Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
東北に行こう!(88)
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律「へー。
 なるほど。
 いろいろ妙なことを知ってるものね。
 まだ、何かない?」
み「それじゃ、一つだけ。
 老中っていうと、ジサマってイメージだけど……」
老中っていうと、ジサマってイメージだけど……
↑老中ではありません。

 面白い動画を発見。
 ↓フットサルに飛び入り参加したジサマが、凄まじいテクニックを見せます。


み「ヨボヨボじゃ、務まらなかったの。
 なにしろ、城内では常に早歩きしなきゃならなかったし……。
 登城のときの籠も、ほとんど全速力だったのよ」
老中ではありません(失礼)
↑老中ではありません(失礼)。

律「遅刻するから?」
遅刻するから?

み「パカモン。
 あんたと一緒にすな。
 将軍が急死したとか、大事が起こったときには……。
 城内で小走りになったり、籠を全速力で走らせたりする必要があるでしょ」
城内で小走りになったり、籠を全速力で走らせたりする必要があるでしょ

律「当たり前じゃない」
み「わからんかの。
 普段、のんびりしてて、有事の時だけ急ぎ足になったら……」
有事の時だけ急ぎ足になったら……

み「周りにバレちゃうでしょ。
 何かあったってことが」
律「なるほど」
み「だから、周りに普段との違いを悟らせないために……。
 平時から、大急ぎで歩いたり、籠を走らせたりしてたわけよ」
律「へー。
 たしかに、ご老人じゃ無理ね」
み「さて、それでは、大岡越前守忠相が乗り移ったわたしが……」
それでは、大岡越前守忠相が乗り移ったわたしが……

み「このしじみ問題にお裁きを下します」
律「いいわよ。
 奢ってあげるわ」
み「げ。
 なじぇに?
 気味悪る」
気味悪る

律「人聞きが悪いわね。
 面白い話を、いっぱいしてもらったから……。
 その聞き賃よ」
み「おー、それは奇特な心がけ。
 今度から、毎日病院に行って、語って進ぜる」
毎日病院に行って、語って進ぜる

律「お断り。
 病院じゃ忙しいの。
 じゃ、出ましょ。
 ずいぶんと、長居したわ」
み「こんな客も、珍しかろ。
 あ、ウェイトレスさん、お勘定ね。
 この人が払いますから。
 2人分。
 おいくら?」
ウ「1,130円になります」
み「わかってんだけどね。
 一応、聞いてみました。
 クレジットカードは……」
ウ「やってません」
み「聞いてみただけです。
 先生、現金持ってるんでしょうね?
 無けりゃ、皿洗いよ」
無けりゃ、皿洗いよ

律「ありますって。
 その代わり、さっきの電車賃は、あんたの払いでチャラね」
み「電車じゃありません。
 気動車です。
 ま、汽車賃くらい、持ってあげますよ。
 まてよ?
 『津軽五所川原』から『金木』まで、1人、530円だったじゃん。
 てことは、2人で、1,060円!
 お昼代が、1,130円だから、70円しか違わん!
 ほとんど折半じゃないか」
律「ほほ。
 これがホントの大岡裁きよ」
これがホントの大岡裁きよ

み「オチまで付けるな」

 さて、『金木駅』を出ましょう。
『金木駅』を出ましょう

律「お天気が良くて、よかったわね」
み「んだなや」
律「なんでいきなり、そんな言葉遣いになるのよ」
み「津軽の風に吹かれると、自然と口を付いて出るのじゃ」
津軽の風に吹かれると、自然と口を付いて出るのじゃ

律「出ないわ」
み「それが、物書きとそうでない人の違いです。
 まさに……。
 『選ばれてあることの恍惚と不安とふたつ我にあり』」
選ばれてあることの恍惚と不安とふたつ我にあり

律「それって、太宰の言葉?」
み「ヴェルレーヌの詩ですよ」
前列左端が、ポール・ヴェルレーヌ。その隣が、アルチュール・ランボー。
↑前列左端が、ポール・ヴェルレーヌ。その隣が、アルチュール・ランボー。

