2015.4.18(土)
律「ほんとに、ややこしいんだから。
それじゃ、続けるわよ。
十二指腸に繋がるのが、空腸と回腸」
律「両方合わせて、6メートル」
み「いきなり長くなりましたな。
確かに、十二指腸みたいに指をあてて測るのは大変だ。
でも、なんで一緒くたにするのよ。
あ、そうか。
“くう腸”と“かい腸”で、“くうかい”って洒落?」
律「“くうかい”って何よ?」
み「知らんのか!
空海は、真言密教の開祖ではないか」
↑お坊さんの作った紙芝居です。驚嘆するほどたくさん作られてます。詳しくはこちらを。
律「ぜんぜん関係ないでしょ。
続けます。
6メートルのうち……。
空腸が、5分の2、回腸が、5分の3よ」
み「なんで、いきなり分数になるのよ」
↑なぜ、こうなる……。
み「6メートルの5分の2ってことは、2.4メートルじゃない。
2.4メートルと3.6メートルって言えばいいでしょ」
律「だいたいでいいの。
そもそも、空腸と回腸には、明確な境界は存在しないんだから」
↑カフェの脇を通る国境線。右がベルギー、左がオランダ。
み「なんじゃそりゃ!」
律「小腸の中で、少し太くて腸壁が厚い部分を空腸って呼ぶの。
連続してるわけだから、ここまでが空腸っていう、明確な位置は無いのよ」
み「スッキリせんのぅ。
“くう腸”の“くう”って、どんな字を書くの?」
律「空っぽの“空”」
み「“空海”の“空”ではないか」
律「ここは、食物が早く通過するから、内部が空っぽの場合が多いのよ」
↑千仏鍾乳洞(福岡県北九州市)。国の天然記念物(昭和10年指定)。洞内は、四季を通じて気温16度、水温14度。
律「だから、空腸」
み「回腸は、聞かずともわかるな。
“空海”の“海”ではなく……。
回虫の“回”で、回腸でしょ?」
↑絶対に見たくないシーン。薬を飲ませると、こう出るようです。
み「ここに回虫がいるから回腸」
律「ま、確かに回虫は、回腸にいることもあるわ。
でも、回虫の語源は、回腸にいるからじゃないの」
↑イメージです。
み「じゃ、何の“回”よ?」
律「回遊の回ね」
↑対馬海流に乗って佐渡近くを通過するマグロ。
律「回虫は、体中を回遊するの」
み「にゃにー。
回虫の胎内巡りってこと?」
↑京都清水寺は、舞台だけではありません。本堂地下には、こんなディープなスポットも。
律「ま、そうね。
まず、回虫の雌が、1日にどれくらい卵を産むか知ってる?」
み「知るわけおままへんがな。
100個くらい?」
↑北海道上川郡比布町『大熊養鶏場』産。熊が産んだ卵ではありません。
律「桁が違います。
1日最大、25万個と云われてます」
↑テムズ川を埋め尽くす25万個の青いアヒル。募金集めのイベントだそうです。
み「どひゃー。
たまらんですたい。
それがみんな回虫になったら、あっという間にお腹がパンパンではないか」
↑もちろん、妊婦さんです(妊娠9ヶ月)。
律「当然、そうなれば……。
宿主はあっという間に死んじゃうでしょうね。
それじゃ、回虫にとっても不都合なわけ。
だから、卵は孵化することなく、そのまま糞便として排出されます」
み「ありゃりゃ。
あわれ、水洗トイレの藻屑と消えるわけか」
律「今はね。
でも昔は、人糞を肥料にしてたわけでしょ」
↑『江戸東京博物館』で担げます。もちろん、本物は入ってませんが。
み「江戸時代は、農家の人が、わざわざ江戸に人糞を買いに来たそうだからね。
江戸の人は良いものを食べてるからって。
長屋の共同トイレの汲み取りは、大家の収入になったのよ」
↑『深川江戸資料館』。扉が下半分しかありません。完全に顔出しです。もちろん、男女別ではありません。扉の前は、男性も通ります。今とは、羞恥感覚が相当違ってたようです。
律「また、話がズレそうなんですけど」
み「お渡しします」
律「そういう、人糞の付着した食物を食べたり……。
人糞の付いた指を舐めたり」
み「そんなヤツ、おらんだろ!」
律「昔は、ウォシュレットなんて、無かったのよ。
拭き取りのとき、誤って付着することは、当然あったでしょ。
で、仕事に戻って、大福帳とかを繰る。
ほかの人がその大福帳を使うとき、紙を触った指を舐める」
↑相手に与える印象、最悪です。指サックを使いましょう。
み「あちゃー。
あり得ますな」
律「そういう形で、経口感染するわけ」
み「胃液で溶けちゃわないの?」
律「溶けるのは、卵の殻だけ。
で、まんまと外に出た小虫は、すみやかに小腸に移動する」
↑ムーミンに出てくるニョロニョロです。
み「で、回腸に住み着く」
↑和歌山なら雪も少なく、老後にはいいかも知れません。
律「まだよ。
その段階で成虫になるわけじゃないの。
あるものは、腸壁を食い破って体腔内へ出る」
み「どひー」
律「あるいは、血管に侵入して、肝臓を経由して肺に到達する」
み「げぼっ」
律「このころには、1ミリくらいに成長してるわ。
で、数日以内に小虫は、気管支から這いあがり、口に出る」
↑にゃんと、猫にぶち殺された蛇の口から、直前に飲まれたであろう小蛇が出てきたそうです。
み「それで、サイナラですか?」
↑鳥羽を出港する豪華客船『飛鳥Ⅱ』。鳥羽では、赤いハンカチを振るのが習わしだとか。死ぬまでに、1度乗ってみたいです。
律「そんなわけないでしょ。
唾や食べ物と一緒に飲み込まれて、今度は食道を降りる」
↑正常な食道。血管が綺麗ですね。
み「また入るのきゃー」
律「そして胃を通過し、再び小腸に戻って、ようやく成虫になる。
ここまでにかかる期間は、およそ3ヶ月」
み「長い旅ですな」
↑映画『砂の器』より。
律「そうね」
み「で、そこで卵を産んで、死ぬわけ?」
律「そんな簡単には死なないわ。
寿命は、2年から4年もあるの」
み「生き過ぎでしょー。
たかが虫なのに」
律「成長すると、雌は20~35cmになります」
↑アキハバラドッグ【VEGAS PREMIUM HOT DOG 秋葉原店】。長さ30㎝。
み「ウンコより長いではないか。
でも、なんでそんなにグルグル回るわけ?」
↑グルグル回ると言えば、メビウスの帯(横浜市『関内ホール』)。こんなものを税金で作っちゃいけません。
み「最初に殻を破って小腸に降りたとき、ずっとそこにいればいいわけでしょ。
また小腸に帰ってくるんだから」
律「きっと、旅が好きなのよ。
わたしたちみたいに」
み「回虫と一緒にすな!」
律「ほんというと……。
こんな回りくどい感染経路をたどる理由は、はっきりしてないの。
かつて、中間宿主を介して人に寄生してたころの名残りだって説もあるけど」
み「回虫の気持ちは、ようわからん。
『目黒寄生虫館』に行って、インタビューしてくるか」
律「あそこにいるのは、ホルマリン漬けだけよ」
み「あの博物館は、一度、見に行きたいと思ってる」
律「しばらくは、うどんが食べられなくなると思うけど」
↑営業妨害の意図はございません。美味しそうです。
み「げ。
でも、なんで回虫の話になったんだ?」
律「あんたが始めたんでしょうが。
回腸は、回虫がいるところだって」
み「あ、そうだった」
律「回腸は、文字通り、ぐるぐる回ってるからよ」
み「そう言えばさ……。
小腸癌って、聞かないよね。
十二指腸癌も、空腸癌も、回腸癌も、聞かない。
なんで?」
律「そうね。
全消化器官に占める小腸の長さは、75%にもなるのよ」
↑全身骨格模型『筋臓くん』消化管バージョン。ピンクの部分が小腸ですね。
律「それなのに、全消化器官に占める癌の発生割合は、1%に過ぎないの」
み「なぜじゃ?」
律「小腸に癌が少ない理由は、十分にわかっていないのよ」
み「何をやっとるんだ、医学は。
わからんことだらけではないか」
律「まだまだ、人体の不思議を解明するまでには至らないわね」
↑ほぼ『見世物』に近い展示でした。
律「でも、小腸は食物の通過時間が速いから……」
↑『郡山カルチャーパーク』
律「発癌物質との接触時間が短いんじゃないかとは云われてる」
み「てことは……。
食べ物が長く留まると、発癌のリスクも上がるってこと?」
律「そのとおり」
み「便秘の人は、危険ではないか」
律「毎日スッキリ出る人よりは、大腸癌の危険度は高くなるでしょうね」
み「その点、わたしは、心配ないな」
↑おまえが心配。
律「心配ないとは言えないわよ。
快便の人が、まったく大腸癌にならないわけじゃありません」
み「ならないと言ってほしかった」
律「言えません。
あと、小腸の粘膜細胞は新陳代謝が盛んなの。
小腸の内側にある柔毛(じゅうもう)っていう小突起の寿命は、わずか24時間」
み「たった1日?」
律「そう。
だから、たとえ癌化がおこったとしても、癌細胞が体内から排除される確率が高いわけね」
み「ほかの臓器も、新陳代謝が盛んになれば、癌になる確率は下がるはずよね」
律「ま、そうだけど」
み「じゃ、食道と胃を取っちゃって、小腸の先端をノドに繋ぐ。
大腸も取っ払って、小腸の終端を肛門に繋ぐ。
これで、消化器の癌からは開放されるんでないの?」
律「あなた、やってみる?
