2015.1.3(土)
老「あの弁当箱は、厚みもありましたからな」
み「ま、確かに山田太郎の体型は、“ドカベン”そのものではある」
老「そう言えば昔のNFLに、“冷蔵庫”というアダ名の選手がいましたな」
律「なんで冷蔵庫なんです?」
老「150キロもある選手で、胴体に前後の厚みがあって、冷蔵庫みたいだったからですよ」
み「なるほど。
でも、なぜわれわれは、冷蔵庫の話をしてるんだ?」
律「完全に、イカれちゃったわね」
老「すみません。
わたしが余計な話題を挟んでしまったんです。
元は、“ドカベン”の話です」
み「そうそう。
漫画『ドカベン』の作者は、新潟市の出身だって知っとるけ?」
老「知ってますよ。
水島新司でしょ」
み「左様。
それじゃ、明訓高校が実在することも?」
老「甲子園の常連じゃないですか」
み「最近でこそ、常連になったが……。
初出場は、1991年」
老「平成になってからですね」
律「古い学校なの?」
み「確か、大正時代です(大正10年でした)」
老「あ、思い出しました。
小林幹英がピッチャーだったときだ」
み「そうそう。
後に、広島カープの抑え投手になったんです。
選手生命は短かったみたいだけどね」
老「記憶に残るピッチャーの一人でしたな」
み「わたしの記憶に残ってるのは、その体型」
律「また体型?」
み「えらく足が短かったんです」
老「足が短いのは、ピッチャー向きなんですよ。
400勝した金田なんかも、足が短かった」
み「またそういう話をするから、わからんくなるではないか」
老「すみません。
水島新司の話でしたかな?」
み「そうそう。
新潟市出身」
律「明訓高校の出なの?」
み「うんにゃ。
水島新司は、当時の明訓高校のすぐ近くの白新中学卒」
み「家系が苦しくて、高校には進学できなかった」
老「白新中学?
聞いたことありますぞ」
み「『ドカベン』に、白新高校が出てくるでしょ」
老「あ、それだ。
不知火(しらぬい)の高校です」
老「『ドカベン』、懐かしいですな。
とにかく、個性的な選手ぞろいでしたから。
ピッチャーの里中」
↑新潟市街を走る観光循環バス『ドカベン号』。『犬夜叉号』もあります。
み「あと、葉っぱの岩鬼に、秘打の殿馬」
律「新潟の話じゃなかったの?
飛騨なんて、岐阜県じゃない」
み「“ひだ”は“ひだ”でも、秘密打法の秘打!」
み「しかも、漫画の明訓高校は、神奈川県の学校」
律「あらそうだったの」
み「新潟市に、『古町通(ふるまちどおり)』っていう商店街があるのよ」
↑『6』とあるのは、ここが『古町通六番町』だからです。『古町通』は、『一番町』から『十三番町』まであります。
み「かつては、新潟一の繁華街だった」
律「今は?」
み「御多分にもれず、シャッター通りです」
み「新潟市長が、活性化に力を入れてるみたいだけどね。
わたしら、旧新潟市外の市民からしたら……。
死にかけの町に金を使うなんて、金をドブに捨てるようなもんよ」
↑昭和10年ころの古町通。スゴい賑わいです。
老「手厳しいですな」
み「旧新潟市外出身の市長を出さなきゃ、新潟市の発展はない!」
律「あんたが出たら?」
み「供託金出してくれる?」
律「供託金って、いくらくらいなの?」
み「1億円」
↑1億と云っても、この程度。ほしいけど。
律「そんなにするわけないでしょ!」
老「国政選挙で、300万円くらいじゃないですか?」
み「市長は、もっと安いか。
300円くらい?」
律「安すぎでしょ」
老「新潟市は政令指定都市だから、けっこう取られると思いますよ」
調べたら、政令指定都市の市長選では、240万円でした。
それ以外の市と東京都特別区では、100万円。
町と村は、50万円。
いずれも、有効投票数の10分の1を取らないと没収されます。
世界的に見て、日本の供託金は、一番高いそうです。
み「なんで、選挙の話になってるのよ?」
律「知らないわよ」
老「『ドカベン』から、商店街の話に移りました」
み「それそれ。
『古町通』ね。
そこにね、水島新司の漫画の登場人物が、銅像になってるわけ」
律「似たようなところがあったんじゃないかしら?」
み「鳥取県の境港。
『水木しげるロード』」
み「あれの、そのまんまパクリですよ。
水木しげる漫画の登場人物はデフォルメされてるから……。
3次元にしても、そんなに違和感がないんだけどね。
水島新司のは、劇画でしょ。
それが、3次元になってるから、スゴく変」
↑『野球狂の詩』の水原勇気。明らかに変……。
み「見てるほうが恥ずかしくなる感じ」
律「見に来る人もいるんじゃないの?」
み「写真撮ってる人とか、一度も見たことないね。
まったくもって、お金の無駄使い」
↑咥えた葉っぱが、よく盗まれるそうです。
老「手厳しいですな」
み「とにかく、お金の使い方がおかしいのよ。
アーケードの中に、デカデカした花壇を作ったり」
↑両側に花壇があります。
み「自転車が置けないっちゅーの!」
律「シャッター通りなら、いくらでも置き場所がありそうだけど」
み「流行ってる店なんて、百均くらい」
↑わたしがよく行くお店。
み「その百均の真ん前に花壇があるのよ。
邪魔くさいったらないんだから」
↑『駐輪エリア』となってるのに、置けないではないか!
律「それで、何の話なのよ。
終わり?」
み「何か言いかけてたのだが……」
老「『ドカベン』ですよ」
み「『ドカベン』がどうした?」
律「あんたが話を振ったんでしょ」
老「確か、おにぎりの話からだったと思います」
律「思い出した。
おにぎりが腐ってて、酸っぱかったって話よ」
み「違うわ!
