2018.10.12(金)
「ぐげ」
気がついたときには、由美の右脚が女の脇腹に食いこんでいた。
中段回し蹴りが、ものの見事に決まったのだ。
女の身体は、蹴りの入った脇腹を変曲点に、“く"の字に折れていた。
顔面には、驚愕の表情が貼りついている。
由美は、ようやく我に帰り、女の脇腹から右脚を引いた。
女の身体は、“く"の字を保ったままだった。
しかし、由美の脚の支えがなくなったことで、バランスを失ったようだ。
女は“く"の字のまま、腰の突き出た方へ蟹のように横歩きした。
いや。
歩いているつもりはないはずだ。
傾く身体に流され、無意識に足裏が送られただけだ。
しかしそれも、ほんの数歩だった。
女のハイヒールは、遊歩道を踏み出し、芝生に踏みこんだ。
ヒールが芝に絡んだのか、危うく保っていた均衡が一瞬で崩れた。
“く"の字に折れた棒が、そのまま芝生に倒れた。
芝生が衝撃を吸収したのだろう、転倒音はほとんど聞こえなかった。
横向きに倒れた身体は、“く"の字の腰が反動を生んだのか、仰向けに返っていた。
両腕は、さっき由美の前で開いたと同じく、羽ばたくように広げられていた。
日を浴びない真っ白な脇の下に、黒々とした脇毛が靡いている。
コートは左右にはだけ、全身が晒されていた。
黒ずんだ股間も。
陰毛が無いので、突出した襞までグロテスクなほどよく見えた。
陰唇がわずかに捲れ、深紅の膣内が覗けていた。
夜目にも、そこが濡れていることがはっきりとわかった。
明らかな変態女だった。
しかし……。
このまま捨てて帰るわけにもいかない。
手加減はしたので大丈夫とは思うが、由美は容態を確認しようと、芝生に踏みこんだ。
「し、しずこ!
大丈夫か、しずこー!」
遊歩道に、乱れた靴音が聞こえた。
由美は跳ねあがるように、声の方に向き直った。
女と同じベージュ色のコートを着た男だった。
男は、身構える由美の横を素通りし、芝生に這いつくばった。
気がついたときには、由美の右脚が女の脇腹に食いこんでいた。
中段回し蹴りが、ものの見事に決まったのだ。
女の身体は、蹴りの入った脇腹を変曲点に、“く"の字に折れていた。
顔面には、驚愕の表情が貼りついている。
由美は、ようやく我に帰り、女の脇腹から右脚を引いた。
女の身体は、“く"の字を保ったままだった。
しかし、由美の脚の支えがなくなったことで、バランスを失ったようだ。
女は“く"の字のまま、腰の突き出た方へ蟹のように横歩きした。
いや。
歩いているつもりはないはずだ。
傾く身体に流され、無意識に足裏が送られただけだ。
しかしそれも、ほんの数歩だった。
女のハイヒールは、遊歩道を踏み出し、芝生に踏みこんだ。
ヒールが芝に絡んだのか、危うく保っていた均衡が一瞬で崩れた。
“く"の字に折れた棒が、そのまま芝生に倒れた。
芝生が衝撃を吸収したのだろう、転倒音はほとんど聞こえなかった。
横向きに倒れた身体は、“く"の字の腰が反動を生んだのか、仰向けに返っていた。
両腕は、さっき由美の前で開いたと同じく、羽ばたくように広げられていた。
日を浴びない真っ白な脇の下に、黒々とした脇毛が靡いている。
コートは左右にはだけ、全身が晒されていた。
黒ずんだ股間も。
陰毛が無いので、突出した襞までグロテスクなほどよく見えた。
陰唇がわずかに捲れ、深紅の膣内が覗けていた。
夜目にも、そこが濡れていることがはっきりとわかった。
明らかな変態女だった。
しかし……。
このまま捨てて帰るわけにもいかない。
手加減はしたので大丈夫とは思うが、由美は容態を確認しようと、芝生に踏みこんだ。
「し、しずこ!
