2016.3.11(金)
「ほんと、あなたって、思いがけないボリュームよね」
「ヒドいわ」
「あら、褒めてるのよ。
その裸を見たら、今日の客、みんなおっ勃てるわよ」
わたしの脳裏に一瞬、今日のツアー客の前で裸になる自分が浮かんだ。
乳首がうずくのを感じた。
それを振り切るように、ナース服を拾いあげた。
薄い水色のワンピースだ。
袖を通し、壁際の姿見の前に立つ。
ブラとショーツは白だが、やっぱり透けてる。
鏡に背中を向け、後ろを確認する。
その姿勢なら、ショーツのラインは見えないが……。
かがんだりすれば、出てしまうだろう。
「オッケー、オッケー。
エロいエロい」
「病院じゃ、とてもこの格好は出来ません」
「もったいないわ。
帽子は?」
「そんなの被ってる病院、今どき無いですよ」
「あら、そうなの?」
「看護学校の戴帽式で被ったっきりです」
「それじゃ、仕方ないわね。
でも十分、ナースに見えるからいいわ。
やっぱり、本物は違う。
一点、本物を入れとくと……。
ほかがウソでも騙せるものよ」
「騙すんですか?」
「いい意味でよ。
詐欺を働くわけじゃないの。
お客は、お金を払ってるんですからね。
気持よく騙してあげないと。
あなたもナースなら知ってるでしょ。
プラシーボってやつ」
「はい。
プラシーボの語源は、“喜ばせる”だそうです」
「それそれ。
あ、佳代ちゃん、出てきた」
トイレから出てきた佳代ちゃんが、わたしの元に駆け寄ってきた。
「美鈴さん、素敵です。
やっぱり、本物は違いますね」
「ほら、プラシーボ、第1号」
佳代ちゃんは、慌ただしく視線を上下させながら、わたしの姿を上から下まで見つめた。
こういうのを、“矯めつ眇めつ”と云うのだろう。
「さ、行くわよ。
佳代ちゃん、資料持って。
美鈴ちゃんは、聴診器とか、小道具を忘れないように」
「はい」
「ヒドいわ」
「あら、褒めてるのよ。
その裸を見たら、今日の客、みんなおっ勃てるわよ」
わたしの脳裏に一瞬、今日のツアー客の前で裸になる自分が浮かんだ。
乳首がうずくのを感じた。
それを振り切るように、ナース服を拾いあげた。
薄い水色のワンピースだ。
袖を通し、壁際の姿見の前に立つ。
ブラとショーツは白だが、やっぱり透けてる。
鏡に背中を向け、後ろを確認する。
その姿勢なら、ショーツのラインは見えないが……。
かがんだりすれば、出てしまうだろう。
「オッケー、オッケー。
エロいエロい」
「病院じゃ、とてもこの格好は出来ません」
「もったいないわ。
帽子は?」
「そんなの被ってる病院、今どき無いですよ」
「あら、そうなの?」
「看護学校の戴帽式で被ったっきりです」
「それじゃ、仕方ないわね。
でも十分、ナースに見えるからいいわ。
やっぱり、本物は違う。
一点、本物を入れとくと……。
ほかがウソでも騙せるものよ」
「騙すんですか?」
「いい意味でよ。
詐欺を働くわけじゃないの。
お客は、お金を払ってるんですからね。
気持よく騙してあげないと。
あなたもナースなら知ってるでしょ。
プラシーボってやつ」
「はい。
プラシーボの語源は、“喜ばせる”だそうです」
「それそれ。
あ、佳代ちゃん、出てきた」
トイレから出てきた佳代ちゃんが、わたしの元に駆け寄ってきた。
「美鈴さん、素敵です。
やっぱり、本物は違いますね」
「ほら、プラシーボ、第1号」
佳代ちゃんは、慌ただしく視線を上下させながら、わたしの姿を上から下まで見つめた。
こういうのを、“矯めつ眇めつ”と云うのだろう。
「さ、行くわよ。
佳代ちゃん、資料持って。
美鈴ちゃんは、聴診器とか、小道具を忘れないように」
「はい」
コメント一覧
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1. Mikiko- 2016/03/11 07:42
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プラシーボ効果
偽薬効果とも云います。
偽の薬でも、本物と信じて飲むと症状に改善がみられることですね。
この改善は、自覚症状だけではなく、客観的に測定可能な数値にも及びます。
まさに、「病は気から」です。
話は変わります。
本日、東日本大震災から、5年となりました。
もう、5年なんですね。
わたしは、会社のデスクにいました。
激しい揺れではなく、緩やかな横揺れが長時間続きました。
船酔いしそうな揺れでした。
あんな揺れは、あのとき以外、経験したことがありません。
わたしは、“もう”と感じましたが……。
被災者の方は、“まだ”と感じておられることでしょう。
復興は、ようとして進みません。
まだ、仮設住宅を出られない方も多くおられます。
最近では、仮設住宅の老朽化も問題になり始めてるようです。
プレハブの仮設住宅は、5年も使われることを想定してないんだそうです。
