Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
東北に行こう!(99)
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ド「話を逸らさないでください。
 顔や姿をあげつらうのは、とても失礼なことですよ。
 間違っても、僕をデブだなんて言わないでください」
み「自分で言ってるではないか」
ド「そもそも、人のこと言える容姿なんですか」
み「失敬千万!」
ド「ほら、容姿を悪し様に言われれば、腹が立つでしょ」
み「じゃ、顔がデカいのは許すとして……。
 あのフォームは、いくらなんでも変だろ」
ド「どこがです?」
み「腕ですよ。
 あんなに腕が伸びきってたら、強いボールなんて投げられません」
これだけ後ろに人が写らない画像ばかりあるということは、いかに人通りが少ないかということです
↑これだけ後ろに人が写らない画像ばかりあるということは、いかに人通りが少ないかということです。

ド「ソフトボールのピッチャーは、伸ばした腕から強烈なボールを投げますよ」
日本のエース、上野由岐子投手
↑日本のエース、上野由岐子投手。

 ↓上野投手の投球練習。


み「ソフトボールは、距離が近いからでしょ。
 野球の距離は、どれくらい?
 ピッチャープレートとホームベースの間」
ド「18.44メートルです」
18.44メートルです

み「ソフトボールは?」
ド「確か、女子は、13.11メートルですね」
み「男女で違うの?」
ド「男子は、14.02メートルです」
男子は、14.02メートルです

み「1メートル近くも違うんだ。
 野球では、男女の違いは無いの?」
ド「男女の区別は無いですね。
 ボーイズリーグや、軟式野球では短くなります」
ボーイズリーグや、軟式野球では短くなります

み「なるほど。
 それじゃ、女子のソフトボールと野球じゃ、5メートル33センチも違うじゃない。
 水原勇気が、あのフォームで、ホームまで強いボールを投げれるはずは無いのじゃ」
ほんと、人がいません
↑ほんと、人がいません。

ド「水原勇気は、そもそも球威で勝負するタイプじゃ無かったはずです」
実写版。演じたのは木之内みどり。現在、竹中直人の奥さんです。
↑実写版。演じたのは木之内みどり。現在、竹中直人の奥さんです。

み「タイプじゃ無いって言っても、そこそこは投げれなきゃダメでしょ」
ド「左のアンダースローですからね」
左のアンダースローですからね

ド「左バッターへのワンポイントリリーフならともかく……。
 右バッターに、球威勝負は出来ませんよ」
み「左のアンダースローって、あんまりいないの?」
ド「昔、西武に永射保というピッチャーがいました」
昔、西武に永射保というピッチャーがいました

ド「彼くらいじゃないかな。
 左バッターへのワンポイントでしたけどね」
み「右バッターには、通用しないってわけ?」
ド「見やすいですからね。
 左バッターなら、背中の方からボールが出てきますから」
み「そう言えば、高校野球でも見ないよね」
ド「プロ以上に、無理でしょう」
み「なんで?」
ド「高校野球で、ワンポイントリリーフなんて戦法は取れないでしょ。
 右バッターでも左バッターでも、続けて投げなきゃならない。
 左のアンダースローじゃ、ぜったいに地方予選を勝ち抜けませんよ」
左のアンダースローじゃ、ぜったいに地方予選を勝ち抜けませんよ

み「じゃ、何で右のアンダースローなら、いるわけ?」
ド「それは、左バッターより、右バッターの数が多いからです。
 でも今は、アンダースロー自体が、少なくなってます。
 ロッテの渡辺俊介が、アメリカの独立リーグに行ってしまいましたから……」
スゴいフォームです
↑スゴいフォームです。

ド「現在のプロ野球では、西武の牧田和久だけです」
現在のプロ野球では、西武の牧田和久だけです

み「そんなら、歴史上、最強のアンダースローって誰?」
ド「阪急の山田久志が、284勝を上げてます」
阪急の山田久志が、284勝を上げてます

ド「勝ち星でトップです」
み「何でそんなに勝てたわけ?」
ド「球自体、速かったそうですよ。
 150キロ近く出てたとか」

↑これはもう、晩年でしょうか。あまり速くは見えません。

み「スゴいじゃない
 アンダーで、最速?」
ド「杉浦忠というピッチャーも、スゴかったらしいですよ」
杉浦忠というピッチャーも、スゴかったらしいですよ

ド「下手投げという感じじゃなかったみたいです。
 手首が上を向いて立ってたそうですから」
ここからどうやって、リリースまで持っていったんでしょう?
↑ここからどうやって、リリースまで持っていったんでしょう?

