2016.3.4(金)
とりあえず、それぞれの部屋でくつろいでもらい、30分後に大広間に集合ということになった。
ツアーのスタッフにあてがわれたのは、12畳ほどの和室だった。
史恵さんは、さっそく座卓の上に資料を広げた。
段取りのチェックだろうか。
ここで、初めて気がついた。
「史恵さん」
「なに?」
「主催者側の部屋は、ここだけなんですよね」
「そうよ」
「運転手の山下さんは、どうするんですか?
そう言えば、宿に着いてから見かけないけど……」
「大丈夫。
彼は麓に降りて、よろしくやるから」
「よろしくって?」
「ふふ。
彼ね、実はゲイなのよ」
「え?」
「そして奥さんの佳代ちゃんは、ビアン。
あなただって、一目見てわかったでしょ」
わたしは、思わず佳代ちゃんを振り向いた。
佳代ちゃんは部屋の隅に横座りして、携帯をいじってたが……。
話を振られて顔をあげると、眠たそうな曖昧な表情で、わたしに笑いかけた。
「じゃ、ゲイとビアンの夫婦ってことですか?」
「そうよ。
そりゃ、赤ちゃんなんて出来ないわよね。
でも、あなたたち、ほんとなの?
まだ、1度も夫婦でしたことないっての?」
「してませんよ」
「呆れた。
同じ屋根の下に住んでるのにね」
「どうしてまた、結婚なんか……」
「問題なのは、親の方なの。
2人とも、田舎の旧家出身でね。
とてもじゃないけど、カミングアウトなんて出来っこない家柄だそうよ。
山下くんなんて、跡取り息子だし。
当然ながら、早く結婚して、子供を作るよう期待されてるわけ。
自分がゲイだなんてこと告白したら、親父に斬り殺されますって言ってた。
佳代ちゃんの方も、似たようなもの。
お見合い写真が定期便で送られて来てたそうよ。
佳代ちゃんとは、ハッテン場で知り合ったんだけど……。
その話聞いて、ピンと閃いたわけ。
うちの社の山下くんと結婚させたらどうかって。
もちろん、お互いの嗜好を納得した上での仮面夫婦ね」
ツアーのスタッフにあてがわれたのは、12畳ほどの和室だった。
史恵さんは、さっそく座卓の上に資料を広げた。
段取りのチェックだろうか。
ここで、初めて気がついた。
「史恵さん」
「なに?」
「主催者側の部屋は、ここだけなんですよね」
「そうよ」
「運転手の山下さんは、どうするんですか?
そう言えば、宿に着いてから見かけないけど……」
「大丈夫。
彼は麓に降りて、よろしくやるから」
「よろしくって?」
「ふふ。
彼ね、実はゲイなのよ」
「え?」
「そして奥さんの佳代ちゃんは、ビアン。
あなただって、一目見てわかったでしょ」
わたしは、思わず佳代ちゃんを振り向いた。
佳代ちゃんは部屋の隅に横座りして、携帯をいじってたが……。
話を振られて顔をあげると、眠たそうな曖昧な表情で、わたしに笑いかけた。
「じゃ、ゲイとビアンの夫婦ってことですか?」
「そうよ。
そりゃ、赤ちゃんなんて出来ないわよね。
でも、あなたたち、ほんとなの?
