2014.10.24(金)
爺「敷地は、30ヘクタール以上あります。
サクラが500本ほど植わってまして……」
爺「『青森春まつり』の会場にもなってます」
み「ほー。
サクラはこの時期、どうしようも無いな。
あとは、何があるの?」
爺「とにかく広大ですからね。
『ピクニック広場』とか、いろいろありますよ」
↑なぜか、人のいる画像がほとんど見つからない公園です。
爺「あ、そうそう。
野木和湖という湖もあります」
み「ここも、ダム湖か?」
爺「確かに人造湖ですが、ダム湖ではありません。
もともと、灌漑用溜池として作られたものを拡張したんですね。
釣りの名所でもありますよ。
昔からヘラブナ釣りで有名でしたが……」
爺「最近は、ブラックバスが盛んみたいですね。
寄ってみますか?」
み「そんな広いとこ、これから寄ったら、夜になっちまうだろ」
爺「夜になったらなったで、また面白いですよ」
み「何が?」
爺「実は昔……。
ここで、ある事件があったんです。
湖のほとりでキャンプをしていた若者たちが……。
全員、非業の最期を遂げたのです!」
み「もうええわい!
早く、街に降りてちょ」
爺「ははは。
怖がりですね」
隣の先生が、袖を引っ張ってきました。
↑袖釣込腰(そでつりこみごし)という技だそうです。
み「なに?
おしっこ?」
律「違うわよ。
ちょっと耳を貸して」
み「賃料、先払いになります」
律「早く貸せ!」
み「痛い痛い痛い」
み「引っ張らなくてもいいでしょ。
千切れるかと思った」
律「やっぱり……。
いくらなんでも、ここまでタダ乗りしたんじゃ申し訳ないわよ」
み「電車代が、大幅に浮いたからね」
律「いくらくらい、浮いたのよ?」
み「えーっと……。
旅程表に書いてきたはず。
あった、あった」
み「津軽鉄道の『金木』から『津軽五所川原』が、550円。
JRの『五所川原』から、『青森』が、970円。
合計、1,520円だね」
律「2人で、3,000円じゃない」
み「けっこう、デカいね」
↑ケンタッキーフライドチキンなら、このくらい(12ピース半)。ぜったい、一人では食えません。
律「でしょ。
といって、現金をお渡しするのも、なんだか失礼だしさ」
↑この『御車代』は、意味が違いますが。
み「金払ったら、本物の白タクになっちゃうわな」
律「今日のホテルって、夕食付き?」
み「うんにゃ。
ビジネスホテルだからね。
旅先じゃ、やっぱり街に出なきゃでしょ」
律「お店、どこか予約してあるの?」
み「わたしがそんなことするはずないでしょ。
足の向くまま、気の向くまま……。
『おんな酒場放浪記』でござんす」
律「何それ?」
み「BS-TBSの番組。
おもろいよ」
律「あのさ、夕食、お誘いしない?」
み「誰を?」
律「決まってるでしょ!」
み「白タクか」
律「一人前、3,000円くらいの料理なら、失礼じゃないでしょ」
↑富山駅前『鉄板焼 シェフ小玉』さんの3,000円コース。
み「白タクの分は、わたしたちの奢りってこと?」
律「そうじゃなきゃ、意味ないわよ。
いいわね。
聞いてみるわよ。
あの~」
爺「何やら、密談でしたな」
律「失礼ですが……。
今日、これからのご予定は、ございますか?」
爺「いえ、特に。
うちに帰って、1杯やるだけですな」
律「奥様はもう、夕食の支度とか、されてるんでしょうか」
爺「そんな気の利いた者はおりませんがな。
気楽な一人暮らしです」
↑同感です。わたしの老後も、こうなるんだろうな。
み「逃げられたわけ?」
律「こら!」
爺「ははは、当たりです。
熟年離婚というやつですな。
定年退職して、わたしが一日中家にいるようになったら……。
向こうの方が、鬱っぽくなっちゃいまして」
爺「こういうボランティアガイドみたいなことを、ハナっからやってれば良かったんですが……。
定年退職した直後は、何していいかわかりませんでね。
町内のつきあいも無かったですし」
↑これから、町内会の草取りが始まります。
爺「幸いにというか、不幸にもというか……。
子供がいなかったこともあって、離婚に反対する者もおりませんでね。
あっさりしたもんでした」
律「はぁ」
爺「というわけで、わたしが何時に帰ろうが……。
心配する者も、待ってる者もおりません」
↑ご主人の帰りを待つワンコ。こんな待たれ方をしたら、帰らずにはおれませんね。
律「それでしたら、これから夕食をご一緒していただけませんか?
送っていただいたお礼をさせてください」
爺「いやいや。
これは、わたしが好きでやったことですから。
一人で帰っても、ガソリン代に変わりはありませんよ」
↑最近、ほんとに高いですよね。わたしのパッソは、年に3回くらいしか給油しないのですが、ガソリンを入れた月は財布が苦しくなります。
爺「気にしないでください」
律「それじゃ、わたしたちの気が済みません」
み「わたしは済むけど」
律「あんたは黙ってなさい!
わたしたち青森は初めてで、お店も知らないんです。
どこか、ご案内いただけるとありがたいんですけど」
爺「そうですか。
そこまで言っていただいているのを断るのも……。
なんだか無粋ですな。
わかりました。
安くて美味しい店にご案内しましょう」
律「ありがとうございます」
爺「ところで、今日の宿は、どのあたりですか?」
律「どこよ?」
み「えーっと。
予約のメールを、印刷してあったはず。
あった。
『ハイパーホテルズパサージュ』」
律「すごい名前のホテルね。
それって、ビジネスホテルなの?」
み「そうだよ」
爺「あぁ。
いい宿をお選びですな。
場所も、青森駅前ですね」
み「さすが、白タク。
よく知ってるな。
ひょっとして、契約してる?