み「どういうこと?」
ド「彼は、もともと、オーバースローのピッチャーだったんです。
 立教大学1年生のとき、肩を壊し、アンダースローに転向してます。
 大学時代、通算で36勝してますが、このうちの28勝を、アンダースローに転向してから上げてます」
み「立教ってのは、珍しいよね」
ド「立教の投手では、勝利数でトップですね」
立教の投手では、勝利数でトップですね

み「いつぐらいの人なの?
 立教って言えば、長嶋だけど」
ド「同級生ですよ。
 同じく、昭和33年にプロ入りしてます」
左から、長嶋、杉浦、本屋敷。立教三羽烏と云われたそうです。
↑左から、長嶋、杉浦、本屋敷。立教三羽烏と云われたそうです。

み「どこに入ったの?」
ド「南海ホークスです」
南海ホークスです

み「長嶋は、巨人だよね」
デビュー戦で長嶋は、国鉄の金田に4打席連続三振を喫します
↑デビュー戦で長嶋は、国鉄の金田に4打席連続三振を喫します。でも、決して当てに来なかった長嶋に、金田は空恐ろしいものを感じたとか。

み「指名順では、どっちが先だったの?」
ド「指名って、当時はドラフトなんかありませんよ。
 行きたい球団と契約出来ました」
み「それじゃ、何で南海なんかに入ったんだ?
 長嶋と一緒に、巨人にも行けたんでしょ?」
ド「学生時代、南海が、栄養費と称して、お金を渡してたらしいです。
 立教の2学年先輩に、大沢啓二がいるんです」
み「元日本ハム監督の?」
ド「そうそう。
 親分ですね」
親分ですね

ド「卒業して南海に入団した大沢が、2人にお金を渡してたそうです」
み「そういうのって、違反じゃないの?」
ド「当時は大丈夫だったみたいですよ。
 道義的問題はともかく」
み「さっき、2人って言ったよね。
 それじゃ、長嶋ももらってたわけ?」
ド「ですね」
立教大学合宿所にて。左から、長嶋、杉浦、本屋敷。
↑立教大学合宿所にて。左から、長嶋、杉浦、本屋敷。

み「もらってながら、入団は巨人?」
ド「ま、あの人らしいとも言えるんじゃないですか。
 もっとも、プロ入りした後、もらったお金と同額を返したらしいですが」
み「同額って、お金の価値は、大学時代とプロに入ってからじゃ、大違いじゃないの」
左が杉浦
↑左が杉浦。

ド「ま、確かに。
 それに、学生時代の栄養費は、プロに入るための身体を作ったわけですからね」
浦和学院の寮の食事だそうです。問題ありじゃないの?
↑浦和学院の寮の食事だそうです。問題ありじゃないの?

み「どーも、巨人に入る選手は、お金にまつわるダーティな雰囲気があるよね。
 桑田とか」
ド「彼は、自分で稼いだお金を、自分ですっちゃっただけですから、別に悪くないでしょ」
彼は、自分で稼いだお金を、自分ですっちゃっただけですから、別に悪くないでしょ

み「イメージ的に。
 あと、江川なんかもいたじゃない」
“空白の一日”をついて、巨人と電撃契約
↑“空白の一日”をついて、巨人と電撃契約。

ド「彼は、お金が問題だったわけじゃないでしょ」
み「でも、ダーティーじゃないの」
ド「結局、巨人の選手が嫌いなんじゃないですか?」
み「江川の身代わりで阪神に行った小林投手は、早死にしちゃったよね」
江川の身代わりで阪神に行った小林投手は、早死にしちゃったよね

ド「心筋梗塞だったようですね。
 享年、57」
享年、57

み「しんみり……。
 話を戻そう。
 杉浦の入団後は、どうだったわけ?」
杉浦の入団後は、どうだったわけ?