固まったご飯を箸で食べることについて、甘酸っぱい想い出があると言ったのじゃ」
律「どんな想い出よ?」
み「中学生のころって、やたらお腹が空いたでしょ」
律「そうだったかしら?」
み「体裁を繕うでないわ。
お昼休みなんて、12時をだいぶ過ぎてからだったから……。
もう、ペコペコ」
老「早弁してるやつもいましたな」
み「ほんと、男は羨ましかったよ。
早弁しようが、“ドカベン”持って行こうが、恥ずかしく無いんだから」
老「女性は、恥ずかしいんですか?」
み「当たり前じゃ。
早弁なんかしたら、なに言われるか、わからん」
み「ま、それはどうにか我慢するとしても……。
問題は、弁当箱です。
お腹が空くんだから、容量のある弁当箱を使いたい」
律「使えばいいじゃない」
み「おみゃーみたいに、人の目を気にしない女にはわからんの!
女子には、体裁というのがあるのじゃ。
みーんな、リカちゃんが食べるみたいな、小さい弁当箱を持ってきてる」
↑こんにゃです。
律「あんたもそうだったの?」
み「体裁が悪くない程度で、出来るだけ一杯入りそうなのを使ってた。
でも、普通にご飯を入れてったら、ぜったいに足りない」
律「2つ持っていけばいいじゃない。
ひとつは、早弁用」
み「女子中学生が、2つも弁当、食えるか!」
律「食べれるんじゃない?」
み「体裁的に食べれんだろ!」
↑ありえねー弁当写真を発見。ホラー弁当だそうです(こちら)。
律「じゃ、どうするのよ」
み「出来るだけ詰めるしかないでしょ」
老「確かに」
み「まず、普通にご飯をよそいます。
で、蓋を閉めたら……。
こーやって、左右に揺さぶるんです。
そうすると、ご飯が弁当箱の側面に打ちつけられて固まり……。。
隙間が出来るでしょ。
その隙間に、再びご飯を詰める。
そしてまた、こーやって、揺さぶるんです」
↑ホラー弁当、第2段。蓋を開けた瞬間の叫びを想像して作るんでしょうか?
律「ほっぺたまで揺さぶらなくていいでしょ」
み「それを、隙間が出来なくなるまでやるわけ。
これで、見た目はさほど大きくはないが……。
ご飯が稠密に詰められた弁当が出来上がるわけ」
↑山口克昭『おしくらまんじゅう』(神戸市旧居留地十五番館)。
律「呆れた」
み「だが、この弁当を食べるときには、注意が必要なのです」
律「どんな?」
み「わたしの家からは、学校まで徒歩30分くらいかかったの。
わたしの中学は、学生鞄ではなく、青い色のリュックだった」
↑ちょっと違います。画像がほとんどありません。絶滅したんでしょうか。
律「格好悪ーい」
み「確かに。
特に、不良系の方々は、このリュックを背負うのが、ことのほかイヤだったようでね。
肩紐を、片っ方だけ引っ掛けたりしてた」
律「そのリュックとお弁当が、何か関係あるわけ?」
み「リュックに入ったお弁当は、30分かけて学校に運ばれる。
その道中で、稠密に詰められたご飯は、さらに揺さぶられ続ける。
すなわち、餅状に固まっていくわけよ。
さて、お立ち会い。
そしてついに、待ちに待ったお弁当の時間が来る。
蓋を開け、ご飯に箸を伸ばす……。
しかーし。
ご飯は、簡単には摘めないのです」
老「固まってるわけですな」
み「左様。
押寿司のようになっておる」
↑山口県岩国市『岩国寿司』。
み「押寿司には、切れ目が入ってるけど……。
わたしの弁当には入ってない」
律「当たり前だわ」
み「切れ目なしの押寿司に、箸を突き立てます。
ここで油断は禁物。
いくら腹が減っていても、がっついてはいけません。
丹念に箸先を使い、ご飯を切り取らにゃならん。
そうしないで、お箸を持ち上げようとすると……。
ご飯が、一枚板のまま持ち上がってくるのです」
律「バカバカしい」
み「乙女心にとっては、バカバカしいどころではなかったの。
だから、甘酸っぱい想い出なのじゃ。
プラスチックの箸が曲がって、折れそうになった」
↑プラ箸収集家。いろんな収集家がいるものです。
み「間違っても、こんな割り箸なんかじゃ無理だったね」
↑けっこう立派な割り箸ですね。
律「そう言えば、最近のお店で、塗り箸を出すところ、増えたわよね」
み「あれでしょ。
割り箸はエコじゃないってやつ。
マイ箸を持ち歩いて……。
お店で、わざわざそれ使って食べるヤツもいるって」
律「ちょっと、やり過ぎよね」
み「やり過ぎどころか、大間違いです」
律「間違ってはいないんじゃないの?
割り箸を作るために木が伐採されるから、それを防ごうって運動でしょ」
み「パカモーン」
律「何がよ!」
み「割り箸を作る目的で、木が伐採なんかされてないの。
伐採の目的は、あくまで材木にするためです。
建築資材とかの」
律「割り箸だって、木から作られるじゃないの」
み「良いか。
材木ってのは、どういう形をしてる?」
律「どういうって……。
家の柱とかの形でしょ?」
み「すなわち、四角柱でしょうが」
律「当たり前じゃないの」
み「そしたら、木はどういう形をしてる?
四角柱か?」
律「そんな木がありますか。
円柱形に決まってるでしょ」
み「つまり、円柱の生きた木から、四角柱の柱が作られるわけでしょ。
当然、端切れが出るじゃない」
律「そりゃ、出るわよ。
あ、そうか。
割り箸は、柱を取った切れ端から作られるってこと?」
み「左様です」
み「材木の切れ端なんかに、有効な使い道がそんなにあるわけじゃないでしょ。
そのひとつが、割り箸なんです」
律「なるほど」
み「マイ箸なんか使ってるヤツに限って、材木を贅沢に使った家に住んでたりするの。
『やっぱり、いい家は木造よね』とか言ってさ。
木の伐採を防ごうと思ったら、コンクリート住宅に住め!