一人送りこんだら、いくらとか」
爺「してませんがな。
そういう怪しいホテルじゃありませんよ。
『楽天トラベルアワード』を受賞してますから」
2012年、2013年と、『東北エリア ビジネス・シティ部門』で、『お客さまアンケート大賞』を受賞してるホテルです(参照)。
み「さすが、わたしも見る目があるな」
律「知らなかったの?」
み「知りまへんがな」
律「じゃ、どうしてそこにしたのよ?」
み「『まっぷる』に広告が載ってた。
青森駅からも近かったしね」
律「見る目もへったくれも無いじゃない」
み「ホームページを見れば、いいホテルかどうか、たいがいわかります」
律「結果オーライのくせに」
爺「そろそろ、青森市街に入りましたよ」
み「おー。
なかなかに都会ではないか」
↑新潟市より都会っぽいです。
爺「やっぱり、東北新幹線が伸びたのが大きいですね」
み「でも、青森市って、雪がスゴいよね」
爺「県庁所在地では、日本一でしょうね。
一冬で、8メートル近く降るんですよ」
み「そんなに!
ビルごと埋まってしまうではないか」
↑ほんとに埋まってしまいそうです。
爺「これは、累積の降雪量です。
積雪量じゃありませんよ」
み「なんだ。
でも、それにしてもスゴいな」
↑新潟市の、4倍以上です。このグラフを見ても、新潟市の降雪量が、近隣地域に比べて少ないのがわかります。
爺「日本海を渡って来た湿った風が、八甲田山系にぶつかって、麓の青森に大雪を降らせるんです」
↑青森市街のすぐ背後に聳える八甲田山。
み「冬の青森旅行は考えものだな。
雪の加減でダイヤが乱れたら、計画がめちゃめちゃになりかねん」
爺「在来線の時代は、ほんとそうでしたね。
その点、新幹線はまず遅れませんから」
み「在来線がダメなら、青森駅で足止めじゃん」
爺「ま、それもそうですが」
み「その点、パサージュなら駅前だから、ホテルにだけは入れるわけだ」
爺「新幹線は、『青森駅』には停まりませんよ」
↑味がありますね。地方の駅は、こうでなきゃ。新潟駅と似てます。
み「ありゃ。
そうなの?」
爺「『新青森駅』です」
↑格好良いけど、旅情はゼロです。
爺「『青森駅』は、青函連絡船と直結するために……。
港に突き出るみたいな形で、行き止まってますからな」
爺「ま、『新青森駅』とは、奥羽本線で一駅ですけどね」
爺「これから越えるのが、その奥羽本線を跨ぐ跨線橋です」
み「おー、都会ではないか。
ものすごい大都会に見えるね。
なにしろ、ずーっと、ど田舎ばっかりだったから」
爺「一応、人口は30万人ありますから」
↑どう見ても、新潟市より都会に見える。
み「なるほど。
新潟県第2の都市、長岡市と同じくらいだな。
それなら、そこそこ都会だよ」
爺「さて、もうすぐ着きますぞ。
今日ご案内するお店は、5時から始まってるんですが……。
わたし、クルマを家に置いてきていいですか?
青森駅前の駐車場に一晩置くと、けっこう取られますので。
なに、30分もしないで戻ってこれます」
律「どうぞどうぞ。
わたしたち、ホテルに荷物を下ろして、一休みしてますから」
爺「すみませんな。
さて、着きましたぞ。
これが、『ハイパーホテルズパサージュ』です」
み「おー、ビルではないか」
律「当たり前でしょ」
爺「30分後にお迎えに上がります」
律「ロビーでお待ちすればよろしいですね」
爺「あ、このホテルのフロントは、3階ですのでね。
ほら、そこに広場があるでしょ。
『パサージュ広場』と云います」
律「ホテルの敷地なんですか?」
爺「いえいえ。
青森市の施設です。
パサージュ広場が整備されたのは、平成12年ですからな」
↑正面に見えるビルが、『ハイパーホテルズパサージュ』です。
爺「その後で、となりに出来たホテルが名前を拝借したということでしょう」
み「名前を勝手に拝借していいの?」
爺「『パサージュ』ってのは、フランス語そのまんまで、“小径(こみち)”という意味だそうです」
み「なるほど。
役所の得意な造語じゃなかったわけね」
爺「そうなります」
↑こちらは、港区南青山にある複合施設『パサージュ青山』。
爺「お店がたくさん見えるでしょ」
爺「あれは、青森市の商業ベンチャー支援事業に応募して出店してるんです」
み「面白そうだね」
律「荷物置いたら、見てみようか」
爺「みんな飲食店ですよ。
食べないでくださいね。
これからご案内するんですから」
律「わかりました」
爺「それじゃ、30分後に。
お天気で良かったですな」
律「ほんとに。
それじゃ、お願いします。
お待ちしております」
律「フロントは3階だっておっしゃってたわね」
み「1,2階はテナントビルみたいだね」
↓入り口は、こんな感じ。
フ「いらっしゃいませ」
↑この場所は、フロントではないと思われます。
↓フロントカウンターは、こんな感じです。
み「予約の、Mikikoです(ちゃんと苗字を告げましょう)」
フ「お待ちしておりました。
お二人様ですね。
あの~」
み「何か?」
フ「受けたまっておりますのは、ダブルルームなのですが……」
↑パジャマが備え付けです。
フ「よろしかったでしょうか?」
み「もちろん、よろしかったです」
律「ちょっと!」
み「何よ?」
律「何でダブルなんか予約したのよ!」
み「ツインより安いから」
律「安いって、いくら?」
み「500円」
律「恥かくより、500円払った方がマシだわ。
すみません。
ツインは、空いてます?」
フ「あいにく、本日はすべて満室でございます」
み「ダブルでけっこーです」
フ「ありがとうございます。
お部屋代は、先払いになっております」
み「はいはい」
フ「8,980円(通常料金)になります(お得な宿泊プランもあるようです)」
律「それって、1人分ですか?」
フ「いいえ。
1室お二人様の料金になります」
律「安いわね」
み「だしょー。
しかも、朝食も込みだよ」
律「ほんとに?」
み「ですよね?」
律「はい。
朝食は、この階にあります朝食コーナーで、6時半から9時半までとなります」
フ「ご宿泊者のみなさまには、無料で提供させていただいております」
律「スゴいわね」
み「だしょー。
あの白タクも言ってたじゃない。
いいホテルだって。
じゃ、先生、払っといて」
律「なんでよ!」
み「こんなとこで割り勘してたらみっともないでしょ。
後で精算するから」
律「ぜったい忘れないからね」
み「ケチ女」
律「なんだと?」
み「何でもありんせん」
律「クレジットカード、使えます?」
フ「はい、承ります」
律「それじゃ、これで」
↑こういう持ち方をしてはいけません。
フ「お預かりします。
お支払いは、1回でよろしかったですか?」
み「24回で。
ケチなので」
律「あんたは黙ってなさい。
1回でお願いします」
フ「ありがとうございます。
それでは、こちらに暗証番号をご入力ください」
律「はい。
ちょっと、覗かないでよ。
マナーを知らない人ね」
み「へいへい」
ピポパポ。
フ「ありがとうございました。
こちら、領収書と……。
お部屋のキーになります」
律「ありがとう」
み「門限、あります?」
フ「ございませんので、青森の夜を心ゆくまでご堪能ください」
↑『駅前銀座』。さすが雪国。街路に屋根があります。
フ「でも、チェックアウトは、11時までにお願いしますね」
律「けっこう、ゆっくりでいいんですね」
フ「はい。
お時間まで、お寛ぎください」
律「寝坊できるわね」
み「パカモン。
そんなに寝てたら、スケジュールがこなせんわい。
日本人の旅行には、寛いでる時間なんて無いんです。
朝から晩まで駆けずり回るの」
↑ツアー中は、1日、16時間くらい働くそうです。
み「第一、朝食が6時半から9時半までなんだから……。
寝坊したら、食べ損ねるわよ。
7時過ぎたら混むだろうし……。
もっと後だと、料理も少なくなってくるんじゃない?