み「太宰の処女小説集『晩年』の冒頭に、この詩が掲げられてる」
太宰の処女小説集『晩年』
↑これは復刻本です。

律「太宰は別にして、あんたが選ばれてあるかどうかは、大いに疑問だけど」
み「わたしがいなかったら、先生はこの世にいないの」
律「あら、それもそうね」
み「帰りの汽車賃、持って」
律「登場人物に汽車賃を払わせる作家がどこにいますか」
み「ここにいますわい」
律「じゃ、あんたは、斜陽館の入館料を持ってちょうだい」
み「良かろう。
 って、待て!
 入館料っていくらだ?
 今、『まっぷる』で調べる。
 えーっと……。
 500円。
 か、勝った。
 汽車賃が2人分で、1,060円。
 入館料が2人分で、1,000円。
 60円の儲け。
 『ぽっぽ家』の儲けとあわせて……。
 130円。
 働けど働けど、我が暮らし……」
働けど働けど、我が暮らし……

律「何、ぶつぶつ言ってんのよ。
 早く行きましょ。
 どうやって行くの?
 バス?」
み「歩いて行く。
 7分くらいだって」
律「あらそう。
 お天気もいいし、それもいいわね」
み「秋の東北って……。
 お天気が良くても、ちょっと物悲しいよね」
初秋の金木駅。駅舎(右)は立派になりましたが、ホームの風情は変わらないようです。
↑初秋の金木駅。駅舎(右)は立派になりましたが、ホームの風情は変わらないようです。

律「あらそうかしら」
み「太平洋側の人にはわかりません。
 これから冬を迎える寂しさが」
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
柱も庭も乾いてゐる
今日は好い天気だ
縁の下では蜘蛛の巣が
心細さうに揺れてゐる

山では枯木も息を吐く
あゝ今日は好い天気だ
路ばたの草影が
あどけない愁(かなし)みをする

これが私の故里(ふるさと)だ
さやかに風も吹いてゐる
心置なく泣かれよと
年増婦(としま)の低い声もする

あゝ おまへはなにをして来たのだと……
吹き来る風が私に云ふ
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
律「誰の詩?」
み「中原中也の『帰郷』」
中原中也
↑1907年生まれ。没年は1937年。30歳でした。

み「高校のころ、よく読んだものです」
中也では、この詩が一番有名でしょう
↑中也では、この詩が一番有名でしょう。

律「あ、そう」
み「つれないですな」
律「中原中也って、東北の人?」
み「うんにゃ。
 確か、山口じゃなかったかな」
故郷の山口市には、立派な記念館が建ってます
↑故郷の山口市には、立派な記念館が建ってます。

律「ぜんぜん違うじゃないの」
み「雰囲気。
 アトモスフィアを感じたのでやんす」
ケムンパス、なぜか好きです
↑ケムンパス、なぜか好きです。

律「道、大丈夫?
 こっちでいいのよね」
み「斜陽館に行く途中に……。
 『太宰治 疎開の家』ってのがあるから、そこに寄ろう」
律「あら。
 斜陽館に疎開したんじゃないの?」
み「太宰にはあんまりくわしくないけど……。
 もう、勘当されてたんじゃないかな?」

 勘当は、1942(昭和17)年、母タネの死ののち、許されてました。
 太宰が金木に疎開したのは、1945(昭和20)年のことです。

み「それに、小説の中で、斜陽館をボロクソに書いてるから……。
 そこに身を寄せるのは、具合悪かったんでないの?」
律「あれは、町役場かしら?」
あれは、町役場かしら?

み「合併前の『金木町役場』だね。
 今は、『五所川原市金木庁舎』になってる。
 『太宰治 疎開の家』は、確かこの裏に移築されてるはず」
律「どっから移築されたの?」
み「そりゃ、斜陽館からに決まってますがな。
 元々は、斜陽館の離れだったのよ」
律「なんで移築されたの?」
み「知らんわい。
 諸般の事情じゃないの」

 調べたらわかりました。
 戦後、『斜陽館』は売却され、旅館になるわけです。
 売却したのは、太宰の長兄、津島文治。
津島文治。なかなかいい男です。モテたんじゃないでしょうか。長男は俳優になってます(津島康一)。
↑なかなかいい男です。モテたんじゃないでしょうか。長男は俳優になってます(津島康一)。

