2014.7.19(土)
律「へー。
なるほど。
いろいろ妙なことを知ってるものね。
まだ、何かない?」
み「それじゃ、一つだけ。
老中っていうと、ジサマってイメージだけど……」
↑老中ではありません。
面白い動画を発見。
↓フットサルに飛び入り参加したジサマが、凄まじいテクニックを見せます。
み「ヨボヨボじゃ、務まらなかったの。
なにしろ、城内では常に早歩きしなきゃならなかったし……。
登城のときの籠も、ほとんど全速力だったのよ」
↑老中ではありません(失礼)。
律「遅刻するから?」
み「パカモン。
あんたと一緒にすな。
将軍が急死したとか、大事が起こったときには……。
城内で小走りになったり、籠を全速力で走らせたりする必要があるでしょ」
律「当たり前じゃない」
み「わからんかの。
普段、のんびりしてて、有事の時だけ急ぎ足になったら……」
み「周りにバレちゃうでしょ。
何かあったってことが」
律「なるほど」
み「だから、周りに普段との違いを悟らせないために……。
平時から、大急ぎで歩いたり、籠を走らせたりしてたわけよ」
律「へー。
たしかに、ご老人じゃ無理ね」
み「さて、それでは、大岡越前守忠相が乗り移ったわたしが……」
み「このしじみ問題にお裁きを下します」
律「いいわよ。
奢ってあげるわ」
み「げ。
なじぇに?
気味悪る」
律「人聞きが悪いわね。
面白い話を、いっぱいしてもらったから……。
その聞き賃よ」
み「おー、それは奇特な心がけ。
今度から、毎日病院に行って、語って進ぜる」
律「お断り。
病院じゃ忙しいの。
じゃ、出ましょ。
ずいぶんと、長居したわ」
み「こんな客も、珍しかろ。
あ、ウェイトレスさん、お勘定ね。
この人が払いますから。
2人分。
おいくら?」
ウ「1,130円になります」
み「わかってんだけどね。
一応、聞いてみました。
クレジットカードは……」
ウ「やってません」
み「聞いてみただけです。
先生、現金持ってるんでしょうね?
無けりゃ、皿洗いよ」
律「ありますって。
その代わり、さっきの電車賃は、あんたの払いでチャラね」
み「電車じゃありません。
気動車です。
ま、汽車賃くらい、持ってあげますよ。
まてよ?
『津軽五所川原』から『金木』まで、1人、530円だったじゃん。
てことは、2人で、1,060円!
お昼代が、1,130円だから、70円しか違わん!
ほとんど折半じゃないか」
律「ほほ。
これがホントの大岡裁きよ」
み「オチまで付けるな」
さて、『金木駅』を出ましょう。
律「お天気が良くて、よかったわね」
み「んだなや」
律「なんでいきなり、そんな言葉遣いになるのよ」
み「津軽の風に吹かれると、自然と口を付いて出るのじゃ」
律「出ないわ」
み「それが、物書きとそうでない人の違いです。
まさに……。
『選ばれてあることの恍惚と不安とふたつ我にあり』」
律「それって、太宰の言葉?」
み「ヴェルレーヌの詩ですよ」
↑前列左端が、ポール・ヴェルレーヌ。その隣が、アルチュール・ランボー。
み「太宰の処女小説集『晩年』の冒頭に、この詩が掲げられてる」
↑これは復刻本です。
律「太宰は別にして、あんたが選ばれてあるかどうかは、大いに疑問だけど」
み「わたしがいなかったら、先生はこの世にいないの」
律「あら、それもそうね」
み「帰りの汽車賃、持って」
律「登場人物に汽車賃を払わせる作家がどこにいますか」
み「ここにいますわい」
律「じゃ、あんたは、斜陽館の入館料を持ってちょうだい」
み「良かろう。
って、待て!
入館料っていくらだ?
今、『まっぷる』で調べる。
えーっと……。
500円。
か、勝った。
汽車賃が2人分で、1,060円。
入館料が2人分で、1,000円。
60円の儲け。
『ぽっぽ家』の儲けとあわせて……。
130円。
働けど働けど、我が暮らし……」
律「何、ぶつぶつ言ってんのよ。
早く行きましょ。
どうやって行くの?
バス?」
み「歩いて行く。
7分くらいだって」
律「あらそう。
お天気もいいし、それもいいわね」
み「秋の東北って……。
お天気が良くても、ちょっと物悲しいよね」
↑初秋の金木駅。駅舎(右)は立派になりましたが、ホームの風情は変わらないようです。
律「あらそうかしら」
み「太平洋側の人にはわかりません。
これから冬を迎える寂しさが」
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
柱も庭も乾いてゐる
今日は好い天気だ
縁の下では蜘蛛の巣が
心細さうに揺れてゐる
山では枯木も息を吐く
あゝ今日は好い天気だ
路ばたの草影が
あどけない愁(かなし)みをする
これが私の故里(ふるさと)だ
さやかに風も吹いてゐる
心置なく泣かれよと
年増婦(としま)の低い声もする
あゝ おまへはなにをして来たのだと……
吹き来る風が私に云ふ
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
律「誰の詩?」
み「中原中也の『帰郷』」
↑1907年生まれ。没年は1937年。30歳でした。
み「高校のころ、よく読んだものです」
↑中也では、この詩が一番有名でしょう。
律「あ、そう」
み「つれないですな」
律「中原中也って、東北の人?」
み「うんにゃ。
確か、山口じゃなかったかな」
↑故郷の山口市には、立派な記念館が建ってます。
律「ぜんぜん違うじゃないの」
み「雰囲気。
アトモスフィアを感じたのでやんす」
↑ケムンパス、なぜか好きです。
律「道、大丈夫?
