2014.6.14(土)
小「あ、ここに書いてあります。
駅前に校門はあるんですが……」
↑駅から100メートルのところにある校門。
小「校門から校舎までは、800メートル離れてるそうです」
↑『五農街道』と呼ばれてるようです。
み「どしえー。
都会じゃありえねーロケーション。
歩いて10分かかるじゃないの。
ここで質問。
遅刻は、どこで判断するんだ?
校門入ってれば、オーケー?」
律「そんなわけないでしょ。
校舎まで10分もかかるのに」
↑最終コーナー。五農校では、とても最後まで持ちましぇん。
み「相撲部は、校門から校舎まで、裸足ですり足が基本だな」
律「出きっこないわよ」
み「校舎に着くころには、足の長さが半分にすり減ってたりして」
律「バカバカしい」
ちなみに、日本一広い高校は……。
北海道立北海道標茶高校。
面積は、255ヘクタール(77万1千坪!)。
↑学校の畑。山の向こうも、まだ学校の敷地だそうです。
通うのは、かなり大変な気も……。
でも、ご安心!
↓立派な寮があります。
こんな高校生活も、いいですよね。
生まれ変わったら、通ってみたい。
こんなんばっかしです。
あと、余談ですが……。
わたしが通ってみたかった学校に、東京都立園芸高校があります(世田谷区深沢)。
↑世田谷区の高級住宅街深沢に、東京ドーム2個分の敷地が広がります。北海道はちょっと無理という方には、お勧めです。
ちなみに、東京都で一番面積が広い高校は……。
東京都立青梅総合高校。
都立農林高校と都立青梅東高校が合併して出来ました。
面積は、ディズニーランドの2倍だそうです。
↑校内のようです。
さて、五所川原農林ですが……。
北海道標茶高校に続く、日本で二番目に広い高校だそうです。
本州一ということですね。
面積は、52ヘクタール(15万7千坪)。
↓校内は『五農の森』と呼ばれており、案内図まであります。
さて、旅を続けましょう。
律「あ、もう発車した」
み「さらば、五所川原農林。
おそらくは、生涯で2度と訪れないであろう」
↑『五農校前駅』に掲げられた“農魂”の額。いいですね~。
律「金木から帰るとき、通るでしょ」
み「あ」
律「あ、じゃないわよ。
頼りないわね。
斜陽館以外にも、面白いところがあるんじゃないの?」
み「あるのか?」
小「うーん。
あんまり面白いところがあったという記憶はありません」
み「失敬なヤツ」
小「『津軽三味線会館』というのがありました」
↑例の太宰の“ねぷた”があった所です。右の仁太坊は、幕末から明治・大正・昭和を生きた、津軽三味線の始祖だそうです。津軽三味線って、案外新しかったんですね。
み「おー。
津軽三味線、聞きそびれたんだよな」
小「『リゾートしらかみ』で、ライブがあるんですよね」
み「そうなのじゃ。
今ごろ鉄くんは、一人寂しく聞いてるかのぅ」
律「可哀想に」
み「よし。
鉄の供養に、われわれも聞こうではないか」
律「死に別れたわけじゃないでしょ」
み「もう会えないんだろうから……。
死んだようなもんよ」
律「ほんとに、冷血な女ね」
み「わたしは、男には厳しいのじゃ。
その会館でも、ライブやってるの?」
小「ちょっと、検索してみます。
えーっと。
ホールがあって、1日4回、ライブが行なわれてるそうです」
↑ここまで股を開く理由は、なんなんでしょうか。
み「ウマくすれば、時間的に当たるかも知れんな。
やっぱ、本場の津軽三味線を聞いて帰らんとな。
チミたち、高橋竹山(ちくざん)って知ってる?」
律「知らないわ」
み「三味線弾きよ。
今は、女性が2代目を名乗ってるんじゃないかな」
律「へー。
初代は、男性?
なんだか、引田天功みたいね」
↑素顔が見てみたい!
み「わたしは、初代の方のCD持ってるんだ。
この人は目が不自由で、ほんとに門付けで食べてたっていう本物よ」
み「北島三郎に、『風雪ながれ旅』って歌があるでしょ」
み「あのモデルが竹山よ」
み「晩年は、ニューヨークなんかにも呼ばれて行ったのよ」
律「へー。
一流のアーティストじゃない」
み「本人は、自分のことを芸術家だとは思ってなかったでしょうけどね。
アメリカの観客も、竹山の三味線で心を揺さぶられたみたい」
律「音楽は、言葉よりも通じるのね」
み「わたしにも通じたからね。
とにかく、竹山の撥音を聞いてると……。
津軽の地吹雪が見える気がした」
み「1度、ライブで聞いてみたかったな。
ニューヨークっ子もたまげたろうね。
盲目のジイさまが、三味線を弾き始めると……。
ニューヨークのステージに、地吹雪が吹きすさぶ。
ニューヨークタイムズが、『名匠と呼ばずして何であろう』って論評してた。
そうそう。
公演中の語りで、竹山は面白いことを言ってたわ。
ここはアメリカだそうだが、自分は目が見えないので、ほんとにそうだかわからない。
ひょっとしたら、青森の体育館じゃないかって。
通訳されて、観客も受けてたわ。
そういうユーモアもあった人」
律「へー。
面白い人」
さてさて。
ここらで、先を急ぎましょう。
別に急ぐ必要もないのですが……。
途中の駅に、ネタが無いんです。
駅名だけ並べていきます。
『五農校前』を出ると、列車の方向が、東から北に変わります。
次の駅は、『津軽飯詰(いいづめ)』。
↑自販機は、何で駅舎の中に置かないのかね?