ド「入団した年は、27勝してます」
み「どひゃー。
 今じゃありえねー数字」
ド「2年目は、さらにスゴかった。
 なんと、38勝4敗でした」
なんと、38勝4敗でした

み「ますます、ありえねー」
ド「投球回数、371回。
 奪三振、336」
み「ほぼ、1イニングに1個、取ってるわけか」
ド「アンダースローの投手としては、非常に多い数字です。
 しかも、フォアボールを、35個しか出してない」
み「にゃにー。
 投球回数が、371回なんでしょ。
 35÷371×9=0.85!
 1試合で、1個出すか出さないかじゃない」
ド「ま、驚異的なコントロールですね」
み「そのほかの数字は?」
ド「19完投、9完封。
 防御率、1.40。
 54イニング2/3連続無失点」
み「54イニングって、6試合じゃん。
 先発投手だったんでしょ?」
ド「そうです」
み「じゃ、ほとんど、6試合連続完封ってことじゃない」
 今だったら、漫画でしかありえない」
この時点では、オーバースローのように見えます
↑この時点では、オーバースローのように見えます。

ド「でも、漫画よりすごかったのが、その年の日本シリーズです」
み「ま、それだけ勝てば、リーグ優勝するわな」
ド「ペナントレースの成績は、88勝42敗4分」
み「2勝1敗のペースだね」
ド「2位の毎日大映に、6ゲーム差をつけての優勝です」
2位の毎日大映に、6ゲーム差をつけての優勝です

み「案外、差がつかなかったじゃないの?」
ド「そうですね。
 2位、毎日大映の成績は、82勝48敗6分。
 ぶっちぎりで優勝してもおかしくない数字でした」
み「セ・リーグは?」
ド「巨人です。
 こちらもシーズンの成績は、77勝48敗5分」
巨人もシーズンの成績は、77勝48敗5分

ド「同率2位の大阪(後の阪神)と中日に、13ゲーム差をつけての圧勝でした」
6月25日、天覧試合で、長嶋が阪神村山からサヨナラホームランを打った年です
↑6月25日、展覧試合で、長嶋が阪神村山からサヨナラホームランを打った年です。

み「長嶋も1年目から活躍したんだよね」
ド「昭和33年の新人王は、パ・リーグが杉浦、セ・リーグが長嶋でした」
み「そして、その2年目!
 日本シリーズでの、因縁の対決」
み「監督は誰の時代?」
ド「巨人は、水原茂」
巨人は、水原茂
↑高松中央公園に立つ銅像。

