Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
ウルトラウーマン(19)
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「ウルトラウーマン」作:八十八十郎(はちじゅうはちじゅうろう)


(19)現地本部到着~意外な同好の士


 窓ガラスの外はひどい砂埃だった。
「では着地します!!」
 軍用ヘリの操縦士は、プロペラ音に声がかき消されないように大きな声を出した。
「着地ですよ! 目加田さん起きてください!」
「んが!!」
「いや、んがっじゃなくて。まったくもう……」
 小林隊長は呆れた表情を後部座席の矢野彩香に向けた。
 彩香は肩をすくめて苦笑いを返す。
「あなたが出口の前に座ってるんだから、さあ起きて!!」
 小林は口を開けて寝ている目加田恵子の肩を両手で揺さぶった。
 身体にフィットした防災Tシャツの胸のふくらみがゆさゆさと揺れる。
「んん……着いたの?」
「全く大きなおっぱいなんだから………、よくこの揺れと騒音の中で眠れるもんだ。もう着地ですよ! さあ目を覚まして!!」
 そう小林が大声を出した途端、着地の衝撃が3人の身体を揺るがした。

 ヘリから降り立った小林正二隊長と目加田恵子は、中に残った矢野彩香を見上げた。
「さらに奥地へ向かうんですね。矢野さん、どうかくれぐれも気を付けて」
「わかってます」
 彩香は人懐こい笑みを浮かべて頷く。
 もうヘリはエンジンを止めて、普通の会話が十分成り立つ状態だった。
「現地に詳しい知人もいるから、そんなに手間取らないかもしれないわよ」
 小林の表情が輝いた。
「そう願ってます。そして、目的を達したら私たちには構わず特捜隊に連絡して日本に帰ってください」
「了解。じゃあ次に会うのは、そうね………また五反田の居酒屋にしましょうか」
「あははは、そう、それがいいわ」
 目加田恵子が笑い声をあげて、小林も大きく頷く。
「小林隊長ですね?」
 背中の声に小林は振り返った。
「現地指令本部のものです。地球防衛本部から担当者がお見えです。どうぞこちらへ」
「わかりました」
 そう返事をして小林は再び彩香を見上げる。
「じゃ矢野さん、私たちはこれで……」
「彩香ちゃん、遅れたら先に生ビールで始めとくからね」
 頷く彩香の前でヘリのドアが閉まった。
 再びゆっくりとプロペラが回り始める。
 巻き起こる砂埃を避けて、二人は防災本部へと急いだ。
 プロペラの旋回音が上昇し始めて、二人は後ろを振り返った。
 上昇するヘリの窓の中で彩香が手を振っている。
 小林と目加田恵子は徐々に小さくなるその顔に敬礼を送った。

 前室を抜けて指令室に足を踏み入れた途端、二人は壁を覆いつくした様々な機械に取り囲まれた。
 4,5名の武装した警護の姿が見える。
「胸、腰の後ろ、足、銃器は三か所。ナイフも2箇所以上は身に着けてる」
 出口を確かめるふりをして、恵子が後ろ向きに小さくつぶやく。
 小林隊長は身体が硬くなるのを覚えた。
「あちらが実行本部長です」
 部屋の中央に設置されたミーティングテーブルで二人の男が立ち上がった。
 一人は60歳前後と思われる男で、大柄で紳士然とした雰囲気はなかなか貫禄があった。
 もう一人は40代くらいの小柄な男で、神経質そうな眼鏡をかけている。
「爆破執行で着任しました、科学特捜隊の小林です」
「ご苦労様。作戦の指示と結果の確認を行う実行本部長の………」
 本部長と名乗った男は小林と恵子に名刺を渡す。
 素早く名刺に視線を落とした恵子が、黒縁眼鏡をずり上げた。
「(大河内電池漏)おお……こうち、……でんちもれ?」
「おいおい君!」
 横の小柄な男が声を張り上げる。
「普通そんな名前があるもんですか!」
「だって普通この字を見たら、電池漏れって読んじゃいますよ」
「きみ! 本部長に向かってし、しししつ………」
「まあいいからいいから……。本部長の“おおこうち でんちろう”です」
「失礼しました、本部長。よろしくお願いします。それからあなた様は……?」
 すかさず頭を下げた小林は、まだ興奮で肩を上下させている小柄な男に顔を向けた。
「本部長副官の、島田正午です」
「あははは、なにこの当て字は。第一、東映と新国劇で所属が違うじゃないの」
 渡された名刺を見て恵子が笑い声を上げる。
「ちゃんとした私の名前だ! 君は一体誰なんだ!」
「市川雷蔵です」
「君こそ大映で所属が違う上に、第一性別が違うじゃないか!」
「あはは……」
 たまらず小林が間に割って入る。
「いい加減にしなさい、目加田さん。彼女はボランティアで私の助手をしてもらっている目加田恵子君です」
 本部長は大きく頷くと右手をミーティングテーブルに差し伸べた。
「まあこうしてても話は進まない。取り敢えずテーブルに就いて、ミーティングを始めようじゃないか」
「本部長のおっしゃるとおりです」
 小林は恵子に小さく頷くと、二人と対面するようにミーティングテーブルに就いたのである。

