2022.9.1(木)
この『単独旅行記Ⅶ・総集編(1)』は、『単独旅行記Ⅶ(001)』から『単独旅行記Ⅶ(010)』までの連載を、1本にまとめたものです。
ときは、2022(令和4)年。
季節は、初夏。
ようやく……。
3年ぶりに、単独旅行に出られることとなりました。
この前に行ったのは、2019(令和元)年の梅雨真っ只中。
本厄だった叔父のために、お寺を巡って、お札を受けて来ました。
回ったのは、川崎大師に……。

↑賑わってませんでした(お正月とかは違うんでしょうけど)。
浅草寺に……。

↑雨でしたが、アジア系観光客で賑わってました。傘と自撮り棒を振り回すので、剣呑至極。
増上寺。

↑お寺がデカすぎて、返って閑散ぶりが強調されてしまいました。お天気、悪かったですからね。
そのおかげでしょう……。
叔父は、本厄も後厄も無事にやり過ごすことが出来ました(糖尿になりましたが)。
もちろん、お寺参り以外でも楽しみました。
初日は、わたしが初めて東京で住んだ場所を訪ねました(見つけられませんでしたが)。

↑最寄り駅の東急東横線「多摩川駅」。駅前の寂れ方が衝撃でした。
2日目は、水上バスに乗って……。

↑知床観光船の事故の後だったら、止めてたかも知れません。
浜離宮に行きました。

↑海水を取り入れた池で、干満により海水が出入りします。周りは高層ビルだらけ。
雨の中でしたが、逆に人が少なく、ゆったりと楽しむことが出来ました。

↑猫がいました。野良なんですかね?
腰痛に悩みつつでしたが、年に1度の旅行を満喫して来ました。
ところが!
その翌年です。
2020年の初頭から、コロナウィルスの感染が拡大。
2020年は、学校も休校し、ゴールデンウィークの列車さえガラガラで……。
旅行なんてとんでもない!、という雰囲気でした。
見学したい施設も大方休館してしまったので……。
旅行は、断念するほかありませんでした。
昨年の2021年は、ヒステリックな雰囲気はもうなくなってましたが……。
緊急事態宣言は、たびたび出てました。
ということで、この年も断念。
しかしわたしは、コロナ禍においては……。
模範的な国民の一人だったと思いますよ。
まず、2020年。
この年は、11月に結婚式出席のため、新潟県長岡市に行きました。
現在、平成の大合併により、新潟市と長岡市は境界を接してます。
新幹線で22分。
わたしが、自宅のある新潟市を出たのは、このときだけでした。
そのころは、感染の端境期で、「GoToトラベル」が使えました。
おかげで長岡では、ホテルニューオータニに割安で泊まれました。
昨年の2021年は、さらに見事でした。
1度も、新潟市から出なかったのです。
1年間の行動を、Googleマップのタイムラインで確認してみました。
政令指定都市である新潟市には、8つの行政区があります。
このうち、わたしが存在したのは……。
自宅のある区、会社のある区、あともうひとつの区の3つだけでした。
もうひとつの区には、車検で往復しただけです。
あとはもう、自宅と会社の往復しかしてなかったわけです。
しかも、この2年間、外食は1度もしてません。
ていうか、最後に外食したのは、2018年の3月ですから……。
これは、コロナのせいではありませんけど。
よくそれで我慢できたなと、呆れられるかも知れません。
でもわたしには、我慢したという自覚はないんです。
逆に、肩の力を抜いて普通に暮らしてると……。
自然とこうなってしまうんですね。
旅行に出るには、事前の準備からして、エネルギーを要します。
旅行計画を立てたり準備したりしてるときが、一番楽しいという人も少なくないようです。
旅行好きな人は、きっとそうなんでしょう。
でもわたしには、その感覚はありません。
ひとりで行くので、自分で準備しなければどうしようもないからしてるだけです。
全部やってくれる人がいて、付いていくだけだったらどんなに楽だろうかと思います。
特に今年は、3年振りということで、いろいろとまごつくことも多かったです。
さて、前置きが長くなりました。
そろそろ、本題に入りましょう。
行き先ですが、これまでのように東京方面ではありません。
行き先を代えた理由はただひとつ。
東京方面では、「県民割」がなかったからです。
最初は、県内も考えました。
でも、せっかく行くんなら、せめて県外には出たいと思い直しました。
近県同士であれば、「県民割」が聞くんです。
もう、答えを言っちゃいましょう。
お隣の福島県です。
といっても、福島県も、いささか広うござんすで……。
郡山市や福島市では、新潟県からかなり遠くなります。
新潟と会津を繋ぐ磐越西線には、特急がありませんから。
鈍行の乗り継ぎで行く気には、さすがになれません。
でも、福島県の西部、会津地方なら、新潟県を超えればすぐです。
行き先は、その中心地である会津若松市に決めました。
会津若松に行くのは……。
実は、初めてではありません。
なんと、3回目になります。
1回目は、小学校の修学旅行でした。
あまりいい思い出はありません。
バスの旅でした。
車酔いして辛かったのを覚えてます。
飯盛山の土産物屋では、白鞘の模擬刀のようなものを売ってました。
お土産に買う男子も多かったです。
見学を終え、「またバスに乗るのか」と……。
暗澹たる思いで駐車場のバスに向かってたとき。
いきなり男子に取り囲まれました。
全員、白鞘の模擬刀を抜いてました。
そして……。
滅多斬りにされました。
もちろん、強く叩いたりはされませんでしたが。
スローモーションみたいな斬り方です。
中には、わたしの頭に刃をあてて、ギコギコと引くヤツまでいました。
あんまり良い思い出のなかった修学旅行の地でしたが……。
なぜかその後、また行ってます。
社会人になって、新潟に戻ってからでした。
そのころはまだ、『Mikiko's Room』をやってませんでしたので……。
休日には、たっぷりと時間がありました。
自分で車を運転して行きましたね。
新潟市から会津若松市までは……。
磐越自動車道を使えば、1時間40分くらいのようです。
でもわたしは、下道の「国道49号」で行きました。
磐越自動車道は、対面通行で怖いんですよ。
片側1車線なので。
片側1車線で、中央分離帯を区切ってしまうと……。
遅い車がいれば、あっという間に渋滞してしまいます。
なので対面通行にして、追い越しが出来るようになってるわけです。
しかし、怖いですよね。
高速道路で、反対車線に入るわけですから。
わたしなら、とうてい出来ません。
てなわけで、下道をのんびり走りました。
当時は、腰痛もなかったですし。
確か、5月の後半だったと思います。
沿道には、タニウツギやキリの花が咲いてました。

↑タニウツギ(Pixabayより)。
このときは泊まらずに、日帰りしました。
1日で、会津若松まで往復したわけです。
今なら腰が心配で、とても出来ません。
同じ姿勢で座ってると、覿面に痛くなりますから。
でも、どこを見学したのか、ほとんど記憶がないんです。
記録もありませんし。
当時は、『Mikiko's Room』をやってませんから……。
旅行記を書く用事もありません。
なので、カメラなんか持って行ってなかったんです。
さて、そんな会津若松。
修学旅行では、いい思い出がありませんでした。
2回目の日帰り旅行は、ほとんど記憶なし。
そんなところに、なんでまた行くことにしたんでしょうね。
明確な理由はないのですが……。
やはり、心情的なつながりでしょうか。
戊辰戦争つながり。
会津と云えば、白虎隊。
新潟県には、河井継之助。
共に幕府側として戦い、壮絶な最期を遂げました。
継之助が亡くなったのは、会津に向かう途中の南会津郡只見町でした。
こんなところから、心情的なシンパシーを感じるようです。
雪国という点でも、共通してますし。
それに、2回行ってることで……。
フォトジェニックな見所があることを知ってましたから。
あそことあそことあそこ、瞬時に指を折って数えられます。
しかも隣県なら、「県民割」が利きます。
ということで、行き先を会津若松にすることは……。
あんまり迷わずに決められました。
前置きが長すぎましたね。
それでは、始めましょう。
2022(令和4)年。
初夏。
日曜日です。
あ、もうひとつ追加。
日曜日を出発日にしたこと。
これは、2019年の東京行きからのことなんです。
それまでは、木金で行ってました。
なぜ、2019年から日月にしたのかと云うと……。
ホテルの宿泊料金が、曜日によって違ってたからです。
日曜日が安かったんですよ。
単にそれだけの理由。
これがなければ、日月にはしませんでした。
なぜなら、月曜日に開いてる施設が少ないからです。
で、今年ですが……。
会津若松のホテルの料金は、曜日による違いはありませんでした。
それでは、なぜ日月にしたのか。
2019年、やむなくこの日程にして、初めて気づいたのですが……。
準備が楽なんですよ。
出発前日の土曜日に、時間をかけて準備できますから。
それまでの木金の日程では大変でした。
前日まで会社ですから。
準備は、当日の朝。
わたしは、こういうことがテキパキと出来ないので……。
3時起きです。
それでもギリギリでした。
てなわけで、棚からぼた餅みたいなかたちで……。
この「日月」日程の利点に気づけたわけです。
でも、月曜に帰って、翌日出勤だと、ちょっと大変。
月曜日の帰りは、気分的にもよろしくないと思います。
ということで……。
月火と、有給休暇を取りました。
2019年のときもそうでした。
うちの会社には、リフレッシュ休暇の取得をうながす制度があります。
土日に繋げて、4連休を取ることが奨励されてるんです。
もちろん、有給休暇を使うわけですが。
なので、「リフレッシュ休暇」という名目で申請を出せば……。
却下されることはまずありません。
火曜が休めるとなれば、月曜の帰りも気分が沈みませんね。
旅は、最後まで楽しみたいですから。
それでは、再び仕切り直し。
2022(令和4)年。
初夏。
日曜日。
嬉しかったのは、お天気に恵まれたこと。
「単独旅行」は、雨に祟られることが多いんですよね。
梅雨時に行ってたので、当たり前なんですが。
3月が会社の決算月で、5月が申告月なので……。
3月末から5月一杯は忙しいんです。
でも今年は、何とか仕事をやりくりして……。
梅雨入り前の旅程を組みました。
日ごろの精進のおかげか……。
天気予報は、2日間とも降水確率ゼロ。
折りたたみ傘も持たずに行けました。
さて。
初日。
家を出たのは、8時半前。
あ、日曜日でいいことが、もうひとつあります。
駅も電車も空いてること。
平日に行ってたときは、通勤客がたくさんいました。
その電車に、大きなリュックを背負った行楽スタイルで乗りこむのは……。
ちょっと気恥ずかしかったです。
家からの描写はちょっと端折って……。
まずは、この旅の起点の駅に降り立ちます。

