2019.7.27(土)
「これは……!」
黒岡は槍を目にして驚愕した。
槍は柄に細かな彫り物が施してあり、見るからに高価な槍であることはすぐに分かったが、それ以上に黒岡を驚かせたのは槍の穂先であった。
本来ならば、穂先には尖った刃が取り付けられているものだが、刃はなく代わりに男根を模した飴色の張形が埋め込まれていた。
「穂先に取り付けてあるものは、もしや張形ではあるまいか?」
「そのとおり。奥方が泣きて歓ぶ張形でござる」
「ほほう、これはこれは、ありがたきものを」
黒岡は下川の意図を悟って淫靡な笑みを浮かべた。
下川はさらに誇らしげに言葉を続けた。
「張形とは言っても、いずこにもあるような代物ではござらず」
「ほう、ではいったいいかなるもので?」
「専門の職人を呼び寄せて
「なんと、鼈甲とは!? 然る高価な物でできておるのか」
「鼈甲は硬いが実に滑らかなる良き感触をしておってのぅ。あんな物で責められせば女はひとたまりもなかろうて。はっはっはっ~」
「では早速、磔台の姫君に試してみようかのぅ」
「ぜひに。ただしありさ姫はまだ初心と聞き及ぶが」
「取調べ役人の話ではそのようなるが、それが何か?」
「ふむ。いかに滑らかな鼈甲製の張形といえども生娘にはさぞやきつかろう。そこでもう一品よきものを用意つかまつりき」
「ほほう、よきものとな?」
下川は配下の家臣に合図を送った。
家臣は後方に置いてあった壷を重そうに抱えて、黒岡の面前に差し出し深々と頭を下げた。
「うん? なんじゃ?」
黒岡が壷の中を覗いてみると、水飴のようにどろどろとした琥珀色の液体が入っているのが見えた。
黒岡は下川に尋ねた。
「これはいったいなんじゃ……? 一見、飴のごときが」
「これは、数種の素材を混ぜ合わせ作りし媚薬でござる」
「び、媚薬とな!?」
「大きな声では言えぬがのぅ、聞くところによると、山芋とズイキが主成分で、他にスイカズラ、百合の花蜜、ガマの油、マムシ酒、虎の睾丸を少量混ぜておるそうな。くっくっくっ、これを女陰に少量着くるのみで、女は身体がほてり、吐息が熱く、激しく渇望が現れるらしい。生娘なれども淫乱女に変身する神薬じゃ。くっくっくっ」
「そうか、それはたのしみじゃ。では早速これを使ってありさ姫を責めてみようぞ。あの毅然とせし態度のありさ姫がいかに変わるか楽しみじゃのぅ。はっはっは~」
黒岡は家臣を呼び寄せ、ありさ姫に対して献上品の槍と媚薬を使用するよう命じた。
家臣はすぐに処刑執行役人を呼び、何やら耳打ちをした。
垣根の向こうにいる観衆はそんな内情など知るよしもなく、なかなか処刑が行なわれないためざわつき始めていた。
「処刑が手間取っているようだがどうしたんだんべい?」
「殿様同士が何やら話されている様子だが、何を話されておるのか、遠くて分からんわい」
「ん? 執行役人が動き出したぞ。そろそろ始まるだな」
執行役人の一人が献上品の槍を握り、ありさ姫の前方に立った。
左手には例の壷が置かれている。
執行役人は壷の中に槍の穂先を差し込んだ。
どろりとした液体が穂先に絡みつく。
執行役人は数回かき混ぜた後、穂先を空に向けた。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2019/07/27 07:44
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肥後ずいき
本文、媚薬の主成分のひとつとして……。
「ズイキ」というのがあげられてます。
これは本来、「芋茎」と書きます。
サトイモやハスイモなどの葉柄のことです。
わたしの地域では、「いもがら」と呼ばれてます。
わたしは、この「いもがら」のお味噌汁が、子供のころから大好物でした。
しかし、本文で使われてる「ズイキ」は……。
「肥後ずいき」のことではないかと思います。
熊本県に産するハスイモの茎を干したものです。
肥後細川藩が徳川将軍家への献上品に定め……。
参勤交代の土産物として持参したとされます。
しかしそれは、お城の台所用ではありません。
大奥への献上品だったのです。
じつは、「ずいき」という名の由来は……。
「随喜」なんだそうです。
すなわち、性具に加工されてたのです。
ハスイモの葉柄の皮をむいて乾燥させ……。
木綿糸で縛って「こけし型」や「リング型」に編んで作られます。
女人の世界である大奥の女性には、必需品だったのでしょう。
そんなら、ほかの材料からでも作れそうですが……。
そうはいきません。
熊本県に産するハスイモの茎の成分が重要なのです。
これに含まれるサポニンが、毛細血管の血流を高めるそうです。
男性器が勃起するのは、血が流れこむわけですから……。
とうぜん、その作用に好影響を及ぼすでしょう。
もちろん、女性の陰核にも同様な作用があるはず。
今でも普通に作られ、売られてるようです。
ま、ある程度、プラシーボ効果もあるのでしょうけどね。
続きは次のコメントで。
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2. Mikiko- 2019/07/27 07:45
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肥後ずいき(つづき)
でも、わたしが思うに……。
痒くなるんじゃないですかね?