“津軽”が冠されているということは……。
すなわち、本家『飯詰』駅があるわけです。
秋田県仙北郡美郷町に、奥羽本線の『飯詰』駅がありました。
開業は、堂々の明治38年(1905年)。
『津軽飯詰』の開業は、その25年後になります。
『津軽飯詰』を出ると、丘陵部の緑の中を北上します。
次の駅は、『毘沙門』。
↑自然の脅威を感じます。廃線になったら、あっという間に緑に覆い尽くされるんじゃないでしょうか。両側の林は、地吹雪を防ぐ鉄道林だそうです。
由緒有りげな駅名です。
“毘沙門”は、近くの集落名のようです。
調べれば、ネタがあるんだろうな。
『毘沙門』の次が、『嘉瀬』。
↑これは、待合室ではありません。事務所です。無人駅になる前は、ここで駅員さんが働いてたわけです。こんなとこで、ずーっと働けたら、幸せだよな。
同じ字を書く『嘉瀬』という集落が、わたしの住んでる区内にもあります。
何か意味がある地名なんでしょうか。
そう言えば、加勢大周っていましたよね。
字は違いますが。
今、何してるんでしょう。
↑こんなことがあったんですね。知りませんでした。
なお、『津軽五所川原』から、ずっと津軽平野を走っていますが……。
案外、標高があります。
『津軽五所川原』で、8メートル。
『十川』、9メートル。
『五農校前』、15メートル。
『津軽飯詰』、17メートル。
『毘沙門』、14メートル。
『嘉瀬』、13メートル。
台地なんですかね?
さて、『嘉瀬』を出ると、列車は盛土された上を走ります。
当然、見晴らしがいいです。
右は、津軽半島の脊梁をなす梵珠山地。
山地と言っても、せいぜい600メートルくらい。
穏やかな峰々です。
↑梵珠山。標高は、468メートル。
左は、どこまでも続く水田。
そして、金木川にかかる橋梁の向こうに……。
2人の目的地、『金木』の町が見えてきました。
↑10:00ころから、金木の町が見えてきます。
み「おー、久しぶりに町並みが見える」
小「金木の町です」
律「なんか、あっけなかったわね」
み「たった20分だからね。
チミも降りない?」
律「そうよ。
そうしましょうよ。
終点なんか行ったって、なんにもないわよ」
み「見てきたようなこと言いますな」
律「だって、この先で本州が終わりなんでしょ」
↑確かに、本州のどん詰まりです。
小「何もないのは、わかってますから。
でも、そこまで行くことに意味があるんです」
み「ほー。
言うではないか。
ま、仕方ない。
旅は、出会いと別れ。
まさに人生の縮図ですな」
律「あんたの別れ方は、ときにえげつないけどね」
み「縁があれば、またどこかで会えるであろう。
津軽鉄道が潰れたら、電話するからな。
一千万、耳をそろえて払ってちょうだい」
↑一千万じゃ、買えません。なぜにこんなに高いのか。
小「大丈夫です。
ボクが毎年乗りに来ますから。
ぜったい、潰れません」
律「ほら、早く降りないと、出ちゃうわよ」
み「おー、そうじゃ。
鈴虫の声に送られて……。
『金木』の駅に降り立つか。
わたしは今、津軽を旅をしてるんじゃのぅ」
律「早くしろ!」
み「さらばじゃー」
小「お元気で」
律「ボクもねー」
さて、改札を出たら、さっそく『ぽっぽ家』さんに向かいましょう。
律「新しい駅ね」
↑外観はこんな感じ。2003年に出来ました。バリケードは、車を停めさせないため?
↓ちなみに、旧駅舎はこんな感じでした。
↑『駅食堂』ってのがいいですよね。
み「ま、風情は無いけど……。
食事をするには、綺麗な方がいいよな」
↑駅舎内
み「風情のある駅は、くみ取りの臭いとかしそうだからね」
↑こんな恐るべきトイレもありましたね(五能線『松神駅』)。
律「そういうこと言わないの」
さて、お店に入りましょう。
広々してますね。
み「さっきの小鉄、昼時にはここが満杯になるとか言ってたよな」
律「スゴい人気店ね。
でも、今日は比較的空いてるわね」
み「平日は、高校生と作業員で一杯だって言ってたからね」
律「あ、今日は日曜日か」
み「今日のお客は、観光客がほとんどじゃないの?」
律「見晴らしのいい店ね」
↑『ぽっぽ家』の窓から撮られた写真です。
み「駅の周りが、ぐるっと見渡せるな。
ま、見渡して大したものは無いけど」
↑金木駅から見た、五所川原方面。晴れてれば、岩木山が見えるのでしょうね。
律「さて、何にしようか」
み「まずは、“しじみラーメン”でしょ。
750円。
さすが、一番高いね」
律「わたしもそれにしようかな」
み「おんなじもの注文してどうするのよ。
別なのを頼んで、半分こでしょ」
律「あ、昨日もそうだったわね」
↑覚えてます? 秋田市民市場『しな蕎麦 伊藤』で食べた“ラーメン”と“そのまんま冷やし”。
み「それが、2人旅のいいところ。
一度しか食べられない場所で、2種類の味を楽しめるわけだ」
律「3人なら、3種類じゃない。
あの鉄さんがいたら、3人だったのに」
み「死んだ子の歳を数えるでない」
律「死んでないでしょ」
み「案外、ああいうのが趣味なんじゃないの?」
律「それとこれとは別の話」
み「さて、もうひとつ、何にする?」
律「“ぽっぽラーメン”って何だろ?」
み「醤油だからダメ」
律「醤油味も、美味しいわよ」
み「“ぽっぽラーメン”は、たぶん石炭が入ってる」
↑クッキーが載ってるかも?
