Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
東北に行こう!(128)
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み「説明上、必要なんじゃ!
 女性はたいがい、ドレッシーな服装だよね」
女性はたいがい、ドレッシーな服装

み「ブラウスにスカートとか。
 プリーツみたいな」
律「それがどうしたのよ」
み「そういうスカートの場合……。
 パンスト、穿きませんか?」


↑夏はお勧め。実際には、ショーツはストッキングの上に穿きます。

律「わたし、ほとんどパンツ(ズボンのことです)だから」
み「色気のないやつ」
律「女医に色気なんていりません」
み「AVでは、必須です」
女医に色気なんていりません

み「そういうスカートを穿いてながら……。
 ナマ足ということは考えにくいと言うておる」
律「話が見えないわね」
み「あのな。
 波打ち際を裸足で走ってるわけよ。
 パンスト穿いてたら、濡れるであんしょ」
パンスト穿いてたら、濡れる

律「脱いだんじゃないの」
み「いつのタイミングで?
 彼の腕をすりぬけて、波打ち際を走り出したのよ。
 その前に、パンストだけ脱いでたっていうわけ?」
パンストだけ脱いでた

み「どういうシチュなんじゃ?」
律「知らないわよ」
み「絶対おかしいだろ。
 考えられることは、ただひとつ」
律「何よ?」
み「すでに、1発終わってるということじゃ」
律「は?」
み「車の中か岩陰か知らんけど……。
 1回戦、すでに済んでるわけでんがな。
 パンストはそのとき脱いだんです」
1回戦、すでに済んでる
↑こーゆーところ。

律「馬鹿馬鹿しい」
み「ひょっとしたら、ノーパンかも知れんぞ」
律「ガイドさん、次、行って下さい」
婆「走らずとも良いのか?」
み「良い。
 砂浜を走るのは、変態と部活だけじゃ」
砂浜を走るのは、変態と部活だけ

婆「それでは、行きますぞ。
 こっちじゃ」
み「なんじゃここは。
 また、さっきの荒涼たる風景に戻っただけではないか」
さっきの荒涼たる風景に戻った

婆「左様。
 『地獄めぐり』と称する。
 八大地獄と呼ばれておるな」
み「それはひょっとして、中村八大が落ちた地獄か?」
婆「バカを言うでない。
 『上を向いて歩こう』の作曲者ではないか」


み「ほー、良く知っておるな」
婆「作詞が、永六輔。
 作曲が、中村八大。
 歌が、坂本九。
 六八九トリオと呼ばれておった」
六八九トリオ

み「残念ながら、3人とも故人となられたな。
 で、作曲家の中村八大が、ここの地獄に落ちたと」
婆「違うと言うておろうが。
 『八大地獄』というのは、もともと仏教の教えじゃ。
 地獄の8つの形相のことを云う」
正観寺(徳島県阿南市)
↑『正観寺(徳島県阿南市)』。機械仕掛けの地獄が展開します。檀家は反対しなかったんですかね? 館内は撮影禁止だそうです。心が狭いんでないの?

み「地獄が8つあるわけか?」
婆「左様じゃ。
 まずは、『等活(とうかつ)地獄』」
み「聞かないうちから説明を始めたな」
婆「責め苦を受けて命が絶えても、再び蘇生し責め苦を受ける。
 “等しく活き返る”故に、“等活”と言い習わす」
等活(とうかつ)地獄
↑犬の餌になるようです。犬の糞となって、また生き返るんでしょうか。

み「部活か学活に負けられまへんか?」
『学級活動』のこと
↑『学級活動』のことです。『ホームルーム』とも云います。

婆「続ける」
続ける

み「続けるな!
 “命が絶えても”って、地獄に落ちたんだから、すでに死んでますがな」
すでに死んでます

婆「何度でも死ぬんじゃ」
み「蘇ったときに逃げ出せば、生き返れるかも知れんな」
蘇ったときに逃げ出せば……

婆「地獄は、そんな生やさしいものではないわ」
み「経験者は語るか?」
パンツを犠牲にすべき
↑やっぱり、パンツを犠牲にすべきでしょう。

婆「良いか。
 この『等活地獄』が、一番軽い地獄なんじゃぞ」
み「これで?
 どんなやつが落ちるわけ?」
婆「殺生をした者じゃ。
 人殺しとかではないぞ。
 蚊や蟻などを殺しても、ここに落ちる」
地獄に落ちないのは、小林一茶くらい
↑落ちないのは、小林一茶くらいです。

