2020.7.4(土)
フ「ございません」
み「なんでじゃー!
わたしは、ウォシュレットをこの上なく愛する女なのじゃ」
↑ウォシュレットを愛する猫。お尻にはあたってないようですが。
フ「細いノズルの内側に硫黄分が付着し、詰まってしまうんです。
欧米でウォシュレットが普及しないのは、水道水が硬水だからだそうです」
フ「ミネラル分が、ノズルの中に付着してしまうんですね」
み「ほー。
そういう課題があるのか。
そしたら、管を太くすれば良いではないか」
フ「いずれ詰まりますよ」
み「水圧を最強にすれば、ミネラルも付着しないんでないの?
水圧で鉄板を切断するカッターとかもあるよね?」
↑恐るべき威力。
律「そんな水圧、お尻に当てられないでしょ」
↑静岡県御殿場市に、かつてあった水飲み場。水の高さは7メートルに達したそうです。
律「そもそも、ウォシュレットの使いすぎは、お肌に悪いのよ」
み「おー、それそれ。
わたしもネットで読んだ。
おかげで、1度出した『痔主宣言』を取り下げたほどじゃ」
↑わかって着てるのでしょうか?
律「何それ?」
み「この春ごろ……。
ウォシュレットを使ってると、ピリピリ痛みを感じるようになったの」
↑ここまでじゃありませんが、ピクッとするくらいはありました。
律「痔でしょ」
み「それが、肛門じゃないんすよ。
明らかに外輪山の外側。
むしろ、山裾の窪みあたり」
み「汗でかぶれたのかと思ったけど……。
そんな季節じゃないしね。
そのうち、ペーパーに血が着くようになった」
み「当然、痔を疑うよね。
不本意ながら。
で、取りあえず、痔の薬を試してみることにした。
『ヒサヤ大黒堂』はあまりにもなんなんで……」
み「『ボラギノール』にしたわけよ」
↑これです。A軟膏はステロイド入り。M軟膏はステロイドが入ってません。
律「結果は?」
み「症状が改善しました」
律「痔じゃないの」
み「わたしもそう思って、『痔主宣言』を出したわけ。
しかし!
確かに一時的には良くなったんだけど……。
その後、『ボラギノール』を塗り続けても、症状は一進一退になった。
いわゆる『寛解(かんかい)』と『増悪(ぞうあく)』を繰り返す感じね」
律「難しい用語を知ってるじゃない」
み「乾癬を調べてるとき、ネットで知ったのじゃ。
まさしく乾癬も、良くなったり悪くなったりを繰り返して、決して完治しないからね」
律「ということは、早い話、『温水洗浄便座症候群』ってことよね」
み「お!
知ってますな」
律「妊婦さんにも多いのよ。
便秘がちになって、肛門への刺激を目的にウォシュレットを使う人が増えるから」
律「便意を催すまで、長時間、水を当てる癖がつくの。
そうすると、肛門周りの皮脂が取れちゃうのよ」
↑肛門の周りが、こうなると云うことでしょう。
み「わたしはさすがに、便秘解消のために使うことはないけど……。
事後の洗浄では、かなり時間をかけるわけ。
電気ポットを湧かしてるときなんか、ブレーカーが落ちることがあるからね」
↑1階まで、これを上げに行かねばなりません。
み「夜、便器に座った状態で、真っ暗になることを想像してみなはれ」
↑怖さは感じません。ただただ腹立たしいだけです。
律「はは。
情けないわね」
み「まさしく」
律「水圧を弱くして、あてる時間を短くするしかないわね」
み「でけるか!」
↑怒りのちゃぶ台返し。
み「ネットにも、『弱で、5~10秒』って書いてあったけど……。
そんなんで、ぜったいに綺麗になるわけありませんぜ。
犬じゃあるまいし」
↑昔、犬を散歩させてたとき、この体勢になってるのに気づかず、縄を引き続けてたことがあります。振り向いたら、スゴく切なげな顔をしてたのを覚えてます。
律「犬は綺麗になるの?」
み「動物は、排便時、肛門の内側が捲れあがるの。
直腸が反転するわけよ。
だから、肛門出口にうんこが着かないの。
紙で拭く必要もないってわけ。
ゲーリーじゃない限り」
律「ゲーリーって名前の犬だけ、紙で拭くの?」
↑ケーリー・クーパー。かっちょえーです。
み「阿呆か!
