Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
ウルトラウーマン(10)
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「ウルトラウーマン」作:八十八十郎(はちじゅうはちじゅうろう)


(10)小林隊長の奮闘


 随分日が長くなったとはいえ、もう東京の街にネオンが灯り始めた春の宵である。
 JR五反田駅近くの裏通りで、小林隊長は煤けた赤ちょうちんの暖簾をくぐった。
 土間から一段高くなった畳席に上がると店内を見渡す。
 美味いのか安いのか分からないが、店内は通勤帰りの客でけっこうな賑わいを見せていた。
 やがて一人の大柄な女性が小林に近づいてくる。
 年の頃は30前後か、革ジャンと黒のタンクトップにジーンズを履いて、金のネックレスではなく何故か数珠のようなものを首から下げていた。
 目鼻立ちもはっきりして美人なのだが、服装に似合わぬ真面目そうな黒縁眼鏡をかけている。

「小林さんですか?」
「ええそうです。ではあなたが……ま、まあどうぞ」
 小林隊長はテーブルの向かい側の座布団に手を差し伸べた。
「失礼します」
 女性が畳に上がろうとした途端、ごつんと床に響く鈍い音がした。
「あッ大丈夫ですか!?」
「も、もちろん大丈夫です!!」
 いやというほど向う脛を上がり框にぶつけたにもかかわらず、その女性は赤い顔で脛をさすりながら座布団に座った。
「科学特捜隊の小林です。どうぞよろしく……」
 周囲に聞こえないよう小声で名刺を差し出す。
「警察庁の目加田恵子です。よろしく」
 受け取った名刺を見て、小林は顔を上げた。
「あ、あの、ここには“秋山 楓”というお名前が……」
「ええそんな名前ですけど、業務の都合上、私は目加田恵子と名乗るようにしています」
「はあ………」
 小林はぼんやりとつぶやいた。
「そんなことより、まず一杯いきましょう。最初は生でいいですね。ちょっとおねえさあ~ん!」
 小林はどんどん注文する恵子に遠慮がちに口を開く。
「しかしこの店を選ばれたのには何か理由が? やはり賑やかな場所の方がかえって目立たないという……」
「は?」
 恵子はきょとんと目を見開いた。
「いえ、サービス券が沢山あったもので。今夜は生2杯ずつはタダですよ。あははは」
「はあ……なるほど………」
「やあ来た来た。では小林さん乾杯しましょう。かんぱ~い!!」
「あ、どうも……」
「ンング………プハ~! いやあ最高!! 最初の一杯のビールは、セックスのオーガズムにも負けないですね!」
 小林隊長は慌てて周りを見回したが、真後ろのうら若い女性には気が引けたものの、その他の酔客は誰もそんな話を気に留めている様子はなかった。

「しかし目加田さん、もう一人はまだ現れないですね」
「時間と場所はちゃんと伝えてあるはずなんですけど」
 恵子は黒縁眼鏡を片手で上げて周囲を見回した。
「その道では随分な凄腕だと伺ったんですが」
「ええ、公安の話では新宿で、いいえ東京の裏社会でもぴか一の才能なんだそうです」
「へええ……。疑う訳じゃありませんが、それは本当でしょうか。いや、日本の一大事がかかっているもので、私も少々神経質に……」
「ええ本当よ、多分いい線いってるんじゃない? あはは……」
 若い女の声が小林隊長の背中から聞こえてきた。

