2021.2.4(木)
先に砂漠の静寂を切り裂いたのはウルトラウーマンの方であった。
魔術でも見るかのようにその場に浮いたかと思うと、ゼットンに向け緩やかに宙を滑り始める。
急激に加速度を増した身体が輝いたかと思うと、その態勢がみるみる飛び蹴りの型に変化した。
しかしウルトラウーマンの一撃は、ゼットンの横わずか30センチの間合いで空気を切り裂いたに過ぎなかった。
“なに!?”
その時ウルトラウーマンには何が起こったのか分からなかった。
自分のかかとが相手の頭を柘榴のように砕いたと思ったからである。
ウルトラウーマンの渾身の一撃が空を切ったのは、ゼットン特有の“空中瞬間移動”のなせる技だった。
「ふふふお嬢さん、どうかしたのかい?」
ゼットンは呆然とたたずむウルトラウーマンを煽り立てるように問いかけた。
「むうう! ……やあ!!」
トラコは火照る身体を奮い立たせて2度3度と烈火のような飛び蹴りを放った。
がそれは最初の一撃と同じように、虚しく空を切っただけであった。
ゼットンの戦い方は基本的に受け身戦法である。
肉体的なアタックが通じないと焦ったトラコがスペシウム光線やウルトラビームを使った時、ゼットンはそれを吸収して体内倍加させ、ウルトラウーマンに反転照射して勝負を決めようと思っていた。
“ふふふ……そのあとは弱ったこいつを思う存分辱めて………、そうだビデオにしてばら撒いちゃおうかな。………んんん、いやそれとも……”
この期に及んで何とも煮え切らないゼットンではあった。
ウルトラウーマンはギリギリと歯噛みをした。
“こうなったらウルトラビームで……”
悔し気なトラコの様子を見たゼットンは、いよいよとどめを刺すべく口を開く。
「遅い遅いお嬢ちゃん。お嬢ちゃんの大きなおっぱいがスーツの下でプルンプルン揺れる具合も、僕にはようく見えたよ。あっははは……」
トラコは唇を噛んでゼットンを睨みつけた。
「黙れ!! いやらしい………お前のような奴は黒焦げにしてやる!」
ゼットンは思わず身が震えるような喜びを感じた。
理知的で文化レベルの高い彼は、若く可愛い女の子に“もう、いやらしい”などと言われると、世のおじさん達同様なんとも嬉しくなってしまうのだった。
うら若い女性がこれを読んでいらっしゃるかどうか分かりませんが、このような場合、お願いですから無言で無視したりなどしないでください。
かわいそうです。
“いやらしい”“いや~だ”“もう、すけべ”“バカ!”(これはあんまりか)………とにかく、その他得意なセリフがいろいろあるでしょう?
ボランティアだと思って言葉をかけてあげてください。
功徳になりますよ。
一方トラコはゼットンを睨みながら、ウルトラビームをあらゆる方向に連射しようと考えていた。
そうすればいくら瞬間移動されたとしても、どこかでビームが相手を捉えてくれるだろう。
そこで改めて強い打撃を与えるチャンスが生まれるに違いないのだ。
そう考えを決めて再び気を集中しようとした時、ウルトラウーマンは自分の体に何か異変が起きていることを感じた。
まるで意識を集中することが出来ない。
いやそれどころか、身体の奥から疼くような感覚が湧き上がってくる。
“いったいどうしたのかしら……?”
自室のベッドで慰める女の部分が熱く潤い、もう危うく花びらから蜜が溢れるようにほころび始めていた。
トラコは混乱し、もじもじと両太ももを閉じ合わせた。
“????”
ゼットンは呆然とそんなウルトラウーマンの様子を見た。
“なんだこの娘は……?”
トラコは改めて眉を吊り上げると、悲壮な決意を固めてゼットンを見据えた。
このままでは地球を救うことはおろか、自分がゼットンの慰み者にされることは目に見えている。
“あ………”
その時突然、何故かトラコの眼差しがゼットンの遥か後方に釘付けになった。
そして自分自身の異変に対する疑問が即座に氷解したのである。
ウルトラウーマンがゼットンの後方数十キロ先に見つけたものとは、砂漠のオアシスで水浴びをする現地人の娘の姿であった(ウルトラの一族はすごく目がいいのです)。
年の頃は17、8であろうか、しきりに周囲を窺いつつ湖水でその体の汗を流していた。
まだあどけなさを残してはいたが、その端正な顔立ちは中国系の血を受け継いでいるのか、肩から前に長い黒髪を光らせている。
何より水を弾いて日に輝くその白い肌は、まるでシルク生地のように滑らかであった。
現地に混在するロシア系女性のように肉感的ではないが、その身体は伸びやかになだらかな曲線を伴って東洋系女性特有の妖艶な色香を放ち始めている。
片手の掌にちょうど馴染むくらいの乳房がちょっとした仕草にも細かく震え、彼女の弾けるような若い魅力を伝えていた。
“これこれ、これだわ。やっぱり地球の女の人って、とっても素敵………”
マスクの下でトラコの顔が桜色に染まる。
ウルトラウーマンはこの若い女性に、わが身に充満した切なさの答えを見つけた思いだった。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2021/02/04 05:50
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スペシウム光線問題
前回(2)のコメントで、「ウルトラマン着衣問題」を取りあげました。
しかしほんとうは、もっと大きな問題があるのです。
すなわち!