 元もと、このお兄さんの新婚住宅として建てられたようです。
 で、母屋売却の際……。
 この離れだけが、文治の住居として近所に曳家移築されたんだそうです。
 なぜ売ったかと言うと、お金が必要だったんだと思います。
 この人は、財産のほとんどを政治家としての資金に注ぎこんだみたいです。
 青森県知事を3期、衆議院議員を2期、参議院議員を2期半務めてます。

律「頼りないガイドさん」
み「ちっとは自分で考えなさい」
律「普段、考え疲れてるもの。
 旅行の時くらい、脳を休めないと」
さぬきうどん協同組合公認ツルきゃら『うどん脳』
↑さぬきうどん協同組合公認ツルきゃら『うどん脳』

み「わたしも休めたいわい」
律「あんたは、普段から休めてるでしょ」
あんたは、普段から休めてるでしょ

み「失敬旋盤。
 そう言えば、小話をひとつ思い出した。
 あるお店で、哲学者の脳みそと、なーんも考えないで生きてた女の脳みそが売りだされました」
乾燥脳みそ
↑乾燥脳みそ

律「そんなの売ったら犯罪じゃないの」
み「だから、小話なの!
 で、値札を見ると……。
 女の脳みその方が、高かった。
 さて、どうしてでしょう?」
律「知らないわよ。
 でも、頭の善し悪しと、標本としての価値は別モンでしょ。
 あ、そうだ。
 その女の人は、とても特殊な脳の病気で亡くなった。
 だから、標本価値が高い」
有鉤条虫に寄生された脳
↑有鉤条虫に寄生された脳。

み「売り買いしますのんか?
 脳みそ」
売ってます。ただしこれは、仔羊のもの。
↑売ってます。ただしこれは、仔羊のもの。思ったより安いです(こちら)。

律「しないわよ。
 小話なんでしょ。
 早くオチを言いなさい」
み「客の疑問に対し、店主答えて曰く……。
 『こっちの脳みそは、新品同然なんです』」
こっちの脳みそは、新品同然なんです

み「『なにしろ、ぜんぜん使ってませんから』」
律「イマイチ、面白くない。
 なんで太宰の生まれ故郷で、小話を聞かされなきゃならないのかしら」
なんで太宰の生まれ故郷で、小話を聞かされなきゃならないのかしら

み「良いではないか。
 太宰には、ユーモア溢れる小品もたくさんあるし。
 きっと、小話も好んだであろう。
 『畜犬談』っていう小品は、記憶に残ってる」
律「でも、今の小話には笑わなかったと思うわ」
み「さよかい」
律「あ、看板が出てる」
これは、『斜陽館』の方向からの看板かも知れません
↑これは、『斜陽館』の方向からの看板かも知れません。

律「あれじゃない?」
あれじゃない?

み「おー、こういう小ぢんまりした古い家屋って、いいもんだよね」
こういう小ぢんまりした古い家屋って、いいもんだね

律「落ち着きそうね。
 住んでみたいわ」
み「住んだら大変ですぞ」
律「どうして」
み「まず、冬の雪下ろし。
 どうします、この屋根に雪が積もったら?」
どうします、この屋根に雪が積もったら?
↑雪下ろしをしたところ。

律「ほっとくしかないじゃない。
 潰れないでしょ」
み「甘い。
 たとえ、潰れなくても……。
 大いに支障が出るのじゃ」
律「どんな?」
み「襖が開かなくなるのよ。
 雪の重みで。
 下手すりゃ密室です」
猫の手を借りても、ぜったいに開けられません
↑猫の手を借りても、ぜったいに開けられません。

み「朝起きたら、部屋から出られなくなってたりするわけ」
律「襖を開けておけばいいんじゃないの?」
み「寒いだろ!
 ただでさえ日本家屋は寒いの。
 津軽の真冬に、襖を開けて寝れますか」
奥の部屋が、太宰の仕事部屋だったそうです
↑奥の部屋が、太宰の仕事部屋だったそうです。ここで、23本の作品が執筆されました。