み「人間、全員でしょうが。
 殺すつもりがなくたって、歩いてるうちに必ず踏んでますって」
さっき踏んだ虫をもう一度踏みに戻ってくる
↑『さっき踏んだ虫をもう一度踏みに戻ってくる』だそうです。『等活地獄』決定!

み「どのくらいの期間、許されるわけ?」
婆「1兆6653億1250万年じゃな」
み「阿呆きゃ!
 宇宙の年齢が、138億年じゃねーの」
宇宙の年齢が、138億年

婆「それより、遙かに長いということじゃ。
 宇宙より前に地獄は存在し……。
 宇宙が滅びても、地獄は滅びぬわ」
笑い閻魔
↑栃木県益子町『西明寺』の“笑い閻魔”。勝ち誇ってますね。

み「納得できーん」
婆「次は、『黒縄(こくじょう)地獄』」
み「もういいです」
婆「まだ、2つめじゃ。
 “こくじょう”は、黒い縄と書く」
棕櫚(しゅろ)縄
↑棕櫚(しゅろ)縄です。原料はまさしく、棕櫚の幹を包む毛です。竹垣の結束などに使われてますね。元の色は茶色です。竹垣などには、黒く染めたものが使われます。素手で扱うと真っ黒になるそうです。何で染めてあるんですかね?

婆「しかし、ただの縄ではないぞ。
 なぜ黒いか。
 それは、鉄で出来た縄だからじゃ」
み「あのー。
 それって、ワイヤーって云うんじゃないの?」
ワイヤーって云うんじゃないの?

婆「縄じゃ!
 この縄で、全身をグリグリ巻かれる」
み「巻かれるだけ?」
巻かれるだけ?

婆「そんなわけないわ。
 ギリギリと締め上げられ……。
 縄は肉に食いこみ……。
 ついには、肉体が切り刻まれる」
大根のビール漬け
↑大根のビール漬けだそうです。ビールは、別で飲みたいものです。

み「人道上、問題ありすぎです。
 どんなやつが落ちるわけ?」
婆「殺生をしたうえに、盗みを重ねたものが落ちると云われておる」
み「確か、窃盗罪って、最高でも懲役10年ですけど」
『万引き』は、放送禁止用語にすべき
↑『万引き』は、放送禁止用語にすべきです。

婆「甘い!
 だから、地上は乱れるんじゃ。
 地獄を見習わねばならん」
み「地獄では、もっと長い懲役なわけね?」
婆「13兆3225億年じゃ」
み「聞くんじゃなかった」
婆「次!
 『衆合(しゅうごう)地獄』。
 身体を鉄の臼に投げ入れられ、鉄の杵で身を打ち砕かれる」
鉄の杵で身を打ち砕かれる

み「『中谷堂』ですな」
婆「なんじゃ、それは?」
み「知らんのか。
 高速餅つきで有名じゃ」


み「『YouTube』で知った外人が、これを見るためにだけ日本に来るそうな。
 聞きたくもないが、話の流れ上、聞かざるを得まい。
 どれくらい、搗かれるわけ?」
婆「106兆5800億年じゃ」
み「完全に擦り身ですがな。
 いい薩摩揚げになるでしょう」
実はわたし、練り物はあまり好きでない
↑実はわたし、練り物はあまり好きでないです。“つくね”とか“つみれ”とかも。歯ごたえがないでしょ。老人食ですよ。