こっちでいいのよね」
み「斜陽館に行く途中に……。
『太宰治 疎開の家』ってのがあるから、そこに寄ろう」
律「あら。
斜陽館に疎開したんじゃないの?」
み「太宰にはあんまりくわしくないけど……。
もう、勘当されてたんじゃないかな?」
勘当は、1942(昭和17)年、母タネの死ののち、許されてました。
太宰が金木に疎開したのは、1945(昭和20)年のことです。
み「それに、小説の中で、斜陽館をボロクソに書いてるから……。
そこに身を寄せるのは、具合悪かったんでないの?」
律「あれは、町役場かしら?」
み「合併前の『金木町役場』だね。
今は、『五所川原市金木庁舎』になってる。
『太宰治 疎開の家』は、確かこの裏に移築されてるはず」
律「どっから移築されたの?」
み「そりゃ、斜陽館からに決まってますがな。
元々は、斜陽館の離れだったのよ」
律「なんで移築されたの?」
み「知らんわい。
諸般の事情じゃないの」
調べたらわかりました。
戦後、『斜陽館』は売却され、旅館になるわけです。
売却したのは、太宰の長兄、津島文治。
↑なかなかいい男です。モテたんじゃないでしょうか。長男は俳優になってます(津島康一)。
元もと、このお兄さんの新婚住宅として建てられたようです。
で、母屋売却の際……。
この離れだけが、文治の住居として近所に曳家移築されたんだそうです。
なぜ売ったかと言うと、お金が必要だったんだと思います。
この人は、財産のほとんどを政治家としての資金に注ぎこんだみたいです。
青森県知事を3期、衆議院議員を2期、参議院議員を2期半務めてます。
律「頼りないガイドさん」
み「ちっとは自分で考えなさい」
律「普段、考え疲れてるもの。
旅行の時くらい、脳を休めないと」
↑さぬきうどん協同組合公認ツルきゃら『うどん脳』
み「わたしも休めたいわい」
律「あんたは、普段から休めてるでしょ」
み「失敬旋盤。
そう言えば、小話をひとつ思い出した。
あるお店で、哲学者の脳みそと、なーんも考えないで生きてた女の脳みそが売りだされました」
↑乾燥脳みそ
律「そんなの売ったら犯罪じゃないの」
み「だから、小話なの!
で、値札を見ると……。
女の脳みその方が、高かった。
さて、どうしてでしょう?」
律「知らないわよ。
でも、頭の善し悪しと、標本としての価値は別モンでしょ。
あ、そうだ。
その女の人は、とても特殊な脳の病気で亡くなった。
だから、標本価値が高い」
↑有鉤条虫に寄生された脳。
み「売り買いしますのんか?
脳みそ」
↑売ってます。ただしこれは、仔羊のもの。思ったより安いです(こちら)。
律「しないわよ。
小話なんでしょ。
早くオチを言いなさい」
み「客の疑問に対し、店主答えて曰く……。
『こっちの脳みそは、新品同然なんです』」
み「『なにしろ、ぜんぜん使ってませんから』」
律「イマイチ、面白くない。
なんで太宰の生まれ故郷で、小話を聞かされなきゃならないのかしら」
み「良いではないか。
太宰には、ユーモア溢れる小品もたくさんあるし。
きっと、小話も好んだであろう。
『畜犬談』っていう小品は、記憶に残ってる」
律「でも、今の小話には笑わなかったと思うわ」
み「さよかい」
律「あ、看板が出てる」
↑これは、『斜陽館』の方向からの看板かも知れません。
律「あれじゃない?」
み「おー、こういう小ぢんまりした古い家屋って、いいもんだよね」
律「落ち着きそうね。
住んでみたいわ」
み「住んだら大変ですぞ」
律「どうして」
み「まず、冬の雪下ろし。
どうします、この屋根に雪が積もったら?」
↑雪下ろしをしたところ。
律「ほっとくしかないじゃない。
潰れないでしょ」
み「甘い。
たとえ、潰れなくても……。
大いに支障が出るのじゃ」
律「どんな?」
み「襖が開かなくなるのよ。
雪の重みで。
下手すりゃ密室です」
↑猫の手を借りても、ぜったいに開けられません。
み「朝起きたら、部屋から出られなくなってたりするわけ」
律「襖を開けておけばいいんじゃないの?」
み「寒いだろ!
ただでさえ日本家屋は寒いの。
津軽の真冬に、襖を開けて寝れますか」
↑奥の部屋が、太宰の仕事部屋だったそうです。ここで、23本の作品が執筆されました。
律「セントラルヒーティングを入れればいいんじゃない」
み「隙間だらけの日本家屋に、そんなものが付けられるか!」
律「じゃ、床暖房」
み「目の玉が飛び出るほど電気代がかかります」
み「とにかく、日本に住んだ外国人は、冬の日本家屋の寒さには驚いたみたい」
↑『小泉八雲旧居(松江市)』。ぜったいに寒かったはず。
み「向こうの家は気密性が高いから、暖房もよく効くのよ。
冬の室内は、半袖で過ごすらしいし」
律「あ、北海道もそうだって聞いたわ」
み「室温、30度くらいみたいだね。
ランニングに短パンだって」
み「北海道人が冬場、内地の家に入ると、寒くてたまらないんだって」
律「30度は、やりすぎだと思うわ」
み「わたしが、東京で最初に入ったアパートには、冷房だけのエアコンしか付いてなかった。
暖房は自前ね。
で、わたしは、冬の暖房、電気コタツだけだった」
み「車も無いし、灯油を買うのが面倒だから」
律「電気ストーブにすればいいじゃない?」
み「電気ストーブは、電気代が高いでしょ」
律「コタツだけじゃ寒いでしょうに」
み「確かにね。
部屋干しの洗濯物が凍ったりしたし……」
み「手袋して本読んでたものね」
律「そんな目にあったら、普通、ストーブ買うでしょう」
み「不思議と買う気にはならなかった。
石油ストーブの臭いが嫌いだしね。
でも、幸せだったな」
律「なんで?」
み「外が毎日晴れてるから」
律「さっきもそんなこと言ってたわね」
み「太平洋側の冬は、ほんとにうらやましい」
↑12月の日比谷公園。まだ紅葉が残ってます。
律「引っ越せばいいのに。
人生、1度しか無いのよ」
み「太平洋側は、地震が恐ろしい」
律「ま、それは確かにね。
あれだけ人間が溢れたところで大災害が起きたら……。
どうしようも無いでしょうね。
み「そんなところに津波が来たらと思うと……。
考えただけでゾッとする」
律「でも、お天気だけの話ならさ……。
何も海っぱたまで来なくてもいいんじゃない?
要は、山さえ越えればいいわけでしょ」
み「群馬とか?