大成建設のパルコン!」
↑マンションに住めばいい気もしますが。
み「住友林業の家には住むな!」
↑確かに、住みやすそうではあります。
律「固有名詞まで出さなくていいでしょ」
み「さらに、使った後の割り箸には、大変にエコな役割があるのです」
律「使った後なんて、捨てるしかないじゃない。
割り箸を使いまわす気?」
み「汚いだろ!
捨てますよ、もちろん。
飲食店で捨てられるときは、生ごみと一緒よね」
律「元は木なんだから、当然でしょ」
み「生ごみは、処理場に送られて、焼却されます」
み「しかし!
生ごみは、大量の水分を含んでるから燃えにくい。
これを燃やすためには、大量の重油が必要なんです」
律「それと割り箸がどう関係するの?」
み「わからんか?
割り箸は、木でしょ?
よく燃えるのよ」
み「早い話、生ごみを燃やす焚き付けになるってこと。
割り箸の混ざった生ごみは、よく燃えるの。
すなわち、重油が少なくて済むってわけ」
老「ほー。
それは知りませんでした」
み「つまりは、飲食店が塗り箸を使ったり……。
あるいは、個人個人がマイ箸を持ちこんだりしても、ちっともエコじゃないってこと。
むしろ、木材の端切れの有効利用を阻害し、化石燃料を大量に消費させているということ」
み「どうじゃ。
これだけ言っとけば、『全日本割箸生産組合』から、何か付け届けが来るんではないか?」
↑組合長……。ではありません。
律「そんな組合があるの?」
み「知らんが」
律「割り箸が届くんじゃないの?
百膳くらい」
み「そんなの、百均で買えるだろ!」
律「でも、この話って、前にも聞いたような気がするわ」
み「わたしも途中から、前にも演説した気がしてきた。
お酒ってのは、便利ですのぅ。
何度でも同じ話が出来るし……。
聞く方も忘れてるから、何度でも新しい話として聞ける」
律「だから、前にも聞いたこと、覚えてたって」
み「忘れなはれ。
酒の上のことは」
老「さて。
そろそろ、お開きにしますか。
おかげさまで、今日はほんとに楽しかった」
律「こちらこそ。
それじゃ、お勘定はこちらで持たせていただきますので。
ね、Mikiちゃん」
み「ぐー」
律「寝るな!」
老「わたしにも出させてくださいよ」
律「いえ。
最初からの約束ですから」
み「ぐー」
律「寝るなと言うに!
いいわ。
バッグから、わたしが財布出すから」
み「ぐー!」
律「バッグを抱えるな!
すみません。
お勘定をしていただけます?」
老「わかりました。
ご主人、おあいそ」
店「へい。
しばらくお待ちください」
老「いくら1品500円程度でも、かなり飲み食いしましたからな。
こんなに注文した客は、開店以来初めてかも知れませんよ」
律「どのくらいかしら?
10万円とか?」
老「ぼったくりバーじゃないんですから。
そんなわけ無いですよ」
店「お待たせしました」
律「おいくらですか?」
さて、それでは、精算してみましょう。
まずは、食べ物から。
『貝焼みそ』を2つで、450円×2=900円。
『はたはた唐揚』を1つで、400円。
『いかげそ揚』を1つで、500円。
『ジャガバター』を1つで、450円。
『納豆揚』を1つで、400円。
『あじの味噌たたき』を1つで、450円。
『焼きおにぎり』を3つで、250円×3=750円。
食べ物の合計は、2,950円です。
これだけ食べて、3千円を切ってます。
3人ですから、一人頭、千円ですね。
と、ここまでの精算は、簡単なんです。
お品書きの写真がたくさんありますから、値段がわかります。
でも、飲み物でわかるのは、『田酒』だけ。
1合、600円です。
なんとなく、食べ物は安いけど、お酒はそうでもない気がします。
まず、最初は、『生ビール』を頼みました。
これって、いくらくらいですかね?
さっぱりわかりません。
最近は、飲み放題しか入ったことが無いので。
550円くらいにしておきますか。
『生ビール』を3つで、550円×3=1,650円。
うわ。
高けー。
続いて、『田酒』を2合で、600円×2=1,200円。
この後、『喜久泉』と『じょっぱり』を燗で2合ずつ。
こちらも、値段がわかりませんが……。
たぶん、『田酒』より高いということは無いはず。
1合、500円にしておきますか。
計4合で、500円×4=2,000円。
お酒の合計は……。
なんと、4,850円!
高か……。
飲食合計は、2,950円+4,850円=7,800円。
店「お待たせしました」
律「おいくらですか?」
店「7,800円になります」
み「そんにゃにー!」
律「起きてるじゃないの」
み「ぐー」
律「寝るな!」
老「ははは。
この店で、こんな値段を聞いたのは初めてです」
律「でも、3人ですもの。
1人あたり、2,600円でしかありませんわ。
もちろん、津島さんの分は、2人で払わせていただきます」
老「それじゃ、悪いですよ」
律「だって、斜陽館からタクシーに乗ったら、青森まで2,600円じゃ来れませんでしょ。
電車だって、もっとかかったはずです。
ほら、Mikiちゃん、旅程表に書いてあったでしょ。
出してみて」
み「@@」
律「酔っ払い。
バッグ、開けるわよ。
あった。
これだ。
えーっと。
どこかしら?