律「そんなわけないでしょ」
み「一番安いから、たぶん、普通のラーメンだよ」
律「それじゃ、その下の“煮干しラーメン”」
み「それも、醤油でしょ」
律「“ぽっぽラーメン”と値段が同じよ。
これも、普通のラーメン?」
み「同じラーメンを、名前を変えて並べてどうするの」
律「わかった。
煮干しが載ってるのよ」
↑ほんとに煮干しが載ってるラーメンは、ほとんど見あたりませんでした。こちらは、東京立川の『煮干しらーめん青樹』さんの“こってり煮干しらーめん”¥750。人気店だそうです。
み「そんなの、猫しか食わんわ」
み「煮干しは、スープの出汁でしょ」
律「そう言えば小鉄くん、津軽のラーメンは煮干し出汁って言ってたわね」
↑『東京ラーメンショー』にて。
律「でもそれなら、ぜんぶのラーメンが煮干出汁ってことでしょ。
どうしてこれだけ、“煮干しラーメン”なわけ?」
み「知らんわい」
律「やっぱり、煮干しが載ってるんじゃないの?」
み「そんなん食べたら、痛風になります」
↑煮干しには、プリン体が多く含まれます。
律「女性は、痛風にならないわよ」
み「とにかく、醤油味はパスね」
律「じゃ、この“味噌ラーメン”?」
み「イマイチ、ご当地もの的じゃない気がするな」
↑画像を探してみたら、これが大当たり。すげー美味しそうでした。
律「そしたら、その下にあるうどんやお蕎麦は?」
み「これは、値段からして……。
立ち食いの店で出るのと、ほぼ同じだと思う(載せられる画像は、ほとんどありませんでした。観光客は、注文しないんでしょうね)」
律「じゃ、どうするのよ?」
み「麺類以外は、どう?」
律「親子丼に玉子丼、チャーハン」
み「玉子丼ってのは、親子丼から鶏肉を抜いただけだな。
値段からして」
律「あ、“しじみ定食”があるじゃない。
しじみご飯に、しじみ汁、お新香が付いて……。
680円」
み「“しじみラーメン”を食べるのに、しじみ汁まではいらんでしょ。
塩分摂り過ぎ」
↑みそ汁は、案外少ないですね。やっぱり、ラーメンやお蕎麦では、汁を残した方がいいみたいですね。
律「じゃ、どうするっていうのよ!」
み「“しじみごはん”だけってのがあるでしょ。
200円。
でもこれだと、お茶碗1杯くらいかな。
よし、“若生こんぶおにぎり”ってのも付けよう。
180円。
合計、1,130円。
一人あたま、565円になります」
律「そんな細かいの、持ってないわよ」
み「先生は、1,000円でいいです」
律「そしてら、あんたは130円じゃないの!」
み「気にするでない」
律「Suica、使えないかしら?」
↑JR東日本で導入されている乗車カード。新潟では、バスにも乗れて便利です。
み「券売機も無かったのに、使えるわけないだろ」
律「じゃ、クレジットカードで」
み「使えないっつーの」
律「じゃ、ツケで」
み「一見客に、ツケが利くか!
どうしてこう、ケチかね」
律「どっちが!
あんたが1,000円出せばいいでしょ」
み「よーし。
そしたら、“しじみラーメン”は全部いただくからね。
先生には、“しじみごはん”のしじみを3粒と、若生こんぶを1平方センチだな」
律「130円なら、もっとあるでしょ!
“しじみごはん”が200円なんだから、130円は65%じゃないの。
半分以上よ」
ウ「あの~。
お決まりでしょうか?」
↑たぶん、こんなウェイトレスは来ません。
み「あ、すみません。
注文は決まってるんですが……。
ちょっと割り勘の件で折衝中でして」
律「注文だけしちゃいなさいよ」
み「さいですな。
えーっとですね。
“しじみラーメン”をひとつ。
あと、“しじみごはん”と“若生こんぶおにぎり”をひとつずつ」
ウ「承りました。
あ、このこんぶの名前ですけど……。
“わこう”じゃなくて、“わかおい”って読むんですよ」
み「へー」
律「なんか縁起が良さそうね」
ウ「薄くて柔らかい。1年ものの昆布のことです」
↑こちらは、羅臼昆布ですね。“若生(わかおい)”は、全国的な言い方のようです。
み「食べたら、若返れるかな?」
律「無理です」
↑『長崎ハウステンボス』で売ってるそうです。中身は、麦焼酎。
み「あ、そ。
ところで、Suica、使えます?」
ウ「は?
スイカはございませんけど」
↑“スイカアート”だそうです。芸術か、悪趣味か?
み「ふむ。
存在すら知られてないみたいですな。
あ、注文は以上でお願いします」
ウ「はい、ありがとうございます」
律「割り勘はどうするのよ?」
み「先生の奢り」
↑金沢市にあります。
律「お断り」
み「ほんとにケチなんだから。
じゃ、立て替えといて」
律「あんたが立て替えればいいでしょ」
み「あにゃたね。
お金で友だちなくすと思うよ」
律「友だちより、お金が大事」
み「あちゃー。
すかたない。
それじゃ、わたしがお立て替えしましょう」
律「何書いてるの?」
み「借用書」
み「利息は、10分で1割になります」
律「ヤミ金よりヒドいじゃないの!」
み「よーし。
じゃ、いっそのこと、賭けにしない?
負けたほうが、綺麗さっぱり払う」
律「どんな賭けよ?」
み「“しじみラーメン”に、しじみがいくつ入ってるか?」
み「奇数と偶数を当てるわけ。
丁半博打ね」
律「そんなの数えてたら、ラーメンが伸びちゃうでしょ」
み「そしたら……。
とりあえず、麺だけ食べちゃって、“しじみごはん”で勝負しよう。
丁半、どっち?」
律「よし、丁!」
み「丁、入りました。
半方ないか?、半方ないか?」
律「あんたしかいないでしょ」
み「じゃ、わたしも丁」
律「それじゃ、勝負にならないわよ」
み「わたしは、丁が、超好きなの」
律「洒落のつもり?」
み「ていうか、半は、半端とか半ちくとか、あまりいい語感がしないじゃない」
律「じゃ、わたしが半でいいわよ。
でもあんた、『半七捕物帳』が好きだったんじゃないの?」
み「あ。
じゃ、わたしも半」
律「だから、2人が半じゃ、勝負にならないでしょ。
そんなら、わたしは丁に戻すわ」
み「うーん。
丁も捨てがたい。
そしたら、丁半両建て!」
律「ダメに決まってるでしょ。
そもそも、そんなことして何の意味があるのよ」
み「ぜったいに負けないではないか」
律「勝負には負けなくても……。
テラ銭を取られるから、確実に損よ」
み「詳しいですな。
やってたんじゃないの?」
律「昔、医局でちょっと……」
み「ケシカラン医者!