律「セントラルヒーティングを入れればいいんじゃない」
セントラルヒーティングを入れればいいんじゃない

み「隙間だらけの日本家屋に、そんなものが付けられるか!」
律「じゃ、床暖房」
み「目の玉が飛び出るほど電気代がかかります」
目の玉が飛び出るほど電気代がかかります

み「とにかく、日本に住んだ外国人は、冬の日本家屋の寒さには驚いたみたい」
『小泉八雲旧居(松江市)』。ぜったいに寒かったはず。
↑『小泉八雲旧居(松江市)』。ぜったいに寒かったはず。

み「向こうの家は気密性が高いから、暖房もよく効くのよ。
 冬の室内は、半袖で過ごすらしいし」
律「あ、北海道もそうだって聞いたわ」
み「室温、30度くらいみたいだね。
 ランニングに短パンだって」
ランニングに短パンだって

み「北海道人が冬場、内地の家に入ると、寒くてたまらないんだって」
北海道人が冬場、内地の家に入ると、寒くてたまらないんだって

律「30度は、やりすぎだと思うわ」
み「わたしが、東京で最初に入ったアパートには、冷房だけのエアコンしか付いてなかった。
 暖房は自前ね。
 で、わたしは、冬の暖房、電気コタツだけだった」
わたしは、冬の暖房、電気コタツだけだった

み「車も無いし、灯油を買うのが面倒だから」
律「電気ストーブにすればいいじゃない?」
み「電気ストーブは、電気代が高いでしょ」
律「コタツだけじゃ寒いでしょうに」
み「確かにね。
 部屋干しの洗濯物が凍ったりしたし……」
部屋干しの洗濯物が凍ったりしたし……

み「手袋して本読んでたものね」
手袋して本読んでたものね

律「そんな目にあったら、普通、ストーブ買うでしょう」
み「不思議と買う気にはならなかった。
 石油ストーブの臭いが嫌いだしね。
 でも、幸せだったな」
律「なんで?」
み「外が毎日晴れてるから」
律「さっきもそんなこと言ってたわね」
み「太平洋側の冬は、ほんとにうらやましい」
太平洋側の冬は、ほんとにうらやましい
↑12月の日比谷公園。まだ紅葉が残ってます。

律「引っ越せばいいのに。
 人生、1度しか無いのよ」
み「太平洋側は、地震が恐ろしい」
律「ま、それは確かにね。
 あれだけ人間が溢れたところで大災害が起きたら……。
 どうしようも無いでしょうね。
み「そんなところに津波が来たらと思うと……。
 考えただけでゾッとする」
そんなところに津波が来たらと思うと……

律「でも、お天気だけの話ならさ……。
 何も海っぱたまで来なくてもいいんじゃない?
 要は、山さえ越えればいいわけでしょ」
要は、山さえ越えればいいわけでしょ

み「群馬とか?
 ま、群馬までは津波も来ないわな。
 でも、寒いでしょ。
 晴れてるだけに、冬場は放射冷却が強烈なはず。
 北関東の朝晩の冷え込みは、新潟以上だと思う」
北関東の朝晩の冷え込みは、新潟以上だと思う

律「何も群馬まで引かなくたって……。
 東京でも、標高が高いところ、いくらでもあるわよ」
み「高尾山?」
標高は、599メートル。スカイツリーより低いんですね。
↑標高は、599メートル。スカイツリーより低いんですね。

律「山に登らなくても。
 多摩市なんか、確か標高100メートルくらいのはずよ」
多摩市なんか、確か標高100メートルくらいのはずよ

み「ふむ。
 100メートルなら、まず津波の心配は無いね」
律「人口も、都心ほど密集してないと思うし」
み「でも、引っ越すとなると……。
 新潟より土地は高いでしょ」
律「土地を買うつもり?
 アパートでいいんじゃない」
み「あ、そうか。
 やっぱ、年取ったら、集合住宅の方が便利だよな。
 万が一、雪が積もっても、雪かきしなくていいし」
万が一、雪が積もっても、雪かきしなくていいし