ま、群馬までは津波も来ないわな。
でも、寒いでしょ。
晴れてるだけに、冬場は放射冷却が強烈なはず。
北関東の朝晩の冷え込みは、新潟以上だと思う」
律「何も群馬まで引かなくたって……。
東京でも、標高が高いところ、いくらでもあるわよ」
み「高尾山?」
↑標高は、599メートル。スカイツリーより低いんですね。
律「山に登らなくても。
多摩市なんか、確か標高100メートルくらいのはずよ」
み「ふむ。
100メートルなら、まず津波の心配は無いね」
律「人口も、都心ほど密集してないと思うし」
み「でも、引っ越すとなると……。
新潟より土地は高いでしょ」
律「土地を買うつもり?
アパートでいいんじゃない」
み「あ、そうか。
やっぱ、年取ったら、集合住宅の方が便利だよな。
万が一、雪が積もっても、雪かきしなくていいし」
律「よっぽど、雪かきにトラウマがあるわね」
み「一度やってみ。
とにかく、重労働だから」
↑最初は、ゆるゆるとやってるのですが……。そのうち、早く終えたくなって、力が入ってしまいます。汗をかくようなペースでやると、必ず腰を傷めます。
み「やっとこさ終えて、夜、痛い腰をさすりながら布団に入って……。
翌朝起きたら、また同じだけ積もってるわけ。
ほとんど賽の河原よ」
律「そんなとこ、住まなきゃいいのに」
み「わたしもそう思います。
今後、豪雪地帯の集落は、ほとんど消えてしまうんじゃないの」
律「限界集落ってやつね」
↑廃校となった小学校のようです。
み「豪雪地帯は、いっそう条件が悪いもの」
律「どこからこんな話になったのかしら?」
み「雪国でこんな日本家屋に住んだら、雪下ろしが大変だって話よ」
↑新潟県上越市。お年寄りに出来る作業ではありません。
律「そうそう。
襖が開かなくなるのよね。
そしたら、襖の下の方に扉を付けて……。
そこから出入りしたらいいんじゃない?」
み「猫か!」
律「早く入りましょうよ。
何で、建物の前であなたと漫才してなきゃならないの」
律「人が集まって来たじゃない」
み「見世物じゃありません。
散ってください。
写真を撮らないで。
サインならしてあげます」
律「いなくなっちゃったわね」
み「ふん。
わたしのサインが、将来どれだけの価値を生むか、わからんようじゃの。
鑑定団に出したら、びっくらこくんだから」
律「でも、どっから入るの?
フェンスが閉まってるじゃない。
今日、お休みなのかしら?」
み「日曜日に休むわけないでしょ。
こっちは裏口なんじゃないの?
ほら、やっぱりそうだ。
矢印が出てる。
表に回れってさ」
律「こっちは、商店街みたいよ。
どっから入るの?」
↑ストリートビューから切り取ったので、画像が歪んでます。
み「位置的には、このお店なんだけど……。
あ、やっぱりここだ」
律「裏と、ずいぶん違うわね」
み「この店が、見学の受付になってるんじゃない?」
律「じゃ、入るわよ。
あなた、入館料払う係でしょ」
み「いくら?」
律「大人500円って出てるけど」
み「待てい。
この500円は、『斜陽館』も込みなの?」
律「知らないわよ。
どこにもそんなこと書いてないみたいよ」
み「受付の人に聞いてみてよ」
律「なんでわたしが聞くのよ。
払うのはあなたでしょ」
み「『斜陽館』は払う。
でも、ここも払うとは言っておらん」
律「あなたがここに寄ろうって言い出したんじゃない」
み「記憶にございませぬ」
↓ごらんの通り、裏側とはまったく異なるたたずまい。
律「それに、もともと『斜陽館』の離れだったんだから……。
ここも、込み込みで払うべきよ」
み「そんな、“べき”は知らんわ」
↑ほんまかー? わたしには、こんな効果は現れなかった。
み「とにかく、あのおっさんに聞いてみる」
み「言葉、通じるかな?」
律「失礼よ」
み「あのー。
ニホンゴ、ワッカリマスカ?
痛てっ」
律「止めなさいって」
み「いらっしゃいませ」
み「何だ、通じるじゃん」
律「当たり前でしょ」
み「もしもし。
ちと、物をお尋ね申すが……」
律「何でそんな口調になるのよ」
み「シャイなもので」
律「ウソおっしゃい」
主「May I help you?」
↑接客業では、頭に“How”を付けるよう指導されるそうです。“How”は、熱心に耳を傾ける姿勢を表してるのだとか。
み「うわっ。
やっぱり津軽弁だ」
律「英語でしょ。
あの、この女、アイヌみたいですけど……。
日本語で大丈夫です」
み「誰がアイヌじゃ」
↑本物のアイヌには、エキゾチックな顔立ちの人が多かったようです(画像は、1920年代のアイヌ人女性)。
律「そんなら熊襲?」
↑なぜか、越後銘酒『久保田』の旗が出てますが……。福岡県大牟田市にあるお店です(人気店のようです)。
み「蝦夷(えみし)と呼べ」
↑蝦夷の親玉『アテルイ』の像(鹿島神宮所蔵)。
律「すみません。
この蝦夷が、何か聞きたいことがあるみたいなんです」
主「はぁ。
わたしは、日本語と英語と津軽弁しか出来ませんけど」
律「日本語で大丈夫です。
ほら、蝦夷、聞きなさいよ」
み「やっぱり、蝦夷はやめた」
律「じゃ、何よ?
アボリジニ?」
み「普通に日本人じゃ!
大和民族。
『やまとくにばらかすみてあるらし』」
律「頭、おかしくなったんじゃないの?」
み「先生が、いらんチャチャを入れるからでしょ。
ちょーっといいですか?」
主「あの、アンケートとかなら、ご容赦ください」
み「アンケートじゃありません。
客です。
ていうか、ひょっとしたら客になるかも知れない2人連れです」
律「スゴく怪しいですけど」
み「口を挟むな!」
律「はいはい」
み「ここに料金が500円と出てますが……。
まかりまへんか?」
↑昔は、こんな鵺のような商品がありました。これは、算盤付電卓なのか、電卓付算盤なのか……。
律「いきなり値切ってどうすんのよ。
まずは、確認でしょ。
いいわ。
わたしが聞く。
あんたに任せてると、2時間くらいかかりそう」
み「最初から、左様せい」
律「あの、ここの入館料の500円で、『斜陽館』も入れるんですか?」
主「いえ。
別料金です」
律「はい、決まり。
2,000円コースになります」
み「あっさり諦めるな」
↑「教育モチベーションカレンダー」だそうです。なんと、2日で1ページだそうです。1年で183ページもあるってことですよね。誰が考えるんだ?