「ひと通り話は済んだが、最後に肝心の発射作業について説明しよう」
「お願いします」
 小林隊長は身を乗り出す様にして椅子に座り直した。
「ウルトラウーマンとゼットンが接触したら、速やかにその位置と状況を把握し、私が日本に緊急設置された地球防衛連合事務所に報告する。その段階ではもう発射装置はこのテーブルの上に準備されているはずだ」
「テーブルの上に……?」
 小林は戸惑った表情で本部長の顔を見た。
「発射装置は別のボックスに厳重に保管されている。今は君にも保管場所を教えるわけにはいかんが、地球防衛連合のゴーサインが出次第、ここに運び込み開封する。そして私の指示で、いよいよ君が発射ボタンを押すということになる」
「わかりました」
 小林の返事に本部長は頷いた。
「わかりましたが………」
「なんだ小林君? 何か疑問点があれば遠慮なく言ってくれ」
「私の作業はボタンを押すことだけなんですか………?」
「あ、ああ……」
 本部長の瞳が微かに揺らいだ。
「もちろんそれは、地球防衛に数々の実績を残してきた日本科学特捜隊が敬意を表されてのことだ。君はそう理解していたのではなかったのかね? それとも何か、別のことを深く考え過ぎていたとか………?」
「いいえ」
 小林は首を横に振った。
「本部長の説明を聞いて安心しました」
「そうか、それはよかった」
 本部長の顔がほころぶ。
「それはよかった……?」
「え、えへん!!」
 目加田恵子の口の中での小さなつぶやきを、小林は咳払いで打ち消した。
「ではもう大事な話は済んだが、もう少し君に伝えとくことがある。なに、仕事の話じゃないんだよ。もうリラックスして、コーヒーでも飲みながら聞いてくれたまえ。じゃあ島田君……」
 本部長は笑みを浮かべて目の前のコーヒーを二人にすすめた。

 島田副長は眼鏡を光らせながら口を開いた。
「まだゼットンはアメリカ、ウルトラウーマンは捜索中ということで、作戦実行には間があると思われます。しかし、いつでも作戦に対応できる準備をしておくのは当然の話です。ただ緊張を持続するのは難しく、その間のストレス緩和というのが重要な課題だと防衛本部の研究結果でも指摘されています」
 小林と目加田恵子は頷いた。
「仮設ではありますが、お二人には各々十分の広さを持った個室を用意してあります。
 空調、断熱、遮音は貴賓室なみ、食事は一流ホテルのシェフが栄養士指導のもとに腕を振るいます。さらに、本部に隣接してプール付き仮設ジムも設置しました」
 小林と恵子は思わず顔を見合わせた。
「大型液晶テレビに世界中の放送が受信でき、映画その他のDVDも完備しています。しかしそのう………」
 島田副官は大河内本部長の顔を窺った。
「いや大事なことだから」
 本部長は島田副官に頷いた。
「はい………、こういう組織ではなかなか人間の欲求すべてに応えるというのは難しく、外から人を呼ぶわけにもいきません。テレビの受信には様々な成人向けの内容も含まれ、それはDVDも同じです」
「ほう……」
 小林は驚きの表情を浮かべ、目加田恵子はテーブルの下で親指を立てた。
「つまり自分で処理しなさいってことね?」
「はは……まあそういうことになりますか……。もしご希望でなければ、その類は除きますが………」
「とんでもない、お願いします」
「それでは、わ……私も」
 満面に笑みを浮かべた恵子の横で、小林も照れくさげな笑みを浮かべた。
「わかりました。ついては今回特別に、その分野で本部長からも提供があります」
 手元のメモを見ながら島田副官は事務的な口調で続けた。