警察に通報せねば」
律「もう時効よ。
じゃ、わたしが丁で、あんたが半で決まりね」
み「どうしてそう、勝負したがるかね?」
律「あんたが言ったんでしょ。
博打で決めようって」
み「そうでした?」
ウ「お待ちどうさまでした」
み「おー、来た来た」
ウ「こちら、“しじみラーメン”になります」
律「へー。
綺麗なラーメン」
み「あ、真ん中に置いてください。
あ、すごい。
気を利かせてくれて、ありがとうございます。
分け皿まで用意していただいて」
ウ「あ、こちらは、しじみの殻入れです」
み「ありゃりゃ」
ウ「あと、こちらが“しじみごはん”と……」
ウ「“若生こんぶおにぎり”になります」
律「これ、すごいわね」
み「想像を越えたものが来ましたな」
↑この大きさを見よ!
律「緑色の春巻きって感じ?」
み「太りすぎた芋虫って感じ」
↑こいつらは芋虫ではなく、モリゾーとキッコロという森の精だそうです(『愛・地球博』の公式キャラ)。
律「そういうこと言わないの」
み「じゃ、勝負は後回しにして……。
とりあえず、ラーメンからね。
しじみのほかのトッピングは……。
ワカメ、メンマ、ナルト」
律「あと、サヤエンドウね。
シンプルだけど、彩りが綺麗ね。
じゃ、わたしからいただきます」
み「ちょっと、丼ごと持っていかないでよ」
律「持ってこなきゃ食べれないでしょ」
み「真ん中に置いて、両側から食べればいいじゃない」
↑子供なら許せますが、大人のカップルがやってた日にゃ……。
律「そんな馬鹿な真似、出来ますか。
ほら、その分け皿取って」
み「これは、しじみの殻入れです」
律「いいから」
み「なんでわたしが、殻入れで食わにゃならんのだ!」
律「味は一緒でしょ。
はい、これがあなたの分」
み「麺が、3本しか入っとらん!」
↑これは、毛が3本。
律「冗談よ」
み「あんたの場合、冗談に聞こえんわい」
律「猫舌なんでしょ。
少しずつ、冷ましながら食べた方がいいじゃないの」
み「おー。
そういう、優しい心根であったか。
って、今、思いついただろ」
律「はい、20本くらい入ったわよ」
律「スープも、レンゲに3杯」
律「どうぞ、召し上がれ」
み「具が入っとらん!」
律「まぁ、贅沢な人。
それじゃ、はい、しじみをふたつあげます」
み「身が入っとらん!」
律「いいじゃない。
どうせ、殻入れなんだから」
み「ここまで性悪だとは思わなんだ」
律「小さい入れ物なんだから、そんなに入らないでしょ。
空になったら、どんどん足してあげるわよ。
ほら、もう冷めたんじゃない」
み「よし。
ずるずる~。
はい、おかわり」
律「あんたね。
わんこそばじゃないんだから」
律「もっと味わって食べなさいよ」
み「味わえるほど入ってないわい」
律「じゃ、わたしが味わってあげる」
み「なんじゃそりゃ」
律「もぐもぐ。
ほんと、さっぱりしたラーメン。
これなら、二日酔いの朝にもいけるわ」
み「あんたね。
もっと美味しそうに食べなさいよ。
何でそう、もさもさ手繰るわけ」
律「音が立つじゃないの」
↑パリジェンヌのラーメンの食べ方。こんなして食べて、ウマいのか? スープが絡まんではないか。
み「日本の麺は、音を立てて食べるの!
汁が3メートルくらい飛んでいいの」
律「指導教授から、教えられたのよ。
学会で向こうに行く機会もあるから……。
普段から、音を立てずに食べる練習をしておきなさいって。
どんなに優秀な医者でも、食事マナーが不調法だと尊敬されないんだって」
↑江田島海軍兵学校では、テーブルマナーの授業があったそうです。
み「アメリカで、ラーメンを食わなきゃいいだろ。
ほら、小鉢が空だって言ってるでしょ。
早くよそって」
律「鉢を叩かないで!
下品な人ね。
はい、じゃ、もう7本」
み「数えるな!」
律「ほら、入ったわよ」
み「具が入っとらん!」
律「溢れるでしょ。
それ食べたら入れてあげる」
み「よーし。
見ちょれ。
これが、ジャパニーズラーメンマナーじゃ。
ず、ず、ずびずびずびずび」
↑これで、汁飛びを防ぎましょう。
み「ぷふぁ~」
↑わたしも、鍋のまま食べたことはありますが……。こういう蓋の使い方は思いつきませんでした。脱帽。
律「お下品。
絶対、あんたとは海外旅行しません」
み「外国なんか、行きとうないわい。
迷子になったら大変じゃ」
↑わたしは、中学校からの帰り道で迷子になったことがあります。マジに泣きそうでした。
律「アメリカじゃね、日本人が食事を始めると……。
レストランの天井が落ちるって言われてるのよ。
大音響で食べるから」
み「大げさな。
単なるアメリカンジョークでしょ。
早く、具を入れて。
具は半分ずつだからね」
律「ナルトは1枚しか無いわよ。
半分にする?」
み「そんなみみっちい真似しなくていいわい。
ナルトは、先生にあげます。
その代わり、しじみを全部ちょうだい」
律「馬鹿いいなさい。
しじみは、肝臓の友よ」
律「メンマなら、1本あげます」
み「いい加減、疲れない?」
律「そんなら、わたしがいただきます。
つるつる~」
み「なぜ、そうなる!
しかも、音立ててるし」
律「あー、美味しい。
滋味だわ。
肝臓に効いてるって感じ」
み「早く、よこせ」
律「もう少し味わったら、丼ごとあげるわよ」
み「空になるではないか!