み「ひとつ、お尋ね申す」
律「また、そんな口調になる」
み「建物の規模から言ったら……。
母屋の『斜陽館』の方が、圧倒的に大きいですよね」
主「はい」
み「ホワーイ?」
み「なぜ、料金、同じですか?」
律「ななた、何人よ?」
み「わからん人」
↑『一休さん』の歌詞です。「わからんちん」は、宗像弁(むなかたべん)で“わからずや”のことだそうです。
律「でも、確かにちょっと不思議です」
主「ここの料金には、案内料も含まれているんです。
内部をご案内しながら、ご説明させていただいております」
み「なるへそ。
そんなら、案内無しなら、いくら?」
主「いえ。
必ず、もれなく、ぜひとも、ご案内させていただいております」
み「早い話、聞きたくなくても500円ね」
主「すみません」
律「あなたが謝ることないわ。
こんな料金設定にした、市が悪いのよ」
み「んだなや。
今直ぐ、五所川原市長を呼べ」
↑たぶん、違う人です。
律「それじゃ、クレーマーでしょ」
主「すみませんが……。
ここは、市の施設じゃないんです」
み「じゃ、県の?
まさか、国じゃないよね?」
主「わたしの持ち家です」
み「にゃんと。
まったくの個人所有ってこと?」
主「左様です」
み「あなた、津島さん?」
主「いえ、白川と申します」
み「それじゃ、『斜陽館』とは共通料金にはならんわな」
主「ショップだけ、ご覧になりますか?
それなら無料です」
律「ショップはタダなのね」
み「ショップに入るのに金取られてたまるか」
律「とりあえず、そこを見させてもらって……。
入るかどうかは、それから考えればいいんじゃないの?」
み「そうしますか」
律「観光に来たのに、こんなとこケチったら意味無いと思うんだけど」
み「そしたら、先生が払って」
律「それとこれとは話が別」
み「じゃ、ちょっと、ショップを覗かせてもらいます」
主「どうぞどうぞ」
み「ショップって、早い話、あの人の店よね」
律「そうなるわね」
み「げ。
強烈なTシャツ」
み「これ着る勇気、ある?」
律「厳しいわね。
胸に『DAZAI』は」
↑さすが、店長は堂々と着ておられます。
み「『DASAI』の方が、まだマシだわ。
いくら?」
律「2,300円(現在は、2,365円になってます)」
み「あのおっさん、近くにいる?」
律「今、別のお客さんの相手してるみたい」
み「そんなら言わせていただきます。
高けーーーー!」
み「Tシャツに2,000円も出せるか!
ふー、すっとした」
律「あ、ここにもっと安いやつがあるわ。
1,995円(現在は売られてないようです)」
み「なんだこれ?
『好きな作家は太宰です』?」
み「信じられん」
律「ファンなら、買うんじゃない?」
み「わたしらの時代は……。
たとえ太宰が好きでも、大っぴらにそうは言えなかったもんだけど」
律「時代も変わったのよ。
ほら、トートバッグまである」
律「1,600円(現在は、1,645円のようです)」
み「何で、Tシャツより安いわけ?」
律「知らないわよ」
み「しかし……。
Tシャツにバッグって……。
どうしても、『目黒寄生虫館』を連想してしまう」
↑Tシャツ(右)とランチバッグ!(左)。
律「バンダナもあるわよ」
律「700円(現在は、720円のようです)」
み「そんなバンダナしてるオヤジがいたら……。
5メートル以内には近づきたくない(さすがに、してる人の画像はありませんでした)」
律「あ、これおっもしろい。
ほらほら。
『生まれて墨ませんべい』」
み「恐るべきセンス」
律「これ、お土産に買っていこうかな」
↑イカ墨せんべいだそうです。
み「一人暮らしが、誰のお土産よ?」
律「病院のよ。
ナースステーションに」
↑1枚ずつ包装されており、職場で配るのに便利です(12袋・24枚入り 918円)。ネットでも買えます(こちら)。
み「産婦人科で、“生まれてすみません”はマズいんじゃないの?」
律「あ、そうか。
そんなら、止めとこ」
なるほど。
いろいろ妙なことを知ってるものね。
まだ、何かない?」
み「それじゃ、一つだけ。
老中っていうと、ジサマってイメージだけど……」
↑老中ではありません。
面白い動画を発見。
↓フットサルに飛び入り参加したジサマが、凄まじいテクニックを見せます。
み「ヨボヨボじゃ、務まらなかったの。
なにしろ、城内では常に早歩きしなきゃならなかったし……。
登城のときの籠も、ほとんど全速力だったのよ」
↑老中ではありません(失礼)。
律「遅刻するから?」
み「パカモン。
あんたと一緒にすな。
将軍が急死したとか、大事が起こったときには……。
城内で小走りになったり、籠を全速力で走らせたりする必要があるでしょ」
律「当たり前じゃない」
み「わからんかの。
普段、のんびりしてて、有事の時だけ急ぎ足になったら……」
み「周りにバレちゃうでしょ。
何かあったってことが」
律「なるほど」
み「だから、周りに普段との違いを悟らせないために……。
平時から、大急ぎで歩いたり、籠を走らせたりしてたわけよ」
律「へー。
たしかに、ご老人じゃ無理ね」
み「さて、それでは、大岡越前守忠相が乗り移ったわたしが……」
み「このしじみ問題にお裁きを下します」
律「いいわよ。
奢ってあげるわ」
み「げ。
なじぇに?
気味悪る」
律「人聞きが悪いわね。
面白い話を、いっぱいしてもらったから……。
その聞き賃よ」
み「おー、それは奇特な心がけ。
今度から、毎日病院に行って、語って進ぜる」
律「お断り。
病院じゃ忙しいの。
じゃ、出ましょ。
ずいぶんと、長居したわ」
み「こんな客も、珍しかろ。
あ、ウェイトレスさん、お勘定ね。
この人が払いますから。
2人分。
おいくら?」
ウ「1,130円になります」
み「わかってんだけどね。
一応、聞いてみました。
クレジットカードは……」
ウ「やってません」
み「聞いてみただけです。
先生、現金持ってるんでしょうね?