下痢便じゃ!」
フ「あのー。
そろそろ、よろしいですか。
もう、フロントは閉めますので」
み「あ、1点、重要な点を確認しておきます」
フ「なんでしょう?」
み「食事には、お酒は付けられないのよね?」
↑新潟市の鳥屋野潟前にある『割烹の宿 湖畔』の夕食。見た目の豪華さはありませんが、食材は見事です。南蛮海老、いかそうめん、めかぶ、ブリの塩焼き、ブリ大根、海老しんじょう揚、ブリとタコのしゃぶしゃぶ。ブリずくしなのは、冬だからでしょう。お銚子はもちろん『越乃寒梅』。
フ「はい。
お食事は、修業の一環ですので」
律「ちょっと。
明日まで、1滴も飲めないわけ?」
↑気持ちは実によくわかります。わたしは木曜日を休肝日にしてるのですが、帰り道が楽しくないのよ。
み「わたしが、そんな重要なことを調べないわけないでしょ。
自販機でビールを売ってるんだよね」
↑恐山『吉祥閣』ではありません。
フ「はい」
み「その場所を教えてたもれ」
フ「ロビーにございます」
ここで、ひとこと。
ビールの自販機があることは確からしいのですが……。
どこにあるかという情報は得られませんでした。
「ロビー云々」は、わたしの推測です。
上の写真だと、奥に小さく赤い自販機がありますが……。
これじゃないっぽいですね。
大浴場の近くかも知れません。
み「冷蔵庫があれば……。
食事前に買い占めておけるのじゃが」
律「温くなっちゃうから……。
飲むごとに、買いに行かなくちゃならないわね」
み「あ、いいこと思いついた。
ロビーで飲めばいいんだ」
律「それもそうね」
み「オッケー?」
フ「10時に消灯になりますので、お気を付け下さい」
み「懐中電灯、借りられるか?」
フ「残念ながら……」
み「故障する?」
フ「爆発します」
↑恐山『吉祥閣』ではありません。
み「ウソこけ!」
フ「それでは、よろしいでしょうか?」
み「おー。
手間を取らせましたな。
あいにく、細かいのがなくて、チップを出せまぬが」
↑こめんどくさい習慣です。ま、今後の人生で海外旅行に行く予定はないのでかまいませんが。
フ「ロビーの自販機は、お札が使えませんのでお気を付け下さい(※推測です)」
み「にゃにー。
そりは困る。
両替してたもれ」
フ「本来、お断りするところですが……。
なぜか、前のお客さんが、ここで豚の貯金箱を割って、お支払いになりました」
フ「長年、貯めて、ようやくご夫婦で来られたそうです。
喜んで両替させていただきます」
み「それでは、お頼み申す。
夫婦ってことは、2万4千円分は小銭があるわけね。
先生も、1万円分くらい替えてもらえば?」
↑1万円分の100円玉。棒金20本です。
律「そうね。
夜中にお酒が切れて、どこにも調達に行けないってのは避けたいわね」
↑謎。お酒を買っても、手がなくては持って帰れないと思いますが。
み「それじゃ、わたしのと合わせて、2万円ね」
フ「ちょうど1万円ずつ、封筒に入れておいたところです」
み「バカに段取りが良すぎるではないか」
↑わたしはいい方だと思います。でなきゃ定時では帰れません。
フ「細かいお金で、レジが一杯になってしまいまして。
やむなく、かような仕儀に。
どうぞ、ご確認下さい」
み「じゃらじゃら。
ひい、ふう、みい」
フ「あの、まさか時そばをやられるおつもりでは?」
み「鋭いヤツ」
フ「お風呂に入る時間がなくなりますよ」
み「ま、下北まで来て、小銭を数えるのも野暮なもんじゃな。
お主を信じる」
フ「ありがとうございました。
これで、細かいのができましたね」
み「それがどうした?」
フ「チップを下さるおつもりだったのでは?」
み「ぎく!」
み「お、すでにかような時間。
先生、部屋に急ぎましょう。
世話になったな。
決して振り返ってはなりませんぞ」
律「あ、ちょっと待ってよ」
フ「お客さーん」
み「先生、振り返ってはなりませんぞ」
フ「お客さん、そっちじゃありませんよ。
そっちは、大浴場です。
2階への階段は、フロントの正面になってますよ」
律「違うってよ」
み「罠かも知れん」
律「そんなわけないでしょ。
戻るわよ。
ちょっと、なんで後ろ向きで歩いてるのよ」
み「顔を合わせたくない」
律「こういうのを、墓穴を掘るというんだわ。
チップくらいあげればいいのに」
み「10円玉でもあればな。
封筒には、100円玉と500円玉しかなかった」
律「大丈夫よ。
ほら、ニコニコして指さしてる」
律「あ、階段を教えてくれてるんだわ。
ほら、あなたもちゃんと頭を下げなさい。
ありがとうございました」
フ「どうぞ、ごゆっくり。
夕食に遅れませんように。
チップは、お帰りのときで結構です」
み「げ」
律「冗談に決まってるでしょ」
み「今夜、小銭、ぜんぶ使い切るからな」
律「ケチなのに小心なんだから。
とっても情けない性格だと思うわ」
↑ほんまですか!
み「性分なんだから仕方あるまい」
律「階段もすごいわよね」
↑もちろん、『吉祥閣』ではありません。東京銀座の『マキシム・ド・パリ』です。『吉祥閣』の画像がないのよ。
み「螺旋状ですな。
↓新日本海フェリーのバブルの階段を思いだすわい」
み「よっこらしょっと」
律「掛け声はやめなさい」
み「おー、2階の廊下も立派ではないか」
律「シティホテル級ね」
み「土地が安いから、広々としておる」
↑『恐山』の土地は、誰の所有なんですかね? やはりお寺?
律「一言多いの」
み「あったあった。
『彩雲11』じゃなくて、『瑞雲11』」
ガチャ(鍵を開けた音。どういう鍵かわかりません)。
み「おー」
律「ほんと、まさしく旅館だわ」
み「座布団があるな」
み「早よー足を伸ばしたいわい」
律「ちょっと……。
お部屋、間違えたんじゃないの?
どう考えても、2人用の部屋じゃないわよ」
み「鍵が開きましたがな。
間違ってるわけ、おへん」
律「和室が、2部屋あるわ。
こっちは、四畳半ね。
向こうが、畳何枚ある?」
み「ひい、ふう、みい。
実にシンプルな敷き方ですな」
み「3枚敷きの5列。
ずばり、十五畳でしょう」
律「なんで四畳半が別にあるのかしら?」
み「控えの間みたいだよね。
あるいは、お付きの家来用」
律「じゃ、あんたが四畳半ね」
み「なんでじゃ!」
み「十五畳の部屋に、もう布団が2組敷いてあるではないか」
み「これだけ広ければ、おならをしても臭いが籠もりゃせん」
↑はなはだ危険です。「↓」印のところ、顔に見えませんか?
律「もっと離して寝なきゃ。
でも、広いし綺麗だし……」
み「材木も良さげですな」
律「シンプルよね。
和室の極意だわ」
み「テレビもねー。
ラジオもねー」
律「それを言うんじゃないの。
座布団なら、たくさんあるじゃない」
み「いらんわ。
牢名主じゃるまいし」
律「どうする?