ミミズさんになれるかもよ」
み「御免被ります。
でも、新陳代謝という言葉には、ちょっとひっかかる。
あ、そうだ。
尋常性乾癬って病気は、皮膚の新陳代謝が早くなりすぎる病気なのよ」
律「だから?」
み「小腸細胞と関係してない?
わたしが、胃酸を抑えるファモチジンで乾癬から回復したことと、関連性があるんじゃないの?」
律「単なる偶然でしょ」
↑身にしみますな。
み「偶然こそ、発明の母なのです」
律「あんた、医学部に入りなおして、研究してみたら」
み「医学部に入るなんぞ……。
百万回生まれ変わってもムリじゃ」
↑1977年出版のロングセラー。現在までに、200万部売れてるそうです。
律「それでは、講義を続けます」
み「続けるのきゃ!」
律「当たり前でしょ。
まだお腹の途中じゃない」
み「ひょっとして、ケツから出るまで?」
律「下品な表現はやめてちょうだい。
それじゃ、続いて大腸ね」
み「癌の宝庫ですな」
律「宝庫ってのもヘンでしょ。
でも、多いということは、確かね。
日本では、女性の癌死亡率の1位。
男性では、肺癌、胃癌に次いで3位だけど……。
もうじき、胃癌を抜くと云われてます」
み「女性の1位か。
やっぱり、すぐに連想するのは深浦加奈子さんだよな」
律「苗字が同じだけに、人ごとじゃないみたいだった」
み「いくつだっけ?」
律「確か、48歳よ」
み「早すぎるよね」
律「もちろんだわ」
み「お父さんが書かれた闘病記を読んだ。
『加奈子。何をしてやれたかな…』って本」
↑わたしは、図書館で借りて読みました。切なかった。
み「ほんと、凄絶だった。
最後は、仰臥すると呼吸が出来なくなるので、ずっとベッドに座りっぱなし。
座ったまま亡くなったのよ」
律「辛いわね」
み「お父さんが、遺骨の一部を海に散骨するときに……。
こらえきれず号泣されるシーンが、印象に残ってる」
律「男親が、娘さんを亡くすのは、ほんとに切ないと思うわ」
み「女性に大腸癌が多いのは……。
やっぱり、便秘が原因?」
↑経験ないのでわかりませんが、辛いんでしょうね。
律「それは、大いにあると思うわ。
それだけ、発がん物質と触れている時間が長いわけですからね。
でも、便秘が一番怖いのは……。
大腸癌の症状を見逃してしまうことにあるの。
つまり、いつのも便秘が、さらに頑固になったくらいに思っちゃうわけ」
み「なるほど。
男性が、急に便秘になったら、何か疑うものね」
律「そうね。
あと、やっぱり女性は、健診をためらってしまうわけよ。
恥ずかしがって」
み「にゃるほど。
でも、お医者さんは、そういうところを見るのが仕事なんだもんね」
律「そういうこと。
とにかく、健診で、便潜血反応検査をきちんと受けることが第一」
み「いわゆる検便ですな」
律「大腸癌検診の1次スクリーニングね」
み「わたしは、1度、それでひっかかってさ」
み「そうそう、十二指腸潰瘍の疑いを受けたときと、一緒のときだった。
それで、あんなに封筒が厚かったのか。
病院の宣伝ビラだけじゃなかったんだな」
律「そりゃそうでしょ」
み「それで、経鼻内視鏡検査で十二指腸を見てもらい……。
大腸内視鏡検査も受けることにしたの。
でも、鼻と尻から、同時に入れたわけじゃないよ」
律「当たり前でしょ」
み「大腸内視鏡は、なんといっても、事前の下剤がタイヘンなんだよ。
なにしろ、2リットルだからさ」
↑一気飲みするわけじゃありません。2時間かけて飲みます。10分毎に、167cc飲めばいいわけ。
律「病院で飲んだの?」
み「うんにゃ、家です。
わたしは、2階のトイレが自分専用だから良かったけど……。
もし、トイレが塞がってたら、完全アウトだよ」
律「佳境のときは、ほぼひっきりなしになっちゃうものね」
み「なにしろ、お尻から透明な水が出なきゃならんわけでしょ」
律「大腸の中を空っぽにするためよ」
↑普段はうんこが詰まってるとは思えないほど綺麗な器官です。やっぱり、陽に当たらないせい?
み「透明な水って……。
植えたての植木鉢じゃねーって言いたかった」
律「なにそれ?」
み「鉢に植物を植えて、最初の水やりでは……。
鉢底から透明な水が出るようになるまで、水をやらなきゃならないの」
律「なんでよ?」
み「用土の中には、微塵(みじん)って云う、細かい粒子が混ざってるの」
↑これは、ミジンコ。3㎝くらいの大きさで、水槽で見れたら、きっと面白いよね。飼いたいです。
み「工場では取り除かれてても、運搬の過程で擦れたりするからね」
↑これが微塵。用土が崩れて、粉状になったものです。
み「この微塵が残ってると、通水性や通気性を悪くするわけ。
チョロチョロ水やりしたんじゃ、これが抜けないんです。
だから最初に、大量の水で微塵を流してしまうの」
↑これは微塵がくれの術。しかし、こういうのを“術”っていうんですかね?
律「水が透明になれば、それが抜けたってことになるわけね」
み「左様です。
おわかり?
植木鉢の気持ち?」
↑植木鉢を組み合わせて作った人形。“ポットマン”と云います(石を投げないでください)。
律「わかるわけないでしょ」
み「でも、家で下剤を飲んでからクリニックに行く場合……。
注意しなきゃならないのは、完全に出きったことを確認しなきゃダメね」
律「途中で催したら、けっこう辛いかもね」
み「トイレが、すぐ見つかればいいけど……。
そうでなかったら、アウトになる可能性があります」
律「そうならないためには、時間に余裕を見て出かけることね。
途中で、トイレに寄ることも考えて」
↑東京・恵比寿駅トイレ
み「だよね。
予約時間ギリギリに合わせて家を出たら……。
催しても、我慢しようとしちゃうかもね」
律「下剤の便意は我慢できないわよ」
み「んだすな。
悲惨な結果、まさしく人生の汚点を残すことになる」
律「あなたは、大丈夫だったわけね」
み「早起きは得意ですから。
暗いうちから起きて、出し切った。
でも、クリニックの入ったビルに着いてから……。
いちおう、最後のトイレをしました」
律「そういうところは、準備万端なのよね。
ほかは、行き当たりばったりなのに」
み「わたしは大学のとき、1度、アパートの前でうんこを漏らしたことがあるんです」
律「あー、それ聞いた。
飲み過ぎだったんでしょ」
み「アパートが見えてたのに、間に合わなかった。
しばらくは、ほんとに自分の身に起こったことなんだろうかって気持ちだった。
信じられなかった。
自分が、うんこ漏らすなんて(214回のコメントを参照)」
律「お酒の飲み始めのころは、その怖さがわからないわけよ」
み「飲み過ぎの下痢は、下剤と双璧ですな。
で、そういうトラウマがあるから……。
シモ関係には、準備万端にならざるを得ない」
律「なるほどね。
で、どうだったの?
