2019.7.13(土)
妻は、箱からバスタオルを取り出すと、広げて見せた。
純白だった。
「いいの?
血が着いたら、目立っちゃうよ」
「いいんです。
実家からもらって来たのは、もう何年も前なんです。
ひょっとしたら、この日、使われるのを待ってたのかも」
「わかった。
あ」
「え?」
「避妊具、無いんだ」
ほんとは、財布の中にコンドームが入っていた。
もちろん、こんなことを予測していたわけじゃない。
若いころからのクセでね。
いつ何時、チャンスが訪れるかも知れないから。
でも、一度も使ったことはなかった。
ここでこそ使う場面だと云うことは、わかっていたけれど……。
「避妊具を常に携帯している男」だということを、表明することにもなってしまう。
もちろん妻に、「きみは持ってないかい?」なんてことは聞けない。
ひょっとしたら、常備しているのかもしれない。
こんなことが、いつかあることを期待して。
しかしもちろん、そんなことは聞けっこない。
わたしは妻の顔を、まぶしい表情で見ていただろう。
嘘をついてるときの、わたしの癖みたいだ。
妻は、役所で手続きをするような事務的な声で応えた。
「あの。
大丈夫です。
今日は、大丈夫な日です」
嘘かほんとかはわからない。
避妊具がないことで、せっかく訪れた処女喪失の機会を逃してしまうことを恐れたのかも知れない。
でも、それでもいいと思った。
もう、わたしには、この女と結婚したいという強い意志が芽生えていた。
妊娠したらしたでいい。
わたしは、胃の腑を抜かれるように心が浮き立った。
生でやれる。
「そう。
わかった」
純白だった。
「いいの?
血が着いたら、目立っちゃうよ」
「いいんです。
実家からもらって来たのは、もう何年も前なんです。
ひょっとしたら、この日、使われるのを待ってたのかも」
「わかった。
あ」
「え?」
「避妊具、無いんだ」
ほんとは、財布の中にコンドームが入っていた。
もちろん、こんなことを予測していたわけじゃない。
若いころからのクセでね。
いつ何時、チャンスが訪れるかも知れないから。
でも、一度も使ったことはなかった。
ここでこそ使う場面だと云うことは、わかっていたけれど……。
「避妊具を常に携帯している男」だということを、表明することにもなってしまう。
もちろん妻に、「きみは持ってないかい?」なんてことは聞けない。
ひょっとしたら、常備しているのかもしれない。
こんなことが、いつかあることを期待して。
しかしもちろん、そんなことは聞けっこない。
わたしは妻の顔を、まぶしい表情で見ていただろう。
嘘をついてるときの、わたしの癖みたいだ。
妻は、役所で手続きをするような事務的な声で応えた。
「あの。
大丈夫です。
今日は、大丈夫な日です」
嘘かほんとかはわからない。
避妊具がないことで、せっかく訪れた処女喪失の機会を逃してしまうことを恐れたのかも知れない。
でも、それでもいいと思った。
もう、わたしには、この女と結婚したいという強い意志が芽生えていた。
妊娠したらしたでいい。
わたしは、胃の腑を抜かれるように心が浮き立った。
生でやれる。
「そう。
わかった」
コメント一覧
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1. Mikiko- 2019/07/13 06:32
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今日は何の日
7月13日は、『平成16年7月新潟・福島豪雨』が起こった日。
↓Wikiの記述です(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E6%88%9016%E5%B9%B47%E6%9C%88%E6%96%B0%E6%BD%9F%E3%83%BB%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E8%B1%AA%E9%9B%A8)。
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7月12日夜から、新潟県中越地方や福島県会津地方では非常に激しい雨が降り、新潟県栃尾市(現・長岡市)や新潟県南蒲原郡下田村(現・三条市)では、総雨量が400ミリを超す記録的な雨量を観測した。
このため、信濃川水系の五十嵐川・刈谷田川・中之島川の堤防が11ヶ所で決壊し、五十嵐川流域の三条市と刈谷田川流域の南蒲原郡中之島町(現・長岡市)を中心に、長岡市、見附市など、広範囲で浸水被害が発生した。
