2018.11.3(土)
まもなく土間の中央に木製の浴槽が備え付けられ、水が浴槽の中程まで注ぎこまれた。さらに浴槽の下には釜がありさらにその下には薪までが用意されていた。
意図を知らない源五郎は首をかしげ小菅に尋ねた。
「旦那。もしかしてこの女を釜茹にでもするつもりですかい?」
小菅は失笑した。
「ばかやろう。五右衛門じゃあるまいに、そんなことしたら死んじまうじゃねえか」
「まあ、それはそうですが……」
源五郎は頭を掻いた。
そこへ黒山が口を開いた。
「知りたいか?」
「へえ、そりゃあ、もう~」
「じゃあ、教えてやろう。この女には今から風呂に浸かってもらう」
「はぁ? 風呂……ですかい? はて……?」
美女の入浴を見るのもまたとない機会だが、それよりももっと過酷な拷問を期待していた源五郎は拍子抜けしたような顔をした。
小菅は含み笑いを浮かべている。
まもなく黒山が合図を送った。
「おい!」
黒山の合図とともに奥から二人の下男が飛び出してきた。
二人は無言のまま、ありさの両脇から挑みかかり、衣服を剥ぎ取りにかかった。
「きゃぁ~~~! 何をするんですか! やめてください!」
ありさは悲鳴をあげ、身をよじって抵抗したが、町娘の衣服を剥ぎ取ることに大した手数は掛からなかった。
下男たちの動きはとても俊敏で、さほどの時間もかけず、ありさは腰巻もろとも全ての衣類を剥ぎ取られてしまった。
「は、恥ずかしい……お願いです! 着物を返してください!」
すがるように哀願するありさの両腕を背中に廻し後手に縛りあげると、下男が竹の棒を取り出した。ありさを押さえつけ、むりやり座らせ、開脚姿勢でありさの両足首を竹の棒にくくりつけてしまった。
下男たちがありさをかつぎ上げ、浴槽へと運んでいく。
竹の棒の長さは浴槽の幅と比べわずかに短く、浴槽にすっぽりと填まり込んでしまった。両腕を後手に縛られているため、このような体勢になるとありさは自力で立ち上がることができない。
ちゃぷっ、ちゃぷっと水音を立てて身体を揺するのが精一杯だ。
強制的に両立て膝にされたため膝頭が水面から顔を出し、Mの字型にされ閉じることのできない両足の付け根の黒い茂みが水中でゆらゆらと揺れていた。
「私をどうしようと言うのですか!? お願いです! ここから出してください!」
何をされるのかは分からない。しかし自分の身に良くないことが降り掛かってくることはありさにも予測がついた。
「白状するまではそこから出さないぞ。さあ、今のうちだ。俊吉とは情を交わした仲だと正直に吐くんだ」
「本当です! 俊吉とは関わりありません!」
半泣きになって容疑を否認するありさに黒山は冷たい視線を返し、下男たちに合図を送った。下男たちは土間に置かれていた大きな
その瞬間、ありさは「きゃっ!」と驚きの声をあげた。
「な、何? これは何っ!?」
ありさは放り込まれたものに目を見張り、見る見るうちに顔色が変わっていった。
「きゃぁ~~~~~~~~~~!!」
盥に放り込まれたものは鰻で優に三十匹は超えていた。
数匹の鰻ならさほどでもないが、無数の鰻が狭い場所でとぐろを巻いている光景は蛇を彷彿させ実におぞましいものであった。所狭しと動き回る鰻はありさの身体にぬるぬるとまとわりついた。まるで複数の男性に肌を撫で廻されているようなものだ。
「ひゃぁぁぁぁぁ~~~~~~~!!」
「こりゃすげえ」
驚いたのはありさばかりではなかった。小菅の横で眺めていた源五郎たちが大袈裟に仰天した。
太股や腰、腹などに黒光りした鰻の胴体が擦りつけられるたびにありさが身をよじって喘ぐ。下半分が水に没した乳房がふるふると震え、そこに巻きつくように鰻がまとわりついてきた。
鰻は触れるたびに、その気味悪さからありさは「きゃぁ! きゃぁ!」と悲鳴をあげた。
その奇抜でかつ淫靡な光景に、思わず男たちが口元をほころばせた
コメント一覧
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1. Mikiko- 2018/11/03 07:41
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鰻
鰻はもちろん、食べたことはあります。
ただし、スーパーでパックされて売られてるやつだけです。
お店で食べたことは、一度もありません。
拒絶しているわけではありません。
誰もおごってくれなかっただけです。
もちろん、自腹で食べる気はさらさらありません。
値段がメンチカツと同じくらいであれば、1ヶ月に1回くらいは食べてもいいです。
でも、今の値段では、年に1回ですね。
スーパーのパックでもです。
そもそも、大好物というわけではありません。