「新津駅」です。
今日は、JR東日本の磐越西線で会津若松に向かいます。
磐越西線は、福島県の「郡山駅」が起点。
「会津若松駅」を経由して、新潟県の「新津駅」が終点になります。
「郡山駅」から「会津若松駅」を経て……。
ラーメンで有名な福島県の「喜多方駅」までが電化されてます。
「喜多方駅」から「新津駅」までは、非電化。
なお、「会津若松駅」から「喜多方駅」間には……。
電車による定期列車は運行されてないそうです。
電化が整備されるのも、起点から順番なんですかね。
なお、終点は「新津駅」ですが……。
多くの列車が、「新潟駅」まで乗り入れてます。
なのでわたしは、日常的にディーゼル車を見てます。
電車とは、ぜんぜん音が違うんですよ。
新しい車両は、エンジン音がいっそう喧しくなった気がします。
なんでですかね?
さて、「新津駅」。
磐越西線のほか、信越本線と羽越本線が乗り入れてます。
信越本線は、群馬県や長野県も通ってますが……。
新潟県内では、上越市の「直江津駅」から新潟市の「新潟駅」を結んでます。
羽越本線は、「新津駅」が起点で、秋田県の「秋田駅」が終点。
「新津駅」は、この3路線が乗り入れる鉄道の要衝なのです。
うち、2つの路線では、「起点(羽越本線)」と「終点(磐越西線)」ですからね。
こんなことから、新津は……。
機関区、工場、操車場を有する「鉄道の街」として栄えました。
昔は、新津市という独立した自治体でした。
人口は、7万人弱だったようです。
今は、新潟市秋葉区の中心地となってます。
「新津駅」は、2003(平成15)年に改築されてます。
それに伴い、駅前の広場も整備されたようです。
かつての「鉄道の街」を彷彿とさせる展示物もありました。
出発まで少し時間があるので、駅の回りを見てみましょう。
↓さっそくありました。

↓こちらが全容です。

うーむ。
比べるものが周りにないので、大きさがわかりませんね。
説明板には、直径1.4メートルと書いてあります。
軽自動車の横幅くらいです。
まぁ、大きいことは確かです。
↓駅から続く商店街。

切ないほど寂れてます。
かつては両側に、アーケードが連なってたそうです。
老朽化により、撤去されました。
建て替える力は、もう商店街には残ってなかったんです。
↓こちらは駅舎の脇です。

なんだか、テーマパークの入口みたいですね。
↓入ってみたら、エレベーターの乗り場があるだけでした。

↓「新津駅の歴史」。

そうそう。
新津には、油田があったんです。
その石油を運ぶため、鉄道網が発達したんですね。
しかし、昭和30年代の新津駅……。
「1日400本の列車が発着し、機関区には蒸気機関車60両、客車400両が待機する」ってのはすごいです。
そんな光景、見てみたかったです。
↓奇っ怪なモニュメント。

↓題名は「地球を縫う 新津」。

わたしには、抽象芸術が理解できません。
↓駅舎の2階から。

↓雨漏りするんでしょうか?

ちと情けない光景。
駅は街の顔です。
こういうところは、極力見せないでいただきたいものです。
↓かつての鉄道の要衝の名残が、少し想像できます。

↓駅構内の連絡通路。

↓人があんまり通らないことを物語ってます。

ダンスは、高校の部活でしょうか?
新潟の冬は、戸外では練習場所が見つけにくいのでしょう。
↓通路の反対側を撮りました。

見事に人がいませんね。
メインの連絡通路なんですよ。
ていうか、通路はこれしかないと思います。
時間は、朝の9時3分。
日曜日だからでしょうが。
駅舎に戻りましたが……。
まだ時間があります。
駅の反対側に出てみることにしました。
↓こちら側にも、動輪が置かれてました。

↓説明板です。

直径1.6メートル。
5ナンバーの自動車の横幅くらいあります。
さっきのより大きいですね。
↓駅舎は、表側と同じ顔ですね。

一件、大きな駅に見えます。
↓でも、ほぼ看板建築みたいなつくり。

駅の表と裏が、シンメトリーになってるのがわかります。
両側に薄っぺらな顔があって、その間は通路が繋がってるだけ。
かつての鉄道の要衝だった駅の、面目を保つための造りなのでしょうか。
↓こちら側は完全に住宅街です。

↓これは良い形のケヤキでした。

↓さて、そろそろ改札を入りましょうか。

おっと、その前に……。
今回の旅のお供をご紹介しましょう。
え?
単独旅行じゃないのかって。
いえいえ。
いつもの相棒です。
↓こちら。

2017年『単独旅行記Ⅳ』では、『松戸市立博物館』を訪ねました。
そこのミュージアムショップで買った「埴輪キーホルダー(350円)」です。
デザインは、馬と人の2種類ありました。

↑『松戸市立博物館』の「オリジナルグッズ一覧」のページ(こちら)から。
わたしは両方買って……。
馬は、母のお土産にしました。
わたしも馬の方がほしかったのですが……。
人は、母の好みの顔じゃないと思ったので。
ま、残り物には福があると云いますし。
でも現在、人の方は売り切れのようですね。
人気があるんでしょうか。
この顔でね。
あ、不人気だから生産が少なかったのかも。
で、売り切れ後は、追加生産なしってことか。
ま、仕方ないですね。
この翌年以降、旅のお供をしてもらってます。
埴輪だから、ハーさんと呼ぶことにしました。
さてさて、写真も撮ったし、ハーさんには鞄に戻ってもらいましょう。
と、そのときでした!
「ロ~ンブロゾ~」
脳内に声が響きました。
な、ななんじゃこの声は?
「な~にが、残り物や」
???。
「この顔で?
不人気だから生産が少ない?
失敬千万!」
だ、誰?
あたりを見回しますが、誰もいません。
「何をキョロキョロしておる。
目の前におろうが」
目の前って……。
こいつ?

ハ「誰が“こいつ”や」
み「ひ、人の心が読めるのか!」
ハ「そうやない。
声を出さずに会話が出来るということや」
み「どう違う?」
ハ「深く考えるな!」
み「しかし……。
松戸の埴輪が、なんで関西弁なんだ?」
ハ「深く考えるなというに!
物事を、ありのままに受け入れるのが、はじめの一歩や」
み「受け入れ難い」
ハ「ロ~ンブロゾ~!」
み「そもそも、それがおかしいではないか。
黄金バットの宿敵、ナゾーのセリフだろ。
あの、ソロバン玉みたいなのに入った」
ハ「ソロバン玉ではないわ!
空飛ぶ円盤や」
み「だからなんで、ナゾーなのだ?」
ハ「それは謎です」
み「出発前から、頭がおかしくなったのかもしれん」
ハ「もともとだろ」
み「捨てていくかな」
ハ「くぉら!」
み「こんな人形と話をしてるとこを見られたら……。
即、119番通報されるわい」
ハ「確かに、顔を合わせてると、声が出てしまうかもな。
鞄にしまってもよいぞ。
お主の目を通して、景色も見えるし」
み「なんでそんなことが出来るんじゃ?」
ハ「ロ~ンブロゾ~!
聞くな!」
み「そもそも……。
“ロ~ンブロゾ~”って、どういう意味よ?」
ハ「ナゾーの本名が、ロンブロゾ・ナゾーなんや」
み「は?
そしたら、自分の名前を名乗りながら出てくるってわけ?」
ハ「そうやろ」
み「おかしいじゃないの。
もし、和義という名前なら……。
“か~ずよし~”とか言いながら出るわけ?
ただのアホじゃ」
ハ「ごちゃごちゃ言うな!」
み「そもそも、おまえはナゾーじゃないじゃろ。
“ハ~ニ~ワ”とか言うべきじゃないの」
ハ「そんなアホなことが言えるか!
早く、腹の袋にしまえ」
み「腹の袋ってなんじゃ?
わたしはカンガルーじゃないぞ」
ハ「腹に巻いてるやないか」
み「これは、ウエストポーチ!
“腹の袋”って、いつの時代の人間じゃ」
ハ「うるさい!
早くしまえと言うに。
ほら、人が集まってきたぞ」
み「う?
パフォーマーと間違えられてるかも。
あ、すみません。
通して下さい。
見世物じゃないんで」
ハ「立派な見世物や」
み「うるさいというに」
ハ「だから!
声を出すなと言っとるやろ。
頭の中で会話するんや」
み「あーうるさい。
あんまり話しかけるな」
ハーさんをウエストポーチに突っこみ、改札を通ります。
3番線ホームに降り立ちました。