ゆったりと楽しむには、6時半かっきりに乗りこむしかないわ。
なにせタダなんだから、戦いよ。
これがほんとのバイキング」
律「さもしい人」
み「先生が起きなかったら、置いてくからね。
競争相手が一人減るわけだから」
律「なんだか、そんなとこに食べに行くの、イヤになっちゃう」
み「じゃ、今夜がっつり飲んで、二日酔いになれば?
食べなくて済むよ」
律「ま、休日の朝は、たいてい食べないからね。
そうなるかも。
でも、今夜の払いは、完全に割り勘よ。
飲んでも飲まなくても、3人分を2人で折半。
セーブして飲んでたら、割り勘負けするわよ」
み「くそ!
負けてたまるか」
律「あんたがわたしと張り合ったら、ぜったい二日酔いだわ。
朝食なんか食べれないんだから」
み「意地でも食う。
食った後に、吐けばいい」
律「呆れた女。
ところで、何階?」
み「ホークス」
律「何よ、それ?」
み「プロ野球のソフトバンクは……。
昔、南海ホークスというチームだったの」
↑1938年~1988年。
律「ダイエーだったんじゃない?」
み「その昔。
鉄道会社が、こぞってプロ球団を持ってた時代の話。
今は、阪神と西武だけになっちゃったからね」
律「ダイエーのときは、よく覚えてるわ。
王監督だったでしょ」
↑1995年~2008年(こんなに長く監督だったんですね)。
み「ふむ。
しかし、スーパーダイエーの名前も、いよいよ消えちゃうね」
↑横浜市港南区『港南台店』。
律「そうなの?」
み「イオンの完全子会社になるらしいよ」
↑わたしの家からも近い、イオン『新潟南店』。
律「ふーん」
み「諸行無常を感じますなぁ。
ダイエーの新潟店は、ダイエー店舗の中で、日本一の売上を誇ってたことがあるんだ」
↑なんだか、こんな店があったということが、夢のように思えます。
律「ほんと?」
み「1980年代。
わたしの子供のころ。
たまに、親に連れられて行ったけど、通路を歩けないほどの人混みだった」
律「今は?」
み「とっくに閉店してますがな」
↑現在は、『LoveLa万代』という商業施設になってます。
律「あら」
み「イトーヨーカドーの大店舗も無くなって、区役所が入ってる」
↑新潟市東区役所。かつては、イトーヨーカドーの大規模店舗でした。駐車場が大きいので、区民は便利なようです。
み「今や、イオンの天下ですな。
さて、部屋は何階か、当ててみない?」
律「当たったら?」
み「もちろん、宿代は、わたしが全額払う」
律「外れたら?」
み「先生が払うに決まってるでしょ」
律「何階まであるの?」
み「客室は、4階から11階」
律「確率、8分の1じゃないの!
こんなバカな賭けに乗れるわけないでしょ」
み「ケチ」
律「さ、エレベーターが来たわよ。
乗った乗った」
み「賭けに乗った?」
律「エレベーターに乗るの」
み「つまらんのぅ」
律「早く、ボタン押しなさいよ」
み「はいな」
律「やっぱり、賭けに乗る。
8階」
み「ふっ……。
かかったな。
お主の考えそうなことだわい。
8階を押したのは、フェイントなのじゃ。
ホントは、9階でーす」
律「このアマ!」
み「じゃ、宿代、そっち持ちってことで」
律「卑怯者!
今のは無しよ」
み「『福助、盆に帰らず』」
↑中山道『柏原宿歴史館』にあるそうです。ちと気味悪いですね。
律「何、それ?」
み「福助は、お盆に帰省しなかったという格言じゃ」
↑バングラデシュの帰省列車だとか。↓なぜか、歌川国芳の『寄せ絵』を連想してしまいました。
律「どういう意味よ?」
み「一度こぼれた水は、お盆に戻すことが出来ないという意味です」
律「それは、『覆水盆に返らず』でしょ」
律「間違ったから、さっきの賭けは無し」
み「どういう理屈じゃ!
間違ったんじゃなくて、ボケただけでしょ」
↑新潟県では毎春、日本ボケ協会主催の『日本ボケ展』が開催されます。
律「とにかく、部屋代は折半ね。
払ってよ、5,000円」
み「ドサクサに紛れて、とんでもねーこと言いますな。
部屋代は、8,980円でしょ。
半額なら、4,490円」
律「じゃ、4,500円でいいわよ」
み「だから、何でわたしの方が多いの!