 慌てて小林が後ろを振り返ると、その女性も小林の方を振り返る。
「小林さんね。もう自己紹介はお聞きしました。私、矢野彩香っていうの」
 小首をかしげると肩まで触れないストレートの黒髪が揺れて、小林の鼻先に何とも言えない芳香が漂ってくる。
 まだ二十歳前後だろう、今時の小顔に愛くるしい目を輝かせた魅力的な容貌である。
「あ、どうも失礼しました。ではこちらのテーブルへ」
「ふふ、失礼します」
 彩香はテーブルの空いてる一辺にそのスリムな身を寄せた。
「へえ、凄腕ってどんな人かと思ったら、あなたすごく可愛いのね。ねえ、終わったら一緒に二次会行きましょうよ」
「あら、警部補さん、何か匂うわね。アクション系の強い女性は魅力的だけど、あたし仕事以外ではやらないのよ」
「あの、ではそろそろ打合せの方を……」
 二人の会話で股間に微かな変化を覚えながら小林は言った。
「でも、あたしにはまだビールがな~い」
「あそうだそうだ。じゃもう一回3人で乾杯しよう! ちょっとお姉さ~ん、生ひとつ追加して!!」
 再び股間が平常に戻るのを感じながら、小林は力なくビールを口に運んだのである。

 もう酔いが回ってうつろな眼差しになりながら、小林隊長は二人の女性を交互に見ながら言った。
「ヒック……いいれすね、ということで二人には協力して現地に潜入してもらいます」
「で、私が飛鳥隊員の捜索と彩香ちゃんの護衛」
「あたしは飛鳥隊員に探知機能のセットね」
「そうれす。ヒック、飛鳥隊員の確保まで出来ればいいのですが、現地の治安を乱すようなら無理は厳禁です。いいれすね? ……ヒック……ああッと!!」
「ああもう、だめじゃん!」
 小林が目の前のお湯割りのコップを倒して、彩香は慌ててテーブルにお絞りをかぶせる。
 目加田恵子はぐうっと日本酒のコップを空けた。
「もう小林隊長ったらお酒弱いんだから、やんなっちゃう……。打合せはそれだけでしたら、私はこの辺で帰ります」
 小林は片手を上げて立ち上がろうとする恵子と彩香を制した。
「最後にヒック……、探知機能のセットに使用する装置を技術研究室で製作中です。もう最終テストの段階らしいので、完成次第また連絡します。ヒック、え~とそれから………」
「それから?」
 二人は小林の顔を覗き込む。
「そ、それから………うっぷ……ちょっと気分が……ト、トイレに………」
「わ! いやだ」
「ばっちい、ばっちい。早く帰ろう」
 そう言って後ずさりすると、目加田恵子と矢野彩香は泥酔した小林隊長を残して店を後にしたのであった。


 ようやく二日酔いが癒えた小林隊長は、硬い表情で本部長室の前に立った。
「小林です」
「ああ小林君か。待ってたよ、入りたまえ」
 電気錠の外れる音がしてドアが音もなく開く。
 小林が部屋に足を踏み入れると、デスクの前で科学特捜隊本部長の穂茂田立男が何やら両手に捧げ持った物を凝視している。
 穂茂田は特捜隊では小林より5年ほど先輩で、学歴や人間性と言うよりも、その決断力と要領の良さで本部長にまで上り詰めた男だった。
「完成したんですね、本部長!」
 思わず小林が歩み寄ると、振り向いた穂茂田は苦笑いを浮かべて首を横に振った。
「完成したことはしたんだがね……」
 長身を折り曲げてどっかと椅子に座り小林を見上げる。
「例によって開発者の篠原怜子君がウンと言わんのだよ」
「え? どうしてです?」
「最終テストに合格しないと使わせないといって、始動チップを隠して渡さないんだ」
「始動チップ? これ、そんなものが必要なんですか?」
「うん。これはその機能が画期的で、受動サイドの感覚を能動サイドが把握出来るそうなんだ。ほらこれ、付ける側にも半分入り込む様になってるだろ?」
「へえ……」
「チンコウ知能だよ。チンコウ知能」
「はあ?」
「洒落だよ。洒落だよ君、あっははは……!」
「なるほど、はははは……」
 小林は愛想笑いを返した。
「膣圧など物理的な記録と、快感や痛みなどの神経的なデータも記録されるようになってるそうだ。そしてだね君、肝心の追尾システムも今回新たに本体にセットすることになる。まだ化学的に合成期間中だがね。時間がひっ迫してるので、篠原主任は合成の終了を待たずに、射精の作動チェックで完成を確認すると言ってる」
「凄いですね。じゃあ手っ取り早く本部長が試験体になってゴーサインを出されたら……」
 穂茂田は手にしていたものをデスクに置くと、立ち上がってその脇に両手をついた。
 小林は穂茂田の前に置かれた装置をしげしげと見つめる。