お風呂に入ってる時間はなさそうよ」
み「夕食には浴衣で行けないんだから、後回しでいいでしょ。
それよか、室内をば探索いたしましょう。
お、アメニティグッズがあった」
律「何が入ってる?」
み「浴衣と帯だすな。
あとは、バスタオル」
律「その袋は?」
み「歯磨きセットとフェイスタオルだね」
み「ま、最低限ですな」
律「こっちの部屋は何かしら?」
み「洗面所だな」
律「すごいわね。
洗面台が2つもある」
み「基本的に、団体向けに作られてあるんですよ。
あの座布団の数からして、10人くらいで泊まることもあるんじゃないの?
洗面台が1つじゃ、朝は大変でしょ」
律「こっちは……。
あ、トイレだ」
み「どれどれ。
なるほど。
綺麗は綺麗だけど……。
ウォシュレットがないのが致命的じゃ」
律「管が詰まるんじゃ仕方ないわよ」
み「風呂のシャワーで、綺麗に洗うしかないな」
律「そんなことまで、いちいち言わなくていいから。
お部屋は、これだけみたいね」
み「あ」
律「どうしたのよ?」
み「内風呂がない」
律「そういえばそうね。
大浴場を使って下さいということでしょ。
問題ないじゃないの」
み「ヤクザ屋さんの方々はどうするのよ?」
律「どうするって?」
み「彫り物して大浴場に入っていいの?」
律「知らないわよ。
さっきのフロントの人に聞いてくれば?」
み「そういえば、電話もなかったな」
律「でも、そうよね。
ヤクザは自業自得としても……。
皮膚病で炎症がある人とか、乳がんでお乳を取っちゃった人とかもいるわよね。
人前に裸を見せたくない人たち」
み「ま、そりゃそうだけどね。
でも、そういう姿を人前に晒すのもまた、修行と言うことでしょ」
↑これは修行ではありません。
律「そうね。
見る方も、目を背けたりせず、淡々と接する修業をすべきなのよね」
み「お茶でも飲みますか?
入口に電気ポットとお茶セットがあったよね」
み「料金のうちなんだから、飲まなきゃ損です。
取ってくる」
律「セコいんだから」
み「ちゃんと、お盆に載ってて運びやすいわい。
しかし、疑問じゃ」
律「なにがよ?」
み「なんで、玄関の靴入れの上にお茶セットがあるんだ?
出がけに立って飲めってか?」
律「知らないわよ」
み「これを配って回る人の手間を減らす目的しか考えられん」
み「あそこなら、靴を脱がずに置けるからね」
律「旅館とは違いますってことでしょ。
あくまで宿坊なんだから。
本来なら、お茶が欲しければ厨房まで取りに来てくださいってくらいなんじゃないの?」
み「これで申告してなかったら、怒るで」
み「あ」
律「何よ?」
み「お湯が沸いてない」
律「コンセントが差してないからでしょ」
み「あり得んぜよ」
律「だから、旅館じゃないのよ。
差しておいて、後で飲めばいいじゃない」
キンコンカンコン。
↑こんなのは付いてないと思います。
み「な、何ごとじゃ?
空襲警報か?」
律「そんなわけないでしょ」
み「ここらは、物騒な土地なのよ。
津軽海峡に近いでしょ。
だから、『ガメラレーダー』なんてスゴいレーダーが備え付けられてるんだよ」
↑下北半島の釜臥山にあります。ステルス戦闘機F22を捉えて米軍を震撼させたとか。
放「お食事のご用意が整いました。
お客様は、18時までに1階の食堂にお集まりください。
全員がお集まりになるまで、食事を始められませんので……。
お遅れにならないよう、お願いいたします。
なお、浴衣でのお食事はご遠慮いただいております。
私服にておいでください。
浴衣でお出でのお客様につきましては、素っ裸になっていただきます」
ここで、ちょっとお断り。
館内放送が流れることは確からしいのですが……。
チャイムや文言については、わたしの想像(でっち上げ)です(当たり前)。
なお、さっきのフロントマンも、もちろん実在の人物ではありません。
↑フロントマン想像図。
み「お、休憩スペースがある」
み「ここにビールの自販機があれば、1階まで降りなくていいのじゃが」
↑自販機は置いてないっぽいです。
この先、途中の画像が見当たらないので、いきなり食堂の場面に移ります。
み「なんじゃここはー」
律「尋常な広さじゃないわね」
み「300人くらい座れるんでないの?
ひよっとして、あの遙か彼方のステージ前にあるのが、夕食の席でっか?」
律「そうみたいね。
みなさん、もうお集まりだわ」
み「ともかく、座りませう。
コントだと、まず、お膳のない席に座るのだが……」
律「やってみれば?