汚い字ね。
あ、ここだ。
津軽鉄道の『金木』から『津軽五所川原』が、550円。
JRの『五所川原』から、『青森』が、970円。
合計、1,520円」
↑当初の予定はこうでした。2時間もかかるんですね。
律「2人で、3,040円かかります。
だから、ここの津島さんの分が、2,600円ですから……。
わたしたち、ぜんぜん損はしてません」
老「それは、そうかも知れませんが……」
律「ほら、Mikiちゃん、起きなさい。
一人あたり、3,900円よ」
み「ぐー」
律「寝るなと言うに!
財布のありかはわかってるんですからね。
このバッグでしょ。
手で押さえるな!」
み「ぐー!」
律「まだ、寝たふりするか。
それじゃ、くすぐってやる。
コチョコチョコチョコチョ」
み「うひゃひゃひゃ。
やめれー。
食うたものが出てしまうわ」
律「出すな!
金を出せ」
み「それじゃ、強盗でんがな」
律「3,900円」
み「はい、これ」
律「何よ、これ?
10円玉じゃないの」
↑ギザ十。
み「小銭がある方が、何かと便利であろう?」
律「そういう問題じゃないでしょ。
早くしなさいって。
みっともないから。
ほら、そこに5,000円札があるじゃない」
み「この5,000円とは、生涯を共にする契りを……」
律「やかましい!
よこせ」
み「ひえー、強奪された。
つ、釣り銭よこせ」
↑お釣りが出なかったのでしょうか?
律「はい」
み「はいって、あんた。
1,000円しかおまへんがな。
あと100円」
律「細かいのが無いの」
み「じゃ、2,000円でもいい」
律「良くないわよ。
今、お釣りをもらったら、返します。
じゃ、これでお願いします」
店「へい。
1万円、お預かりします」
み「持ってまんなー」
律「無い方がおかしいでしょ。
青森まで旅行に来てるのに」
老「ほんとにすみませんね。
こんなにご馳走になって」
律「とても楽しかったですし……。
とても美味しかったです」
老「それなら良かった」
店「それでは、お返しの2,200円になります」
律「はい、ありがとうございます」
み「わたしに、1,000円」
律「100円でしょ!
はい」
み「ちょっと!
さっき渡した10円も返してよ」
律「あれは、心づけとしていただいておくわ」
み「心づけとらん!」
律「ケチね」
み「人の金を盗っといて、言う言葉か」
律「人聞きの悪い。
それじゃ、あんたは、この10円と生涯を共にしなさい。
ほら」
み「あひゃー。
背中がヒャッコイ。
な、何をした?」
律「襟の後ろから、10円入れたのよ。
10円分、芸しなさい」
み「あんた、人のこと言えませんがな。
そうとう酔ってますでしょ?」
律「あれだけ飲んで酔わなかったら……。
何のために飲んでるか、わからないわ。
さ、帰るわよ。
起てる?」
み「10円が重くて起てない」
律「早く起ちなさい。
襟、持ってあげるから」
み「吊るすなー」
老「大丈夫ですかな、階段」
律「ほら、シャンとしなさい。
ここから階段よ」
↑下から撮った写真はありませんでした。やっぱり、帰りには撮れないよね。
み「エレベーターにして」
老「残念ながらありません」
み「なじぇにー。
こんなグルグル回る階段、登れるわけないだろー」
律「この酔っ払い。
這って上がりなさい」
み「なじぇにわたしは、青森の階段で這いつくばっておるのじゃー」
律「酔っ払いだからでしょ」
み「もういい。
ここで寝る」
↑力尽きたのでしょうか。
律「寝るなー」
夢を見ました。
弁当箱を、一心に左右に揺さぶってます。
詰めたご飯を固めて、隙間を作るためです。
↑こんなのを食べてると、脚気になります。
み「おー」
蓋を開けると、ご飯は片側半分くらいに寄ってます。
み「まだまだ詰められる」
わたしは、嬉々としてご飯をよそいます。
そして、左右に揺さぶる。
蓋を開けると、ご飯はまた半分になってます。
み「今日は、良く詰まるなー」
もう一度、ご飯をよそいます。
み「あれ?」
炊飯器のご飯は、わたしがお弁当を詰めると、ほとんど空になるのが常でした。
さらに今日は、3回も詰めたのに……。
炊飯器の底には、まだご飯が残ってます。
ひょっとしたら、永遠に減らない、魔法の炊飯器?
もしそうなら、わが家のエンゲル係数は、急降下ですが……。
ようやく、おかしいことに気づきました。
お弁当箱のご飯が、詰めても詰めても、固まらないのです。
まるで、詰めた端から、炊飯器に戻っていくよう。
これでは、キリがありません。
み「なぜじゃー。
出かけられないではないか。
こ、これは、呪いの弁当箱か?」
謎「ふふふ。
ドカベンを笑うものは、ドカベンに泣く」
み「誰だ?
意味不明なつぶやきをなすものは?」
謎「頑張れ頑張れドカベン!」
み「お、お前は!
や、山田太郎ではないか」
ド「またの名を、ドカベン」
み「言っておくが、わたしはドカベンを笑ったことなど無いぞ」
ド「確かに。
しかし、古町通に並ぶ僕たちを、バカにしたではないですか」
↑足首が細すぎないか?
