Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
センセイのリュック/幕間 アイリスの匣 #131
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戯曲『センセイのリュック』作:ハーレクイン



幕間(小説形式)アイリスの匣#131



 花世は絶え間なく悲鳴を上げていた。それは男に触れられる嫌悪感に加え、全裸の体を、剥き出しの股間を男の目に晒す羞恥が上げさせる悲鳴であった。
 花世は、全身で源蔵を拒否していた。だが束ねられた花世の両腕は、縄により固定され真っ直ぐ引き伸ばされている。腕で身を隠すことはかなわない。花世の両脚は源蔵の両腕により大きく左右に割り広げられている。両脚を折って身を隠すことも、もちろんかなわない。
 花世にできることは、ひたすら悲鳴を上げ、顔を左右に振りたくることだけだった。

 源蔵の口技は執拗だった。花世の股間の精緻な構造は、余すところなく源蔵に蹂躙された。
 花世の大陰唇と小陰唇は思う様、掻き拡げられた。会陰から肛門にかけてのつぼまりは容赦なく押し広げられた。膣口は抉じ開けられ、その奥の膣壁は源蔵の舌先で蹂躙された。
 そして、鋭敏極まりない花世の陰核……。


 古代中国に、女性の分泌する三種の体液についての伝承がある。
 曰く……。

「『三つの山頂の偉大な薬』が女の体に見出される。一つは女の口から、もう一つは胸から、そして三つ目の、最も強力なものは『緋色の茸の頂』にある『白虎の洞窟』からのものである」

 『緋色の茸の頂』とは女性の恥丘、『白虎の洞窟』とは膣であろう。ならば、唾液、母乳、膣液が『三つの山頂の偉大な薬』ということになる。


 花世は生娘である。母乳を分泌できるはずもない。
 花世は絶え間なく顔を左右に振っている。源蔵が花世の唾液を捉えることは困難である。
 今、源蔵が自らの口技で分泌させ、自らの体内に取り込んでいる薬、いわば“仙薬”は花世の膣液であった。花世の仙薬は尽きることが無かった。無尽蔵とも思える花世の膣液を、源蔵は余すことなく飲み干していた。
 源蔵の口技は、一見粗暴なようで、その実、丹念窮まるものであった。その口と舌、時折添える指先は、花世の股間のありとある精緻な構造を余すことなく翻弄した。それは、源蔵が日夜に振るう包丁の技を思わせるものであった。

 源蔵の包丁技は、“狂犬”と称されるその人となりにはいかにも似つかわしくないものではあったが、それがかえってその技の巧みさを際立たせていた。それはあたかも、偏屈窮まる芸術家の手から生み出される至高の芸術作品を思わせるものであった。
 絵画、彫刻、書画、音楽……。世に、美を極めた芸術作品は数多(あまた)存在する。源蔵の料理も、それらに匹敵すると云ってもいいものであった。芸術と狂気は、表裏一体のものなのであろうか。


 志摩子は、押し倒した道代の両腕を、真っ直ぐ頭上に引き伸ばさせた。道代の両腕は、花世と同様、道代自らの顔の両脇を挟み込む体勢であった。だが、その両腕は花世のそれとは異なり、縄で固定されてはいない。道代は自らの意志で、いや、志摩子の命によりその姿勢を取っていた。

 志摩子は、仰向けの姿勢の道代の両脚を、自らの両脚で挟み込み、その上体を道代の胸に覆い被せた。柔道の固め技「縦四方固(たてしほうがため)」、総合格闘技などでは「マウントポジション」と称される体勢である。マウントポジションからは、絞め技や打撃技が繰り出される。この体勢に入られた者はもはや逃れる術(すべ)はなく、ギブアップするしかない。
 しかし、志摩子はもちろん、絞め技にも打撃技にも入ることは無かった。
 志摩子は、短く道代に声を掛けた。