信じられない女。
えーっと。
ここだね。
それでは、オ~プン」
律「……」
み「なに立ち尽くしてるのよ」
律「ベッドが、部屋のほとんどを占めてる」
み「当たり前でしょ。
ダブルベッドなんだから」
律「生々しすぎるわ」
み「これだけ見ると、狭く感じちゃうけど……。
実は、わけがあるんです」
律「何よ?」
み「こっち来て。
ほら」
律「あら。
ユニットバスじゃ無いのね」
み「トイレが独立しておるのです。
これなら、1人がお風呂入ってるとき、トイレを我慢しなくていいでしょ」
律「そういう理由で、独立してるわけ?
そんなら、シングルルームは、ユニットバス?」
み「全室、別々よ」
律「じゃ、違う理由じゃないのよ」
ここで余談。
ユニットバスを「トイレとお風呂が一体」と思っている人も多いかと思います。
かくいうわたしがそうでした。
さきほどの会話を書いたあと、ふと疑問に思い、調べてみたのです。
違ってましたね。
本来は、「天井、壁、床が一体となっているお風呂」をユニットバスと云うそうです。
↑設置されたユニットバス
ちなみに、「お風呂と洗面台とトイレが一緒」のものは、3点ユニット。
「お風呂と洗面台だけ一緒」のものは、2点ユニット。
↑こういうのは、見たことがありませんでした。
『ハイパーホテルズパサージュ』は、バス、トイレ、洗面台、すべて別れたセパレートタイプになります。
ちなみに、わたしが東京で、最後に住んでた賃貸マンションは、3点ユニットでした。
1人暮らしなので、不便はまったく感じませんでした。
むしろ、お掃除が楽で助かりました。
シャワーを使って、トイレの方の床まで流せるんですから。
↑おしっこのハネる男性は、特にそうだと思います。
律「洗面台まで別なのね」
み「1人が歯を磨いてるとき、トイレを我慢しなくていいのです」
律「なんでそう、トイレの我慢ばっかり気にするの?」
み「一つしか無いトイレに誰か入ってると、不安にかられるでしょ?」
律「どんな?」
み「今、急に便意を催したら、って。
トイレのドアにすがって、震える手でノックすることを想像するだけで……。
たまらなく不安になるのです」
律「理解不能だわ」
み「わたしは、1日に最低3回、多いときは5回くらい、うんこをするのだ」
律「何でよ?
み「出そうになるからに決まってるでしょ」
律「1回で済ませられないの?」
み「あのね。
腸は、長ーい管なわけ。
うんこのカタマリは、順繰りに押し出されてくるのです」
↑使ってるのは、『ソーセージメーカー』という道具です。
律「消化器科で見てもらった方がいいんじゃないの?
いや、むしろ神経科かもね。
過敏性大腸症候群の一種かも」
み「でも、下痢じゃないよ。
固形便がモリモリと出る」
律「あー、嫌になってきた。
何で旅先のホテルで、こんな話してなきゃならないわけ?」
み「先生が理由を聞いたからでしょ。
ところで、どうする?
さっき、30分後って言ってたから、あと20分くらいしかないけど。
お風呂、入る?」
↑シャンプー、リンス、ボディソープが備え付けです。
律「わたしはいいわ。
メイクし直してる時間ないから。
Mikiちゃん、入れば?」
み「そのスキに、うんこをする気だな?」
↑もちろん、洗浄便座付です。
律「しないわよ!」
み「わたしもパス」
律「じゃ、時間まで、さっきの広場を見てようか」
み「そうしますか。
リュックは置いてこっと。
あー、やっぱり手ぶらは楽ちんだな」
律「財布、忘れないでよ」
み「また、カードで払ってくれればいいじゃん」
律「カードが使えるお店か、わからないじゃない。
そう言えば……。
部屋代の半分、早く払ってよ」
み「先生のカード、締め日はいつ?」
律「何それ?」
み「知らないの?
カードの利用料は、1ヶ月単位で引き落とされるの。
その1ヶ月の計算期間が、いつからいつまでかって聞いてるわけ」
律「そんなの、1日から月末までじゃないの?」
み「カードによって違うの。
しかも!
引き落とされるのは、さらにその翌月になります」
↑案外、覚えてない人が多いもの。
み「わたしが、今使ってる2種類のカードでは……。
月末締めの翌月27日払いと、15日締めの翌月10日払い。
つまり、さっき先生が払ったホテル代が、先生の口座から落ちるのは……。
間違いなく来月以降です」
律「だから何よ?」
み「先生は、まだホテル代を払ってないってこと」
律「払ったじゃないの」
み「クレジット払いでしょ。
お財布から、現金は減ってないじゃない。
ここで、わたしが現金で半分を払えば……。
先生のお財布は、現金が増えることになる」
↑こんなには増えません。
律「仕方ないじゃないの」
み「不合理です。
だから、わたしが先生に支払う日は……。
先生の口座から、ホテル代が引き落とされた日とします」
律「いつよ?」
み「自分のカードでしょ。
通帳見れば、わかるわよ。
引き落とし日を教えてちょうだい」
律「どうやって払うつもり?
東京まで持ってくるの?」
み「アホ言いなさんな。
振り込みますよ。
ただし、手数料差っ引きでね」
律「何よそれ。
手数料くらい、自分で持ちなさいよ」
み「手数料引かれるのが嫌なら、集金に来てちょうだい」
律「新潟まで集金に行けるわけないでしょ」
↑1957(昭和32)年公開。原作は、井伏鱒二の同名小説。
み「だから、支払い方がその手間を省いてやってるわけだから……。
手数料引かれて当たり前なの。
それなのに!