これは、本文中の媚薬の主成分として……。
もうひとつ、「山芋」があげられてることから気づきました。
子供のころ、山芋を擦ったのを食べて……。
口の周りが痒くなった覚えがあります。
これの軽い状態が、互いの性器で起こるんだと思います。
つまり、カイカイになるわけ。
痒くなったら、どうしたくなりますか?
もちろん、掻きたくなります。
つまり、相手の性器に擦りつけたくなるわけです。
さらに、互いの性器は、サポニンで熱くなってます。
痒いところを掻くという快感も加わるわけです。
もう、夢中になって擦るんじゃないでしょうか。
今、ここまで書いてきて……。
ちょっと待てよと思いました。
こんなに効果があったら……。
少なくとも男性の方は、すぐに終わってしまうのでは?
あ、そうか。
つまり、こんなのを使わなくても、ちゃんと勃つ人には、必要ないわけだ。
ていうか、使っちゃダメですよ。
すぐ終わっちゃいますから。
早漏促進効果しかありません。
使うべきなのは、ちょっとやそっとじゃ勃たない人。
そういう人の局所に、毛細血管効果で血を送りこみ……。
勃たせる。
そして、隔靴掻痒効果により、それを持続させる。
これなら、奥さん、大喜びですよね。
『肥後ずいき』という名称から……。
絶倫さん向けの商品と思われがちです。
でも、そうではなく……。
むしろ、EDのとば口にいる人が使うべきなのでしょう。
熊本に出張するお父さん、ぜひお土産に買って帰りましょう。
奥さん、大喜び!
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3. Shy- 2019/07/27 08:32
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過去熊本に行った際「肥後ずいき」を使用しました。
エッセイにしておりますので、どうぞご参照ください。
http://shy8.x.fc2.com/essay/nanako/higozuiki/higozuiki.html
痒いもの……では決してありませんので。
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4. Mikiko- 2019/07/27 12:24
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ありゃ
痒くなりませんか。
それは、残念無念。
でも、エッセイ中、ご自分で↓のように書かれてますぞ。
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大事なところに山芋を塗られて泣き叫ぶ女性のようにむず痒い感じなのでしょうか。
+++
リング状の効能。
男性の根元に巻いて使用するのですね。
カリ下に、ねじりハチマキみたいに巻くのかと思ってました。
おそらく、そのリングが……。
女性のクリトリスを刺激するのでしょう。
リングのせいで、男性はストロークが浅くなるから……。
長持ちするのかも?
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5. Shy- 2019/07/27 21:50
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使用したのは当時の彼女だったので、今となっては正確な感覚をお伝えできないのが残念です。
山芋が痒いのは確実ですが、肥後ずいきを痒いとは言ってなかったと思います。
>リングのせいで、男性はストロークが浅くなるから……。
>長持ちするのかも?