ウルトラマンはなぜ、最初からスペシウム光線を使わないのかという問題です。
ほとんどの場合、カラータイマーが鳴り始めてからやっと使ってます。
待てよ?
カラータイマーというのは、エネルギー残量の低下を警告するメーターではないのでは?
すなわち!
スペシウム光線のエネルギー源が、充電完了したという合図なのでは?
そんなら、充電してから来いよということになりますが……。
やはり、突然、呼ばれるから充電してるヒマがない。
昼休みにやっとけ!
あ、そうか。
地球上でウルトラマンの姿にならないと、充電できないんだ。
でも、有事じゃないとき……。
ウルトラマンがそこらをうろうろしてたら、迷惑極まりないですよね。
うっかり、家とか踏んじゃうでしょうし。
そうそう。
カラータイマーのギャグがありました。
ウルトラマンは、カップラーメンを食べられないというもの。
3分で出来上がると同時に、「ジュワッ」と帰ってしまわなければならないからです。
あれ?
持って帰ればいいだけでないの?
でも、宇宙に飛び出す前に、冷え切ってしまいますかね。
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2. 八十八十郎- 2021/02/04 18:13
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むむむ、ほんと気になることが色々とあります。
しかしウルトラマン・・・、振り返ればもう有に半世紀を過ぎました。
もうちょっと前はテレビそのものが無かったんですからねえ・・。
怪獣や正義の味方が目の前で活躍するなんて、みんなワクワクしたと思います。
まあのどかな時代だったのでしょう。
時に映画や読み物のエロチック分野に、パロディ作品というものがあります。
案外浅薄に終わってることが多いのですが、立派な作品の主人公やヒロインがエロスの世界で活躍するというやつ。(笑)
シンデレラや、白雪姫、不思議の国のアリスも悪の女王とレズちゃってたりして、何故かこれが魅力的なんですね。(少なくとも僕にとっては)
今では官能的には中途半端なものかもしれませんね。
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3. 手羽崎 鶏造- 2021/02/04 19:23
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スペシウム光線って、てっきり
語源はスペルマから来ているのだと
思っていました。
放ってしまうから、すぐに「持たなく」なるんだとも
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4. Mikiko- 2021/02/05 05:43
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八十郎さん&鶏造さん
> 八十郎さん
白雪姫の処女膜には……。
7つの小さな穴が空いていたというギャグもありました。
日本のアニメのパロもあります。
サザエさん、ドラえもん、クレヨンしんちゃん、コナンなど。
やっぱり、サザエさんにはリアリティがあってエロいです。
> 鶏造さん
ひょっとしたら……。
スペシウム光線は、ウルトラ一族の射精なのかも。
人間が勝手に武器だと思ってるだけで。
光線を放った後、シュンとして帰って行くのもそれっぽいです。
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5. 八十郎- 2021/02/05 18:05
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Mikikoさん、やはり肝心なのはそこですね。
リアリティーがエロスには魅力の一つかも。
パロディはオリジナルが一つのリアリティーを確立してくれてるので、
サザエさんやクレヨンしんちゃんのお母さんがエロスの世界で魅力を振りまいてくれるような気がします。
実際はキレイな女優さんや可愛いタレントさんがいいに決まってるんですが、パロディ絡みだとサザエさんとあんな事こんな事なんて考えちゃうんですねえ。
男性と女性では違うので一概には言えませんが。(勿論僕は男性の気持ちしか分かりません。笑)
認知症予防に赤ワインを飲みながら少々お邪魔しました。
今回ウルトラウーマンには”ぺ二バン開発工房”なる新規1章を夢想しておりますが、夢想に終わらぬようもう少し赤ワインを飲むとしますか。
では以後制作に専念致します。
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6. Mikiko- 2021/02/06 06:32
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赤ワインが……
認知症予防になるんですか。
それは良いことを聞きました。
わたしは食後、赤ワインをお燗して飲んでます。
酒燗器で燗付けし、小さなぐい呑みでいただきます。
ただ、口あたりが良すぎるので、うっかりすると飲み過ぎます。
なのでわたしは、水で割って燗付けしてます。
安いワインなので、ちっとももったいなくないです。
新規1章、楽しみにしております。