2016.3.19(土)
律「なんでそんな油を使うんです?」
客「もちろん、安かったからですよ。
値段は、菜種油の半分だったそうです」
↑ちなみに蝋燭は、菜種油より遥かに高く、上流階級や料亭などでしか使われない贅沢品だったそうです。
み「なるほど。
その鰯の臭いが……。
猫にとっては、得も言われぬ良い香りなわけだな」
↑グリルに手を突っこむ猫。熱くないんですかね?
客「そういうことです」
み「でも、ヘンじゃの」
客「何がです?」
み「安い鰯油を使ってたのは、当然、下々の民じゃろ?」
↑楽しそうな暮らしですが……。夜の夫婦生活は、どうしてたんでしょう?
客「でしょうね」
み「大名家とかでも、行灯に鰯油を使ってたのか?」
客「いくら貧乏大名でも、そこまでしないでしょう」
↑薩摩武士の食卓。お味噌汁が美味しそうです。
客「体面が一番大事ですから。
屋敷が鰯臭くては、客人も招けません」
↑前に取り上げた『鐙屋』の場面、拡大画像がありました。やはり、料理の盛り付けをしてるところでしたね。今日は、何かの祝い事でしょうか。
み「化け猫騒動が起きたのは、大名家でしょう?」
客「あぁ。
鍋島藩ですね。
佐賀県の」
律「どういう話なんです?」
客「時代は、江戸時代の初期です。
2代藩主の鍋島光茂の時代。
光茂の碁の相手を務めてた臣下の龍造寺又七郎が……」
客「光茂の機嫌を損ねて斬殺されます」
み「ひでー殿様だね。
碁で負けてくれなかったから?」
客「さぁ。
そこまでは」
み「碁の相手をして殺されてたら、命がいくつあっても足りんわい」
み「そうだ。
最近は、碁のソフトも進化して、ようやくプロ棋士と打てるレベルになったんでしょ」
客「らしいですな」
律「あら、碁は遅れてるのね。
チェスなんか、世界チャンピオンにパソコンが勝っちゃうんじゃないの?」
み「碁が遅れてるんじゃありません。
ルールの複雑さで、プログラミングの大変さが大違いなの。
チェスは一番簡単でしょ」
律「どうしてよ?」
み「将棋みたいに、取った駒が使えませんがな。
ゲームが進行するに従って、盤面の駒が減っていくわけ」
み「つまり、次の一手の選択肢がどんどん狭まっていく。
こういう計算は、コンピューターの得意とするところ」
み「人間がいくら唸っても叶いません」
客「将棋は、取った駒を自分の駒として使えますからね」
み「そう。
ゲームが進んで、お互いに持ち駒が増えれば増えるほど……。
次の一手の選択肢も、膨大に増えていくわけ」
み「なにしろ、盤面の空いてるところの、どこにでも打てるんだからさ」
み「でも、プロに勝てるレベルになったんですよね」
客「A級棋士にも勝つそうです」
み「で、最後に残ったのが碁なわけ」
客「枡の数がぜんぜん違いますしね」
み「あのゲームは、盤面を図形として認識する能力も必要なんでないの?」
客「わたしは不調法で、碁はやったことがありませんので……。
でも確かに、白と黒の模様みたいになりますね」
み「ぜったい、代数より幾何の才能ですよ」
客「コンピューターは、代数なら負けないんでしょうけどね」
み「今は、ようやく下っ端のプロ棋士と打てるレベルじゃないの?」
律「でも、プロと打てるんなら、大したものじゃない」
み「そう。
それで、殿様の碁の相手は、ソフトを組み込んだロボットにさせればいいんです」
客「本気で言ってますか?」
み「殿様が逆上して……。
ロボットの頭を刀でカンカン叩いても、痛くも痒くもありません」
↑実際の結婚式のようです。新郎は33歳だとか。老けてるのぅ。
み「家来も、殿様の部屋から、カンカン音がしたら……。
『あ、やってるやってる』ってなもんよ」
客「話を戻していいですか」
み「ご随意に」
客「で、碁の相手をしてた龍造寺又七郎が斬り殺されました」
客「悲しみくれた又七郎の母は……。
恨み言を飼猫に語った後、自害してしまいます」
客「で、その母の血を舐めた飼い猫が……」
客「にゃぁおぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
み「ぎゃー。
ば、化けた」
律「2人とも、大きな声を出さないでよ。
みんな見てるじゃないの」
み「で、殿様を食い殺したわけだね?」
客「いいえ。
光茂の家臣、小森半左衛門にあっさり退治されてお終いです」
↑左が小森半左衛門。中央の女性が光茂の愛妾お豊の方で、化け猫が乗り移ってるそうです。
み「それは、ヒドい話ではないか。
龍造寺又七郎も、その母も、猫も……。
まったくの死に損ですがな」
客「わたしに苦情を言われても困ります。
そういう話なんですから」
み「龍造寺家の行灯は、鰯油だったのきゃ?」
↑鰯の塩焼きは、大好物のひとつ。頭から骨まで、丸ごと食べてしまいます。ハラワタのほろ苦いのが、またいいのよ。
客「殿様の碁の相手をする家柄ですから、それはないでしょ。
菜種油でしょうね」
↑菜種です。これを絞るわけですね。種の収穫って、どうやるんでしょうね?
み「じゃ、猫は舐めないんじゃないの?」
客「猫にとっては、鰯油に越したことはないでしょうが……。
菜種油でも、舐めたみたいですよ」
み「なぜじゃ?