検査は」
み「痛いわけじゃないんだけどね。
やっぱり、内視鏡で腸壁を刺激されるせいか……。
便意が起こるわけよ。
それが苦しかった」
律「ま、それは仕方ないわね。
結果はどうだったのよ?」
み「なにごともおまへんでした。
その後は、1度も便潜血で引っかかってない」
↑なかなか、こんなに上手く取れんのよ。
律「それは良かったわ。
でも、油断は禁物。
何か異常を感じたら、すぐに検査を受けること」
み「そうする。
今は、郵送で便潜血検査も出来るものね」
律「そうよ。
それでは、講義を進めます」
み「何の講義だっけ?」
律「大腸です」
み「もういい気がするんですけど」
律「勝手なこと言わないで。
最後まで進めなきゃ、収まりません。
大腸は、おおよそ1.6メートルくらいね」
律「大きく、3つの部位に分けられます。
まずは、盲腸。
小腸の末端の回腸口と繋がってます。
ここには、大腸に進んだ内容物が逆流しないように、回腸弁(回盲弁)という仕切りが付いてます」
律「だから、小腸と大腸は、明確に分けられるわけ」
み「盲腸の長さは?」
律「5㎝くらいね」
み「わたし、まだ盲腸持ってるんだ」
律「あなたが言ってるのは、虫垂のことでしょ」
み「同じでないの?」
律「違います。
盲腸の端っこから、太さ1㎝くらいで、長さ6~7㎝くらいの突起が出てるの。
それが虫垂」
律「虫垂の壁にはリンパ組織が多くあって……。
リンパ球や抗体が作られてるの。
10代から20代にかけては、この活動が活発になりすぎて、炎症反応が引き起こされることがあるわけ。
これが、虫垂炎ね」
み「ほー。
盲腸と虫垂が別だってのは、初めて知った」
律「誤解してる人が多いわね」
み「虫垂炎の人は、虫垂を切り取っちゃうんでしょ?」
律「そうよ」
み「何か、問題はないの?」
律「退化した器官で、特別な働きはしてないと云われてる。
虫垂を取り去って、問題が起こることはないわね。
むしろ、これがあると、虫垂炎になるリスクを抱えてることになる。
だから、十分な医療が受けられない地域に赴く人の中には……」
律「日本で虫垂を取り去ってから行く人もいるわ。
虫垂炎は、今の日本では何でもない病気だけど……。
治療を受けられなかったら、大変なことになるから」
み「江戸時代は、死病だったみたいだよね」
律「そうでしょね。
虫垂が破れて膿が腹腔に流れ出したら……。
急性腹膜炎を引き起こすわ」
み「ものすごく苦しむそうだよね」
律「何でそんなこと知ってるの?」
み「『大江戸神仙伝』っていうSF小説に出てた」
↑1985年にドラマ化されたようです。主演は、滝田栄。見たかった。
み「江戸時代にタイムスリップした科学ジャーナリストは……。
若い芸者と恋人になるわけ。
ところがその恋人が、明らかに虫垂炎と思われる症状を見せる」
み「それでは、ここで問題です」
律「講義をしてるのは、わたしでしょ」
み「いいから!
その科学ジャーナリストは、どうしたでしょう?」
律「そんなの簡単よ。
当時の医学じゃどうしようも無いんだから……。
その芸者さんを現代に連れてきたんでしょ」
み「ブッブー。
ハズレです。
そんな都合のいい話があるか」
律「SF小説なんて、みんな、ご都合主義じゃない」
み「失敬なやつ!
SF神の祟を受けるぞよ」
律「そんな神様、いるわけないでしょ」
み「アラハバキの神です」
↑なつかしや。五能線『木造駅』。
律「さっぱりわからないわ」
み「それでは、答えを言います」
律「聞かなくていいわ」
み「聞けぃ!」
み「江戸で、開腹手術をしたんです」
律「出来っこないでしょ。
麻酔はどうしたのよ。
麻酔もしないでお腹を切ったら……。
あまりの激痛で、悶死しちゃうわよ」
み「どうやって麻酔したかは、忘れた」
律「いい加減な女」
み「とにかく、手術は成功したのです」
律「あ、そう。
作り物の話はいいわよ」
み「この『東北』自体、作り話でんがな」
律「盲腸と繋がるのが、結腸」
み「進めますな」
律「いちいち相手にしてたら、一向に進まないんだもの。
どんどん続けます」
律「結腸は、大腸の中で一番長い器官よ。
まず、盲腸と繋がる右の脇腹の上のあたりから、真上に向かいます。
これが、上行結腸ね。
長さは、約20㎝。
上行結腸が肝臓の下まで上がると……。
今度は胃の下を真横に伸びて、左脇まで達します。
この部分が、横行結腸。
長さは、約50㎝」
律「さらに今度は、体幹の左側を真下に向かいます。
これが、下行結腸。
長さは、約25㎝。
さらにそこから、身体の中心部まで戻り……。
直腸と繋がるわけ。
直腸はまっすぐ下に向かってるから……。
そこに繋がるには、真上からになるわけ。
なので、この部分の結腸は、S字に湾曲してる。
なので、S字結腸と呼ばれます」
↑見事なS字クランク。場所不明。
律「長さは、約45㎝」
み「ベラベラとまくし立てましたな」
律「チャチャを入れられたら、話が続かないから。
それでは、ここで問題です!」
み「にゃんだとー」
律「さっきの仕返しよ。
ちゃんと聞いてれば、わかる問題です。
結腸全体の長さを答えよ」
み「覚えてられるか!」
律「ダメな生徒ね。
20㎝+50㎝+25㎝+45㎝でしょ。
はい、計算」
み「電卓、持ってない」
↑カシオミニのCM。そうとう高価です。
律「こんなの暗算しなさい」
み「指導が厳しすぎるんですけど」
律「小学生の問題じゃない。
しょうがないわね。
全部で、140㎝。
わかった?」
み「へいへい」
律「返事は、ハイ!」
み「なんか、性格変わったみたいなんですけど」
律「わたしって、教師に向いてるかも」
み「ぜったい嫌われるタイプです。
律子ババアとか呼ばれて」
律「何だと!」
み「キーンコーンカーンコーン」
↑懐かしい音階です。
律「何よ、それ?」
み「授業終了の鐘でんがな。
続きは、また来週」
↑何の画像かわからん。
律「講義を続けます」
み「休み時間が無くなっちゃうだろ!
ていうか、まだ朝食前だし」
律「これがほんとの朝飯前」
み「おもろくない」
律「もう少しだから、黙って聞きなさい。
消化器の末端にあるのが、ご存知、直腸ね」
律「長さは、20㎝」
み「終わったー。
って、ちょっと待てよ」
律「なに?」
み「計算が合いまへんがな」
律「何が合わないの?」
み「わたしの記憶力を侮るでない。
高校時代は日本史の女王と呼ばれ、暗記科目には滅法強かったのじゃ」
律「今は見る影もないけどね」
み「黙らっしゃい!
あーたはさっき、大腸の長さは、1.6メートルって言いましたよね」
律「そうよ」
み「で、最初の盲腸が5㎝でしたな。
続く結腸が、けっちょー長く……」
律「それ、洒落のつもり?」
み「つもりでなく、洒落そのものじゃろ?」
律「座布団、没収」
み「とにかく!
結腸は、けっちょー長くて……」
律「それはもういいって。
行稼ぎじゃない」
み「2度までは許されるのです」
律「誰が許すの?」
み「天照大御神」
律「許すわけないでしょ」
み「とにかく!
結腸は、140㎝なんでしょ」
律「そうよ」
み「そして、最後の直腸が20㎝。
ほら、合わない。
全部で、165㎝になるじゃない。
5㎝、オーバー。
掛け金没収です」
律「バカモン」
み「何がよ!」
律「盲腸の長さは、計算に入れないの」
み「何で!」
律「盲腸は、文字通り、袋状に閉じてる器官よ。
小腸と大腸ってのは、一直線に繋がってるわけじゃないの。
言ってみれば、大腸の土手っ腹に、小腸が突き刺さるような形なの」
律「で、突き刺さったところの片方の道が、結腸。
もう一方の道が、盲腸で袋小路」
↑新潟県長岡市。袋小路なのに、なぜ通り抜けを禁ずるのか? 抜けられるからに違いありません。
律「だから、盲腸の長さは、計算に入れないの」
み「何でよ!」
律「知らないわよ。
今、思いついたんだから」
み「医者が、思いつきでしゃべるな!」
律「それでは、続いて……」
み「まだ続くのきゃ!