誰も突っこまないんじゃないの」
↑『つっこみ如来立像(作:みうらじゅん)』。
律「ひょっとしたら、終わるまで放ったらかしかもよ」
み「ここはお笑いの場ではない。
背筋をシャンと伸ばしなされ」
↑お見事。
律「あんたに言われたくないわ。
早く座りましょ」
み「よっこいしょ」
↑このギャグは、初めて知りました。
律「掛け声は止めなさいって。
まぁ、綺麗なお料理ね」
み「力士には足りないだろうけど」
↑力士の焼肉会の様子。4人で60人前を食べたそうです。
律「なんで力士が来るのよ」
み「ご飯、よそってもいいのかな?」
律「まだっぽいわよ」
僧「みなさん、お集まりのようですな」
み「お坊さんが来た」
↑『恐山菩提寺』院代の南直哉(じきさい)さん。この方の『恐山: 死者のいる場所 (新潮新書)』は参考になりました。夕食の法話に来られることもあるようです。
律「いちいち言わなくてもわかるわよ」
み「読者のための説明セリフじゃ」
↑格の違う説明セリフがありました。
僧「大祭のおりなどは、この食堂が満席になります。
そのときは、壇上からマイクでお話しさせていただきますが……。
本日のような少人数のときは、このように、壇の下からマイクを使わずに話します。
わたしは、こちらの方が好きですな。
宿の方は、わたしが毎日壇上からマイクで喋る方が儲かってよいのでしょうが」
律「なんで肘でつっつくのよ?」
み「笑いどころじゃ。
みなさん、笑っておられるでしょ」
↑ここまでは……。
律「私語禁止」
僧「みなさん、全国各地から見えられ、昨日まではまったく知らない同士が……。
こうして、席を同じくしてお食事をいただく。
これまさしく、『一期一会』ですな。
この言葉は、千利休が初めて用いたと伝えられます」
↑1591(天正19)年、秀吉の逆鱗に触れ切腹を命じられます(享年69)。死を命じられた真相は、謎のままだそうです。
僧「利休自身に著作はありませんが……。
利休の弟子に山上宗二(やまのうえそうじ)という茶人がおります。
その方が、『茶湯者覚悟十体』という文を著しております」
↑この中に『茶湯者覚悟十体』があるようです。残念ながら絶版みたいですね。利休より22歳年下ですが、利休の死の前年に亡くなってます(享年46)。
僧「茶道の心得を示した一文ですな。
その中に、こんな記述があります。
『そもそも茶湯の交会は、一期一会といいて、たとえば、幾度の同じ主客交会するとも、今日の会にふたたびかえらざる事を思えば、実に我一世一度の会なり』
これが、千利休の教えだそうです。
この言葉を世に広めたのは、幕末の大老・井伊直弼ですな」
↑“大老"という役職名からか老人のイメージがありますが、『桜田門外の変』で暗殺されたときは、満44歳でした。
僧「茶人としても一流であった井伊直弼は……」
僧「自らの茶道の一番の心得として、『一期一会(いちごいちえ)』の言葉を掲げました」
僧「『一期』と『一会』。
この2つの言葉を出会わせて成句としたのは、茶道の先人の功績です。
しかし、この『一期』と『一会』、実はどちらも仏教語なのです。
『一期』は、人が生まれて死ぬまでの一生のことです」
僧「『一会』は、法会(ほうえ)などの集まりのこと」
↑灌仏会だそうです。
僧「茶道では、お茶の席になりますな」
僧「たとえ、これから何度も会う方であろうとも……。
今日この時に会うのは、まさしく一生に一度だけということです。
みなさんがこうして本日出会い、そして食事を共にする。
仏様のご縁でしょうな」
↑お金にご縁がありそうなポーズ。ありがたや。
僧「この時間は、人生でたった一度だけの瞬間なんです」
僧「今というときを抱きしめ、そしてご飯を噛みしめていただきたい。
噛みしめないで飲みこむと、喉に詰まりますよ」
↑「鵜呑み」の語源です。
僧「いやいや。
笑っておられるが、これはすべてのことに対する心構えでもあります。
さて、それでは、お手元にあります箸袋をお取り下さい」
み「やっと食べれる」
僧「まだでございます」
み「げ、聞こえてた」
僧「こういうところに長くおりますと……。
耳が聞こえすぎるようになりましてな」
↑コントではないようです。
僧「なにしろ、夜、床に入りますと、物音は何も聞こえません。
何も聞こえないと、逆に気になるものでしてな。
つい、目をつぶりながらも、聞き耳を立てる。
聞こえるのは、雨の音、風の音」
↑小林旭の名曲『さすらい』。
僧「しかし、こういう音が聞こえる夜は、まだいいのです。
雨風を聞きながら、いつしか眠りに落ちてしまいます。
しかし、これらが聞こえない静かな夜は困ります」
僧「何かが聞こえるのではないかと、妙に緊張しましてな。
そのうち、頬をさーっと生暖かい風が撫でる。
おかしいな。
窓は閉めてあるはずだが。
そのとき、耳元で囁く声がする。
『法円、法円』。
法円というのは、わたしの僧名です。
『法円、法円……。
寂しくはないか?』」
み「ひっ」
僧「いかがなされました」
み「怖くなったに決まっており申す。
こんな場所で、お坊さんが怪談話なんて反則であんしょ」
僧「お客さんは、どちら方面からお見えです?」
み「口調については気にするでない。
なんで怪談を語り始めるのじゃ」
僧「はて。
忘れ申した」
み「忘れるな!」
僧「どなたか、ご存じの方はおられますかな?」
律「たしか、耳が聞こえすぎるというお話からです」
僧「おー、そうでした。
こちらのお客さんが、『やっと食べれる』と呟かれたのが聞こえたのですな。
ちなみに“食べれる”は、ら抜き言葉です」
み「すでに認知されてるだろ」
僧「国語審議会は、まだ認知しておりません」
み「すぐに認知し、慰謝料を払うべきじゃ」
僧「何の話ですか。
ら抜き表現を使われる方は……。
“ら”で始まる食べ物は口にできません」
み「なんでじゃ!
誰がそんなこと決めた!」
僧「国語審議会です」
み「ウソこけ。
僧が、ウソこいてもいいのか」
僧「嘘も方便という言葉もあります」
↑当然です。
み「いいわい。
ラッキョウは嫌いだでな」
僧「“ら”で始まる食べ物は、ラッキョウだけじゃないでしょ。
例えば、ラーメンとか」
み「パカモーン。
“ン”で終わったら負けではないか。
誰か、墨!」
↑高島彩。髭を描かれても、美人は美人。
僧「しりとりではありません」
律「あの。
そろそろ。
皆さま、お待ちですので。
これを相手にしてると、朝まで食べられませんよ」
僧「途中からそんな気がしてきました。
でもわたしも、負けず嫌いなもので」
み「修業が足りん」
律「相手にしないでください」
僧「わかりました。
みなさん、お手元の箸袋をお取り下さい」
僧「では、それを裏返して下さい。
文字が書いてあります」
↑クリックすると、大きい画像が見られます。
み「なんでじゃー!