今朝、新潟は再び、薄っすらと雪化粧しました。
5年前も寒かったことを思い出します。
津波に飲まれた人たちは、どんなに冷たく怖かったことでしょう。
合掌。
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2. コーナン帽HQ- 2016/03/11 12:34
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戴帽式
われはここに集いたる人々の前に厳かに神に誓わん
わが生涯を清く過ごし、わが任務を忠実に尽くさんことを
(ナイチンゲール誓詞)
>プラシーボの語源は、“喜ばせる”
へええ、これは知りませんでした。
“騙す”だと思ってた。
>矯(た)めつ眇(すが)めつ
また古風な言い回しですな。
わたし好きです、古風で大仰な言い回し。
ただし、下手に使うと文脈の中で浮き上がってしましますので、ごちうい。
震災丸5年。
わたしはトイレで座っていましたが、生まれて初めてといっていい、気味悪い揺れ方でした。
阪神淡路の揺れ方も凄かったけど、あれはまあ妙な言い方ですが、直球と云いますか、デカいが分かりやすい揺れでした。
東日本の揺れは、地震とは思わなかったくらいでした。
で、こんな言い方をすると叱られるかもしれませんが、阪神淡路はこちらでは「そんなことあったねえ」という風になってきています。つまり、記憶の風化が進んでいるわけです。阪神間や淡路島の復興はずいぶん進みました。これが風化を促進しているのかもしれません。
東日本の現状は、記憶の風化など到底あり得ないほど厳しいようです。
阪神と東日本。
その復興に、大きな差異があるように思えてなりません。
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3. Mikiko- 2016/03/11 19:51
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トイレは……
一番安全な場所です。
狭くて、壁に囲まれてますからね。
慌てて飛び出さず、座っておられたのは懸命です。
閉じ込められても、タンクに水がありますから、しばらくは生きられるでしょう。
東日本大震災の復興が遅れてるのは、原発事故と津波のせいです。
原発は言わずもがなですが……。
津波は、元いたところで復興することを不可能にしました。
高台に移転したり、土地を嵩上げすることから始めなくちゃならなくなった。
阪神は、原発も津波も無かったから、早く復興できたんだと思います。
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4. よしもと新喜劇HQ- 2016/03/12 00:07
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今日のNHKは……
震災ネタ一色でした。
慌てず飛び出さなかった……わけではありません。あまりの異様さに凝固していたんです。
原発に津波。
確かに、阪神淡路ではどちらも無かったですね。
南海・東南海が起こると津波は間違いなく来ますが、原発はありませんからねえ。
原発と云いますと、高浜が運転停止になりましたので、関電の電気料金の値下げが無くなりました(たぶん)。電力自由化で、さあどうなる、ですがさすが関西人。「なにそれ?」というお方の多いこと。
東日本は「まだ5年」ですが、阪神淡路は「もう21年」。風化が進むのは致し方のないところ、でしょうか。
関西人だなあ。
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5. Mikiko- 2016/03/12 08:41
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地震などのとき……
過激な運動反射を起こす人と、逆に凝固してしまう人、2種類に別れるようです。
前者の場合、ベッドから落ちたり、階段から転落したりして、大怪我をする危険もあります。
では、じっとしてるのが常にいいかというと、そうではありません。
津波が想定されるときには、一刻の猶予もありません。
すぐさま家を飛び出し、一心不乱で高台を目指しましょう。
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6. 起こしてやらんぞHQ- 2016/03/12 10:09
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わたしの甥っ子は……
阪神淡路の時、全く気付かずに寝こけていたそうです。
高校生だったから無理なかったかもしれませんが、しかしまあ……。
津波が来たら絶対に助からないタイプですね。