「ええっと何ですか…、衣さよこ特集?」
「何それ?」
 目加田恵子が怪訝な顔で言った。
「ちょっと待ってくださいよ、え~っと……、クールビューティーな伝説のタチ・衣さよこ特集?」
「え……!」
 小林の顔から照れ笑いが消えた。
「誰それ? 全然知らないけど」
 目加田恵子は両手を広げて肩をすくめた。
「内容は……と、一連の“トラレズ”シリーズ、隠れた名作“社長秘書”、その他作品の共演者には“森波つばさ”“原田ひかり”など、一期一会の希少競演で……う~ん印刷がかすれて読みにくいな、……こ……こくり……?」
「小栗恵子(おぐりけいこ)」
 思わずつぶやいた小林は、慌ててテーブルに視線を落とす。
「ああそうですか………、え?」
「こ、小林君!!」
 本部長は目を見開いた。
「き、きみは………」
 大河内本部長と小林隊長は無言のまま顔を見合わせていた。
 島田副長は不思議そうに二人の顔を交互に窺う。
「まあ何だか分かりませんが、これは大河内本部長の愛蔵品の提供です。どうします、これも含みますか?」
 小林は両ひざの上でこぶしを握り締めた。
「あ、あの……」
「もうみなまで言うな小林君! わかってるよ。島田副官、これもコピーを貸与してくれ」
「わかりました。ではお二人に一組ずつコピーを預けます」
 満面の笑みを浮かべて本部長は小林を見た。
「やあ人間ひょんなことから知己を得るものだね。小林君、君と僕とは戦友だ。作戦終了までそう長い期間ではないかもしれんが、楽しくなりそうだよ。あっははは……」
「本部長……」
 小林隊長は嬉しそうに本部長に頷いたのである。
ウルトラウーマン(18)目次ウルトラウーマン(20)

コメント一覧
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    • ––––––
      1. Mikiko
    • 2021/09/16 07:37
    • マニアックな人名解説
       今回、ほぼ何の説明もなく、かなりマニアックなパロディ人名が出て来ました。
       楽しんで書かれてるようで、嬉しくなってしまいます。
       一番嬉しいのは、コメントのネタをいただけたことです。
       ということで、しないでもいい解説をしてしまいます。
       今時点で、(20)以降の原稿はお預かりしてませんので……。
       ひょっとしたら、大変なフライングになってしまうかも知れません。
       ま、ご容赦いただきましょう。

      ●大河内電池漏
       わたしも目加田さんと同じく、「でんちもれ」と読んでました。
       本部長自らの「でんちろう」の名乗りで、ようやくパロであることがわかりました。
       もちろんこの元となる人名は、大河内傳次郎(おおこうちでんじろう)です。
       ↓Wiki(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%B2%B3%E5%86%85%E5%82%B3%E6%AC%A1%E9%83%8E)の解説です。
      +++
      ●大河内傳次郎(おおこうちでんじろう)【1898(明治31)年2月5日(戸籍上は3月5日)~1962(昭和37)年7月18日】
       日本の映画俳優。
       本名は大邊 男(おおべ ますお)。
       戦前を代表する時代劇スターの一人であり、阪東妻三郎、嵐寛寿郎、片岡千恵蔵、市川右太衛門、長谷川一夫とともに「時代劇六大スタア」と呼ばれた。
       サイレント期は、伊藤大輔監督・唐沢弘光撮影のトリオで『忠次旅日記』『新版大岡政談』などの名作を生んだ。
      +++