ド「南海は、鶴岡一人です」
南海は、鶴岡一人です
↑監督として23年間指揮を取り、通算1,773勝。監督としての最多勝記録です。

み「そして、その結果は!」
ド「南海の圧勝でした。
 4タテです」
この年、日本シリーズを制したときのペナント
↑この年、日本シリーズを制したときのペナント。

み「うーむ。
 そりゃ、気分いいな。
 杉浦が活躍したんだね?」
ド「第1戦、10対7、南海の勝ち。
 勝利投手、杉浦。
 第2戦、6対3、南海の勝ち。
 勝利投手、杉浦。
 第3戦、3対2、南海の勝ち。
 勝利投手、杉浦。
 第4戦、3対0、南海の勝ち。
 勝利投手……。
 杉浦」
み「ちょっと、待たんかい。
 杉浦は、先発投手だったんでしょ?」
ド「そうです」
み「4試合連続先発したってこと?」
ド「第2戦だけ、リリーフですね。
 あとは、ぜんぶ先発」
み「点数を見ると、尻上がりに調子を上げてった感じだね」
ド「10月24日、第1戦、大阪球場。
 杉浦は、8回まで投げて3失点。
 9回は7点差でしたから、杉浦を温存するために、リリーフを送ったんです。
 でも、巨人に4点返され、ヒヤヒヤの逃げ切りでした。
 これで鶴岡監督は、杉浦以外じゃ通用しないと思ったんじゃないですか?」
み「さすがに、次の試合は先発させなかったわけね」
ド「10月25日、第2戦、大阪球場。
 巨人が初回に長嶋の2ランで先制したんですが……。
 その後は、スクイズの失敗なんかで、追加点を取れませんでした。
 そうこうするうち、南海が4回に集中打で逆転したんです。
 で、温存してた杉浦を、5回から投入。
 巨人の反撃を1点に押さえて投げ切りました」
み「第3戦からは、巨人の本拠地に行くわけだね?」
ド「そうです。
 10月27日、第3戦、後楽園球場」
み「果たして、その結果は!」
ド「結果は、もうわかってるじゃないですか」
み「盛り上げてるの!」
ド「ありがとうございます。
 杉浦が先発しました」
み「ありえねー」
ド「巨人が初回、長嶋の適時打で1点先制します。
 しかし南海は、2回表、ヒットで出塁した杉浦を1塁に置き……。
 キャッチャー野村が、逆転の2ランホームランを打ちました」
み「野村って、あのノムさん?」
ド「そうです」
この年、三冠王を取ったそうです。なお、抱いてる子供はご子息ですが、“カツノリ”では無いそうです。
↑これは、昭和40年の写真。この年、三冠王を取ったそうです。なお、抱いてる子供はご子息ですが、“カツノリ”では無いそうです。

ド「野村は、シリーズ4試合、全イニングでマスクを被ってます」
み「攻撃の時も?」
ド「攻撃の時は被ってません」
み「続けてちょ」
ド「杉浦の力投で、そのまま南海が逃げ切るかと思われたんですが……。
 9回裏の巨人。
 坂崎に起死回生の同点ホームランが出ます」
坂崎に起死回生の同点ホームランが出ます
↑坂崎一彦(1938年1月5日~2014年1月28日)。

み「2対2ね」
ド「しかし、10回表に、再び南海が勝ち越します。
 その裏を、杉浦が抑え切り、南海の勝利」
み「完投しちゃったわけ?」
ド「142球、10回完投です」
み「暴挙だぜ。
 そして、ついに最終戦」
ド「第4戦は、雨で1日順延されました。
 この順延が無ければ、先発は杉浦じゃなかったかも知れません」
み「1日順延って……。
 142球投げて、その翌々日だぞ」
ド「10月29日、第4戦、後楽園球場」
み「杉浦、先発のわけね?」
ド「そうです」
み「第4戦、巨人は0点だよね。
 まさか……」
ド「杉浦は巨人打線を寄せ付けず、散発の5安打に抑えきり……。
 完封してます」


み「やっぱり。
 まさに鬼神と化して、巨人の前に立ちはだかったって感じだね」
ド「4連戦、4連投、4連勝。
 シーズンMVPも取ってましたが……。
 もちろん、シリーズでもMVPでした。
 南海が初めて日本シリーズで巨人と対戦してから8年……。
 5回目の挑戦で勝ち取った日本一に、大阪市民は熱狂します」
み「でしょうな」
ド「シリーズ終了翌々日の10月31日。
 秋晴れの下、優勝パレードが大阪で行われました。
 沿道には市民20万人が集まり、『御堂筋パレード』と呼ばれたそうです」
御堂筋パレード

み「人間の一生で、こんなことがあるのかっていう1週間だったね」
人間の一生で、こんなことがあるのかっていう1週間だったね

ド「ですよね。
 漫画でも、こんなストーリーは書けません」
み「杉浦は結局、生涯で何勝してるの?」
ド「187勝です」
み「200勝、出来なかったわけか」
ド「入団後、3年間の成績は、27勝、38勝、31勝。
 3年間で、96勝してるんです。
 4年目の5月に100勝を上げてますが……。
 シーズン30勝以上は、2年目、3年目だけでした」
み「4年目は何勝?」
ド「20勝です」
み「今なら、大エースの成績だよ」
ド「実働は、13年。
 前半の7年で、164勝してるんですが……。
 後半の6年は、23勝でした」
杉浦忠の成績