休み時間が終わってしまうではないか。
キーンコーンカーンコーン」
み「ほら、終わった」
律「川上先生から、連続授業の許可はいただいてます」
み「誰じゃ、川上先生って?」
律「自分で書いてて忘れたの?
『放課後のむこうがわ』に出てくる英語の先生でしょ」
み「フィクションではないか」
それじゃ、続けるわよ。
十二指腸に繋がるのが、空腸と回腸」
律「両方合わせて、6メートル」
み「いきなり長くなりましたな。
確かに、十二指腸みたいに指をあてて測るのは大変だ。
でも、なんで一緒くたにするのよ。
あ、そうか。
“くう腸”と“かい腸”で、“くうかい”って洒落?」
律「“くうかい”って何よ?」
み「知らんのか!
空海は、真言密教の開祖ではないか」
↑お坊さんの作った紙芝居です。驚嘆するほどたくさん作られてます。詳しくはこちらを。
律「ぜんぜん関係ないでしょ。
続けます。
6メートルのうち……。
空腸が、5分の2、回腸が、5分の3よ」
み「なんで、いきなり分数になるのよ」
↑なぜ、こうなる……。
み「6メートルの5分の2ってことは、2.4メートルじゃない。
2.4メートルと3.6メートルって言えばいいでしょ」
律「だいたいでいいの。
そもそも、空腸と回腸には、明確な境界は存在しないんだから」
↑カフェの脇を通る国境線。右がベルギー、左がオランダ。
み「なんじゃそりゃ!」
律「小腸の中で、少し太くて腸壁が厚い部分を空腸って呼ぶの。
連続してるわけだから、ここまでが空腸っていう、明確な位置は無いのよ」
み「スッキリせんのぅ。
“くう腸”の“くう”って、どんな字を書くの?」
律「空っぽの“空”」
み「“空海”の“空”ではないか」
律「ここは、食物が早く通過するから、内部が空っぽの場合が多いのよ」
↑千仏鍾乳洞(福岡県北九州市)。国の天然記念物(昭和10年指定)。洞内は、四季を通じて気温16度、水温14度。
律「だから、空腸」
み「回腸は、聞かずともわかるな。
“空海”の“海”ではなく……。
回虫の“回”で、回腸でしょ?」
↑絶対に見たくないシーン。薬を飲ませると、こう出るようです。
み「ここに回虫がいるから回腸」
律「ま、確かに回虫は、回腸にいることもあるわ。
でも、回虫の語源は、回腸にいるからじゃないの」
↑イメージです。
み「じゃ、何の“回”よ?」
律「回遊の回ね」
↑対馬海流に乗って佐渡近くを通過するマグロ。
律「回虫は、体中を回遊するの」
み「にゃにー。
回虫の胎内巡りってこと?」
↑京都清水寺は、舞台だけではありません。本堂地下には、こんなディープなスポットも。
律「ま、そうね。
まず、回虫の雌が、1日にどれくらい卵を産むか知ってる?」
み「知るわけおままへんがな。
100個くらい?」
↑北海道上川郡比布町『大熊養鶏場』産。熊が産んだ卵ではありません。
律「桁が違います。
1日最大、25万個と云われてます」
↑テムズ川を埋め尽くす25万個の青いアヒル。募金集めのイベントだそうです。
み「どひゃー。
たまらんですたい。
それがみんな回虫になったら、あっという間にお腹がパンパンではないか」
↑もちろん、妊婦さんです(妊娠9ヶ月)。
律「当然、そうなれば……。
宿主はあっという間に死んじゃうでしょうね。
それじゃ、回虫にとっても不都合なわけ。
だから、卵は孵化することなく、そのまま糞便として排出されます」
み「ありゃりゃ。
あわれ、水洗トイレの藻屑と消えるわけか」
律「今はね。
でも昔は、人糞を肥料にしてたわけでしょ」
↑『江戸東京博物館』で担げます。もちろん、本物は入ってませんが。
み「江戸時代は、農家の人が、わざわざ江戸に人糞を買いに来たそうだからね。
江戸の人は良いものを食べてるからって。
長屋の共同トイレの汲み取りは、大家の収入になったのよ」
↑『深川江戸資料館』。扉が下半分しかありません。完全に顔出しです。もちろん、男女別ではありません。扉の前は、男性も通ります。今とは、羞恥感覚が相当違ってたようです。
律「また、話がズレそうなんですけど」
み「お渡しします」
律「そういう、人糞の付着した食物を食べたり……。
人糞の付いた指を舐めたり」
み「そんなヤツ、おらんだろ!」
律「昔は、ウォシュレットなんて、無かったのよ。
拭き取りのとき、誤って付着することは、当然あったでしょ。
で、仕事に戻って、大福帳とかを繰る。
ほかの人がその大福帳を使うとき、紙を触った指を舐める」
↑相手に与える印象、最悪です。指サックを使いましょう。
み「あちゃー。
あり得ますな」
律「そういう形で、経口感染するわけ」
み「胃液で溶けちゃわないの?」
律「溶けるのは、卵の殻だけ。
で、まんまと外に出た小虫は、すみやかに小腸に移動する」
↑ムーミンに出てくるニョロニョロです。
み「で、回腸に住み着く」
↑和歌山なら雪も少なく、老後にはいいかも知れません。
律「まだよ。
その段階で成虫になるわけじゃないの。
あるものは、腸壁を食い破って体腔内へ出る」
み「どひー」
律「あるいは、血管に侵入して、肝臓を経由して肺に到達する」
み「げぼっ」
律「このころには、1ミリくらいに成長してるわ。
で、数日以内に小虫は、気管支から這いあがり、口に出る」
↑にゃんと、猫にぶち殺された蛇の口から、直前に飲まれたであろう小蛇が出てきたそうです。
み「それで、サイナラですか?」
↑鳥羽を出港する豪華客船『飛鳥Ⅱ』。鳥羽では、赤いハンカチを振るのが習わしだとか。死ぬまでに、1度乗ってみたいです。
律「そんなわけないでしょ。
唾や食べ物と一緒に飲み込まれて、今度は食道を降りる」
↑正常な食道。血管が綺麗ですね。
み「また入るのきゃー」
律「そして胃を通過し、再び小腸に戻って、ようやく成虫になる。
ここまでにかかる期間は、およそ3ヶ月」
み「長い旅ですな」
↑映画『砂の器』より。
律「そうね」
み「で、そこで卵を産んで、死ぬわけ?」
律「そんな簡単には死なないわ。
寿命は、2年から4年もあるの」
み「生き過ぎでしょー。
たかが虫なのに」
律「成長すると、雌は20~35cmになります」
↑アキハバラドッグ【VEGAS PREMIUM HOT DOG 秋葉原店】。長さ30㎝。
み「ウンコより長いではないか。
でも、なんでそんなにグルグル回るわけ?」
↑グルグル回ると言えば、メビウスの帯(横浜市『関内ホール』)。こんなものを税金で作っちゃいけません。
み「最初に殻を破って小腸に降りたとき、ずっとそこにいればいいわけでしょ。
また小腸に帰ってくるんだから」
律「きっと、旅が好きなのよ。
わたしたちみたいに」
み「回虫と一緒にすな!」
律「ほんというと……。
こんな回りくどい感染経路をたどる理由は、はっきりしてないの。
かつて、中間宿主を介して人に寄生してたころの名残りだって説もあるけど」
み「回虫の気持ちは、ようわからん。
『目黒寄生虫館』に行って、インタビューしてくるか」
律「あそこにいるのは、ホルマリン漬けだけよ」
み「あの博物館は、一度、見に行きたいと思ってる」
律「しばらくは、うどんが食べられなくなると思うけど」
↑営業妨害の意図はございません。美味しそうです。
み「げ。
でも、なんで回虫の話になったんだ?」
律「あんたが始めたんでしょうが。
回腸は、回虫がいるところだって」
み「あ、そうだった」
律「回腸は、文字通り、ぐるぐる回ってるからよ」
み「そう言えばさ……。
小腸癌って、聞かないよね。
十二指腸癌も、空腸癌も、回腸癌も、聞かない。
なんで?」
律「そうね。
全消化器官に占める小腸の長さは、75%にもなるのよ」
↑全身骨格模型『筋臓くん』消化管バージョン。ピンクの部分が小腸ですね。
律「それなのに、全消化器官に占める癌の発生割合は、1%に過ぎないの」
み「なぜじゃ?」
律「小腸に癌が少ない理由は、十分にわかっていないのよ」
み「何をやっとるんだ、医学は。
わからんことだらけではないか」
律「まだまだ、人体の不思議を解明するまでには至らないわね」
↑ほぼ『見世物』に近い展示でした。
律「でも、小腸は食物の通過時間が速いから……」
↑『郡山カルチャーパーク』
律「発癌物質との接触時間が短いんじゃないかとは云われてる」
み「てことは……。
食べ物が長く留まると、発癌のリスクも上がるってこと?」
律「そのとおり」
み「便秘の人は、危険ではないか」
律「毎日スッキリ出る人よりは、大腸癌の危険度は高くなるでしょうね」
み「その点、わたしは、心配ないな」
↑おまえが心配。
律「心配ないとは言えないわよ。
快便の人が、まったく大腸癌にならないわけじゃありません」
み「ならないと言ってほしかった」
律「言えません。
あと、小腸の粘膜細胞は新陳代謝が盛んなの。
小腸の内側にある柔毛(じゅうもう)っていう小突起の寿命は、わずか24時間」
み「たった1日?」
律「そう。
だから、たとえ癌化がおこったとしても、癌細胞が体内から排除される確率が高いわけね」
み「ほかの臓器も、新陳代謝が盛んになれば、癌になる確率は下がるはずよね」
律「ま、そうだけど」
み「じゃ、食道と胃を取っちゃって、小腸の先端をノドに繋ぐ。
大腸も取っ払って、小腸の終端を肛門に繋ぐ。
これで、消化器の癌からは開放されるんでないの?」
律「あなた、やってみる?
