2016.2.12(金)
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女性の長い話にも、ようやく区切りが付いたようだ。
ペットボトルのお茶を、喉を鳴らして飲み干した。
千穂は、女性の話に聞き入っていた自分に改めて気がついた。
ほんとかどうか怪しいと思うところもあったが……。
女性の話術に引き入れられ、ほとんど身を乗り出して聞いていたのだ。
いろんな世界があるものだ……。
心底、そう思った。
こんな田舎の民宿で、このまま歳を取っていっていいものだろうか。
そんなことさえ感じた。
人の話は、いろんな意味で勉強になる。
これからは、もっとお客さんの話を聞くことにしてみよう。
女性専用の宿にしてから、口コミで広がったのだろう……。
一人旅の女性が増えていた。
この宿は、民宿とは云っても、はやりのゲストハウスなどとは異なり、相部屋ではない。
一人旅の女性は、食堂で夕食を終えた後、みな部屋に戻ってしまう。
夜、外出できる場所も近くには無いのだから、そうするしかないのだ。
でも、それでいいのだろうか。
客室にテレビはあるが、それだけだ。
そういえば、インターネットは出来ないのかと聞かれたことがあった。
千穂は、その方面の知識に疎かった。
千穂と涼太が暮らす部屋のパソコンは、ネットに繋がっている。
これは、夫が生きていたころからの設備だった。
夫なら、客室にもインターネットの設備を付けようと思いついたかも知れない。
やはり、女ひとりの経営には、限界があるのだろうか。
これまでは忙しく働くのに精一杯で、立ち止まって考えてみる余裕はなかった。
しかし、改めて自らの身を振り返ってみると……。
もの寂しさのようなものを感じた。
このまま、ずっとひとりなのだろうか。
もちろん、涼太はいる。
しかし……。
涼太は、いずれは伴侶を見つけ、自分から遠ざかっていく存在だ。
「どうしたの?」
女性が、空のペットボトルにキャップを締めながら聞いた。
「いえ。
別に。
そろそろ、おいとまします」
「わたしの話、つまらなかった?」
「そんな。
飛んでもない。
ずっと、身を乗り出して聞いてました」
「そう。
良かった」
女性の長い話にも、ようやく区切りが付いたようだ。
ペットボトルのお茶を、喉を鳴らして飲み干した。
千穂は、女性の話に聞き入っていた自分に改めて気がついた。
ほんとかどうか怪しいと思うところもあったが……。
女性の話術に引き入れられ、ほとんど身を乗り出して聞いていたのだ。
いろんな世界があるものだ……。
心底、そう思った。
こんな田舎の民宿で、このまま歳を取っていっていいものだろうか。
そんなことさえ感じた。
人の話は、いろんな意味で勉強になる。
これからは、もっとお客さんの話を聞くことにしてみよう。
女性専用の宿にしてから、口コミで広がったのだろう……。
一人旅の女性が増えていた。
この宿は、民宿とは云っても、はやりのゲストハウスなどとは異なり、相部屋ではない。
一人旅の女性は、食堂で夕食を終えた後、みな部屋に戻ってしまう。
夜、外出できる場所も近くには無いのだから、そうするしかないのだ。
でも、それでいいのだろうか。
客室にテレビはあるが、それだけだ。
そういえば、インターネットは出来ないのかと聞かれたことがあった。
千穂は、その方面の知識に疎かった。
千穂と涼太が暮らす部屋のパソコンは、ネットに繋がっている。
これは、夫が生きていたころからの設備だった。
夫なら、客室にもインターネットの設備を付けようと思いついたかも知れない。
やはり、女ひとりの経営には、限界があるのだろうか。
これまでは忙しく働くのに精一杯で、立ち止まって考えてみる余裕はなかった。
しかし、改めて自らの身を振り返ってみると……。
もの寂しさのようなものを感じた。
このまま、ずっとひとりなのだろうか。
もちろん、涼太はいる。
しかし……。
涼太は、いずれは伴侶を見つけ、自分から遠ざかっていく存在だ。
「どうしたの?」
女性が、空のペットボトルにキャップを締めながら聞いた。
「いえ。
別に。
そろそろ、おいとまします」
「わたしの話、つまらなかった?」
「そんな。
飛んでもない。
ずっと、身を乗り出して聞いてました」
「そう。
良かった」
コメント一覧
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1. Mikiko- 2016/02/12 07:37
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久々に……
民宿に戻って参りました。
今、民宿の場面だったんだと、われながら驚いた次第です。
千葉の民宿シリーズが始まったのは、1651回の『周旋屋律子』から。
投稿日は、2014年12月9日でした。
なんと、1年以上も千葉の民宿だったんですね。
呆れ申した。
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2. 思い出し出汁?HQ- 2016/02/12 12:57
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戻ってきました千穂民宿
いやあ、まさか赤ミニ女がここまでの語り部だったとは。
人は見かけによらないものです。
さあ、赤ミニ話を聞いた千穂さんはどう動く。
由美ちゃん美弥ちゃんはどうしてる。
そして涼太は……。
で、よく考えたら、例の農協男は実在?の人物だったよね。
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3. Mikiko- 2016/02/12 19:44
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語り手(視点の主)は……
トップページの目次に書いてあります。
農協の営業マンは実在しますが……。
赤耳女の話に出て来る銀行マンは、妄想の産物です。
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4. 服飾評論家HQ- 2016/02/13 00:11
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赤耳女
【赤耳(セルビッチ)】
デニム地の両端の耳部分をいう。旧型の織機でデニム地を織る際、生地末端のホツレを無くすために付けられたもの。
特にリーバイスのものは赤いステッチが付けられていることから、通称「赤耳」とよばれる。1986年に消滅するまで継続され、VINTAGEを語る上で欠かせないディテールでもある。
Weblio辞書
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5. Mikiko- 2016/02/13 08:13
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赤ミニ女は……
はなはだ言いづらい。
赤耳女は打ち間違えて変換されたのですが、面白いのでそのままにしました。
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6. 悪いのは舌?耳?HQ- 2016/02/13 10:49
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赤ミニ女
そんなに言いづらいかなあ。
いわゆる「滑舌が悪い」?
それにしても「赤耳」。字面になんか見覚えがあるんだよね。うーむ、思い出せん。