み「げ!
もう、入線してる!
バカの相手をさせられて、入線を見逃してしまったではないか!」
ハ「誰がバカじゃ。
しかし、妙に洒落た列車ではないか?
水戸岡鋭治か?」
み「違うと思うぞ。
しかし、この列車の名前を知らんとは……。
お主、ド素人じゃな」
ハ「やかましわ。
ここは、列車の最後尾やろ。
前に回れ。
ずばり、言い当ててくれる」
み「うるさいやつ。
それじゃ、前に行ってやる」

み「あ、アルファベットで書いてある。
読むなよ」
ハ「ポーチを揺らすな!
そもそも、ポーチを揺らしても無駄やぞ。
おぬしの目を通して見てるんやからな」
み「それじゃ、これならどうじゃ」
ハ「頭を振るな!
バカと思われるぞ。
見ろ、子供が後ずさりしてるやないか」
み「はあ、はあ。
結構長いな」
ハ「運動不足や」
み「おまえに言われたくないわ。
ほら、見えたぞ」
ハ「SLやないか。
さすがド田舎。
まだこんなのが走ってるんや」
み「バカタレ!
観光列車に決まってるわい」
ハ「わざとや。
知らんわけないやろ。
これは、『SLばんえつ物語』やないか。
しかし、お主にこういう趣味があるとは知らなんだ」
み「別に趣味で乗りに来たのではないわ」
ハ「ならなんでや?
高速バスの方が早いやろ」
み「確かに所要時間では、高速バスの圧勝じゃ」
ハ「なぜ乗らん?
バス酔いか?」
み「バス酔いしたのは、小学生までじゃ。
良いか。
いくら所要時間が短くても……。
ちょうど良い時間に走ってくれなくてはなんにもならん。
見よ、これが時刻表だ」

↑新潟交通さんのページから転載させていただきました(クリックすると、大きい画像が見られます)。
ハ「あるではないか。
『万代シテイバスセンター』発、11:45。
『若松駅前』着、13:41。
確か、『ばんえつ物語』の『会津若松駅』着も……。
同じころではないか?」
み「13:35着じゃ」
ハ「ほれみろ。
なんでバスにしない」
み「よく見んかい。
上の方に、
“赤背景の一部便を、当面の間運休しております”と書いてある」
ハ「げげ」
み「すなわち!
現在、11:45分発と14:25分発は運行してない。
運行されてるのは、始発と最終便だけじゃ。
18:45分発の最終は論外。
となると、7:10分の始発だけ。
いくらなんでも早すぎじゃ」
ハ「毎朝3時に起きてるんじゃないのか」
み「それは平日。
今日は日曜だ。
前夜は酒を飲まねばならんではないか」
ハ「そっち優先かい!」
み「ということで、高速バスは消去。
残るはJRの磐越西線ということになる。
この時点でわたしは、『快速あがの』にしようと思ってた。
しかし……。
時刻表に載ってなかった。
そんなバナナ」
ハ「古る!」
み「つい最近まで、走ってるのを見てたんじゃ。
『新潟駅』まで乗り入れてたから。
で、調べて見たら……。
なんと!
2022年3月12日のダイヤ改正をもって廃止となってた。
む、無念……」
ハ「ありゃまあ」
み「『快速あがの』には、いい時間のがあったのよ。
あんまり残念だったので、手元にあった2020年3月号の時刻表を控えてある」

ハ「時刻表、毎月買ってるのか?」
み「まさか。
2020年までは、年1回、春のダイヤ改正が載る3月号だけ買ってた。
旅行の計画を立てるときは、なぜか紙の時刻表を見たくなるのじゃ」
ハ「鉄の端くれやな」
み「まあな。
でも、2021年以降は、コロナで旅行に行けそうもなかったので……。
買ってない。
で、だ。
その2020年3月号の時刻表によると『快速あがの』は……。
『新潟駅』発が、8:25。
『会津若松駅』着が、10:46分。
終点の『郡山駅』でも、12:12分じゃ」

↑クリックすると、大きい画像が見られます。
ハ「完璧やな」
み「じゃろ。
なんで廃止するかね」
ハ「早い話……。
新潟から会津若松まで、通しで乗る客がいなくなったんやないか?」
み「あ、そうか。
以前は、東日本大震災で新潟に避難してた人が……。
福島と行き来する用事があったわけだ。
しかし、震災から10年以上経って……。
その需要も少なくなった」
ハ「でも、しょせん快速やろ。
特急や急行じゃあるまいし……。
鈍行とさほど違わないんちゃう?」
み「鈍行って……。
国鉄か。
そもそも、急行列車は、今どこにも走っておらん」
ハ「だーから、普通列車はどうなんや。
会津若松までの直行便がなくなったとか?」
み「いや、あるにはある。
ある程度、ちょうどいいのはある。
新津駅、9:32分発」
ハ「会津若松駅着は?」
み「12:00ジャスト」
ハ「これでいいではないか」
み「いいことはいいのじゃが……。
この時刻表を見てて、その後の便に目がいってしもうた」
ハ「それが『ばんえつ物語』か」
み「左様じゃ。
鉄道の旅では、時間もさることながら……。
座席問題も重要じゃ。
普通列車に乗って、座れなければ話にならん。
ロングシートだけってことはないと思うけど……。
ボックスシートは限られてるはず。
たとえ座れたとしても、通路側じゃ残念すぎる。
写真が撮れない。
しかも、ぜったい進行方向を向いて座りたい。
出来れば、わたしの目の前の席には、誰も座らないでほしい」
ハ「普通列車で、そんなわがままが通用するかい」
み「だからじゃ。
SL『ばんえつ物語』は、全席座席指定。
しかも!
一般車両は、向かい合わせのボックスシートじゃが……。
グリーン車は、進行方向を向いた3列シート。
すなわち、片側は1列。
隣に誰か座ることもないのじゃ」
ハ「隣に誰が座ろうと、自分のしたいようにすればいいやろ。
迷惑さえかけんかったら」
み「わたしは、外面(そとづら)がいいのじゃ。
人前で、いけずな態度はとれん。
ボックスシートで最悪なのは……。
3人連れのおばちゃんと、同じボックスに入れられること。
『ばんえつ物語』は、人気列車だから……。
3人組と1人を組み合わせてボックスを埋めるという可能性はある。
で、おしゃべりな3人組と一緒になったら……。
いろいろと根掘り葉掘り聞かれるじゃろ。
この歳でひとり旅とは、夫婦げんかでもしたのかと聞かれるかも知れん。
独身だなどと答えたら……。
火に油じゃ。
ヘタすれば、相手まで紹介されかねん。
写真なんか撮ってるヒマ、ないではないか。
ハ「話しながらでも撮れるやろ」
み「パカモン。
手には、勧められた冷凍ミカンを持たされておる」
ハ「いつの時代の話や。
車両に冷房がなかったころの売り物やろ」
み「とにかく!
そういうリスクもあるということ。
旅にやり直しはきかないのじゃ。
リスクは、徹底的に排除すべき」
ハ「その割には、高速バスの延着を見こんでなかったり……。
鉄道で、乗り換え時間1分の計画を立てたり……。
20年前の地図で東京を歩いたりしてたのではないか?」
み「すべてにおいて完璧にはできんわ」
ハ「最初からクリアしておけるリスクではないか」
み「とにかく!
1人掛けであれば、冷凍ミカンの危険から逃れられるのじゃ。
ほら、頭が見えたぞ」

ハ「頭って……」
み「さっそく人が群がっておる。
わたしも前に回って撮らねば。
なんと!
人の後ろ頭しか撮れん。
わたしは、SLの頭を撮りたいんじゃ。
よし。
念力じゃ。
人の頭よ、低くなれぇ~」
ハ「なるかい」
み「なった!」