       続きは次のコメントで。

    • ––––––
      2. Mikiko
    • 2021/09/16 07:37
    • マニアックな人名解説(つづき)
       引用を続けます。

      +++
       悲愴(ひそう)感ただよう演技とスピード感あふれる殺陣で、従来の時代劇スターの定型を破り、人気を不動のものとした。
       当たり役は丹下左膳で、トーキー時代の作品では地元の豊前なまりで「シェイハタンゲ、ナハシャゼン(姓は丹下、名は左膳)」と言う決めゼリフで人気を得た。
       戦後は大物の助演者として活躍した。
       京都に大河内山荘を造営したことでも知られる。
      +++

       あの台詞まわしは、備前訛りだったんですね。
       おそらくですが……。
       無声映画時代は、セリフの上手いヘタ、声の善し悪し、訛りなどは……。
       俳優としての要件ではなかったのでしょう。
       ところが、トーキーではそうはいきません。
       ちなみに「トーキー」は、「トーキングピクチャー」の略。
       普通に、俳優が声を出してしゃべる映画のことです。
       あまりに台詞がヘタな人は、生き残れず……。
       弁士と一緒に失業してしまったんだと思います。
       しかし、大河内傳次郎は、ヘタな上に訛りまでありましたが……。
       逆にそれを強みとしたわけです。
       大河内傳次郎のモノマネが大流行したようです。
       子供まで、「シェイハタンゲ、ナハシャゼン」と唱えてたとか。
       しかし、この解説の中にも、また往年の名俳優の名前が出て来ます。
       阪東妻三郎、嵐寛寿郎、片岡千恵蔵、市川右太衛門、長谷川一夫。
       阪東妻三郎は、先日亡くなられた田村正和さんの父上。
       市川右太衛門は、北大路欣也さんの父上です。

       続きはさらに次のコメントで。

    • ––––––
      3. Mikiko
    • 2021/09/16 07:38
    • マニアックな人名解説(つづきのつづき)
      ●島田正午
       一瞬、推理作家の島田荘司のパロかと思いました。
       でも、目加田さんの「東映と新国劇で所属が違う」でわかりました。
       たしか、新国劇に島田という人がいました。
       検索したら、すぐにヒット。
       読みまで同じ、島田正吾でした。
       ↓Wiki(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B3%B6%E7%94%B0%E6%AD%A3%E5%90%BE)の解説です。
      +++
      ●島田正吾(しまだしょうご)【1905年(明治38)年12月13日 - 2004(平成16)年11月26日】
       新国劇の俳優。
       本名は、服部 喜久太郎〈はっとり きくたろう)。
       横浜に生まれるが、父の仕事の都合で関西に移る。
       1923(大正12)年に明星商業学校を中退後、澤田正二郎が率いる新国劇に入団。
       正二郎の急死後、辰巳柳太郎と共に主役級に抜擢され、1987(昭和62)年に新橋演舞場で劇団創立70周年記念公演をうけて劇団を解散するまで新国劇の大黒柱として活躍。
       辰巳とは「動の辰巳、静の島田」と好対照のライバルとして知られた。
      +++

       思いのほか、最近までご存命の方でした。
       享年、98。
       昔の俳優さんなんて、不摂生の極地だったと思うのですが……。
       長生きされたんですね。
       1994(平成7)年には、『十時半睡事件帖』で主演されてます(88歳9ヶ月)。
       これは、日本のテレビドラマ主演俳優の最高齢記録だそうです(ちなみに現在も記録は破られてません)。

       さらに後半には、興味深い女優(?)さんの名前が出て来ます。
       大方、どういう女優さんかは想像が付きますが。
       検索して解説しようかとも思いましたが……。
       こちらは、もろにフライングになってしまう怖れがあるので、遠慮しました。
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