ミミズさんになれるかもよ」
み「御免被ります。
でも、新陳代謝という言葉には、ちょっとひっかかる。
あ、そうだ。
尋常性乾癬って病気は、皮膚の新陳代謝が早くなりすぎる病気なのよ」
律「だから?」
み「小腸細胞と関係してない?
わたしが、胃酸を抑えるファモチジンで乾癬から回復したことと、関連性があるんじゃないの?」
律「単なる偶然でしょ」
↑身にしみますな。
み「偶然こそ、発明の母なのです」
律「あんた、医学部に入りなおして、研究してみたら」
み「医学部に入るなんぞ……。
百万回生まれ変わってもムリじゃ」
↑1977年出版のロングセラー。現在までに、200万部売れてるそうです。
律「それでは、講義を続けます」
み「続けるのきゃ!」
律「当たり前でしょ。
まだお腹の途中じゃない」
み「ひょっとして、ケツから出るまで?」
律「下品な表現はやめてちょうだい。
それじゃ、続いて大腸ね」
み「癌の宝庫ですな」
律「宝庫ってのもヘンでしょ。
でも、多いということは、確かね。
日本では、女性の癌死亡率の1位。
男性では、肺癌、胃癌に次いで3位だけど……。
もうじき、胃癌を抜くと云われてます」
み「女性の1位か。
やっぱり、すぐに連想するのは深浦加奈子さんだよな」
律「苗字が同じだけに、人ごとじゃないみたいだった」
み「いくつだっけ?」
律「確か、48歳よ」
み「早すぎるよね」
律「もちろんだわ」
み「お父さんが書かれた闘病記を読んだ。
『加奈子。何をしてやれたかな…』って本」
↑わたしは、図書館で借りて読みました。切なかった。
み「ほんと、凄絶だった。
最後は、仰臥すると呼吸が出来なくなるので、ずっとベッドに座りっぱなし。
座ったまま亡くなったのよ」
律「辛いわね」
み「お父さんが、遺骨の一部を海に散骨するときに……。
こらえきれず号泣されるシーンが、印象に残ってる」
律「男親が、娘さんを亡くすのは、ほんとに切ないと思うわ」
み「女性に大腸癌が多いのは……。
やっぱり、便秘が原因?」
↑経験ないのでわかりませんが、辛いんでしょうね。
律「それは、大いにあると思うわ。
それだけ、発がん物質と触れている時間が長いわけですからね。
でも、便秘が一番怖いのは……。
大腸癌の症状を見逃してしまうことにあるの。
つまり、いつのも便秘が、さらに頑固になったくらいに思っちゃうわけ」
み「なるほど。
男性が、急に便秘になったら、何か疑うものね」
律「そうね。
あと、やっぱり女性は、健診をためらってしまうわけよ。
恥ずかしがって」
み「にゃるほど。
でも、お医者さんは、そういうところを見るのが仕事なんだもんね」
律「そういうこと。
とにかく、健診で、便潜血反応検査をきちんと受けることが第一」
み「いわゆる検便ですな」
律「大腸癌検診の1次スクリーニングね」
み「わたしは、1度、それでひっかかってさ」
み「そうそう、十二指腸潰瘍の疑いを受けたときと、一緒のときだった。
それで、あんなに封筒が厚かったのか。
病院の宣伝ビラだけじゃなかったんだな」
律「そりゃそうでしょ」
み「それで、経鼻内視鏡検査で十二指腸を見てもらい……。
大腸内視鏡検査も受けることにしたの。
でも、鼻と尻から、同時に入れたわけじゃないよ」
律「当たり前でしょ」
み「大腸内視鏡は、なんといっても、事前の下剤がタイヘンなんだよ。
なにしろ、2リットルだからさ」
↑一気飲みするわけじゃありません。2時間かけて飲みます。10分毎に、167cc飲めばいいわけ。
律「病院で飲んだの?」
み「うんにゃ、家です。
わたしは、2階のトイレが自分専用だから良かったけど……。
もし、トイレが塞がってたら、完全アウトだよ」
律「佳境のときは、ほぼひっきりなしになっちゃうものね」
み「なにしろ、お尻から透明な水が出なきゃならんわけでしょ」
律「大腸の中を空っぽにするためよ」
↑普段はうんこが詰まってるとは思えないほど綺麗な器官です。やっぱり、陽に当たらないせい?
み「透明な水って……。
植えたての植木鉢じゃねーって言いたかった」
律「なにそれ?」
み「鉢に植物を植えて、最初の水やりでは……。
鉢底から透明な水が出るようになるまで、水をやらなきゃならないの」
律「なんでよ?」
み「用土の中には、微塵(みじん)って云う、細かい粒子が混ざってるの」
↑これは、ミジンコ。3㎝くらいの大きさで、水槽で見れたら、きっと面白いよね。飼いたいです。
み「工場では取り除かれてても、運搬の過程で擦れたりするからね」
↑これが微塵。用土が崩れて、粉状になったものです。
み「この微塵が残ってると、通水性や通気性を悪くするわけ。
チョロチョロ水やりしたんじゃ、これが抜けないんです。
だから最初に、大量の水で微塵を流してしまうの」
↑これは微塵がくれの術。しかし、こういうのを“術”っていうんですかね?
律「水が透明になれば、それが抜けたってことになるわけね」
み「左様です。
おわかり?
植木鉢の気持ち?」
↑植木鉢を組み合わせて作った人形。“ポットマン”と云います(石を投げないでください)。
律「わかるわけないでしょ」
み「でも、家で下剤を飲んでからクリニックに行く場合……。
注意しなきゃならないのは、完全に出きったことを確認しなきゃダメね」
律「途中で催したら、けっこう辛いかもね」
み「トイレが、すぐ見つかればいいけど……。
そうでなかったら、アウトになる可能性があります」
律「そうならないためには、時間に余裕を見て出かけることね。
途中で、トイレに寄ることも考えて」
↑東京・恵比寿駅トイレ
み「だよね。
予約時間ギリギリに合わせて家を出たら……。
催しても、我慢しようとしちゃうかもね」
律「下剤の便意は我慢できないわよ」
み「んだすな。
悲惨な結果、まさしく人生の汚点を残すことになる」
律「あなたは、大丈夫だったわけね」
み「早起きは得意ですから。
暗いうちから起きて、出し切った。
でも、クリニックの入ったビルに着いてから……。
いちおう、最後のトイレをしました」
律「そういうところは、準備万端なのよね。
ほかは、行き当たりばったりなのに」
み「わたしは大学のとき、1度、アパートの前でうんこを漏らしたことがあるんです」
律「あー、それ聞いた。
飲み過ぎだったんでしょ」
み「アパートが見えてたのに、間に合わなかった。
しばらくは、ほんとに自分の身に起こったことなんだろうかって気持ちだった。
信じられなかった。
自分が、うんこ漏らすなんて(214回のコメントを参照)」
律「お酒の飲み始めのころは、その怖さがわからないわけよ」
み「飲み過ぎの下痢は、下剤と双璧ですな。
で、そういうトラウマがあるから……。
シモ関係には、準備万端にならざるを得ない」
律「なるほどね。
で、どうだったの?
