2021.1.7(木)
ここはM-21星雲ウルトラの星。
ウルトラの父と母は深刻な面持ちで向かい合っていた。
「あなた、どうしましょう。このままではトラコは……」
(※注1 ウルトラウーマンの本名 : ウル(Uru)・トラコ(Traco)
「かあさん、うろたえるでない! こうなった以上、我々に出来ることはトラコが無事戻ってくることを祈るだけだ」
一家の当主として威厳を示したつもりのウルトラの父に向かって、ウルトラの母はため息交じりに口を開く。
「もう……、何言ってるのあなた。私が心配しているのは、地球での私達ウルトラ一族の名誉のことじゃないの。このままでは、これまで培ってきた一族の名誉が一転して大恥になるのではないかと、私、心配で心配で………」
「ああ……? そ、そうであった。うむむむ、大体お前のしつけが甘いから………、と言っても今更遅いか」
ウルトラの父は肩を落とすと、その眼差しを力なく外へと向けた。
読者の皆様にはここで説明をしておく必要があろう(白土三平のように……)。
皆さんご存知のように、ウルトラ一族は地球上で3分を限度として以降は急速に体力を消耗する、男の場合は。
しかしウルトラの女性の場合はいったいどうなるのか?
勘のいい読者でも想像しえないであろうが、女性は3分を限度として、以降急速に欲情してしまうのだ。
おまえいい加減にしろという声も聞こえてきそうだが、ではその3分を越えると一体どうなるのか?
それは……簡単自明の理で、なんとも気が治まらなくなるのだ。
だからどうした?と読者は言うかもしれない。
だが気が治まらないというのは、案外大変なことなのだ。
筆者などそのお陰で、若いころどれだけ無駄な金と無駄な時間を使ったことか!(怒)
まだ素直に欲情を発散するタイプの方ならいいのですが、アバンチュールを求めてクラブなどで変に格好をつけてしまうと、高いお酒を頼んだ上にお嬢さんたちにフルーツの大盤振る舞いなどして大散財してしまうのだ。
もしこれが堅実なMikikoさんのお身内でもあったならば、トイレを修繕させられるどころか貴方がトイレにされてしまいますぞ。
もっともそれがご趣味の奇特な御仁もいらっしゃるので、あながち処罰とは限らないか……。
少々話が脱線してしまいましたが、あなたの周辺を見回しただけで“俺の青春を、いや俺の人生を返してくれー!”と叫ぶオジサンを見つけるのに、さして苦労はいらないはずである。
さて……。
肝心のウル・トラコは、宇宙空間を地球へ向けて光よりも速く飛び続けていた。
早くしなければ、地球はゼットンによって滅ぼされてしまうかもしれない。
若いウルトラウーマンは正義の使命に燃えていた。
そのうえ、今度の相手はウルトラ一族の宿敵、ゼットンである。
不敵にもゼットンは復活し、ウルトラ一族に挑戦状を叩きつけてきたのだ。
場所は双方に馴染みの深い地球。
さらにウルトラウーマンは女性の地位確立にも強い意欲を持っていた。
ここは一番ゼットンを倒し、地球を救うことによってウルトラ女性の地位向上に貢献したかったのである。
ただウルトラウーマンにとっての悲劇は、前述の説明でも触れたような地球上での自分の変化を知らないことにあった。
ウル・トラコは594ウルトラ年齢、人間ならまだ花も恥じらう18歳であった。
(※注2 ウルトラ年齢×1/33=人類年齢)
厳格な両親に育てられたウルトラウーマンは、残念なことにまだ十分な性教育を受けていなかった。
ただ彼女は性知識が皆無ではあったが、生まれながらのある嗜好を持っていた。
それは同性に対する強い性的欲求であった。
女学校で無垢な乙女が“はあ……素敵なお姉さま……”と上級生に胸焦がし、憧れる気持ちが一途に強まったのかな?