無けりゃ、皿洗いよ」
律「ありますって。
その代わり、さっきの電車賃は、あんたの払いでチャラね」
み「電車じゃありません。
気動車です。
ま、汽車賃くらい、持ってあげますよ。
まてよ?
『津軽五所川原』から『金木』まで、1人、530円だったじゃん。
てことは、2人で、1,060円!
お昼代が、1,130円だから、70円しか違わん!
ほとんど折半じゃないか」
律「ほほ。
これがホントの大岡裁きよ」
み「オチまで付けるな」
さて、『金木駅』を出ましょう。
律「お天気が良くて、よかったわね」
み「んだなや」
律「なんでいきなり、そんな言葉遣いになるのよ」
み「津軽の風に吹かれると、自然と口を付いて出るのじゃ」
律「出ないわ」
み「それが、物書きとそうでない人の違いです。
まさに……。
『選ばれてあることの恍惚と不安とふたつ我にあり』」
律「それって、太宰の言葉?」
み「ヴェルレーヌの詩ですよ」
↑前列左端が、ポール・ヴェルレーヌ。その隣が、アルチュール・ランボー。
み「太宰の処女小説集『晩年』の冒頭に、この詩が掲げられてる」
↑これは復刻本です。
律「太宰は別にして、あんたが選ばれてあるかどうかは、大いに疑問だけど」
み「わたしがいなかったら、先生はこの世にいないの」
律「あら、それもそうね」
み「帰りの汽車賃、持って」
律「登場人物に汽車賃を払わせる作家がどこにいますか」
み「ここにいますわい」
律「じゃ、あんたは、斜陽館の入館料を持ってちょうだい」
み「良かろう。
って、待て!
入館料っていくらだ?
今、『まっぷる』で調べる。
えーっと……。
500円。
か、勝った。
汽車賃が2人分で、1,060円。
入館料が2人分で、1,000円。
60円の儲け。
『ぽっぽ家』の儲けとあわせて……。
130円。
働けど働けど、我が暮らし……」
律「何、ぶつぶつ言ってんのよ。
早く行きましょ。
どうやって行くの?
バス?」
み「歩いて行く。
7分くらいだって」
律「あらそう。
お天気もいいし、それもいいわね」
み「秋の東北って……。
お天気が良くても、ちょっと物悲しいよね」
↑初秋の金木駅。駅舎(右)は立派になりましたが、ホームの風情は変わらないようです。
律「あらそうかしら」
み「太平洋側の人にはわかりません。
これから冬を迎える寂しさが」
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
柱も庭も乾いてゐる
今日は好い天気だ
縁の下では蜘蛛の巣が
心細さうに揺れてゐる
山では枯木も息を吐く
あゝ今日は好い天気だ
路ばたの草影が
あどけない愁(かなし)みをする
これが私の故里(ふるさと)だ
さやかに風も吹いてゐる
心置なく泣かれよと
年増婦(としま)の低い声もする
あゝ おまへはなにをして来たのだと……
吹き来る風が私に云ふ
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律「誰の詩?」
み「中原中也の『帰郷』」
↑1907年生まれ。没年は1937年。30歳でした。
み「高校のころ、よく読んだものです」
↑中也では、この詩が一番有名でしょう。
律「あ、そう」
み「つれないですな」
律「中原中也って、東北の人?」
み「うんにゃ。
確か、山口じゃなかったかな」
↑故郷の山口市には、立派な記念館が建ってます。
律「ぜんぜん違うじゃないの」
み「雰囲気。
アトモスフィアを感じたのでやんす」
↑ケムンパス、なぜか好きです。
律「道、大丈夫?
こっちでいいのよね」
み「斜陽館に行く途中に……。
『太宰治 疎開の家』ってのがあるから、そこに寄ろう」
律「あら。
斜陽館に疎開したんじゃないの?」
み「太宰にはあんまりくわしくないけど……。
もう、勘当されてたんじゃないかな?」
勘当は、1942(昭和17)年、母タネの死ののち、許されてました。
太宰が金木に疎開したのは、1945(昭和20)年のことです。
み「それに、小説の中で、斜陽館をボロクソに書いてるから……。
そこに身を寄せるのは、具合悪かったんでないの?」
律「あれは、町役場かしら?」
み「合併前の『金木町役場』だね。
今は、『五所川原市金木庁舎』になってる。
『太宰治 疎開の家』は、確かこの裏に移築されてるはず」
律「どっから移築されたの?」
み「そりゃ、斜陽館からに決まってますがな。
元々は、斜陽館の離れだったのよ」
律「なんで移築されたの?」
み「知らんわい。
諸般の事情じゃないの」
調べたらわかりました。
戦後、『斜陽館』は売却され、旅館になるわけです。
売却したのは、太宰の長兄、津島文治。
↑なかなかいい男です。モテたんじゃないでしょうか。長男は俳優になってます(津島康一)。
元もと、このお兄さんの新婚住宅として建てられたようです。
で、母屋売却の際……。
この離れだけが、文治の住居として近所に曳家移築されたんだそうです。
なぜ売ったかと言うと、お金が必要だったんだと思います。
この人は、財産のほとんどを政治家としての資金に注ぎこんだみたいです。
青森県知事を3期、衆議院議員を2期、参議院議員を2期半務めてます。
律「頼りないガイドさん」
み「ちっとは自分で考えなさい」
律「普段、考え疲れてるもの。
旅行の時くらい、脳を休めないと」
↑さぬきうどん協同組合公認ツルきゃら『うどん脳』
み「わたしも休めたいわい」
律「あんたは、普段から休めてるでしょ」
み「失敬旋盤。
そう言えば、小話をひとつ思い出した。
あるお店で、哲学者の脳みそと、なーんも考えないで生きてた女の脳みそが売りだされました」
↑乾燥脳みそ
律「そんなの売ったら犯罪じゃないの」
み「だから、小話なの!
で、値札を見ると……。
女の脳みその方が、高かった。
さて、どうしてでしょう?」
律「知らないわよ。
でも、頭の善し悪しと、標本としての価値は別モンでしょ。
あ、そうだ。
その女の人は、とても特殊な脳の病気で亡くなった。
だから、標本価値が高い」
↑有鉤条虫に寄生された脳。
み「売り買いしますのんか?
