……。
ときおり行き過ぎる車のヘッドライトが、女性の顔を照らし出した。
「バカなことは止めなさい」
そう言われて初めて……。
自分が、川に飛びこもうとしている人に見えていたことに気がついた。
途端に、涙が零れた。
「冷えてきたわね。
車に入らない?」
女性の視線に引かれて振り向くと、歩道脇に車が止まっていた。
ハザードが点滅していた。
大型のSUVだった。
車内には誰もいないようだ。
女性は車に歩み寄ると、歩道に接する助手席側のドアを開けた。
「乗って。
大丈夫よ。
誘拐なんてしないから」
女性が微笑んだ。
目尻が下がり、口角があがる。
どこかコケティッシュで、それでいて頼もしい。
誰かに似ている。
そうだ。
佐耶だ。
顔立ちは違うが、雰囲気が似ていた。
目を瞑って寄りかかりたくなる。
きっと、いい匂いがするはずだ。
高いサイドステップに足を掛け、助手席の大きなシートに身を移す。
車の前を回りこんだ女性が、運転席に座った。
「ちょっと走らせるわね。
ここ、駐停車禁止だから」
エンジンがかかり、車がゆっくりと動き出した。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2022/12/16 05:52
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今日は何の日
12月16日は、『紙の記念日』。
1875(明治8)年12月16日(今から、147年前)……。
東京・王子の「抄紙(しょうし)会社」の工場で、営業運転が開始されました。
抄紙会社は、実業家の渋沢栄一(しぶさわ えいいち/1840~1931)が……。
大蔵省紙幣寮から、民間企業として独立させたものです。
明治時代に入ってから間もない、1873(明治6)年に設立されました。
輸入に頼ってた洋紙の国産化を企図した会社で、王子製紙の前身となりました。
上記の記述は、こちら(https://zatsuneta.com/archives/112162.html)のページから転載させていただきました。
さらに同じページから、引用を続けさせていただきます。
王子製紙の社名は、創業した東京・王子の地名に由来します。
その後、合併を繰り返し、国内市場8割以上を握る巨大製紙会社へと発展していき……。
その規模から、「大王子製紙」と称されました。
しかし、戦後の財閥解体政策によって、過度経済力集中排除法の対象となり……。
1949(昭和24)年に解体されました。
後継会社は、苫小牧製紙、本州製紙、十條製紙の3社です。
続きは次のコメントで。
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2. Mikiko- 2022/12/16 05:53
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今日は何の日(つづき)
引用を続けます。
この3社は、その後の再編により……。
現在の、王子ホールディングス(旧:苫小牧・本州)と日本製紙(旧:十條)になってます。
身近な家庭用の商品として……。
王子ネピアが製造販売する、ティシュやトイレットロールのブランド「ネピア(nepia)」があります。
https://zatsuneta.com/img/112162_01.jpg
ネピアの商品には、ほかにも、キッチンタオル、ウエットティシュ、マスク、紙おむつなどがあります。
また、渋沢栄一は、下記のような多種多様な企業の設立、経営に関わってきました。
第一国立銀行(後:第一銀行・第一勧業銀行、現:みずほ銀行)、東京瓦斯(東京ガス)。
東京海上火災保険(現:東京海上日動火災保険)、田園都市(現:東急)、帝国ホテル、東京証券取引所。
麒麟麦酒(現:キリンホールディングス)、サッポロビール(現:サッポロホールディングス)、東洋紡績(現:東洋紡)などです。
このことから、「日本資本主義の父」と称されてます。
また、理化学研究所の創設者でもあります。
以上、引用終わり。
続きはさらに次のコメントで。
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3. Mikiko- 2022/12/16 05:53
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今日は何の日(つづきのつづき)
王子製紙も、渋沢栄一が創ったんですね。
ほんとにスゴい人です。
しかし、トイレットペーパーと聞くと……。
やはり、2020年の春先を思い出してしまいます。
もう、3年近く前になるんですね。
このことの方が、もっと驚きでした。
しかし、スーパーの棚からトイレットペーパーが消えるとは思いませんでした。
あれは、デマかなんかが発端だったんじゃないでしょうか。
わたしは、デマであることを耳にしてたので……。
トイレットペーパーを山積みしたカートを押してる人を、鼻で笑ってました。
これは、わたしが投資に向かない人間であることを、如実に証明してます。
投資では、自分がどうするかということより……。
人がどうするかを想像することが重要なんです。
つまりあの騒動では、たとえデマであっても……。
多くの人がトイレットペーパーの買いだめに走ると考えるのが、正解でした。
で、デマとわかってても、トイレットペーパーを山積みしたカートを押すべきだったんです。
結局わたしはネットで、12ロールのトイレットペーパーを、1000円以上で買う羽目になりました。
この一件でもう、自分はぜったいに投資はすべきじゃないとはっきりと諦めがつきました。
いい勉強になりました。
政府は、NISAの非課税期間を無期限とすることを打ち出しました。
もちろん、そんな誘いに乗るつもりはありません。
増やすことより、減らさないことが大切です。
これには、タンス預金(銀行に預けますが)が、間違いなく一番確実です。