キャノーラ油好きの健康志向の猫なのか?」
客「昔の猫の餌は、今みたいに専用のキャットフードではありません」
↑舐めとんのか。
み「そりゃそうだ。
わたしの家で小学生のころまで飼ってた猫は、ばあちゃんが世話してたんだけど……。
生涯に、キャットフードはもちろん、猫缶さえ一度も食さなかったはず」
↑叔父が東京の学生のとき、田舎から出てきた友人で、猫缶を初めて見た人がいたそうです。その人は、缶詰に猫の絵が書いてあるのに仰天したとか。猫の肉の缶詰だと思ったんですね。
律「何を食べさせてたのよ」
み「もちろん、猫マンマですがな。
冷や飯の残りに鰹節をかけて、指でにっちゃにっちゃ練るんです」
律「なんで練るのよ」
み「猫が贅沢して、表面の鰹節だけ食べないよう……。
ご飯の中に練りこむの」
↑こういうふうに、上っ面に掛けてあるんじゃダメなんです。
律「何か、貧乏くさい」
み「ビンボですよ。
昔の日本なんて」
み「猫に専用の食べ物を与えようなんて、誰も考えなかったの。
たまーに、鮭の切れ端なんかを載せると……。
躍りあがって喜んでた」
↑ひゃっほー。
律「なんだか気の毒な猫」
み「昔の猫マンマと行灯の油に、何か関係があるのか?」
客「猫は当然肉食ですから……。
本来は、狩った獲物から脂肪分を摂取してました。
でも、人間の与える餌には、ほとんど脂肪分が含まれてないわけです」
↑味噌汁かけご飯。犬にはこのタイプをやってました。
み「なるほど。
それで、菜種油でも舐めたわけか」
客「行灯の火皿に舌を伸ばすために、後ろ足で立ったわけですな」
↑立ったままバックする猫。表情が秀逸。
客「その姿が、障子に映ってるところを目撃したら……」
み「したら……?」
客「にゃぁおぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
み「やかましい!
窓から捨てるぞ」
↑大湊線の車両ではありません。JR東海『リニア・鉄道館(名古屋市港区)』の展示です。
客「そればかりは……。
とにかく、これが化け猫の正体です」
み「なんとも。
幽霊の正体見たり枯れ尾花ってわけか」
客「そういうことです」
み「行灯を舐めるとこを目撃されて、殺された猫もいたんじゃないの?」
客「かも知れませんね」
み「気の毒な。
『半七捕物帳』にも、化け猫と思われて殺された猫の話が載ってた」
客「油を舐めたんですか?」
み「うんにゃ。
三味線の音を聞いて、踊り出したんです」
↑熊本の踊る猫。
客「それは、立派な化け猫じゃないですか」
↑画/与謝蕪村。深夜の古屋敷で『夜な夜な猫またあまた出ておどりける』とのことです。猫が頭に載せてるのは手ぬぐいです。
み「興行用に仕込まれたんですよ」
客「大変じゃないですか。
猫なんて、お手を仕込むだけでも一苦労ですよ」
↑好きでやってないのは明らか。
み「子猫のころから仕込むんです。
三味線を引きながら、上から紐で吊って、焼けた鉄板の上を歩かせるわけ」
↑猫を吊った画像は見つかりませんでした。
み「猫は熱いから、足を交互に上げるでしょ」
↑こういう上げ方ではありません。
み「これが、踊ってるように見えるわけです。
そのうち、鉄板の上じゃなくても、三味線の音を聞くだけで足を上げるようになる」
↑『PIPOS DOLL』という韓国メーカーのようです。
客「パブロフの犬ですな」
み「で、その興行師の留守中に友達が上がりこんで、勝手に酒なんか飲んでたわけよ。
いい気持ちになってると、床の間に三味線を見つけた。
お、乙なものがあるじゃねえかと、勝手に引っ張りだして、ペンペンと爪弾いてたら……。
突然、それまで丸くなって寝てた猫が立ち上がり、足を交互に上げて踊りだした。
すわ化け猫だってんで、男は三味線で猫をぶち殺してしまったんですよ」
半七捕物帳の『三河万歳』というお話でした。
↑のリンクから、『青空文庫』で読めます。
客「気の毒な猫ですね」
み「だしょー。
ほんま、なんという人生……。
いや、にゃん生なんだ。
江戸時代は、猫にとって受難の時代だったのかも知れんね。
三味線にされたりさ」
↑現在では、猫皮のほか、犬皮も使われるそうです。ほぼすべてが輸入品で、国内の猫や犬が三味線にされることは、まず無いとのこと。
み「それに比べたら、今の猫は幸せですよ。
食って寝てればいいんだから」
↑一酸化炭素中毒の危険がない電気コタツは、猫にとって最高の発明品じゃないでしょうか?
み「ときどき、猫になりたいと心底思います」
客「確かに今は、犬より猫の方が、いい人生を送ってる気がします。
犬は気の毒ですよね。
繋がれて」
↑ブロック塀から覗く犬。元に戻れるんでしょうか?
客「江戸時代の犬は、自由の身でしたからな」
↑市中で、堂々と喧嘩する犬。でも、こんな取っ組み合いみたいなこと、しますかいな?
み「そうそう。
そういえば最近、ハスキー犬を見ないですよね」
↑どう見ても外人です。
客「一時期、流行りましたね」
み「漫画の影響だったですかね」
↑佐々木倫子『動物のお医者さん』。2,000万部売れたそうです。
律「狼みたいな顔した犬でしょ」
み「そうそう。
でも、日本で繋がれて飼われてるハスキー犬は、切ないわな」
律「どうして?」
み「シベリアンハスキーですよ。
本名が。
シベリアの大地を駆けまわってる犬なの」
↑犬ぞりを動物虐待だと言う人がいますが……。犬は、喜んで走ってるようにしか見えません。飼い主と一緒に遊べて、嬉しくてしょうがないんじゃないでしょうか。
み「彼らにとって、日本の夏が、どれほど暑いか。
毛皮を脱げないんだよ」
律「毛刈りしたら?
羊みたいに」
み「みすぼらしすぎだろ。
そんなハスキー犬」
客「たぶん、日本で飼うと、短命なんじゃないですか?