ハ「うそやろ」
み「次は横じゃ。
見よ!
がら空きじゃ」

ハ「念力というより、怨念やな」
み「次、客車!」

み「絶好調じゃ。
やっぱ、運転席も」

ハ「うろうろすな!
目が回る」
み「駅弁を売っとる!」

み「買わないけど」
ハ「途中で買えんかも知れんで」
み「お昼は食べないからいいの」
ハ「わしは食べたい」
み「どうやって食べる気じゃ。
フェルトの口で」
ハ「お主が食べれば、わしにも味がわかるんや」
み「寄生虫か。
次、客車の窓!」

み「一般車両はこのとおり、四人掛けのボックスシートじゃ」
ハ「テーブルもあって、便利ではないか」
み「4人組ならな。
冷凍ミカンの恐怖が蘇るわい、
先を急ぐぞ」
ハ「まだ時間は十分あるやろ」
み「なぜか気が急く。
乗り遅れそうな気がする」
ハ「小心者が」
み「ほら来たぞ。
わたしの乗る7号車。
貴賓室じゃ」

ハ「グリーン車やろ」
み「ほれ、進行方向を向いた、3列シートじゃろ」

ハ「景色が写りこんで、ほとんど見えんわ」
み「乗ればわかる。
そしてこのグリーン車の最後尾には……。
これなわけよ」

ハ「最初に見たやつやな」
み「この展望室、グリーン車の乗客しか入れんのじゃ。
恐れ入ったか」
ハ「しかし、いくら違うんや。
一般車とグリーン車」
み「よーく聞けよ。
普通車の指定席は、530円」
ハ「安す!」
み「それに対し、グリーン車は……。
1,700円もするのじゃ!」
ハ「……。
それって、高いという認識か?」
み「あたりまえだろ。
3.2倍なんじゃ。
ホテル代で比べてみ。
普通車を、5,000円のシングルルームとする。
となると、その3.2倍じゃから……。
なんと!
16,000円のデラックスルームとなるのじゃ」
ハ「そんなルームがあるか。
この場合、倍数ではなく引き算で考えるべきやろ。
1,700円-530円。
つまり、1,170円しか違わんやないか。
しかし……。
安いな。
乗車券はいくらや?」
み「1,980円じゃ」
ハ「てことは乗車券と合わせて、普通車が2,510円か。
グリーン車でも、3,680円やないけ」
み「快速だからな。
そもそも、特急券がいらんわけじゃ。
これで、3時間半も乗ってられるのじゃ。
1分あたり、17.5円」
ハ「いらんわ、そんな換算」
み「ちょっくら、展望室を覗いてみるべ」

ハ「やけにシンプルやないか」
水戸岡鋭治やないな。
あの行灯みたいなのは、椅子か?
尻が痛くなるやろ」
み「ここに長時間座りこめんようにしてるんじゃろ」
ハ「プロの鉄は、座布団持って来たりして」
み「そういう輩は……。
桃太郎侍の格好をした車掌が、後ろから袈裟切りに成敗する」
ハ「するかい」
み「格好いいロゴじゃ」

ハ「しかし、“EXPRESS”ってのはどうなんや?
バスより遅いやろ」
み「快速じゃろ。
普通列車より速ければ、立派な“EXPRESS”じゃ」
ハ「会津若松まで、何時間かかるんやった?」
み「新津駅発が、10:03分。
会津若松駅着が、13:35分。
3時間32分じゃな」
ハ「さっき言ってた普通列車は?
ほれ、新津駅発が、9:32分のやつ」
み「会津若松駅着が、12時ジャスト」
ハ「所要時間は?」
み「えーと、2時間28分じゃ」
ハ「おかしいやないけ。
『ばんえつ物語』より、1時間以上早く着くぞ。
鈍行より1時間以上も遅いのが、なんで“EXPRESS”なんや?」
み「各駅停車じゃないからじゃ」
ハ「各駅停車より遅くてもか?」
み「腐っても鯛」
ハ「例えが悪いやろ」
み「乗りこむぞ」
グリーン車の入口には、車掌さんが立ってます。
この車掌さんにグリーン券を見せないと、グリーン車には入れません。
車掌さんを正面から撮るのは失礼なので、入口部分の写真はなしです。
ハ「車掌さん、丁寧やったな」
み「気持ちいいのぅ。
特権意識をくすぐられるわい」
ハ「たった、1,700円のグリーン券なのにな」
み「やかまし。
見よ、貴賓室入り口じゃ」
ハ「グリーン車だろ。
しかし、ガラガラやないか」
み「まだ、発車まで30分もあるからな。
グリーン車の乗客は、発車前に悠然と乗車するんじゃろ」
ハ「悠然としてないのが、ここにひとりおるがな」
み「うるさい。
よし、これなら写真が撮れそうじゃ。
でも、前からだと顔が写るから、加工がやっかいになる。
展望室から撮ろう」
通路を突っ切り、最後尾の展望車に移動。
み「よし。
誰も後ろを見てないな」
パチリ」

ハ「レトロ調やな」
み「ゴテゴテしないレトロが落ち着くではないか。
車両に組子細工は必要ない」
ハ「また、水戸岡鋭治批判か」
み「批判ではないわ。
好みの問題じゃ。
さらに踏みこんで、パチリ」

み「よし。
この空きようなら、ほかの車両内部も撮れそうじゃ。
今のうちに撮っておこう。
いざ、庶民たちの普通車へ」
ハ「庶民が余計や」
隣の6号車に移ります。
一両すべて、普通車指定席になります。
み「空いとるな」
ハ「ていうか、ガラガラやないけ」
み「普通車も座席指定だからな。
席取りの必要がないからじゃろ」
ハ「発車間際に悠然と乗って来るわけか?」
み「違うわ。
たぶん、写真を撮ってるんじゃろ。
機関車とか、ほかの車両とかの。
よし、おかげで真っ正面から撮れる。
パチリ」

み「発車まで、まだ30分近くあるな。
もっと先まで行くぞ」
5号車に移ります。
こちらも、後部は普通車指定席です。
でも、前方部は違ってます。
み「あ、売店がある」
ハ「ビール、買うてくれ」
み「まだ早いわ」
ハ「写真、撮らんのか?」
み「売店のお姉さんが写ってしまう」
ハ「かまへんやろ」
み「恥ずかしいではないか」
ハ「何で撮る方が恥ずかしがるんや」
み「シャイですから」
ハ「わからんやっちゃ」
てなわけで、わたしが撮った売店の写真はありませんので……。
↓JRグループの『トレたび』さんのサイトから拝借しました(こちらのページです)。

み「次、4号車。
ここは展望車両じゃ。
空いとる」

ハ「当たり前や。
発車してないのに、展望席に座ってどうする」
み「お。
ポストがある」

み「出せるんじゃろか?」
ハ「出せるやろ。
出せませんって注意書きはないぞ。
しかし、出すヤツがおるんかな?」
み「読めたぞ」
ハ「何がや?」
み「さっきの売店で、絵はがきを売ってるに違いない。
で、この展望車両で書くんじゃろ」
ハ「ここでか。
書きにくそうや」
み「♪文字のみだれ~は線路の軋み」
ハ「♪愛の迷い~じゃないですか」
み「こんな葉書、ここで書いてる女がいたら……。
不気味じゃろうな」
ハ「次、3号車」
み「もういいわ。
あとは普通車両じゃ」
と思ったのですが、1号車は「オコジョ展望車両」でした。
見なくて残念と思ったのですが……。
『ばんえつ物語』の写真を見ると、キッズルームでした(こちらのページから拝借)。

乗車時間3時間32分ですから……。
窓外の景色だけじゃ、退屈するお子さんもいるでしょうからね。
ま、でも、これなら見なくても良かったです。
しかし、何で「オコジョ」?
ハ「まだ時間あるやろ」
み「今、9時37分だから……。
あと26分ある」
ハ「車内にいるんやから……。
乗り遅れる心配もいらんやないか」
み「トイレに行きたくなった」
ハ「子供か!
トイレなら、車内にもあるやないか。
まさか、停まってるから使えないとでも?
今のトイレは、垂れ流しやないから……。
停まってても使えるはずやで」
み「男女共用じゃろ」
ハ「そらそやろ」
み「そういうところは、入りにくい」
ハ「なんでや?」
み「とにかく!
改札抜けたところにあったトイレに行く」
ハ「難儀なやっちゃ」
地上ホームから、改札のある2階に上がります。
み「ほら、こんな綺麗なトイレがある」

ハ「早くしてこい」
み「おまえは、どこかに置いていくかな」
ハ「すな!
盗られたらどうする」
み「誰が盗るんじゃ、こんなもの」
ハ「こんなものとはなんや!」
み「でも、猫が咥えていくかもしれんしな。
連れて行くけど、見るなよ」
ハ「見るかい」
中も、十分に綺麗でした。
み「あー、すっきりした」
ハ「早かったな。
小、やな」
み「当たり前だ。
大は家で出し切って来た」
ハ「いちいち言わんでよろし」
み「今、9時41分。
まだまだ余裕じゃな。
もう一回、してくるかな」
ハ「ええ加減にせい」
み「冗談じゃ。
あ、やっぱり空いてるんじゃん」