最近の取引業者は、バカが多くて……。
『手数料は、お客さまの負担でお願いします』なんて、平気で書いてくる。
これは、失礼極まりないことなのよ。
『引かれるのが嫌なら、集金に来い!』って話よ。
先生、何銀行?」
律「茗荷銀行だけど」
み「あ、その支店なら新潟にもあるから、そこのATMから振り込んであげる。
3万円未満だから、手数料は324円だね。
振込金額は、8,980円÷2-324円で、4,166円になります」
律「納得できません。
現金で貰えば、324円引かれる必要なんてないじゃないの。
やっぱり、今払ってよ」
み「心底、ケチだね」
律「だって、銀行にみすみす324円取られる必要はないじゃないの」
み「さすれば、集金に来たまえ」
律「寝こんだあと、財布から抜いてやる」
み「あのな。
それは、れっきとしたドロボーですぞ」
サクラが500本ほど植わってまして……」
爺「『青森春まつり』の会場にもなってます」
み「ほー。
サクラはこの時期、どうしようも無いな。
あとは、何があるの?」
爺「とにかく広大ですからね。
『ピクニック広場』とか、いろいろありますよ」
↑なぜか、人のいる画像がほとんど見つからない公園です。
爺「あ、そうそう。
野木和湖という湖もあります」
み「ここも、ダム湖か?」
爺「確かに人造湖ですが、ダム湖ではありません。
もともと、灌漑用溜池として作られたものを拡張したんですね。
釣りの名所でもありますよ。
昔からヘラブナ釣りで有名でしたが……」
爺「最近は、ブラックバスが盛んみたいですね。
寄ってみますか?」
み「そんな広いとこ、これから寄ったら、夜になっちまうだろ」
爺「夜になったらなったで、また面白いですよ」
み「何が?」
爺「実は昔……。
ここで、ある事件があったんです。
湖のほとりでキャンプをしていた若者たちが……。
全員、非業の最期を遂げたのです!」
み「もうええわい!
早く、街に降りてちょ」
爺「ははは。
怖がりですね」
隣の先生が、袖を引っ張ってきました。
↑袖釣込腰(そでつりこみごし)という技だそうです。
み「なに?
おしっこ?」
律「違うわよ。
ちょっと耳を貸して」
み「賃料、先払いになります」
律「早く貸せ!」
み「痛い痛い痛い」
み「引っ張らなくてもいいでしょ。
千切れるかと思った」
律「やっぱり……。
いくらなんでも、ここまでタダ乗りしたんじゃ申し訳ないわよ」
み「電車代が、大幅に浮いたからね」
律「いくらくらい、浮いたのよ?」
み「えーっと……。
旅程表に書いてきたはず。
あった、あった」
み「津軽鉄道の『金木』から『津軽五所川原』が、550円。
JRの『五所川原』から、『青森』が、970円。
合計、1,520円だね」
律「2人で、3,000円じゃない」
み「けっこう、デカいね」
↑ケンタッキーフライドチキンなら、このくらい(12ピース半)。ぜったい、一人では食えません。
律「でしょ。
といって、現金をお渡しするのも、なんだか失礼だしさ」
↑この『御車代』は、意味が違いますが。
み「金払ったら、本物の白タクになっちゃうわな」
律「今日のホテルって、夕食付き?」
み「うんにゃ。
ビジネスホテルだからね。
旅先じゃ、やっぱり街に出なきゃでしょ」
律「お店、どこか予約してあるの?」
み「わたしがそんなことするはずないでしょ。
足の向くまま、気の向くまま……。
『おんな酒場放浪記』でござんす」
律「何それ?」
み「BS-TBSの番組。
おもろいよ」
律「あのさ、夕食、お誘いしない?」
み「誰を?」
律「決まってるでしょ!」
み「白タクか」
律「一人前、3,000円くらいの料理なら、失礼じゃないでしょ」
↑富山駅前『鉄板焼 シェフ小玉』さんの3,000円コース。
み「白タクの分は、わたしたちの奢りってこと?」
律「そうじゃなきゃ、意味ないわよ。
いいわね。
聞いてみるわよ。
あの~」
爺「何やら、密談でしたな」
律「失礼ですが……。
今日、これからのご予定は、ございますか?」
爺「いえ、特に。
うちに帰って、1杯やるだけですな」
律「奥様はもう、夕食の支度とか、されてるんでしょうか」
爺「そんな気の利いた者はおりませんがな。
気楽な一人暮らしです」
↑同感です。わたしの老後も、こうなるんだろうな。
み「逃げられたわけ?」
律「こら!」
爺「ははは、当たりです。
熟年離婚というやつですな。
定年退職して、わたしが一日中家にいるようになったら……。
向こうの方が、鬱っぽくなっちゃいまして」
爺「こういうボランティアガイドみたいなことを、ハナっからやってれば良かったんですが……。
定年退職した直後は、何していいかわかりませんでね。
町内のつきあいも無かったですし」
↑これから、町内会の草取りが始まります。
爺「幸いにというか、不幸にもというか……。
子供がいなかったこともあって、離婚に反対する者もおりませんでね。
あっさりしたもんでした」
律「はぁ」
爺「というわけで、わたしが何時に帰ろうが……。
心配する者も、待ってる者もおりません」
↑ご主人の帰りを待つワンコ。こんな待たれ方をしたら、帰らずにはおれませんね。
律「それでしたら、これから夕食をご一緒していただけませんか?
送っていただいたお礼をさせてください」
爺「いやいや。
これは、わたしが好きでやったことですから。
一人で帰っても、ガソリン代に変わりはありませんよ」
↑最近、ほんとに高いですよね。わたしのパッソは、年に3回くらいしか給油しないのですが、ガソリンを入れた月は財布が苦しくなります。
爺「気にしないでください」
律「それじゃ、わたしたちの気が済みません」
み「わたしは済むけど」
律「あんたは黙ってなさい!
わたしたち青森は初めてで、お店も知らないんです。
どこか、ご案内いただけるとありがたいんですけど」
爺「そうですか。
そこまで言っていただいているのを断るのも……。
なんだか無粋ですな。
わかりました。
安くて美味しい店にご案内しましょう」
律「ありがとうございます」
爺「ところで、今日の宿は、どのあたりですか?」
律「どこよ?」
み「えーっと。
予約のメールを、印刷してあったはず。
あった。
『ハイパーホテルズパサージュ』」
律「すごい名前のホテルね。
それって、ビジネスホテルなの?」
み「そうだよ」
爺「あぁ。
いい宿をお選びですな。
場所も、青森駅前ですね」
み「さすが、白タク。
よく知ってるな。
ひょっとして、契約してる?