み「バカにしたわけじゃないわい。
不自然だと言ったまで」
ド「どこが不自然なんです?」
み「そうだ。
わたしが変だと言ったのは、『野球狂の詩』の水原勇気じゃないか」
み「別の漫画でしょ」
ド「でも、作者は一緒ですから、言ってみれば妹みたいなものです。
妹に難癖が付けば、面白くないですね。
そもそも、どこがヘンなんです?」
み「まず、顔がデカすぎる。
あれじゃ、お面です」
み「世田谷九品仏の『お面かぶり』という祭りを知っとるけ?」
↑これじゃ、コントですがな。
ド「ますますもって帆立貝」
↑こんな小さな帆立貝を採ってはいけません。
み「それは、筒井康隆のギャグだろ。
でも、『貝焼みそ』は、美味しかったなぁ」
↑これが美味しくないはずがない。
み「ま、確かに山田太郎の体型は、“ドカベン”そのものではある」
老「そう言えば昔のNFLに、“冷蔵庫”というアダ名の選手がいましたな」
律「なんで冷蔵庫なんです?」
老「150キロもある選手で、胴体に前後の厚みがあって、冷蔵庫みたいだったからですよ」
み「なるほど。
でも、なぜわれわれは、冷蔵庫の話をしてるんだ?」
律「完全に、イカれちゃったわね」
老「すみません。
わたしが余計な話題を挟んでしまったんです。
元は、“ドカベン”の話です」
み「そうそう。
漫画『ドカベン』の作者は、新潟市の出身だって知っとるけ?」
老「知ってますよ。
水島新司でしょ」
み「左様。
それじゃ、明訓高校が実在することも?」
老「甲子園の常連じゃないですか」
み「最近でこそ、常連になったが……。
初出場は、1991年」
老「平成になってからですね」
律「古い学校なの?」
み「確か、大正時代です(大正10年でした)」
老「あ、思い出しました。
小林幹英がピッチャーだったときだ」
み「そうそう。
後に、広島カープの抑え投手になったんです。
選手生命は短かったみたいだけどね」
老「記憶に残るピッチャーの一人でしたな」
み「わたしの記憶に残ってるのは、その体型」
律「また体型?」
み「えらく足が短かったんです」
老「足が短いのは、ピッチャー向きなんですよ。
400勝した金田なんかも、足が短かった」
み「またそういう話をするから、わからんくなるではないか」
老「すみません。
水島新司の話でしたかな?」
み「そうそう。
新潟市出身」
律「明訓高校の出なの?」
み「うんにゃ。
水島新司は、当時の明訓高校のすぐ近くの白新中学卒」
み「家系が苦しくて、高校には進学できなかった」
老「白新中学?
聞いたことありますぞ」
み「『ドカベン』に、白新高校が出てくるでしょ」
老「あ、それだ。
不知火(しらぬい)の高校です」
老「『ドカベン』、懐かしいですな。
とにかく、個性的な選手ぞろいでしたから。
ピッチャーの里中」
↑新潟市街を走る観光循環バス『ドカベン号』。『犬夜叉号』もあります。
み「あと、葉っぱの岩鬼に、秘打の殿馬」
律「新潟の話じゃなかったの?
飛騨なんて、岐阜県じゃない」
み「“ひだ”は“ひだ”でも、秘密打法の秘打!」
み「しかも、漫画の明訓高校は、神奈川県の学校」
律「あらそうだったの」
み「新潟市に、『古町通(ふるまちどおり)』っていう商店街があるのよ」
↑『6』とあるのは、ここが『古町通六番町』だからです。『古町通』は、『一番町』から『十三番町』まであります。
み「かつては、新潟一の繁華街だった」
律「今は?」
み「御多分にもれず、シャッター通りです」
み「新潟市長が、活性化に力を入れてるみたいだけどね。
わたしら、旧新潟市外の市民からしたら……。
死にかけの町に金を使うなんて、金をドブに捨てるようなもんよ」
↑昭和10年ころの古町通。スゴい賑わいです。
老「手厳しいですな」
み「旧新潟市外出身の市長を出さなきゃ、新潟市の発展はない!」
律「あんたが出たら?」
み「供託金出してくれる?」
律「供託金って、いくらくらいなの?」
み「1億円」
↑1億と云っても、この程度。ほしいけど。
律「そんなにするわけないでしょ!」
老「国政選挙で、300万円くらいじゃないですか?」
み「市長は、もっと安いか。
300円くらい?」
律「安すぎでしょ」
老「新潟市は政令指定都市だから、けっこう取られると思いますよ」
調べたら、政令指定都市の市長選では、240万円でした。
それ以外の市と東京都特別区では、100万円。
町と村は、50万円。
いずれも、有効投票数の10分の1を取らないと没収されます。
世界的に見て、日本の供託金は、一番高いそうです。
み「なんで、選挙の話になってるのよ?」
律「知らないわよ」
老「『ドカベン』から、商店街の話に移りました」
み「それそれ。
『古町通』ね。
そこにね、水島新司の漫画の登場人物が、銅像になってるわけ」
律「似たようなところがあったんじゃないかしら?」
み「鳥取県の境港。
『水木しげるロード』」
み「あれの、そのまんまパクリですよ。
水木しげる漫画の登場人物はデフォルメされてるから……。
3次元にしても、そんなに違和感がないんだけどね。
水島新司のは、劇画でしょ。
それが、3次元になってるから、スゴく変」
↑『野球狂の詩』の水原勇気。明らかに変……。
み「見てるほうが恥ずかしくなる感じ」
律「見に来る人もいるんじゃないの?」
み「写真撮ってる人とか、一度も見たことないね。
まったくもって、お金の無駄使い」
↑咥えた葉っぱが、よく盗まれるそうです。
老「手厳しいですな」
み「とにかく、お金の使い方がおかしいのよ。
アーケードの中に、デカデカした花壇を作ったり」
↑両側に花壇があります。
み「自転車が置けないっちゅーの!」
律「シャッター通りなら、いくらでも置き場所がありそうだけど」
み「流行ってる店なんて、百均くらい」
↑わたしがよく行くお店。
み「その百均の真ん前に花壇があるのよ。
邪魔くさいったらないんだから」
↑『駐輪エリア』となってるのに、置けないではないか!
律「それで、何の話なのよ。
終わり?」
み「何か言いかけてたのだが……」
老「『ドカベン』ですよ」
み「『ドカベン』がどうした?」
律「あんたが話を振ったんでしょ」
老「確か、おにぎりの話からだったと思います」
律「思い出した。
おにぎりが腐ってて、酸っぱかったって話よ」
み「違うわ!