脳みそ」
↑売ってます。ただしこれは、仔羊のもの。思ったより安いです(こちら)。
律「しないわよ。
小話なんでしょ。
早くオチを言いなさい」
み「客の疑問に対し、店主答えて曰く……。
『こっちの脳みそは、新品同然なんです』」
み「『なにしろ、ぜんぜん使ってませんから』」
律「イマイチ、面白くない。
なんで太宰の生まれ故郷で、小話を聞かされなきゃならないのかしら」
み「良いではないか。
太宰には、ユーモア溢れる小品もたくさんあるし。
きっと、小話も好んだであろう。
『畜犬談』っていう小品は、記憶に残ってる」
律「でも、今の小話には笑わなかったと思うわ」
み「さよかい」
律「あ、看板が出てる」
↑これは、『斜陽館』の方向からの看板かも知れません。
律「あれじゃない?」
み「おー、こういう小ぢんまりした古い家屋って、いいもんだよね」
律「落ち着きそうね。
住んでみたいわ」
み「住んだら大変ですぞ」
律「どうして」
み「まず、冬の雪下ろし。
どうします、この屋根に雪が積もったら?」
↑雪下ろしをしたところ。
律「ほっとくしかないじゃない。
潰れないでしょ」
み「甘い。
たとえ、潰れなくても……。
大いに支障が出るのじゃ」
律「どんな?」
み「襖が開かなくなるのよ。
雪の重みで。
下手すりゃ密室です」
↑猫の手を借りても、ぜったいに開けられません。
み「朝起きたら、部屋から出られなくなってたりするわけ」
律「襖を開けておけばいいんじゃないの?」
み「寒いだろ!
ただでさえ日本家屋は寒いの。
津軽の真冬に、襖を開けて寝れますか」
↑奥の部屋が、太宰の仕事部屋だったそうです。ここで、23本の作品が執筆されました。
律「セントラルヒーティングを入れればいいんじゃない」
み「隙間だらけの日本家屋に、そんなものが付けられるか!」
律「じゃ、床暖房」
み「目の玉が飛び出るほど電気代がかかります」
み「とにかく、日本に住んだ外国人は、冬の日本家屋の寒さには驚いたみたい」
↑『小泉八雲旧居(松江市)』。ぜったいに寒かったはず。
み「向こうの家は気密性が高いから、暖房もよく効くのよ。
冬の室内は、半袖で過ごすらしいし」
律「あ、北海道もそうだって聞いたわ」
み「室温、30度くらいみたいだね。
ランニングに短パンだって」
み「北海道人が冬場、内地の家に入ると、寒くてたまらないんだって」
律「30度は、やりすぎだと思うわ」
み「わたしが、東京で最初に入ったアパートには、冷房だけのエアコンしか付いてなかった。
暖房は自前ね。
で、わたしは、冬の暖房、電気コタツだけだった」
み「車も無いし、灯油を買うのが面倒だから」
律「電気ストーブにすればいいじゃない?」
み「電気ストーブは、電気代が高いでしょ」
律「コタツだけじゃ寒いでしょうに」
み「確かにね。
部屋干しの洗濯物が凍ったりしたし……」
み「手袋して本読んでたものね」
律「そんな目にあったら、普通、ストーブ買うでしょう」
み「不思議と買う気にはならなかった。
石油ストーブの臭いが嫌いだしね。
でも、幸せだったな」
律「なんで?」
み「外が毎日晴れてるから」
律「さっきもそんなこと言ってたわね」
み「太平洋側の冬は、ほんとにうらやましい」
↑12月の日比谷公園。まだ紅葉が残ってます。
律「引っ越せばいいのに。
人生、1度しか無いのよ」
み「太平洋側は、地震が恐ろしい」
律「ま、それは確かにね。
あれだけ人間が溢れたところで大災害が起きたら……。
どうしようも無いでしょうね。
み「そんなところに津波が来たらと思うと……。
考えただけでゾッとする」
律「でも、お天気だけの話ならさ……。
何も海っぱたまで来なくてもいいんじゃない?
要は、山さえ越えればいいわけでしょ」
み「群馬とか?
ま、群馬までは津波も来ないわな。
でも、寒いでしょ。
晴れてるだけに、冬場は放射冷却が強烈なはず。
北関東の朝晩の冷え込みは、新潟以上だと思う」
律「何も群馬まで引かなくたって……。
東京でも、標高が高いところ、いくらでもあるわよ」
み「高尾山?」
↑標高は、599メートル。スカイツリーより低いんですね。
律「山に登らなくても。
多摩市なんか、確か標高100メートルくらいのはずよ」
み「ふむ。
100メートルなら、まず津波の心配は無いね」
律「人口も、都心ほど密集してないと思うし」
み「でも、引っ越すとなると……。
新潟より土地は高いでしょ」
律「土地を買うつもり?
アパートでいいんじゃない」
み「あ、そうか。
やっぱ、年取ったら、集合住宅の方が便利だよな。
万が一、雪が積もっても、雪かきしなくていいし」
律「よっぽど、雪かきにトラウマがあるわね」
み「一度やってみ。
とにかく、重労働だから」
↑最初は、ゆるゆるとやってるのですが……。そのうち、早く終えたくなって、力が入ってしまいます。汗をかくようなペースでやると、必ず腰を傷めます。
み「やっとこさ終えて、夜、痛い腰をさすりながら布団に入って……。
翌朝起きたら、また同じだけ積もってるわけ。
ほとんど賽の河原よ」
律「そんなとこ、住まなきゃいいのに」
み「わたしもそう思います。
今後、豪雪地帯の集落は、ほとんど消えてしまうんじゃないの」
律「限界集落ってやつね」
↑廃校となった小学校のようです。
み「豪雪地帯は、いっそう条件が悪いもの」
律「どこからこんな話になったのかしら?」
み「雪国でこんな日本家屋に住んだら、雪下ろしが大変だって話よ」
↑新潟県上越市。お年寄りに出来る作業ではありません。
律「そうそう。
襖が開かなくなるのよね。
そしたら、襖の下の方に扉を付けて……。
そこから出入りしたらいいんじゃない?」
み「猫か!」
律「早く入りましょうよ。
何で、建物の前であなたと漫才してなきゃならないの」
律「人が集まって来たじゃない」
み「見世物じゃありません。
散ってください。
写真を撮らないで。
サインならしてあげます」
律「いなくなっちゃったわね」
み「ふん。
わたしのサインが、将来どれだけの価値を生むか、わからんようじゃの。
鑑定団に出したら、びっくらこくんだから」
律「でも、どっから入るの?