脂っこい魚は、嫌いじゃないんですよ。
問題は、タレです。
当然、甘いです。
わたしは、あの甘いタレが好きじゃないんです。
鰻だけではなく、焼き鳥などもそうです。
焼き鳥は、塩しか食べません。
お店では、鰻の白焼きというのが食べられるようですが……。
スーパーでは、売ってませんよね。
今日、もう一度よく探してみましょう。
さて、その鰻。
昨今は、資源量が激減してるというニュースをよく聞きます。
代替品として、近畿大学がウナギ味のナマズを開発したとか。
イオンで販売してるようですが……。
一部店舗での限定販売にとどまってるようです。
食べてみたい気はするんですが……。
列に並んだり、遠くの店まで行く気にはなれません。
近所のスーパーで手軽に買えるようになる日が、はたして来るんでしょうか。
続きは次のコメントで。
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2. Mikiko- 2018/11/03 07:41
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鰻(つづき)
しかし、これから問題になるのは……。
ウナギ店の跡継ぎ問題ですよね。
ウナギのお店は、専門店がほとんどのように思います。
これは、なぜなんですかね?
ウナギを捌いたりするのに技術が要るのはわかりますが……。
ウナギが捌けるなら、ほかの魚を捌けないわけないはずです。
ウナギのほかにも、いろんなメニューを出したらいいと思うのですが。
それなら、もしウナギが流通しなくなっても……。
「料理屋」としては生き残れるはず。
ウナギ専門店じゃ、店を閉めるしかないですよね。
それじゃ、なぜ鰻屋はウナギ専門店なのか?
早い話……。
ウナギ屋は儲かるということじゃないんですか?
客単価が、ラーメン屋なんかとは桁違いですから。
馬鹿馬鹿しくて、餃子なんか出してられないでしょう。
親父さんと奥さんだけで出来ますから、人件費だってかかりません。
ウナギ料理を安く出そうとすれば出来るんじゃないでしょうか。
でも、それをしたら、業態自体が崩壊する。
そんなこと始めた鰻屋は……。
下手すれば、暗殺されかねません。
でも今後は、どんどん仕入れ値が上がり……。
うま味が無くなったら、もう子供にも後は継がせられないでしょう。
自分の代で終わりでいいと思ってる親父さん、たくさんいるんじゃないでしょうか。
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3. Shy- 2018/11/03 10:25
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Mikiko様
掲載ありがとうございます。
Mikiko様はあの鰻の甘いたれが苦手なんですか?あれが好きで鰻を食べる人が多いのになあ。でも、味の好みは人それぞれ、仕方のないことかと思います。
話はころりと変わりますが、Mikiko様は、関西(主に大阪)で「鰻丼」「うな重」等うなぎ料理のことを「まむし」というのはご存知でしょうか?ただし最近では幟や看板に「まむし」ではなく平凡に「うなぎ」と表示している店が多くなりましたが、一昔前までは「まむし」が多かったように記憶しています。
ちなみに「まむし」はうなぎを蒸して油を抜く「真蒸す」の転語節もあれば、蒲焼きを切ってご飯に「まぶす」からだとも言われています。
この言葉を毒蛇の「まむし」と勘違いする人もきっといるでしょうし、「まむしを食べに行こう」と誘われて足が竦む人もきっといると思います。そんな理由から最近「まむし」と呼ばなくなったのかも知れませんね。最近マスコミやネットの影響で方言が薄れ、日本全体が標準語化する傾向があるので「まむし」と言う呼称も薄れてきたのかも知れませんね。
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4. Mikiko- 2018/11/03 13:02
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先ほど……
スーパーで見てきましたが、やはり白焼き状態では売られてませんでした。
残念ながら白焼きは、鰻屋で食べるほかなさそうですね。
資源保護のため、ウナギが食べられなくなりそうになったら……。
1度、行ってみますかね。
「まむし」と呼ぶのは、知りませんでした。
「真蒸す」も「まぶす」も、後付けっぽいですね。
やはり、滋養強壮効果においてマムシに匹敵するということから……。
そう呼ばれるようになったんじゃないですか。
細長ところや頭の形も似てますしね。