一人送りこんだら、いくらとか」
爺「してませんがな。
そういう怪しいホテルじゃありませんよ。
『楽天トラベルアワード』を受賞してますから」
2012年、2013年と、『東北エリア ビジネス・シティ部門』で、『お客さまアンケート大賞』を受賞してるホテルです(参照)。
み「さすが、わたしも見る目があるな」
律「知らなかったの?」
み「知りまへんがな」
律「じゃ、どうしてそこにしたのよ?」
み「『まっぷる』に広告が載ってた。
青森駅からも近かったしね」
律「見る目もへったくれも無いじゃない」
み「ホームページを見れば、いいホテルかどうか、たいがいわかります」
律「結果オーライのくせに」
爺「そろそろ、青森市街に入りましたよ」
み「おー。
なかなかに都会ではないか」
↑新潟市より都会っぽいです。
爺「やっぱり、東北新幹線が伸びたのが大きいですね」
み「でも、青森市って、雪がスゴいよね」
爺「県庁所在地では、日本一でしょうね。
一冬で、8メートル近く降るんですよ」
み「そんなに!
ビルごと埋まってしまうではないか」
↑ほんとに埋まってしまいそうです。
爺「これは、累積の降雪量です。
積雪量じゃありませんよ」
み「なんだ。
でも、それにしてもスゴいな」
↑新潟市の、4倍以上です。このグラフを見ても、新潟市の降雪量が、近隣地域に比べて少ないのがわかります。
爺「日本海を渡って来た湿った風が、八甲田山系にぶつかって、麓の青森に大雪を降らせるんです」
↑青森市街のすぐ背後に聳える八甲田山。
み「冬の青森旅行は考えものだな。
雪の加減でダイヤが乱れたら、計画がめちゃめちゃになりかねん」
爺「在来線の時代は、ほんとそうでしたね。
その点、新幹線はまず遅れませんから」
み「在来線がダメなら、青森駅で足止めじゃん」
爺「ま、それもそうですが」
み「その点、パサージュなら駅前だから、ホテルにだけは入れるわけだ」
爺「新幹線は、『青森駅』には停まりませんよ」
↑味がありますね。地方の駅は、こうでなきゃ。新潟駅と似てます。
み「ありゃ。
そうなの?」
爺「『新青森駅』です」
↑格好良いけど、旅情はゼロです。
爺「『青森駅』は、青函連絡船と直結するために……。
港に突き出るみたいな形で、行き止まってますからな」
爺「ま、『新青森駅』とは、奥羽本線で一駅ですけどね」
爺「これから越えるのが、その奥羽本線を跨ぐ跨線橋です」
み「おー、都会ではないか。
ものすごい大都会に見えるね。
なにしろ、ずーっと、ど田舎ばっかりだったから」
爺「一応、人口は30万人ありますから」
↑どう見ても、新潟市より都会に見える。
み「なるほど。
新潟県第2の都市、長岡市と同じくらいだな。
それなら、そこそこ都会だよ」
爺「さて、もうすぐ着きますぞ。
今日ご案内するお店は、5時から始まってるんですが……。
わたし、クルマを家に置いてきていいですか?
青森駅前の駐車場に一晩置くと、けっこう取られますので。
なに、30分もしないで戻ってこれます」
律「どうぞどうぞ。
わたしたち、ホテルに荷物を下ろして、一休みしてますから」
爺「すみませんな。
さて、着きましたぞ。
これが、『ハイパーホテルズパサージュ』です」
み「おー、ビルではないか」
律「当たり前でしょ」
爺「30分後にお迎えに上がります」
律「ロビーでお待ちすればよろしいですね」
爺「あ、このホテルのフロントは、3階ですのでね。
ほら、そこに広場があるでしょ。
『パサージュ広場』と云います」
律「ホテルの敷地なんですか?」
爺「いえいえ。
青森市の施設です。
パサージュ広場が整備されたのは、平成12年ですからな」
↑正面に見えるビルが、『ハイパーホテルズパサージュ』です。
爺「その後で、となりに出来たホテルが名前を拝借したということでしょう」
み「名前を勝手に拝借していいの?」
爺「『パサージュ』ってのは、フランス語そのまんまで、“小径(こみち)”という意味だそうです」
み「なるほど。
役所の得意な造語じゃなかったわけね」
爺「そうなります」
↑こちらは、港区南青山にある複合施設『パサージュ青山』。
爺「お店がたくさん見えるでしょ」
爺「あれは、青森市の商業ベンチャー支援事業に応募して出店してるんです」
み「面白そうだね」
律「荷物置いたら、見てみようか」
爺「みんな飲食店ですよ。
食べないでくださいね。
これからご案内するんですから」
律「わかりました」
爺「それじゃ、30分後に。
お天気で良かったですな」
律「ほんとに。
それじゃ、お願いします。
お待ちしております」
律「フロントは3階だっておっしゃってたわね」
み「1,2階はテナントビルみたいだね」
↓入り口は、こんな感じ。
フ「いらっしゃいませ」
↑この場所は、フロントではないと思われます。
↓フロントカウンターは、こんな感じです。
み「予約の、Mikikoです(ちゃんと苗字を告げましょう)」
フ「お待ちしておりました。
お二人様ですね。
あの~」
み「何か?」
フ「受けたまっておりますのは、ダブルルームなのですが……」
↑パジャマが備え付けです。
フ「よろしかったでしょうか?」
み「もちろん、よろしかったです」
律「ちょっと!」
み「何よ?」
律「何でダブルなんか予約したのよ!」
み「ツインより安いから」
律「安いって、いくら?」
み「500円」
律「恥かくより、500円払った方がマシだわ。
すみません。
ツインは、空いてます?」
フ「あいにく、本日はすべて満室でございます」
み「ダブルでけっこーです」
フ「ありがとうございます。
お部屋代は、先払いになっております」
み「はいはい」
フ「8,980円(通常料金)になります(お得な宿泊プランもあるようです)」
律「それって、1人分ですか?」
フ「いいえ。
1室お二人様の料金になります」
律「安いわね」
み「だしょー。
しかも、朝食も込みだよ」
律「ほんとに?」
み「ですよね?」
律「はい。
朝食は、この階にあります朝食コーナーで、6時半から9時半までとなります」
フ「ご宿泊者のみなさまには、無料で提供させていただいております」
律「スゴいわね」
み「だしょー。
あの白タクも言ってたじゃない。
いいホテルだって。
じゃ、先生、払っといて」
律「なんでよ!」
み「こんなとこで割り勘してたらみっともないでしょ。
後で精算するから」
律「ぜったい忘れないからね」
み「ケチ女」
律「なんだと?」
み「何でもありんせん」
律「クレジットカード、使えます?」
フ「はい、承ります」
律「それじゃ、これで」
↑こういう持ち方をしてはいけません。
フ「お預かりします。
お支払いは、1回でよろしかったですか?」
み「24回で。
ケチなので」
律「あんたは黙ってなさい。
1回でお願いします」
フ「ありがとうございます。
それでは、こちらに暗証番号をご入力ください」
律「はい。
ちょっと、覗かないでよ。
マナーを知らない人ね」
み「へいへい」
ピポパポ。
フ「ありがとうございました。
こちら、領収書と……。
お部屋のキーになります」
律「ありがとう」
み「門限、あります?」
フ「ございませんので、青森の夜を心ゆくまでご堪能ください」
↑『駅前銀座』。さすが雪国。街路に屋根があります。
フ「でも、チェックアウトは、11時までにお願いしますね」
律「けっこう、ゆっくりでいいんですね」
フ「はい。
お時間まで、お寛ぎください」
律「寝坊できるわね」
み「パカモン。
そんなに寝てたら、スケジュールがこなせんわい。
日本人の旅行には、寛いでる時間なんて無いんです。
朝から晩まで駆けずり回るの」
↑ツアー中は、1日、16時間くらい働くそうです。
み「第一、朝食が6時半から9時半までなんだから……。
寝坊したら、食べ損ねるわよ。
7時過ぎたら混むだろうし……。
もっと後だと、料理も少なくなってくるんじゃない?