ハ「土曜日なのにな。
なかなか切符の取れん列車やなかったのか?」
ときは、2022(令和4)年。
季節は、初夏。
ようやく……。
3年ぶりに、単独旅行に出られることとなりました。
この前に行ったのは、2019(令和元)年の梅雨真っ只中。
本厄だった叔父のために、お寺を巡って、お札を受けて来ました。
回ったのは、川崎大師に……。

↑賑わってませんでした(お正月とかは違うんでしょうけど)。
浅草寺に……。

↑雨でしたが、アジア系観光客で賑わってました。傘と自撮り棒を振り回すので、剣呑至極。
増上寺。

↑お寺がデカすぎて、返って閑散ぶりが強調されてしまいました。お天気、悪かったですからね。
そのおかげでしょう……。
叔父は、本厄も後厄も無事にやり過ごすことが出来ました(糖尿になりましたが)。
もちろん、お寺参り以外でも楽しみました。
初日は、わたしが初めて東京で住んだ場所を訪ねました(見つけられませんでしたが)。

↑最寄り駅の東急東横線「多摩川駅」。駅前の寂れ方が衝撃でした。
2日目は、水上バスに乗って……。

↑知床観光船の事故の後だったら、止めてたかも知れません。
浜離宮に行きました。

↑海水を取り入れた池で、干満により海水が出入りします。周りは高層ビルだらけ。
雨の中でしたが、逆に人が少なく、ゆったりと楽しむことが出来ました。

↑猫がいました。野良なんですかね?
腰痛に悩みつつでしたが、年に1度の旅行を満喫して来ました。
ところが!
その翌年です。
2020年の初頭から、コロナウィルスの感染が拡大。
2020年は、学校も休校し、ゴールデンウィークの列車さえガラガラで……。
旅行なんてとんでもない!、という雰囲気でした。
見学したい施設も大方休館してしまったので……。
旅行は、断念するほかありませんでした。
昨年の2021年は、ヒステリックな雰囲気はもうなくなってましたが……。
緊急事態宣言は、たびたび出てました。
ということで、この年も断念。
しかしわたしは、コロナ禍においては……。
模範的な国民の一人だったと思いますよ。
まず、2020年。
この年は、11月に結婚式出席のため、新潟県長岡市に行きました。
現在、平成の大合併により、新潟市と長岡市は境界を接してます。
新幹線で22分。
わたしが、自宅のある新潟市を出たのは、このときだけでした。
そのころは、感染の端境期で、「GoToトラベル」が使えました。
おかげで長岡では、ホテルニューオータニに割安で泊まれました。
昨年の2021年は、さらに見事でした。
1度も、新潟市から出なかったのです。
1年間の行動を、Googleマップのタイムラインで確認してみました。
政令指定都市である新潟市には、8つの行政区があります。
このうち、わたしが存在したのは……。
自宅のある区、会社のある区、あともうひとつの区の3つだけでした。
もうひとつの区には、車検で往復しただけです。
あとはもう、自宅と会社の往復しかしてなかったわけです。
しかも、この2年間、外食は1度もしてません。
ていうか、最後に外食したのは、2018年の3月ですから……。
これは、コロナのせいではありませんけど。
よくそれで我慢できたなと、呆れられるかも知れません。
でもわたしには、我慢したという自覚はないんです。
逆に、肩の力を抜いて普通に暮らしてると……。
自然とこうなってしまうんですね。
旅行に出るには、事前の準備からして、エネルギーを要します。
旅行計画を立てたり準備したりしてるときが、一番楽しいという人も少なくないようです。
旅行好きな人は、きっとそうなんでしょう。
でもわたしには、その感覚はありません。
ひとりで行くので、自分で準備しなければどうしようもないからしてるだけです。
全部やってくれる人がいて、付いていくだけだったらどんなに楽だろうかと思います。
特に今年は、3年振りということで、いろいろとまごつくことも多かったです。
さて、前置きが長くなりました。
そろそろ、本題に入りましょう。
行き先ですが、これまでのように東京方面ではありません。
行き先を代えた理由はただひとつ。
東京方面では、「県民割」がなかったからです。
最初は、県内も考えました。
でも、せっかく行くんなら、せめて県外には出たいと思い直しました。
近県同士であれば、「県民割」が聞くんです。
もう、答えを言っちゃいましょう。
お隣の福島県です。
といっても、福島県も、いささか広うござんすで……。
郡山市や福島市では、新潟県からかなり遠くなります。
新潟と会津を繋ぐ磐越西線には、特急がありませんから。
鈍行の乗り継ぎで行く気には、さすがになれません。
でも、福島県の西部、会津地方なら、新潟県を超えればすぐです。
行き先は、その中心地である会津若松市に決めました。
会津若松に行くのは……。
実は、初めてではありません。
なんと、3回目になります。
1回目は、小学校の修学旅行でした。
あまりいい思い出はありません。
バスの旅でした。
車酔いして辛かったのを覚えてます。
飯盛山の土産物屋では、白鞘の模擬刀のようなものを売ってました。
お土産に買う男子も多かったです。
見学を終え、「またバスに乗るのか」と……。
暗澹たる思いで駐車場のバスに向かってたとき。
いきなり男子に取り囲まれました。
全員、白鞘の模擬刀を抜いてました。
そして……。
滅多斬りにされました。
もちろん、強く叩いたりはされませんでしたが。
スローモーションみたいな斬り方です。
中には、わたしの頭に刃をあてて、ギコギコと引くヤツまでいました。
あんまり良い思い出のなかった修学旅行の地でしたが……。
なぜかその後、また行ってます。
社会人になって、新潟に戻ってからでした。
そのころはまだ、『Mikiko's Room』をやってませんでしたので……。
休日には、たっぷりと時間がありました。
自分で車を運転して行きましたね。
新潟市から会津若松市までは……。
磐越自動車道を使えば、1時間40分くらいのようです。
でもわたしは、下道の「国道49号」で行きました。
磐越自動車道は、対面通行で怖いんですよ。
片側1車線なので。
片側1車線で、中央分離帯を区切ってしまうと……。
遅い車がいれば、あっという間に渋滞してしまいます。
なので対面通行にして、追い越しが出来るようになってるわけです。
しかし、怖いですよね。
高速道路で、反対車線に入るわけですから。
わたしなら、とうてい出来ません。
てなわけで、下道をのんびり走りました。
当時は、腰痛もなかったですし。
確か、5月の後半だったと思います。
沿道には、タニウツギやキリの花が咲いてました。

↑タニウツギ(Pixabayより)。
このときは泊まらずに、日帰りしました。
1日で、会津若松まで往復したわけです。
今なら腰が心配で、とても出来ません。
同じ姿勢で座ってると、覿面に痛くなりますから。
でも、どこを見学したのか、ほとんど記憶がないんです。
記録もありませんし。
当時は、『Mikiko's Room』をやってませんから……。
旅行記を書く用事もありません。
なので、カメラなんか持って行ってなかったんです。
さて、そんな会津若松。
修学旅行では、いい思い出がありませんでした。
2回目の日帰り旅行は、ほとんど記憶なし。
そんなところに、なんでまた行くことにしたんでしょうね。
明確な理由はないのですが……。
やはり、心情的なつながりでしょうか。
戊辰戦争つながり。
会津と云えば、白虎隊。
新潟県には、河井継之助。
共に幕府側として戦い、壮絶な最期を遂げました。
継之助が亡くなったのは、会津に向かう途中の南会津郡只見町でした。
こんなところから、心情的なシンパシーを感じるようです。
雪国という点でも、共通してますし。
それに、2回行ってることで……。
フォトジェニックな見所があることを知ってましたから。
あそことあそことあそこ、瞬時に指を折って数えられます。
しかも隣県なら、「県民割」が利きます。
ということで、行き先を会津若松にすることは……。
あんまり迷わずに決められました。
前置きが長すぎましたね。
それでは、始めましょう。
2022(令和4)年。
初夏。
日曜日です。
あ、もうひとつ追加。
日曜日を出発日にしたこと。
これは、2019年の東京行きからのことなんです。
それまでは、木金で行ってました。
なぜ、2019年から日月にしたのかと云うと……。
ホテルの宿泊料金が、曜日によって違ってたからです。
日曜日が安かったんですよ。
単にそれだけの理由。
これがなければ、日月にはしませんでした。
なぜなら、月曜日に開いてる施設が少ないからです。
で、今年ですが……。
会津若松のホテルの料金は、曜日による違いはありませんでした。
それでは、なぜ日月にしたのか。
2019年、やむなくこの日程にして、初めて気づいたのですが……。
準備が楽なんですよ。
出発前日の土曜日に、時間をかけて準備できますから。
それまでの木金の日程では大変でした。
前日まで会社ですから。
準備は、当日の朝。
わたしは、こういうことがテキパキと出来ないので……。
3時起きです。
それでもギリギリでした。
てなわけで、棚からぼた餅みたいなかたちで……。
この「日月」日程の利点に気づけたわけです。
でも、月曜に帰って、翌日出勤だと、ちょっと大変。
月曜日の帰りは、気分的にもよろしくないと思います。
ということで……。
月火と、有給休暇を取りました。
2019年のときもそうでした。
うちの会社には、リフレッシュ休暇の取得をうながす制度があります。
土日に繋げて、4連休を取ることが奨励されてるんです。
もちろん、有給休暇を使うわけですが。
なので、「リフレッシュ休暇」という名目で申請を出せば……。
却下されることはまずありません。
火曜が休めるとなれば、月曜の帰りも気分が沈みませんね。
旅は、最後まで楽しみたいですから。
それでは、再び仕切り直し。
2022(令和4)年。
初夏。
日曜日。
嬉しかったのは、お天気に恵まれたこと。
「単独旅行」は、雨に祟られることが多いんですよね。
梅雨時に行ってたので、当たり前なんですが。
3月が会社の決算月で、5月が申告月なので……。
3月末から5月一杯は忙しいんです。
でも今年は、何とか仕事をやりくりして……。
梅雨入り前の旅程を組みました。
日ごろの精進のおかげか……。
天気予報は、2日間とも降水確率ゼロ。
折りたたみ傘も持たずに行けました。
さて。
初日。
家を出たのは、8時半前。
あ、日曜日でいいことが、もうひとつあります。
駅も電車も空いてること。
平日に行ってたときは、通勤客がたくさんいました。
その電車に、大きなリュックを背負った行楽スタイルで乗りこむのは……。
ちょっと気恥ずかしかったです。
家からの描写はちょっと端折って……。
まずは、この旅の起点の駅に降り立ちます。