目をやられるって話も聞きました」
律「どうしてやられるんです?」
客「外人みたいな青い目をしてるでしょ」
↑日本語は通じません。
律「してるしてる」
客「夏の強烈な日差しで、やられるんですよ」
み「なるほど。
シベリアは緯度が高いから、日差しも斜めなんだね」
↑シベリアの夏。北海道に似てますよね。
み「ヨーロッパ人も、夏はサングラスかけてるもんね」
律「犬用のサングラスが必要ね」
客「実際、売ってますよ。
こないだ、かけてるの見ました」
↑似た人を知ってます。
み「さすが東京ですね。
服を着せるのはどうかと思うけど……。
サングラスは必要だわな。
犬は視点が低いから、アスファルトとかの照り返しも強いだろうし」
↑肉球の火傷防止に、靴も必要だそうです。『沓はけ我が背』。
律「シベリアンハスキーがサングラスかけてたら、怖すぎるんじゃないの?」
み「ほとんど、ロシアのヤクザでんな」
↑こういうのと路上で出会ったら、マジで凝固すると思います。
律「でも、スゴく利口そうな顔してるわよね」
み「アホ犬ですよ」
↑衝撃画像発見! 毛刈りされたハスキー犬。日本の夏は、この方が快適かも。でも、蚊には刺されるわな。
律「どうしてよ?」
み「竹輪が異常に好きなハスキー犬の話を聞いた」
律「犬が竹輪食べるの?」
↑日本犬も、普通に好きなようです。
み「竹輪は魚のすり身ですから、動物食ですよ」
み「白身魚だから、低脂肪、高タンパクだって、今や海外でも人気なんだって。
白人も食べるんだから、シベリアンハスキーだって食べるわけよ」
↑『豊橋祭り』。ヤマサのちくわが踊ります。
律「どういう連想よ」
み「とにかく、竹輪が異常に好きなハスキー犬がいてね」
↑わたしも、“ク”と“ワ”の書き分けが苦手です。
み「飼い主が、いったい何本食べるのか試してみたんだって。
その与え方が変わっててね。
竹輪を、1本ずつ空中に投げ上げるわけ」
み「ハスキー犬は、飛びあがって竹輪にかぶりつき……。
着地した時には、もう飲みこんでたって」
↑関係ない画像ですが、見つけてしまったので。これってもしや、駅弁?
律「かなりのバカ犬ね」
み「25本かそこらやっても、まだ欲しがってたけど……。
残念ながら竹輪が無くなっちゃったんだって」
み「あのまま続けてたら、何本食べたかわからなかったって」
律「ロシアに竹輪はあるのかしら?」
み「ありまっかいな」
律「じゃ、竹輪を食べるDNAは無いわけよね」
み「ロシアは、タラとかの白身魚がたくさん捕れそうじゃない」
↑ロシア人、カニ獲り過ぎ。
み「きっと、ハスキー犬も、そういう白身魚を食べてたんだよ」
↑ロシアの魚料理。この盛り付けセンスはいかがなものか。食欲ゼロです。
律「それで、日本の竹輪を食べるってわけ?」
み「日本製品は品質がいいからね。
竹輪も普通に美味しいし。
安いしさ」
↑40円! わたしなら、飛びつき買いです。
み「何にもしなくても、わさび醤油さえ付ければ、立派な酒の肴ですよ」
客「確かにそうですね」
み「わたしは基本的に魚の練り物を好みませんが……。
竹輪は、唯一と言っていいくらい嫌いじゃない」
客「どうして練り物がダメなんです?
さつま揚げとか、美味しいじゃないですか」
み「食感がイマイチじゃない。
歯ざわりがよろしくない」
↑汚ねー歯。
客「そうですか?」
み「あなた、もう歯がダメなんじゃないです?」
客「ときどき沁みますが、まだ自分の歯だけです」
↑歯欠けでしたっけ?
み「やっぱり、固さが均一なのが、噛んでて面白みがない。
歯を立てたところから噛み切るとこまで、ずーっと同じ固さでしょ」
客「ゴボウが入ったのもありますよ」
↑細かく刻まれて入ってるようです。
み「ゴボウねー。
ありますね」
客「あと、イカとか」
↑これも刻まれて入ってます。
み「それは食べたことが無いな。
イカは、歯ごたえに醍醐味が出そうですね」
律「何の醍醐味だか」
み「練り物系で好きなのは、魚肉ソーセージくらいかな」
↑なんか、別のものに似てる気がする。
客「あぁ。
あれは安いですよね」
み「スーパーで、束ねられて売られてるよね。
なぜか、赤いテープで束ねられてる」
↑うーむ。なぜか、赤いテープの画像が無かった。記憶違いか?
客「生でもいけますしね」
み「十分」
↑剥き方には、ちょっとしたコツがあります(参照)。
み「大学に入ったころ、学校に行かずに、昼間ずーっと本を読んでた。
集中するために、雨戸閉めきってさ」
↑こんなに古風ではありませんでしたが、木製でした。
み「食事にも出ない。
そのとき食べてたのが、魚肉ソーセージよ」
律「生で?」
↑こんな食べ方もあるんだ!
み「生でって、あれはすでに加工品でしょ」
律「でも、炒めると美味しいわよ」
み「確かに。
キャベツとソースで炒めると、1品出来上がりだよね」
↑『キャベツと魚肉ソーセージのソースソテー』。ソースは、中濃を使うそうです。
律「何で作らないわけ?」
み「集中するって言ったでしょ。
若いころは、寝食を忘れても本が読みたいわけ」
↑読書タイム。ありましたね。わたしは、コナン・ドイルを読んでました。この画像は、茨城県神栖市の中学校。垢抜けませんな。
律「忘れてないじゃない」
み「言葉の綾です」
↑言葉の綾。左はカラ松のようです。右はたぶんチョロ松。
み「お腹が空くと集中力が削がれるから、何か詰めこむわけです。
でも、本は読み続けたい。
というわけで、本を読みながら食べれるものを選ぶの」
↑やっぱり、別のことを想像してしまいますね。
み「料理に時間をかけるなんてのは論外です」
律「ファストフードは?