くそ。
それなら、わたしはこのおにぎりをいただきます」
駅前に校門はあるんですが……」
↑駅から100メートルのところにある校門。
小「校門から校舎までは、800メートル離れてるそうです」
↑『五農街道』と呼ばれてるようです。
み「どしえー。
都会じゃありえねーロケーション。
歩いて10分かかるじゃないの。
ここで質問。
遅刻は、どこで判断するんだ?
校門入ってれば、オーケー?」
律「そんなわけないでしょ。
校舎まで10分もかかるのに」
↑最終コーナー。五農校では、とても最後まで持ちましぇん。
み「相撲部は、校門から校舎まで、裸足ですり足が基本だな」
律「出きっこないわよ」
み「校舎に着くころには、足の長さが半分にすり減ってたりして」
律「バカバカしい」
ちなみに、日本一広い高校は……。
北海道立北海道標茶高校。
面積は、255ヘクタール(77万1千坪!)。
↑学校の畑。山の向こうも、まだ学校の敷地だそうです。
通うのは、かなり大変な気も……。
でも、ご安心!
↓立派な寮があります。
こんな高校生活も、いいですよね。
生まれ変わったら、通ってみたい。
こんなんばっかしです。
あと、余談ですが……。
わたしが通ってみたかった学校に、東京都立園芸高校があります(世田谷区深沢)。
↑世田谷区の高級住宅街深沢に、東京ドーム2個分の敷地が広がります。北海道はちょっと無理という方には、お勧めです。
ちなみに、東京都で一番面積が広い高校は……。
東京都立青梅総合高校。
都立農林高校と都立青梅東高校が合併して出来ました。
面積は、ディズニーランドの2倍だそうです。
↑校内のようです。
さて、五所川原農林ですが……。
北海道標茶高校に続く、日本で二番目に広い高校だそうです。
本州一ということですね。
面積は、52ヘクタール(15万7千坪)。
↓校内は『五農の森』と呼ばれており、案内図まであります。
さて、旅を続けましょう。
律「あ、もう発車した」
み「さらば、五所川原農林。
おそらくは、生涯で2度と訪れないであろう」
↑『五農校前駅』に掲げられた“農魂”の額。いいですね~。
律「金木から帰るとき、通るでしょ」
み「あ」
律「あ、じゃないわよ。
頼りないわね。
斜陽館以外にも、面白いところがあるんじゃないの?」
み「あるのか?」
小「うーん。
あんまり面白いところがあったという記憶はありません」
み「失敬なヤツ」
小「『津軽三味線会館』というのがありました」
↑例の太宰の“ねぷた”があった所です。右の仁太坊は、幕末から明治・大正・昭和を生きた、津軽三味線の始祖だそうです。津軽三味線って、案外新しかったんですね。
み「おー。
津軽三味線、聞きそびれたんだよな」
小「『リゾートしらかみ』で、ライブがあるんですよね」
み「そうなのじゃ。
今ごろ鉄くんは、一人寂しく聞いてるかのぅ」
律「可哀想に」
み「よし。
鉄の供養に、われわれも聞こうではないか」
律「死に別れたわけじゃないでしょ」
み「もう会えないんだろうから……。
死んだようなもんよ」
律「ほんとに、冷血な女ね」
み「わたしは、男には厳しいのじゃ。
その会館でも、ライブやってるの?」
小「ちょっと、検索してみます。
えーっと。
ホールがあって、1日4回、ライブが行なわれてるそうです」
↑ここまで股を開く理由は、なんなんでしょうか。
み「ウマくすれば、時間的に当たるかも知れんな。
やっぱ、本場の津軽三味線を聞いて帰らんとな。
チミたち、高橋竹山(ちくざん)って知ってる?」
律「知らないわ」
み「三味線弾きよ。
今は、女性が2代目を名乗ってるんじゃないかな」
律「へー。
初代は、男性?
なんだか、引田天功みたいね」
↑素顔が見てみたい!
み「わたしは、初代の方のCD持ってるんだ。
この人は目が不自由で、ほんとに門付けで食べてたっていう本物よ」
み「北島三郎に、『風雪ながれ旅』って歌があるでしょ」
み「あのモデルが竹山よ」
み「晩年は、ニューヨークなんかにも呼ばれて行ったのよ」
律「へー。
一流のアーティストじゃない」
み「本人は、自分のことを芸術家だとは思ってなかったでしょうけどね。
アメリカの観客も、竹山の三味線で心を揺さぶられたみたい」
律「音楽は、言葉よりも通じるのね」
み「わたしにも通じたからね。
とにかく、竹山の撥音を聞いてると……。
津軽の地吹雪が見える気がした」
み「1度、ライブで聞いてみたかったな。
ニューヨークっ子もたまげたろうね。
盲目のジイさまが、三味線を弾き始めると……。
ニューヨークのステージに、地吹雪が吹きすさぶ。
ニューヨークタイムズが、『名匠と呼ばずして何であろう』って論評してた。
そうそう。
公演中の語りで、竹山は面白いことを言ってたわ。
ここはアメリカだそうだが、自分は目が見えないので、ほんとにそうだかわからない。
ひょっとしたら、青森の体育館じゃないかって。
通訳されて、観客も受けてたわ。
そういうユーモアもあった人」
律「へー。
面白い人」
さてさて。
ここらで、先を急ぎましょう。
別に急ぐ必要もないのですが……。
途中の駅に、ネタが無いんです。
駅名だけ並べていきます。
『五農校前』を出ると、列車の方向が、東から北に変わります。
次の駅は、『津軽飯詰(いいづめ)』。
↑自販機は、何で駅舎の中に置かないのかね?