わたしは、ウォシュレットをこの上なく愛する女なのじゃ」
↑ウォシュレットを愛する猫。お尻にはあたってないようですが。
フ「細いノズルの内側に硫黄分が付着し、詰まってしまうんです。
欧米でウォシュレットが普及しないのは、水道水が硬水だからだそうです」
フ「ミネラル分が、ノズルの中に付着してしまうんですね」
み「ほー。
そういう課題があるのか。
そしたら、管を太くすれば良いではないか」
フ「いずれ詰まりますよ」
み「水圧を最強にすれば、ミネラルも付着しないんでないの?
水圧で鉄板を切断するカッターとかもあるよね?」
↑恐るべき威力。
律「そんな水圧、お尻に当てられないでしょ」
↑静岡県御殿場市に、かつてあった水飲み場。水の高さは7メートルに達したそうです。
律「そもそも、ウォシュレットの使いすぎは、お肌に悪いのよ」
み「おー、それそれ。
わたしもネットで読んだ。
おかげで、1度出した『痔主宣言』を取り下げたほどじゃ」
↑わかって着てるのでしょうか?
律「何それ?」
み「この春ごろ……。
ウォシュレットを使ってると、ピリピリ痛みを感じるようになったの」
↑ここまでじゃありませんが、ピクッとするくらいはありました。
律「痔でしょ」
み「それが、肛門じゃないんすよ。
明らかに外輪山の外側。
むしろ、山裾の窪みあたり」
み「汗でかぶれたのかと思ったけど……。
そんな季節じゃないしね。
そのうち、ペーパーに血が着くようになった」
み「当然、痔を疑うよね。
不本意ながら。
で、取りあえず、痔の薬を試してみることにした。
『ヒサヤ大黒堂』はあまりにもなんなんで……」
み「『ボラギノール』にしたわけよ」
↑これです。A軟膏はステロイド入り。M軟膏はステロイドが入ってません。
律「結果は?」
み「症状が改善しました」
律「痔じゃないの」
み「わたしもそう思って、『痔主宣言』を出したわけ。
しかし!
確かに一時的には良くなったんだけど……。
その後、『ボラギノール』を塗り続けても、症状は一進一退になった。
いわゆる『寛解(かんかい)』と『増悪(ぞうあく)』を繰り返す感じね」
律「難しい用語を知ってるじゃない」
み「乾癬を調べてるとき、ネットで知ったのじゃ。
まさしく乾癬も、良くなったり悪くなったりを繰り返して、決して完治しないからね」
律「ということは、早い話、『温水洗浄便座症候群』ってことよね」
み「お!
知ってますな」
律「妊婦さんにも多いのよ。
便秘がちになって、肛門への刺激を目的にウォシュレットを使う人が増えるから」
律「便意を催すまで、長時間、水を当てる癖がつくの。
そうすると、肛門周りの皮脂が取れちゃうのよ」
↑肛門の周りが、こうなると云うことでしょう。
み「わたしはさすがに、便秘解消のために使うことはないけど……。
事後の洗浄では、かなり時間をかけるわけ。
電気ポットを湧かしてるときなんか、ブレーカーが落ちることがあるからね」
↑1階まで、これを上げに行かねばなりません。
み「夜、便器に座った状態で、真っ暗になることを想像してみなはれ」
↑怖さは感じません。ただただ腹立たしいだけです。
律「はは。
情けないわね」
み「まさしく」
律「水圧を弱くして、あてる時間を短くするしかないわね」
み「でけるか!」
↑怒りのちゃぶ台返し。
み「ネットにも、『弱で、5~10秒』って書いてあったけど……。
そんなんで、ぜったいに綺麗になるわけありませんぜ。
犬じゃあるまいし」
↑昔、犬を散歩させてたとき、この体勢になってるのに気づかず、縄を引き続けてたことがあります。振り向いたら、スゴく切なげな顔をしてたのを覚えてます。
律「犬は綺麗になるの?」
み「動物は、排便時、肛門の内側が捲れあがるの。
直腸が反転するわけよ。
だから、肛門出口にうんこが着かないの。
紙で拭く必要もないってわけ。
ゲーリーじゃない限り」
律「ゲーリーって名前の犬だけ、紙で拭くの?」
↑ケーリー・クーパー。かっちょえーです。
み「阿呆か!