み「どういうヤツが落ちるんじゃ?」
婆「殺生、盗みに加え、邪淫じゃな」
み「あいーん?」
二重顎などに効果ありだとか
↑二重顎などに効果ありだとか。

婆「“じゃいん”じゃ。
 淫らな行いを繰り返した者が落ちる」
律「あんた、決定じゃない」
あんた、決定

婆「わたしは、書いてるだけじゃで。
 行いは、尼さんより清い」
行いは、尼さんより清い
↑イメージです。

み「次、行ってちょ。
 ここまで来たら、ぜんぶ聞きましょう。
 これまで、3つ出たわけだ。
 あと、5つもあるのか」
婆「次は、『叫喚地獄』じゃな」
み「ほほー。
 自動車教習所の教官が落ちる地獄じゃな」
大型バイクの検定だそうです
↑大型バイクの検定だそうです。クランクで脱輪し、出ようとしてアクセルを踏んだら激突してしまったとか。パニクったんでしょうね。

律「よほど怨みがあるみたいね」
み「よく我慢したとわれながら感心する。
 白手袋嵌めてるキザなヤローがいてね」
白手袋嵌めてるキザなヤローがいてね

み「そいつが、ネチネチ嫌みを言う訳よ。
 あの男、必ずや教官地獄に落ちるに違いない」
教官地獄に落ちるに違いない

婆「字が間違っとる。
 阿鼻叫喚の叫喚じゃ」
「阿鼻」は、間断がないこと
↑「阿鼻」は、間断がないこと。叫びっぱなしということですね。

み「ありゃ、そうなの?」
婆「沸騰する大釜の中に投げ入れられる」
沸騰する大釜の中に投げ入れられる

婆「絶叫、絶叫、また絶叫じゃ」
み「早い話、釜ゆでの刑でしょ」
釜ゆでの刑

み「この世でもあったではないか。
 石川五右衛門とか」
石川五右衛門
↑頭上に持ちあげてるのは、6歳の我が子。血筋を根絶やしにするため、子供も一緒に殺されたそうです。

婆「この世の刑の苦しみは、死ねば終わりじゃ。
 地獄は違うぞ」
み「続くわけね?
 どれくらい?
 だんたん楽しみになってきたわい」
婆「852兆6400億年じゃ」
み「わはは。
 どーゆーことすれば、落ちるわけ?」
婆「殺生、盗み、邪淫に加え……。
 飲酒じゃな」
飲酒じゃな

み「待てい。
 イスラム教じゃあるまいし、なんで飲酒がいかんのよ?」
これは、いかんでしょ
↑これは、いかんでしょ。

婆「飲酒と云っても、ただ飲んでる分にはかまわぬ。
 酒に毒を入れて人を殺したり、酒を飲ませて悪事を働くよう仕向けた場合じゃ」
酒に毒を入れて人を殺したり……

み「人に呑ませるのは、飲酒と云わんでしょうが」
婆「ついでに、屁理屈をこねた者も落ちる」
これは正当な理屈です
↑これは正当な理屈です。

み「なんでじゃ!」
婆「これで、やっと半分じゃぞ。
 恐ろしかろー」
語り部

み「お主の顔の方が恐ろしいわい」
み「いいから、次、行ってちょ」
婆「投げやりじゃな」
投げやり

み「投げやりは、磔地獄か?」
投げやりは、磔地獄か?

婆「そんな地獄はないわ。
 地上の刑ではないか」
み「さっき、釜ゆでのパクリがあったではないか」
婆「地獄が大元じゃ。
 次は、『大叫喚地獄』」
大叫喚地獄

み「語彙まで枯渇しました?
 『叫喚』の次が『大叫喚』け?」
婆「『叫喚地獄』の責め苦より、さらに大変な責め苦を受ける」
み「責めパターンも枯渇ですな。
 どういうヤツが落ちるわけ?」
婆「殺生、盗み、邪淫、飲酒に加え……。
 妄言を吐くヤツじゃ。
 ウソやデタラメ、ホラ吹きじゃな」
ホラ吹き

律「あんた、決定」
み「そんなこと言ったら、小説家はほとんど該当するだろ。
 SF作家なんか、全員じゃ」
『SF作家クラブ』の親睦旅行
↑『SF作家クラブ』の親睦旅行にて。宿の歓迎看板が『SFサッカークラブ』になってる伝説の写真です。