律「よっぽど、雪かきにトラウマがあるわね」
み「一度やってみ。
 とにかく、重労働だから」
最初は、ゆるゆるとやってるのですが……。そのうち、早く終えたくなって、力が入ってしまいます。
↑最初は、ゆるゆるとやってるのですが……。そのうち、早く終えたくなって、力が入ってしまいます。汗をかくようなペースでやると、必ず腰を傷めます。

み「やっとこさ終えて、夜、痛い腰をさすりながら布団に入って……。
 翌朝起きたら、また同じだけ積もってるわけ。
 ほとんど賽の河原よ」
ほとんど賽の河原よ

律「そんなとこ、住まなきゃいいのに」
み「わたしもそう思います。
 今後、豪雪地帯の集落は、ほとんど消えてしまうんじゃないの」
律「限界集落ってやつね」
限界集落ってやつね
↑廃校となった小学校のようです。

み「豪雪地帯は、いっそう条件が悪いもの」
律「どこからこんな話になったのかしら?」
み「雪国でこんな日本家屋に住んだら、雪下ろしが大変だって話よ」
新潟県上越市。お年寄りに出来る作業ではありません。
↑新潟県上越市。お年寄りに出来る作業ではありません。

律「そうそう。
 襖が開かなくなるのよね。
 そしたら、襖の下の方に扉を付けて……。
 そこから出入りしたらいいんじゃない?」
み「猫か!」
そこから出入りしたらいいんじゃない?

律「早く入りましょうよ。
 何で、建物の前であなたと漫才してなきゃならないの」
何で、建物の前であなたと漫才してなきゃならないの

律「人が集まって来たじゃない」
人が集まって来たじゃない

み「見世物じゃありません。
 散ってください。
 写真を撮らないで。
 サインならしてあげます」
律「いなくなっちゃったわね」
み「ふん。
 わたしのサインが、将来どれだけの価値を生むか、わからんようじゃの。
 鑑定団に出したら、びっくらこくんだから」
鑑定団に出したら、びっくらこくんだから

律「でも、どっから入るの?
 フェンスが閉まってるじゃない。
 今日、お休みなのかしら?」
み「日曜日に休むわけないでしょ。
 こっちは裏口なんじゃないの?
 ほら、やっぱりそうだ。
 矢印が出てる。
 表に回れってさ」
表に回れってさ

律「こっちは、商店街みたいよ。
 どっから入るの?」
こっちは、商店街みたいよ
↑ストリートビューから切り取ったので、画像が歪んでます。

み「位置的には、このお店なんだけど……。
 あ、やっぱりここだ」
あ、やっぱりここだ

律「裏と、ずいぶん違うわね」
裏と、ずいぶん違うわね

み「この店が、見学の受付になってるんじゃない?」
律「じゃ、入るわよ。
 あなた、入館料払う係でしょ」
み「いくら?」
律「大人500円って出てるけど」
大人500円って出てるけど

み「待てい。
 この500円は、『斜陽館』も込みなの?」
律「知らないわよ。
 どこにもそんなこと書いてないみたいよ」
み「受付の人に聞いてみてよ」
律「なんでわたしが聞くのよ。
 払うのはあなたでしょ」
み「『斜陽館』は払う。
 でも、ここも払うとは言っておらん」
律「あなたがここに寄ろうって言い出したんじゃない」
み「記憶にございませぬ」

 ↓ごらんの通り、裏側とはまったく異なるたたずまい。
ごらんの通り、裏側とはまったく異なるたたずまい

律「それに、もともと『斜陽館』の離れだったんだから……。
 ここも、込み込みで払うべきよ」
み「そんな、“べき”は知らんわ」
ほんまかー? わたしには、こんな効果は現れなかった。
↑ほんまかー? わたしには、こんな効果は現れなかった。

み「とにかく、あのおっさんに聞いてみる」
とにかく、あのおっさんに聞いてみる

み「言葉、通じるかな?」
律「失礼よ」
み「あのー。
 ニホンゴ、ワッカリマスカ?
 痛てっ」
痛てっ

律「止めなさいって」
み「いらっしゃいませ」
いらっしゃいませ

み「何だ、通じるじゃん」
律「当たり前でしょ」
み「もしもし。
 ちと、物をお尋ね申すが……」
律「何でそんな口調になるのよ」
み「シャイなもので」
律「ウソおっしゃい」
主「May I help you?」
接客業では、頭に“How”を付けるよう指導されるそうです。“How”は、熱心に耳を傾ける姿勢を表してるのだとか。
↑接客業では、頭に“How”を付けるよう指導されるそうです。“How”は、熱心に耳を傾ける姿勢を表してるのだとか。