「ええか、道」
「へ、へえ。女将さん、何を……」

 志摩子は、それ以上の声を掛けず、道代の剥き出しの腋下にむしゃぶりついた。

「ひいいいいいいいいいいい」

 道代は甲高い悲鳴を上げた。腋下に触れられることは、遠い子供の頃以来の事であった。道代の脳裏を一瞬、互いに絡み合うように戯れ合った幼馴染の顔が過(よぎ)ったが、すぐに掻き消えた。
 道代は、反射的に腕を戻しかけたが、自らの意志でその腕の動きを押し留めた。道代は、その頭上で固く両手を組み、戻ろうとする腕を押し留めた。
 道代は、自らの腋下を蹂躙する志摩子の舌と唇に、すべての神経を集中させた。志摩子の舌と唇は、道代に異様な感触と感覚を与えた。羞恥、嫌悪、歓喜、掻痒感、痛痒感……。
 道代は、快感と苦痛が綯い交ぜ(ないまぜ)になった、表現のしようのない感覚に襲われた。いや、それは突き詰めればやはり快感であった。

「ひいいいいいいいいいいいっ」

(こ)
(こそばい〔こそばゆい〕)
(こそばい)
(たまらん〔堪らない〕)
(こそぼうて)
(こそぼうて、たまらん)
(しやけど〔だけど〕)
(しやけど)
(ええ〔いい〕)
(ええ)
(ええっ)
(ええわ)
(た)
(たまらん)
(たまらん)
(も、たまらんっ)

「ぎひいいいいいいいいいいいっ」

 道代は、絶え間なく悲鳴を上げ続けた。
 道代の悲鳴に、花世の悲鳴が重なった。

「ぎええええええええええええっ」

 道代と花世は、同時にアクメに達した。

「いくっ」
「いくうっ」

 二人は同時に失禁した。




 源蔵は、志摩子女将の居室、延べた布団の上に大胡坐をかいていた。
 源蔵は、全裸であった。その全身の肌には、うっすらと汗が浮いていた。源蔵の肩にも、二の腕にも、腹にも、太腿にも逞しい筋肉の束が盛り上がり、誇示するようにその肌を浮き上がらせていた。源蔵の汗を纏った肌は、仄暗い室内の灯りを美しく照り返していた。
 源蔵の体は逞しかった。名工の手になる彫像を思わせるものであった。だが、その内には狂気を秘めていた。狂気を蔵するダビデ像……。そのように見える源蔵の裸体であった。

 志摩子は、やはり全裸であった。全裸の志摩子は、手にした手拭いで源蔵の肌の汗を拭う。その仕草は、甲斐甲斐しいとも云えるものであった。わが子を慈しむ母親のような仕草であった。手拭いの端には「花よ志」の文字……。

 道代は、やはり全裸で源蔵の前に正座し、畏まっていた。時折、手にした銚子で源蔵に酌をする。銚子の酒は、先ほど手早く道代が燗をつけたもの。燗づけは源蔵の命であった。

 志摩子女将の自室である。
 室内にはクーラーも、扇風機もなかった。源蔵の肌に浮く汗は、志摩子が拭うあとから追うように浮き出てくる。
 源蔵の脇には、花世が正座で控えていた。手にした大振りの団扇で、ゆったりと源蔵に風を送る。花世も全裸であった。

 三人の全裸の女に傅(かしず)かれた源蔵は、手にした木桝の酒を悠然と口に含んだ。酒は祇園「花よ志」の買い付け、京都・伏見の銘酒「筺姫」である。「はこひめ」であるが「きょうき」とも読める。「凶器」あるいは「狂気」と……。
 源蔵は「きょうき」を呑んでいた。
 源蔵が座すその布団は、多量の尿や膣液、唾液を吸い込み、しとどに濡れていたが、全く意に介さない源蔵であった。
 源蔵が、三人の女の誰にともなく声を掛けた。

「ええか、おまんら(お前達)」
「へえ(はい)」
「あの計画、始めるで」
「へえ」
「やる(実行する)か、源ちゃん」

 花世と、志摩子女将は即座に返答したが、道代にはその意味が分からなかった。

「計画て……なんですやろ」

 志摩子が道代に声を掛けた。

「ああ、あんたにはまだ、ゆうてへんかった(言っていなかった)か」
「へえ……」
「こういうこっちゃ(こういうことだ)……」

 志摩子は、道代に短く事を語った。
 道代は目を剥いた。

「へっ、あやめを……」

 絶句する道代に、志摩子、源蔵、花世の三人がにんまりと笑いかけた。道代には、シェークスピアの『マクベス』に登場する三人の魔女に見えた。
センセイのリュック【幕間 アイリスの匣 #130】目次センセイのリュック【幕間 アイリスの匣 #132】