み「年数は?
 これだけは、いちおう聞いておく」
婆「6821兆1200億年じゃな」
み「よし、次」
婆「『焦熱地獄』。
 猛火や炎熱のために苦しむ。
 火あぶりの刑じゃ」
み「これも、地上の刑にありますがな。
 火付けをした者の刑だよね。
 八百屋お七とか」
火付けをした者の刑

婆「身体中、バラバラに分解され……。
 串に刺されて、鉄板で焼かれる」
鉄串に刺されて、鉄板で焼かれる

み「焼き鳥屋か!
 バラバラにされた時点で死んでるだろ」
婆「既に死んでる者は、永遠に死ねんのじゃ」
既に死んでる者は、永遠に死ねん
↑映画『バタリアン』。B級ホラーの名作です。

み「で、どういう罪を重ねると落ちるわけ?」
婆「殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄言に加え……。
 邪見(じゃけん)を説くヤツじゃ」
み「ジャンケン?」
ジャンケンが強かった近江ちゃん
↑ブラタモリ『新潟編』。ジャンケンが強かった近江ちゃん。

婆「そう来ると思った」
み「邪険にしただけで、地獄落ちけ?」
まる子、肘鉄
↑まる子、肘鉄。

婆「その邪険ではない。
 邪(よこしま)な見方と書いて、邪見と読む」
広島だけで売られてたご当地ビール
↑広島だけで売られてたご当地ビールだそうです。

婆「仏教の教えとは相容れない考えのことじゃ」
み「また、年数が嵩むわけね。
 どんだけ?」
婆「5京4568兆9600億年じゃ」
み「京!
 スーパーコンピューターか!」
スーパーコンピューターか!

婆「次に進む」
み「あと2つか。
 早く片づけてちょ」
婆「『大焦熱地獄』」
み「まーた、語彙の枯渇じゃ」
婆「『焦熱地獄』より、さらに過酷な猛火や炎熱の苦しみを受ける」
身体も衣服も焼けてないのはなぜでしょう?
↑上に金網が見えます。そこからさらに落ちるわけですね。しかし、身体も衣服も焼けてないのはなぜでしょう?

み「黒焦げバーベキューってわけね」
「食中毒を防ぐため」良く焼いてある
↑とある万博で提供されてたバーベキューだとか。「食中毒を防ぐため」良く焼いてあるとのこと。

み「どういう罪が加わると落ちるわけ?
 なんか、わたしの方がサービスしてるみたいだな」
婆「殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄言、邪見に加え……。
 犯持戒人を成したヤツじゃ」
み「“はんじかいじん”?
 なんじゃそれは?
 漫才コンビか?」
「しっつれいしました」のギャグで有名
↑ちょっと語感が似てるような。「しっつれいしました」のギャグで有名だったとか。若手時代は、『やすしきよし』のライバルだったそうです。

婆「童女や尼僧などを強姦した者が落ちる」
尼僧などを強姦した者が落ちる

み「それ以外なら、強姦してもいいの?」
婆「いいわけなかろう。
 既に邪淫(じゃいん)の罪で裁かれておるわ」
『生成(なまなり)』という面
↑これは“アイーン”。『生成(なまなり)』という能面らしいです(不確か)。

み「さーて、長さはどのくらいなのかな?
 だんだん、楽しみになってきた」
婆「43京6551兆6800億年じゃ」
京がいっぱい

み「ありがとうございました!
 それじゃ、いよいよ最後ですね。
 お願いいたします。
 ダラダラダラダラダラダラ」
婆「なんじゃそれは?」
み「ドラムロールでんがな」


婆「いらんことせんでよい。
 最後の地獄は、前に言ったじゃろう」
み「忘れたわい」
婆「覚えておけ。
 お主が行く所ではないか」
み「なんでじゃ!」
婆「『無間地獄』である。
 間断のない極限の苦しみに身を苛まれる」
間断のない極限の苦しみに身を苛まれる