検査は」
み「痛いわけじゃないんだけどね。
やっぱり、内視鏡で腸壁を刺激されるせいか……。
便意が起こるわけよ。
それが苦しかった」
律「ま、それは仕方ないわね。
結果はどうだったのよ?」
み「なにごともおまへんでした。
その後は、1度も便潜血で引っかかってない」
↑なかなか、こんなに上手く取れんのよ。
律「それは良かったわ。
でも、油断は禁物。
何か異常を感じたら、すぐに検査を受けること」
み「そうする。
今は、郵送で便潜血検査も出来るものね」
律「そうよ。
それでは、講義を進めます」
み「何の講義だっけ?」
律「大腸です」
み「もういい気がするんですけど」
律「勝手なこと言わないで。
最後まで進めなきゃ、収まりません。
大腸は、おおよそ1.6メートルくらいね」
律「大きく、3つの部位に分けられます。
まずは、盲腸。
小腸の末端の回腸口と繋がってます。
ここには、大腸に進んだ内容物が逆流しないように、回腸弁(回盲弁)という仕切りが付いてます」
律「だから、小腸と大腸は、明確に分けられるわけ」
み「盲腸の長さは?」
律「5㎝くらいね」
み「わたし、まだ盲腸持ってるんだ」
律「あなたが言ってるのは、虫垂のことでしょ」
み「同じでないの?」
律「違います。
盲腸の端っこから、太さ1㎝くらいで、長さ6~7㎝くらいの突起が出てるの。
それが虫垂」
律「虫垂の壁にはリンパ組織が多くあって……。
リンパ球や抗体が作られてるの。
10代から20代にかけては、この活動が活発になりすぎて、炎症反応が引き起こされることがあるわけ。
これが、虫垂炎ね」
み「ほー。
盲腸と虫垂が別だってのは、初めて知った」
律「誤解してる人が多いわね」
み「虫垂炎の人は、虫垂を切り取っちゃうんでしょ?」
律「そうよ」
み「何か、問題はないの?」
律「退化した器官で、特別な働きはしてないと云われてる。
虫垂を取り去って、問題が起こることはないわね。
むしろ、これがあると、虫垂炎になるリスクを抱えてることになる。
だから、十分な医療が受けられない地域に赴く人の中には……」
律「日本で虫垂を取り去ってから行く人もいるわ。
虫垂炎は、今の日本では何でもない病気だけど……。
治療を受けられなかったら、大変なことになるから」
み「江戸時代は、死病だったみたいだよね」
律「そうでしょね。
虫垂が破れて膿が腹腔に流れ出したら……。
急性腹膜炎を引き起こすわ」
み「ものすごく苦しむそうだよね」
律「何でそんなこと知ってるの?」
み「『大江戸神仙伝』っていうSF小説に出てた」
↑1985年にドラマ化されたようです。主演は、滝田栄。見たかった。
み「江戸時代にタイムスリップした科学ジャーナリストは……。
若い芸者と恋人になるわけ。
ところがその恋人が、明らかに虫垂炎と思われる症状を見せる」
み「それでは、ここで問題です」
律「講義をしてるのは、わたしでしょ」
み「いいから!
その科学ジャーナリストは、どうしたでしょう?」
律「そんなの簡単よ。
当時の医学じゃどうしようも無いんだから……。
その芸者さんを現代に連れてきたんでしょ」
み「ブッブー。
ハズレです。
そんな都合のいい話があるか」
律「SF小説なんて、みんな、ご都合主義じゃない」
み「失敬なやつ!
SF神の祟を受けるぞよ」
律「そんな神様、いるわけないでしょ」
み「アラハバキの神です」
↑なつかしや。五能線『木造駅』。
律「さっぱりわからないわ」
み「それでは、答えを言います」
律「聞かなくていいわ」
み「聞けぃ!」
み「江戸で、開腹手術をしたんです」
律「出来っこないでしょ。
麻酔はどうしたのよ。
麻酔もしないでお腹を切ったら……。
あまりの激痛で、悶死しちゃうわよ」
み「どうやって麻酔したかは、忘れた」
律「いい加減な女」
み「とにかく、手術は成功したのです」
律「あ、そう。
作り物の話はいいわよ」
み「この『東北』自体、作り話でんがな」
律「盲腸と繋がるのが、結腸」
み「進めますな」
律「いちいち相手にしてたら、一向に進まないんだもの。
どんどん続けます」
律「結腸は、大腸の中で一番長い器官よ。
まず、盲腸と繋がる右の脇腹の上のあたりから、真上に向かいます。
これが、上行結腸ね。
長さは、約20㎝。
上行結腸が肝臓の下まで上がると……。
今度は胃の下を真横に伸びて、左脇まで達します。
この部分が、横行結腸。
長さは、約50㎝」
律「さらに今度は、体幹の左側を真下に向かいます。
これが、下行結腸。
長さは、約25㎝。
さらにそこから、身体の中心部まで戻り……。
直腸と繋がるわけ。
直腸はまっすぐ下に向かってるから……。
そこに繋がるには、真上からになるわけ。
なので、この部分の結腸は、S字に湾曲してる。
なので、S字結腸と呼ばれます」
↑見事なS字クランク。場所不明。
律「長さは、約45㎝」
み「ベラベラとまくし立てましたな」
律「チャチャを入れられたら、話が続かないから。
それでは、ここで問題です!」
み「にゃんだとー」
律「さっきの仕返しよ。
ちゃんと聞いてれば、わかる問題です。
結腸全体の長さを答えよ」
み「覚えてられるか!」
律「ダメな生徒ね。
20㎝+50㎝+25㎝+45㎝でしょ。
はい、計算」
み「電卓、持ってない」
↑カシオミニのCM。そうとう高価です。
律「こんなの暗算しなさい」
み「指導が厳しすぎるんですけど」
律「小学生の問題じゃない。
しょうがないわね。
全部で、140㎝。
わかった?」
み「へいへい」
律「返事は、ハイ!」
み「なんか、性格変わったみたいなんですけど」
律「わたしって、教師に向いてるかも」
み「ぜったい嫌われるタイプです。
律子ババアとか呼ばれて」
律「何だと!」
み「キーンコーンカーンコーン」
↑懐かしい音階です。
律「何よ、それ?」
み「授業終了の鐘でんがな。
続きは、また来週」
↑何の画像かわからん。
律「講義を続けます」
み「休み時間が無くなっちゃうだろ!
ていうか、まだ朝食前だし」
律「これがほんとの朝飯前」
み「おもろくない」
律「もう少しだから、黙って聞きなさい。
消化器の末端にあるのが、ご存知、直腸ね」
律「長さは、20㎝」
み「終わったー。
って、ちょっと待てよ」
律「なに?」
み「計算が合いまへんがな」
律「何が合わないの?」
み「わたしの記憶力を侮るでない。
高校時代は日本史の女王と呼ばれ、暗記科目には滅法強かったのじゃ」
律「今は見る影もないけどね」
み「黙らっしゃい!
あーたはさっき、大腸の長さは、1.6メートルって言いましたよね」
律「そうよ」
み「で、最初の盲腸が5㎝でしたな。
続く結腸が、けっちょー長く……」
律「それ、洒落のつもり?」
み「つもりでなく、洒落そのものじゃろ?」
律「座布団、没収」
み「とにかく!
結腸は、けっちょー長くて……」
律「それはもういいって。
行稼ぎじゃない」
み「2度までは許されるのです」
律「誰が許すの?」
み「天照大御神」
律「許すわけないでしょ」
み「とにかく!
結腸は、140㎝なんでしょ」
律「そうよ」
み「そして、最後の直腸が20㎝。
ほら、合わない。
全部で、165㎝になるじゃない。
5㎝、オーバー。
掛け金没収です」
律「バカモン」
み「何がよ!」
律「盲腸の長さは、計算に入れないの」
み「何で!」
律「盲腸は、文字通り、袋状に閉じてる器官よ。
小腸と大腸ってのは、一直線に繋がってるわけじゃないの。
言ってみれば、大腸の土手っ腹に、小腸が突き刺さるような形なの」
律「で、突き刺さったところの片方の道が、結腸。
もう一方の道が、盲腸で袋小路」
↑新潟県長岡市。袋小路なのに、なぜ通り抜けを禁ずるのか? 抜けられるからに違いありません。
律「だから、盲腸の長さは、計算に入れないの」
み「何でよ!」
律「知らないわよ。
今、思いついたんだから」
み「医者が、思いつきでしゃべるな!」
律「それでは、続いて……」
み「まだ続くのきゃ!