 それはいわゆるペニスバンドと呼ばれる装着具であった。
 英語ではバンドの部分から称してストラップ(strap)、装着した状態をストラップオン(strap-on)と表現したりする。
 しかしこの机の上に置かれたペニスバンドは、AVに出てくるような安直なものではなさそうだった。(ごめんなさい。もちろん、安直なものばかりではありませんが)
 本体は微妙に色合いを変化させた肌色で、装着した時の外観をナチュラルに見せていた。
 またベルト部分は柔らかくなめした幅広の黒革で、肌への違和感を軽減するため金具など使わず、接合部には自然物から作成した強化樹脂が使用されている。
 足先から下着の様に履いて、長さ調整は革の厚みの中に仕込まれたマジックバンドで行うよう考えられていた。

「冗談じゃないよ、小林君……」
 一転して穂茂田の不満げな様子で、小林は我に返った。
「そんなもの付けた女性に後ろから迫られても、僕は嬉しくも何ともないんだよ。かと言って男じゃ、もともと付いてるものが邪魔になって装着出来ないじゃないか」
 穂茂田はデスクに両手をついたままクイクイと腰を振った。
「はは、なるほど………。あ、いや、ごもっともです」
 長年の特捜隊勤務で穂茂田の趣味を知っている小林は真顔で頷いた。
 入隊間もない頃、野外訓練の夜にハンモックの上で穂茂田に迫られた経験があった。
 あわや入口(出口?)まで筒先が迫った時、まだ稚拙な設置技術でハンモックごと木から落ちて、小林は危うくその難を逃れていたのである。

 再びどっかと椅子に腰を沈めて穂茂田は続けた。
「篠原女史はまだ未経験な被験者を要求しているんだ」
「は……、未経験と言いますと?」
「要するにノン気な女性がいいと言っているんだ。そうでないとこの装置の本当の価値が分からないといってね。もっとも、彼女の個人的な趣味もあるんだろうが……」
「はあ、そうですか……」
 小林は再びペニスバンドに目をやって考え込んだ。
「ははは、そう情けない顔をするな、小林君」
「は?」
 小林は穂茂田の笑い声に再びその顔を上げた。
「実は、今年経理に配属された若い女性に今打診しているところなんだ。彼女ならまだ結婚したばかりで若いし、まさか処女ではないだろうしね」
「ええ、おっしゃるとおりです」
 小林の目が輝いた。
「この非常時だから昇格と昇級を条件に交渉しているんだが、私の勘では、どうやら脈がありそうだ」
 穂茂田は机の上のボタンを押した。