下痢便じゃ!」
フ「あのー。
そろそろ、よろしいですか。
もう、フロントは閉めますので」
み「あ、1点、重要な点を確認しておきます」
フ「なんでしょう?」
み「食事には、お酒は付けられないのよね?」
↑新潟市の鳥屋野潟前にある『割烹の宿 湖畔』の夕食。見た目の豪華さはありませんが、食材は見事です。南蛮海老、いかそうめん、めかぶ、ブリの塩焼き、ブリ大根、海老しんじょう揚、ブリとタコのしゃぶしゃぶ。ブリずくしなのは、冬だからでしょう。お銚子はもちろん『越乃寒梅』。
フ「はい。
お食事は、修業の一環ですので」
律「ちょっと。
明日まで、1滴も飲めないわけ?」
↑気持ちは実によくわかります。わたしは木曜日を休肝日にしてるのですが、帰り道が楽しくないのよ。
み「わたしが、そんな重要なことを調べないわけないでしょ。
自販機でビールを売ってるんだよね」
↑恐山『吉祥閣』ではありません。
フ「はい」
み「その場所を教えてたもれ」
フ「ロビーにございます」
ここで、ひとこと。
ビールの自販機があることは確からしいのですが……。
どこにあるかという情報は得られませんでした。
「ロビー云々」は、わたしの推測です。
上の写真だと、奥に小さく赤い自販機がありますが……。
これじゃないっぽいですね。
大浴場の近くかも知れません。
み「冷蔵庫があれば……。
食事前に買い占めておけるのじゃが」
律「温くなっちゃうから……。
飲むごとに、買いに行かなくちゃならないわね」
み「あ、いいこと思いついた。
ロビーで飲めばいいんだ」
律「それもそうね」
み「オッケー?」
フ「10時に消灯になりますので、お気を付け下さい」
み「懐中電灯、借りられるか?」
フ「残念ながら……」
み「故障する?」
フ「爆発します」
↑恐山『吉祥閣』ではありません。
み「ウソこけ!」
フ「それでは、よろしいでしょうか?」
み「おー。
手間を取らせましたな。
あいにく、細かいのがなくて、チップを出せまぬが」
↑こめんどくさい習慣です。ま、今後の人生で海外旅行に行く予定はないのでかまいませんが。
フ「ロビーの自販機は、お札が使えませんのでお気を付け下さい(※推測です)」
み「にゃにー。
そりは困る。
両替してたもれ」
フ「本来、お断りするところですが……。
なぜか、前のお客さんが、ここで豚の貯金箱を割って、お支払いになりました」
フ「長年、貯めて、ようやくご夫婦で来られたそうです。
喜んで両替させていただきます」
み「それでは、お頼み申す。
夫婦ってことは、2万4千円分は小銭があるわけね。
先生も、1万円分くらい替えてもらえば?」
↑1万円分の100円玉。棒金20本です。
律「そうね。
夜中にお酒が切れて、どこにも調達に行けないってのは避けたいわね」
↑謎。お酒を買っても、手がなくては持って帰れないと思いますが。
み「それじゃ、わたしのと合わせて、2万円ね」
フ「ちょうど1万円ずつ、封筒に入れておいたところです」
み「バカに段取りが良すぎるではないか」
↑わたしはいい方だと思います。でなきゃ定時では帰れません。
フ「細かいお金で、レジが一杯になってしまいまして。
やむなく、かような仕儀に。
どうぞ、ご確認下さい」
み「じゃらじゃら。
ひい、ふう、みい」
フ「あの、まさか時そばをやられるおつもりでは?」
み「鋭いヤツ」
フ「お風呂に入る時間がなくなりますよ」
み「ま、下北まで来て、小銭を数えるのも野暮なもんじゃな。
お主を信じる」
フ「ありがとうございました。
これで、細かいのができましたね」
み「それがどうした?」
フ「チップを下さるおつもりだったのでは?」
み「ぎく!」
み「お、すでにかような時間。
先生、部屋に急ぎましょう。
世話になったな。
決して振り返ってはなりませんぞ」
律「あ、ちょっと待ってよ」
フ「お客さーん」
み「先生、振り返ってはなりませんぞ」
フ「お客さん、そっちじゃありませんよ。
そっちは、大浴場です。
2階への階段は、フロントの正面になってますよ」
律「違うってよ」
み「罠かも知れん」
律「そんなわけないでしょ。
戻るわよ。
ちょっと、なんで後ろ向きで歩いてるのよ」
み「顔を合わせたくない」
律「こういうのを、墓穴を掘るというんだわ。
チップくらいあげればいいのに」
み「10円玉でもあればな。
封筒には、100円玉と500円玉しかなかった」
律「大丈夫よ。
ほら、ニコニコして指さしてる」
律「あ、階段を教えてくれてるんだわ。
ほら、あなたもちゃんと頭を下げなさい。
ありがとうございました」
フ「どうぞ、ごゆっくり。
夕食に遅れませんように。
チップは、お帰りのときで結構です」
み「げ」
律「冗談に決まってるでしょ」
み「今夜、小銭、ぜんぶ使い切るからな」
律「ケチなのに小心なんだから。
とっても情けない性格だと思うわ」
↑ほんまですか!
み「性分なんだから仕方あるまい」
律「階段もすごいわよね」
↑もちろん、『吉祥閣』ではありません。東京銀座の『マキシム・ド・パリ』です。『吉祥閣』の画像がないのよ。
み「螺旋状ですな。
↓新日本海フェリーのバブルの階段を思いだすわい」
み「よっこらしょっと」
律「掛け声はやめなさい」
み「おー、2階の廊下も立派ではないか」
律「シティホテル級ね」
み「土地が安いから、広々としておる」
↑『恐山』の土地は、誰の所有なんですかね? やはりお寺?
律「一言多いの」
み「あったあった。
『彩雲11』じゃなくて、『瑞雲11』」
ガチャ(鍵を開けた音。どういう鍵かわかりません)。
み「おー」
律「ほんと、まさしく旅館だわ」
み「座布団があるな」
み「早よー足を伸ばしたいわい」
律「ちょっと……。
お部屋、間違えたんじゃないの?
どう考えても、2人用の部屋じゃないわよ」
み「鍵が開きましたがな。
間違ってるわけ、おへん」
律「和室が、2部屋あるわ。
こっちは、四畳半ね。
向こうが、畳何枚ある?」
み「ひい、ふう、みい。
実にシンプルな敷き方ですな」
み「3枚敷きの5列。
ずばり、十五畳でしょう」
律「なんで四畳半が別にあるのかしら?」
み「控えの間みたいだよね。
あるいは、お付きの家来用」
律「じゃ、あんたが四畳半ね」
み「なんでじゃ!」
み「十五畳の部屋に、もう布団が2組敷いてあるではないか」
み「これだけ広ければ、おならをしても臭いが籠もりゃせん」
↑はなはだ危険です。「↓」印のところ、顔に見えませんか?
律「もっと離して寝なきゃ。
でも、広いし綺麗だし……」
み「材木も良さげですな」
律「シンプルよね。
和室の極意だわ」
み「テレビもねー。
ラジオもねー」
律「それを言うんじゃないの。
座布団なら、たくさんあるじゃない」
み「いらんわ。
牢名主じゃるまいし」
律「どうする?