この辺は筆者も多少あやふやである(本人じゃないから……)。
しかしウルトラの星でも発売済みのウルトラマンのビデオを見ると、地球の女性は何と魅力的ではないか。
特に科学特捜隊の女子隊員はウルトラウーマンのお好みであった。
“ああ、飛鳥隊員……”
そう飛鳥ゆり子隊員の名前を呟きながら何度自分自身を慰めたことか。
失禁でベッドを濡らしたことも一度や二度ではない。
そうこうするうち、青く輝く地球がウルトラウーマンの視野に小さく姿を現わし始めた。
ゼットンはすでに征服した某星でテレビを見ていた。理知的で読書家のゼットンには珍しいことである。
“あ~あ、近頃のテレビはつまんないな”
そう思いながら時計を見ると、もう出発する時間が迫っている。
途端に飛び起きたゼットンは大きく伸びをした。
「よし、いっちょう頑張って来るか」
寡黙なゼットンには珍しく大きな声を出して、勢いよく宇宙空間へと飛び立っていった。
彼は時間に厳しく几帳面な性格だったのである。
何故ゼットンはウルトラ一族に果たし状など送りつけたのか。
筆者が想像するに、それは彼の余りに純粋で無垢な性格に原因の一端を発しているのではないかと思う。
地球を含めた昨今の宇宙競争社会の中で、ゼットンは次第にその性格に閉鎖的な傾向を強めて行った。
今はもう反社会主義者と言っても過言ではないほど偏執的性格を強めていた。
しかるにゼットンからすればウルトラ一族は、欺瞞に満ちた競争社会のシンボルの様に感じられたのである。
“なんだ、正義を一人で背負って立ったような顔をして……”
ゼットンはひねくれていた。
大体最初に地球を訪れた時から我慢がならなかった。
“俺はただ初めての地球を見物したかっただけじゃないか!”
なのにいきなり悪者の怪獣扱いされ、科学特捜隊や軍隊からうるさく攻撃され、しまいにはあの正義面したウルトラマンにこっぴどい目にあってしまった。
着陸して少し動き回った時、人間の生活範囲であったため、不幸にも踏み潰された生き物や家屋の損害があったことは否めない。
“あれくらい地球上の犯罪や事故、戦争の被害に比べれば微微たるものじゃないか”
そして同じように戦って周囲を壊したウルトラマンは、何故か正義のヒーローとして人々に崇められているのだ。
宇宙空間を飛びながら、ゼットンは改めて怒りがこみ上げるのを感じた。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2021/01/07 12:38
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2011年、新春お年玉企画!
『八十八十郎劇場』の掲載は……。
2018年8月2日の「元禄江戸異聞 根来(最終章)」以来となります。
この原稿は、1月1日にいただきました。
まさしく、最高のお年玉でした。
「こいつぁ春から縁起がいいわえ」。
もっともこれは、書き下ろしの新作ではないそうです。
過去作。
しかも、データではなく、薄れかけた感熱紙で残ってたとのこと。
感熱紙が残ってくれてたことに、読者と共に感謝したいです。
それを打ち直しながら、加筆してくださるそうです。
ということで掲載は、隔週の木曜日となります。
↓原稿を送って下さったときの添え書きです。
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まだ1作だけお送りしてない書き物があるのですが、これは少々ふざけたパロディ作品のためMikikoさんのサイトには向かないし失礼だろうと思い控えておりました。
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とんでもない。
毛色の違う作品は、大歓迎です。
実はわたしも、コメディータッチの小説を書きたかったんですよ。
「紙上旅行倶楽部」みたいな感じで。
でも、「由美美弥」の中ではなかなか難しくて。
八十郎さんの新作は、わたしにとっても素晴らしい刺激になります。
新しい張りが出来ました。
次回は、再来週の1月21日です。
もう、大寒の翌日ですね。
この作品と共に、春を迎えていきたいです。
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2. 八十八十郎- 2021/01/07 15:55
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大変遅くなりましたが、
明けましておめでとうございます。
再び拙作を取り上げていただいて、本当にありがとうございます。
読んでいただいた方に少しでも楽しんでいただけるところがあればと思います。
そしてまた、Mikikoさんの新しい張りが、章が進むごとに肩や腰の張りに変わらないようにとひたすら願っております。
この作品は私が初めて書いた「身体の涙」という書き物に次ぐ2作目になります。
少々くだけ過ぎた作品ですので、出来れば一杯召されてほろ酔い加減で読んでいただければ幸いなのですが。(18禁・しらふ禁)
いずれにしましてもMikiko’sRoomとMikiko'sRoomを訪なわれた皆様方にとって、どうか今年一年いい年となりますように!