み「やっぱり、酷使だよな」
ド「4年目も、20勝はしましたが……。
 速球は影を潜めてしまったそうです。
 カーブでカウントを稼ぎ、シュートで詰まらせるというピッチング。
 実はシーズン前から、右腕に違和感が生じていたんです。
 20勝を上げた試合で……。
 鶴岡監督に『腕に感覚がない』と言い、初めて自らマウンドを降り、リリーフを仰いだそうです。
 病院で診断を受けたところ……。
 結果は、動脈閉塞。
 毛細血管も切れてたそうで、右腕は真っ白。
 即、手術となりました。
 手術は成功しましたが、もう球速は戻らなかったそうです」
み「なんか……。
 言葉が無いね。
 投げさせすぎだよ、鶴岡!
 『一将功成りて万骨枯る』ってこのことだろ」
ド「ま、相当に無理のあるフォームでもありましたから。
 『手首を立てたアンダースロー』と云われてたんです」
み「どういうこと?」
ド「ぼくも、見たわけじゃないですけどね。
 アンダースローなのに、手首が上を向いて立ってたそうです」
アンダースローなのに、手首が上を向いて立ってたそうです
↑やっぱり、この瞬間のことを云うのでしょうか?

み「そんなフォームで投げれるの?」
ド「とにかく、手首のスナップが強烈だったそうです。
 リリースで手首を返す瞬間の『パッコーン』という音が、ベンチまで聞こえたとか」
リリースで手首を返す瞬間の『パッコーン』という音が、ベンチまで聞こえたとか

み「うーむ。
 まったく想像できない」
ド「上体を真横に倒したまま、オーバースローで投げる感じじゃないですか」
上体を真横に倒したまま、オーバースローで投げる感じじゃないですか

み「そんな投げ方、普通、出来んだろ」
ド「ま、出来ませんね。
 あんなフォームは、誰にも真似できないと思います」
み「ふむ。
 世に、孤高という言葉があるが……。
 まさにそれだな。
 自分の技術を、誰にも伝えられないわけだ」
ド「ですね」
み「引退後は、ピッチングコーチなんか、したの?」
ド「3年くらい、したようです」
み「南海で?」
ド「いえ。
 近鉄バファローズですね」
み「何でまた?」
ド「当時の近鉄監督だった西本幸雄は、立教出身なんです」
当時の近鉄監督だった西本幸雄は、立教出身なんです

み「なるほど。
 でも、自分と同じタイプのピッチャーなんて、いないだろ?」
ド「鈴木啓示なんかを指導したようです」
み「その人、アンダースロー?」
ド「知りませんか?
 最後の300勝投手です」
最後の300勝投手です
↑9位、梶本隆夫投手の254勝255敗というのもスゴいですね。

ド「左のオーバースロー」
鈴木啓示

み「真逆じゃん」
ド「なまじ似てない方が、指導しやすかったんじゃないですか」
み「指導者としては、それだけ?」
ド「南海の監督をしてます。
 ちょうど、南海がダイエーに身売りをするころです。
 最初の3年が南海。
 最後の1年がダイエー」
最後の1年がダイエー
↑次の監督は、田淵幸一。その次が、梶本隆夫でした。そしてその次が、王貞治。

み「てことは、ダイエーの初代監督じゃない?」
ド「そうなりますね。
 南海としての最後のホームゲームでは、試合後のセレモニーで……。
 ファンに、『九州に行ってまいります』との言葉を残したそうです」
み「ふむ。
 監督としては、どうだったの?」
ド「ま、監督の場合、選手に恵まれるかどうかという巡り合わせもありますからね」
み「芳しくなかったわけね」
ド「4年間、すべてBクラスでした。
 4位が2回。
 あとは、5位と6位です。
 一度も勝率5割を上回ることは出来ませんでした」
杉浦忠の監督成績