み「どんな罪が加わると、無間コースになるわけ?」
婆「殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄言、邪見、犯持戒人に加え……。
 父母や阿羅漢(あらはん)を殺害したヤツじゃ」
み「“あらはん”って、なんですのん?」
婆「聖者のことじゃ」
“あらはん”は

み「そういえば、カンフー映画の題名にあった気がする」
『阿羅漢(あらはん)』

み「しかし、わたしは父母や聖人はもちろん、誰一人殺してなんかいないぞ。
 落ちようがないではないか」
婆「これから殺すかも知れん」
み「縁起の悪いことを言うでない!」
えんがちょ
↑“えんがちょ”には、地方によってさまざまな「印」があるそうです。

み「恒例の年数の紹介をやってちょ」
婆「349京2413兆4400億年である」
み「ありがとさんでしたー」
ありがとさーん

み「しかし世の中、ヒマな人間がいたもんですのぅ。
 誰がひねり出したホラ話なんじゃ?」
婆「ホラではない。
 教えじゃ」
み「年数といい、リアリティがなさ過ぎです。
 身に迫る恐怖を感じませんよ」
トラの群れに追いかけられるニワトリ
↑トラの群れに追いかけられるニワトリさん。飛ぶのをやめた祖先を恨んだでしょうね。

み「で、この場所で、その『八大地獄』が表現されてるわけ?
 荒涼としてるだけじゃないの。
 そもそも、線香も禁止なんだから、猛火なんて表現できんでしょ」
線香も禁止

婆「恐山の『八大地獄』は、仏教で説かれる地獄とは、ちと違っておる。
 アレンジというやつじゃ」
み「地獄をアレンジしていいのか!」
婆「『無間地獄』は、さっき見たな」
『無間地獄』

み「あれが、最強の地獄だったっての?
 卵臭かっただけですぜ。
 残りの7つが、ここらにあるわけ?
 期待できませんな。
 ま、ざっと説明してちょ」
婆「おぬしは、ガイドのやる気を削ぐ天才じゃな」
やる気を削がれたハスキー犬
↑やる気を削がれたハスキー犬。

み「お褒めにあずかりまして」
婆「褒めとらんわ。
 まずここが、『重罪地獄』じゃ」
『重罪地獄』

み「あのー。
 さっきの『無間地獄』と、どう違うんすか?」
婆「立て札が建っておろうが。
 それで区別するんじゃ」
み「そんな……」
婆「続いてここが、『金堀地獄』」
『金堀地獄』

み「ここも立て札の違いでっか?」
婆「左様じゃ」
み「日本人しかわからんではないか。
 英語とか、ほかの言語でも表記すべきだろ。
 東京オリンピックも近いんじゃし。
 オリンピックのついでに『恐山』に来るヤツがおらんとも限らんぞ」
婆「おらん方に、1万点じゃ」
おらん方に、1万点

み「ギャグが古すぎます」
婆「次、『どうや地獄』」
『どうや地獄』

み「“どうや”って、何や?」
婆「“どう”は、金属の“銅”じゃろ。
 精錬を生業としたものたちであろうな。
 弘前には、『銅屋町(どうやまち)』という地名もある」
み「もちっと、地獄らしい地獄はおませんのか?」
婆「それなら、ここじゃろ。
 『血の池地獄』」
『血の池地獄』

み「は?
 どこが、血の池なんすか?
 透明ではないか」
婆「ほー。
 これが透明に見えるなら、さほど罪科は重くないかも知れんな。
 罪人には、真っ赤に見えるというで」
罪人には、真っ赤に見える

み「お主にも、そう見えるんじゃな」
婆「見えるかい。
 時折、酸化鉄の具合で赤くなるんじゃ」
酸化鉄
↑売ってました。手作りの化粧品や石けんなどの色付けに使うそうです。

婆「昔は、常時赤かったんじゃがな。
 最近は、滅多に赤くならんわい」
み「貧弱!」
婆「何がじゃ」
み「テーマパークとしては、別府温泉の足元にも及ばんな」
別府温泉の『血の池地獄』
↑別府温泉の『血の池地獄』。規模が段違い。面積は、1,300m2もあります(小学校のプール、4.3個分)。

