2020.7.24(金)
男は、キャップを目深に被り、マスクをし……。
ダイレクトメールを詰めたメッセンジャーバックを、肩からたすき掛けにした。
普段の黒メガネは外し、コンタクトレンズを装着した。
在宅で仕事をするようになって以来、コンタクトはほとんど使わなくなっていた。
細く平板な目元なので、この方が目立たないだろう。
学生のころ、初めてコンタクトレンズにしたとき……。
友人の第一声は、「似合わない」だった。
素顔が似合わないと言われては、憮然とするほかはない。
それほど、黒メガネあってのキャラだったのだろう。
ともかく、支度は出来た。
あとは、挙動不審にならぬよう、自然に振る舞うだけだ。
白髪女性のマンション入口は、まず、2メートルほどの階段をあがるかたちになっていた。
つまり、前の歩道を通る人からは、エントランスが見透せないのだ。
プライバシーを売りにした造りなのだろう。
しかし、歳を取ったら大変だ。
大きなお世話だろうが。
男は、メッセンジャーバックを揺すりあげ、ダイレクトメールの束を覗かせた。
あとは、なるようになる。
おれは、ダイレクトメールを配ろうとしているだけなのだ。
顔の表情を消し、階段をあがり切ると、エントランスのガラス扉が迎えてくれた。
いや、迎えてくれてはいないだろうが。
それでも、少なくとも拒否だけはされていない。
ガラスの前に立つと、あっけなく自動扉が開いた。
入ったところは……。
近代的寺院の納骨堂に似ていた。
子供のころ、祖父の四十九日の法要で、1度入っただけだが。
何もない空間だった。
管理人室の窓もない。
奥には、もうひとつ扉があった。
その前に、テンキーの付いた演台のようなものが設置されている。
明らかに、内部の部屋と連絡を取るためのインターホンだ。
やはり、オートロックだった。
部外者は、中には入りこめない。
しかし、男の用は部屋番号を確認するだけだ。
管理人室がないのは、むしろ好都合だった。
さっき、納骨堂と感じたのは……。
エントランスの片面一杯に設置された郵便受けだった。
号室と姓が貼ってある。
白髪女性の部屋の階は、上から3段目だった。
下から数えないのは……。
1階の構造がどうなっているかわからないからだ。
1階に部屋がない構造だったりすれば、下から数えたら間違う場合があるだろう。
そして、部屋番号。
案の定、4号室と9号室は存在していない。
近代的な仕組みのマンションでも、未だにこうなのだ。
好き好んで、その部屋番号を選ぶ客はいないだろう。
飛ばした方が、遙かに売りやすいに違いない。
ダイレクトメールを詰めたメッセンジャーバックを、肩からたすき掛けにした。
普段の黒メガネは外し、コンタクトレンズを装着した。
在宅で仕事をするようになって以来、コンタクトはほとんど使わなくなっていた。
細く平板な目元なので、この方が目立たないだろう。
学生のころ、初めてコンタクトレンズにしたとき……。
友人の第一声は、「似合わない」だった。
素顔が似合わないと言われては、憮然とするほかはない。
それほど、黒メガネあってのキャラだったのだろう。
ともかく、支度は出来た。
あとは、挙動不審にならぬよう、自然に振る舞うだけだ。
白髪女性のマンション入口は、まず、2メートルほどの階段をあがるかたちになっていた。
つまり、前の歩道を通る人からは、エントランスが見透せないのだ。
プライバシーを売りにした造りなのだろう。
しかし、歳を取ったら大変だ。
大きなお世話だろうが。
男は、メッセンジャーバックを揺すりあげ、ダイレクトメールの束を覗かせた。
あとは、なるようになる。
おれは、ダイレクトメールを配ろうとしているだけなのだ。
顔の表情を消し、階段をあがり切ると、エントランスのガラス扉が迎えてくれた。
いや、迎えてくれてはいないだろうが。
それでも、少なくとも拒否だけはされていない。
ガラスの前に立つと、あっけなく自動扉が開いた。
入ったところは……。
近代的寺院の納骨堂に似ていた。
子供のころ、祖父の四十九日の法要で、1度入っただけだが。
何もない空間だった。
管理人室の窓もない。
奥には、もうひとつ扉があった。
その前に、テンキーの付いた演台のようなものが設置されている。
明らかに、内部の部屋と連絡を取るためのインターホンだ。
やはり、オートロックだった。
部外者は、中には入りこめない。
しかし、男の用は部屋番号を確認するだけだ。
管理人室がないのは、むしろ好都合だった。
さっき、納骨堂と感じたのは……。
エントランスの片面一杯に設置された郵便受けだった。
号室と姓が貼ってある。
白髪女性の部屋の階は、上から3段目だった。
下から数えないのは……。
1階の構造がどうなっているかわからないからだ。
1階に部屋がない構造だったりすれば、下から数えたら間違う場合があるだろう。
そして、部屋番号。
案の定、4号室と9号室は存在していない。
近代的な仕組みのマンションでも、未だにこうなのだ。
好き好んで、その部屋番号を選ぶ客はいないだろう。
飛ばした方が、遙かに売りやすいに違いない。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2020/07/24 06:34
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今日は何の日
2020年7月24日は、『スポーツの日』。