フェンスが閉まってるじゃない。
今日、お休みなのかしら?」
み「日曜日に休むわけないでしょ。
こっちは裏口なんじゃないの?
ほら、やっぱりそうだ。
矢印が出てる。
表に回れってさ」
律「こっちは、商店街みたいよ。
どっから入るの?」
↑ストリートビューから切り取ったので、画像が歪んでます。
み「位置的には、このお店なんだけど……。
あ、やっぱりここだ」
律「裏と、ずいぶん違うわね」
み「この店が、見学の受付になってるんじゃない?」
律「じゃ、入るわよ。
あなた、入館料払う係でしょ」
み「いくら?」
律「大人500円って出てるけど」
み「待てい。
この500円は、『斜陽館』も込みなの?」
律「知らないわよ。
どこにもそんなこと書いてないみたいよ」
み「受付の人に聞いてみてよ」
律「なんでわたしが聞くのよ。
払うのはあなたでしょ」
み「『斜陽館』は払う。
でも、ここも払うとは言っておらん」
律「あなたがここに寄ろうって言い出したんじゃない」
み「記憶にございませぬ」
↓ごらんの通り、裏側とはまったく異なるたたずまい。
律「それに、もともと『斜陽館』の離れだったんだから……。
ここも、込み込みで払うべきよ」
み「そんな、“べき”は知らんわ」
↑ほんまかー? わたしには、こんな効果は現れなかった。
み「とにかく、あのおっさんに聞いてみる」
み「言葉、通じるかな?」
律「失礼よ」
み「あのー。
ニホンゴ、ワッカリマスカ?
痛てっ」
律「止めなさいって」
み「いらっしゃいませ」
み「何だ、通じるじゃん」
律「当たり前でしょ」
み「もしもし。
ちと、物をお尋ね申すが……」
律「何でそんな口調になるのよ」
み「シャイなもので」
律「ウソおっしゃい」
主「May I help you?」
↑接客業では、頭に“How”を付けるよう指導されるそうです。“How”は、熱心に耳を傾ける姿勢を表してるのだとか。
み「うわっ。
やっぱり津軽弁だ」
律「英語でしょ。
あの、この女、アイヌみたいですけど……。
日本語で大丈夫です」
み「誰がアイヌじゃ」
↑本物のアイヌには、エキゾチックな顔立ちの人が多かったようです(画像は、1920年代のアイヌ人女性)。
律「そんなら熊襲?」
↑なぜか、越後銘酒『久保田』の旗が出てますが……。福岡県大牟田市にあるお店です(人気店のようです)。
み「蝦夷(えみし)と呼べ」
↑蝦夷の親玉『アテルイ』の像(鹿島神宮所蔵)。
律「すみません。
この蝦夷が、何か聞きたいことがあるみたいなんです」
主「はぁ。
わたしは、日本語と英語と津軽弁しか出来ませんけど」
律「日本語で大丈夫です。
ほら、蝦夷、聞きなさいよ」
み「やっぱり、蝦夷はやめた」
律「じゃ、何よ?
アボリジニ?」
み「普通に日本人じゃ!
大和民族。
『やまとくにばらかすみてあるらし』」
律「頭、おかしくなったんじゃないの?」
み「先生が、いらんチャチャを入れるからでしょ。
ちょーっといいですか?」
主「あの、アンケートとかなら、ご容赦ください」
み「アンケートじゃありません。
客です。
ていうか、ひょっとしたら客になるかも知れない2人連れです」
律「スゴく怪しいですけど」
み「口を挟むな!」
律「はいはい」
み「ここに料金が500円と出てますが……。
まかりまへんか?」
↑昔は、こんな鵺のような商品がありました。これは、算盤付電卓なのか、電卓付算盤なのか……。
律「いきなり値切ってどうすんのよ。
まずは、確認でしょ。
いいわ。
わたしが聞く。
あんたに任せてると、2時間くらいかかりそう」
み「最初から、左様せい」
律「あの、ここの入館料の500円で、『斜陽館』も入れるんですか?」
主「いえ。
別料金です」
律「はい、決まり。
2,000円コースになります」
み「あっさり諦めるな」
↑「教育モチベーションカレンダー」だそうです。なんと、2日で1ページだそうです。1年で183ページもあるってことですよね。誰が考えるんだ?
み「ひとつ、お尋ね申す」
律「また、そんな口調になる」
み「建物の規模から言ったら……。
母屋の『斜陽館』の方が、圧倒的に大きいですよね」
主「はい」
み「ホワーイ?」
み「なぜ、料金、同じですか?」
律「ななた、何人よ?」
み「わからん人」
↑『一休さん』の歌詞です。「わからんちん」は、宗像弁(むなかたべん)で“わからずや”のことだそうです。
律「でも、確かにちょっと不思議です」
主「ここの料金には、案内料も含まれているんです。
内部をご案内しながら、ご説明させていただいております」
み「なるへそ。
そんなら、案内無しなら、いくら?」
主「いえ。
必ず、もれなく、ぜひとも、ご案内させていただいております」
み「早い話、聞きたくなくても500円ね」
主「すみません」
律「あなたが謝ることないわ。
こんな料金設定にした、市が悪いのよ」
み「んだなや。
今直ぐ、五所川原市長を呼べ」
↑たぶん、違う人です。
律「それじゃ、クレーマーでしょ」
主「すみませんが……。
ここは、市の施設じゃないんです」
み「じゃ、県の?
まさか、国じゃないよね?」
主「わたしの持ち家です」
み「にゃんと。
まったくの個人所有ってこと?」
主「左様です」
み「あなた、津島さん?」
主「いえ、白川と申します」
み「それじゃ、『斜陽館』とは共通料金にはならんわな」
主「ショップだけ、ご覧になりますか?