まだ、1度も夫婦でしたことないっての?」
「してませんよ」
「呆れた。
同じ屋根の下に住んでるのにね」
「どうしてまた、結婚なんか……」
「問題なのは、親の方なの。
2人とも、田舎の旧家出身でね。
とてもじゃないけど、カミングアウトなんて出来っこない家柄だそうよ。
山下くんなんて、跡取り息子だし。
当然ながら、早く結婚して、子供を作るよう期待されてるわけ。
自分がゲイだなんてこと告白したら、親父に斬り殺されますって言ってた。
佳代ちゃんの方も、似たようなもの。
お見合い写真が定期便で送られて来てたそうよ。
佳代ちゃんとは、ハッテン場で知り合ったんだけど……。
その話聞いて、ピンと閃いたわけ。
うちの社の山下くんと結婚させたらどうかって。
もちろん、お互いの嗜好を納得した上での仮面夫婦ね」
コメント一覧
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1. Mikiko- 2016/03/04 07:24
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ハッテン場
↓現在は、ゲイの人たちがモロに性行為を行う、区切られた個室の施設を云うようです。
http://ippo-sanbu.tv/contents/1po3bu_hack/%E4%BD%93%E9%A8%93/%E3%80%90%E5%A3%AE%E7%B5%B6%EF%BC%81%EF%BC%9F%E3%80%91%E3%83%8F%E3%83%83%E3%83%86%E3%83%B3%E5%A0%B4%E3%81%B8%E3%81%84%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%BF%E3%81%9F%E3%82%89%E3%80%81%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%83%88/
わたしが文中に使った“ハッテン場”ですが、まったく違う場所をイメージしてました。
わたしが想定したのは、女性だけが集まるバーのようなところ。
そこで初対面の女性同士が出会い、話をしたりして親交を深め……。
やがて、本格的な恋愛に発展していく。
つまり、“これから発展するための出会いの場”という意味合いですね。
新宿2丁目には、女性オンリーのバーがあるようです。
こういう場所を、“ハッテン場”とは云わないんですかね?
これがほんとの、ハッテンバー。
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2. 腰抜けハーレクイン- 2016/03/04 12:10
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ビアンとゲイの仮面夫婦
ありそうでなさそう、ってやつですね(どっちやねん)。
それにしても山下くん。
「カミングアウトしたら親爺に斬り殺される」は凄まじいな。
いまどき、とも思いますが田舎ねえ。どこなんだ?
ハッテンバー。
なんか聞いたことあるなあ、と思ってよくよく考えましたら「バッテンボー」でした。
ご存知ですか「悪漢バッテンボー」
1947年のアメリカ映画『腰抜け二丁拳銃』
この主題歌が『Buttons and Bows』。邦題は『ボタンとリボン』ですが、某連続どろどろテレビドラマとは何の関係もありません。
で、これを歌ったのがDinah Shoreダイナ・ショア(知らんやろ、わたしも知らん)。日本では江利チエミ姐さんが歌い大ヒットしたそうですが、わたしは無論知りません。
で、ここからが本題。
この主題歌のタイトルを、本格的に英語(米語?)で読むと、我々日本人には(例外はおられるでしょうが)“バッテンボー”と聞こえるそうです。わたしは聞いたことないので何とも言えませんが、「さもありなん」とは思います。
で、映画の方は西部劇(コメディです)ですので、誰が言ったか知らないが、「これ、映画の登場人物の名前や!」、つまり「悪漢バッテンボー」というわけで、この世界では(どの世界や)有名な話です。
「悪漢バッテンボー」、もちろん映画には登場しませんし、実在の人物でもありません(知らんで、聞いた話や)。
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3. Mikiko- 2016/03/04 18:58
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英語の発音
たとえば、“water”。
これを日本人が普通に発音しても、まず通じないそうです。
たとえば、機内で外人スッチーに水を所望する場合ですが……。
必ず通じる言い方があります。
“藁(わら)”です。
「“藁”、プリーズ」。
これで、100%通じます。
あと、「どういたしまして」の“not at all”。
これも、日本人が通じるように発音するのは、至難の業。
でも、↓こう言えば、ほぼ大丈夫だとか。
「奈良郎(ならろう)」。
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4. 福助ソングも……HQ- 2016/03/04 20:24
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藁奈良郎
発音のポイントは「t」ですね。
タチツテト、ではなく、ラリルレロ。
「トリロー」は三木。
♪ワ、ワ、ワ、輪が三つ
♪明るいナショナル
♪ジンジン仁丹、ジンタカタッタッター
♪くしゃみ三回ルル三錠
♪なーんなーん南海電車