固まったご飯を箸で食べることについて、甘酸っぱい想い出があると言ったのじゃ」
律「どんな想い出よ?」
み「中学生のころって、やたらお腹が空いたでしょ」
律「そうだったかしら?」
み「体裁を繕うでないわ。
お昼休みなんて、12時をだいぶ過ぎてからだったから……。
もう、ペコペコ」
老「早弁してるやつもいましたな」
み「ほんと、男は羨ましかったよ。
早弁しようが、“ドカベン”持って行こうが、恥ずかしく無いんだから」
老「女性は、恥ずかしいんですか?」
み「当たり前じゃ。
早弁なんかしたら、なに言われるか、わからん」
み「ま、それはどうにか我慢するとしても……。
問題は、弁当箱です。
お腹が空くんだから、容量のある弁当箱を使いたい」
律「使えばいいじゃない」
み「おみゃーみたいに、人の目を気にしない女にはわからんの!
女子には、体裁というのがあるのじゃ。
みーんな、リカちゃんが食べるみたいな、小さい弁当箱を持ってきてる」
↑こんにゃです。
律「あんたもそうだったの?」
み「体裁が悪くない程度で、出来るだけ一杯入りそうなのを使ってた。
でも、普通にご飯を入れてったら、ぜったいに足りない」
律「2つ持っていけばいいじゃない。
ひとつは、早弁用」
み「女子中学生が、2つも弁当、食えるか!」
律「食べれるんじゃない?」
み「体裁的に食べれんだろ!」
↑ありえねー弁当写真を発見。ホラー弁当だそうです(こちら)。
律「じゃ、どうするのよ」
み「出来るだけ詰めるしかないでしょ」
老「確かに」
み「まず、普通にご飯をよそいます。
で、蓋を閉めたら……。
こーやって、左右に揺さぶるんです。
そうすると、ご飯が弁当箱の側面に打ちつけられて固まり……。。
隙間が出来るでしょ。
その隙間に、再びご飯を詰める。
そしてまた、こーやって、揺さぶるんです」
↑ホラー弁当、第2段。蓋を開けた瞬間の叫びを想像して作るんでしょうか?
律「ほっぺたまで揺さぶらなくていいでしょ」
み「それを、隙間が出来なくなるまでやるわけ。
これで、見た目はさほど大きくはないが……。
ご飯が稠密に詰められた弁当が出来上がるわけ」
↑山口克昭『おしくらまんじゅう』(神戸市旧居留地十五番館)。
律「呆れた」
み「だが、この弁当を食べるときには、注意が必要なのです」
律「どんな?」
み「わたしの家からは、学校まで徒歩30分くらいかかったの。
わたしの中学は、学生鞄ではなく、青い色のリュックだった」
↑ちょっと違います。画像がほとんどありません。絶滅したんでしょうか。
律「格好悪ーい」
み「確かに。
特に、不良系の方々は、このリュックを背負うのが、ことのほかイヤだったようでね。
肩紐を、片っ方だけ引っ掛けたりしてた」
律「そのリュックとお弁当が、何か関係あるわけ?」
み「リュックに入ったお弁当は、30分かけて学校に運ばれる。
その道中で、稠密に詰められたご飯は、さらに揺さぶられ続ける。
すなわち、餅状に固まっていくわけよ。
さて、お立ち会い。
そしてついに、待ちに待ったお弁当の時間が来る。
蓋を開け、ご飯に箸を伸ばす……。
しかーし。
ご飯は、簡単には摘めないのです」
老「固まってるわけですな」
み「左様。
押寿司のようになっておる」
↑山口県岩国市『岩国寿司』。
み「押寿司には、切れ目が入ってるけど……。
わたしの弁当には入ってない」
律「当たり前だわ」
み「切れ目なしの押寿司に、箸を突き立てます。
ここで油断は禁物。
いくら腹が減っていても、がっついてはいけません。
丹念に箸先を使い、ご飯を切り取らにゃならん。
そうしないで、お箸を持ち上げようとすると……。
ご飯が、一枚板のまま持ち上がってくるのです」
律「バカバカしい」
み「乙女心にとっては、バカバカしいどころではなかったの。
だから、甘酸っぱい想い出なのじゃ。
プラスチックの箸が曲がって、折れそうになった」
↑プラ箸収集家。いろんな収集家がいるものです。
み「間違っても、こんな割り箸なんかじゃ無理だったね」
↑けっこう立派な割り箸ですね。
律「そう言えば、最近のお店で、塗り箸を出すところ、増えたわよね」
み「あれでしょ。
割り箸はエコじゃないってやつ。
マイ箸を持ち歩いて……。
お店で、わざわざそれ使って食べるヤツもいるって」
律「ちょっと、やり過ぎよね」
み「やり過ぎどころか、大間違いです」
律「間違ってはいないんじゃないの?
割り箸を作るために木が伐採されるから、それを防ごうって運動でしょ」
み「パカモーン」
律「何がよ!」
み「割り箸を作る目的で、木が伐採なんかされてないの。
伐採の目的は、あくまで材木にするためです。
建築資材とかの」
律「割り箸だって、木から作られるじゃないの」
み「良いか。
材木ってのは、どういう形をしてる?」
律「どういうって……。
家の柱とかの形でしょ?」
み「すなわち、四角柱でしょうが」
律「当たり前じゃないの」
み「そしたら、木はどういう形をしてる?
四角柱か?」
律「そんな木がありますか。
円柱形に決まってるでしょ」
み「つまり、円柱の生きた木から、四角柱の柱が作られるわけでしょ。
当然、端切れが出るじゃない」
律「そりゃ、出るわよ。
あ、そうか。
割り箸は、柱を取った切れ端から作られるってこと?」
み「左様です」
み「材木の切れ端なんかに、有効な使い道がそんなにあるわけじゃないでしょ。
そのひとつが、割り箸なんです」
律「なるほど」
み「マイ箸なんか使ってるヤツに限って、材木を贅沢に使った家に住んでたりするの。
『やっぱり、いい家は木造よね』とか言ってさ。
木の伐採を防ごうと思ったら、コンクリート住宅に住め!