ゆったりと楽しむには、6時半かっきりに乗りこむしかないわ。
なにせタダなんだから、戦いよ。
これがほんとのバイキング」
律「さもしい人」
み「先生が起きなかったら、置いてくからね。
競争相手が一人減るわけだから」
律「なんだか、そんなとこに食べに行くの、イヤになっちゃう」
み「じゃ、今夜がっつり飲んで、二日酔いになれば?
食べなくて済むよ」
律「ま、休日の朝は、たいてい食べないからね。
そうなるかも。
でも、今夜の払いは、完全に割り勘よ。
飲んでも飲まなくても、3人分を2人で折半。
セーブして飲んでたら、割り勘負けするわよ」
み「くそ!
負けてたまるか」
律「あんたがわたしと張り合ったら、ぜったい二日酔いだわ。
朝食なんか食べれないんだから」
み「意地でも食う。
食った後に、吐けばいい」
律「呆れた女。
ところで、何階?」
み「ホークス」
律「何よ、それ?」
み「プロ野球のソフトバンクは……。
昔、南海ホークスというチームだったの」
↑1938年~1988年。
律「ダイエーだったんじゃない?」
み「その昔。
鉄道会社が、こぞってプロ球団を持ってた時代の話。
今は、阪神と西武だけになっちゃったからね」
律「ダイエーのときは、よく覚えてるわ。
王監督だったでしょ」
↑1995年~2008年(こんなに長く監督だったんですね)。
み「ふむ。
しかし、スーパーダイエーの名前も、いよいよ消えちゃうね」
↑横浜市港南区『港南台店』。
律「そうなの?」
み「イオンの完全子会社になるらしいよ」
↑わたしの家からも近い、イオン『新潟南店』。
律「ふーん」
み「諸行無常を感じますなぁ。
ダイエーの新潟店は、ダイエー店舗の中で、日本一の売上を誇ってたことがあるんだ」
↑なんだか、こんな店があったということが、夢のように思えます。
律「ほんと?」
み「1980年代。
わたしの子供のころ。
たまに、親に連れられて行ったけど、通路を歩けないほどの人混みだった」
律「今は?」
み「とっくに閉店してますがな」
↑現在は、『LoveLa万代』という商業施設になってます。
律「あら」
み「イトーヨーカドーの大店舗も無くなって、区役所が入ってる」
↑新潟市東区役所。かつては、イトーヨーカドーの大規模店舗でした。駐車場が大きいので、区民は便利なようです。
み「今や、イオンの天下ですな。
さて、部屋は何階か、当ててみない?」
律「当たったら?」
み「もちろん、宿代は、わたしが全額払う」
律「外れたら?」
み「先生が払うに決まってるでしょ」
律「何階まであるの?」
み「客室は、4階から11階」
律「確率、8分の1じゃないの!
こんなバカな賭けに乗れるわけないでしょ」
み「ケチ」
律「さ、エレベーターが来たわよ。
乗った乗った」
み「賭けに乗った?」
律「エレベーターに乗るの」
み「つまらんのぅ」
律「早く、ボタン押しなさいよ」
み「はいな」
律「やっぱり、賭けに乗る。
8階」
み「ふっ……。
かかったな。
お主の考えそうなことだわい。
8階を押したのは、フェイントなのじゃ。
ホントは、9階でーす」
律「このアマ!」
み「じゃ、宿代、そっち持ちってことで」
律「卑怯者!
今のは無しよ」
み「『福助、盆に帰らず』」
↑中山道『柏原宿歴史館』にあるそうです。ちと気味悪いですね。
律「何、それ?」
み「福助は、お盆に帰省しなかったという格言じゃ」
↑バングラデシュの帰省列車だとか。↓なぜか、歌川国芳の『寄せ絵』を連想してしまいました。
律「どういう意味よ?」
み「一度こぼれた水は、お盆に戻すことが出来ないという意味です」
律「それは、『覆水盆に返らず』でしょ」
律「間違ったから、さっきの賭けは無し」
み「どういう理屈じゃ!
間違ったんじゃなくて、ボケただけでしょ」
↑新潟県では毎春、日本ボケ協会主催の『日本ボケ展』が開催されます。
律「とにかく、部屋代は折半ね。
払ってよ、5,000円」
み「ドサクサに紛れて、とんでもねーこと言いますな。
部屋代は、8,980円でしょ。
半額なら、4,490円」
律「じゃ、4,500円でいいわよ」
み「だから、何でわたしの方が多いの!