コメント一覧
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    • ––––––
      1. 三人の魔女
    • 2016/01/12 10:19
    •  もちろん源蔵は男ですが、花世がこのたくらみを承知とは、作者も知りまへなんだ。
       まったく、油断も隙もありません。
       うっかりしますとどこへ行くやら登場人物、ですわ。
       まあともあれ、なが長とお付き合いいただきました『アイリス』、そろそろ幕が近(ちこ)おす。名残はおしいですが、何事にも幕引き時はおすわなあ。
       まあ、はんでも(それでも)、最後のクライマックスは、ちゃんと用意しとります。
       祇園「花よ志」の料理人あやめ最後の一品、どうぞ次回からご賞味ください。

    • ––––––
      2. Mikiko
    • 2016/01/12 19:51
    • 最後の一品
       この流れからいくと……。
       人肉料理でしょう。
       4人を返り討ちにして、活造りですな。
       で、巨大な岡持ちに据えて、『アイリスの匣』。
       どないだ?

    • ––––––
      3. 血刀ハーレクイン
    • 2016/01/12 23:57
    • ☠源蔵を返り討ち☠
       こら。
       バラしてんじゃねえよ、大事なクライマックスをよ。
        (ああ、書いちまったぜ)
       それにしても、まだ「匣」の正体が決まらないんだよね。どうしたもんじゃろかい。
       岡持ちではありません。

    • ––––––
      4. Mikiko
    • 2016/01/13 07:30
    • なんだ
       返り討ちは正解ですか。
       やっぱり活造りですかね。
       それで、伊豆に逃亡し、身を隠したと。
       匣の中身は、4人の血がついた包丁でしょう。

    • ––––––
      5. 匣探しハーレクイン
    • 2016/01/13 11:14
    • ☠源蔵を返り討ち☠
       生き作り、伊豆に逃亡、はともかく、
       匣の中身は包丁ではありません。現段階で当てられれば御慰み、です。
       中身は決まってるんだけど、くどいようですが匣自体をどう手当てするかが未定です。大事な小道具なんですがね。

    • ––––––
      6. Mikiko
    • 2016/01/13 19:57
    • 匣の中身は……
       生首ですね。
       相良が、“ぶら”が収められた箱を、野田からもらって持ってましたよね?
       これを、形見分けにあやめがもらったことにすれば?
       でも、生首は入らんか。

    • ––––––
      7. ああ、そういえば……
    • 2016/01/13 21:12
    •  どうしたんだっけ「ブラの箱」。
       相良が抱え込んで、そのまま死んでしまったんじゃなかったかなあ。
       いやあ、覚えとらん。
       どこへ行った、「野田の箱」。
       まあ、野田箱の中身は「ぶら」ですが、あやめの箱の中身はちゃい(違い)ます。
       しつこいようですが『アイリスの匣』、中身が分かれば御慰み。

    • ––––––
      8. Mikiko
    • 2016/01/14 07:23
    • なるほど
       匣の中身は、“ぶら”よりも大きいということですか。
       『花よ志』の権利書とか?

    • ––––––
      9. 祇園の匣屋HQ
    • 2016/01/14 15:29
    •  匣および……、
       その中身については、これ以上の言及は避けたいと思います。

    • ––––––
      10. Mikiko
    • 2016/01/14 20:07
    • 逃げたな。

    • ––––––
      11. 逃亡者ハーレクイン
    • 2016/01/14 22:38
    • >逃げたな
      


      ⁇何を言うか‼
       大事なネタをばらそうとする「悪徳商人」から身を守っておるだけじゃ。
       「越後屋、おぬしもワルじゃのう」というところでしょうか。
       まあしかし、簡単に読み透かされるような筋立てでは、どもならんか。
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