み「うわっ。
 やっぱり津軽弁だ」
やっぱり津軽弁だ

律「英語でしょ。
 あの、この女、アイヌみたいですけど……。
 日本語で大丈夫です」
み「誰がアイヌじゃ」
本物のアイヌには、エキゾチックな顔立ちの人が多かったようです(画像は、1920年代のアイヌ人女性)。
↑本物のアイヌには、エキゾチックな顔立ちの人が多かったようです(画像は、1920年代のアイヌ人女性)。

律「そんなら熊襲?」
なぜか、越後銘酒『久保田』の旗が出てますが……。福岡県大牟田市にあるお店です(人気店のようです)。
↑なぜか、越後銘酒『久保田』の旗が出てますが……。福岡県大牟田市にあるお店です(人気店のようです)。

み「蝦夷(えみし)と呼べ」
蝦夷の親玉『アテルイ』の像(鹿島神宮所蔵)
↑蝦夷の親玉『アテルイ』の像(鹿島神宮所蔵)。

律「すみません。
 この蝦夷が、何か聞きたいことがあるみたいなんです」
主「はぁ。
 わたしは、日本語と英語と津軽弁しか出来ませんけど」
律「日本語で大丈夫です。
 ほら、蝦夷、聞きなさいよ」
み「やっぱり、蝦夷はやめた」
律「じゃ、何よ?
 アボリジニ?」
アボリジニ?

み「普通に日本人じゃ!
 大和民族。
 『やまとくにばらかすみてあるらし』」
やまとくにばらかすみてあるらし

律「頭、おかしくなったんじゃないの?」
み「先生が、いらんチャチャを入れるからでしょ。
 ちょーっといいですか?」
主「あの、アンケートとかなら、ご容赦ください」
アンケートとかなら、ご容赦ください

み「アンケートじゃありません。
 客です。
 ていうか、ひょっとしたら客になるかも知れない2人連れです」
律「スゴく怪しいですけど」
み「口を挟むな!」
律「はいはい」
み「ここに料金が500円と出てますが……。
 まかりまへんか?」
昔は、こんな鵺のような商品がありました。これは、算盤付電卓なのか、電卓付算盤なのか……。
↑昔は、こんな鵺のような商品がありました。これは、算盤付電卓なのか、電卓付算盤なのか……。

律「いきなり値切ってどうすんのよ。
 まずは、確認でしょ。
 いいわ。
 わたしが聞く。
 あんたに任せてると、2時間くらいかかりそう」
み「最初から、左様せい」
最初から、左様せい

律「あの、ここの入館料の500円で、『斜陽館』も入れるんですか?」
主「いえ。
 別料金です」
律「はい、決まり。
 2,000円コースになります」
み「あっさり諦めるな」
「教育モチベーションカレンダー」だそうです。なんと、2日で1ページだそうです。1年で183ページもあるってことですよね。
↑「教育モチベーションカレンダー」だそうです。なんと、2日で1ページだそうです。1年で183ページもあるってことですよね。誰が考えるんだ?

み「ひとつ、お尋ね申す」
律「また、そんな口調になる」
み「建物の規模から言ったら……。
 母屋の『斜陽館』の方が、圧倒的に大きいですよね」
母屋の『斜陽館』の方が、圧倒的に大きいですよね

主「はい」
み「ホワーイ?」
ホワーイ?