信じられない女。
えーっと。
ここだね。
それでは、オ~プン」
律「……」
み「なに立ち尽くしてるのよ」
律「ベッドが、部屋のほとんどを占めてる」
み「当たり前でしょ。
ダブルベッドなんだから」
律「生々しすぎるわ」
み「これだけ見ると、狭く感じちゃうけど……。
実は、わけがあるんです」
律「何よ?」
み「こっち来て。
ほら」
律「あら。
ユニットバスじゃ無いのね」
み「トイレが独立しておるのです。
これなら、1人がお風呂入ってるとき、トイレを我慢しなくていいでしょ」
律「そういう理由で、独立してるわけ?
そんなら、シングルルームは、ユニットバス?」
み「全室、別々よ」
律「じゃ、違う理由じゃないのよ」
ここで余談。
ユニットバスを「トイレとお風呂が一体」と思っている人も多いかと思います。
かくいうわたしがそうでした。
さきほどの会話を書いたあと、ふと疑問に思い、調べてみたのです。
違ってましたね。
本来は、「天井、壁、床が一体となっているお風呂」をユニットバスと云うそうです。
↑設置されたユニットバス
ちなみに、「お風呂と洗面台とトイレが一緒」のものは、3点ユニット。
「お風呂と洗面台だけ一緒」のものは、2点ユニット。
↑こういうのは、見たことがありませんでした。
『ハイパーホテルズパサージュ』は、バス、トイレ、洗面台、すべて別れたセパレートタイプになります。
ちなみに、わたしが東京で、最後に住んでた賃貸マンションは、3点ユニットでした。
1人暮らしなので、不便はまったく感じませんでした。
むしろ、お掃除が楽で助かりました。
シャワーを使って、トイレの方の床まで流せるんですから。
↑おしっこのハネる男性は、特にそうだと思います。
律「洗面台まで別なのね」
み「1人が歯を磨いてるとき、トイレを我慢しなくていいのです」
律「なんでそう、トイレの我慢ばっかり気にするの?」
み「一つしか無いトイレに誰か入ってると、不安にかられるでしょ?」
律「どんな?」
み「今、急に便意を催したら、って。
トイレのドアにすがって、震える手でノックすることを想像するだけで……。
たまらなく不安になるのです」
律「理解不能だわ」
み「わたしは、1日に最低3回、多いときは5回くらい、うんこをするのだ」
律「何でよ?
み「出そうになるからに決まってるでしょ」
律「1回で済ませられないの?」
み「あのね。
腸は、長ーい管なわけ。
うんこのカタマリは、順繰りに押し出されてくるのです」
↑使ってるのは、『ソーセージメーカー』という道具です。
律「消化器科で見てもらった方がいいんじゃないの?
いや、むしろ神経科かもね。
過敏性大腸症候群の一種かも」
み「でも、下痢じゃないよ。
固形便がモリモリと出る」
律「あー、嫌になってきた。
何で旅先のホテルで、こんな話してなきゃならないわけ?」
み「先生が理由を聞いたからでしょ。
ところで、どうする?
さっき、30分後って言ってたから、あと20分くらいしかないけど。
お風呂、入る?」
↑シャンプー、リンス、ボディソープが備え付けです。
律「わたしはいいわ。
メイクし直してる時間ないから。
Mikiちゃん、入れば?」
み「そのスキに、うんこをする気だな?」
↑もちろん、洗浄便座付です。
律「しないわよ!」
み「わたしもパス」
律「じゃ、時間まで、さっきの広場を見てようか」
み「そうしますか。
リュックは置いてこっと。
あー、やっぱり手ぶらは楽ちんだな」
律「財布、忘れないでよ」
み「また、カードで払ってくれればいいじゃん」
律「カードが使えるお店か、わからないじゃない。
そう言えば……。
部屋代の半分、早く払ってよ」
み「先生のカード、締め日はいつ?」
律「何それ?」
み「知らないの?
カードの利用料は、1ヶ月単位で引き落とされるの。
その1ヶ月の計算期間が、いつからいつまでかって聞いてるわけ」
律「そんなの、1日から月末までじゃないの?」
み「カードによって違うの。
しかも!
引き落とされるのは、さらにその翌月になります」
↑案外、覚えてない人が多いもの。
み「わたしが、今使ってる2種類のカードでは……。
月末締めの翌月27日払いと、15日締めの翌月10日払い。
つまり、さっき先生が払ったホテル代が、先生の口座から落ちるのは……。
間違いなく来月以降です」
律「だから何よ?」
み「先生は、まだホテル代を払ってないってこと」
律「払ったじゃないの」
み「クレジット払いでしょ。
お財布から、現金は減ってないじゃない。
ここで、わたしが現金で半分を払えば……。
先生のお財布は、現金が増えることになる」
↑こんなには増えません。
律「仕方ないじゃないの」
み「不合理です。
だから、わたしが先生に支払う日は……。
先生の口座から、ホテル代が引き落とされた日とします」
律「いつよ?」
み「自分のカードでしょ。
通帳見れば、わかるわよ。
引き落とし日を教えてちょうだい」
律「どうやって払うつもり?
東京まで持ってくるの?」
み「アホ言いなさんな。
振り込みますよ。
ただし、手数料差っ引きでね」
律「何よそれ。
手数料くらい、自分で持ちなさいよ」
み「手数料引かれるのが嫌なら、集金に来てちょうだい」
律「新潟まで集金に行けるわけないでしょ」
↑1957(昭和32)年公開。原作は、井伏鱒二の同名小説。
み「だから、支払い方がその手間を省いてやってるわけだから……。
手数料引かれて当たり前なの。
それなのに!
最近の取引業者は、バカが多くて……。
『手数料は、お客さまの負担でお願いします』なんて、平気で書いてくる。
これは、失礼極まりないことなのよ。
『引かれるのが嫌なら、集金に来い!』って話よ。
先生、何銀行?」
律「茗荷銀行だけど」
み「あ、その支店なら新潟にもあるから、そこのATMから振り込んであげる。
3万円未満だから、手数料は324円だね。
振込金額は、8,980円÷2-324円で、4,166円になります」
律「納得できません。
現金で貰えば、324円引かれる必要なんてないじゃないの。
やっぱり、今払ってよ」
み「心底、ケチだね」
律「だって、銀行にみすみす324円取られる必要はないじゃないの」
み「さすれば、集金に来たまえ」
律「寝こんだあと、財布から抜いてやる」
み「あのな。
それは、れっきとしたドロボーですぞ」