「国民の祝日」の一つ。
「スポーツを楽しみ、他者を尊重する精神を培うとともに、健康で活力ある社会の実現を願う」ことを趣旨としてます。
1964(昭和39)年10月10日に、東京オリンピックの開会式が行われたことを記念して……。
1966(昭和41)年、国民の祝日「体育の日」が、10月10日に制定されました。
「体育の日」は、「スポーツにしたしみ、健康な心身をつちかう」ことを趣旨としてました。
その後、祝日法の改正により「ハッピーマンデー制度」が適用され……。
2000(平成12)年から「体育の日」は、10月の第2月曜日となりました。
しかし今年に限り、東京オリンピックの開会式が予定されていた7月24日(金)に日付が変更され……。
同時に、「スポーツの日」へと名称が改められました。
しかし、2020年の東京オリンピック・パラリンピックは……。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行を受けて、開催が延期されてしまいました。
上記の記述は、こちら(https://zatsuneta.com/archives/110100.html)のページから転載させていただきました。
続きは次のコメントで。
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2. Mikiko- 2020/07/24 06:34
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今日は何の日(つづき)
さらに同じページから、引用を続けさせていただきます。
10月1日から31日までの一ヵ月間は……。
「体力つくり国民会議」が制定して1969(昭和44)年から実施している「体力つくり強調月間」でもあります。
また、「スポーツの日」は、日本の祝日では初の名称がカタカナの祝日となりました。
ちなみにアメリカでは、1492年にクリストファー・コロンブスがアメリカ大陸を発見したことを記念した「コロンブス・デー」を由来として……。
「スポーツの日」と同じ、10月の第2月曜日が多くの州で祝日となってます。
以上、引用終わり。
ほんとうであれば、今日が東京オリンピックの開会式だったんですよね。
コロナさえなければ、どんなにわくわくした夏を過ごせたでしょう。
ほんとに恨めしいです。
今の様相だと、来年の開催も難しそうです。
そうなれば、東京オリンピックは、完全に中止と云うことになってしまうでしょう。
それを見こんだ投資が、すべてパーです。
東京の不動産バブルも、はじけるんじゃないでしょうか。
後は、画期的なワクチンが開発され、全世界に普及することを期待するしかありません。
しかし、難しいでしょうね。
そこには、莫大な利権が生じますから。
無償で大量生産なんてことにはならないと思います。
でも、どうして「体育の日」が「スポーツの日」に名称変更になったんでしょう。
わたしは、「体育」という言葉、嫌いじゃないですよ。
授業も、そんなに苦手じゃなかったです。
長距離走と水泳だけはイヤでしたが。
続きはさらに次のコメントで。
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3. Mikiko- 2020/07/24 06:35
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今日は何の日(つづきのつづき)
↓WIKIから、名称変更の経緯を抜き書きします(出典⇒https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%93%E8%82%B2%E3%81%AE%E6%97%A5)。
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「スポーツ」は、「体育」より広い意味を持ち、自発的に楽しむことを含意することが変更の理由とされる。
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「体育」だと、「教育」のニュアンスが大きいからですかね。
どうしても、「強制」の雰囲気も漂いますし。
そう云えば、高校のとき、うちのクラスではありませんでしたが……。
こんな話を聞きました。
男子の授業には、柔道や剣道があったんです。
でも、ひとりの生徒が、それに参加しなかった。
宗教的な理由だそうです。
格闘技を禁止されてる宗教みたいですね。
体育教師は、「当然、1をつけた」と堂々と言ってたとか。
ま、わからんでもないです。
参加しなくても評価が変わらないなら……。
逆に、参加する生徒を不利に取り扱うことになってしまいますから。
しかし、その生徒も大したものです。
うちの高校はいちおう進学校で……。
大学進学率は、ほぼ100%だったと思います。
「1」が付いたら、圧倒的に不利になります。
宗教はすごいなと思いました。
半分、「怖いな」ですが。
あと、男子の剣道の授業ですが……。
あれは傍から見てて、はなはだ格好が悪かったです。
防具の類は用意されてましたが……。
道着や袴はありません。
ジャージの上から、防具を着けるんです。
それで、奇声をあげながら打ち合ってる姿は……。
足軽の戦いにしか見えませんでした。