ハンバーガーとか」
↑こういうのは、どうやって食べるんでしょうね。
み「買いに出なきゃならんでしょ」
律「ソーセージだって買うじゃない」
み「ストックできるでしょ。
魚肉ソーセージなんて。
束で買って、冷蔵庫に投げこんでおけばいいんです」
↑わたしの冷蔵庫も、こんなもんでしたね。
み「コーラだって、でっかいボトルで買っておけば、いくらでも飲めるでしょ」
↑『スーパー尾山(新潟市北区)』。残念ながら行ったことのないお店です。
律「そんな食事、大問題だわ」
み「若いときには……。
体の栄養より、心の栄養が必要なんです」
↑栄養補給中。
客「ほー。
至言ですな」
客「どんなのを読んでたんです?」
み「……。
忘れた」
律「意味ないじゃないの」
み「たとえ内容は忘れても、それは確実に栄養になってるの。
あんた、去年の今日、何食べたか覚えてます?」
↑『みすず書房』、懐かしー。
律「覚えてるわけないでしょ」
み「たとえ食べたものは忘れても……。
それは、確実に血となり肉となってるんです」
↑面白そうです。図書館で借りてみようかな。
客「ほー。
またもや至言です」
律「単なる思いつきのこじつけですよ。
大得意なんだから」
み「人聞きの悪い」
律「食べたものは忘れても、本の題名くらい覚えてそうだけど」
み「あんまり有名な大長編は読まなかったのよ。
トーマス・マンくらいかな」
↑この作品が、一番有名でしょう。この少年は、映画化されたときの主役。
み「北杜夫の影響で」
↑斎藤茂吉の次男です。
み「地下鉄の車中で『魔の山』を読んでた記憶はある」
み「登場人物の名前も、一人だけ覚えてる」
律「主人公くらい覚えてるでしょう」
み「そんなの、覚えとるけ。
わたしが覚えてるのは、脇役も脇役、ほとんど端役の名前だね」
客「どんな名前です?」
み「ゼゼミ・ワイヒブロート」
律「代ゼミ?」
み「ゼゼミ!」
客「そんな名前、ドイツ人にありますか?」
み「たしか、婆さんだったと思う」
↑魔女ではありませんが、こんなイメージ。
客「女性名ですか?」
み「ひょっとしたら、ちょっとだけ違うかも知れん」
律「たぶん、大違いだわ」
み「ふん。
でも、『魔の山』は、最後まで読み切ったからね」
客「それはスゴいですね。
文庫でも、分厚い上下2巻になってますよ」
↑見よ、この厚さ!
み「そのころは、小説を書こうなんて思ってなかったけど……。
きっとあの長編を読んだことが、今の血となり肉となってるんだと思う」
客「ほぅ。
今は、小説を書いておられる?」
み「見えませんか?」
客「はい」
み「即答すな!」
↑ほんとですよね。
み「でも、一番影響を受けたのは、マンの短編ですね。
知ってます?
『トニオ・クレエゲル』」
↑なんと、100円! いつの時代だ?
客「聞いたことはあるような……」
み「あの小説は、一種のポイズンですよ」
客「どういうわけで?」
み「人は、2種類に分けられると云うんです」
律「男と女で2種類じゃない」
↑小学校3,4年生の保健の教科書だそうです。時代は変わりました。
み「そういう分け方じゃないくて!」
律「どんなよ?」
み「表現される側の人間と、表現する側の人間」
律「そんな分け方が、きっちり出来るの?」
み「わたしの人生は、この違いを噛みしめるためにあったと言っても過言ではない」
↑こういうシチュ、何度もあった気がする。
律「過言だと思うけど」
↑過言です。
み「やかまし。
そもそも、チミたち2人は、典型的な表現される側の人間ではないか」
律「何でよ?」
み「わたしの紀行小説の登場人物だからじゃ」
律「何か、言ってることが支離滅裂なんですけど」
客「典型的な統合失調症の症状ですな」
み「やかましわい。
わたしは、表現する者としての十字架を背負いつつ……。
これからの人生も生きて行かねばならんのじゃ」
客「覚せい剤とか、やってませんか?」
み「しとらんわい!」
律「まともな神経とは思えないわ」
み「神経ではなく、精神だろ。
でも、学生のとき、たった1度だけど……。
総合失調症の入口を覗いたことがある」
律「入口だけなの?」
み「だけです!
離人症って知ってる?」
律「バカにしないでよ。
専門外とはいえ、医学用語じゃない」
客「どんな病気なんです?」
み「とにかく、自分の身体が、自分のものだと感じられなくなるのよ」
み「わたしの場合、夜、街を歩いてたときだったけどさ。
自分の足で歩いてるのに、ぜんぜんそういう感覚が無いわけよ。
なんかさ、マジンガーZを操縦してるみたいなわけ」
↑この操縦席は、ホバーパイルダーと云うようです。初めて知った。
律「操縦したことあるの?」
み「あるわけねーだろ!
例えだよ、例え。
なんつーか、自分の身体がロボットで……。
自分の意識は、ちょうどその頭のところに、ちょこんと乗ってる感じ」
↑どう考えても、脳天が弱点ですよね。
み「あ、マジンガーZよりいい例えを思うついた」
律「どんな例えでも、マジンガーZよりマシだと思うけど」
み「猫の散歩です」
律「はぁ?」
み「たまーに見かけるんですよ。
猫を胸の前の袋に入れて、散歩してる人」
律「そういうのって、猫の散歩って言わないんじゃない?」
↑これが猫の散歩。
客「確かに、人の散歩ですな」
律「なんでそんなことするわけ?」
み「知りませんがな。
怖がりの猫で、リードを付けて地面に下ろすと、動けなくなるんじゃない?」
↑いきなり塀に登ったり、なかなか難儀なようです。
律「そもそも、なんでリードを付けるのよ。
猫なんて、そこら中自由に歩けるでしょ」
↑尾道の猫。上から見下ろせる場所がたくさんあるのが、猫にとって住みやすいんでしょうか。
み「危険だろ!
車とか」
↑猫車に乗る猫。
み「わたしは、昔飼ってた猫を交通事故で亡くしてるから、その悲しさがわかるの。
綺麗なメスの黒猫だった」
み「身軽でさ。
立ってるわたしの肩の上まで、一瞬で駆けあがったのよ」
↑猫は、不思議と肩に乗りたがります。あと、眠ってる人の胸とか(←うなされます)。
み「たぶん、その身のすばしっこさが災いしたのかもね」
客「猫は、自動車が来ると、身動きを止めるからということもありますよ」
↑大馬鹿猫。
み「あ、そうそう。
ジャングルに住んでたときの、習性なんだろうね」
↑外見は、ほとんど普通の猫です。
み「怖い敵が来たら、身を潜めてやり過ごそうとする」
客「それを車でやったんじゃ、どうしようもありませんな」
み「んだす。
会社の近所のお店でも、猫を繋いで飼ってるところがある」
↑こう見ると、ツチノコにも似てます。
み「虐待だとは、まったく思わないね。
ふらふら出歩かせてたら、攫われたりする恐れもあるし」
律「誰が攫うのよ?」
み「猫を攫うのは、猫攫いに決まっておる」
↑ヒロヤマガタ作『猫さらい』。高さ37.5㎝、ブロンズ像。値段は、34万円!