「新津駅」です。
今日は、JR東日本の磐越西線で会津若松に向かいます。
磐越西線は、福島県の「郡山駅」が起点。
「会津若松駅」を経由して、新潟県の「新津駅」が終点になります。
「郡山駅」から「会津若松駅」を経て……。
ラーメンで有名な福島県の「喜多方駅」までが電化されてます。
「喜多方駅」から「新津駅」までは、非電化。
なお、「会津若松駅」から「喜多方駅」間には……。
電車による定期列車は運行されてないそうです。
電化が整備されるのも、起点から順番なんですかね。
なお、終点は「新津駅」ですが……。
多くの列車が、「新潟駅」まで乗り入れてます。
なのでわたしは、日常的にディーゼル車を見てます。
電車とは、ぜんぜん音が違うんですよ。
新しい車両は、エンジン音がいっそう喧しくなった気がします。
なんでですかね?
さて、「新津駅」。
磐越西線のほか、信越本線と羽越本線が乗り入れてます。
信越本線は、群馬県や長野県も通ってますが……。
新潟県内では、上越市の「直江津駅」から新潟市の「新潟駅」を結んでます。
羽越本線は、「新津駅」が起点で、秋田県の「秋田駅」が終点。
「新津駅」は、この3路線が乗り入れる鉄道の要衝なのです。
うち、2つの路線では、「起点(羽越本線)」と「終点(磐越西線)」ですからね。
こんなことから、新津は……。
機関区、工場、操車場を有する「鉄道の街」として栄えました。
昔は、新津市という独立した自治体でした。
人口は、7万人弱だったようです。
今は、新潟市秋葉区の中心地となってます。
「新津駅」は、2003(平成15)年に改築されてます。
それに伴い、駅前の広場も整備されたようです。
かつての「鉄道の街」を彷彿とさせる展示物もありました。
出発まで少し時間があるので、駅の回りを見てみましょう。
↓さっそくありました。

↓こちらが全容です。

うーむ。
比べるものが周りにないので、大きさがわかりませんね。
説明板には、直径1.4メートルと書いてあります。
軽自動車の横幅くらいです。
まぁ、大きいことは確かです。
↓駅から続く商店街。

切ないほど寂れてます。
かつては両側に、アーケードが連なってたそうです。
老朽化により、撤去されました。
建て替える力は、もう商店街には残ってなかったんです。
↓こちらは駅舎の脇です。

なんだか、テーマパークの入口みたいですね。
↓入ってみたら、エレベーターの乗り場があるだけでした。

↓「新津駅の歴史」。

そうそう。
新津には、油田があったんです。
その石油を運ぶため、鉄道網が発達したんですね。
しかし、昭和30年代の新津駅……。
「1日400本の列車が発着し、機関区には蒸気機関車60両、客車400両が待機する」ってのはすごいです。
そんな光景、見てみたかったです。
↓奇っ怪なモニュメント。

↓題名は「地球を縫う 新津」。

わたしには、抽象芸術が理解できません。
↓駅舎の2階から。

↓雨漏りするんでしょうか?

ちと情けない光景。
駅は街の顔です。
こういうところは、極力見せないでいただきたいものです。
↓かつての鉄道の要衝の名残が、少し想像できます。

↓駅構内の連絡通路。

↓人があんまり通らないことを物語ってます。

ダンスは、高校の部活でしょうか?
新潟の冬は、戸外では練習場所が見つけにくいのでしょう。
↓通路の反対側を撮りました。

見事に人がいませんね。
メインの連絡通路なんですよ。
ていうか、通路はこれしかないと思います。
時間は、朝の9時3分。
日曜日だからでしょうが。
駅舎に戻りましたが……。
まだ時間があります。
駅の反対側に出てみることにしました。
↓こちら側にも、動輪が置かれてました。

↓説明板です。

直径1.6メートル。
5ナンバーの自動車の横幅くらいあります。
さっきのより大きいですね。
↓駅舎は、表側と同じ顔ですね。

一件、大きな駅に見えます。
↓でも、ほぼ看板建築みたいなつくり。

駅の表と裏が、シンメトリーになってるのがわかります。
両側に薄っぺらな顔があって、その間は通路が繋がってるだけ。
かつての鉄道の要衝だった駅の、面目を保つための造りなのでしょうか。
↓こちら側は完全に住宅街です。

↓これは良い形のケヤキでした。

↓さて、そろそろ改札を入りましょうか。

おっと、その前に……。
今回の旅のお供をご紹介しましょう。
え?
単独旅行じゃないのかって。
いえいえ。
いつもの相棒です。
↓こちら。

2017年『単独旅行記Ⅳ』では、『松戸市立博物館』を訪ねました。
そこのミュージアムショップで買った「埴輪キーホルダー(350円)」です。
デザインは、馬と人の2種類ありました。

↑『松戸市立博物館』の「オリジナルグッズ一覧」のページ(こちら)から。
わたしは両方買って……。
馬は、母のお土産にしました。
わたしも馬の方がほしかったのですが……。
人は、母の好みの顔じゃないと思ったので。
ま、残り物には福があると云いますし。
でも現在、人の方は売り切れのようですね。
人気があるんでしょうか。
この顔でね。
あ、不人気だから生産が少なかったのかも。
で、売り切れ後は、追加生産なしってことか。
ま、仕方ないですね。
この翌年以降、旅のお供をしてもらってます。
埴輪だから、ハーさんと呼ぶことにしました。
さてさて、写真も撮ったし、ハーさんには鞄に戻ってもらいましょう。
と、そのときでした!
「ロ~ンブロゾ~」
脳内に声が響きました。
な、ななんじゃこの声は?
「な~にが、残り物や」
???。
「この顔で?
不人気だから生産が少ない?
失敬千万!」
だ、誰?
あたりを見回しますが、誰もいません。
「何をキョロキョロしておる。
目の前におろうが」
目の前って……。
こいつ?

ハ「誰が“こいつ”や」
み「ひ、人の心が読めるのか!」
ハ「そうやない。
声を出さずに会話が出来るということや」
み「どう違う?」
ハ「深く考えるな!」
み「しかし……。
松戸の埴輪が、なんで関西弁なんだ?」
ハ「深く考えるなというに!
物事を、ありのままに受け入れるのが、はじめの一歩や」
み「受け入れ難い」
ハ「ロ~ンブロゾ~!」
み「そもそも、それがおかしいではないか。
黄金バットの宿敵、ナゾーのセリフだろ。
あの、ソロバン玉みたいなのに入った」
ハ「ソロバン玉ではないわ!
空飛ぶ円盤や」
み「だからなんで、ナゾーなのだ?」
ハ「それは謎です」
み「出発前から、頭がおかしくなったのかもしれん」
ハ「もともとだろ」
み「捨てていくかな」
ハ「くぉら!」
み「こんな人形と話をしてるとこを見られたら……。
即、119番通報されるわい」
ハ「確かに、顔を合わせてると、声が出てしまうかもな。
鞄にしまってもよいぞ。
お主の目を通して、景色も見えるし」
み「なんでそんなことが出来るんじゃ?」
ハ「ロ~ンブロゾ~!
聞くな!」
み「そもそも……。
“ロ~ンブロゾ~”って、どういう意味よ?」
ハ「ナゾーの本名が、ロンブロゾ・ナゾーなんや」
み「は?
そしたら、自分の名前を名乗りながら出てくるってわけ?」
ハ「そうやろ」
み「おかしいじゃないの。
もし、和義という名前なら……。
“か~ずよし~”とか言いながら出るわけ?
ただのアホじゃ」
ハ「ごちゃごちゃ言うな!」
み「そもそも、おまえはナゾーじゃないじゃろ。
“ハ~ニ~ワ”とか言うべきじゃないの」
ハ「そんなアホなことが言えるか!
早く、腹の袋にしまえ」
み「腹の袋ってなんじゃ?
わたしはカンガルーじゃないぞ」
ハ「腹に巻いてるやないか」
み「これは、ウエストポーチ!
“腹の袋”って、いつの時代の人間じゃ」
ハ「うるさい!
早くしまえと言うに。
ほら、人が集まってきたぞ」
み「う?
パフォーマーと間違えられてるかも。
あ、すみません。
通して下さい。
見世物じゃないんで」
ハ「立派な見世物や」
み「うるさいというに」
ハ「だから!
声を出すなと言っとるやろ。
頭の中で会話するんや」
み「あーうるさい。
あんまり話しかけるな」
ハーさんをウエストポーチに突っこみ、改札を通ります。
3番線ホームに降り立ちました。