失礼いたします。
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3. Mikiko- 2021/01/07 18:25
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こちら、強風のため大規模停電中。もう寝るしかなさそうです。さらばじゃ。
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4. Mikiko- 2021/01/08 05:50
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大停電
昨日の夕方、5時ちょっと前。
お風呂からあがって、素っ裸でいるときでした。
突然、真っ暗闇。
ブレーカーが落ちたのかと思い、大急ぎで服を着て1階に下りました。
でも、ブレーカーは落ちてませんでした。
玄関から顔を出すと、あたりは真っ暗。
停電です。
ラジオでは、まったくニュースをやってません。
スマホを開くと、どうやら新潟県全域で停電が起こってるようです。
簡単には復旧しない雰囲気でした。
幸い、ガスストーブ2台で暖は取れました。
1台は、電気の要らないタイプ。
もう1台は、電気の供給が必要なタイプでした。
でも、車に積んであったポータプル電源を持ってきて、運転させることが出来ました。
長引きそうなので、懐中電灯を点けて夕食を済ませました。
食後しばらく、スマホで情報収集をしましたが、「調査中」のまま。
長引けば、スマホの充電も心配なので、まだ7時前でしたが寝てしまいました。
復旧したのは、夜の10時前。
うとうとしてたんですが、隣の部屋から声が聞こえます。
はっと気づき、電灯の紐を引っ張ったら点きました。
隣室の声は、テレビが点いたからだったんです。
とにかく、早めに復旧してくれて助かりました。
今朝まで点かなかったら、ウォシュレットも使えないところでした。
きのうの最後のコメントは、寝る前、スマホから送ったものです。
「出来れば一杯召されてほろ酔い加減で読んでいただければ幸い」のお言葉どおり……。
お正月に飲み残した純米酒を飲みながら書きました。
さすがにビールでは寒かったので。
停電は怖いです。
八十郎さん、入力中は小まめに保存して下さい。
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5. 八十八十郎- 2021/01/08 18:00
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早めの通電再開で本当に良かったです。
難を言えば、素っ裸の時停電ではなく、素っ裸の時突然電気が点いての方がよかったかも。
そのあたり事実を曲げても、何とかしていただきたかったです。
ほろ酔い加減で読んでいただくというのは、もちろん私が書いた拙文を少しでもおおらかに読み流していただくという意味なのですが、書いてる方も飲んでたりするので、どうやら±0のようです。
ということで、
「ほらみなさい!!」
と停電しなくてもお叱りを受けぬよう、こまめに保存いたします。(笑)
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6. Mikiko- 2021/01/09 18:35
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いやはや
今日は積もりました。
窓の外を見ていると怖くなるほどでした。
70㎝くらい積もったんじゃないでしょうか。
道路では、四つ角ごとに誘導員が立ち、除雪車が行き交ってました。
今日は、11時前くらいから、玄関前の除雪。
雪のやり場がなくて、大変でした。
花壇に積みあげてたんですが、わたしの背丈を超えるほどになりました。
掬った雪を、その上に載せていくんですから、作業が進むほど重労働になっていきます。
ようやく玄関前を終わり、次は車庫の屋根です。
ポリカーボネートの屋根にてんこ盛りに積もってました。
さらに、ときすでに遅し。
ポリカーボネートの屋根材が、一区画、抜け落ちてました。
雪の山を探り、ようやく発見。
発掘してみると、運がいいことに割れてませんでした。
重みでたわんで、スポンと抜けたようです。
雪がなくなったら、屋根に嵌めてみます。
出来るかどうかわかりませんが。
出来ないと大損なので、頑張ります。
気が重いです。
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7. 八十八十郎- 2021/01/10 19:09
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割れていなければ九分九厘(古い)使えますので、取っておかれて損はないと思います。
もし車庫に使えない時は、夏場ソーメン流しに使うという手もあります。
(お勧めはしませんが)
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8. 八十八十郎- 2021/01/10 19:18
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いや、ボリカーボネートで抜け落ちたということは、平板ですか。
これではソーメン流しに使うのはどこ行くか分からんので不向きですね。
失礼しました。
たびたび申し訳ありません。
では転写・修正に専念するということで、しばらく失礼します。
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9. 手羽崎 鶏造- 2021/01/10 21:34
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この度の大雪にお見舞い申し上げます。
新潟平野は、あまり積もらない地とお聞き
しておったのですが、この分では大変な
ところは尋常でない状態だろうと心配です。
ご無事で乗り切ってくださいますように。
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10. Mikiko- 2021/01/11 06:12
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八十郎さん&鶏造さん
> 八十郎さん
もちろん波板ではなく、平板です。
枠がネジ止めされてるんじゃないかな。
それを外せば入る気がします(希望的観測)。
> 鶏造さん
こんなに積もったのは、3年ぶりです。
今は、襖や障子が開きにくい状態です。
屋根に上がる自信はないので、祈るほかありません。