婆「『恐山』は、テーマパークではないわ」
み「ま、入山料、500円ですからな。
 こんなもんでげしょう。
 あとは?」
婆「最後に、『延命地蔵尊』にお参りして行きなされ」
み「どこじゃい?」
婆「あの小高い丘におわしますぞ」
み「あ、見えた」
『延命地蔵尊』

婆「足元には、石が積まれておるでな。
 お側まで行くのは、ちと難しいが」
足元には、石が積まれて
↑一瞬、ゴミの山かと思いました。

み「そんなら、ここでよかろ。
 なんまいだなんまいだ」
なんまいだなんまいだ
↑カワウソです。

婆「さて、これで一廻りしましたぞ。
 あとは、総門を抜けて、とっととお帰りなされ」
み「ふっふっふ」
ふっふっふ

み「そうはいかんのじゃ」
婆「何か良からぬことを成すつもりではなかろうな」
何か良からぬことを成すつもり

み「なんでそう疑い深いわけ?
 人を信ずることが、人の道の第一歩じゃぞ」
人を信ずることが、人の道の第一歩

婆「お主に説教されたくないわ。
 わしにも、うっかり案内してしまった責任がある。
 何もするつもりがないなら、早いこと帰りなされ。
 バスは、17:30分が最終じゃぞ」
バスは、17:30分が最終
↑2018年5月時点の時刻表です。

婆「これを逃したら、タクシーしかない。
 下北駅まで、10万円はかかる」
み「かかるか!
 白タクじゃあるまいし」
白タク
↑新宿から逗子まで、白タクに乗ったことがあります。金曜の夜、新宿で飲んで終電を逃した後、逗子の自宅まで帰る友人に、怖いから一緒に乗ってくれと頼まれました。もちろん、わたしはお金を出してません。金額は忘却の彼方です。

律「でも、ほんとに薄暗くなってきたわよ」
婆「あまり長居すると、背負ってしまうぞよ」
背負ってしまうぞよ

み「わたしはリュックじゃで、もう背負えん」
わたしはリュックじゃで、もう背負えん

み「先生、背負って帰らっしゃれ」
律「結構です。
 今日は、ほんとにありがとうございました」
み「次に来たときは、またガイドを頼むぞ。
 タダで」
タダで

婆「まっぴらゴメンじゃ。
 それじゃ、わしはこれにて失敬」
これにて失敬

み「待たれい。
 もう一手間、願いたい」
婆「お帰りはあちらじゃ。
 見えてるじゃろ」
恐山の入口『総門』
↑恐山の入口『総門』です。内側から写した写真が、なかなか見つかりませんでした。

み「宿坊というのは、どこにあるんじゃ?」
婆「ひょっとして、宿坊に泊まる気か?」
み「左様じゃ」
婆「よしなされ。
 山が穢れる」
清めの塩

み「なんでじゃ!
 既に予約してあるわい。
 1泊12,000円と言われたぞ。
 お主の口利きで、半額にならんか?」
献金の見返りは口利きです
↑献金の見返りは口利きです。口利きしない議員に、企業は献金しません。

婆「なるかい!
 定額じゃ」
み「『楽天トラベル』にも載ってなかった」


婆「当たり前じゃ。
 予約は、直接電話する以外には出来ん。
 予約したんなら、わかるじゃろ。
 参道の右手奥にあるわ」
参道の右手奥にある

律「ほんとに泊まるの?」
み「せっかくここまで来て、日帰りじゃもったいなかろ」
婆「チェックインは、17時までじゃぞ。
 急ぎなされ。
 それじゃ、わしはここでな」
律「お世話になりました」
み「また来たときは頼むぞ」
また来たときは頼むぞ