休み時間が終わってしまうではないか。
キーンコーンカーンコーン」
み「ほら、終わった」
律「川上先生から、連続授業の許可はいただいてます」
み「誰じゃ、川上先生って?」
律「自分で書いてて忘れたの?
『放課後のむこうがわ』に出てくる英語の先生でしょ」
み「フィクションではないか」
コメント一覧
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1. ハーレクイン- 2015/04/20 15:22
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104回が賑々しくUPされました。2日遅れのご紹介になりますが、旧聞に属する、なあんてことは全くございません。いつ紐解きましても、新鮮ピチピチの超絶旅行記。お賑やかに参りましょー。
まずは、「律」せんせの消化器官講義、腸ネタから。しかし、せんせって、産婦人科なんだよなあ。
●小腸は空腸→回腸。“空海”と覚えましょう。ここで問題です。比叡山と高野山、空海はどっち?!(これ、本編でやったっけ?)
●永遠の謎。分数の割り算は「ひっくり返して掛ける」。
●国境線。線の上は……さあ、どっち?!
●空っぽだから空海。それはお大師様に失礼だぞ。そうじゃなくて空調、でもない空腸!
話はここから回虫ネタに迷走します。しかしご飯時に(「み」「律」お二人は現在、朝食の真っ最中です)回虫話というのはなあ、どうかなあ。ま、おとぼけコンビだからな。
●回虫がいるから回腸。回腸にいるから回虫。「が」と「に」。女子、じゃなくて男子、でもなくて助詞の使い方には注意しましょう。
●「イメージです」じゃなくて「模式図」です。うーん、違うな。
●「何の“回”よ?」。えーと、104回です。じゃなくて「回遊の回ね」。
ちなみに「海遊館」は、大阪市港区天保山(てんぽうざん)の水族館です。
「天保山」は標高4.53メートル(45.3でも453でもありません)。天保2年(1831年)に築山された人工の、“日本で2番目に低い山”です。もちろん独立峰。国土地理院の地形図にもきちんと記載があり、山頂には「天保山頂」の標識があります。二等三角点もあります。
ちなみにちなみに、日本で最も低い山は仙台市の日和山、標高3.0メートル。日和山と天保山には“低い山№1”をめぐる悲しい歴史があるのですが、哀悼の念を込めて省略します。
さらにちなみに、天保山には山岳会も山岳救助隊もあります。残念ながらといいますか、幸いといいますか、救助隊の出動経験はゼロとか。
●佐渡へ佐渡へとマグロも泳ぐ♪
●清水寺は、京都市東山区の法相宗の寺院。山号は音羽山。講談社とはかんけーおまへん。
●回虫、1雌1日あたり産卵数は? >み「100個くらい?」 律「桁が違います、25まんこ、おっと万個」
参考文献『センセイのリュック』第四場第二景「夜の屋上」。
朝子「でだ。星座というのは……。
おい、双子。星座は全部で幾つある」
茜「へ? そうですね、1,000個くらいですかあ」
緑「あーちゃん、星の数って多いよ。
1万個くらいじゃない? 星座」
朝子「あほ、全天で88座だ」
(こんなとこでやるなよ、番宣)
●>もちろん、妊婦さんです。結構あるんだよね、妊婦ものAV。
●寄生虫の鉄則「宿主は生きぬように死なぬように……」
●水洗トイレの水流など問題にならぬ鳴門の渦潮。それさえ問題にならぬ、ノルウェーはメエルシュトロームの大渦巻。
●人の体外に出て、畑にまで出張する回遊の回虫、じゃなくて回虫の回遊。
●顔を出しても恥ずかしくない、江戸の厠。
●そんなヤツおれへんやろ~(大木こだま)、人糞舐め。普通です。カストロ、じゃなくてスカトロって知っとるケ?
●“舐めりゃすむやないか”指サック不要論者。舐めとんのか(コクヨ社長)。
●経口感染は回虫。経口避妊薬は「ピル」。「中ピ連」は「中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合」。代表は元薬事評論家の榎美沙子。
●回虫の小虫をニョロニョロと云います。ねえムーミン♪。
●老後に住みよい和歌山。でも僻地だよ。
●腸壁を食い破られたのは松田優作「お腹痛い」。
●「ゲボッ」と吐血。えーと、誰だっけ。なんでも覚えとかんとあかんなあ(調べろよ)。諸葛孔明ではありません。劉備玄徳でも、関羽でも、張飛でもありません。
●蛇を呑む蛇。『蛇を踏む』は川上弘美、芥川賞受賞。くそみそに言う選者もいました。
●サイナラサイナラは淀川長治。そうじゃなくて「飛鳥Ⅱ」の出港。
●長い旅でした『砂の器』。じゃなくて回虫くんの「海遊館」。“館”はいらんぞ、“海”じゃなくて「回」だし。
●簡単には死なない回虫くん。「殺しても死なんでー」。そんなヤツ、おれへんやろ~。
●回虫くんもメビウスも真っ青、横浜・関内ホールのオブジェ。オブジェだけど製作意図は見えみえ。
●旅が好きな「み」「律」コンビに回虫くん。おー、めでたくトリオ復活か! しかしなん組目のトリオかね。
トリオときますと、なんといいましても「てんぷくトリオ」。伊東四朗氏のみご存命。
●明白な営業妨害、美味しそうな「す(素)うどん」(関西語;かけうどん)。素材をしっかり味わいましょう。わたしは子供の頃“酢うどん”と思ってました。
はい、話はここでようやく腸ネタに戻ります。
●>律「回腸は、文字通り、ぐるぐる回ってるからよ」。事の真実というのは、面白くないものですなあ、センセ。
●癌が少ない小腸。一説には「食べ物がさっさと動くので発癌物質との接触時間が短い」から。「事実は小説より奇なり」ですなあ、センセ。
ここで問題です。真実と事実の違いを述べよ。やめてくれよ、マジな質問は。
●便秘の人は発がん率が高い。ホンマかあ、ちゃんと統計とったのかあ。いずれにしても、大腸がん検診は受けましょう。年に1回が基準です。
●「心配ないさー」は『ライオンキング』。これをパクッたのが大西ライオン。
●古いものが新しいものに入れ替わることが新陳代謝。おちゃらけ野郎は“ちんちんたいしゃ”とわめきます。
●偉い人はええこと言いますな、パスツールはん(関西語;さん)。
●『100万回生きたねこ』は佐野洋子サン。元のタイトルは“100万回死んだねこ”だったそうで、こっちの方がずっといいと思うがなあ。編集者曰く「子供への配慮」だそうですが、余計な配慮だよ。生きとし生けるものすべて死ぬ。
「花に鳴く鶯、水にすむ蛙の声を聞けば、生きとし生けるもの、いづれか歌を詠まざりける」(古今和歌集『仮名序』)
>律「それでは、講義を続けます」とのセンセの宣言と共に、話、いや講義は大腸に移ります。
●癌の宝庫、大腸。宝物って、英語で「トレジャー」って言うんだよ。こないだテレビでやってた。そういえば菊地秀行に『トレジャー・ハンター』シリーズってのがあったなあ。映画『トゥームレイダー』や『ハムナプトラ』もそうだし。忘れちゃいけない『インディ・ジョーンズ』シリーズは本家本元じゃんか。
●「律」センセの苗字は、深浦加奈子サンとおなじ「深浦」です。五能線内で決まりました。もちろん五能線「深浦駅」、西津軽郡「深浦町」にちなんだんですね。覚えてましたあ?
●>経験ないのでわかりませんが、辛いんでしょうね。
何がって、便秘でんがな。わたしも近ごろ悩まされとります。うんこが出たがってるのははっきりわかるんだけどね、出ないんだよ。曰く言い難く、切ないものがあります。
●恥ずかしいお尻。尻はええのう。
●大腸がん検診で飲む下剤。10分毎に167cc、で2時間飲むということは……さあ、全部で何cc飲むのでしょう。2時間(120分)÷10分=12(正確には13。「植木算」だからね)、167cc×13=2,171cc≒2リットル+カップ1。えー、そんなに飲むのか。普通のペットボトル4本分と、おまけに小さい牛乳パック1個じゃん。味は? 美味いのかね。
●色白の大腸。そりゃあお肌には気をつけてるわよお、陽には当たらないしぃ。
●初めての水やり、しつこく掛けます。もお、いいかげんにしてよ! 何言ってんの、あなたのためでしょ!!