お風呂に入ってる時間はなさそうよ」
み「夕食には浴衣で行けないんだから、後回しでいいでしょ。
それよか、室内をば探索いたしましょう。
お、アメニティグッズがあった」
律「何が入ってる?」
み「浴衣と帯だすな。
あとは、バスタオル」
律「その袋は?」
み「歯磨きセットとフェイスタオルだね」
み「ま、最低限ですな」
律「こっちの部屋は何かしら?」
み「洗面所だな」
律「すごいわね。
洗面台が2つもある」
み「基本的に、団体向けに作られてあるんですよ。
あの座布団の数からして、10人くらいで泊まることもあるんじゃないの?
洗面台が1つじゃ、朝は大変でしょ」
律「こっちは……。
あ、トイレだ」
み「どれどれ。
なるほど。
綺麗は綺麗だけど……。
ウォシュレットがないのが致命的じゃ」
律「管が詰まるんじゃ仕方ないわよ」
み「風呂のシャワーで、綺麗に洗うしかないな」
律「そんなことまで、いちいち言わなくていいから。
お部屋は、これだけみたいね」
み「あ」
律「どうしたのよ?」
み「内風呂がない」
律「そういえばそうね。
大浴場を使って下さいということでしょ。
問題ないじゃないの」
み「ヤクザ屋さんの方々はどうするのよ?」
律「どうするって?」
み「彫り物して大浴場に入っていいの?」
律「知らないわよ。
さっきのフロントの人に聞いてくれば?」
み「そういえば、電話もなかったな」
律「でも、そうよね。
ヤクザは自業自得としても……。
皮膚病で炎症がある人とか、乳がんでお乳を取っちゃった人とかもいるわよね。
人前に裸を見せたくない人たち」
み「ま、そりゃそうだけどね。
でも、そういう姿を人前に晒すのもまた、修行と言うことでしょ」
↑これは修行ではありません。
律「そうね。
見る方も、目を背けたりせず、淡々と接する修業をすべきなのよね」
み「お茶でも飲みますか?
入口に電気ポットとお茶セットがあったよね」
み「料金のうちなんだから、飲まなきゃ損です。
取ってくる」
律「セコいんだから」
み「ちゃんと、お盆に載ってて運びやすいわい。
しかし、疑問じゃ」
律「なにがよ?」
み「なんで、玄関の靴入れの上にお茶セットがあるんだ?
出がけに立って飲めってか?」
律「知らないわよ」
み「これを配って回る人の手間を減らす目的しか考えられん」
み「あそこなら、靴を脱がずに置けるからね」
律「旅館とは違いますってことでしょ。
あくまで宿坊なんだから。
本来なら、お茶が欲しければ厨房まで取りに来てくださいってくらいなんじゃないの?」
み「これで申告してなかったら、怒るで」
み「あ」
律「何よ?」
み「お湯が沸いてない」
律「コンセントが差してないからでしょ」
み「あり得んぜよ」
律「だから、旅館じゃないのよ。
差しておいて、後で飲めばいいじゃない」
キンコンカンコン。
↑こんなのは付いてないと思います。
み「な、何ごとじゃ?
空襲警報か?」
律「そんなわけないでしょ」
み「ここらは、物騒な土地なのよ。
津軽海峡に近いでしょ。
だから、『ガメラレーダー』なんてスゴいレーダーが備え付けられてるんだよ」
↑下北半島の釜臥山にあります。ステルス戦闘機F22を捉えて米軍を震撼させたとか。
放「お食事のご用意が整いました。
お客様は、18時までに1階の食堂にお集まりください。
全員がお集まりになるまで、食事を始められませんので……。
お遅れにならないよう、お願いいたします。
なお、浴衣でのお食事はご遠慮いただいております。
私服にておいでください。
浴衣でお出でのお客様につきましては、素っ裸になっていただきます」
ここで、ちょっとお断り。
館内放送が流れることは確からしいのですが……。
チャイムや文言については、わたしの想像(でっち上げ)です(当たり前)。
なお、さっきのフロントマンも、もちろん実在の人物ではありません。
↑フロントマン想像図。
み「お、休憩スペースがある」
み「ここにビールの自販機があれば、1階まで降りなくていいのじゃが」
↑自販機は置いてないっぽいです。
この先、途中の画像が見当たらないので、いきなり食堂の場面に移ります。
み「なんじゃここはー」
律「尋常な広さじゃないわね」
み「300人くらい座れるんでないの?
ひよっとして、あの遙か彼方のステージ前にあるのが、夕食の席でっか?」
律「そうみたいね。
みなさん、もうお集まりだわ」
み「ともかく、座りませう。
コントだと、まず、お膳のない席に座るのだが……」
律「やってみれば?
