2019.8.23(金)
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公園のトイレを出ると、あたりはもう薄暗くなっていた。
思いのほか、長く気を失っていたようだ。
前夜、下請けと遅くまで飲んで、寝不足だったせいだろう。
妻のアパートの窓には、もう明かりが灯っていた。
「あら、どうしたの?
今日も現場じゃなかった?」
「工事がはかどってね」
「夕食、まだでしょ。
何か作るわ」
「それより、いいお土産があるんだ」
わたしは、廊下を兼ねたキッチンから妻の手を引き、部屋に導いた。
「何かしら?
海辺の町って言ってたわね。
お魚?」
「もっといいもの」
わたしは鞄から投稿誌を取り出すと、妻の眼前でページを開いた。
もちろん、妻の載っているページだ。
わたしは、妻の顔を凝視していた。
見ものだった。
最初はギョッとした顔をしていたのが……。
だんだん、酔ったような無表情に変わっていった。
妻の無表情は、無関心の現れじゃない。
まったく逆だ。
魂を奪われてしまっている表情なんだ。
「どう?
こんなに綺麗に撮れてる」
わたしは、ページを捲った。
妻の写真は、見開き2ページにわたって掲載されていたんだ。
編集部のコメントでは、「ポニー仮面」と称されていた。
ポニーは、ポニーテールのことだろう。
マスクの後ろの編み目から、束ねた髪を出していたから。
妻は、最後の一枚を凝視していた。
テレビ枕に凭れて、両脚を高々と掲げてる写真だった。
両肘で両膝裏を固定している。
そして、三つ指を突くように揃えた指先は、陰唇を目一杯開いていた。
しかし……。
残念ながらその箇所には、黒塗りが施されている。
その代わり、編集部が、性器の形状を解説していた。
『陰唇は大ぶり。膣前庭は濃いめのサーモンピンク。尿道口まで見えている。特筆すべきは巨大なクリトリス。小指の先が突き出ているようだ。いやらしく勃起しきっている』
妻の視線は、その文章の下りを幾度も往復していた。
公園のトイレを出ると、あたりはもう薄暗くなっていた。
思いのほか、長く気を失っていたようだ。
前夜、下請けと遅くまで飲んで、寝不足だったせいだろう。
妻のアパートの窓には、もう明かりが灯っていた。
「あら、どうしたの?
今日も現場じゃなかった?」
「工事がはかどってね」
「夕食、まだでしょ。
何か作るわ」
「それより、いいお土産があるんだ」
わたしは、廊下を兼ねたキッチンから妻の手を引き、部屋に導いた。
「何かしら?
海辺の町って言ってたわね。
お魚?」
「もっといいもの」
わたしは鞄から投稿誌を取り出すと、妻の眼前でページを開いた。
もちろん、妻の載っているページだ。
わたしは、妻の顔を凝視していた。
見ものだった。
最初はギョッとした顔をしていたのが……。
だんだん、酔ったような無表情に変わっていった。
妻の無表情は、無関心の現れじゃない。
まったく逆だ。
魂を奪われてしまっている表情なんだ。
「どう?
こんなに綺麗に撮れてる」
わたしは、ページを捲った。
妻の写真は、見開き2ページにわたって掲載されていたんだ。
編集部のコメントでは、「ポニー仮面」と称されていた。
ポニーは、ポニーテールのことだろう。
マスクの後ろの編み目から、束ねた髪を出していたから。
妻は、最後の一枚を凝視していた。
テレビ枕に凭れて、両脚を高々と掲げてる写真だった。
両肘で両膝裏を固定している。
そして、三つ指を突くように揃えた指先は、陰唇を目一杯開いていた。
しかし……。
残念ながらその箇所には、黒塗りが施されている。
その代わり、編集部が、性器の形状を解説していた。
『陰唇は大ぶり。膣前庭は濃いめのサーモンピンク。尿道口まで見えている。特筆すべきは巨大なクリトリス。小指の先が突き出ているようだ。いやらしく勃起しきっている』
妻の視線は、その文章の下りを幾度も往復していた。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2019/08/23 05:54
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今日は何の日
2019年8月23日は、『処暑』。
「処暑(しょしょ)」は、二十四節気のひとつ。
現在広まってる定気法では、太陽黄経が150度のときで8月23日ごろ。
「立秋(8月8日)」と「白露(9月8日)」の中間にあたります(日付は2019年のもの)。
期間としての意味もあり……。
この場合、この日から、次の節気である「白露」の前日までを云います。
西洋占星術では、「処暑」が処女宮(おとめ座)の始まり。
暑さが止むという意味から「処暑」といわれ……。
厳しい暑さが峠を越し、涼風が吹き始めるころ。
『暦便覧』では、「陽気とどまりて、初めて退きやまむとすれば也」と説明されてます。
台風が高い確率で襲来する特異日となってるそうです。
上記の記述は、こちら(https://zatsuneta.com/archives/108231.html)のページから転載させていただきました。
冒頭で、2019年と断ったのは、年によって日付が変わるからです。
だいたい、22日と23日が、2年ずつ続くようです。
昨年と今年が、23日。
来年、再来年が、22日です。
今後、このパターンが崩れるのは、2042年になります。
2040年から2042年まで、22日が3年続くのです。
“暑さが止むという意味から「処暑」"とあります。
「処」には終わるという意味があるのでしょうか。
でも、調べてみましたが……。
「処」という漢字に、止むという意味はないようです。
続きは次のコメントで。
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2. Mikiko- 2019/08/23 05:55
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今日は何の日(つづき)
↓「処」の件については、こちらのページの記述が、実にためになりました。
https://blog.goo.ne.jp/mayanmilk3/e/0acd2db0173ad5873eca74f02e21ffde
↓一部抜粋させていただきます。
+++
漢字本来の、つまり中国での「処」の意味は、①ある場所に落ち着く、②然るべきところに置く、③あるべき所に落ち着けるという意味だそうですから、もう少し丁寧に表現すれば、「処暑」は「暑さがあるべき所に落ち着く」という意味なのではと思います。
+++
なるほどですね。
もうひとつ、「処暑」という読みから、どうしても連想してしまうのが……。
「処女」です。
これは、「女として落ち着く」という意味ではないでしょう。
どうやらこれはもともと、「家に処(い)る女」という意味だったようです。
すなわち、嫁ぐ前の女性。
昔は、「未婚女性=処女」だったわけです。
しかし、今年はまさしく、この二十四節気どおりの天候でしたね。
先週末からは、庭の水やりも必要なくなりました。
こちら、明け方からかなり強い雨になってます。
暑さが一段落するのはホッとしますが……。
やはり寂しさも覚えます。
今どきの夏休みって、31日までなんですかね?
とすれば、図書館が混むのも、あと1週間か。
先週は、満席で座れないなんてこともあったんです。
わたしにとっては、死活問題(ちと大げさ)です。
子供は家で勉強しろ!