み「げ!
もう、入線してる!
バカの相手をさせられて、入線を見逃してしまったではないか!」
ハ「誰がバカじゃ。
しかし、妙に洒落た列車ではないか?
水戸岡鋭治か?」
み「違うと思うぞ。
しかし、この列車の名前を知らんとは……。
お主、ド素人じゃな」
ハ「やかましわ。
ここは、列車の最後尾やろ。
前に回れ。
ずばり、言い当ててくれる」
み「うるさいやつ。
それじゃ、前に行ってやる」

み「あ、アルファベットで書いてある。
読むなよ」
ハ「ポーチを揺らすな!
そもそも、ポーチを揺らしても無駄やぞ。
おぬしの目を通して見てるんやからな」
み「それじゃ、これならどうじゃ」
ハ「頭を振るな!
バカと思われるぞ。
見ろ、子供が後ずさりしてるやないか」
み「はあ、はあ。
結構長いな」
ハ「運動不足や」
み「おまえに言われたくないわ。
ほら、見えたぞ」
ハ「SLやないか。
さすがド田舎。
まだこんなのが走ってるんや」
み「バカタレ!
観光列車に決まってるわい」
ハ「わざとや。
知らんわけないやろ。
これは、『SLばんえつ物語』やないか。
しかし、お主にこういう趣味があるとは知らなんだ」
み「別に趣味で乗りに来たのではないわ」
ハ「ならなんでや?
高速バスの方が早いやろ」
み「確かに所要時間では、高速バスの圧勝じゃ」
ハ「なぜ乗らん?
バス酔いか?」
み「バス酔いしたのは、小学生までじゃ。
良いか。
いくら所要時間が短くても……。
ちょうど良い時間に走ってくれなくてはなんにもならん。
見よ、これが時刻表だ」

↑新潟交通さんのページから転載させていただきました(クリックすると、大きい画像が見られます)。
ハ「あるではないか。
『万代シテイバスセンター』発、11:45。
『若松駅前』着、13:41。
確か、『ばんえつ物語』の『会津若松駅』着も……。
同じころではないか?」
み「13:35着じゃ」
ハ「ほれみろ。
なんでバスにしない」
み「よく見んかい。
上の方に、
“赤背景の一部便を、当面の間運休しております”と書いてある」
ハ「げげ」
み「すなわち!
現在、11:45分発と14:25分発は運行してない。
運行されてるのは、始発と最終便だけじゃ。
18:45分発の最終は論外。
となると、7:10分の始発だけ。
いくらなんでも早すぎじゃ」
ハ「毎朝3時に起きてるんじゃないのか」
み「それは平日。
今日は日曜だ。
前夜は酒を飲まねばならんではないか」
ハ「そっち優先かい!」
み「ということで、高速バスは消去。
残るはJRの磐越西線ということになる。
この時点でわたしは、『快速あがの』にしようと思ってた。
しかし……。
時刻表に載ってなかった。
そんなバナナ」
ハ「古る!」
み「つい最近まで、走ってるのを見てたんじゃ。
『新潟駅』まで乗り入れてたから。
で、調べて見たら……。
なんと!
2022年3月12日のダイヤ改正をもって廃止となってた。
む、無念……」
ハ「ありゃまあ」
み「『快速あがの』には、いい時間のがあったのよ。
あんまり残念だったので、手元にあった2020年3月号の時刻表を控えてある」

ハ「時刻表、毎月買ってるのか?」
み「まさか。
2020年までは、年1回、春のダイヤ改正が載る3月号だけ買ってた。
旅行の計画を立てるときは、なぜか紙の時刻表を見たくなるのじゃ」
ハ「鉄の端くれやな」
み「まあな。
でも、2021年以降は、コロナで旅行に行けそうもなかったので……。
買ってない。
で、だ。
その2020年3月号の時刻表によると『快速あがの』は……。
『新潟駅』発が、8:25。
『会津若松駅』着が、10:46分。
終点の『郡山駅』でも、12:12分じゃ」

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ハ「完璧やな」
み「じゃろ。
なんで廃止するかね」
ハ「早い話……。
新潟から会津若松まで、通しで乗る客がいなくなったんやないか?」
み「あ、そうか。
以前は、東日本大震災で新潟に避難してた人が……。
福島と行き来する用事があったわけだ。
しかし、震災から10年以上経って……。
その需要も少なくなった」
ハ「でも、しょせん快速やろ。
特急や急行じゃあるまいし……。
鈍行とさほど違わないんちゃう?」
み「鈍行って……。
国鉄か。
そもそも、急行列車は、今どこにも走っておらん」
ハ「だーから、普通列車はどうなんや。
会津若松までの直行便がなくなったとか?」
み「いや、あるにはある。
ある程度、ちょうどいいのはある。
新津駅、9:32分発」
ハ「会津若松駅着は?」
み「12:00ジャスト」
ハ「これでいいではないか」
み「いいことはいいのじゃが……。
この時刻表を見てて、その後の便に目がいってしもうた」
ハ「それが『ばんえつ物語』か」
み「左様じゃ。
鉄道の旅では、時間もさることながら……。
座席問題も重要じゃ。
普通列車に乗って、座れなければ話にならん。
ロングシートだけってことはないと思うけど……。
ボックスシートは限られてるはず。
たとえ座れたとしても、通路側じゃ残念すぎる。
写真が撮れない。
しかも、ぜったい進行方向を向いて座りたい。
出来れば、わたしの目の前の席には、誰も座らないでほしい」
ハ「普通列車で、そんなわがままが通用するかい」
み「だからじゃ。
SL『ばんえつ物語』は、全席座席指定。
しかも!
一般車両は、向かい合わせのボックスシートじゃが……。
グリーン車は、進行方向を向いた3列シート。
すなわち、片側は1列。
隣に誰か座ることもないのじゃ」
ハ「隣に誰が座ろうと、自分のしたいようにすればいいやろ。
迷惑さえかけんかったら」
み「わたしは、外面(そとづら)がいいのじゃ。
人前で、いけずな態度はとれん。
ボックスシートで最悪なのは……。
3人連れのおばちゃんと、同じボックスに入れられること。
『ばんえつ物語』は、人気列車だから……。
3人組と1人を組み合わせてボックスを埋めるという可能性はある。
で、おしゃべりな3人組と一緒になったら……。
いろいろと根掘り葉掘り聞かれるじゃろ。
この歳でひとり旅とは、夫婦げんかでもしたのかと聞かれるかも知れん。
独身だなどと答えたら……。
火に油じゃ。
ヘタすれば、相手まで紹介されかねん。
写真なんか撮ってるヒマ、ないではないか。
ハ「話しながらでも撮れるやろ」
み「パカモン。
手には、勧められた冷凍ミカンを持たされておる」
ハ「いつの時代の話や。
車両に冷房がなかったころの売り物やろ」
み「とにかく!
そういうリスクもあるということ。
旅にやり直しはきかないのじゃ。
リスクは、徹底的に排除すべき」
ハ「その割には、高速バスの延着を見こんでなかったり……。
鉄道で、乗り換え時間1分の計画を立てたり……。
20年前の地図で東京を歩いたりしてたのではないか?」
み「すべてにおいて完璧にはできんわ」
ハ「最初からクリアしておけるリスクではないか」
み「とにかく!
1人掛けであれば、冷凍ミカンの危険から逃れられるのじゃ。
ほら、頭が見えたぞ」

ハ「頭って……」
み「さっそく人が群がっておる。
わたしも前に回って撮らねば。
なんと!
人の後ろ頭しか撮れん。
わたしは、SLの頭を撮りたいんじゃ。
よし。
念力じゃ。
人の頭よ、低くなれぇ~」
ハ「なるかい」
み「なった!」