広大な平地が浸水したため、避難所となった施設までもが浸水し避難者が孤立するという事態も起こった。
三条市では、堤防の決壊による被害が五十嵐川の左岸側だけに集中し、「人災では」との批判があった。
また、近郊の高台にあった新潟県立月ヶ岡養護学校が一時、地域住民の避難所として使用されている。
死者は、福島県昭和村での1人を含め16人。全壊70棟、半壊5,354棟をはじめ、20,655棟に被害が出た。
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2004(平成16)年のことでした。
今から、15年前です。
もう、15年も経ったんですね。
続きは次のコメントで。
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2. Mikiko- 2019/07/13 06:32
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今日は何の日(つづき)
わたしは、災害翌日の14日、三条にある親戚の家へ、片付けの手伝いに行きました。
後にも先にも、被災地に手伝いに行ったのは、この1度切りです。
手伝いに行った日は、前日とは打って変わって、梅雨が明けたような青空。
気温もぐんぐん上がりました。
わたしのような人も多かったのか、途中の道路が大混雑で、現地に入るだけでも大変でした。
いやー、暑かった。
暑いだけじゃありません。
道路に積もった泥が乾き、それが土埃となって舞うんです。
口にタオルを巻いて作業しなければならず、暑さがいっそう堪えました。
前日まで大雨が降ってたというのが、ほんとにウソのようなお天気でしたが……。
ウソじゃない証拠が、そこここに残されてました。
道路の電柱の、わたしの頭上より遙か上に、稲の束が引っかかってました。
そこまで水が来たんです。
少し低い位置にある住宅では、玄関先のコンクリート下が抉られ、洞穴のようになってました。
おそらく、そこに落ちこんだ水が渦を巻いたんでしょうね。
いずれにしろ、こんな水に巻きこまれたら、ぜったいに助からなかったでしょう。
「早めの避難」というのが、どれほど大事かということです。
しかし……。
それも所詮、人ごととして感じてたということです。
我が身には染みてません。
その親戚の人は、ほんとに怖い目をしたそうです。
水が、階段をどんどん登って来たと言ってました。
2階の床間際まで水が上がったときは……。
ここで死ぬんだと、本気で思ったとか。
こういう身に染みた思いは、次の災害のとき、必ず活きるでしょう。
今でも、強い雨が降る夜は、眠れないそうですから。
続きはさらに次のコメントで。
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3. Mikiko- 2019/07/13 06:32
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今日は何の日(つづきのつづき)
それにしても……。
前にも、水の備蓄をしなくてはと書いたのに、まだしてませんでした。
富山湾よりも深く反省。
1人頭、1日3リットルで3日分。
9リットルが必要と言われてます。
これを、いっぺんに買ってこようとするから、大仕事に思えるわけです。
毎週、1リットルずつ買ってくればいいんですよね。
もっと大きな、2リットルとかのペットボトルもありますが……。
賞味期限が来たとき、使い道に困ります。
1リットルのボトルなら、1週間で使えないはずはありません。
問題は、買い集める間の9週間のうちに災害に見舞われる恐れがあることですが……。
ま、大丈夫でしょう。
今まで、大丈夫だったんですから。
いやいや。
これがいかんのですよね。
あと、賞味期限を忘れないようにする方法。
これは重要です。
先日も、「サトウのごはん」の期限を、危うく過ぎるところでした。
なにより、書いてあるのが小さくてわかりにくいのが問題。
ペットボトルなんか、キャップにうっすらと印字してあるだけなんですよ。
毎年、時期を決めて買い換えれば一番良いのでしょうが……。
ペットボトルの水は、1年半保つようなので、ちともったいない。
ということで、良いアイデアを思いつきました。
アイデアというほどではありませんが。
ボトルの土手っ腹に、デカデカとマジックで書いておけばいいんです。
これなら、すぐにわかります。
でも、下手な字が恥ずかしくて仕舞いこんだら……。
仕舞ったことすら忘れてしまいかねません。
埋めたドングリを忘れるリスみたいですよね。
やっぱり、堂々と出しておくことにします。