“津軽”が冠されているということは……。
すなわち、本家『飯詰』駅があるわけです。
秋田県仙北郡美郷町に、奥羽本線の『飯詰』駅がありました。
開業は、堂々の明治38年(1905年)。
『津軽飯詰』の開業は、その25年後になります。
『津軽飯詰』を出ると、丘陵部の緑の中を北上します。
次の駅は、『毘沙門』。
↑自然の脅威を感じます。廃線になったら、あっという間に緑に覆い尽くされるんじゃないでしょうか。両側の林は、地吹雪を防ぐ鉄道林だそうです。
由緒有りげな駅名です。
“毘沙門”は、近くの集落名のようです。
調べれば、ネタがあるんだろうな。
『毘沙門』の次が、『嘉瀬』。
↑これは、待合室ではありません。事務所です。無人駅になる前は、ここで駅員さんが働いてたわけです。こんなとこで、ずーっと働けたら、幸せだよな。
同じ字を書く『嘉瀬』という集落が、わたしの住んでる区内にもあります。
何か意味がある地名なんでしょうか。
そう言えば、加勢大周っていましたよね。
字は違いますが。
今、何してるんでしょう。
↑こんなことがあったんですね。知りませんでした。
なお、『津軽五所川原』から、ずっと津軽平野を走っていますが……。
案外、標高があります。
『津軽五所川原』で、8メートル。
『十川』、9メートル。
『五農校前』、15メートル。
『津軽飯詰』、17メートル。
『毘沙門』、14メートル。
『嘉瀬』、13メートル。
台地なんですかね?
さて、『嘉瀬』を出ると、列車は盛土された上を走ります。
当然、見晴らしがいいです。
右は、津軽半島の脊梁をなす梵珠山地。
山地と言っても、せいぜい600メートルくらい。
穏やかな峰々です。
↑梵珠山。標高は、468メートル。
左は、どこまでも続く水田。
そして、金木川にかかる橋梁の向こうに……。
2人の目的地、『金木』の町が見えてきました。
↑10:00ころから、金木の町が見えてきます。
み「おー、久しぶりに町並みが見える」
小「金木の町です」
律「なんか、あっけなかったわね」
み「たった20分だからね。
チミも降りない?」
律「そうよ。
そうしましょうよ。
終点なんか行ったって、なんにもないわよ」
み「見てきたようなこと言いますな」
律「だって、この先で本州が終わりなんでしょ」
↑確かに、本州のどん詰まりです。
小「何もないのは、わかってますから。
でも、そこまで行くことに意味があるんです」
み「ほー。
言うではないか。
ま、仕方ない。
旅は、出会いと別れ。
まさに人生の縮図ですな」
律「あんたの別れ方は、ときにえげつないけどね」
み「縁があれば、またどこかで会えるであろう。
津軽鉄道が潰れたら、電話するからな。
一千万、耳をそろえて払ってちょうだい」
↑一千万じゃ、買えません。なぜにこんなに高いのか。
小「大丈夫です。
ボクが毎年乗りに来ますから。
ぜったい、潰れません」
律「ほら、早く降りないと、出ちゃうわよ」
み「おー、そうじゃ。
鈴虫の声に送られて……。
『金木』の駅に降り立つか。
わたしは今、津軽を旅をしてるんじゃのぅ」
律「早くしろ!」
み「さらばじゃー」
小「お元気で」
律「ボクもねー」
さて、改札を出たら、さっそく『ぽっぽ家』さんに向かいましょう。
律「新しい駅ね」
↑外観はこんな感じ。2003年に出来ました。バリケードは、車を停めさせないため?
↓ちなみに、旧駅舎はこんな感じでした。
↑『駅食堂』ってのがいいですよね。
み「ま、風情は無いけど……。
食事をするには、綺麗な方がいいよな」
↑駅舎内
み「風情のある駅は、くみ取りの臭いとかしそうだからね」
↑こんな恐るべきトイレもありましたね(五能線『松神駅』)。
律「そういうこと言わないの」
さて、お店に入りましょう。
広々してますね。
み「さっきの小鉄、昼時にはここが満杯になるとか言ってたよな」
律「スゴい人気店ね。
でも、今日は比較的空いてるわね」
み「平日は、高校生と作業員で一杯だって言ってたからね」
律「あ、今日は日曜日か」
み「今日のお客は、観光客がほとんどじゃないの?」
律「見晴らしのいい店ね」
↑『ぽっぽ家』の窓から撮られた写真です。
み「駅の周りが、ぐるっと見渡せるな。
ま、見渡して大したものは無いけど」
↑金木駅から見た、五所川原方面。晴れてれば、岩木山が見えるのでしょうね。
律「さて、何にしようか」
み「まずは、“しじみラーメン”でしょ。
750円。
さすが、一番高いね」
律「わたしもそれにしようかな」
み「おんなじもの注文してどうするのよ。
別なのを頼んで、半分こでしょ」
律「あ、昨日もそうだったわね」
↑覚えてます? 秋田市民市場『しな蕎麦 伊藤』で食べた“ラーメン”と“そのまんま冷やし”。
み「それが、2人旅のいいところ。
一度しか食べられない場所で、2種類の味を楽しめるわけだ」
律「3人なら、3種類じゃない。
あの鉄さんがいたら、3人だったのに」
み「死んだ子の歳を数えるでない」
律「死んでないでしょ」
み「案外、ああいうのが趣味なんじゃないの?」
律「それとこれとは別の話」
み「さて、もうひとつ、何にする?」
律「“ぽっぽラーメン”って何だろ?」
み「醤油だからダメ」
律「醤油味も、美味しいわよ」
み「“ぽっぽラーメン”は、たぶん石炭が入ってる」
↑クッキーが載ってるかも?