誰も突っこまないんじゃないの」
↑『つっこみ如来立像(作:みうらじゅん)』。
律「ひょっとしたら、終わるまで放ったらかしかもよ」
み「ここはお笑いの場ではない。
背筋をシャンと伸ばしなされ」
↑お見事。
律「あんたに言われたくないわ。
早く座りましょ」
み「よっこいしょ」
↑このギャグは、初めて知りました。
律「掛け声は止めなさいって。
まぁ、綺麗なお料理ね」
み「力士には足りないだろうけど」
↑力士の焼肉会の様子。4人で60人前を食べたそうです。
律「なんで力士が来るのよ」
み「ご飯、よそってもいいのかな?」
律「まだっぽいわよ」
僧「みなさん、お集まりのようですな」
み「お坊さんが来た」
↑『恐山菩提寺』院代の南直哉(じきさい)さん。この方の『恐山: 死者のいる場所 (新潮新書)』は参考になりました。夕食の法話に来られることもあるようです。
律「いちいち言わなくてもわかるわよ」
み「読者のための説明セリフじゃ」
↑格の違う説明セリフがありました。
僧「大祭のおりなどは、この食堂が満席になります。
そのときは、壇上からマイクでお話しさせていただきますが……。
本日のような少人数のときは、このように、壇の下からマイクを使わずに話します。
わたしは、こちらの方が好きですな。
宿の方は、わたしが毎日壇上からマイクで喋る方が儲かってよいのでしょうが」
律「なんで肘でつっつくのよ?」
み「笑いどころじゃ。
みなさん、笑っておられるでしょ」
↑ここまでは……。
律「私語禁止」
僧「みなさん、全国各地から見えられ、昨日まではまったく知らない同士が……。
こうして、席を同じくしてお食事をいただく。
これまさしく、『一期一会』ですな。
この言葉は、千利休が初めて用いたと伝えられます」
↑1591(天正19)年、秀吉の逆鱗に触れ切腹を命じられます(享年69)。死を命じられた真相は、謎のままだそうです。
僧「利休自身に著作はありませんが……。
利休の弟子に山上宗二(やまのうえそうじ)という茶人がおります。
その方が、『茶湯者覚悟十体』という文を著しております」
↑この中に『茶湯者覚悟十体』があるようです。残念ながら絶版みたいですね。利休より22歳年下ですが、利休の死の前年に亡くなってます(享年46)。
僧「茶道の心得を示した一文ですな。
その中に、こんな記述があります。
『そもそも茶湯の交会は、一期一会といいて、たとえば、幾度の同じ主客交会するとも、今日の会にふたたびかえらざる事を思えば、実に我一世一度の会なり』
これが、千利休の教えだそうです。
この言葉を世に広めたのは、幕末の大老・井伊直弼ですな」
↑“大老"という役職名からか老人のイメージがありますが、『桜田門外の変』で暗殺されたときは、満44歳でした。
僧「茶人としても一流であった井伊直弼は……」
僧「自らの茶道の一番の心得として、『一期一会(いちごいちえ)』の言葉を掲げました」
僧「『一期』と『一会』。
この2つの言葉を出会わせて成句としたのは、茶道の先人の功績です。
しかし、この『一期』と『一会』、実はどちらも仏教語なのです。
『一期』は、人が生まれて死ぬまでの一生のことです」
僧「『一会』は、法会(ほうえ)などの集まりのこと」
↑灌仏会だそうです。
僧「茶道では、お茶の席になりますな」
僧「たとえ、これから何度も会う方であろうとも……。
今日この時に会うのは、まさしく一生に一度だけということです。
みなさんがこうして本日出会い、そして食事を共にする。
仏様のご縁でしょうな」
↑お金にご縁がありそうなポーズ。ありがたや。
僧「この時間は、人生でたった一度だけの瞬間なんです」
僧「今というときを抱きしめ、そしてご飯を噛みしめていただきたい。
噛みしめないで飲みこむと、喉に詰まりますよ」
↑「鵜呑み」の語源です。
僧「いやいや。
笑っておられるが、これはすべてのことに対する心構えでもあります。
さて、それでは、お手元にあります箸袋をお取り下さい」
み「やっと食べれる」
僧「まだでございます」
み「げ、聞こえてた」
僧「こういうところに長くおりますと……。
耳が聞こえすぎるようになりましてな」
↑コントではないようです。
僧「なにしろ、夜、床に入りますと、物音は何も聞こえません。
何も聞こえないと、逆に気になるものでしてな。
つい、目をつぶりながらも、聞き耳を立てる。
聞こえるのは、雨の音、風の音」
↑小林旭の名曲『さすらい』。
僧「しかし、こういう音が聞こえる夜は、まだいいのです。
雨風を聞きながら、いつしか眠りに落ちてしまいます。
しかし、これらが聞こえない静かな夜は困ります」
僧「何かが聞こえるのではないかと、妙に緊張しましてな。
そのうち、頬をさーっと生暖かい風が撫でる。
おかしいな。
窓は閉めてあるはずだが。
そのとき、耳元で囁く声がする。
『法円、法円』。
法円というのは、わたしの僧名です。
『法円、法円……。
寂しくはないか?』」
み「ひっ」
僧「いかがなされました」
み「怖くなったに決まっており申す。
こんな場所で、お坊さんが怪談話なんて反則であんしょ」
僧「お客さんは、どちら方面からお見えです?」
み「口調については気にするでない。
なんで怪談を語り始めるのじゃ」
僧「はて。
忘れ申した」
み「忘れるな!」
僧「どなたか、ご存じの方はおられますかな?」
律「たしか、耳が聞こえすぎるというお話からです」
僧「おー、そうでした。
こちらのお客さんが、『やっと食べれる』と呟かれたのが聞こえたのですな。
ちなみに“食べれる”は、ら抜き言葉です」
み「すでに認知されてるだろ」
僧「国語審議会は、まだ認知しておりません」
み「すぐに認知し、慰謝料を払うべきじゃ」
僧「何の話ですか。
ら抜き表現を使われる方は……。
“ら”で始まる食べ物は口にできません」
み「なんでじゃ!
誰がそんなこと決めた!」
僧「国語審議会です」
み「ウソこけ。
僧が、ウソこいてもいいのか」
僧「嘘も方便という言葉もあります」
↑当然です。
み「いいわい。
ラッキョウは嫌いだでな」
僧「“ら”で始まる食べ物は、ラッキョウだけじゃないでしょ。
例えば、ラーメンとか」
み「パカモーン。
“ン”で終わったら負けではないか。
誰か、墨!」
↑高島彩。髭を描かれても、美人は美人。
僧「しりとりではありません」
律「あの。
そろそろ。
皆さま、お待ちですので。
これを相手にしてると、朝まで食べられませんよ」
僧「途中からそんな気がしてきました。
でもわたしも、負けず嫌いなもので」
み「修業が足りん」
律「相手にしないでください」
僧「わかりました。
みなさん、お手元の箸袋をお取り下さい」
僧「では、それを裏返して下さい。
文字が書いてあります」
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