み「にゃるほど。
 現役時代とは、大違いというわけか。
 現役の前半では、山のようにタイトルを取ったんだろうね」
ド「それが、そうでもないんです。
 最多勝は、1回ですし。
 2年目の38勝のとき」
み「ちょっと待て。
 確か、1年目が27勝で、3年目も31勝だよね」
ド「あと、20勝以上を、もう2回達成してます」
み「それでも、最多勝じゃなかったわけ?」
ド「27勝のときは、西鉄の稲尾が33勝でした。
 31勝のときも、大毎の小野が33勝」
み「はぁ」
ド「最優秀防御率も、2年目の1回だけです。
 1.40」
杉浦忠の投手成績

み「先発投手で、1.40なんて、今じゃ考えられませんぜ」
ド「ですね。
 杉浦でも、1点台は、この年だけです。
 後は、1年目と3年目が、共に2.05ですね」
み「2.05でも取れない?」
ド「1年目は、西鉄の稲尾が1.42。
 3年目は、大毎の小野が1.98」
み「はぁ」
ド「最多奪三振が2回。
 2年目と3年目。
 それぞれ、336と317です。
 タイトルは、これだけですね」
み「はぁ」
ド「タイトル以外の表彰も、案外少ないです。
 もちろん、新人王は取ってますが……。
 2年目に、MVPと最優秀投手とベストナイン、日本シリーズのMVPと最優秀投手。
 これらをみんな取りましたが、すべて、この年、1年だけの受賞でした」
み「翌年の31勝でも取れない……」
ド「もちろん、野球殿堂入りはしてます。
 1995年」
『野球殿堂博物館』杉浦忠のレリーフ
↑東京ドームにある『野球殿堂博物館』に飾られたレリーフ。

み「ふむ。
 記録より記憶に残る選手ってことだね」
ド「2年目の輝きが、強烈すぎましたよね。
 まさに、一瞬の光芒というやつでしょう」
み「うーぬ。
 でも、テレビで見ないよね。
 長嶋と同い年なんでしょ。
 長嶋って、何年生まれ?」
ド「1935(昭和10)年です」
み「2015年で、ちょうど80歳か。
 さすがにもう、監督は無理だろうけど……。
 でも、野村の方が上でしょ?
 2年目のシリーズで、全試合マスクを被ったってことは……。
 杉浦が入ってきたときは、すでにレギュラーキャッチャーってことだよね」
ド「同い年ですよ。
 野村克也は高卒で入ってますから……。
 入団は4年早いことになります」
野村は、京丹後市にある京都府立峰山高校から、南海にテスト生として入団しました
↑野村は、京丹後市にある京都府立峰山高校から、南海にテスト生として入団しました。契約金は、ゼロだったそうです。

み「同い年か……。
 そんなら、まだ老けこむ歳じゃないよな。
 ひょっとして、もう亡くなってる?」
ド「はい。
 早死にでした。
 2001年、66歳で死去」
亡くなる前日の写真。プロ野球マスターリーグ『大阪ロマンズ』の監督代行を務めました。
↑亡くなる前日の写真。プロ野球マスターリーグ『大阪ロマンズ』の監督代行を務めました。右腕が細いのが切ないです。

み「死因は?」
ド「心筋梗塞です」
心筋梗塞です

み「にゃに!
 小林繁も心筋梗塞だったよね」
小林繁も心筋梗塞だったよね

ド「確かに」
み「アンダースローってのは、心臓に負担がかかるんじゃないか?」
ド「さー」
み「里中は、心臓が痛いとか言ってなかった?」
『水島新司まんがストリート』の里中。やっぱり、変。
↑『水島新司まんがストリート』の里中。やっぱり、変。