大成建設のパルコン!」
↑マンションに住めばいい気もしますが。
み「住友林業の家には住むな!」
↑確かに、住みやすそうではあります。
律「固有名詞まで出さなくていいでしょ」
み「さらに、使った後の割り箸には、大変にエコな役割があるのです」
律「使った後なんて、捨てるしかないじゃない。
割り箸を使いまわす気?」
み「汚いだろ!
捨てますよ、もちろん。
飲食店で捨てられるときは、生ごみと一緒よね」
律「元は木なんだから、当然でしょ」
み「生ごみは、処理場に送られて、焼却されます」
み「しかし!
生ごみは、大量の水分を含んでるから燃えにくい。
これを燃やすためには、大量の重油が必要なんです」
律「それと割り箸がどう関係するの?」
み「わからんか?
割り箸は、木でしょ?
よく燃えるのよ」
み「早い話、生ごみを燃やす焚き付けになるってこと。
割り箸の混ざった生ごみは、よく燃えるの。
すなわち、重油が少なくて済むってわけ」
老「ほー。
それは知りませんでした」
み「つまりは、飲食店が塗り箸を使ったり……。
あるいは、個人個人がマイ箸を持ちこんだりしても、ちっともエコじゃないってこと。
むしろ、木材の端切れの有効利用を阻害し、化石燃料を大量に消費させているということ」
み「どうじゃ。
これだけ言っとけば、『全日本割箸生産組合』から、何か付け届けが来るんではないか?」
↑組合長……。ではありません。
律「そんな組合があるの?」
み「知らんが」
律「割り箸が届くんじゃないの?
百膳くらい」
み「そんなの、百均で買えるだろ!」
律「でも、この話って、前にも聞いたような気がするわ」
み「わたしも途中から、前にも演説した気がしてきた。
お酒ってのは、便利ですのぅ。
何度でも同じ話が出来るし……。
聞く方も忘れてるから、何度でも新しい話として聞ける」
律「だから、前にも聞いたこと、覚えてたって」
み「忘れなはれ。
酒の上のことは」
老「さて。
そろそろ、お開きにしますか。
おかげさまで、今日はほんとに楽しかった」
律「こちらこそ。
それじゃ、お勘定はこちらで持たせていただきますので。
ね、Mikiちゃん」
み「ぐー」
律「寝るな!」
老「わたしにも出させてくださいよ」
律「いえ。
最初からの約束ですから」
み「ぐー」
律「寝るなと言うに!
いいわ。
バッグから、わたしが財布出すから」
み「ぐー!」
律「バッグを抱えるな!
すみません。
お勘定をしていただけます?」
老「わかりました。
ご主人、おあいそ」
店「へい。
しばらくお待ちください」
老「いくら1品500円程度でも、かなり飲み食いしましたからな。
こんなに注文した客は、開店以来初めてかも知れませんよ」
律「どのくらいかしら?
10万円とか?」
老「ぼったくりバーじゃないんですから。
そんなわけ無いですよ」
店「お待たせしました」
律「おいくらですか?」
さて、それでは、精算してみましょう。
まずは、食べ物から。
『貝焼みそ』を2つで、450円×2=900円。
『はたはた唐揚』を1つで、400円。
『いかげそ揚』を1つで、500円。
『ジャガバター』を1つで、450円。
『納豆揚』を1つで、400円。
『あじの味噌たたき』を1つで、450円。
『焼きおにぎり』を3つで、250円×3=750円。
食べ物の合計は、2,950円です。
これだけ食べて、3千円を切ってます。
3人ですから、一人頭、千円ですね。
と、ここまでの精算は、簡単なんです。
お品書きの写真がたくさんありますから、値段がわかります。
でも、飲み物でわかるのは、『田酒』だけ。
1合、600円です。
なんとなく、食べ物は安いけど、お酒はそうでもない気がします。
まず、最初は、『生ビール』を頼みました。
これって、いくらくらいですかね?
さっぱりわかりません。
最近は、飲み放題しか入ったことが無いので。
550円くらいにしておきますか。
『生ビール』を3つで、550円×3=1,650円。
うわ。
高けー。
続いて、『田酒』を2合で、600円×2=1,200円。
この後、『喜久泉』と『じょっぱり』を燗で2合ずつ。
こちらも、値段がわかりませんが……。
たぶん、『田酒』より高いということは無いはず。
1合、500円にしておきますか。
計4合で、500円×4=2,000円。
お酒の合計は……。
なんと、4,850円!
高か……。
飲食合計は、2,950円+4,850円=7,800円。
店「お待たせしました」
律「おいくらですか?」
店「7,800円になります」
み「そんにゃにー!」
律「起きてるじゃないの」
み「ぐー」
律「寝るな!」
老「ははは。
この店で、こんな値段を聞いたのは初めてです」
律「でも、3人ですもの。
1人あたり、2,600円でしかありませんわ。
もちろん、津島さんの分は、2人で払わせていただきます」
老「それじゃ、悪いですよ」
律「だって、斜陽館からタクシーに乗ったら、青森まで2,600円じゃ来れませんでしょ。
電車だって、もっとかかったはずです。
ほら、Mikiちゃん、旅程表に書いてあったでしょ。
出してみて」
み「@@」
律「酔っ払い。
バッグ、開けるわよ。
あった。
これだ。
えーっと。
どこかしら?