ハ「うそやろ」
み「次は横じゃ。
見よ!
がら空きじゃ」

ハ「念力というより、怨念やな」
み「次、客車!」

み「絶好調じゃ。
やっぱ、運転席も」

ハ「うろうろすな!
目が回る」
み「駅弁を売っとる!」

み「買わないけど」
ハ「途中で買えんかも知れんで」
み「お昼は食べないからいいの」
ハ「わしは食べたい」
み「どうやって食べる気じゃ。
フェルトの口で」
ハ「お主が食べれば、わしにも味がわかるんや」
み「寄生虫か。
次、客車の窓!」

み「一般車両はこのとおり、四人掛けのボックスシートじゃ」
ハ「テーブルもあって、便利ではないか」
み「4人組ならな。
冷凍ミカンの恐怖が蘇るわい、
先を急ぐぞ」
ハ「まだ時間は十分あるやろ」
み「なぜか気が急く。
乗り遅れそうな気がする」
ハ「小心者が」
み「ほら来たぞ。
わたしの乗る7号車。
貴賓室じゃ」

ハ「グリーン車やろ」
み「ほれ、進行方向を向いた、3列シートじゃろ」

ハ「景色が写りこんで、ほとんど見えんわ」
み「乗ればわかる。
そしてこのグリーン車の最後尾には……。
これなわけよ」

ハ「最初に見たやつやな」
み「この展望室、グリーン車の乗客しか入れんのじゃ。
恐れ入ったか」
ハ「しかし、いくら違うんや。
一般車とグリーン車」
み「よーく聞けよ。
普通車の指定席は、530円」
ハ「安す!」
み「それに対し、グリーン車は……。
1,700円もするのじゃ!」
ハ「……。
それって、高いという認識か?」
み「あたりまえだろ。
3.2倍なんじゃ。
ホテル代で比べてみ。
普通車を、5,000円のシングルルームとする。
となると、その3.2倍じゃから……。
なんと!
16,000円のデラックスルームとなるのじゃ」
ハ「そんなルームがあるか。
この場合、倍数ではなく引き算で考えるべきやろ。
1,700円-530円。
つまり、1,170円しか違わんやないか。
しかし……。
安いな。
乗車券はいくらや?」
み「1,980円じゃ」
ハ「てことは乗車券と合わせて、普通車が2,510円か。
グリーン車でも、3,680円やないけ」
み「快速だからな。
そもそも、特急券がいらんわけじゃ。
これで、3時間半も乗ってられるのじゃ。
1分あたり、17.5円」
ハ「いらんわ、そんな換算」
み「ちょっくら、展望室を覗いてみるべ」

ハ「やけにシンプルやないか」
水戸岡鋭治やないな。
あの行灯みたいなのは、椅子か?
尻が痛くなるやろ」
み「ここに長時間座りこめんようにしてるんじゃろ」
ハ「プロの鉄は、座布団持って来たりして」
み「そういう輩は……。
桃太郎侍の格好をした車掌が、後ろから袈裟切りに成敗する」
ハ「するかい」
み「格好いいロゴじゃ」

ハ「しかし、“EXPRESS”ってのはどうなんや?
バスより遅いやろ」
み「快速じゃろ。
普通列車より速ければ、立派な“EXPRESS”じゃ」
ハ「会津若松まで、何時間かかるんやった?」
み「新津駅発が、10:03分。
会津若松駅着が、13:35分。
3時間32分じゃな」
ハ「さっき言ってた普通列車は?
ほれ、新津駅発が、9:32分のやつ」
み「会津若松駅着が、12時ジャスト」
ハ「所要時間は?」
み「えーと、2時間28分じゃ」
ハ「おかしいやないけ。
『ばんえつ物語』より、1時間以上早く着くぞ。
鈍行より1時間以上も遅いのが、なんで“EXPRESS”なんや?」
み「各駅停車じゃないからじゃ」
ハ「各駅停車より遅くてもか?」
み「腐っても鯛」
ハ「例えが悪いやろ」
み「乗りこむぞ」
グリーン車の入口には、車掌さんが立ってます。
この車掌さんにグリーン券を見せないと、グリーン車には入れません。
車掌さんを正面から撮るのは失礼なので、入口部分の写真はなしです。
ハ「車掌さん、丁寧やったな」
み「気持ちいいのぅ。
特権意識をくすぐられるわい」
ハ「たった、1,700円のグリーン券なのにな」
み「やかまし。
見よ、貴賓室入り口じゃ」
ハ「グリーン車だろ。
しかし、ガラガラやないか」
み「まだ、発車まで30分もあるからな。
グリーン車の乗客は、発車前に悠然と乗車するんじゃろ」
ハ「悠然としてないのが、ここにひとりおるがな」
み「うるさい。
よし、これなら写真が撮れそうじゃ。
でも、前からだと顔が写るから、加工がやっかいになる。
展望室から撮ろう」
通路を突っ切り、最後尾の展望車に移動。
み「よし。
誰も後ろを見てないな」
パチリ」

ハ「レトロ調やな」
み「ゴテゴテしないレトロが落ち着くではないか。
車両に組子細工は必要ない」
ハ「また、水戸岡鋭治批判か」
み「批判ではないわ。
好みの問題じゃ。
さらに踏みこんで、パチリ」

み「よし。
この空きようなら、ほかの車両内部も撮れそうじゃ。
今のうちに撮っておこう。
いざ、庶民たちの普通車へ」
ハ「庶民が余計や」
隣の6号車に移ります。
一両すべて、普通車指定席になります。
み「空いとるな」
ハ「ていうか、ガラガラやないけ」
み「普通車も座席指定だからな。
席取りの必要がないからじゃろ」
ハ「発車間際に悠然と乗って来るわけか?」
み「違うわ。
たぶん、写真を撮ってるんじゃろ。
機関車とか、ほかの車両とかの。
よし、おかげで真っ正面から撮れる。
パチリ」

み「発車まで、まだ30分近くあるな。
もっと先まで行くぞ」
5号車に移ります。
こちらも、後部は普通車指定席です。
でも、前方部は違ってます。
み「あ、売店がある」
ハ「ビール、買うてくれ」
み「まだ早いわ」
ハ「写真、撮らんのか?」
み「売店のお姉さんが写ってしまう」
ハ「かまへんやろ」
み「恥ずかしいではないか」
ハ「何で撮る方が恥ずかしがるんや」
み「シャイですから」
ハ「わからんやっちゃ」
てなわけで、わたしが撮った売店の写真はありませんので……。
↓JRグループの『トレたび』さんのサイトから拝借しました(こちらのページです)。

み「次、4号車。
ここは展望車両じゃ。
空いとる」

ハ「当たり前や。
発車してないのに、展望席に座ってどうする」
み「お。
ポストがある」

み「出せるんじゃろか?」
ハ「出せるやろ。
出せませんって注意書きはないぞ。
しかし、出すヤツがおるんかな?」
み「読めたぞ」
ハ「何がや?」
み「さっきの売店で、絵はがきを売ってるに違いない。
で、この展望車両で書くんじゃろ」
ハ「ここでか。
書きにくそうや」
み「♪文字のみだれ~は線路の軋み」
ハ「♪愛の迷い~じゃないですか」
み「こんな葉書、ここで書いてる女がいたら……。
不気味じゃろうな」
ハ「次、3号車」
み「もういいわ。
あとは普通車両じゃ」
と思ったのですが、1号車は「オコジョ展望車両」でした。
見なくて残念と思ったのですが……。
『ばんえつ物語』の写真を見ると、キッズルームでした(こちらのページから拝借)。

乗車時間3時間32分ですから……。
窓外の景色だけじゃ、退屈するお子さんもいるでしょうからね。
ま、でも、これなら見なくても良かったです。
しかし、何で「オコジョ」?
ハ「まだ時間あるやろ」
み「今、9時37分だから……。
あと26分ある」
ハ「車内にいるんやから……。
乗り遅れる心配もいらんやないか」
み「トイレに行きたくなった」
ハ「子供か!
トイレなら、車内にもあるやないか。
まさか、停まってるから使えないとでも?
今のトイレは、垂れ流しやないから……。
停まってても使えるはずやで」
み「男女共用じゃろ」
ハ「そらそやろ」
み「そういうところは、入りにくい」
ハ「なんでや?」
み「とにかく!
改札抜けたところにあったトイレに行く」
ハ「難儀なやっちゃ」
地上ホームから、改札のある2階に上がります。
み「ほら、こんな綺麗なトイレがある」

ハ「早くしてこい」
み「おまえは、どこかに置いていくかな」
ハ「すな!
盗られたらどうする」
み「誰が盗るんじゃ、こんなもの」
ハ「こんなものとはなんや!」
み「でも、猫が咥えていくかもしれんしな。
連れて行くけど、見るなよ」
ハ「見るかい」
中も、十分に綺麗でした。
み「あー、すっきりした」
ハ「早かったな。
小、やな」
み「当たり前だ。
大は家で出し切って来た」
ハ「いちいち言わんでよろし」
み「今、9時41分。
まだまだ余裕じゃな。
もう一回、してくるかな」
ハ「ええ加減にせい」
み「冗談じゃ。
あ、やっぱり空いてるんじゃん」

ハ「土曜日なのにな。
なかなか切符の取れん列車やなかったのか?」