膣の深さは平均8cmです。
ペニスの長さが日本人の平均どのくらいか詳しく知りませんが、
仮に16㎝だとすれば最奥まで届いておつりがくるはずです。
だとすれば、肥後ずいきリング状が幅1㎝だとしても、ストロークにあまり影響がないように思います。
当時装着して、さほどストロークに変化がなかったように記憶しています。
早漏の男性の持続に効果があるかどうかはよく分かりません。
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6. Mikiko- 2019/07/28 06:35
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ズイキ
芋は痒くても、葉柄は痒くないのか。
平均8㎝の件。
それは、平常時の深さということですよね。
女性の膣は、赤ん坊が出てくることからもわかるように……。
非常に、伸縮性、柔軟性に富んでます。
なので、8㎝以上の長さのものが入って、奥にあたった場合……。
奥に向けて伸びるわけです。
つまり、膣にとっては……。
リングの厚みなど、誤差の範囲内ということなんですかね。
痒くならないとしたら……。
やっぱり、サポニン効果なんでしょうか。
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7. 手羽崎 鶏造- 2019/07/28 09:34
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西の横綱が「肥後ずいき」なら、
東の横綱格は「こけし」を使うことではないでしょうか。
丸味を帯びたカーブに木の感触。
「こけしプレイ」というのが、有ったように
思いますよ。
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8. Mikiko- 2019/07/28 11:48
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こけし
元々、張形の別名としての呼称だったようです。
でも実際、戦後には、張形に目鼻を描いたものが売られてたとか。
これは、1948年の薬事法改正により……。
性具の販売にあたっては、行政の認可が必要になったからだそうです。
つまり、これは「こけし」ですと云って売るわけですね。
今なら、「本来の用途以外には使用しないでください」と但し書きを付けるところでしょう。
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9. 手羽崎 鶏造- 2019/07/28 12:11
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ところで、長さ16cmって巨大過ぎませんか。
(アンタのが小さ過ぎって、放っといてんか)
若い最盛期でも、10cm越えがやっとだったような。
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10. Mikiko- 2019/07/28 12:26
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最盛期?
あれって、歳を取ると縮むものなんですか。
Gスポットには、指が届くわけですから……。
中指くらいあれば大丈夫でないの?
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11. 八十郎- 2019/07/30 18:55
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う~ん、沈黙を破り私が代表してお答えしましょう。
年を取ると縮むというか・・、縮んだ状態は若者も熟年者も変わりないとご理解いただければ幸いです。
奥さん大喜びって、EDの鈴口にいるお父さんは
「どうしたの!気持ち悪い、いい年してもう!」
と奥さんに叱られて、静かに芋茎を引き抜くこと必定。
血気盛んだった頃を思い出すと、頭の中にはエドガーの「威風堂々」が響き渡り、お父さんの頬に熱い雫が伝い落ちるのです。
「なあに俺だって相手が変わりゃあ、ずっこんばっこん!」
と言ってるオジサンも、若い女性相手に実った稲穂になってることが多いのです。(恐縮して)
このあたりが「カモン!」「どすこい!!」状態の女性とは違うところでしょうか。
しかしこのようなオジサン、人間的には好感が持てますし、実際好人物です。
エドガーも「威風堂々」は堂々じゃなくなった後に作曲したのかも。(笑)
たまに長々と書き込みして申し訳ありません。
掲載作品、面白く拝読しております。
GスポットのみならずHスポットまで届く、と夢想している読者でした。
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12. Mikiko- 2019/07/30 19:27
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おっさん……
飲んでますな。
『威風堂々』は、エドガーではなく……。
エルガーでは?
奥さんは、喜んでくれると思いましたけどねー。
子供がまだ独立してないと……。
「お母さん」の役割から抜けられないのかな。
2人きりになったとき、もう一度、新婚時代に帰れたなら……。
人生、楽しいと思うのですが。
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13. 手羽崎 鶏造- 2019/07/31 10:02
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八十郎 殿
参戦ありがとうございます。
歳を重ねると、屹立する勢いは弱くなるし、
心なしか、縮んだように思えます。トホホ。
ところで、管理人様を差し置いて、
「男子会」でも飲(や)リたいものですね。