婆「断ると言っておろうが」
断る

婆「早く行きなされ。
 さらばじゃ」
脱兎のごとく去るウルトラマンダイ
↑脱兎のごとくイベント会場を去るウルトラマンダイナ。

み「逃げるように去ったな」
律「ほんとに逃げたんだと思うわ。
 こんなとこに泊まるなんて、どうして相談しないのよ」
み「ぜんぶ任せると言ったではないか」
律「宿坊に泊まるなんて、考えもしないでしょ。
 まさか、本堂の板の間に寝るんじゃないでしょうね」
本堂の板の間

み「地方場所の相撲部屋じゃあるまいし」
北名古屋市『観昌寺』
↑名古屋場所での『式秀部屋』の宿舎(北名古屋市『観昌寺』)。

み「宿坊は、お寺とは離れてるんだって。
 10年くらい前に建て替えられて、近代的な宿泊施設って書いてあった」
律「ここ、さっき来た参道よね」
み「右手とか言ってたよな。
 あれかな?
 なんか、デカデカと表札が出てるぞ」
表札が出てる

律「あれ、表札って云うの?」
み「知りませんがな。
 ほかに何て言うんだ?
 ま、とにかく行ってみよう」
律「『恐山寺務所』だって」
『恐山寺務所』

律「“じむしょ”でいいのかしら?」
み「ほかに読みようがおへんがな。
 中におっさんがいるな」
中におっさんがいる

み「聞いてみよう。
 ひょっとしたら、秘密の地下通路から入るのかも知れん。
 その場合、聞かない限り、たどり着けんぞ」
律「そんなわけないでしょ。
 でも、聞いた方が手っ取り早いことは確かね」
み「先生、聞いてよね」
律「何でわたしなのよ」
み「わたしは、シャイなんで」
めんどくせー
↑めんどくせー。

律「どこが!」
み「先生の方が、人あたりがいいでしょ。
 医者は、客商売なんだから」
律「ま、それはそうだけど」
み「そんなら、行きまっせ。
 入ったら、腹の底から声を出して……。
 “たのもう!”って、言ってくだせい」
たのもう

律「何でよ!
 そんなら、あんた言いなさいよ」
み「わたしは、シャイじゃで」
シャイ

律「どこが。
 ほら、早く入りなさい」
早く入りなさい

み「け、蹴るな!」
寺「いらっしゃいませ。
 何か……」
み「ちと、ものをお尋ねし申す」
律「何でそんな口調になるのよ」
み「あがっておるのだ」


み「丁寧語が苦手なの!」

↑中国卓球の丁寧選手。美人ですよね。

律「普段、ぞんざいな言葉を使ってるからよ」
み「人のこと言えないだろ!」
寺「あの。
 ご祈祷でしたら、本日の受付は終了してしまいましたが」

↑いろいろ興味深いです。先祖代々がお得なんでないの?

み「そいつは残念。
 この女を地獄に落とす祈祷をお願いしたかったのじゃが」


寺「そういう祈祷は、お受けしかねます」
律「バカなこと言ってるんじゃないわよ。
 ご迷惑でしょ。
 すみません。
 わたしたち、宿坊って言うんですか?
 そういう施設に泊まることになってるみたいで」
寺「ご予約なされましたか?」
律「はい。
 この人が、勝手に。
 そういう所って、お坊さんじゃなくても泊まれるんですか?」
寺「はい。
 どなたでも、お泊まりいただけます」
律「あの。
 どういう所なんでしょう?
 本堂の板の間で寝るとかは……」

↑何の画像か不明。

み「違うと言ったろ」
律「あんたの言うことは信用できないから」
寺「大丈夫でございます。
 施設的には、旅館と変わりありません。
 ただ、お寺の宿坊になりますから……。
 いろいろと、決まり事もございます。
 フロントで、ご案内文をお渡ししますので、そちらをご覧下さい。
 17時までにチェックインしていただく必要がございます。
 わたしから電話をしておきますので、このままフロントへおいで下さい。
 そちら、この寺務所の脇から、宿坊の方に進めますので。
 すぐにわかります。
 大きい建物ですから。
 どうぞ」
東北に行こう!(127)目次東北に行こう!(129)


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