律「そんなわけないでしょ」
み「一番安いから、たぶん、普通のラーメンだよ」
律「それじゃ、その下の“煮干しラーメン”」
み「それも、醤油でしょ」
律「“ぽっぽラーメン”と値段が同じよ。
これも、普通のラーメン?」
み「同じラーメンを、名前を変えて並べてどうするの」
律「わかった。
煮干しが載ってるのよ」
↑ほんとに煮干しが載ってるラーメンは、ほとんど見あたりませんでした。こちらは、東京立川の『煮干しらーめん青樹』さんの“こってり煮干しらーめん”¥750。人気店だそうです。
み「そんなの、猫しか食わんわ」
み「煮干しは、スープの出汁でしょ」
律「そう言えば小鉄くん、津軽のラーメンは煮干し出汁って言ってたわね」
↑『東京ラーメンショー』にて。
律「でもそれなら、ぜんぶのラーメンが煮干出汁ってことでしょ。
どうしてこれだけ、“煮干しラーメン”なわけ?」
み「知らんわい」
律「やっぱり、煮干しが載ってるんじゃないの?」
み「そんなん食べたら、痛風になります」
↑煮干しには、プリン体が多く含まれます。
律「女性は、痛風にならないわよ」
み「とにかく、醤油味はパスね」
律「じゃ、この“味噌ラーメン”?」
み「イマイチ、ご当地もの的じゃない気がするな」
↑画像を探してみたら、これが大当たり。すげー美味しそうでした。
律「そしたら、その下にあるうどんやお蕎麦は?」
み「これは、値段からして……。
立ち食いの店で出るのと、ほぼ同じだと思う(載せられる画像は、ほとんどありませんでした。観光客は、注文しないんでしょうね)」
律「じゃ、どうするのよ?」
み「麺類以外は、どう?」
律「親子丼に玉子丼、チャーハン」
み「玉子丼ってのは、親子丼から鶏肉を抜いただけだな。
値段からして」
律「あ、“しじみ定食”があるじゃない。
しじみご飯に、しじみ汁、お新香が付いて……。
680円」
み「“しじみラーメン”を食べるのに、しじみ汁まではいらんでしょ。
塩分摂り過ぎ」
↑みそ汁は、案外少ないですね。やっぱり、ラーメンやお蕎麦では、汁を残した方がいいみたいですね。
律「じゃ、どうするっていうのよ!」
み「“しじみごはん”だけってのがあるでしょ。
200円。
でもこれだと、お茶碗1杯くらいかな。
よし、“若生こんぶおにぎり”ってのも付けよう。
180円。
合計、1,130円。
一人あたま、565円になります」
律「そんな細かいの、持ってないわよ」
み「先生は、1,000円でいいです」
律「そしてら、あんたは130円じゃないの!」
み「気にするでない」
律「Suica、使えないかしら?」
↑JR東日本で導入されている乗車カード。新潟では、バスにも乗れて便利です。
み「券売機も無かったのに、使えるわけないだろ」
律「じゃ、クレジットカードで」
み「使えないっつーの」
律「じゃ、ツケで」
み「一見客に、ツケが利くか!
どうしてこう、ケチかね」
律「どっちが!
あんたが1,000円出せばいいでしょ」
み「よーし。
そしたら、“しじみラーメン”は全部いただくからね。
先生には、“しじみごはん”のしじみを3粒と、若生こんぶを1平方センチだな」
律「130円なら、もっとあるでしょ!
“しじみごはん”が200円なんだから、130円は65%じゃないの。
半分以上よ」
ウ「あの~。
お決まりでしょうか?」
↑たぶん、こんなウェイトレスは来ません。
み「あ、すみません。
注文は決まってるんですが……。
ちょっと割り勘の件で折衝中でして」
律「注文だけしちゃいなさいよ」
み「さいですな。
えーっとですね。
“しじみラーメン”をひとつ。
あと、“しじみごはん”と“若生こんぶおにぎり”をひとつずつ」
ウ「承りました。
あ、このこんぶの名前ですけど……。
“わこう”じゃなくて、“わかおい”って読むんですよ」
み「へー」
律「なんか縁起が良さそうね」
ウ「薄くて柔らかい。1年ものの昆布のことです」
↑こちらは、羅臼昆布ですね。“若生(わかおい)”は、全国的な言い方のようです。
み「食べたら、若返れるかな?」
律「無理です」
↑『長崎ハウステンボス』で売ってるそうです。中身は、麦焼酎。
み「あ、そ。
ところで、Suica、使えます?」
ウ「は?
スイカはございませんけど」
↑“スイカアート”だそうです。芸術か、悪趣味か?
み「ふむ。
存在すら知られてないみたいですな。
あ、注文は以上でお願いします」
ウ「はい、ありがとうございます」
律「割り勘はどうするのよ?」
み「先生の奢り」
↑金沢市にあります。
律「お断り」
み「ほんとにケチなんだから。
じゃ、立て替えといて」
律「あんたが立て替えればいいでしょ」
み「あにゃたね。
お金で友だちなくすと思うよ」
律「友だちより、お金が大事」
み「あちゃー。
すかたない。
それじゃ、わたしがお立て替えしましょう」
律「何書いてるの?」
み「借用書」
み「利息は、10分で1割になります」
律「ヤミ金よりヒドいじゃないの!」
み「よーし。
じゃ、いっそのこと、賭けにしない?
負けたほうが、綺麗さっぱり払う」
律「どんな賭けよ?」
み「“しじみラーメン”に、しじみがいくつ入ってるか?」
み「奇数と偶数を当てるわけ。
丁半博打ね」
律「そんなの数えてたら、ラーメンが伸びちゃうでしょ」
み「そしたら……。
とりあえず、麺だけ食べちゃって、“しじみごはん”で勝負しよう。
丁半、どっち?」
律「よし、丁!」
み「丁、入りました。
半方ないか?、半方ないか?」
律「あんたしかいないでしょ」
み「じゃ、わたしも丁」
律「それじゃ、勝負にならないわよ」
み「わたしは、丁が、超好きなの」
律「洒落のつもり?」
み「ていうか、半は、半端とか半ちくとか、あまりいい語感がしないじゃない」
律「じゃ、わたしが半でいいわよ。
でもあんた、『半七捕物帳』が好きだったんじゃないの?」
み「あ。
じゃ、わたしも半」
律「だから、2人が半じゃ、勝負にならないでしょ。
そんなら、わたしは丁に戻すわ」
み「うーん。
丁も捨てがたい。
そしたら、丁半両建て!」
律「ダメに決まってるでしょ。
そもそも、そんなことして何の意味があるのよ」
み「ぜったいに負けないではないか」
律「勝負には負けなくても……。
テラ銭を取られるから、確実に損よ」
み「詳しいですな。
やってたんじゃないの?」
律「昔、医局でちょっと……」
み「ケシカラン医者!