大丈夫か、しずこー!」
遊歩道に、乱れた靴音が聞こえた。
由美は跳ねあがるように、声の方に向き直った。
女と同じベージュ色のコートを着た男だった。
男は、身構える由美の横を素通りし、芝生に這いつくばった。
コメント一覧
-
––––––
1. Mikiko- 2018/10/12 07:23
-
今日は何の日
10月12日は、『コロンブスデー』。
1492年(室町時代)10月12日(今から526年前)……。
『クリストファー・コロンブス』が率いるスペイン船隊が、新大陸アメリカに到達しました。
西周りの航海で、ジパングとインドを目指したもので……。
コロンブスは、最初の到達地がインドだったと亡くなるまで信じてたそうです。
ということで、アメリカの先住民が、「インディアン(インド人)」と呼ばれることになったわけです。
なお、ネイティヴ・アメリカンの中には、この『コロンブスデー』に反対する動きもあるようです。
『コロンブスデー』を祝うことは……。
かつて、白人によって行われた暴力による征服を許容することになるという考えからです。
この日が祝祭日になっていない州もあります。
ハワイ州、アラスカ州、オレゴン州、サウスダコタ州などだとか。
さて。
昔、こういうナゾナゾを聞いたことがあります。
「アメリカ大陸を発見したのは誰?」
「コロンブス」
「ブッブ-」
「じゃ、誰よ?」
「見張りの水夫です」
さて、もう一題。
10月12日は、『芭蕉忌』。
1694(元禄7)年10月12日(今から324年前)……。
松尾芭蕉が亡くなりました。
なお、これは旧暦の日付けで、新暦では11月28日にあたります。
旧暦10月の別称は、「時雨月」。
芭蕉が時雨の句を多く詠んだことから、『時雨忌』とも呼ばれてるそうです。
亡くなったのは、大阪の御堂筋あたりだったようです。
続きは次のコメントで。
-
––––––
2. Mikiko- 2018/10/12 07:24
-
今日は何の日(つづき)
ところで、「時雨」とは何でしょう。
読みは、“しぐれ”です。
三省堂の『大辞林』では、↓となってます。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++
初冬の頃、一時、風が強まり、急にぱらぱらと降ってはやみ、数時間で通り過ぎてゆく雨。冬の季節風が吹き始めたときの、寒冷前線がもたらす驟雨(しゅうう)。村時雨・小夜(さよ)時雨・夕時雨・涙の時雨などの言い方がある。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++
重要なのは、「冬の季節風が吹き始めたときの」という点。
北西の季節風です。
すなわち、「時雨」が降るのは、日本海側になります。
このとき、太平洋側は晴天で、空っ風が吹いてるわけです。
つまり、芭蕉が長く住んだ江戸も、亡くなった大坂も、「時雨」とは無縁の地です。
生まれた伊賀国(三重県伊賀市)も、冬は寒いですがほとんど晴れるようです。
ということは、芭蕉が「時雨」の句を詠んだのは、旅先ということになります。
初冬の冷たい雨には……。
旅情を通り越した切なさに苛まれたんじゃないでしょうか。
●旅人と我名よばれん初しぐれ(芭蕉)
ところで、日本海側の新潟は、「時雨」の本場になります。
まさしく、パラパラッと降ったかと思ったらすぐに上がるんです。
やれやれと思って傘を持たずに出ると、またパラパラッと来ます。
外出すると降り出し、帰ると止むようにさえ思えます。
「時雨」が降り出すと、気分は沈みます。
ついに冬が来たかと痛切に感じるときだからです。
真冬になってしまえば、逆に苦痛は感じないんですよ。
この前の冬は酷すぎましたけど。
むしろ、一面が真っ白な雪景色になると、明るくさえ思えます。
黒いアスファルトに冷たい雨が降り出すころが、一番寒く感じるのです。