ド「縁起悪いこと言わないでください。
 そんな話、聞いたことないです」
み「里中が死んだら、わたしに一報してくれ」
ド「死にませんって」
み「そんなこと言うて、君ら、けっこう歳じゃろ?」
ド「最初のころは、時代設定がリアルタイムだったみたいですが……。
 その後、曖昧になったようです。
 リアルと連載は、だんだんずれちゃいますからね」
み「それは、わたしも良くわかる。
 『由美美弥』もそうだけど、この『東北に行こう!』でもそうだから。
 連載の方は、いっこうに時間が経たないのに……。
 リアルの時間は、飛ぶように過ぎ去ってく。
 『ドカベン』の最初の時代設定は、いつごろだったの?」
ド「連載の初っ端に、ボクが明訓高校に入学するんですが……。
 その年の夏の甲子園が、第56回大会となってます」
み「第56回って、何年よ?」
ド「1974年ですね。
 昭和49年」
優勝は、千葉県代表の銚子商業。このサインって、高校生の自筆? 上手すぎだろ。
↑優勝は、千葉県代表の銚子商業。このサインって、高校生の自筆? 上手すぎだろ。

み「にゃにー。
 1974年に高校入学ってことは、生まれは、その16年前だから……。
 1958年!
 これって、昭和33年?」
ド「そうなりますね」
み「てことは、今、いくつよ?
 げ。
 2015年で、57歳じゃん。
 チミ、もうすぐ還暦?」
今や、還暦は、まだ現役!
↑今や、還暦は、まだ現役!

ド「漫画の主人公は、歳を取らないんです」
み「ま、わたしの『由美美弥』もそうだけどね」
ド「『古町通』のオブジェも、同じです」
み「あ、それについての恨み事を言いに出てきたんだったな」
ド「オバケみたいに言わないでください」
オバケみたいに言わないでください

み「しかし、あの通りも寂れたものよの。
 人通り、無いでしょ?」
人通り、無いでしょ?

ド「確かに……。
 首都圏とは違いますね。
 ちょっと、駅から離れすぎてますよね」
み「そこなのよ。
 新潟駅まで、歩けば30分もかかっちゃう」
新潟駅まで、歩けば30分もかかっちゃう古町

み「古町で飲んだら、帰りはどうしてもタクシー。
 会社の接待なら、経費で落とせるだろうけど……。
 個人的にはね。
 飲み代にタクシー代も加算されるわけだから」
古町界隈にいるという噂の『ベロ(自転車)タクシー』
↑これは、古町界隈にいるという噂の『ベロ(自転車)タクシー』。でも、走ってる所を、1度も見たことがありません。料金は、普通のタクシーより高いようです(参照)。

ド「どうして、あんなに駅から離れたところに繁華街が出来たんですか?」
み「話が逆だよ。
 駅は、後に出来たの。
 古町が栄えてた昔は、舟運の時代。
 信濃川が、交通の大動脈だったわけ」
ド「でも、川とも微妙に離れてますよね」
み「それは、川が細くなっちゃったんだよ」
ド「なんでです?
 どうやったら、そんなに痩せられるんです?」
どうやったら、そんなに痩せられるんです?

み「食いついて来たな。
 チミも、やっぱり痩せたい?」
ド「やっぱり、現役を引退したら、節制しないと」
み「とにかく、食事を減らすべき」
とにかく、食事を減らすべき

ド「……」
み「黙るな。
 相撲取りなんかでも、引退しても食生活が変わらないって人もいるらしい。
 運動量が落ちてるのに、同じ量食べてるから、ますます太っちゃう」
元大関小錦。このころは、300キロあったそうです。
↑元大関小錦。このころは、300キロあったそうです。

み「ていうか、不健康な太り方になっちゃうから……。
 早死にが多いんだよ」
なんと、150キロのダイエットに成功
↑なんと、150キロのダイエットに成功。

み「そうそう。
 チミのアダ名をもらった香川伸行も死んじゃったでしょ?」
香川伸行も死んじゃったでしょ?