警察に通報せねば」
律「もう時効よ。
じゃ、わたしが丁で、あんたが半で決まりね」
み「どうしてそう、勝負したがるかね?」
律「あんたが言ったんでしょ。
博打で決めようって」
み「そうでした?」
ウ「お待ちどうさまでした」
み「おー、来た来た」
ウ「こちら、“しじみラーメン”になります」
律「へー。
綺麗なラーメン」
み「あ、真ん中に置いてください。
あ、すごい。
気を利かせてくれて、ありがとうございます。
分け皿まで用意していただいて」
ウ「あ、こちらは、しじみの殻入れです」
み「ありゃりゃ」
ウ「あと、こちらが“しじみごはん”と……」
ウ「“若生こんぶおにぎり”になります」
律「これ、すごいわね」
み「想像を越えたものが来ましたな」
↑この大きさを見よ!
律「緑色の春巻きって感じ?」
み「太りすぎた芋虫って感じ」
↑こいつらは芋虫ではなく、モリゾーとキッコロという森の精だそうです(『愛・地球博』の公式キャラ)。
律「そういうこと言わないの」
み「じゃ、勝負は後回しにして……。
とりあえず、ラーメンからね。
しじみのほかのトッピングは……。
ワカメ、メンマ、ナルト」
律「あと、サヤエンドウね。
シンプルだけど、彩りが綺麗ね。
じゃ、わたしからいただきます」
み「ちょっと、丼ごと持っていかないでよ」
律「持ってこなきゃ食べれないでしょ」
み「真ん中に置いて、両側から食べればいいじゃない」
↑子供なら許せますが、大人のカップルがやってた日にゃ……。
律「そんな馬鹿な真似、出来ますか。
ほら、その分け皿取って」
み「これは、しじみの殻入れです」
律「いいから」
み「なんでわたしが、殻入れで食わにゃならんのだ!」
律「味は一緒でしょ。
はい、これがあなたの分」
み「麺が、3本しか入っとらん!」
↑これは、毛が3本。
律「冗談よ」
み「あんたの場合、冗談に聞こえんわい」
律「猫舌なんでしょ。
少しずつ、冷ましながら食べた方がいいじゃないの」
み「おー。
そういう、優しい心根であったか。
って、今、思いついただろ」
律「はい、20本くらい入ったわよ」
律「スープも、レンゲに3杯」
律「どうぞ、召し上がれ」
み「具が入っとらん!」
律「まぁ、贅沢な人。
それじゃ、はい、しじみをふたつあげます」
み「身が入っとらん!」
律「いいじゃない。
どうせ、殻入れなんだから」
み「ここまで性悪だとは思わなんだ」
律「小さい入れ物なんだから、そんなに入らないでしょ。
空になったら、どんどん足してあげるわよ。
ほら、もう冷めたんじゃない」
み「よし。
ずるずる~。
はい、おかわり」
律「あんたね。
わんこそばじゃないんだから」
律「もっと味わって食べなさいよ」
み「味わえるほど入ってないわい」
律「じゃ、わたしが味わってあげる」
み「なんじゃそりゃ」
律「もぐもぐ。
ほんと、さっぱりしたラーメン。
これなら、二日酔いの朝にもいけるわ」
み「あんたね。
もっと美味しそうに食べなさいよ。
何でそう、もさもさ手繰るわけ」
律「音が立つじゃないの」
↑パリジェンヌのラーメンの食べ方。こんなして食べて、ウマいのか? スープが絡まんではないか。
み「日本の麺は、音を立てて食べるの!
汁が3メートルくらい飛んでいいの」
律「指導教授から、教えられたのよ。
学会で向こうに行く機会もあるから……。
普段から、音を立てずに食べる練習をしておきなさいって。
どんなに優秀な医者でも、食事マナーが不調法だと尊敬されないんだって」
↑江田島海軍兵学校では、テーブルマナーの授業があったそうです。
み「アメリカで、ラーメンを食わなきゃいいだろ。
ほら、小鉢が空だって言ってるでしょ。
早くよそって」
律「鉢を叩かないで!
下品な人ね。
はい、じゃ、もう7本」
み「数えるな!」
律「ほら、入ったわよ」
み「具が入っとらん!」
律「溢れるでしょ。
それ食べたら入れてあげる」
み「よーし。
見ちょれ。
これが、ジャパニーズラーメンマナーじゃ。
ず、ず、ずびずびずびずび」
↑これで、汁飛びを防ぎましょう。
み「ぷふぁ~」
↑わたしも、鍋のまま食べたことはありますが……。こういう蓋の使い方は思いつきませんでした。脱帽。
律「お下品。
絶対、あんたとは海外旅行しません」
み「外国なんか、行きとうないわい。
迷子になったら大変じゃ」
↑わたしは、中学校からの帰り道で迷子になったことがあります。マジに泣きそうでした。
律「アメリカじゃね、日本人が食事を始めると……。
レストランの天井が落ちるって言われてるのよ。
大音響で食べるから」
み「大げさな。
単なるアメリカンジョークでしょ。
早く、具を入れて。
具は半分ずつだからね」
律「ナルトは1枚しか無いわよ。
半分にする?」
み「そんなみみっちい真似しなくていいわい。
ナルトは、先生にあげます。
その代わり、しじみを全部ちょうだい」
律「馬鹿いいなさい。
しじみは、肝臓の友よ」
律「メンマなら、1本あげます」
み「いい加減、疲れない?」
律「そんなら、わたしがいただきます。
つるつる~」
み「なぜ、そうなる!
しかも、音立ててるし」
律「あー、美味しい。
滋味だわ。
肝臓に効いてるって感じ」
み「早く、よこせ」
律「もう少し味わったら、丼ごとあげるわよ」
み「空になるではないか!
くそ。
それなら、わたしはこのおにぎりをいただきます」