客「もちろん、安かったからですよ。
値段は、菜種油の半分だったそうです」
↑ちなみに蝋燭は、菜種油より遥かに高く、上流階級や料亭などでしか使われない贅沢品だったそうです。
み「なるほど。
その鰯の臭いが……。
猫にとっては、得も言われぬ良い香りなわけだな」
↑グリルに手を突っこむ猫。熱くないんですかね?
客「そういうことです」
み「でも、ヘンじゃの」
客「何がです?」
み「安い鰯油を使ってたのは、当然、下々の民じゃろ?」
↑楽しそうな暮らしですが……。夜の夫婦生活は、どうしてたんでしょう?
客「でしょうね」
み「大名家とかでも、行灯に鰯油を使ってたのか?」
客「いくら貧乏大名でも、そこまでしないでしょう」
↑薩摩武士の食卓。お味噌汁が美味しそうです。
客「体面が一番大事ですから。
屋敷が鰯臭くては、客人も招けません」
↑前に取り上げた『鐙屋』の場面、拡大画像がありました。やはり、料理の盛り付けをしてるところでしたね。今日は、何かの祝い事でしょうか。
み「化け猫騒動が起きたのは、大名家でしょう?」
客「あぁ。
鍋島藩ですね。
佐賀県の」
律「どういう話なんです?」
客「時代は、江戸時代の初期です。
2代藩主の鍋島光茂の時代。
光茂の碁の相手を務めてた臣下の龍造寺又七郎が……」
客「光茂の機嫌を損ねて斬殺されます」
み「ひでー殿様だね。
碁で負けてくれなかったから?」
客「さぁ。
そこまでは」
み「碁の相手をして殺されてたら、命がいくつあっても足りんわい」
み「そうだ。
最近は、碁のソフトも進化して、ようやくプロ棋士と打てるレベルになったんでしょ」
客「らしいですな」
律「あら、碁は遅れてるのね。
チェスなんか、世界チャンピオンにパソコンが勝っちゃうんじゃないの?」
み「碁が遅れてるんじゃありません。
ルールの複雑さで、プログラミングの大変さが大違いなの。
チェスは一番簡単でしょ」
律「どうしてよ?」
み「将棋みたいに、取った駒が使えませんがな。
ゲームが進行するに従って、盤面の駒が減っていくわけ」
み「つまり、次の一手の選択肢がどんどん狭まっていく。
こういう計算は、コンピューターの得意とするところ」
み「人間がいくら唸っても叶いません」
客「将棋は、取った駒を自分の駒として使えますからね」
み「そう。
ゲームが進んで、お互いに持ち駒が増えれば増えるほど……。
次の一手の選択肢も、膨大に増えていくわけ」
み「なにしろ、盤面の空いてるところの、どこにでも打てるんだからさ」
み「でも、プロに勝てるレベルになったんですよね」
客「A級棋士にも勝つそうです」
み「で、最後に残ったのが碁なわけ」
客「枡の数がぜんぜん違いますしね」
み「あのゲームは、盤面を図形として認識する能力も必要なんでないの?」
客「わたしは不調法で、碁はやったことがありませんので……。
でも確かに、白と黒の模様みたいになりますね」
み「ぜったい、代数より幾何の才能ですよ」
客「コンピューターは、代数なら負けないんでしょうけどね」
み「今は、ようやく下っ端のプロ棋士と打てるレベルじゃないの?」
律「でも、プロと打てるんなら、大したものじゃない」
み「そう。
それで、殿様の碁の相手は、ソフトを組み込んだロボットにさせればいいんです」
客「本気で言ってますか?」
み「殿様が逆上して……。
ロボットの頭を刀でカンカン叩いても、痛くも痒くもありません」
↑実際の結婚式のようです。新郎は33歳だとか。老けてるのぅ。
み「家来も、殿様の部屋から、カンカン音がしたら……。
『あ、やってるやってる』ってなもんよ」
客「話を戻していいですか」
み「ご随意に」
客「で、碁の相手をしてた龍造寺又七郎が斬り殺されました」
客「悲しみくれた又七郎の母は……。
恨み言を飼猫に語った後、自害してしまいます」
客「で、その母の血を舐めた飼い猫が……」
客「にゃぁおぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
み「ぎゃー。
ば、化けた」
律「2人とも、大きな声を出さないでよ。
みんな見てるじゃないの」
み「で、殿様を食い殺したわけだね?」
客「いいえ。
光茂の家臣、小森半左衛門にあっさり退治されてお終いです」
↑左が小森半左衛門。中央の女性が光茂の愛妾お豊の方で、化け猫が乗り移ってるそうです。
み「それは、ヒドい話ではないか。
龍造寺又七郎も、その母も、猫も……。
まったくの死に損ですがな」
客「わたしに苦情を言われても困ります。
そういう話なんですから」
み「龍造寺家の行灯は、鰯油だったのきゃ?」
↑鰯の塩焼きは、大好物のひとつ。頭から骨まで、丸ごと食べてしまいます。ハラワタのほろ苦いのが、またいいのよ。
客「殿様の碁の相手をする家柄ですから、それはないでしょ。
菜種油でしょうね」
↑菜種です。これを絞るわけですね。種の収穫って、どうやるんでしょうね?
み「じゃ、猫は舐めないんじゃないの?」
客「猫にとっては、鰯油に越したことはないでしょうが……。
菜種油でも、舐めたみたいですよ」
み「なぜじゃ?