み「なぜ、料金、同じですか?」
律「ななた、何人よ?」
み「わからん人」
『一休さん』の歌詞です。「わからんちん」は、宗像弁(むなかたべん)で“わからずや”のことだそうです。
↑『一休さん』の歌詞です。「わからんちん」は、宗像弁(むなかたべん)で“わからずや”のことだそうです。

律「でも、確かにちょっと不思議です」
主「ここの料金には、案内料も含まれているんです。
 内部をご案内しながら、ご説明させていただいております」
み「なるへそ。
 そんなら、案内無しなら、いくら?」
主「いえ。
 必ず、もれなく、ぜひとも、ご案内させていただいております」
み「早い話、聞きたくなくても500円ね」
主「すみません」
律「あなたが謝ることないわ。
 こんな料金設定にした、市が悪いのよ」
み「んだなや。
 今直ぐ、五所川原市長を呼べ」
今直ぐ、五所川原市長を呼べ
↑たぶん、違う人です。

律「それじゃ、クレーマーでしょ」
主「すみませんが……。
 ここは、市の施設じゃないんです」
み「じゃ、県の?
 まさか、国じゃないよね?」
まさか、国じゃないよね?

主「わたしの持ち家です」
み「にゃんと。
 まったくの個人所有ってこと?」
主「左様です」
み「あなた、津島さん?」
主「いえ、白川と申します」
み「それじゃ、『斜陽館』とは共通料金にはならんわな」
主「ショップだけ、ご覧になりますか?
 それなら無料です」
律「ショップはタダなのね」
み「ショップに入るのに金取られてたまるか」
律「とりあえず、そこを見させてもらって……。
 入るかどうかは、それから考えればいいんじゃないの?」
み「そうしますか」
律「観光に来たのに、こんなとこケチったら意味無いと思うんだけど」
観光に来たのに、こんなとこケチったら意味無いと思うんだけど

み「そしたら、先生が払って」
律「それとこれとは話が別」
み「じゃ、ちょっと、ショップを覗かせてもらいます」
主「どうぞどうぞ」
み「ショップって、早い話、あの人の店よね」
ショップって、早い話、あの人の店よね

律「そうなるわね」
み「げ。
 強烈なTシャツ」
強烈なTシャツ

み「これ着る勇気、ある?」
律「厳しいわね。
 胸に『DAZAI』は」
さすが、店長は堂々と着ておられます
↑さすが、店長は堂々と着ておられます。

み「『DASAI』の方が、まだマシだわ。
 いくら?」
律「2,300円(現在は、2,365円になってます)」
み「あのおっさん、近くにいる?」
律「今、別のお客さんの相手してるみたい」
み「そんなら言わせていただきます。
 高けーーーー!」
高けーーーー!

み「Tシャツに2,000円も出せるか!
 ふー、すっとした」
律「あ、ここにもっと安いやつがあるわ。
 1,995円(現在は売られてないようです)」
み「なんだこれ?
 『好きな作家は太宰です』?」
『好きな作家は太宰です』

み「信じられん」
律「ファンなら、買うんじゃない?」
み「わたしらの時代は……。
 たとえ太宰が好きでも、大っぴらにそうは言えなかったもんだけど」
律「時代も変わったのよ。
 ほら、トートバッグまである」
トートバッグまである

律「1,600円(現在は、1,645円のようです)」
み「何で、Tシャツより安いわけ?」
律「知らないわよ」
み「しかし……。
 Tシャツにバッグって……。
 どうしても、『目黒寄生虫館』を連想してしまう」
どうしても、『目黒寄生虫館』を連想してしまう
↑Tシャツ(右)とランチバッグ!(左)。

律「バンダナもあるわよ」
バンダナもあるわよ

律「700円(現在は、720円のようです)」
み「そんなバンダナしてるオヤジがいたら……。
 5メートル以内には近づきたくない(さすがに、してる人の画像はありませんでした)」
律「あ、これおっもしろい。
 ほらほら。
 『生まれて墨ませんべい』」
生まれて墨ませんべい

み「恐るべきセンス」
律「これ、お土産に買っていこうかな」
これ、お土産に買っていこうかな
↑イカ墨せんべいだそうです。

み「一人暮らしが、誰のお土産よ?」
律「病院のよ。
 ナースステーションに」
1枚ずつ包装されており、職場で配るのに便利です(12袋・24枚入り 918円)
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み「産婦人科で、“生まれてすみません”はマズいんじゃないの?」
律「あ、そうか。
 そんなら、止めとこ」
東北に行こう!(87)目次東北に行こう!(89)