それなら無料です」
律「ショップはタダなのね」
み「ショップに入るのに金取られてたまるか」
律「とりあえず、そこを見させてもらって……。
入るかどうかは、それから考えればいいんじゃないの?」
み「そうしますか」
律「観光に来たのに、こんなとこケチったら意味無いと思うんだけど」
み「そしたら、先生が払って」
律「それとこれとは話が別」
み「じゃ、ちょっと、ショップを覗かせてもらいます」
主「どうぞどうぞ」
み「ショップって、早い話、あの人の店よね」
律「そうなるわね」
み「げ。
強烈なTシャツ」
み「これ着る勇気、ある?」
律「厳しいわね。
胸に『DAZAI』は」
↑さすが、店長は堂々と着ておられます。
み「『DASAI』の方が、まだマシだわ。
いくら?」
律「2,300円(現在は、2,365円になってます)」
み「あのおっさん、近くにいる?」
律「今、別のお客さんの相手してるみたい」
み「そんなら言わせていただきます。
高けーーーー!」
み「Tシャツに2,000円も出せるか!
ふー、すっとした」
律「あ、ここにもっと安いやつがあるわ。
1,995円(現在は売られてないようです)」
み「なんだこれ?
『好きな作家は太宰です』?」
み「信じられん」
律「ファンなら、買うんじゃない?」
み「わたしらの時代は……。
たとえ太宰が好きでも、大っぴらにそうは言えなかったもんだけど」
律「時代も変わったのよ。
ほら、トートバッグまである」
律「1,600円(現在は、1,645円のようです)」
み「何で、Tシャツより安いわけ?」
律「知らないわよ」
み「しかし……。
Tシャツにバッグって……。
どうしても、『目黒寄生虫館』を連想してしまう」
↑Tシャツ(右)とランチバッグ!(左)。
律「バンダナもあるわよ」
律「700円(現在は、720円のようです)」
み「そんなバンダナしてるオヤジがいたら……。
5メートル以内には近づきたくない(さすがに、してる人の画像はありませんでした)」
律「あ、これおっもしろい。
ほらほら。
『生まれて墨ませんべい』」
み「恐るべきセンス」
律「これ、お土産に買っていこうかな」
↑イカ墨せんべいだそうです。
み「一人暮らしが、誰のお土産よ?」
律「病院のよ。
ナースステーションに」
↑1枚ずつ包装されており、職場で配るのに便利です(12袋・24枚入り 918円)。ネットでも買えます(こちら)。
み「産婦人科で、“生まれてすみません”はマズいんじゃないの?」
律「あ、そうか。
そんなら、止めとこ」
コメント一覧
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1. ハーレクイン- 2014/07/22 02:59
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えらく遅くなりましたが、ご紹介しましょう。
●老中はジサマではありません。
●フットサルジサマ。ホンマはジサマじゃないんだよね。
●常に駆け足、老中。老いぼれには勤まりません。
●♪走れエイトマーん弾よりも早く~
●クレジットカードは使えません、現金が無ければ皿洗いです。
●電車じゃありません、気動車です。またはディーゼルカー。
●大岡裁きは三方一両損。上手く宥めただけ、ということも。
●なかなか立派な金木駅舎。とても津軽鉄道の駅とは思えん。津軽鉄道関係の方、すまぬ。
●み「わたしがいなかったら、先生はこの世にいないの」こんなこと言われた登場人物は、どう感じるんだろうね。眩暈がするよ。
●歩いて7分。近いぞ、斜陽館。
●その途中に疎開の家。
●太宰の疎開は1945年。戦中なのかね、戦後なのかね。
●「諸般の事情」実に便利な言葉です。
●「さぬきうどん協同組合」。そんなのあるんや。こっちには「タヌキうどん協同組合」があります(ウソ)。
●失敬旋盤。お。おもろい。椅子用小座布団1枚。
●乾燥脳みそはウソです。しかしてその実体は、チキンラーメン。
●うわああ、気色悪い。有鉤条虫にきせいされた脳。
●子羊の脳は美味いそうです。
●使わない脳は新品同様。使い込んだ脳の方が美味いと思うが。
●太宰『蓄犬談』「私は、犬については自信がある。いつの日か、必ず喰いつかれるであろうという自信である」ま、好きにしろ。
●太宰治疎開の家。あるんですねえ。
●雪の重みで襖が開かなくなる。そうかのう、経験ないが。
●ガイジンさんの家は暖かいです。
●ホッカイドーの家も暖かいです。
●寒いです、本州の冬。洗濯物が凍ります。
●本を読むのに手袋です。これはちょっとやり過ぎ。
●み「太平洋側の冬は、ほんとにうらやましい」これはも一つ実感できません。
●♪人生いろいろ
●群馬といいますか、北関東の冬はほんとに寒いらしいぞ。
●雪かき。そういえばやったことないなあ。どうしてたんだろ。
●一つ積んでは父のため、二つ積んでは母のため。子のためには誰が積んでくれるんだろ。
●斜陽館の入場料。ようわかりまへん。とりあえず500円ということで。
●「学習に見られるべき乗の効果」信じて頑張りましょう。
●日本語が通じる津軽。新潟弁が通じる大牟田。
●「やまとはくにのまほろば」
●「まかりまへんか?」今どき、値切りなんて出来まへんで「み」さん。
●「教育モチベーションカレンダー」意味わからん。
●津島じゃなくって白川さん。まあ、そうだろうね。
●観光旅行でケチるな。
●DAZAITシャツ。まあ、ええんでないかい。
●Tシャツ。せいぜい1,000えんだろ。
●「生まれて墨ませんべい」生誕百年記念だそうです。好きにしろ。
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2. Mikiko- 2014/07/22 07:49
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冬場の室内手袋は、今でも必需品です。
手先が冷たいと、何も出来ません。
今は暖房があるので、指出し手袋ですが。
冬に手袋をしなくてよかったのは……。
東京で最後に住んだ、ワンルームマンションだけですね。
コンクリートにエアコン暖房は、驚異的に効きます。
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3. ハーレクイン- 2014/07/22 10:12
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そんなに冷え性なのか。
わたしなんか、めったに手袋なんてしません。
冬場、単車に乗るときくらいですね。
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4. Mikiko- 2014/07/22 19:47
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ほぼ死人です。
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5. ハーレクイン- 2014/07/23 08:52
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南無……。