汚い字ね。
あ、ここだ。
津軽鉄道の『金木』から『津軽五所川原』が、550円。
JRの『五所川原』から、『青森』が、970円。
合計、1,520円」
↑当初の予定はこうでした。2時間もかかるんですね。
律「2人で、3,040円かかります。
だから、ここの津島さんの分が、2,600円ですから……。
わたしたち、ぜんぜん損はしてません」
老「それは、そうかも知れませんが……」
律「ほら、Mikiちゃん、起きなさい。
一人あたり、3,900円よ」
み「ぐー」
律「寝るなと言うに!
財布のありかはわかってるんですからね。
このバッグでしょ。
手で押さえるな!」
み「ぐー!」
律「まだ、寝たふりするか。
それじゃ、くすぐってやる。
コチョコチョコチョコチョ」
み「うひゃひゃひゃ。
やめれー。
食うたものが出てしまうわ」
律「出すな!
金を出せ」
み「それじゃ、強盗でんがな」
律「3,900円」
み「はい、これ」
律「何よ、これ?
10円玉じゃないの」
↑ギザ十。
み「小銭がある方が、何かと便利であろう?」
律「そういう問題じゃないでしょ。
早くしなさいって。
みっともないから。
ほら、そこに5,000円札があるじゃない」
み「この5,000円とは、生涯を共にする契りを……」
律「やかましい!
よこせ」
み「ひえー、強奪された。
つ、釣り銭よこせ」
↑お釣りが出なかったのでしょうか?
律「はい」
み「はいって、あんた。
1,000円しかおまへんがな。
あと100円」
律「細かいのが無いの」
み「じゃ、2,000円でもいい」
律「良くないわよ。
今、お釣りをもらったら、返します。
じゃ、これでお願いします」
店「へい。
1万円、お預かりします」
み「持ってまんなー」
律「無い方がおかしいでしょ。
青森まで旅行に来てるのに」
老「ほんとにすみませんね。
こんなにご馳走になって」
律「とても楽しかったですし……。
とても美味しかったです」
老「それなら良かった」
店「それでは、お返しの2,200円になります」
律「はい、ありがとうございます」
み「わたしに、1,000円」
律「100円でしょ!
はい」
み「ちょっと!
さっき渡した10円も返してよ」
律「あれは、心づけとしていただいておくわ」
み「心づけとらん!」
律「ケチね」
み「人の金を盗っといて、言う言葉か」
律「人聞きの悪い。
それじゃ、あんたは、この10円と生涯を共にしなさい。
ほら」
み「あひゃー。
背中がヒャッコイ。
な、何をした?」
律「襟の後ろから、10円入れたのよ。
10円分、芸しなさい」
み「あんた、人のこと言えませんがな。
そうとう酔ってますでしょ?」
律「あれだけ飲んで酔わなかったら……。
何のために飲んでるか、わからないわ。
さ、帰るわよ。
起てる?」
み「10円が重くて起てない」
律「早く起ちなさい。
襟、持ってあげるから」
み「吊るすなー」
老「大丈夫ですかな、階段」
律「ほら、シャンとしなさい。
ここから階段よ」
↑下から撮った写真はありませんでした。やっぱり、帰りには撮れないよね。
み「エレベーターにして」
老「残念ながらありません」
み「なじぇにー。
こんなグルグル回る階段、登れるわけないだろー」
律「この酔っ払い。
這って上がりなさい」
み「なじぇにわたしは、青森の階段で這いつくばっておるのじゃー」
律「酔っ払いだからでしょ」
み「もういい。
ここで寝る」
↑力尽きたのでしょうか。
律「寝るなー」
夢を見ました。
弁当箱を、一心に左右に揺さぶってます。
詰めたご飯を固めて、隙間を作るためです。
↑こんなのを食べてると、脚気になります。
み「おー」
蓋を開けると、ご飯は片側半分くらいに寄ってます。
み「まだまだ詰められる」
わたしは、嬉々としてご飯をよそいます。
そして、左右に揺さぶる。
蓋を開けると、ご飯はまた半分になってます。
み「今日は、良く詰まるなー」
もう一度、ご飯をよそいます。
み「あれ?」
炊飯器のご飯は、わたしがお弁当を詰めると、ほとんど空になるのが常でした。
さらに今日は、3回も詰めたのに……。
炊飯器の底には、まだご飯が残ってます。
ひょっとしたら、永遠に減らない、魔法の炊飯器?
もしそうなら、わが家のエンゲル係数は、急降下ですが……。
ようやく、おかしいことに気づきました。
お弁当箱のご飯が、詰めても詰めても、固まらないのです。
まるで、詰めた端から、炊飯器に戻っていくよう。
これでは、キリがありません。
み「なぜじゃー。
出かけられないではないか。
こ、これは、呪いの弁当箱か?」
謎「ふふふ。
ドカベンを笑うものは、ドカベンに泣く」
み「誰だ?
意味不明なつぶやきをなすものは?」
謎「頑張れ頑張れドカベン!」
み「お、お前は!
や、山田太郎ではないか」
ド「またの名を、ドカベン」
み「言っておくが、わたしはドカベンを笑ったことなど無いぞ」
ド「確かに。
しかし、古町通に並ぶ僕たちを、バカにしたではないですか」
↑足首が細すぎないか?
み「バカにしたわけじゃないわい。
不自然だと言ったまで」
ド「どこが不自然なんです?」
み「そうだ。
わたしが変だと言ったのは、『野球狂の詩』の水原勇気じゃないか」
み「別の漫画でしょ」
ド「でも、作者は一緒ですから、言ってみれば妹みたいなものです。
妹に難癖が付けば、面白くないですね。
そもそも、どこがヘンなんです?」
み「まず、顔がデカすぎる。
あれじゃ、お面です」
み「世田谷九品仏の『お面かぶり』という祭りを知っとるけ?」
↑これじゃ、コントですがな。
ド「ますますもって帆立貝」
↑こんな小さな帆立貝を採ってはいけません。
み「それは、筒井康隆のギャグだろ。
でも、『貝焼みそ』は、美味しかったなぁ」
↑これが美味しくないはずがない。