ド「ですね」
み「彼は、何年生まれよ?」
ド「1961年です」
み「チミより、3つ下か。
 とすれば、2015年でも、54歳じゃない。
 いつ亡くなったのよ?」
ド「2014年です」
み「享年、53」
ド「誕生日前でしたから、52ですね」
み「若すぎだろ。
 死因は?」
ド「心筋梗塞」
心筋梗塞

み「にゃにー。
 里中に続き、ドカベン香川も心筋梗塞!」
ド「里中は生きてますって」
み「ほかに、誰が心筋梗塞なんだっけ?」
ド「杉浦忠と小林繁でしょ」
み「あ、そうか。
 アンダースロー繋がりだったな。
 心筋梗塞といえば、サッカーにもいたよね」
ド「あぁ。
 松本山雅の、松田直樹ですね」
松本山雅の、松田直樹ですね

み「彼、いくつだったの?」
ド「34歳だったそうです」
34歳だったそうです

み「早すぎるよな」
ド「現役でしたからね。
 練習中に倒れたそうです」
み「心筋梗塞……。
 やっぱ、怖いよな」
ド「そう言えば、イヤに心筋梗塞に拘りますね」
み「実は……。
 人ごとじゃ無いのよ」
ド「ご家族とか?」
み「うんにゃ。
 わたし自身」
ド「倒れたことでもあるんですか?」
心筋梗塞で亡くなった安西マリアさん
↑心筋梗塞で亡くなった安西マリアさん。ご自分で119番通報したそうです。人ごとじゃありません。

み「まだ、そこまでいってないわい。
 でも、何年か前の健康診断で……。
 心電図が引っかかった。
 下壁梗塞疑いって」
下壁梗塞疑い

ド「大変じゃないですか。
 どうしたんです?」
み「もちろん、かかりつけのクリニックに行って相談した。
 じゃ、もう一度測ってみましょうって、その場で再検査してもらったんだ」
ド「結果は?」
み「なんか、期待してる顔だな」
ド「そんなことありません」
み「そもそも、チミは感情がわかりづらいんだよ。
 目に白目が無いから」
目に白目が無いから

ド「そういうキャラなんだから、仕方ないです。
 で、どうだったんです?」
み「異常なし」
ド「なんだったんでしょうね?」
み「その年は、会社の健診先が切り替わった年なのよ。
 で、その年の健診では……。
 前の健診先ではなんとも無かったのに、悪い値が出たりしたって社員がけっこういたわけ」
ド「検査方法とか、変わったんですかね?」
み「前の健診先は、健診専門の健康センターみたいなところだったの。
 それが、新しい健診先は、病院よ。
 それが、どうも怪しい」
ド「何でです?」
み「悪い結果を出して、病院に客として呼びこもうという……」
ド「そりゃ、ブラックすぎでしょ。
 ほとんど犯罪ですよ」
ほとんど犯罪ですよ

み「わたし的には、自覚症状もまったくなかったし……。
 再検査の『異常なし』を信じることにした。
 その後、しばらくは何とも無かったの」
ド「ところが……」
み「身を乗り出すな!」
身を乗り出すな!

ド「すみません。
 人の病気の話って、スゴく聞きたくなりますよね」
み「人の不幸は蜜の味って言うからね」
これは、壇蜜
↑これは、壇蜜。

ド「症状が出たわけですね」
み「そうなのよ。
 最初は、普通にお布団で寝てるときだった。
 急に、心臓の動悸が早くなったの。
 それも、すっごい軽い感じの鼓動。
 トトトトトって、上っ面だけ叩いてる感じ」
トトトトトって、上っ面だけ叩いてる感じ

み「と同時に、全身に冷や汗が噴き出した」
と同時に、全身に冷や汗が噴き出した

ド「ほー」
み「乗り出すなと言うに!」
ド「でも、大丈夫だったんですよね。
 今、こうして生きてるわけですから」
今、こうして生きてるわけですから

み「苦しさってのは、ぜんぜん無いのよ。
 ただ、鼓動が早くなって、冷や汗が出るだけ。
 でも、気味悪さは、十二分だった」
でも、気味悪さは、十二分だった

ド「救急車を呼んだとか?」
み「そこまでする感じじゃないよ。
 しばらくしたら収まったから、そのまま寝てしまった」
ド「目が覚めないかも知れないじゃないですか」
目が覚めないかも知れないじゃないですか

ド「意識があるうちに、救急車を呼んだ方がいいですよ」
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