 壁のモニターが点いて、デスクで執務をしている一人の女性の姿が映し出された。
 肩までの茶髪にパーマをかけて、真面目そうにキーボードに向かっている。
「中山希美君と言ってね。年は確か二十歳代前半だと思ったが……」
 小林は食い入るようにモニターを見つめた。
 その女性は小柄で少しふっくらした体形に見える。
 黒目勝ちのぱっちりとした二重瞼で、柔らかなラインの鼻の下にふくよかなピンクの唇が、初々しい若妻の魅力を引き立てていた。
「本部長……これはなかなか………、可愛いじゃありませんか! 室長~~~!!」
 小林は右ひじで穂茂田の身体を揺する。
「わはは、そうだろ、な? そうだろう?……わっはははは…………!!」
 二人は子供の様に胸の前で両手を叩いた。
 つい篠原女史と中山希美の絡みが脳裏に浮かんで来て、小林は股間を少し硬くした。
「本部長、是非よろしくお願いします! では私はこれで……」
 深々とお辞儀をしてドアに向かう小林の背中に、また穂茂田の声がかかる。
「ああそうだ。君のところにも新入隊員が入ったろ? 確か、ゴルフ部出身だとかいう……」
 小林は振り返って不思議そうな表情を浮かべた。
「ええ、大谷健太君ですが、彼が何か……?」
「今度科学技術省のコンペがあるんだけど、是非彼に同行してもらおうと思ってね」
「は、はいわかりました。では………」
 しかたなくそう返事をすると再び出口のドアへと向かう。
「いい男だよね彼は、筋肉質ですらっとしてて。わっははは………」
 一転して股間がうなだれるのを感じながら、小林は静かに本部長室のドアを出た。
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    • ––––––
      1. Mikiko
    • 2021/05/13 23:58
    • 居酒屋
       「目加田恵子と矢野彩香は泥酔した小林隊長を残して店を後にした」。
       お金は、誰が払ったんですかね?
       目加田恵子と矢野彩香が払って帰ったとは思えません。
       トイレから出て来た小林隊長……。
       「やられた」と思いつつ、3人分を払ったんでしょう。

       居酒屋という形体は、お酒の店では、もっとも落ち着きますね。
       といっても、最後に入ったのは、3年前ですが。
       2018年3月でした。
       コロナ発生の2年前で、気配ひとつなかったころ。
       今にして振り返れば、あのころが一番良い時代だったんじゃないでしょうか。
       送別会を兼ねた会社の女子会でした。
       会社側が音頭を取った会ではありません。
       円満退社ではなかったので(引き抜き)……。
       会社主催の送別会は企画されてませんでした。
       されたとしても、その人は断ったでしょうし。

       入ったお店は、新潟駅構内にある「日本海庄や」というチェーン店(https://tabelog.com/niigata/A1501/A150101/15009224/)。
       カウンターもあったんですかね?
       わたしたちは4人だったので、当然、座敷に座りました。
       頼んだのは、飲み放題付きのコースだったと思います。
       送られる1人はタダで、残りの3人が4人分を支払うというシステム。
       どんな料理が出て来たかは……。
       まったく記憶にありません。

       続きは次のコメントで。

    • ––––––
      2. Mikiko
    • 2021/05/13 23:59
    • 居酒屋(つづき)
       そう云えば、居酒屋のカウンターに座ったのは……。
       新潟に帰ってからは、ないように思います。
       会社の飲み会でしか行きませんから。
       1人はもちろん、2人とかで居酒屋に寄ったこともなかったですね。
       東京にいたときは、居酒屋でひとり、夕食を摂ることがありました。
       一人暮らしですから、それが一番面倒がありません。
       もちろん、座るのはカウンターです。
       わたしは、自分の世界に入りたいので……。
       基本、お店の人とはしゃべりません。
       もちろん、注文するときだけは口を利きますが。
       なので、気の利いた親父さんのやってる居酒屋は、とても居心地が良かったです。
       喋るお客とは、普通に会話してるのですが……。
       わたしがあまり喋りたがらないと悟ると、ヘンに話しかけたりせず、放っておいてくれます。
       わたしは、持ってきた文庫本などを捲りながら、酒と肴を楽しむわけです。
       でも、ときどき隣の席に、まったく空気を読まない系のおばさんが座ることがありました。
       親父さんと喋ってるだけならいいのですが……。
       わたしにもやたら話しかけます。
       「何読んでんの?」とか。
       快適空間が一気に消失。
       といって、ぷいっと帰ったらさすがに気を悪くするだろうから……。
       しばらくは我慢します。
       今は、アクリル板の仕切りどころか……。
       不透明の仕切りがあって、完全に一人飲みの世界に入れるお店もあるようです。
       でも、ま、わざわざ行ってみる気はありませんね。
       お惣菜を買って家で飲むのが一番です。
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