キャノーラ油好きの健康志向の猫なのか?」
客「昔の猫の餌は、今みたいに専用のキャットフードではありません」
↑舐めとんのか。
み「そりゃそうだ。
わたしの家で小学生のころまで飼ってた猫は、ばあちゃんが世話してたんだけど……。
生涯に、キャットフードはもちろん、猫缶さえ一度も食さなかったはず」
↑叔父が東京の学生のとき、田舎から出てきた友人で、猫缶を初めて見た人がいたそうです。その人は、缶詰に猫の絵が書いてあるのに仰天したとか。猫の肉の缶詰だと思ったんですね。
律「何を食べさせてたのよ」
み「もちろん、猫マンマですがな。
冷や飯の残りに鰹節をかけて、指でにっちゃにっちゃ練るんです」
律「なんで練るのよ」
み「猫が贅沢して、表面の鰹節だけ食べないよう……。
ご飯の中に練りこむの」
↑こういうふうに、上っ面に掛けてあるんじゃダメなんです。
律「何か、貧乏くさい」
み「ビンボですよ。
昔の日本なんて」
み「猫に専用の食べ物を与えようなんて、誰も考えなかったの。
たまーに、鮭の切れ端なんかを載せると……。
躍りあがって喜んでた」
↑ひゃっほー。
律「なんだか気の毒な猫」
み「昔の猫マンマと行灯の油に、何か関係があるのか?」
客「猫は当然肉食ですから……。
本来は、狩った獲物から脂肪分を摂取してました。
でも、人間の与える餌には、ほとんど脂肪分が含まれてないわけです」
↑味噌汁かけご飯。犬にはこのタイプをやってました。
み「なるほど。
それで、菜種油でも舐めたわけか」
客「行灯の火皿に舌を伸ばすために、後ろ足で立ったわけですな」
↑立ったままバックする猫。表情が秀逸。
客「その姿が、障子に映ってるところを目撃したら……」
み「したら……?」
客「にゃぁおぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
み「やかましい!
窓から捨てるぞ」
↑大湊線の車両ではありません。JR東海『リニア・鉄道館(名古屋市港区)』の展示です。
客「そればかりは……。
とにかく、これが化け猫の正体です」
み「なんとも。
幽霊の正体見たり枯れ尾花ってわけか」
客「そういうことです」
み「行灯を舐めるとこを目撃されて、殺された猫もいたんじゃないの?」
客「かも知れませんね」
み「気の毒な。
『半七捕物帳』にも、化け猫と思われて殺された猫の話が載ってた」
客「油を舐めたんですか?」
み「うんにゃ。
三味線の音を聞いて、踊り出したんです」
↑熊本の踊る猫。
客「それは、立派な化け猫じゃないですか」
↑画/与謝蕪村。深夜の古屋敷で『夜な夜な猫またあまた出ておどりける』とのことです。猫が頭に載せてるのは手ぬぐいです。
み「興行用に仕込まれたんですよ」
客「大変じゃないですか。
猫なんて、お手を仕込むだけでも一苦労ですよ」
↑好きでやってないのは明らか。
み「子猫のころから仕込むんです。
三味線を引きながら、上から紐で吊って、焼けた鉄板の上を歩かせるわけ」
↑猫を吊った画像は見つかりませんでした。
み「猫は熱いから、足を交互に上げるでしょ」
↑こういう上げ方ではありません。
み「これが、踊ってるように見えるわけです。
そのうち、鉄板の上じゃなくても、三味線の音を聞くだけで足を上げるようになる」
↑『PIPOS DOLL』という韓国メーカーのようです。
客「パブロフの犬ですな」
み「で、その興行師の留守中に友達が上がりこんで、勝手に酒なんか飲んでたわけよ。
いい気持ちになってると、床の間に三味線を見つけた。
お、乙なものがあるじゃねえかと、勝手に引っ張りだして、ペンペンと爪弾いてたら……。
突然、それまで丸くなって寝てた猫が立ち上がり、足を交互に上げて踊りだした。
すわ化け猫だってんで、男は三味線で猫をぶち殺してしまったんですよ」
半七捕物帳の『三河万歳』というお話でした。
↑のリンクから、『青空文庫』で読めます。
客「気の毒な猫ですね」
み「だしょー。
ほんま、なんという人生……。
いや、にゃん生なんだ。
江戸時代は、猫にとって受難の時代だったのかも知れんね。
三味線にされたりさ」
↑現在では、猫皮のほか、犬皮も使われるそうです。ほぼすべてが輸入品で、国内の猫や犬が三味線にされることは、まず無いとのこと。
み「それに比べたら、今の猫は幸せですよ。
食って寝てればいいんだから」
↑一酸化炭素中毒の危険がない電気コタツは、猫にとって最高の発明品じゃないでしょうか?
み「ときどき、猫になりたいと心底思います」
客「確かに今は、犬より猫の方が、いい人生を送ってる気がします。
犬は気の毒ですよね。
繋がれて」
↑ブロック塀から覗く犬。元に戻れるんでしょうか?
客「江戸時代の犬は、自由の身でしたからな」
↑市中で、堂々と喧嘩する犬。でも、こんな取っ組み合いみたいなこと、しますかいな?
み「そうそう。
そういえば最近、ハスキー犬を見ないですよね」
↑どう見ても外人です。
客「一時期、流行りましたね」
み「漫画の影響だったですかね」
↑佐々木倫子『動物のお医者さん』。2,000万部売れたそうです。
律「狼みたいな顔した犬でしょ」
み「そうそう。
でも、日本で繋がれて飼われてるハスキー犬は、切ないわな」
律「どうして?」
み「シベリアンハスキーですよ。
本名が。
シベリアの大地を駆けまわってる犬なの」
↑犬ぞりを動物虐待だと言う人がいますが……。犬は、喜んで走ってるようにしか見えません。飼い主と一緒に遊べて、嬉しくてしょうがないんじゃないでしょうか。
み「彼らにとって、日本の夏が、どれほど暑いか。
毛皮を脱げないんだよ」
律「毛刈りしたら?
羊みたいに」
み「みすぼらしすぎだろ。
そんなハスキー犬」
客「たぶん、日本で飼うと、短命なんじゃないですか?