コメント一覧
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    • ––––––
      1. ハーレクイン
    • 2014/07/22 02:59
    • えらく遅くなりましたが、ご紹介しましょう。
      ●老中はジサマではありません。
      ●フットサルジサマ。ホンマはジサマじゃないんだよね。
      ●常に駆け足、老中。老いぼれには勤まりません。
      ●♪走れエイトマーん弾よりも早く~
      ●クレジットカードは使えません、現金が無ければ皿洗いです。
      ●電車じゃありません、気動車です。またはディーゼルカー。
      ●大岡裁きは三方一両損。上手く宥めただけ、ということも。
      ●なかなか立派な金木駅舎。とても津軽鉄道の駅とは思えん。津軽鉄道関係の方、すまぬ。
      ●み「わたしがいなかったら、先生はこの世にいないの」こんなこと言われた登場人物は、どう感じるんだろうね。眩暈がするよ。
      ●歩いて7分。近いぞ、斜陽館。
      ●その途中に疎開の家。
      ●太宰の疎開は1945年。戦中なのかね、戦後なのかね。
      ●「諸般の事情」実に便利な言葉です。
      ●「さぬきうどん協同組合」。そんなのあるんや。こっちには「タヌキうどん協同組合」があります(ウソ)。
      ●失敬旋盤。お。おもろい。椅子用小座布団1枚。
      ●乾燥脳みそはウソです。しかしてその実体は、チキンラーメン。
      ●うわああ、気色悪い。有鉤条虫にきせいされた脳。
      ●子羊の脳は美味いそうです。
      ●使わない脳は新品同様。使い込んだ脳の方が美味いと思うが。
      ●太宰『蓄犬談』「私は、犬については自信がある。いつの日か、必ず喰いつかれるであろうという自信である」ま、好きにしろ。
      ●太宰治疎開の家。あるんですねえ。
      ●雪の重みで襖が開かなくなる。そうかのう、経験ないが。
      ●ガイジンさんの家は暖かいです。
      ●ホッカイドーの家も暖かいです。
      ●寒いです、本州の冬。洗濯物が凍ります。
      ●本を読むのに手袋です。これはちょっとやり過ぎ。
      ●み「太平洋側の冬は、ほんとにうらやましい」これはも一つ実感できません。
      ●♪人生いろいろ
      ●群馬といいますか、北関東の冬はほんとに寒いらしいぞ。
      ●雪かき。そういえばやったことないなあ。どうしてたんだろ。
      ●一つ積んでは父のため、二つ積んでは母のため。子のためには誰が積んでくれるんだろ。
      ●斜陽館の入場料。ようわかりまへん。とりあえず500円ということで。
      ●「学習に見られるべき乗の効果」信じて頑張りましょう。
      ●日本語が通じる津軽。新潟弁が通じる大牟田。
      ●「やまとはくにのまほろば」
      ●「まかりまへんか?」今どき、値切りなんて出来まへんで「み」さん。
      ●「教育モチベーションカレンダー」意味わからん。
      ●津島じゃなくって白川さん。まあ、そうだろうね。
      ●観光旅行でケチるな。
      ●DAZAITシャツ。まあ、ええんでないかい。
      ●Tシャツ。せいぜい1,000えんだろ。
      ●「生まれて墨ませんべい」生誕百年記念だそうです。好きにしろ。

    • ––––––
      2. Mikiko
    • 2014/07/22 07:49
    •  冬場の室内手袋は、今でも必需品です。
       手先が冷たいと、何も出来ません。
       今は暖房があるので、指出し手袋ですが。
       冬に手袋をしなくてよかったのは……。
       東京で最後に住んだ、ワンルームマンションだけですね。
       コンクリートにエアコン暖房は、驚異的に効きます。

    • ––––––
      3. ハーレクイン
    • 2014/07/22 10:12
    • そんなに冷え性なのか。
      わたしなんか、めったに手袋なんてしません。
      冬場、単車に乗るときくらいですね。

    • ––––––
      4. Mikiko
    • 2014/07/22 19:47
    •  ほぼ死人です。

    • ––––––
      5. ハーレクイン
    • 2014/07/23 08:52
    • 南無……。
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