2021.2.18(木)
ウルトラウーマンの周りの空気が燃え上がったように見えた。
“ふ……、来るか?”
ゼットンは最後の引導を渡すべく彼女の動きに集中した。
次の瞬間、宙に浮いたウルトラウーマンは空気を切り裂いてゼットンへと突き進んだ。
“また同じことを、愚かな………”
仕方なく再びゼットンが瞬間移動をしようとした時、ウルトラウーマンは目にも止まらぬ速さでゼットンの脇をかすめて後方へと飛び去って行った。
“……???……、何だあの小娘は……”
ゼットンは瞬く間に小さな点になっていくウルトラウーマンを見やりながら、呆気にとられた。
“それにしても今の瞬間的スピード、もし俺に向かってきていたら………。”
ゼットンはウルトラウーマンの後を追うことも忘れて、その場に胡坐をかいて考え込んだ。
“俺はウルトラ一族の動きは見切れていたはず……。いったい今のエネルギーはどこから来たんだ?”
前述の性格から想像に難くなく、ゼットンはとても慎重派だったのだ。
さて………。
水浴びをしている現地人の娘“蓬莱”は、水を掬うその手の動きを止めた。
何やら空気を震わす微かな音が聞こえたからである。
その微かな響きは、徐々に鋭いジェット音に変わり始めた。
音のする方を見ると、中空の小さな点であった物体がみるみる巨大な人の形に変わり、地響きを伴って蓬莱の手前30メートルに着陸した。
「キャアア~~!!」
蓬莱は驚きと恐怖のあまり、その裸体を隠すことも適わないままその場に失神した。
トラコは全裸で失神した蓬莱をじっと見つめた。
申し訳ない気持ちと同時に、胸の奥から赤く切ない霧が沸き起こるのを感じる。
トラコは今やはっきりと自覚していた。
今自分に起こっている異変、この血が沸き立つような感覚は彼女の性欲から端を発しているということを。
トラコは自分の身体をアジアタイプの人間大に縮小させると、背中のジッパーにゆっくりと手をかける。
ここで読者には説明しておく必要があろう。
え? もういい加減にしろ?
スイマセン、おっしゃる通りですが、でももう一度、もう一度だけ説明させてください。だってこれを言わないと先に進めないんだから。
以降出ませんので、どうかご勘弁を。
このウルトラ一族の外観というのはスーツ姿なんですな。
だってあなた、ウルトラウーマンの姿を思い起こしてごらんなさい。だいたい生殖器が付いておらん。
それなのにウルトラの父だ母だ、子供だのっておかしな話じゃありませんか。
昔子供ながらに“あれ、背中がジッパーになっとるタイ”なんて思ったものです。
だから背中のジッパーを外すと、中身は非常に人間に似たものであると筆者は推測する。
本当かどうかは後述の文章で明らかになります。
ウルトラウーマンがジッパーを下げスーツから頭を出した途端に、太陽の光にまぶしく輝いたものがある。
それは彼女の銀色でさらさらのショートヘアであった。
そしてボディースーツの中からは、艶々とした茶褐色の肌とまるでギリシャ彫刻に出てきそうに均整の取れた裸体が現れた。
豊かな乳房が誇らしげに上を向いて、下腹部のプラチナブロンドの茂みは太陽光にキラキラと輝いている。
しかしその輝きは単にその色のせいばかりではなかった。
プラチナブロンドの茂みから粘り気を帯びた透明の雫が、まるで宝石の様に太ももの肌を伝い降りていたのである。
ウルトラウーマンは恥ずかし気に周囲を窺いながら、股間の雫をスーツの端で拭った。
上気した面持ちでゆっくりと蓬莱の方へ近づいて行く。
ウルトラウーマンは失神して地面に横たわった蓬莱の脇に両膝をついた。
“驚いて気を失ってしまったのね、ごめんなさい………”
手を取って脈を確かめると改めて蓬莱の顔を覗き込む。
思わずトラコは切なげな溜息をついた。
なんと地球の女性は魅力的なことか………(お世辞ではありませんよ)。
しかしトラコの表情がやがて悲し気に変化した。
「いけないことだと分かってるの……。でも私、もう我慢できない。お願い、許して」
蓬莱に身を添わせると、その頬に自分の頬を近付けていく。
生まれて初めての女性との性的な接触。
目閉じて触れ合う頬の感触の何と甘美な事か………。
トラコは再び頬を離して蓬莱の顔を見つめた。
淡く朱色に煙る唇に自分の唇を近付けていく。
蓬莱の温かい吐息を自分の唇に感じた時、目眩にも似た喜びが身の内に湧き上がった。
「ん……んふう……」
夢うつつに蓬莱が吐息を漏らした時、ウルトラウーマンはもう耐え切れぬようにその唇に唇を重ねたのである。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2021/02/18 05:36
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失っつれいしました!
わたしの(2)でのコメント「ウルトラマン着衣問題」は……。
完全なるフライングでした。
あのコメントを書くときは、すでにこの(4)の原稿もいただいてたんです。
でも読者より先に、わたしだけ読んでしまうのを申し訳なく思い……。
先読みはしてませんでした。
ひょっとして、わたしの(3)のコメント「スペシウム光線問題」も……。
今後、フライングになるんじゃ?
不安になってきました。
でも、書いちゃったものは仕方ありません。
どちらも、誰もが疑問に思うことでしょうし。
さて、気を取り直していきましょう。
ウルトラマンが……。
宇宙服、もしくは戦闘服のようなものを身に付けてるという点では、意見が一致しましたね。
しかしすなわち、ウルトラマンにとってあの格好は……。
そうとう特殊な場面で着用するスタイルということになります。
自宅で寛いでるときとか、あんな格好をしてるわけありませんよね。
第一、トイレが大変じゃないですか。
会社(?)や学校に行くときも、違う服装なはずです。
不良の格好とかもあるんですかね?
あと、もう1点。
あの、顔を覆うマスクです。
あれも当然、ヘルメットの一種ですよね。
あれを外したら、どんな顔が出て来るんでしょう?
吊り目の同じ顔だったら笑いますが。