目をやられるって話も聞きました」
律「どうしてやられるんです?」
客「外人みたいな青い目をしてるでしょ」
↑日本語は通じません。
律「してるしてる」
客「夏の強烈な日差しで、やられるんですよ」
み「なるほど。
シベリアは緯度が高いから、日差しも斜めなんだね」
↑シベリアの夏。北海道に似てますよね。
み「ヨーロッパ人も、夏はサングラスかけてるもんね」
律「犬用のサングラスが必要ね」
客「実際、売ってますよ。
こないだ、かけてるの見ました」
↑似た人を知ってます。
み「さすが東京ですね。
服を着せるのはどうかと思うけど……。
サングラスは必要だわな。
犬は視点が低いから、アスファルトとかの照り返しも強いだろうし」
↑肉球の火傷防止に、靴も必要だそうです。『沓はけ我が背』。
律「シベリアンハスキーがサングラスかけてたら、怖すぎるんじゃないの?」
み「ほとんど、ロシアのヤクザでんな」
↑こういうのと路上で出会ったら、マジで凝固すると思います。
律「でも、スゴく利口そうな顔してるわよね」
み「アホ犬ですよ」
↑衝撃画像発見! 毛刈りされたハスキー犬。日本の夏は、この方が快適かも。でも、蚊には刺されるわな。
律「どうしてよ?」
み「竹輪が異常に好きなハスキー犬の話を聞いた」
律「犬が竹輪食べるの?」
↑日本犬も、普通に好きなようです。
み「竹輪は魚のすり身ですから、動物食ですよ」
み「白身魚だから、低脂肪、高タンパクだって、今や海外でも人気なんだって。
白人も食べるんだから、シベリアンハスキーだって食べるわけよ」
↑『豊橋祭り』。ヤマサのちくわが踊ります。
律「どういう連想よ」
み「とにかく、竹輪が異常に好きなハスキー犬がいてね」
↑わたしも、“ク”と“ワ”の書き分けが苦手です。
み「飼い主が、いったい何本食べるのか試してみたんだって。
その与え方が変わっててね。
竹輪を、1本ずつ空中に投げ上げるわけ」
み「ハスキー犬は、飛びあがって竹輪にかぶりつき……。
着地した時には、もう飲みこんでたって」
↑関係ない画像ですが、見つけてしまったので。これってもしや、駅弁?
律「かなりのバカ犬ね」
み「25本かそこらやっても、まだ欲しがってたけど……。
残念ながら竹輪が無くなっちゃったんだって」
み「あのまま続けてたら、何本食べたかわからなかったって」
律「ロシアに竹輪はあるのかしら?」
み「ありまっかいな」
律「じゃ、竹輪を食べるDNAは無いわけよね」
み「ロシアは、タラとかの白身魚がたくさん捕れそうじゃない」
↑ロシア人、カニ獲り過ぎ。
み「きっと、ハスキー犬も、そういう白身魚を食べてたんだよ」
↑ロシアの魚料理。この盛り付けセンスはいかがなものか。食欲ゼロです。
律「それで、日本の竹輪を食べるってわけ?」
み「日本製品は品質がいいからね。
竹輪も普通に美味しいし。
安いしさ」
↑40円! わたしなら、飛びつき買いです。
み「何にもしなくても、わさび醤油さえ付ければ、立派な酒の肴ですよ」
客「確かにそうですね」
み「わたしは基本的に魚の練り物を好みませんが……。
竹輪は、唯一と言っていいくらい嫌いじゃない」
客「どうして練り物がダメなんです?
さつま揚げとか、美味しいじゃないですか」
み「食感がイマイチじゃない。
歯ざわりがよろしくない」
↑汚ねー歯。
客「そうですか?」
み「あなた、もう歯がダメなんじゃないです?」
客「ときどき沁みますが、まだ自分の歯だけです」
↑歯欠けでしたっけ?
み「やっぱり、固さが均一なのが、噛んでて面白みがない。
歯を立てたところから噛み切るとこまで、ずーっと同じ固さでしょ」
客「ゴボウが入ったのもありますよ」
↑細かく刻まれて入ってるようです。
み「ゴボウねー。
ありますね」
客「あと、イカとか」
↑これも刻まれて入ってます。
み「それは食べたことが無いな。
イカは、歯ごたえに醍醐味が出そうですね」
律「何の醍醐味だか」
み「練り物系で好きなのは、魚肉ソーセージくらいかな」
↑なんか、別のものに似てる気がする。
客「あぁ。
あれは安いですよね」
み「スーパーで、束ねられて売られてるよね。
なぜか、赤いテープで束ねられてる」
↑うーむ。なぜか、赤いテープの画像が無かった。記憶違いか?
客「生でもいけますしね」
み「十分」
↑剥き方には、ちょっとしたコツがあります(参照)。
み「大学に入ったころ、学校に行かずに、昼間ずーっと本を読んでた。
集中するために、雨戸閉めきってさ」
↑こんなに古風ではありませんでしたが、木製でした。
み「食事にも出ない。
そのとき食べてたのが、魚肉ソーセージよ」
律「生で?」
↑こんな食べ方もあるんだ!
み「生でって、あれはすでに加工品でしょ」
律「でも、炒めると美味しいわよ」
み「確かに。
キャベツとソースで炒めると、1品出来上がりだよね」
↑『キャベツと魚肉ソーセージのソースソテー』。ソースは、中濃を使うそうです。
律「何で作らないわけ?」
み「集中するって言ったでしょ。
若いころは、寝食を忘れても本が読みたいわけ」
↑読書タイム。ありましたね。わたしは、コナン・ドイルを読んでました。この画像は、茨城県神栖市の中学校。垢抜けませんな。
律「忘れてないじゃない」
み「言葉の綾です」
↑言葉の綾。左はカラ松のようです。右はたぶんチョロ松。
み「お腹が空くと集中力が削がれるから、何か詰めこむわけです。
でも、本は読み続けたい。
というわけで、本を読みながら食べれるものを選ぶの」
↑やっぱり、別のことを想像してしまいますね。
み「料理に時間をかけるなんてのは論外です」
律「ファストフードは?