●繰り返します。ミジンコの体長は3「mm」です。
●微塵がくれの術はサスケの得意技。カムイもやります。
●ポットマンの気持ちは……よくわかりませぇん。石を投げないでください。エサをやらないでください。
●戸外うんこもらし女。そんなヤツおれへんやろ~。いいえ、います。大学生だから、社会常識が無かったんですね。
●何年か前にわたしもやったんだよなあ、検便。なんでやることになったのか、さっぱり不明。医者の検診なんて、一切受けたことなかったもんね。
>律「それでは、講義を進めます」で、晋(これが番宣と気付くお方は……まずおられまい)、じゃなくて進む講義は変わらず大腸ネタ。
●大腸の長さは1.6メートル。短いんだね。“身長くらい”でいいのかなあ。
●大腸は盲腸から始まります。ふうーん。“盲腸には食べ物は入って来ない”と教わったけどなあ。意外や意外。誰や、教えたのは?!
●小腸と大腸を仕切る回盲弁。関所、と思えばいいんだな。♪箱根八里は馬でも越すが 越すに越されぬ大井川、は馬子唄。♪やだねったらやだね、は氷川きよし。
●盲腸と虫垂は違います。これ知らない人、多いよ。
●ヤバいとこへ行く人は、虫垂を取ってから渡航しましょう。でも、難民とかになったらそうもいかんし、いいなあ、日本は平和で。
●昔は死病、虫垂炎。そもそも原因がわからんだろうし、まして治療法なんてなあ。やはり祈祷・お祓いの類しかなかったんだろうね。
●それでもやります虫垂炎手術。執刀医は、何と滝田栄。得意は料理。ははあ、それでメスさばきが堂に入ってるのか。若い頃は加藤剛に似てると言われたそうですが、画像は欽ちゃんに似てると思わん?
●急性虫垂炎のポイントその1、激しい「上」腹部痛。これで勘違いするんだよね。盲腸は「下」腹部、ってのはたいがいの人が知ってるもんなあ
●>律「SF小説なんて、みんな、ご都合主義じゃない」。気持ちは分かるがセンセ、崇りはともかく、SFファンから総スカン喰らいますぞ。
●木造駅のアラハバキ神像。じゃなくて遮光器土偶、愛称は「しゃこちゃん」。左足が無いのは予算が無かったから。じゃなくて、崇りじゃ~。でもなくて、呪いじゃ~。
●悶死しかけてるのは、映画『エクソシスト』の首回し少女、リーガン・マクニール。演ずるはセクシー女優、リンダ・ブレア(もちろん出演当時は14歳の少女で、セクシーもへったくれもありません)。彼女はこの作品でゴールデングローブ賞助演女優賞を獲得、アカデミー助演女優賞にノミネートされました。映画『エクソシスト』は、1973年度のアカデミー脚色賞、音響賞を獲得しました。傑作です
>律「盲腸と繋がるのが結腸」、で講義は淡々と進みます。
●大腸は大部分が結腸。結腸は上行、横行、下行、S字に区分されます。このあたり、実に覚えやすいなあ。
●チャチャを入れる、は「茶々を入れる」。
この茶々は、お市御寮人の娘にして織田信長の姪。秀吉が拝み倒して側室に迎え入れたお茶々さん、後の淀君の事、という説があります。母の市と父の浅井長政は絶世の美女・美男だったそうで、その血を受け継いだお茶々さんの美貌たるや……秀吉が三顧の礼、どころか三拝九拝して側室に迎えたのも無理からぬところでしょう。ところがこのお茶々さん、気位は高いわ気は強いわ、豊臣政権の中枢にでんと座り込んで、政に出すわ出すわ。何をって、口でんがな、くち。これが豊臣の滅亡につながったのは皆さまよくご存知の通りです。
ここから「横から口を出す」ことを「茶々を入れる」と云うようになったとか。でもちょっとおかしいよね。それなら茶々「を」じゃなくて、茶々「が」とすべきだと思うがどうだろう(どうでもいいけど長すぎるわ、コメ)。
●「アナタ、コタエナサーイ」画像は、どう見ても宇宙人ジョーンズなんだけどなあ。でも、黒板は国語の授業みたいだし……。
●>み「覚えてられるか!」
朝子「アンドロメダ銀河までの距離は何光年だった、双子」
茜「ええー」
緑「忘れましたあ」
朝子「254万光年だ」(『センセイのリュック』第4場第9景)
ちゃんと覚えないと“双子”の謗りを受けますぞ「み」さん。
●♪答え一発カシオミニ。このコマソンを知っているお方は、けっこうなお歳だと思います。
●「はいはい」は重ね返事と云います。やらないようにしましょう。「一返事 二尻上げ」は、動く前に返事をしなさいということです。きちんと守りましょう。
●ではまた来週画像。向かって左の子、誰かに似てねえ? あの、デカパイの、モデルとかやってた。
読み返していて思い出した。ほしのあき、や!
>律「講義を続けます」、でついに、消化器官の末端、直腸ネタです。
●「結腸はケッチョー長い」。「あやめが許してもわたしは許さん」って、そんなのまで番宣するなよ。
●長岡市「通りぬけを禁ずる」。♪禁じられても逢いたいの、は森山良子。
はい、ということでございまして、今回は最後に、英語教師にしてエロ女優、川上ゆうサンの御尊顔を拝して授業終了です。あ、まだ終わらんのか、「律」講義。それでは、
次回に続きます。
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2. Mikiko- 2015/04/20 19:13
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ありがとうございます。
しかし、こうして紹介していただくと……。
どこが、『東北に行こう!』なんだろうと思いますよね。
大いに反省。
先日、六角精児さんが『のと鉄道』に乗った紀行番組を見ました。
朝から、気動車の中で飲んでましたね。
氏はバンドもやっていて、その曲がBGMに流れてました。
フォークっぽい早口な歌い方で、“尿酸値が高い~”とかの歌詞でした。
ツマミに、プリン体の豊富そうな珍味ばっかり食べてました。
でも、まっとうな紀行番組ではありましたね。
大いに反省。
ちなみに、BSです。
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3. ハーレクイン- 2015/04/21 00:13
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わたしが学生の頃、1970年代の能登半島の鉄道は、半島の付け根から伸びるJR七尾線が輪島まで、途中の穴水から分岐するJR能登線が半島の先っぽ蛸島まで列車を走らせていました。半島中を駆け巡る、という感じだったのですが、2000年代に入って廃線が続き、三セクに移行し、現在は見る影もありません。このあたりの状況は北海道とよく似ています。
わたしは、1973年(昭和48年)発行の、昭文社『全国鉄道地図』というのを持っていますが、現在の路線図と比べると、月とスッポン、提灯に釣鐘、天地雲泥の差ですね。特に地方の惨状は目を覆いたくなるほどです。北海道なんて、路線距離はかつての何分の一になったのか、今度計算してみるかな。いや、気が滅入るからやめよう。
「能登」と聞きますと思い入れがありますので、つい愚痴ってしまいました。決して六角さんの紀行番組にケチをつけているわけではありません。思いは「いいなあ」、これです。
六角精児氏。「飲み鉄」なんですねえ、趣味が合うなあ。
そういえば『相棒』で、氏が「鉄オタ」だというのが明かされる話がありました。で、氏の持っている「車窓ビデオ」に映る風景から、事件解決の糸口をつかむ、という……。つかむのはもちろん、右京さんでしたが。
さらにそういえば、六角氏にも右京さんにも、ぜんっぜん関係ない話。
京都市に「右京区」と「左京区」があります(他の区もありますが、東山区とか)。
この左右は、御所(京の中心)に立って南を向いた時(いわゆる「天子南面」)、左側に位置するのが左京区、右が右京区ということです。
>ちなみに、BSです
余計なことは言わいでよろしい。
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4. Mikiko- 2015/04/21 07:30
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なるほど。
地図で見ると、右京区が左側、左京区が右側になるわけですね。
右大臣左大臣の位置も、同じだそうです。
池袋で、東武デパートが西口に、西武デパートが東口にあるのと似てます。
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5. ハーレクイン- 2015/04/21 10:06
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池袋の東武と西武って、そういうことなん?
こちらは“たまたま”だよね。
右大臣より左大臣が各上だったそうです。
「左」えらい! ってことですね。
でも、どこまでいっても「何で左なん?」という疑問は残ります。
インドでは逆に、右手が「浄」、左手は「不浄」とされますね。だから手づかみの食事は右手で、トイレでの尻ふきは左手だそうです。