ハンバーガーとか」
↑こういうのは、どうやって食べるんでしょうね。
み「買いに出なきゃならんでしょ」
律「ソーセージだって買うじゃない」
み「ストックできるでしょ。
魚肉ソーセージなんて。
束で買って、冷蔵庫に投げこんでおけばいいんです」
↑わたしの冷蔵庫も、こんなもんでしたね。
み「コーラだって、でっかいボトルで買っておけば、いくらでも飲めるでしょ」
↑『スーパー尾山(新潟市北区)』。残念ながら行ったことのないお店です。
律「そんな食事、大問題だわ」
み「若いときには……。
体の栄養より、心の栄養が必要なんです」
↑栄養補給中。
客「ほー。
至言ですな」
客「どんなのを読んでたんです?」
み「……。
忘れた」
律「意味ないじゃないの」
み「たとえ内容は忘れても、それは確実に栄養になってるの。
あんた、去年の今日、何食べたか覚えてます?」
↑『みすず書房』、懐かしー。
律「覚えてるわけないでしょ」
み「たとえ食べたものは忘れても……。
それは、確実に血となり肉となってるんです」
↑面白そうです。図書館で借りてみようかな。
客「ほー。
またもや至言です」
律「単なる思いつきのこじつけですよ。
大得意なんだから」
み「人聞きの悪い」
律「食べたものは忘れても、本の題名くらい覚えてそうだけど」
み「あんまり有名な大長編は読まなかったのよ。
トーマス・マンくらいかな」
↑この作品が、一番有名でしょう。この少年は、映画化されたときの主役。
み「北杜夫の影響で」
↑斎藤茂吉の次男です。
み「地下鉄の車中で『魔の山』を読んでた記憶はある」
み「登場人物の名前も、一人だけ覚えてる」
律「主人公くらい覚えてるでしょう」
み「そんなの、覚えとるけ。
わたしが覚えてるのは、脇役も脇役、ほとんど端役の名前だね」
客「どんな名前です?」
み「ゼゼミ・ワイヒブロート」
律「代ゼミ?」
み「ゼゼミ!」
客「そんな名前、ドイツ人にありますか?」
み「たしか、婆さんだったと思う」
↑魔女ではありませんが、こんなイメージ。
客「女性名ですか?」
み「ひょっとしたら、ちょっとだけ違うかも知れん」
律「たぶん、大違いだわ」
み「ふん。
でも、『魔の山』は、最後まで読み切ったからね」
客「それはスゴいですね。
文庫でも、分厚い上下2巻になってますよ」
↑見よ、この厚さ!
み「そのころは、小説を書こうなんて思ってなかったけど……。
きっとあの長編を読んだことが、今の血となり肉となってるんだと思う」
客「ほぅ。
今は、小説を書いておられる?」
み「見えませんか?」
客「はい」
み「即答すな!」
↑ほんとですよね。
み「でも、一番影響を受けたのは、マンの短編ですね。
知ってます?
『トニオ・クレエゲル』」
↑なんと、100円! いつの時代だ?
客「聞いたことはあるような……」
み「あの小説は、一種のポイズンですよ」
客「どういうわけで?」
み「人は、2種類に分けられると云うんです」
律「男と女で2種類じゃない」
↑小学校3,4年生の保健の教科書だそうです。時代は変わりました。
み「そういう分け方じゃないくて!」
律「どんなよ?」
み「表現される側の人間と、表現する側の人間」
律「そんな分け方が、きっちり出来るの?」
み「わたしの人生は、この違いを噛みしめるためにあったと言っても過言ではない」
↑こういうシチュ、何度もあった気がする。
律「過言だと思うけど」
↑過言です。
み「やかまし。
そもそも、チミたち2人は、典型的な表現される側の人間ではないか」
律「何でよ?」
み「わたしの紀行小説の登場人物だからじゃ」
律「何か、言ってることが支離滅裂なんですけど」
客「典型的な統合失調症の症状ですな」
み「やかましわい。
わたしは、表現する者としての十字架を背負いつつ……。
これからの人生も生きて行かねばならんのじゃ」
客「覚せい剤とか、やってませんか?」
み「しとらんわい!」
律「まともな神経とは思えないわ」
み「神経ではなく、精神だろ。
でも、学生のとき、たった1度だけど……。
総合失調症の入口を覗いたことがある」
律「入口だけなの?」
み「だけです!
離人症って知ってる?」
律「バカにしないでよ。
専門外とはいえ、医学用語じゃない」
客「どんな病気なんです?」
み「とにかく、自分の身体が、自分のものだと感じられなくなるのよ」
み「わたしの場合、夜、街を歩いてたときだったけどさ。
自分の足で歩いてるのに、ぜんぜんそういう感覚が無いわけよ。
なんかさ、マジンガーZを操縦してるみたいなわけ」
↑この操縦席は、ホバーパイルダーと云うようです。初めて知った。
律「操縦したことあるの?」
み「あるわけねーだろ!
例えだよ、例え。
なんつーか、自分の身体がロボットで……。
自分の意識は、ちょうどその頭のところに、ちょこんと乗ってる感じ」
↑どう考えても、脳天が弱点ですよね。
み「あ、マジンガーZよりいい例えを思うついた」
律「どんな例えでも、マジンガーZよりマシだと思うけど」
み「猫の散歩です」
律「はぁ?」
み「たまーに見かけるんですよ。
猫を胸の前の袋に入れて、散歩してる人」
律「そういうのって、猫の散歩って言わないんじゃない?」
↑これが猫の散歩。
客「確かに、人の散歩ですな」
律「なんでそんなことするわけ?」
み「知りませんがな。
怖がりの猫で、リードを付けて地面に下ろすと、動けなくなるんじゃない?」
↑いきなり塀に登ったり、なかなか難儀なようです。
律「そもそも、なんでリードを付けるのよ。
猫なんて、そこら中自由に歩けるでしょ」
↑尾道の猫。上から見下ろせる場所がたくさんあるのが、猫にとって住みやすいんでしょうか。
み「危険だろ!
車とか」
↑猫車に乗る猫。
み「わたしは、昔飼ってた猫を交通事故で亡くしてるから、その悲しさがわかるの。
綺麗なメスの黒猫だった」
み「身軽でさ。
立ってるわたしの肩の上まで、一瞬で駆けあがったのよ」
↑猫は、不思議と肩に乗りたがります。あと、眠ってる人の胸とか(←うなされます)。
み「たぶん、その身のすばしっこさが災いしたのかもね」
客「猫は、自動車が来ると、身動きを止めるからということもありますよ」
↑大馬鹿猫。
み「あ、そうそう。
ジャングルに住んでたときの、習性なんだろうね」
↑外見は、ほとんど普通の猫です。
み「怖い敵が来たら、身を潜めてやり過ごそうとする」
客「それを車でやったんじゃ、どうしようもありませんな」
み「んだす。
会社の近所のお店でも、猫を繋いで飼ってるところがある」
↑こう見ると、ツチノコにも似てます。
み「虐待だとは、まったく思わないね。
ふらふら出歩かせてたら、攫われたりする恐れもあるし」
律「誰が攫うのよ?」
み「猫を攫うのは、猫攫いに決まっておる」
↑ヒロヤマガタ作『猫さらい』。高さ37.5㎝、ブロンズ像。値段は、34万円!